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「ガンダムSEED Destiny――シン君の目指せ主人公奮闘記!!第十四話 結束、そして出発 (SEED運命)」

ANDY (2007-02-26 07:28)
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 覚悟。
 それは、何かを選ぶときには必ず持たなくてはならないこと。
 特に、得たものの権利を主張する場合は確実に必要なものである。
 覚悟なき行動には結果はついてこず、仮に結果が出たとしてもそれは果たして誰かを幸せにすることができるものなのだろうか。
 もし、覚悟無き者が自由に行動をとった場合、それは覚悟を持ったものにとってどのように見えるのだろうか。
 滑稽?喜劇?それとも醜悪?
 それとも―


「あれは……」
 先日からミネルバに着任することになったステラの私物の購入を手伝っていたシンの目に、空を切り裂きながらミネルバに着艦する赤いMSの姿が目に付いた。
(セイバー……なら、アスランか?)
 原作ではその容姿に似合わず良いところを見せずに不遇な運命をたどったMSのパイロットであろう人物を思い浮かべながら、シンはこれからどうするべきかを考えた。
 具体的に何を考えているかというと、やるかやらないかをだった。
(原作を観る限りでは、アスランはこれからの戦闘に関して言えばマイナスな要素を持っていてもプラスになる要素は限りなく低いからな〜。というか、仮にも自分の部下が戦っているのにその相手の名前を連呼するかね?しかも他の部下の前で。中途半端に不殺をされるのもな〜。こっちの生存率を下げることになるだけだからな。……もしかして、俺の知らない原作の展開ではまた裏切りを働いた、なんていうことはなかっただろうな……。うわ、自分で想像したことを否定できない。よし。不慮の事故で後方待機になってもらおう。で、セイバーにはレイに乗ってもらおう。その方がセイバーも活躍できてうれしいだろうしな)
 ひどく傲慢な、それでいて切実な悩みにそう結論をつけたシンは、あとで医務室から強力な下剤や各種鎮痛剤を何とか手に入れようと心に決め、ミネルバに戻ることにした。
「ステラ。そろそろミネルバに戻ろう」
「シン。まだ買うものある」
 傍らにいたステラにそう促すと、ステラは首をフルフルと横に振りながらその申し出を断った。
「ん?なんかまだあったっけ?」
「うん。アリアお姉ちゃんがおしゃれな下着を買ってきなさいって」
「……そうですか」
 その魅惑的な単語を聞いた瞬間、シンの首筋をひんやりとした感触が襲ってきた。
(なんか知らんが非常にまずい感じだ)
 一人その感覚に警戒しているシンに、ステラは無垢な瞳で見つめながら爆弾発言をかました。
「シン」
「………はい?」
「おしゃれな下着ってどんなの?」
「………ナゼニワタクシメニタズネルノデスカ?」
「アリアお姉ちゃんが、シンなら教えてくれるって言ってたよ?」
 その言葉を聞いた瞬間、シンの脳裏に菩薩の笑みを浮かべながら怒りの炎を纏っている美人な女医さんの姿がひどく鮮明に浮かび上がった。
(アリア先生。まだ、まだお怒りは静めていただけないのですか?)
 目の幅の涙が零れそうになるのをこらえながら、シンは怒りを静めてもらうために何かお供え物になりそうな甘いものを購入しようと心に決めながら、どうやってこの難敵を回避しようかと頭を悩ませるのだった。


 格納庫に漂う空気を胸に吸いながら、アスランは自分に向けられる視線の感情に少し困惑しながら、どこか自嘲めいた気持ちになっていた。
 以前オーブの人間としてミネルバの格納庫に乗り込んだ人間が、次にはZAFTの、しかも特務部隊FAITHの紋章を胸につけているのだ。
 胡乱気な視線や、奇異な視線を向けられるのは仕方がないことだ。
 そう納得しアスランは、なんら自分には疚しい事はないと証明するように芯の通った声を上げ名乗った。
「認識番号285002、特務隊フェイス所属、アスラン・ザラだ。乗艦許可を。艦長は艦橋か?」
 呆然とこちらを伺うように見ている整備班員達に向かいそう名乗り尋ねると、全員慌てて敬礼を取った。
「確認してご案内します。その間、パイロットスーツを着替えられてはいかがでしょうか」
 ちょうどその場にいたレイがアスランにそう申し出、アスランを連れて格納庫から出て行った。
 そんな二人を見送った格納庫は、突然現れた前大戦の英雄の復帰に騒然とし始めた。
「おいおい。なんでアスラン・ザラがミネルバに来るんだよ?」
「さあな。大方、オーブにいられなくなったから再就職したんじゃないの?」
「余計なことをしゃべるんじゃない。そんな暇があるんだったら、この新型の仕様書に目を通しておけ」
 アスランから渡されたセイバーの仕様書に目を通したマッドは、くだらない憶測を立て始めている若い部下達にそう一喝すると、自分の端末から部下全員の端末へと渡されたデータを転送した。
 それを受け取った部下達が、仕様書に食いつくように読みふけっているのを確認したマッドは格納庫に佇んでいる鋼の巨人達を見上げながら一人呟いた。
「やれやれ。Gタイプが新たに一機加えられるって言うことは、ミネルバは宇宙には戻らずに地球で任務、しかも激戦区へと配属って言うことなのかね〜」
 高性能な機体を回されたということの裏に隠されている思惑をおぼろげに掴みながら、マッドはやるせない気持ちになった。
 いくら高性能機とはいえ、ミネルバのパイロット達は誰一人として二十年も生きていない子供ばかりなのだ。
 高性能機を配属するぐらいならば、量産機でも良いからベテランを五人ぐらいこちらに回してくれ、とプラントにいる現場を知らない上層部に内心でそう悪態をつきながら、少しでもパイロット達の生存率が上がるように機体の状態を最高にするためにマッドはスパナを片手に、部下達へと指示を出すのだった。
 パイロットを死なせないための、マッドたち整備班の戦争が静かに、そして誇り高く始まった。


「…………そうか」
 艦長の下へと行く道すがら、レイからオーブからカーペンタリアへと移る間に起こった戦闘の報告を聞いていた。
 オーブの領海外での戦闘であったためか、オーブ軍の攻撃がなかったことに安堵しながら、セイラン家から送られたというSFSの性能と有効性に舌を巻いていた。
(うまい手だ。そのSFSの活躍で、セイラン家、いやユウナはプラントとの外交口を何とか維持することに成功したな。二枚舌外交だが、少しでも国民のことを思えばいたし方がないというのもまた事実だな)
 セイランのその生き汚さとも言える外交手腕に感心しながら、カガリは聞いたら怒ったんだろうな、と思い歩きながら、テロリストであったサトーの最後を聞き何か少し心に芯が通るような気持ちだった。
 彼は、復讐の念だけに囚われて人生を終えたのではなく、その後に続くものたちに魂の叫びを、願いを託して逝ったということがなぜかうれしかった。
 ユニウス7では父の亡霊かと思えたが、やはり彼らはただ自分達の思いに決着をつけられなかった戦争の被害者だったのだ。
 ならば、自分は新たに手に入れた剣で二度とそのような者達を見捨てないようにしようと心に誓った。
 そう、例え―
(例え、キラ、お前がもしフリーダムで俺の前に立ちはだかったとしても、俺はお前を―)
「アスラン・ザラ。艦長室はこちらです」
 自身の考えに没頭していたアスランの耳に、どこか温度を感じさせない静かな声が入ってきた。
「あ、ああ。すまない」
 慌ててそう答えるアスランを、レイは興味なさげに一瞥するとインターフォンを鳴らしアスランを連れてきたことを告げた。
 入室の許可の声を聞きながら、アスランは気持ちを引き締めるのだった。

「ようこそミネルバへ」
 歓迎の言葉を口にするタリアに敬礼をしながら、アスランは自分を探るような視線に内心苦笑した。
 格納庫のような無遠慮なものではないが、それでもやはり本質を見分けようという意思を感じられる鋭いものであった。
 自分の経歴云々を考えればこの姿勢は当たり前であり、そのような姿勢をとるタリアに艦長としての責務を全うしようという姿勢を見ることが出来るので、そのことに頼もしさを感じてもいた。
「認識番号285002、特務隊フェイス所属、アスラン・ザラです。只今着任いたしました」
「着任を認めます」
 その後、渡されていた命令書と辞令、紋章を渡したアスランに、タリアはどこか呆れた口調で確認の言葉を口にした。
「上は何を考えているのかしらね。あなたをフェイスに戻し、最新鋭の機体を与えてこの艦に寄越し……その上私までフェイスに?」
「………」
「それにこの命令書。一体何を考えているのかしらね、議長は」
 呆れたように命令書に目を通したタリアは、後ろに控えていた副長のアーサーに手渡した。
 その命令書をいぶかしんで読んだアーサーは、あまりの内容に驚きの声を上げてしまった。
「何ですかこの命令は?!我々がスエズの支援に迎え、ですって?それはちょっと……」
 スエズは現在、連合の制圧から独立しようとするレジスタンス活動がもっとも活発な地域であり、幸か不幸かユニウス7の破片の被害がさほどなかったために独立の気炎が消えることなく燃え続けている、地上ではもっとも危険な地域でもあった。
「ミネルバは宇宙艦であって地上艦ではないんですけどね」
 アーサーの口ぶりの通り、いくら最新鋭の艦だとはいえ、ミネルバの全能力をフルに使いこなすことが出来るわけではない場所での運用に一体どのような意味があるのか、少しでも艦の性能を理解しているものには首を傾げずにはいられない命令であった。
「まあ、上が何の意図を持っているのかはわからないけど、こちらの準備が整い次第ここを出ることにはなるわね」
 そう告げるタリアの言葉を聞きながら、アスランは議長の意図をおぼろげながら予想していた。
 セイバーを授与するときに議長が口にした『かのアークエンジェルのような活躍を期待する』という意味の言葉を考えれば、議長の狙いは―
(戦意高揚のためのプロパカンダ、か?いや、それならばレジスタンスへの支援なんて必要ない………ん?レジスタンス?地球の、ということはナチュラルだよな。……コーディネイターがナチュラルの支援?……コーディネイター側からナチュラル側に歩み寄るということか!そう考えるとさしずめミネルバは解放の女神にでもするつもりなのか?)
 朧気ながらプランと上層部の目的が想像できたアスランはその政治的配慮に驚いた。
 元来、コーディネイターはその遺伝子を優秀なものへと変えたという自負からか、遺伝子に何らかの手を加えていないナチュラルに対して格下に見る姿勢がある。実際コーディネイトをした者の方が比較的優秀な結果を残している事例が多いためにそのような錯覚を起こしているのだが、そのため、排他的な態度でナチュラルを見下し、それに反感を覚えるナチュラルがコーディネイターを憎む、という悪の循環関係が成り立ったために現在の困難な世界情勢になってしまっているのは自明の理であった。その結果が二年前の戦争である。
 それを踏まえた上で、今回のレジスタンスの支援活動に一体何の意味があるのかというと、先日地球規模で起こった天文学的な人災であるブレーク・ザ・ワールド。その実行犯はプラントとは関係ないとは言えコーディネイターが起こしたのは曲げようのない事実である。そのため混乱から覚めた地球側の市民の間からコーディネイター排泄運動がより深刻になってしまう可能性が高い。それを押さえるためにプラント政府は惜しげもなく被災地へ支援物資を送っているのだが、それでもそう簡単に人の感情は抑えられるものではない。
 そんな時に連合の制圧から独立しようとするレジスタンスに手を貸す。プラントの得られる旨みはそうないが、レジスタンスに手を貸すことでそのレジスタンスからコーディネイターに対する偏見や概念を改革しようとしているのではないだろうか。
 いくら情報伝達手段が進歩しようが、直接人の口から伝えられた情報の方が人間は信じやすい。それが例え嘘であろうと、口コミという概念で皆信じてしまうものだ。しかも、今回のスエズ支援は、連合の圧政に苦しんだ現地人達が起こした抵抗運動であるので、その支援活動が成功した暁にはレジスタンスに参加した人間の口から直接その周囲の町や知り合いに作戦の展開などの報告が伝えられ、そこで一言「ZAFTのおかげで―」「コーディネイターたちの手伝いがあって―」「コーディネイターのやつらは思ったよりも良いやつらだった―」というのがあれば、意識改革の第一歩として成功することになる。
 現在の地球連合の上層部は、アズラエル亡き後でも根強いブルーコスモスの影響力があるために未だにコーディネイター排泄の思想に染まっており、その影響力のある地域ではコーディネイターが生きることが出来ずにいる。だが、その地球連合から独立しようとしている地域を手助けすれば、そこを切欠に思考統合されているナチュラル社会に改革を起こせる可能性が生じることになる。
 その支援の結果が出るのは今日明日ではなく、十年、二十年先のコーディネイターたちへの未来を守るための種を植えようとしているようにアスランには思えた。
 ナチュラルとコーディネイターの融和を目指していたシーゲル・クラインの後を継いだと言われているデュランダル議長ならば、このような深慮遠謀な思惑を持ってのスエズ支援に思えてアスランは仕方がなかった。
 だが、そのような思惑を持っている人物がプラントのトップにいることに、そしてそのための行動を起こそうとしていることにアスランは小さな感動を覚えていた。
 アスラン自身は気づいていないことだったが、アスランの内心ではオーブという国、いや、カガリの言う理念という絵に描いた餅と、キラたちの意味不明な行動に嫌悪と呆れを感じており、心の平安を求めるために自分のろそうに近い考えと行動を起こしているデュランダル議長へとその心は僅かにだが傾き始めているのだった。
「さて、アスラン。貴方がフェイスとして乗艦するということは、戦闘時のMSの指揮はすべて貴方に任せることになるわ。うちの部下達のこと……よろしく頼むわね」
 自身の思考に埋没しかけていたアスランの耳にタリアの声が届いた。
 慌てて思考を戻し視線をタリアに向けると、そこに浮かんでいたのは軍人としてではない、まるで母親のような顔であった。
 その顔に亡き母の面影を感じながら、アスランは初めて上官に良い感情を持つことができ、誠意をこめて返事をした。
「わかりました」


「ふぅ〜」
 アスランとアーサーが退室した後の艦長室で、タリアは一人ため息をついた。
 アーサーとアスランには見せていなかった命令書とは別の紙がタリアを憂鬱な気分にさせていた。
 その用紙にはこう記されていた。
『万が一アスラン・ザラが再び我が軍を裏切り、我が軍の最新鋭機であるZGMF−X23Sセイバーを強奪し逃亡を図った場合、貴君の判断でその機体ごとの爆破を行うことを命ずる。なお、セイバーの遠隔自爆コードは―』
「……裏切りの代償、といえばそうなんでしょうけどね。願わくはこのコードが無駄になることを祈るわ」
 そう呟くと、タリアは先日記憶したガイアのコードと同じ要領でセイバーのそれを記憶したのだった。


「くそ!」
 インパルスは迫り来るビームをよけながら、Gイーグルに乗っているガイアに向けライフルを放った。
 その一撃を跳びながらMA形態になり回避したガイアの斬り帰しのビームブレードをシールドでいなし、至近距離の一撃を放とうとしたその瞬間、背後からの接近警報が鳴り響いた。その音に従いインパルスのスラスターを切り重力に任せ落下すると、先ほどまでいた空間を高速の弾丸が走り抜けていくのが確認でき、その事実に背筋に冷たい汗が流れるのを感じた。
「まったく!どうしてそこまで使いこなせるんだか!!」
 ガイアとGイーグルの連携技に感心と驚きを感じながら、Gイーグルに着地しようとしているガイアの足に向けビームを三連射する。
 着地体制をとっているためか硬直しているように見えるガイアに三連射が迫り、その内の一撃が右足を膝から打ち抜いた。右足を失い体制を崩したガイアへ向け、機体の限界以上の加速性を出しながらインパルスは近づき、左腕に装備させたサーベルをコックピットへ向け突き刺し込み、すぐにそのままサーベルを手放すと同時に鋭角にターンをし、死に体となったガイアへとビームを三連射し確実に止めを刺し爆散したその瞬間、正面モニターに「YOU WIN」の文字が輝くと同時に計器の光が消えた。
 それを確認すると、シンは額に浮かんでいた汗を拭いながら、今まで使用していたシミュレーターの席から這い出た。
「あ〜。疲れた〜」
 パイロット間の親睦と個々の能力の再確認、という名目で行われているザラ隊長最初の命令であるシミュレーター訓練を終えたシンは、開放的な空間に出たことで精神的な疲労感を感じながらそう感想を口にしていると、隣のシミュレーターから先ほどの相手であるガイアのパイロットが出てきた。
「お疲れさん。ステラ」
「……シン、強いね」
 どこか機嫌を損ねた声でそう感想を口にするステラに苦笑しながら、シンは改めてステラの姿を確認した。
 ZAFTの一般兵と同じ緑色の軍服の上着と、なぜかミニスカートという格好で―その姿を見た瞬間某バカ整備班員二人が「「絶対領域保有者が再び参上!!」」と叫んだ瞬間テンプルにいいのを一撃ずつ食らわせたのだが―立っているステラの左二の腕には、赤と黒の二色のストライプのバンダナが巻かれていた。
 そんなステラの後ろから、ステラのその豊満な女性のシンボルを触りながらルナマリアが呆れた調子で自身の感想を口にした。
「な〜に言ってんのよ。ステラも十分強いじゃない。すぐに赤になれるんじゃないの?」
 それにしてもその細さでこの大きさは反則じゃない?といいながらじゃれあう二人を見ながら、シンはその光景に言いようのない感動を覚えた。
(よかった。本当に良かった。二人が良好な関係になれて。あの時の空気のままだったらどうしようかと思ったけど、仲が良くなって本当に良かった)
 そんな感想を胸に抱いているシンの脳裏に思い浮かぶのは、ステラがミネルバMS隊に所属することになったと報告し、その場でステラが腕に抱きつきながら「シンと一緒」と笑いながら言った瞬間襲ってきた絶対零度の殺気だった。今思い出しても胃の辺りが痛くなってしまい、軽くトラウマになりそうだった。
 次の瞬間には、なぜかキレイナ笑顔を浮かべているルナとメイリンの二人に痛いぐらい肩をつかまれ、異口同音に「詳しく説明してくれる?」と尋ねられたのだった。
 その瞬間、脳裏には死んだじいちゃんがきれいな川の向こうでなぜか軍刀片手に「まだ来るな」という達筆な横断幕を背にしながら立っているという光景が浮かんでいたのだが、それは一時の幻想だとシンは思い込むことにした。
 引きつる頬を全力で押さえながら、タリアとアリアと考えたストーリーを二人に説明することにした。
 ステラは元特殊部隊所属のZAFT兵で、アーモリーワンには休暇で訪れていたのだが、その際に起こった強奪事件で頭を強く打ち記憶を失ってしまった。
 身元をカーペンタリアで確認したところそのような情報が手に入り、また有事のために一人でもパイロットは必要とつぎはぎだらけの突っ込みどころ満載の説明を艦長と共に説明をし、何とか納得してもらったのが実情ではあった。
 レイからも何らかの追求があるかと思えたのだが、予想に反してなかったのが少し不思議ではあったが。
 その後シン主催のお茶会でお互いに話をすることで、数少ない女性パイロット同士であるためにかルナマリアとステラの関係は良好なものへとなっていた。
 そんな二人の仲の良さを感動の眼差しで見つめているシンに、MS隊の隊長として着任したアスランがシミュレーターのデータを片手に近寄ってきた。
「あの二人は何をしているんだ?」
「女性特有の友情の確認ではないんですか?」
「そうなのか?」
「さあ?」
 自身の願望をこめての答えだったためにそう強く肯定できないシンに呆れた視線を送りながら、アスランはもう一つのデータであるGイーグルの仕様書に目を通しながら尋ねた。
「………まあ、いいが。それで、お前から見てSFSの性能はどうだ?」
「そうですね。一言で言えば最高ですね」
「最高?言うな」
 シンの言葉に少し呆れた調子で返すアスランに、そんなのは関係ないとばかりに自分の持つ感想をシンは口にした。
「ええ。ZAFTで同じようなもののグゥルに比べると滞空性こそ劣りますけど、加速性、旋回性、それに個々の攻撃力はグゥルよりも抜きんでてよいですからね。それらを踏まえると、攻撃をするのも移動するのも搭載されたバッテリーで賄わなくてはならない現今のMS事情を考えればGイーグルの有効性は疑いようがありません。自立飛行を廃してGイーグルに頼った飛行にすれば、それだけ稼働時間の向上にビーム兵器の使用時間の向上など、上げれば限がないぐらいの利点しかないんですけどね」
 実際に戦闘で使用し、その後もデータ取りを行ったときに感じたことをシンは口にした。
 それを聞いたアスランは、少し考え言葉を口にした。
「そうか。データはプラントに?」
「ええ。ここについた後にすぐここの整備班と一緒に解析に回しましたのでもう本国にはそのデータは届いているはずですよ」
「そうか……どう思う?」
「なにをです?」
「こんな高性能機を送ってきたオーブの真意だ」
「………オーブの真意はわかりませんが、セイラン家の思惑ならばおぼろげに」
 どこか試すようなアスランの言葉に、自分の中にあるアスラン像との差に驚きながらシンも少し視線を鋭くしながら慎重に言葉を選びながら答えることにした。
「それでもかまわない」
「まずはオーブの技術力の誇示でしょうね。このような高性能機をこちらに回してくれる、ということはこれ以上のものがオーブは保有しているのでは?とかんぐってしまう人もいるでしょうからね。そうすることでプラントにオーブは敵に回すのは得策ではない、と認識させるのが目的でしょうし、万が一オーブが困難な目にあったときの保険としてのパイプの確保ではないんですか?」
「……なるほど」
「ま、政治に疎い素人考えなんで聞き流してください」
「いや。参考になったよ」
 そう答えるアスランをシンは胡乱な視線で見つめた。
(本当にアスラン・ザラか?)
 まさかクローンなんていうことはないだろうな、と考えているとアスランはシンの視線に気がついたのかどうしたのかと尋ねてきた。
「いえ。以前と印象が変わられているもので」
「そうか?そうだな……あの時は、道が見えていなかったのが、今は漠然とだが道が見え始めているからかもしれないな」
 その道は何なのか、と尋ねたいと思うと同時に尋ねない方が良いと思ったシンはそれに触れずに右手を差し出しながらこういった。
「これからよろしくお願いいたします。アスラン・ザラ隊長」
「ああ。こちらこそ頼むな。シン・アスカ」
 二人は硬く手を握り合うのだった。


 アスランが合流して数日後、すべての修理補給を終えたミネルバは、その鋼の巨体をゆっくりと動かしながらカーペンタリアから発進した。
 そのミネルバにまるで侍従のように一隻の潜水艦が付き従っていた。
 その様子を一隻の小型艇が観測し、その情報を配信しているのを誰も気付けずにいた。


「情報間違いありません。ミネルバです」
「やっと会えたぜ、子猫ちゃん」
「何を言っているんですか」
 戦艦の艦橋で部下の報告にそう軽口を叩く仮面の男に向かい、傍らに立っていた亜麻色の髪を持つ美少女は顔に似合わない辛らつな言葉を口にした。
「あのね。もう少しこう、上官を敬うって言うことは出来ないのかね?アントゥルース中尉」
「その仮面をとって且つ、女性兵士へのナンパ活動を控えられたら一考しても良いですよ、ネオ・ロアノーク大佐」
 ネオの願いをばっさりと切り返したケーラに、その場に配置されていた女性兵の何人かが頷き賞賛の眼差しを送っていた。
 その空気を察したのか、それとも軍人魂の塊とも影で口にされているほどの軍人気質であるイアン・リーにはその空気は容認できなかったのか、軽く咳払いをして二人に注意を促した。
 それにばつの悪い苦笑を口元に浮かべながら、ネオは舞台役者のように手を広げながら宣言した。
「さて、諸君。かの女神にそろそろ安らかなる永劫の眠りを届けようじゃないか」
 その言葉に弾かれるかのように、一気に活気立つ艦橋を満足そうに見つめながらネオは誰にも聞かれることのない声で呟いた。
「ステラ。敵はとってやるからな」

「さて。そろそろこちらも本腰を入れないといけないようね」
 自室に戻り自分の端末に映るニュースデータを眺めながら、ケーラは笑みを浮かべながら呟いた。
 その画面には、花嫁を強奪する瞬間の巨大な蒼い翼の天使の姿が映っていた。
 それは、飛行の際の余波を食らいながら取材を観光したカメラマンが捉えた、オーブ代表誘拐を行う瞬間のフリーダムの姿であった。
 その画像を眺めながら、ケーラは自分が興奮を覚えるのを禁じえなかった。
 上からの情報によると、フリーダムのパイロットは以前と同じ彼であるということだ。
 その事実が果てしなくケーラに興奮を覚えさせた。
 ついに、ついにまみえることが出来るのだ、と。
 その興奮を抑えながら、ケーラは今この場にいない宇宙で興味を覚えた相手に向けて言った。
「シン。君よりもより関心のある人物が出てきたから、君には退場してもらうよ」
 そう呟き、ケーラは綺麗な、それでいてどこか恐怖を感じさせる笑みを浮かべながら愛おしそうに画像に映るフリーダムを撫でるのだった。


―後書き―
 もう二月も終わりか、と大混乱中のANDYです。
 早いですね〜。
 最近のここの回転率のよさに驚きです。
 他の作者様の執筆スピードにしっとしそうですよw
 さて、今回はステラの仲間完璧編。アスラン合流。忘れかけていた人再登場。の三本でした(いや、何か違う?)
 最近恒例になっているコードギアスの感想ですが、スザクのあの姿勢が少し鼻持ちならない気分になってきています(苦笑)
 あの、「ルールを守るためならば死んでもかまわない」と言う台詞はどうも断罪を乞う罪人の、臆病な罪人のように思えて仕方がなかったのですが。それは私だけでしょうか?
 これからの展開が気になりますね。特に復活のオレンジが!(爆)
 なんか、OPでは左腕がすごいことになっているようでしたが、彼はこれからどのような活躍をしてくれるか大変興味があります。
 そう言えば、あるブログでSEEDの映画企画が白紙になりそう、と言うのを読んだんですがどうなるんでしょうね?
 ここまで宣伝しておいて白紙になったら………信用が地に堕ちますよね。どうなるんでしょうね。そろそろ正式な情報公開を希望するんですが。

 
 さて、そろそろ恒例のレス返しを。まずは前々回のを

>R・ジャジャ様
 感想ありがとうございます。
 カガリとラクスのやったことは肯定されるべき手段ではなかったんですよね。本来は。
 これが中世やらファンタジー世界の設定ならばまだ良かったんでしょうけど、現実に近い国際情勢などを踏まえたなかでは原作のはあまりにも身勝手な行動だったんですよね。
 それに、原作のカガリの登場の仕方にも私は不満を覚えるんですよね。
 なぜにMSで登場する、と。
 ストライクルージュに乗るのは百歩譲って容認しても、なぜに完全武装で登場するのか、と。
 ジブリのナウシカのように、非武装の状態をさらして抗戦の意思がないことを表して体を張って戦闘をとめるならば、カガリの理念に対する思いの本気さが伝わるのですが、完全武装したMSのコックピットの中で顔も出さずに叫ばれても説得力はあまりにもないな、と私には思えるんですよね。
 ここではどのような展開になるのか、お楽しみにしておいてください。
 また、フリーダムとシャトルについての情報ありがとうございます。
 あ〜……どうしよう。その辺のことが頭の痛いところですね。
 何とかしてみたいと思いますのでそんなに期待しないで待っていてください(苦笑)
 これからも応援お願いいたします。

>吹風様
 感想ありがとうございます。
 ユウナは泥臭い政治家を目指してもらう方向ですので、どうか応援のほどをw
 アスランの課せられたミッションのレベルはいまさらながら気付きましたが高いですね〜w 目指せ蛇の特殊兵!!
 今のオーブの現状を表面でしか理解しなかったら、キラたちは憤って「セイランを倒そう!!」「おー!!」というのりになりそうですね。
 これから彼らはどのような行動を取るのか、どうぞお楽しみに。
 これからも応援お願いいたします。

>航空戦艦『琴瀬』様
 感想ありがとうございます。
 ユウナ、父親が見事な髪型ですからね。その因子は受け継いでいてもおかしくないのではないでしょうかw
 これからも応援お願いいたします。

>ATK51様
 感想ありがとうございます。
 悪意と善意の線引きはそれこそ千差万別であり、受け取る側の見方によって変わるまさにコインの表裏のようなものではないでしょうか。
 そのようなものを見極めるのは、やはり難しいのでしょうね。
 アスランは、これからどのような行動をとるのでしょうね。原作のように無残に散るのか、それとも……
 シンもこれから色々と活躍をすると思いますのでお楽しみに。
 これからも応援お願いいたします。

>戒様
 感想ありがとうございます。
 ユウナとアスランの会談を気に入っていただけたようでうれしい限りです。
 ステラはこれからも活躍してもらうためにザフト入隊でしたw
 シンの株は、まあ、暴落しましたがこれからまた上昇するでしょうから心配ない、よね?
 これからも応援お願いいたします。

>御神様
 感想ありがとうございます。
 原作ではどうして取り上げられなかったのか不思議な事件ですからね。
 ユウナは苦労しているんですよね、原作の方でも。
 これからも応援お願いいたします。

>マイスマン様
 感想ありがとうございます。
 キラとアスラン、シンのキャラ当て(?)は納得できるものがあるように思えました。
 仰るとおり、誰も傷つかない、特に当事者達が傷つかない戦争なんてありえません。大なり小なり何らかの傷を負うものだと思えます。
 その果てに彼らは何を見るのでしょうか。これからの展開をお楽しみに。
 これからも応援お願いいたします。

>ジム3様
 感想ありがとうございます。
 議長は、まあ、あくまでシンの邪推も含まれていますので、議長の真意は未だに闇の中にあるということで。
 これからも応援お願いいたします。

>通りすがりのオタ様
 感想ありがとうございます。
 原作のユウナは、やはり神(?)のいたずらのせいだったのではないでしょうか。
 カガリ復活の妨げになると思われたから上げておいて、堕ちるところまで落としまくったのかもしれませんね。
 これからも応援お願いいたします。

>G様
 感想ありがとうございます。
 ギアス情報ありがとうございます。そういう手段をとるのならば最初から一年でやればよかっただろうに、と思うのはわがままでしょうかね?
 ステラは、そのうち嵐を巻き起こすのではないでしょうか?w
 アスランは、私的には前作に比べ彼のおでこの面積が広がっているように見えるのでコーディネイトしきれていないのでは?と邪推しているのですが、どうでしょうか。
 これからも応援お願いいたします。

>春の七草様
 感想ありがとうございます。
 ユウナを気に入っていただけたようでうれしい限りです。
 ご指摘の件ですが、フリーダムの飛び立った瞬間に生じた噴射したナニカはやはりそれなりの被害を出しております。
 そのあおりをもっとも食らったのは、突然の事件をカメラに収めようとしたジャーナリスト達であり、彼らを下がらせようと奮闘していたオーブ軍人達です。各国の要人達ですが、フリーダムが着陸する寸前に避難を開始し、式場の様子を原作で見る限りではもともとあった神殿みたいなのですから、その近辺に避難場所があってもおかしくないのでそこに優先的に非難させられたのではないでしょうか。
 それでもすべてが収容できたわけではないので、やはりそれなりの被害が出ていますし、それが今後のオーブを縛る枷の役割もしていくでしょう。
 コズミック・イラの脅威の技術力の真相がわからないのでどうも強くいえませんが、少なくとも警備のM1を排除した際の破片などでもけが人が出ているでしょうので、オーブは色々とつらい立場になるのは避けられませんね。
 それを見たらキラたちはどうコメントするんでしょうかね。
 余談の説明、大変ためになりました。ありがとうございます。
 これからも応援お願いいたします。

>なまけもの様
 感想ありがとうございます。
 毎度の誤字指摘ありがとうございます。
 ステラの「うぇい」ですが、よく私の見るSS作品の多くでステラがそう言うのでそれが影響されたのかもしれません。その辺は一考いたします。
 ギアス、ついにシュナイゼルが登場しましたね。まだ声は出ていませんでしたけど。
 18話のスザクの行動を見ると、いままで好意的に見えていたのが少し嫌悪感を覚えてしまいました。
 ちょっと逃避しすぎてないか?と。
 今後の展開に期待ですよね。
 マオは良いキャラだったと思います。あの壊れっぷりは特に。チェーンソーは、何かのキャラのオマージュだったんでしょうかね?
 彼の脅威の回復力は、ギアスの副作用なのではないでしょうか?ギアスを与えるCCの異常回復力を考えればありえるような気もしますが、その辺の事実はいつ解明されるか。
 最近、CCはコスプレキャラに変更したようにしか思えない私は汚れているんでしょうか?w
 総督姉妹の関係は、まあ、年が十近く離れているようですからああいう関係もありなのでは?(すごく好意的に見て。私も禁断の関係か?と邪推しましたけど)
 ラクシャータさんは、声を聞くまでは江戸っ子っぽい鉄火肌の姉御タイプかと思っていただけに、ちょっと肩透かしを食らった気分でしたが、話が進むにつれこれもありか?と思えるようになっています。キセルでボタンを押す姿に、そのうち「ポちっとな」と言う姿が幻視できたんですが(疲れてるのかな?)
 井上さんと千葉さんは、地味によいキャラ絵だと思います。
 でも、おろかな疑問なんですが、千葉さんは一体いくつだ?ブリタニア侵略のときから四聖剣の一人だったとすると、あの顔で三十路超えてる?すごい童顔ですねw
 これからも応援お願いいたします。


 今回はアニメで言うところの第二クール開始前です。
 次回以降は、激動の展開になる予定です。・・・・・・・・たぶん。
 今後の展開の方、お楽しみに。 

 未だに寒い日が続きますが、皆さん体調だけにはお気をつけてください。
 では、また次回お会いしましょう。

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