インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「男三人麻帆良ライフ 第十話(GS+ネギま!)」

宮本 (2007-02-11 10:08)
BACK< >NEXT


        『男三人麻帆良ライフ 第十話』


「あ〜、こんな疲れるお使いなんてめったにないぜ・・・。」

げっそりした横島は紙袋を持って原宿を歩いていた。
紙袋の中にはゴスロリ系の洋服。エヴァンジェリンは学園都市内からでられないからと頼まれた服を買いに来たのだ
しかし雑誌で見つけたらしい店の中には女、女、女・・・。
なんで男がいるの?というような視線にナンパしようにもできない。
そして頼まれた女の子用のゴスロリ系服を手に取りレジに持っていくときにはその視線はすでに危ない人を見るような目に変わっていた。

「ちくしょー、俺だって好きでこんなの買ったんじゃないわい。・・・子供にこんなものを着せる趣味があると思われるなんて心外や。」

横島は道をトボトボと歩き、見知った二人の人物を発見した。
二人はごく自然に街を歩いているようではある。だがよく周囲を見回したりしているし、なにやら警戒しているようにも見える・・・。

「ぬう、相変わらずの素晴らしさ。やはり中学生とは思えん。だが、だが中学生なんや。前は取り乱してしまったが、ここは落ち着かねば・・・。」

ぶつぶつつぶやくうちにその二人との距離が詰まり、二人もこちらに気づいたようだ。

「よう・・・って、あれはもしや?」

横島はその二人に手を振り、そして続いてさらに別に見知った二人組み、否!カップルを発見した。
一人は明日菜が友人だと言っていた長い黒髪の将来有望そうな少女、そしてもう一人はピート予備軍のネギ・スプリングフィールド・・・。
ぶちんっと切れてはいけない血管が切れる音がして横島はぶわっと怒りの表情を浮かべる。

「あ〜の〜ク〜ソ〜ガ〜キ〜!!!!」

街中である事なんか気にせず右手に栄光の手を展開、そしてそれをネギにロックオン。
男の敵へ向け、発射準備はOK!!

「な、何をするつもりですか〜!!」

「げふうっ!!」

だが、突然のハイキックによって横島の暴挙は止められた。
そして素晴らしい手際のよさで建物の陰に引きずりこまれる。
そこには怒りの形相の桜咲刹那と、やれやれといった様子で立っている龍宮真名がいた。

「ぬう!いきなり蹴りとは、やはり通り魔!!しかしまさかスパッツとはな。ひるがえるスカートに気を取られてガードが遅れちまったぜ!やるな、百合で通り魔の嬢ちゃん。」

へへっとニヒルに笑う横島。思わず刹那はスカートの裾をおさえた。

「だから百合でも通り魔でもありません!!」

「それにしても何をしようとしていたんだい?警備員ともあろう者が街中で妙な事をするのは感心しないね。」

エキサイトする刹那の代わりに冷静にたずねる真名。

「うむ、なにやら知り合いの坊主が将来有望そうな少女を毒牙にかけようとしているのを発見したから制裁を加えようと思ってな!」

「・・・知り合いの坊主?毒牙?制裁?」

「ネギっていうんだけどな。ほれ、あそこで黒髪の将来有望そうな少女と二人で一つのジュースを飲んでいる!!わいだって数えるほどしかデートなんてした事ないのに子供にデートなんて早すぎる!そんな子供修正してやる〜!!」

横島が指差す先には机をはさんで向かい合い、二つのストローを使って一つのジュースを飲んでいるネギと木乃香・・・。

「大丈夫だ。あの二人はそんな関係ではない・・・はずだよ。」

「なんでそんな事がわかるんや?」

「黒髪の方は私達のクラスメート。面倒見がいい子だから子供先生を放っておけないんだろう。ネギ先生の方は知っているんだろ?うちのクラスの先生さ。」

「そうかー。先生っていい仕事なんやなー。俺も学園長に頼んで大学部の先生とかにしてもらおうかな〜。」

横島はあごに手を当てて考え始める。それを見て少女二人は顔を見合わせた。

「・・・それは麻帆良の平穏のためにも私達は全力で阻止しないといけない気がするね。」

「ああ。後で学園長に注意するようメールを送っておくか?」

「お、そういえばスーパー中学生な嬢ちゃんと通り魔の嬢ちゃんはなにやってるんだ?」

「ス、スーパー中学生って・・・。私は龍宮真名という名前があるからそれで呼んでくれ。」

「私は通り魔ではありません!桜咲刹那!桜咲刹那です!!」

知らない間にスーパーと認定されていた真名は冷や汗を流し、度重なる通り魔扱いにこれはまずいと思った刹那は選挙活動のように己の名前を連呼する。

「お、おお。分かった。真名ちゃんと刹那ちゃんだな。俺の事は知ってると思うが横島忠夫だ。よろしく。で、何やってるんだ?ま、まさかデート!?」

「違います!!」

「そうだ、違うぞ。刹那が刹那のお嬢様が学園都市外に出るのを心配して、私は暇だったから買い物ついでにそれに付き合っているのさ。」

「なに!?刹那ちゃんのお嬢様?そういえばエヴァちゃんが・・・。やはり刹那ちゃんは百合。」

「だから、百合でも通り魔でもありません!!私のお嬢様ではなく、私が護衛しているお嬢様です!」

ぜえぜえと刹那は荒い息をはいた。
普段の彼女らしくない様子に真名は苦笑する。

「ペースを乱されまくっているな。」

「こ、こんなタイプの人と出会うのは初めてで・・・。」

不覚!とばかりに刹那は額をおさえて頭を左右に振った。

「もったいないな〜。刹那ちゃんも二、三年すればすごい美女になるだろうに。」

「な、なあ!?」

男性からそのような褒められ方をされるのに慣れていない刹那は真っ赤になる。
横島にとって女性を褒めるという事はライフワークでもあるので恥じらいなどない。

「しかし護衛か〜。大変やな。学園長のジジイにでも頼まれたのか?」

「え?あ、いえ。依頼されたのは別の方で、それにお嬢様の護衛をしているのは私の希望でもあります。」

「ふ〜ん。じゃああの二人がデートじゃないっていうんなら刹那ちゃん達が一緒に買い物をすればいい!!それなら護衛もしっかりできる!!」

いい事を思いついた!邪魔してやれ!!とばかりに言う横島。ふはははと笑い、邪魔してもらう気満々だ。
デートではないと聞いても自分以外の男が女といちゃいちゃしているのはやはり癪に障る。

「私は、お嬢様をお守りできれば満足ですから。それも陰ながらひっそりと・・・。」

うつむいて答える刹那に横島は首をかしげる。
自分も後方でネクロマンサーの笛を吹いていた氷室キヌを護衛していたが、すぐ側で護衛していた。
依頼人が護衛対象になったりする依頼では依頼人を守るためにできれば誰かがついていたし、美神にも護衛の心得えをみっちりと叩き込まれていたので刹那の考えが理解できなかったのだ。

「え〜っとさ、護衛が仕事っていう事は護衛対象に何かあったら仕事失敗。護衛対象になにかあったらまずいから護衛の時は何が起きても対処できるようにすぐ側で。まあ受け売りだけどさ。」

「・・・魔法の事がばれるのは避けなければいけませんから。」

刹那はだから側にはいれないのだと言った。

それを聞いて真名は詭弁だなと苦笑する。魔法使いであるネギがすでに木乃香とは同室だし、同じく同室の明日菜には魔法がばれている。
本当にばれるのを避けなければいけないのならば側にいてネギから魔法が漏洩するのすら防いだ方がいい。
やはり過去になにかあり、守りたいお嬢様の側にいれない・・・というのが真相だろうと真名は悩みを内に溜める友人を見てため息をついた。

「そっか。魔法がばれたらおこじょにされるらしいからな〜。そりゃまずいか。」

ナンパもできないしな!と言う横島を真名はじと目で見て刹那はもう追求がないだろうとホッとする。

「でもさ、あの子を守るのが君の希望だって言うなら何かあった時に後悔しないやり方を選んだ方がいいぞ。後でどんなに泣いたって、悲しんだって・・・時間は戻らないから。」

そう言った横島の顔はさっきまでとは違う真面目な顔で、その言葉には非常に説得力があり、刹那と真名は思わず横島の顔をじっと見つめた。

「へえ、そんな顔もできるんだね。」

真名の見直したといわんばかりの言葉に横島は照れくさそうに頭をかく。そして自分のポケットの中で携帯電話が鳴っているのに気づいた。

「それも受け売りかい?」

「いや、実体験。俺今日エヴァちゃんに買い物頼まれていたんだよ。なんか催促のメールがきているみたいだから行くわ。」

真名の問いに簡潔に答えると横島は手を振って去って行く。

「よ、横島さん!」

「ん?」

その横島を刹那が思わず呼び止める。

「あの、横島さんは後悔したんですか!?」

自分も後悔するのだろうか?
いや、もし守れなかったら必ず後悔するだろう。そう思い刹那はたずねた。

「したぞ。ギリギリの状態で考えて、悩んだ。それで後悔するのは後だって決めて行動したんだ。
でも考えも、悩みもせず人任せにしていたらもっと後悔してたと思う。
あ、そうそう。二人とも坊主のクラスなら修学旅行、俺も一緒に行く事になったみたいだからよろしく!」

横島は今度こそ人ごみの中に消えて行った。

「ただの変な男ってわけじゃないみたいだね。」

「・・・ああ。」

真名の言葉に刹那はうなずく。
後悔するのは後・・・。
もし、もし木乃香を守れなかった時、その後する後悔に自分は耐えられえるのだろうか?
刹那はうつむいて考えた。

「まあ、唯一つ分かるのは・・・。」

「わかるのは?」

「修学旅行、いつもより余計に騒がしくなるだろうね。」

真名の言葉に刹那は『あ!』と声を上げる。
いつものメンバーに加わるあの変な男・・・。そう、足し算ではなく掛け算。予測不可能な未来に刹那は流れる冷や汗を止められなかった。


「ちい!数多いな〜。今回の仕事はちょっとめんどいわ。」

黒髪の少年は山の中を走っていた。
そして振り向きざまに放つ気弾で追跡者達を撃つ。
追跡者達は下級の鬼型の式神。

今回の少年の仕事はある場所にある結界の祠を壊してくる事。
だが祠を壊し、任務完了と思ったところでトラップであろう式神達が出てきたのだ。

「ここから逃げるにはあのでかぶつをやっちまわんといかんやろ?でもこの小鬼達がうっとおしくってあいつに集中できんし・・・。」

少年がチラリと目をやる方向にはこちらへ向かってくる五メートル程度の大きさの鬼の式神。
結界にとらわれているらしく、ある程度走ると壁のようなものにぶつかってしまう。

「やっかいやな。」

結界は壊せる。ただし、時間をかけて攻撃を繰り返せば。
だがその時間をかけている間に小鬼が群がってきて集中を乱されるだろうし、さらに大きい鬼の式神に追いつかれる。
先ほど分身して分身体に時間を稼がせ、結界を破壊しようとしたのだが一所に留まると大きい鬼の式神が口から魔力を放って攻撃してくるのだ。
やっかいな事このうえない。

少年は切り札を使うかと舌打ちして、聞き覚えのない声に首をかしげた。

「『主よ、精霊よ!我が敵をうちやぶる力を我にあたえたまえ!!願わくば悪を為す者に主の裁きを下したまえ・・・。アーメン!!』」

朗々と続いた声が終わると同時に広域に広がる稲光が小鬼の式神達を襲う。
ギイギイと甲高い声を上げて全ての式神は消え去る。

「な、あんな広範囲に散ってるのを一瞬で!?」

少年は驚き、目を見開くと声の主を見てさらに大きく目を見開いた。

「やあ、怪我はないですか少年。そしてあなたは神を信じますか?」

「はあ!?」

声の主は牧師が着ているようなダブダブの服を着て、首から十字架のついたネックレスを下げている。
しかしもっともおかしいのは顔。口元に十字架のマークがあしらわれた大きなマスクをして隠しており、頭にはなぜか皿を載せている。

「私は神の戦士、ザビエル・ピエトロ!・・・今はザビエルとおよび下さい。」

「な、なんで頭に皿?頭に皿っていったら河童やろ?」

「は?日本でザビエルといったら頭に皿と友人に聞いたんですが。」

「・・・騙されてる、よーわからんけど絶対騙されてるで。」

少年は友達は選べとつぶやくと額を抑え、そして思い出した。

「そうや!小鬼が消えてもあのでかぶつが消えんとまた新しい小鬼が出てくるんや!」

そう言って大鬼の方へ向かおうとして、その肩に手が置かれた。

「なんやザビエル!うっとおしい小鬼をやってくれたんには礼言うわ。でもまだ終わっとらんのや。」

「いえ、終わりますよ少年。あなたは神を信じますか?」

何かこだわりがあるのかまた神を信じますか?と聞いてきたザビエル。

「え〜い放してくれ!俺は神なんか信じとらん!!」

捨て子だった自分、幼い頃からヤバい仕事で生計を立てていた自分。
神など信じるはずがない。

「それは残念です・・・。」

ザビエルは本当に残念そうにつぶやく。だが少年の肩から手をどけようとはしない。

「しかし、あなたは今日からヒーローを信じる事にはなるかも知れませんよ?」

そういってザビエルはすっと一方向を指差した。
その方向は大鬼の式神がいる場所。

「・・・な、なんやあれ?殴っとる。」

大鬼が振り回す太い腕、口から吐き出す魔力。その全てを避け、受け流し、そこにいる存在は己の何倍もある大鬼を殴っていた。
その姿はまさにヒーロー!
真っ赤な全身タイツに身を包み、身体のあちこちにプロテクターをつけた人影を見て少年はぽかーんと口を開けた。


「うう、こんな格好・・・。」

「仕方がねえだろ?京都で調査をする時はこの格好って決まっちまったんだから。」

目頭を押さえるピートを雪之丞は慰めた。

京都で調査をした際に相手方にばれるわけにはいかない。調査の時だけでも変装しようという事になったのだが横島が余計な事を言ったのだ。
『誰もがおかしいと思う格好をしておけばみんな近寄らないから近づいてくる奴、こちらを警戒する奴を警戒すればいい。』
まあそうかと思っていやいやながらも二人は衣装を選んだ。
だがお互いに自分より相手をおかしな格好にしようと思って選んだため二人とも妙な格好になってしまった。

ピートは神父服にマスク、そして頭の上の皿。
雪之丞は真っ赤な全身タイツとプロテクター。額にはなぜかカブト虫を連想させる角。

お互いにニヤリと笑ってお似合いだと言ってやった。

だが実際にこの格好で歩くと効果は予想以上。
京都市民は確かに警戒して距離をとり、近づいてこない。
だが誰もが怪しいものをみる目でこちらをみているためにどの視線が敵の視線かなど分からないのだ。

「意味ねえんじゃねえか?」

「いや、それでも素性を隠すことにはなっているからね。・・・まあいいんじゃないかい?新しいのを買って無駄なお金を使うことなど主が許さない。」

無理もないがピートは根っからの貧乏性になっている。
そして金の事を言われると雪之丞もうなずかざるをえない。やはり金は大事だ。

「おっと、この辺りだ・・・ってこれは結界?」

「ああ。この辺りには修学旅行中にネギ君が来なければならないしね。何か仕掛けられている可能性もある・・・。」

「調べるか?」

「当然。バンパイア・ミストで侵入しよう。」

そう言ってピートは雪之丞に近づくと己のバンパイアとしての能力を使った。
二人の姿は霧となり、結界の綻びを探してそこから結界内に侵入する。

「・・・あれは、鬼?」

「魔物か?それとも気配が強くないから式神か?まあどっちにしろ俺が行くぜ!」

「そうくると思ったよ。じゃあ僕は誰かいないか探そう。何かあってもバンパイア・ミストで逃げられるからね。」

「おう。じゃあ行くぜ。」

雪之丞は大きい鬼がいる方向へ走って行った。
ピートは霊力を耳に集中し、聴力を強化する。

「・・・近いな。それにこっちに来る。」

まずは様子を見ようと木の陰に隠れるとガサガサと地面を踏んで多くの何かが走ってくる音とキイキイという甲高い声が聞こえた。
そしてピートの視界に入ってきたのはまだ幼いネギと同い年くらいであろう少年。

「あの子、人間じゃないな。」

まあとりあえず助けようとピートは祝詞を唱え始めた。
魔物であるにせよ式神であるにせよ、神聖なエネルギーの効果は高い。低級なものならば一発だろう。

「『主よ、精霊よ!我が敵をうちやぶる力を我にあたえたまえ!!願わくば悪を為す者に主の裁きを下したまえ・・・。アーメン!!』」

朗々と祝詞を唱え、広域に広がる稲光を発すると小鬼の式神達はギイギイと甲高い声を上げて消え去っていった。
依り代であろう紙が焦げてぱらぱらと地面に落ちる。

「な、一瞬で!?」

少年が驚き、大きく目を見開いてこちらを見てきた。

「やあ、怪我はないですか少年。そしてあなたは神を信じますか?」

この格好の時は神の教えを広めようとする怪しい宣教師という設定だ。
決め台詞はあなたは神を信じますか?ということになっている。
京都に来る途中雪之丞とともにお互いの設定を決め合った。

「はあ!?」

少年は少し後ずさる。

「私は神の戦士、ザビエル・ピエトロ!・・・今はザビエルとおよび下さい。」

「な、なんで頭に皿?頭に皿っていったら河童やろ?」

「は?日本でザビエルといったら頭に皿と友人に聞いたんですが。」

雪之丞は昔学校で習った気がすると言って昔日本に神の教えを広めていた人物の事を教えてくれたのだが何か間違っていたのだろうか?

「・・・騙されてる、よーわからんけど絶対騙されてるで。」

少年は友達は選べとつぶやきこめかみを抑えた。
そしてハッとしたように叫ぶ。

「そうや!小鬼が消えてもあのでかぶつが消えんとまた新しい小鬼が出てくるんや!」

そう言って大鬼の方へ向かおうとするのでピートはその肩に手を置き、引き止めた。

「なんやザビエル!小鬼をやってくれたんには礼言うわ。でもまだ終わっとらんのや。」

「いえ、終わりますよ少年。あなたは神を信じますか?」

先ほどは答えてくれなかったのでもう一度神を信じますか?と聞いてみる。

「え〜い放してくれ!俺は神なんか信じとらん!!」

「それは残念です・・・。」

本当に残念だ。
だが少年の肩から手はどけない。あそこはもうそろそろ終わるだろうし、彼は邪魔されるのを嫌うだろう。

「しかし、あなたは今日からヒーローを信じる事にはなるかも知れませんよ?」

とりあえずいたずらっぽく言う。こちらは自分の設定を全うしている。彼にも設定を全うしてもらおう。
すっと一方向を指差す。

「・・・な、なんやあれ?殴っとる。」

少年はぽかんと口を開けてつぶやく。

大鬼が振り回す太い腕、口から吐き出す魔力。その全てを避け、受け流し、伊達雪之丞は己の何倍もある大鬼を殴っていた。

ピートは冷や汗を流す。
自分なら距離をとって様子を見ながら攻撃するだろうし、横島は・・・分からない。彼はどういう闘い方をするのかは全く分からない。
むしろ闘わずに逃げるかもしれないと思い額を押さえた。

少年とピートの視界の先では雪之丞は大鬼の腕をかわし、口からはく魔力をかわし、その口の中に己の腕を突っ込んで雄たけびを上げた。

「ダテ・ザ・キャノン!!」

どんっ!!と雪之丞が発した巨大な霊波砲が大鬼の口内を突き破り、鬼の姿は消え去った。
そして辺りに木屑が散らばる。

「木?木を依り代にした式神か?」

「・・・一発で。でも殴る必要ないやん!」

感心するピートをよそに少年は突っ込んだ。

「さて、少年。何をやっていたんだい?」

少年の突っ込みに我に返ったピートはたずねる。

「ああ、この辺で修行しとったんやけどなんや変な祠壊してもうてな。そしたらあのでかぶつと小鬼が出てきたんや。」

「・・・そうかい。」

疑わしくはあるが、この少年が嘘をついているという証拠もない。
ピートはとりあえず納得しておく事にした。

「大丈夫か少年!!」

そして相方の声がして、ピートは少年の頬が引きつるのに気づいた。

「俺の名は人呼んで熱血闘士、ダテ・ザ・ヒーロー!!気軽にヒーローと呼んでくれ。」

パパーンッと雪之丞の背後でピートは花火を鳴らし、満足げにうなずく。
雪之丞の額のカブト虫を連想させる角がピクピクと動いた。

「な、何なんや?俺はなにか悪い夢でも見ているんか!?」

いやいやと首を振る少年。

「ザビエル、どうしたんだこの少年は。」

「低級な鬼の式神達に追われていただけだ。この少年、なかなかの腕前だよ。しかしなぜこんなに困っているのかは理解不能だ、ヒーロー。」

顔を見合わせ、会話する変人二人。
少年は気を取り直して顔を上げた。

「ま、まあええわ。助けてくれた事には礼を言うで変な兄ちゃんら。」

「うむ。しかしなかなかの腕前だというのならば君も我々の軍団に・・・」

「入らんわい!!」

「ヒーロー、性急過ぎるぞ。彼ももう少し大人になれば自分から入団を決めてくれる。」

「んなわけあるか!ああもう、今回の仕事は散々や!!」

ちっと舌打ちをする少年を見てピートと雪之丞はニッと笑いあった。

無意識に言ったであろう「今回の仕事」という言葉。少年はここには仕事で来たらしい。

この場所での今後の方針が決まった。少年の仕事というのがなんだったのかという事と先ほどの鬼の式神についての調査。
そんなに時間はかけられないが簡単に調査をしておいた方がいいだろう。
こういう相手は会話をしていれば色々話してくれるから楽だ。

「それにしてもさっきの大鬼と殴りあっとったけど、最後は一発だったやん。殴りあう必要あったんか?」

じと目で雪之丞を見る少年。
雪之丞はそれを聞いて信じられない!というように目を見開いた。

「少年、名前は?」

「・・・犬上小太郎や。」

「そうか。少年!」

「って、なんで名前聞いといて名前呼ばんねん!!」

うがーっと歯をむく小太郎。
ピートはあっさり名前をばらした事から偽名か、もしくは少年が特に名前を知られて困るような存在では無い事を記憶に留めておく。

「ふん。男のなんたるかを知らぬ者など少年で十分だ!!」

顔のマスクから覗く目をくわっと見開く雪之丞。

「なんやて!それは聞き捨てならんで兄ちゃん!!」

男である事を旨とする小太郎は雪之丞を睨むが雪之丞はどこ吹く風だ。

「強そうな者を見つけ、それが敵であったなら殴りあいたい、相手と己の力を確かめたいと思う。それは男として当然であろう!」

ガーンッとショックを受ける小太郎。
ピートは苦笑した。役に入り込んでいる感があるが考え方自体は雪之丞そのものだ。

「くっ・・・。そ、その通りや兄ちゃん。いや!ダテ・ザ・ヒーロー!!」

次の瞬間ピートの頬が引きつった。
・・・この子もまさか雪之丞(戦闘狂)系統か?

そしてピートの考えは当たっていた。

「ヒーロー、俺と男と男の勝負や!男を自認するならば断らんやろうな!!」

「へ、おもしれえ!俺に名前を呼ばせてみろよ坊主!!」

ヒーローの役設定からすっかり伊達雪之丞に戻っている。ピートは少し考え、ため息をつくと口を開いた。

「ファイッ!!」

どこからか箸を取り出し、ピートは頭の皿を叩いた。
カーンという音でなくカチンッという音だったのでピートは残念そうに顔をしかめた。


先手は小太郎。

気を込めた拳を振るい、全てを腕でガードされる。
ちいっと舌打ちをして小太郎は軸足を固定、身体のひねりを加えて強力な蹴りを繰り出した。

「ふん!なかなかいい身体能力だ。それに我流のようだがかなり実戦的な体術、やるな少年!!」

「驚くのは、これからや!!」

小太郎は素直に雪之丞の力量に驚いていた。
拳、蹴り、全てを避けるのではなく完全にガードしている。その気になれば反撃をしてくるだろう。
そう、雪之丞がしているのは反撃にうつるためのガード。
それに気づいている小太郎はしゃがみこみ、身体を地面に沈みこませた。

「これでどうや!!」

しゃがみこんだ状態からその勢いを利用して体当たりするように低い体勢で頭から突っ込む。

「おおっと!」

だが雪之丞はそれを前方宙返りでかわした。

「さあどうした坊主。」

「強いな兄ちゃん。卑怯とは・・・言わんやろうな?」

そう言って笑う小太郎の影から黒い犬達がたくさん現れる。

「言うと思ってるのか?」

そりゃあ俺も見くびられたもんだと雪之丞も笑う。

「行け!!」

小太郎の下から走る犬達。小太郎は隙ができたら自分も突っ込もうと前傾姿勢になる。
だが相手は動く気配もなく四方八方から犬に襲われ・・・

「うらああああああ!!!!」

体中から発された光で犬は消えた。

「な、なんやて?」

「そこまで威力はねえんだがな。この程度の小技になら効果ありだ。さあ、これで終わりか?もっと楽しませてくれよ。」

マスクの下でよく分からないがニッと笑う雪之丞。
小太郎はばっと印を組み、分身を作り出す。そして十人の小太郎が雪之丞に向かって行った。

「集団で来ても一度に攻撃できる人数は限られる!それに大体こういう分身は・・・」

「「「「「ぐああああああ!!」」」」」

腰を落とし、拳を構えた雪之丞は最も直線的な攻撃である突きを何発も放つ。
そしてその突きをくらった分身は消えていき、分身に紛れていた小太郎もそのうちの一撃をガードしたものの威力を消しきれず吹っ飛んで行く。

「・・・大した事ない攻撃でこういう分身は消えるんだよ。」

「くっ・・・。」

勝てない。
小太郎は思って歯噛みする。
それと同時に肉弾戦でこれだけ強い相手と出会えた事にわくわくしていた。
だが、次の雪之丞の言葉に顔をしかめる。

「おいおい本気出せよ。まだまだそんなもんじゃねえだろ?」

「俺は本気で・・・。」

「人外の力は使わないのか?」

ピシリと体が固まる。

「戦ってるとこみりゃ分かるんだよ。俺らもそっちが専門だからな。でも気にしないでいいぜ。それもおまえの力だろ?」

「・・・。」

小太郎は何も言わず雪之丞を睨む。できれば使いたくないのだ。

「使えよ。おまえが今まで誰に何言われてどんな目にあってきたか何て知らねえけどよ、次俺らが会えるか何て分からねえ。
それに今おまえの目の前にいるのは、おまえが本気出しても勝てない相手なんだぜ?それで全力出さずに負けたら後悔するぞ。」

「は!上等や兄ちゃん!!そっちこそ後悔すんなや!!」

雪之丞のふてぶてしく、不敵なまでの態度。そして鍛えてきた己の力が人外である小太郎の本気より上だと言い切る自信。
小太郎はそれに歓喜し、学生服の上着を脱いで投げ捨てた。

目に見えて小太郎の様子が変わっていく。
爪が伸び、鋭くとがる。髪が白くなり、長く伸びて風になびく・・・。

「へえ、獣化か。すげえじゃねえか。」

感心したような雪之丞の声。それが終わるか終わらぬかの間に小太郎は間合いをつめ、手を振るう。

「うおっ!すげえ。」

小太郎の手が地面をえぐる。
発される気の力もかなり増しているのを見て雪之丞は嬉しげに目を輝かせる。

「らあ!!」

そのままあいている方の腕で攻撃がくると思っていた雪之丞だが小太郎は時間がかかる方の地面をえぐった手を振るった。
同時に飛んでくるのはえぐった時に握ったであろう土・・・。
それを目に浴びそうになり雪之丞は左手でガードする。

「うらあ、食らえ!!」

渾身の力を込めた右手が雪之丞の左手のガードごと顔面を殴りつけ、吹き飛ばす。
左手の部分の布はやぶれ、雪之丞の顔の布もボロボロになった。

「・・・くっ、やるな。俺のコスチュームが破れちまった。」

「僕の選んだ角が!!なんてパワーだ!」

審判・・・ピートが慌てて角を回収する。
額にあったカブト虫を連想させる角は折れて、ボロボロだ。

「・・・真面目なとこなんやないのか?」

思わず突っ込む小太郎は破れた布越しに雪之丞がニッと笑ったのを見た。まだマスクがあるためはっきりとは見えない釣り目で黒髪の男の笑顔・・・。
そして雪之丞の体が光り、プロテクターが弾け飛ぶ。
代わりに全身を包んでいたタイツを別のプロテクターのようなものが下から押し上げる。
一瞬見えた男の顔は黒いマスクで覆われ、甲冑のようなものが頭部を覆った。

「真面目だぜ。さあ、やろうか・・・。」

マスクで顔は見えない。
だが雪之丞が闘うのが楽しいとでもいうように笑ったのがわかる、そして小太郎は同じく楽しげに笑い返した。


「それまで!勝者ダテ・ザ・ヒーロー!!」

ピートの声が響く。
獣化がとけ、はあはあと荒い息をはいて地面に転がる小太郎。
それを雪之丞が見下ろしていた。彼のタイツはさして破れておらず、左手と頭以外は無事だ。
獣化した小太郎と魔装術を使った雪之丞。二人ともパワーを上げたが雪之丞の方が上だった。

「男と男の勝負はどうだった?」

「・・・ふん。今回は負けておいてやるわい。」

小太郎は目元を隠す。

「こっちに手の内を全部出させるまで自分は取って置きを残しとったんやないか。」

「当然だろ?」

雪之丞の言葉に小太郎はむすっとした。
確かに戦いで切り札を残しておくのは当然。だがそれでもムッとくる。
しかしその悪い気分も次の雪之丞の言葉で霧散した。

「俺の方が、強ええんだからよ。」

それが当たり前、さも当然のように言う。
小太郎は目元を手で隠したまま目を見開いた。
そして口元を緩める。
生きてきた時間、戦いというものにかけてきた時間の差。
今までも何度か感じる事はあったがこれだけ納得させられてしまった事などあっただろうか?
納得してしまった事が悔しくて、しかし自分が目指すべきものが見えたような気がしてなんだか嬉しい。

小太郎は二人に顔を見られないようにゴロリと転がった。

「じゃあ僕達は行こうかヒーロー。」

「そうだな、ザビエル。」

二人の声が聞こえてくる。
二人が行って少ししたら自分も行こう。そう思った小太郎の耳に別れの声が聞こえてきた。

「じゃあな、楽しかったぜ。縁があったらまた会おう。おまえはまだまだ強くなりそうだ。」

ガバッと立ち上がる小太郎。
遠くにおかしな二人組みの背中が見えて、小太郎はすうっと息を吸い込んで叫んだ。

「おう!強くなってやるわい!!」

「楽しみにしてるぜ、犬上小太郎!!」

間をおかず帰ってきた返答。
小太郎はぽかんと口を開け、そして嬉しそうに笑った。
自分が強いと認めた相手に呼ばれた名前・・・。
それは仕事の依頼者に呼ばれた時とは比べ物にならないほどの意味があった。

「・・・もっとや、もっと認めさせてやる。」

あの強い男に自分の強さを、力を、存在を認めさせてやろう。
小太郎は誓い、拳を握り締めた・・・。


「ほら!もっとだ、もっと考えろ!!『一時期解呪』でどうだ?一時期だから『完全解呪』より出来やすいんじゃないか!?」

「だからそれは五文字だろ!?四文字は安定してできるようになったけど五文字は無理だって。」

「ぬう!くそ、どうすればいい!明後日には京都だぞ?日本の古都だぞ?ジジイも封印状態で大人しくしているなら行ってもいいって言ったんだぞ?」

眼鏡をかけたエヴァンジェリンは己の所有する特殊な別荘の中で漢字辞典や四文字熟語と書かれた多数の本に囲まれ、必死で調べものをしていた。

「う〜ん、難しいんじゃないか?じいさんも力任せにかけられている術だから難しいって・・・。」

「それでも行きたいものは行きたいんだ!!おまえも無い智恵を振り絞れ!!」

「え〜。」

「・・・ハカセに聞いたが、おまえ茶々丸の後継機のためにも人工知能を成長させたいらしいな。修学旅行というのは、茶々丸の人工知能の成長の大きな助けになると思うが?」

横島がぴくっと反応する。

「茶々丸は私が行かないならば修学旅行には行かないと言っている。全く、いい従者をもったものだ。おまえは・・・どう思う?」

「やりましょう、マスター!人類の夢と希望のためにも茶々丸ちゃんには京都の和服美女を目に焼き付けてもらいましょう!!」

「そうだ、その調子だ横島〜!!」

目の色を変えた横島を見てエヴァンジェリンは満足げにうなずいた。

清水寺〜、大仏〜、古き良き日本の文化〜と叫びながら本のページをめくるエヴァンジェリン。
優しくて奥ゆかしくてそれでいて夜は大胆なねーちゃんのデーター!!と叫びながら本をあさる横島。

「・・・なぜでしょう。私が修学旅行に行くのはまずい気がしてきました。」

「ケケケ、イイジャネエカ。アイツニ夢ト希望ヲ与エテヤレヨ。」

茶々丸の中に不安という言葉の意味のデーターが一気に増え、チャチャゼロが笑った。


あとがき
京都、まだ行ってません。次回は行きます。
オリジナル要素的な感じで小太郎が出陣です。
雪之丞と小太郎、結構似ている二人?と思ったりして妄想を膨らませました。


感想ありがとうございます。
レス返しです。

>遊鬼さん
今回はユッキーなんとか逝っちゃいませんでした。別の方向に逝っちゃったかもしれないですけどピートも一緒です。
ピートの出番は結局そこまで減りませんでした。ピートだからできる役目がやはりあったので一安心です。
今回も横島君は相変わらずで・・・(涙

>ジェミナスさん
オリジナリティ、小太郎が千草より早く登場ですw
ユッキーパワーアップ計画はガンガン進めたいですね。横島はエヴァのとこでパワーアップフラグゲットしてますし。
ピートもパワーアップさせて・・・と考えると修学旅行編後に書きたい事が一杯できてきます。
後は皆さんの感想がたくさんあれば執筆スピードがうなぎのぼりです(笑

>twilightさん
今回もインターバルでした(汗
戦闘狂な雪之丞、意外性の横島、そして策士ピート!みたいな感じでピートの出番を増やしたいです。
次は絶対京都へGOです!!

>ヴァイゼさん
仮契約は難しいですね〜。特に雪之丞みたいな彼女持ちには(笑
キス以外の方法が原作で提示されていないのが雪之丞の悲劇の始まりで・・・。
ピートにはピートのよさを発揮してもらいたい修学旅行です。
横島のアイデンティティーはむずかしいですね。しかししずな先生を放っておいて中学生に・・・ってのはないだろうと思うのであとは彼の信用できない理性を・・・(笑

>冬さん(5番目のレスの方)
横島の暴走を誰が止めるか・・・。下心見え見えなのは明らかで(涙
雪之丞は男(勘九郎)にほれられるくらいいい男ですからね!GSキャラは男もいいキャラしてます。

>スケベビッチ・オンナスキーさん
明日菜の尊敬ポイントがゼロになりました(笑
哀れな雪之丞に今回は活躍の場を!!キス以外の仮契約方を知りたいですよね。カモは確かに言ってましたし。
確かにナンパにむかない男ですね横島は(涙
先行組の影響はここですでに出てしまいました。これを今後生かしたいと思います。

>九頭竜さん
横島の前に雪之丞・ピートが小太郎に接触です!
京都の戦いって難しいです。エヴァ戦や超戦と違い、戦闘がマジですから・・・。妙な馴れ合いとかがなかなかしにくいです。

>冬さん(8番目のレスの方)
さらに咲き誇る薔薇の花・・・。薔薇はまだまだみんなの心の中で継続中です(笑
巫女さんがたくさんの関西呪術協会。
横島によって関係悪化したら学園長もどうしたらいいか困るでしょうねw

PS ヨコシマンのセクシーコマンドー的衣装は危ないですよね。下手したらアナコンダが・・・。

>鋼鉄の騎士さん
涙が出ちゃいます。雪之丞はすでに逃げられないところまで来てしまいましたからw
冥福を祈ってやって下さい。

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭

yVoC[UNLIMIT1~] ECir|C Yahoo yV LINEf[^[z500~`I


z[y[W NWbgJ[h COiq O~yz COsI COze