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「Fate/黒き刃を従えし者6(Fate+オリ)」

在処 (2007-02-10 00:26/2007-02-10 00:34)
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この廊下が酷く冷たく感じるのは、月明かりすら差し込んでいない為か?
この廊下が酷く寂しく感じるのは、雑音一つ響かない静謐の為か?
……なら。
何故私はこんなに悲しいのだろう?

――何処かで見た顔の少年は、その心臓を一突きにされ息絶えようとしていた。

助かりはしない。
私の力ではもうどうしようもない。
そも、私は他人の傷を癒す術を持たないのだから。
……覚悟はあったはずだ。
人を、人の容をしたものを殺す覚悟は。
それを行い恨まれる覚悟も。
でも、違う。
私は理解していなかった。
人が死ぬという事を。
どれだけその状況を思い浮かべても、実際にその状態を見たことの無い私の覚悟は。
聖杯戦争と関係ない人物がしに瀕しているところを見て、簡単に揺らいでしまう。
……これが、もしリンだったら。
恐らく私は耐えられない。
リンを失うことは、今の私には耐えられない。

「アーチャー!」

リンが追いついてきた。
私は軽く首を振って、最悪の状況を頭から追い出す。
今、リンはここにいる。
なら、私がすべき事は……リンを傷付けさせない為に戦う事なのだから。


Fate/黒き刃を従えし者


ランサーを追跡する。
感情を押し殺した声で私にその命を下すリンは、私の目から見ても痛々しかった。
自分を責めている。
そのことが判るのに、私は声をかける事も出来ない。
何を言っても、今の私の言葉はリンに届かないから。
……基本的な速度に差がある上、余分な事を考えながら行っていた追跡は。
案の定振り切られた。

『……リン。
 ごめん、振り切られた』
『そう……いいわ。
 家に戻って』
『……判った』

進路を家に変える。
と、一旦切れた念話がまたつながる。

『あと、あの子生きてるから』
『……え? でもあれ、致命傷だったはず』
『えっと……その所為で切り札なくなっちゃった。
 ごめんなさい』

……なるほど。
父の形見だというあの宝石。
アレを使ったのか。
確かにアレなら、生きてさえいれば何とかなるかも知れない。
……これからの事を考えると、決して楽観できる事ではないのに心が楽になった。
我ながら現金な性格をしてる。

『アーチャー?』
『……いい。リンがそうするべきだと思ったなら……私が反対する理由はないから』
『……ありがと』

そして、それがリンなのかもしれない。
魔術師然としながら、何処か甘い。
でも、私はそこが好き。
そんなリンだから、私を受け入れてくれたんだから。
家につく。

「ただいま、リン」
「お帰り、アーチャー」

居間で紅茶を飲んでいたリンが振り返る。
私の姿を確認すると、伏せてあったカップに紅茶を注いでくれる。

「ありがと」

一口、口に含み……
聞かなければならない事がある事に気づく。

「……リン、さっきの子は?」

そう、この場に彼は居ない。
他の部屋に寝かせたのかとも思ったけど、そんな気配もない。

「傷は治したから、今頃は家についたんじゃない?」

その返答は、つまりリンが現状を把握していない事を意味していた。
……仕方ないかもしれない。
助かったとはいえ、人が死にそうな傷を負っているところなんて、リンだって見たことなど無いと思うから。
でも。
現状は仕方ないじゃすまない。

「……それ……危ない。
 ランサーが見逃すとは思えない」
「え? ……しまった!!」

私の言いたい事を理解すると、リンは直ぐ立ち上がってコートを羽織る。

「……場所は?」
「判るわ」

言うが早いか、私はリンを抱き上げる。
俗に言う、お姫様抱っこ。

「きゃっ!?」
「……時間無いから」

抱き上げた時暴れていたリンは、その一言で静かになる。
私は持てる能力の全てを持ってリンの指示した場所へ急ぐ。
後悔も何も、後からすればいい。
今は……もう傷ついてる人を見たくないから。
時刻は既に午前零時に近い。
リンの表情は段々青ざめていく。
結構な速度を出しているが、風王結界のお陰で風によって体温を奪われる事はない。
つまり、それは別の要因が在るという事。

「……リン、今気にしても仕方ない」

また、自分を責めているのだ。
もう間に合わないかもしれない、と。

「えぇ、判っているわ」

それでも顔色が優れないのは、理性ではどうしようもない事なのかもしれない。
遠く、月明かりに照らされた武家屋敷が見える。

「……見えた」
「急いで」

……いる。
屋上で感じたのと同じ気配。
ランサーが、いる。
正直、勝てるかどうか判らない。
……いや、私に彼を殺せるかどうかわからない。
でも、やる。
戦う事を、殺す事をためらっている余裕は、私には無い。
元々の力が劣っているのだから。

――それはどんな運命の悪戯か?――

あと少しで武家屋敷に着く、そう思った瞬間。
其れは太陽かと見紛う程の光と共に。
圧倒的な力を示しながら。

――この世界に顕現を果たした――

「……七騎目の……サーヴァント」
「そんな事って……まさか衛宮君、魔術師だったの?」
「……来る」

私はその場でリンをおろし、戦闘準備を整える。
身体を包む風王結界の両腕部分の出力を上げ、私の両腕は乱気流により凶器と化す。
飛び出してきたのはランサー。
一瞬、目が合う。
そこに浮かんだのは、何かに納得したような表情。
其れを受け入れたくないという表情。
そして、酷く残念そうな表情だった。
其れも刹那。
直ぐに私の視界外に走り去る。
追えば、まだ追いつけるだろう。
しかしそれをさせない存在が、ここに入る。
塀を乗り越えてくる一つの影。
何かを振りかぶる動作。
影は見えない何かを私に向けて振り下ろす。
……否。
それは違う。
確かに見えないが。
“何か”じゃない。
私には判る。
同じ物を担う身として、それははっきりと。
彼女が持つものは、剣。
聖杯戦争において最強、最優を冠する者。
剣の騎士。

――ギイィィン――

甲高い金属音が響き渡る。
刃渡り90cm、刃幅10cm近くあるそれは。
常人には視認すら許さない速度で持って私に迫り。
生憎常人ではない私は、腕に纏わせた乱流でもってそれを受ける。
乱雑に回転する流れと、静に押し固められた流れが干渉しあう。
それは互いに互いを食い破らんと鬩ぎ合い、同じにして違う性質を与えられた風同士は、その力を持て余し放電を開始する。
それはどれ程の時間そうしていたのか?
恐らくは刹那の間であろう。
飛退いた影は足が地に着くと同時、再び私に向かって飛び掛る。
流麗高速何処までも優雅に。
まるで戦闘をしてると感じさせない程綺麗に。
その剣は翻る。
振り下ろされる剣を横から殴りつけ、薙ぎ払われる剣を肘で叩き落し、袈裟に掛かる剣を両腕を交差させ受け止める。
受け止めた衝撃が天を裂いたか。
瞬間雲が晴れ、突きが顔を出す。
互いに気づく。

「……っ!」
「なにっ!?」
「同じ!?」

それは鏡写しのように。
殆ど変わりの無い己の顔。
ただその髪の色は純粋な金であり、またその瞳は黒曜石のような黒ではなく、エメラルドのような緑。
先に動いたのはセイバー。
風王結界同士の押し合いをやめ、即座に飛退き距離を開ける。

「……モードレッド? いや、違う。
 貴様……何者だ!?」
「……貴女、誰?」

異口同音。
結果的に私達の口から紡ぎ出された言葉は。
相手が一体何なのかを確かめる為の疑問だった。

「やめろ――――セイバー!!!!!」

そこに、場違いな大声が響く。
そして……

「下がってくださいマスター。
 ここは危険です」
「そんな事できるか!
 第一女の子が戦いなんてするもんじゃない!」
「なっ!? それは騎士である私への侮辱だ!
 撤回を要求する!」
「撤回なんか誰がするか!
 そういうのは男に任せとけばいいんだ!」

……あれ?
何でいきなり口論が始まったんだろ?

「……リン、隙だらけだけど如何する?」
「やっぱり、あいつがマスターなのね……」

私の質問に答えないで、リンは少し悲しそうな顔で呟く。
それも一瞬。
顔を上げたときにはもう、何時もの名前通りの凛とした表情でもって、彼等に言い放つ。

「こんばんわ衛宮君。
 まさか貴方が魔術師だったなんてね」

リンが一歩前に進み出る。
私はそれより一歩引いた状態で――しかし何時でも飛び出せるように――リンに従う。
その声で我に返ったセイバーがマスターを護るように一歩進み出て剣を構える。

「遠坂? って、な、何でそれをっ!?」
「そんな事如何だって良いわ」
「……って、セイバーが二人!?」
「それも、如何でもいいことね」

……って言うか、今まで気づかなかったのか。

「……リン?」
「何も判ってないみたいだし、説明だけはしとくわ」
「……判った」

そう、決めたならなにも言わない。
……それに、私自身彼女に興味が無いわけではないのだし。
私に変わらず殺気を叩きつけている彼女に。

「衛宮くん、家に上げてもらってもいいかしら?」
「え? あ、ああ。でも、俺には何がなんだか」
「それも説明してあげるわよ。まぁ、私も全て知ってる訳じゃないけど」

そういって何故か真っ先に門を潜るリン。
慌てて付いて行くセイバーのマスター。
私もそれに続き……

「……如何するの?」

セイバーに声をかける。
無論、このまま続けるかどうか、だ。

「……マスターが戦闘を放棄した以上、私が無理を通す事はできません」

小さく首を振って、セイバーも門を潜る。
しかしその警戒を解く気はないようだった。
……それは私も同じなのだけど。


後書き
やっと本編開始。
とは言っても遅々として話は進まず。

とりあえず能力でも。

クラス:アーチャー
マスター:遠坂 凛
真名:??
性別:女性
身長:154cm
体重:42kg
属性:混沌・善
総魔力量:1900

ステータス
筋力:B 耐久:C
敏捷:C 魔力:A
幸運:B 宝具:C

クラス別能力
対魔力:B
単独行動:??

保有スキル
直感:B
千里眼:C
心眼(真):D
魔術:E
魔力放出:C

宝具
風王結界(インビジブル・エア)
ランク:C
種別:対人宝具
レンジ:1〜2
最大補足1
魔力消費量:展開20p開放40p
説明:聖剣の仮の鞘たる神秘の風。
視覚を誤魔化したり消費魔力を抑えたり結構便利。
開放する事で一発限りの遠距離攻撃として使用可能。
開放した後は、再び展開する為に別途魔力を消費する。
アーチャーは普段身体全体に纏わせ、戦闘時は両腕に集中的に集める。
と言っても他の部分は無くなる訳ではなく、薄くなっているだけ。
つまり現時点ではアーチャーにっての鎧であり、武器でもある宝具。


レス返し
<<renさん
ふぁいなるあんさー?w
まだ確定するには早いかもしれませんよ?

<<ブレードさん
そうですね。
でももう少し……

四話から
<<ケモリンさん
だんだん秘密が判って来てるかも。
……でもまぁ、私って結構捻くれ者だから……

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