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▽レス始

「Fate/黒き刃を従えし者5(Fate+オリ)」

在処 (2007-02-09 01:59/2007-03-04 18:53)
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『……リン……何か、変』
「え? 何が?」

家を出て学校へ向かう。
校舎という建物が見えた時は、その小さな城ほどもある建物が学び舎として使われているのに驚いたけど、
近付くにつれそんな状況ではない事に気づいた。
何と言うか、変なんだ。
空気が渦巻く様な威圧感、肌に張り付くような不快感。
決して通常では在り得ないマナの澱み。
そしてそれは、校門をくぐった時に明らかな異変へと変化した。

「っ!? ……さっき言ってたのはこれ?」

その変化で、リンも異変に気づいたみたい。
私は微かに頷いて……今自分の姿はリンに見えていないことに気づく。

『うん……なんだろう?』
「まったく……誰がやったか知らないけど人のテリトリーで好き放題やってくれるわ……」

マナの澱みは一転して、一方通行で強引な流れに変わり、渦巻いていた威圧感はまるで牢獄のように変化する。
中にいるものを全て否定する呪縛。
それは規模こそ違っても、□□□て□と同じ性質の物であると理解できる。
……□□□て□?

『……完全に判らない記憶なら出て来るな。迷惑』
「え? なんか言った?」
『……何でも』

唐突に浮かんできた変な単語は思考のゴミ箱へぽい。

「空気が澱んでいるなんて物じゃないわね。もしかしてもう結界張られてる?」
『……まだだと思う。時間の問題だけど』
「そう……ま、誰だか知らないけどとんでもない素人ね。
 ここまで他人に異常を知らせる結界張るなんて」
『……そうなの?』
「そうよ。本来結界は気づかれない事が第一だもの。
 ……あんたの風王結界みたいにね」

なるほど。
確かに風王結界と比べればこれは大げさに作られている。
魔力を持たない一般人ですら、異常が感じられるくらいに。
私は校舎と呼ばれる建物に手を着き、目を閉じる。

「アーチャー?」
『……黙って』
「…………」

不意に動かなくなった私を不審に思ったのかリンが声をかけてくる。
私はそれを制し、手を突いた場所から意識を開き、その構造を精神内に映し出す。
[解析]
現代ではそう呼ばれる、ごくごく基本的な初歩の魔術。
本来は目で見るだけでも解析出来るのだけど……さすがに規模が大きすぎる。
私はそれを使って校舎そのものを解析する。

『一階、右の隅から6つ目の部屋、二階右の隅から2つ目の部屋、三階右から4つ目と左隅の部屋
 四階中央に位置する部屋、あと広く頑丈に建てられてる建物に一つ……』

私の脳裏に校舎の見取り図が映り、呪刻の場所を割り出す。
基本的な骨子やら構成素材やら経てきた歴史にも興味が無い訳ではないけど、今は遣るべき事を遣って置くべきだから。

『……基点は屋上、如何する?』
「……凄いわね。これだけの範囲を[解析]した訳?」
『うん……何か変だった?』
「いいえ。とっても便利な能力で一寸嫉妬しちゃうわ」

冗談のように軽く言って、リンはあわてて歩き出す。
……その台詞が終った瞬間に、予鈴が鳴り響いていた。


Fate/黒い刃を従えし者


「これが基点か……」
「……うん」

と、言うわけで。
何か授業ふっ飛ばしたような気がするけど放課後。
私たちは屋上にあがり、基点の刻印を目にした。
……屋上の中央辺りに人目もはばからずでんと大きく描かれた幾何学的な文様。
もっとも、魔力を持たない人にはそもそも見えないものだけど。
それは恐らく……

「ダメね……私の手に負える物じゃないわ。
 アーチャーは?」
「……無理」

この世界に存在する、どんな魔術師であっても解除する事はできない。

「……たぶん、これを解除できるのはかけた本人だけ」
「へぇ……貴女、これがなんだか判るの?」
「……私の風王結界と同じ。
 魔術でありながら、宝具の域まで高められた究極の一。
 古に多数存在していた魔法から零れ落ちた、一つの極致」
「それは……私の手に負えないわけだわ……
 とりあえず、今溜まってる分の魔力くらいは散らしておくわね」

――その瞬間、ソレは唐突に現れた――

「なんだよ、消しちまうのか?
 もったいねぇな」

その瞬間まで気づけなかったのは彼が霊体化していた故か?
月明かりにのみ照らし出された屋上に、蒼い衣装に身を包んだ男の声が朗々と響き渡った。
リンが立ち上がり、息を呑んで振り返る。
給水塔の上。
約10mを隔てた場所から彼は私たちを見下ろしている。
飄々としているのにその実、私達の一挙一動を見逃さない瞳。
軽く釣り上がった口元からは、獣じみた笑いがこぼれる。
背中に、冷や汗が流れるのを感じる。
アレが、英霊。
過去に名をはせ、その死後魂のみとなった英雄。
そのえも言わぬ威圧感に、私は息を呑む。
それはリンとて同じ……なのに。

「これ、貴方の仕業?」

リンはそれを隠し、屹然とした態度で彼に問う。
……そう。
彼女はそういう存在。
相手が例えなんであっても彼女の存在を揺るがす事はない。
そして……私はその彼女のサーヴァント。
ならば、私がこの程度で揺るぐ事もまた……在り得ない。
あってはならない。

「いいや、小細工を弄するのは魔術師の役割だ。
 俺達はただ、命じられたまま戦うのみ……だろ?」

その視線はリンから私に移る。
最後の問い掛けは、間違いなく私が何かを判った上での台詞。
……でも、その視線にひるむ事はない。
私は肯く事でそれに答える。

――姿は、闇夜に沈む漆黒の礼装に包まれる――

「あんた……サーヴァント」
「おうさ。そこのお姫様と同じ存在だ。
 ……最も、戦いに来たのにキャスターとは……いささか拍子抜けだけどな」
「……リン」

私の一言に、リンは素早く飛退き、中央に私を挟み男と対峙する。
何時でもサポートできる、良い位置だ。

「ひゅう、大したもんだ。何にも判ってねぇようで要点は抑えてる。
 ……惜しむらくは、サーヴァントが前衛になり得ないって所か。
 三騎士とでも組めてれば良いマスターになったろうに……」

男は静に右腕を水平に上げ……
刹那、その手には深紅の槍が握られた。

「ランサーのサーヴァント!」
「いかにも。ま、得物だしゃ一目瞭然だわな」
「……無駄口が多い」
「あん?」
「……やる気がないなら帰れ」
「……ほう……口だけは一人前だ」

「なっ!!」

それはどれほどの速度か?
給水塔の上にいたはずのランサーは、たったの一足で10mの距離を無にし、右から私に槍を突き出した。

「なにっ!?」

驚愕に眼を見開いたのは私……ではなく、ランサーのほうだ。
風王結界が作り出すマナの乱気流を左腕に纏い、私はその突きを叩き落す。
余裕でもって繰り出した攻撃を弾かれ出来た一瞬の隙、それをついて私は同じく風王結界を纏った右腕でもって反撃を叩き込む。
いや、込もうとした。

「ちぃ!」

深紅の槍と乱気流が火花を散らす。
その突きの威力を殺しながら飛退き、構え、突く。
その三動作を彼はほぼ同時に行い……

――戦闘が始まった――

戻しの動作など視えはしない。
ただ視界に映る幾つもの赤い点を拳で持って叩き落す。
時には勘を、時には戦闘経験から来る理論をあてに、致命傷にならない傷は捨て、命を囮に攻撃を絞り、防御し続ける。
――戦闘経験? 誰の――
そんなものは思考のゴミ箱に捨てろ!
今はそんな事考えてる暇はない!

「らあああああっ!」

心臓、首、頭。
その三箇所の防御を意図的にずらす事により、攻撃をその箇所に集中させる。
無論、フェイントや小技も多く含まれているが、必殺の一撃たる攻撃をほぼ確実に防いでいく。
一合二合三合四合五合。
ドレスを深紅の槍が引き裂く。
身体を掠めて通る槍は、容赦なく私を切り裂いていく。

「……っ!」

攻撃が変わった。
直線的な突きだけでなく、払いも含めた広範囲を覆う攻撃になる。
……でも、変わらない。
避けるべきは避け、弾くべきは弾く。

……しかし。

このままではジリ貧か。
いや。
落ち着け。
飲まれるな。
ランサーは強い。
間違いなく、これが英霊というものなのだから。
でも、ならば。
私だって強い。
私だって英霊なのだから。
彼と同じ存在なのだから。
ならば。
私が負ける道理は何処にもない!
意識が研ぎ澄まされる。
感覚が鋭敏に奔る。
点にしか見えなかったその穂先が、その動きが!
姿を現し私を襲うその槍が!!
その槍を握る蒼い槍兵がっ!!!
その存在を私の瞳に捕らえられる!!!
戦闘経験から導き出される答えから、私の双腕は鉄壁の防御と化し、
また直感から来る危機回避能力は些細な傷さえも私の体に許しはしない!

――戦場は硬直する――

槍兵の深紅の槍は、もはや私を傷つける事は適わず。
しかして、私の拳はランサーに届く事はない。
戦いの余波はコンクリートの壁を傷つけ、タイルを砕く。
この瞬間、私たちはさながら嵐のような破壊の権化と化す!
一瞬たりとも気を抜く事はできない。
一瞬たりとも気を抜く事はない!
この身はなんだ?
気を抜く?
馬鹿な。
英霊たる存在がそのような下らない事で戦いに終止符を打つなど在るわけがない。
ならば。
この戦いの優劣を決めるのはなんだ?
その要素は……

「勝ちなさい、アーチャー!」

そう、他ならぬこの戦闘を見ているしかないはずの魔術師。
我が主。
そう、リンに他ならない。
令呪の後押しが、私の能力を増大させる!

「ちぃいっ!」
「……はぁっ!」

思い出せ。
検索しろ。
知っているはずだ。
この身に眠る記録の検索。
武器の調達は不可能だ。
もしかしたら出来るかもしれないけど、この時この瞬間においてそんな暇はない。
もって来るべきは別のもの。
出来る筈だ。
今の、この令呪の後押しを受けている今なら。
今までは出来なかった記録からの技術の引き出し。
私の能力を超えた、その技の模倣が。
それは深い森。

――その経験を解析し――

黒く染まりしヘ□□レ□と対峙した時。

――その経験を構成し――

脳裏に映りしは、神速の九連撃!

――その経験を適合させ――

それこそはかの大英雄が宝具を模す、神域の剣技!

――その経験を憑依する――

――その名はっ!!

「おらぁっ!!」
「……是、射殺す百頭(ナインライブズ・ブレイドワークス)」

風王結界に包まれた右腕はその瞬間、さながら閃光のように奔り。
薙ぎ払われた深紅の槍を弾き。
ランサーの身体を打ち抜く。

「がっ!?」
「……沈め」

思った威力は出なかった。
剣技を無理に無手で放った代償か。
しかし、それで十分。
顎を打たれ朦朧とした意識のまま屋上からグラウンドへ自由落下を始めようとするランサーの顔面を掴み。
その左手に集中して風王結界を展開し。
私は魔力放出で強化した脚力でもって壁を蹴り。
小規模な隕石の如く地面に突き進む!
ピンポイントで展開された風王結界はマナを巻き込みその質量を更に増大させる。
結果。

「があああぁっ!!」

―――轟音!
校庭にクレーターを穿つ程の破壊力でもってランサーを叩き付けた。
屋上からリンが降りてくる。
魔術で着地も危なげなくこなす。

「やったの?」
「……様子見のまま倒されるような、甘い相手じゃない」

小声で、短いやり取りをした直後。
案の定というか、ランサーは平然と起き上がった。
……いや。

「っつ〜〜〜!
 頭がくらくらしやがる……」

後頭部を左手で抑えさせる程度にはダメージがあったみたいだ。
その程度のダメージである筈が無いのだけど、それを表に出す輩でもない。

「てめぇ、キャスターじゃなかったのかよ」
「……私は一言もそんな事いってない」
「ちっ……そうかよ」

油断無く、ランサーは槍を構えなおす。
……再び戦闘になった時を予測する。
恐らくさっきと同じになるだろうが。
……それは双方が切り札を使わない前提だ。
是、射殺す百頭はもう使えない。
無理に引き出したためか、身体への負担が大きすぎる。
再び使うためにはこの身体での使用を前提とした技の再構成が必要。
そして、そんな事してる時間は当然、ない。

「まぁ、お前がなんだろうと関係ねぇ。
 さっさと得物を出せ」
「…………」
「……さっきの技、あの動きは素手での攻撃を前提とした技じゃねぇだろ。
 恐らくは九つの斬撃が同時に対象に到達する技の筈だ。
 そうだろう……セイバー!」

ランサーは槍の穂先を下げた独特の構えを取る。
私は答えを返さず、ただ両の腕に纏わせた風王結界の出力を上げる。

「……あくまで手の内を隠すか……それもいい、が。
 この俺相手にその慢心……その対価は命で払ってもらおう」

ランサーの槍に強大な魔力が篭る。
宝具。
英雄のシンボルにして必殺の武器。
……私にはまだ思い出せない、本来の実力(チカラ)!

「その心臓……貰い受ける」

その力は、ただ魔力を込めただけでマナを凍りつかせるのか。
真名を開放していないにも拘らず、その力は死を連想させる。

――――――不意に、何処かで息を飲む音がした。

その瞬間凍りついていた大気は溶け。

――――何処かへ走り去る音。

ランサーは小さく舌打ちをして駆け出す。

――逃げ切れはしまい。

……私は。

「リン!」
「追って!!」

この戦闘を目撃してしまった不運な誰かを追って校舎へと戻る事になった。


後書き
戦闘ってなれてないから変かも。
これから少しずつ勉強したいと思います。

レス返し

<<renさん
だんだん正体がばれて言ってるような……

アーチャーの戦闘はこうなりました。
あえて武器は持たせずに。


2007-03-04-18:53
修正、加筆しました。

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