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▽レス始

「.hack//Dawn 第10話(.hackシリーズ+オリジナル)」

白亜 (2007-02-09 11:06)
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 reverse/アルビレオ

「ザワン・シンか……」

「度会さん?」

 新入りが持ってきてくれたコピー用紙に書かれた内容。


『 件名 : ザワン・シン
  送信者 :W・Bイェーツ

  醜きもの、刑悪しきものの害、甚大にして言うべからず

  蒼天のバルムンク、蒼海のオルカ、ともに疾駆す

  わが胸の深きおくがに、その名の留む

  汝等こそフィアナの末裔

                   連星の瞳の重槍使いとともに

                         W・Bイェーツ 』


「W・Bイェーツか……」

 頭の中に、あの魔女っ子の顔が思い浮かぶ。

 しかし、彼はその事を一回切り離した。 後でメールを書こう。 バルムンクとオルカ。 そして彼女に。

 だが今は碧衣の騎士団の団長としてやらねばならない事がある。

「柴山」

「は、はい!」

「緊急招集だ。 問題が発生した。 お前も現場に戻れ」

「…! 分かりました! すぐに!」

 新入りが慌ててオフィスから飛び出していく。

 彼――度会一詩はあの正体不明のPC――【三爪痕】の事を思い浮かべる。

 倒した。 そうあれはサイリスが倒したように見えた。 が、何か違和感を感じていた。

 あの化け物のような強さを持った存在があれで倒せたとは思えない。 それにあれがチートPCならすぐにでも復活するだろう。

 しかし、あれはただのチートPCでない事は分かっていた。 リコリスが言った【もう一つの意思】の走狗。

 まだ断定は出来ない。 だが無視も出来ない存在だ。

 それに、

「体が痛む。 しかもあの【トライエッジ】に攻撃された部分が」

 胸が切り裂かれたように痛み、床に叩きつけられた背中も痛む。

 腕も足も胸も背中も痛い。

「……何が……起ころうとしているんだ」

 reverseout


 .hack//Dawn 第10話 国王礫瓦・散彼岸花


「……昴はまだ無理そうか」

 俺は手元のメールを確認してそう呟いた。

 あのトライエッジとの戦いから3日が過ぎた。 あの戦いの後、それぞれ疲労していた俺達に何かをしようとする気持ちにはなれなかった。

 それぞれログアウトしたが、リコリスはログアウトできないので、俺のホームで匿う事にした。 まぁ、モルガナとか相手にしたら、かなり不安は残るけどな。

 で、トライエッジにPKされかけた昴から連絡はない。 うーむ、未帰還者になった訳じゃないと思うから大丈夫だと思うけど、心配だ。

 あいつは俺の事を庇って、ああなったんだから俺の責任だしな。

 さて、どうするかね。 あの後、メンバーアドレスを交換したアルビレオとほくとからも連絡はない。

 まぁ、こっちから連絡するほどの用は、今のところはないんだけどな。

 だけどあの声は一体なんだったんだろうか? あれはあきらかに【俺】が異邦人である事を知っていた感じがした。

「……俺は本当にどうすればいいんだろうな……」

 確かに今回の一件で、俺は【.hack】の物語に飛び込んで行った感じがする。

 だけど、本当に流されるまま関わっていいものだろうか?

 昴と出会った。 カールとアルフに出会った。 バルムンクとオルカに出会った。

 だからどうした。 俺が確かにあいつらと関わった。 だけど、これからの物語に介入していいと言う訳ではない筈だ。

 だって俺は普通の人だ。 普通の人なんだ。

 だけど彼女達は何かを期待している。 【俺】に何かを期待している素振りを見せる。

 いや、きっと期待しているのだろう。 何に対して期待しているのかは分からないけれど。

「……俺は――」


 ■□■□■


 reverse/アルビレオ

「今日、【Δサーバー 隠されし 禁断の 聖域】に入ったプレイヤーを調べてみました」

 ここはザ・ワールドの管理者だけがログイン出来る碧衣の騎士団の仮想オフィスである。

 そこにはアルビレオが召集した碧衣の騎士団――つまりCC社のデバックチームが揃っていた。

「今日の午前から昼にかけてあの場所に入ったPCは【ほくと】、【サイリス】、【昴】、そして渡会さんの【アルビレオ】の四名。 ですが他にもう一つ正体不明のアカウントPCがありました」

 デバックチームの一人がアルビレオに頼まれて調べた事を報告していく。

 彼等はまだ詳しい内容を知らない。 それは今から説明されるだろう。

「今日、聖堂で正体不明のチートPCと思われる存在と交戦した」

「チートPC? それがもしかして正体不明のアカウントの?」

「ああ。 残り3人は俺も知っている奴だから間違いない。 それでその正体不明のアカウントは調べたのか?」

「はい。 ですが正規で購入されたユーザーにそんなアカウントは存在しませんでした」

「と、なるとハッカーですかね?」

「……」

 部下達の言葉を聞きながら考える。

 あれはハッカーでもない。 間違いなくもっと別の存在だ。 ならばそんな存在に自分達に何が出来るのだろうか?

 自分の切り札でもあった【神槍ヴォータン】の削除スキルでもあれを消す事は出来なかった。

 放浪AIでもなく、ハッカーでもない存在なのだあれは。

「…だが無視する事は出来ない」

「度会さん……?」

「……聖堂のログは?」

「それが……」

「どうした?」

「確かに入りこんだ事は分かっているのですが、それ以外のデータが削除されていました」

「……何?」

 つまりそれは、あの場所で行われた戦闘データも抹消されている事になる。

 と、なると、削除した存在はあの戦闘データを公表される訳にはいかなかった、と言う事か。

 だがそんな様子は思い当たらない。 ただ一つ。 自分の意識が朦朧としていた時に、黄金のような、夜明けを感じさせる光が目に入ったような気がしたが……。

「……巡回を強化。 正体不明のPC探索に力を入れてくれ。 ただし暫く放浪AIに関しては放置しろ」

「ええっ!?」

 彼の指示を聞いて、部下全員が驚いたような表情をする。

 まさか仕事熱心である自分達の上司がそんな事を言い出すとは思わなかったのだろう。

「今回の一件は普通じゃない。 だから憶測で話す事は出来ないが、放浪AIは放置してかまわない」

「……分かりました。 渡会さんに何か考えがあるなら従います」

 部下全員が頷いてくれた。 それは何よりも自分の上司を信頼しているからに他ならない。

 それをありがたいと感じながらも、自分にはやるべき事がある。

「それで正体不明のPCに名前のようなものは存在するのですか?」

「……名前は――【トライエッジ】だ」

 reverseout


 ■□■□■


「サイリス」

「やっほー」

 俺が3日ぶりにやってきたホームに入るとリコリスと何故かほくとの二人が居た。

 まぁ、ほくとにも俺のメンバーアドレスを渡してあるから、入る事は出来るんだけどね。

「リコリスとほくと。 何やってるんだ?」

「会話してる」

「いや、それは分かるんだが、目の前のそれだよそれ」

 俺の目線の先はリコリスとほくとの目の前にある存在。 それ即ち将棋盤。

「そりゃあ、将棋やってるもん!」

「……」

 ザ・ワールドに来てまで将棋をするのかお前達は。 っていうか将棋盤なんてどっから出した?

「箪笥に入ってた」

「……」

 ちょっぴりがっくしと来てしまうのは何でだろうか?

 っていうか箪笥に入ってたのか将棋盤!?

「はぁ……。 それより体は大丈夫なのか?」

 俺がそれを聞くと、ほくとのほにゃ〜とした顔が結構しっかりした表情になる。

 あの戦いの後、俺は全身がかなり痛かった。 となると、同じように戦っていたほくとも同じように体が痛むのではないか?

「まあね。 私はサイリスみたいに【トライエッジ】からたくさん攻撃を受けた訳じゃないから、一日寝たら治ったけど」

「そっか。 俺はあの後、かなりやばかった」

 筋肉痛みたいで学校に行くだけでも相当辛かった。 今でもまだ痛む部分は存在するし。

「で、【トライエッジ】について何か分かったのかい? 【吟遊詩人】さん」

「それが全然」

 俺が彼女の本当の姿は昔から知っていた――訳がない。

 あの後、というか二日前にほくとから送られてきたメールで初めて知ったのだ。

 っていうか【ほくと】=【W・Bイェーツ】なんて事全然知りませんでしたよ俺! っていうかAIバスターの事なんてすっかりさぁー!

 もう記憶は当てにならないなぁ。 ぶっちゃけ全然思い出せないのが現実だけど。

「知り合いに『【トライエッジ】について知らないか?』って聞いたんだけど、全然駄目。 目撃情報は皆無。 私達しか遭遇してない可能性のほうが高いわね」

「なるほど、な」

 もしもあの【トライエッジ】が俺に対する存在なのであれば、基本的には俺意外の所には現れないのだろう。

 だが、100%そうだとは言い切れない。 何時、周りの人々を傷つけるか分からない存在だ。

「ねぇ、そっちはアルや昴からの連絡あった?」

「いや、アルビレオからは何にも。 昴からも連絡はない」

「んー、結構やばいよ」

「何が?」

 突然、やばいとか言われてもさっぱりです。

「紅衣の騎士団。 知り合いから聞いたんだけど、昴から連絡がないって騎士団の一部の人が騒いでるみたい」

「3日ぐらいの連絡なしなら問題ないと思うんだけどな」

「でも昴って真面目だったみたいだから、こっちに来れない日でも連絡は欠かさなかったから、ね」

「あー、なるほど」

 確かに昴の性格を考えるとありえそうだ。 しかし、昴からの連絡がないのはこちらも一緒だ。

 うーむ、昴のリアルの人って何やってるんだっけ?

 もう【.hack】の事は全然覚えてないしなぁ……。

「それで、紅衣の騎士団がサイリスの事を探してるみたい」

「……なんで?」

「最後に昴に会った人……って事でしょうね」

「あー、なるほどなー」

 あの日は確かに、昴から相談を受けていたからな。 確かにいろんな意味で昴と最後に会った人間……だよなぁ。

「目つけられてるよ」

「前からだよ」

 これは本当。 特に紅衣の騎士団の昴親衛隊とか言う方々に。

 別に俺と昴はそんな関係じゃないし。 親しい友人、って所だし。

「まぁ、その辺は自分で頑張って。 私はそろそろ落ちるから」

「分かった。 じゃあな」

「ん、またね」

 それだけ言うと、ほくとがログアウトしていった。

 あー、ほくとってリアルだと何やってる人なんだろ? この辺の記憶もさっぱりだし。

「サイリス」

「んー、どうしたリコリス」

「貴方に託したいものがあります」

「……!」

 リコリスの言葉で顔を引き締める。 スターレスと同じように何か託したいものがあるとは。

 一体なんだろうか? スターレスは【暁の鍵】という正体不明のアイテムを渡されたしな。

「これを……」

「これは……?」

 【瓦礫王国の王冠】

 それが、リコリスから渡されたアイテムだった。 なんだこれ? 更に意味不明なアイテムだ。

 まだ【黄昏の鍵】と名前が似ている【暁の鍵】のほうがまだ分かるんだけど、【瓦礫王国の王冠】って何?

 俺が色んな疑問を持った目でリコリスを見るが、リコリスもよく分かってない様子。

 なんと言うか駄目じゃね。 効果も何も分かってないのに渡すなよって言いたい……んだけどなぁ。

「……まぁ、しょうがないか」

「ありがとう」

「ん」

 俺にこのアイテムがどんな力を持っているかは分からない。

 だけど、何か意味があるならそれを持っていよう。 まぁ、捨てられないのが現実なんですが。

「さて、俺もそろそろ落ちないとなぁ……」

「落ちるの?」

「ああ。 受験生だしな」

 真面目な話、俺がザ・ワールドにログイン出来る日が少なくなってきた。

 大学進学を目指してるからなぁ。 勉強のほうも忙しいし、前みたいに毎日繋ぐのは無理っぽい。 ってかそろそろ繋ぐのもきつそうだ。

「……頑張って」

「ああ」

 俺もそれだけ言うと、落ちる事にした。

「気をつけて。 モルガナが動く日は近いから」


 ■□■□■


 reverse

「……私もそろそろ限界……かな」

 リコリスは誰もいなくなった部屋で一人呟く。

 自分を構成するデータが限界に近い事を既に悟っていた。

 だが、やれる事はやった。

 ――死にたくない

 サイリスに託すべき物を託す事が出来た。

 ――死にたくない。

 アルビレオに出会えた。

 ――死にたくない

 ほくとに出会えた。

 ――死にたくない。

 それで十分のような気がした。

 ――そんなのは嘘だ。 私は死にたくない。

「……あれ……?」

 リコリスは自分の目から何か出てくる事に気がついた。

 涙である。

「そっか……悲しいんだ私」

 出会えたから。 アルビレオとほくとに出会えたから。

 ほんの少しだけど、冒険が楽しかった。 二人といる事に安らぎを手に入れていたから。

 だから死にたくない。

『だけど、死になさい』

 その次の瞬間、リコリスの体が剣で貫かれる。

「あっ――」

『さようなら、彼岸花』

「――」

 消滅していくリコリス。 彼岸花は――散ったのだ。

 そこに残されるは一人のPC。 継ぎ接ぎだらけの白い鎧。 背中にあるのは孔雀を思わせる黒い翼を持つ存在。

 ただ一人だけがその場に残されたが、そのPCもその場を後にした。

reverseout


続・あとがきっぽいもの
とりあえずインターバル。 これにてAIバスター編っぽいものは終了。
まぁ、アルビレオもほくともまだ登場する予定はばっちりありますが。
次はSIGN編なんですが……ぶっちゃけSIGNは飛ばします。
いや、ご事情って奴があるんだけどね。 SIGNはサイリス関わらせるのが無理っぽいと判断。 むしろ飛ばしてZEROに行ったほうが色々と楽なので。
SIGNファンの人御免なさい。


レス返しだと思う

・無限皆無さん
トライエッジをあっさり倒せるとは思えないのが現実。 やっぱりああいうキャラには頑張ってもらわないと。
ゲームだと自分は【ハセヲLv40 クーンLv42 パイLv41】で喧嘩売りに行きました。三爪痕を刻まれる度にHPが満タンでも一撃死です。 根性で倒したけど。
トライエッジの出番はまだあります。 まぁ、そう簡単に死ぬような奴じゃないし。
【暁の鍵】は内緒。 まぁ、キーアイテムの一つなのは間違いありませんが。
蒼炎・虎輪刃はそのままで。 あえて使わせただけなので、このまま行きます。
感想ありがとうございます。

・趙孤某さん
関わりたくないとか言ってる奴ほど、実は主人公補正を持ってるとか(嘘
謎の声は内緒の方向で。
トライエッジはぶっちゃけ復活しますよ。 そりゃあもう。

・SSさん
感想ありがとうございます。
主人公補正を手に入れたサイリスですが、どうなる事やら。 謎の声も現れてさぁ大変。 頑張れ。
G.U.の知識ですか。 サイリスは【Vol.1 再誕】までプレイ。 作者は【Vol.3 歩くような速さで】までクリア済みです。

・ATK51さん
トライエッジはとりあえずトライエッジという事で。
謎の声は内緒の方向で。 好き勝手に想像しちゃってください(苦笑
昴と志乃の声の人は後で知りました。 まぁ、ここで昴が意識不明にでもなったら大変です。 SIGNが根本から壊れるので。
もう一人のヒロインのかたとはSIGN編では関わりません。 後でかなぁ。
GIFTぐらいになるかも。

・箱庭廻さん
この時点でG.U.がクロスされてる話が可笑しいのさ!
他の三蒼騎士は出ますよ。
あの剣とキー・オブ・ザ・トライワイトとはあんまり関係ないかも。
次回も頑張ります。

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