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▽レス始

「.hack//Dawn 第9話(.hackシリーズ+オリジナル)」

白亜 (2007-02-02 12:47/2007-02-09 10:48)
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 幻影ははるか遠く。

 己の意味を知らず、己が何故ここにいるか知らず。

 それでも彼はここにいる。

 彼は瓦礫の王様。 自分の立つ位置を知らない王様。


 .hack//Dawn 第9話 様王礫瓦・暁乃太刀


「さて、どうするかね」

 勢いで聖堂に飛び込んだものの、俺は目の前にいやがった【トライエッジ】を見て少し困ってしまった。

 何かに助けを求めている事はわかっていたが、まさかこいつが襲い掛かってきているとは考えてもいなかったし。

 俺はこいつの正体を知らない。 元の世界では【Vol.1 再誕】までしかプレイしていないのだ。

 そんな俺がこいつに対して知っている事と言えば、こいつは【勇者カイト】と同じ姿をしており、データドレインも使える。 そしてレベル130以上あった【死の恐怖ハセヲ】を倒せるぐらい強いと言う事だ。

 まぁ、その後にレベル40しかないハセヲパーティーに負けたんだけど、なんでだろ?

「サイリス。 相手の実力は分かりますか?」

「不明。 だけど正規のPCじゃない事は確かだ」

 これはまず間違いない。 あのPCがR:1であるこの世界に存在する筈がないのだ。

 ならば何故、奴はここにいる?

「っていうか【トライエッジ】って何?」

「あれ」

 昴の質問に答えた後、呆然と俺達を見ていたほくとの質問にも答えてやる。

 俺の視線の先に刻まれた【三爪痕】。 ほくともそれを見て納得したらしい。

「なるほど。 確かに【トライエッジ】ね」

 納得してくれて嬉しいが、俺にはそんな余裕は残念ながらない。

 目の前にいる【トライエッジ】の実力が分からない上に、どんな行動をするか分からないのが現状だ。

 正直に言えば逃げたいと思う気持ちのほうが強い。 何せ相手の実力は不明。 と、言うか無茶苦茶強いのは間違いあるまい。

 レベル的にも厳しいものがある。

「なぁ、あんた達のレベルは?」

「私は7」

「俺は47だ」

 何時のまにかアルビレオも俺の横にいた。

 トライエッジは先程から微動だにしない。 事情は分からないが、ありがたい。 今のうちに作戦を練っておきたい。

「俺のレベルは49。 昴は……」

「私は22です」

「となると前線でトライエッジとやりあえるのは俺と君だけか」

「みたいですね」

 どうやらアルビレオ一人を容赦なく圧倒していたらしいトライエッジの力は相当のものだ。

 そうなれば、レベルが近い俺ぐらいしかトライエッジと戦う事は不可能だろう。

「私は援護にまわりますね」

「私もそうするね、アル」

 そうなると昴とほくとがリコリスを連れて後ろに下がった。

 その前に俺はアイテムを昴にかなりの数を渡した。

「これは?」

「回復と援護を頼む」

「わかりました」

「で、作戦はどうする。 実は俺一つ、素晴らしい作戦があるんだけど」

「奇遇だな。 俺にも作戦がある」

 俺の言葉にアルビレオが答えてくれた。 どうやらあちらにも作戦があるらしい。

「「逃げる」」

「「ってええ!?」」

 俺とアルビレオが同時に口にした作戦を聞いて、後ろにいた昴とほくとが唖然としている。

 そんなに可笑しいかね?

「可笑しいか?」

「え、だって戦うような事、言ってましたから……」

「逃げるけど、時間稼ぎは必要だからな」

「ああ。 一人では無理だが、二人ならどうにかなりそうだ」

 どうやらアルビレオも同じ考えのようだ。

 確かにトライエッジは倒さなくてはならない存在だが、俺の冷静な部分が叫んでいる。

 まだアレには勝てない、と。 まったくだ。 俺達はハセヲ達のように【憑神】など持ってない。

 つまりVol.1のラスボスである蒼炎の守護神などになられたら間違いなく俺達の敗北は決定的なものになる。

 これ以上の薮蛇は勘弁したいのだ。

 アルビレオはそんな事は分かっていないようだが、同じような気持ちらしい。

 因みに、これは後に分かった事なのだが、アルビレオはトライエッジに対して槍の削除スキルを使っても、まったく効果がなかった為にそう判断したらしい。

「なら、俺とアルビレオがトライエッジと戦っている間に逃げてくれ」

「ゲートは使える筈だ。 君達が転移してくれれば、パーティーである俺達も自動的に転移できるからな」

 つまり作戦としては、俺とアルビレオがトライエッジと戦って時間稼ぎ。 その間に昴とほくと、リコリスの三人はゲートアウト出来る場所まで離脱してもらう。

 そしてゲートアウトすれば、パーティーである俺とアルビレオも自動的に転移される、と言う事だ。 因みにこれは普通のモンスター戦ではバトルモードになっている為、使えないがプレイヤー同士の戦闘ならその心配もない。

「じゃあ、頼むぞ」

「行くか!」

「ああ!」

 俺の声に反応したのかトライエッジが動き出す。 それにあわせて俺達二人はトライエッジに突撃した。


 ■□■□■


 reverse

「【騎士の血】、【闘士の血】、【狩人の血】、【魔獣の血】!」

「まだまだ【快速のタリスマン】、【活力のタリスマン】、【気迫のタリスマン】!」

 ほくと昴の二人はとにかくアイテムを使って仲間であるアルビレオとサイリスを強化していた。

 二人の役目は逃げる事だ。 あの正体不明のトライエッジと戦っても勝つ事は出来ない、と二人が判断した為であった。

 【ほくと】はともかく【彼女】はそれに同感であった。

 【彼女】もまた、サイリス達と同じβ版からのヘビープレイヤーの一人である。

 その【彼女】にもトライエッジの異常に気がついていた。 HPが減っていないのである。

 トライエッジの上にネームとHPが表示されている。 先程まで文字化けしていたネームが今、トライエッジになっている事は今はいい。 だがHPが一切減っていないのだ。

 HP2000と固定されたままであり、アルビレオの槍のスキルを受けようともサイリスの大剣のスキルを受けようとも一切HPバーが減る事がない。

 これはあきらかにバグだ。 だが、自分の中の【何か】が告げている。 あれはただのバグなどではない、と。

「とにかく今は逃げましょう!」

「そうね」

 彼女――昴の言うとおりだ。 もしあのバグが倒せないと言うなら、今は逃げるしか道はない。

 ほくとはすぐに聖堂の出入り口をマーク。 扉を開けようとする。

 しかし、

「嘘!? 開かない!?」

「えぇ!?」

 扉が一切反応しないのだ。 どれだけ選択しようが、扉は一切開かないようになっている。

 これはまずい。 逃げる事が出来ない。

 ログアウトを試みるか? とも考えたがそれは駄目だ。 プレイヤーであるほくとや昴、アルビレオ、サイリスはログアウト出来るが、リコリスは不可能だ。

 もし、ログアウトなどしたら、リコリスが一人残されて、あのトライエッジに殺されるだろう。

「つまり、逃げるのは一切不可能って訳ね」

「これが現実なら扉を壊す、と言う選択肢がありますが……」

 そうなのだ。 この世界はゲーム。 扉を破壊する、という映画やドラマなどにある行動を取る事が出来ないのだ。

 この時点で、彼女達に逃げる、という選択肢は消滅してしまった。 この聖堂の中ではどう足掻いても逃走する方法はない。

 となれば、道は一つしか残されていない。

「あれを倒すしかないって事……?」

 もし、この異常事態があのトライエッジのせいであるのなら、奴を倒せば、扉が開くのではないのか?

 だが戦闘状態を見ると、あまり分が良いとは思えない。

 重槍を巧みに操り連撃を繰り出すアルビレオ。 大剣による重い一撃で攻撃するサイリス。

 ザ・ワールドの中でも一握りしかいない実力者二人であってもあのトライエッジの優勢は動かない。

「二人共、悪いけど逃げれないっぽい。 扉が開かないわ」

「最悪だ」

「同感」

 ほくとの報告に、アルビレオとサイリスが同時に顔を顰める。

 まともに戦えば、明らかに押されている為であろう。

「しかし逃げれないと分かったのなら――」

「やるしかないな」

 二人の顔に決意の表情が浮かぶ。 トライエッジは化け物だ。 これだけの実力者二人の攻撃をあっさりと凌いでいるのだから。

 だが、やるしかないのだから。

 そしてサイリスの中には別の思いがあった。 もし【あれ】と【これ】が同一存在であるのなら、もしこいつにPKされた場合は――。

「ちぃっ!」

 日本刀技である【雷烙】をトライエッジに容赦なく叩き込む。

 直撃した。 クリティカルヒットだ。 すると先程とは違う反応がトライエッジに見られた。

 仰け反り、ダメージを受けたような素振りを見せたのだ。 そしてそれはほくとと昴の二人にも分かった。

「あっ!?」

「HPが減りました!」

 そう。 先程まで減る事なく固定されてあったHPバーが始めて削られたのだ。 そしてHP1860。 減った。 確実に減った。

 これは勝機。 何が原因かは知らないが、HPが減るようになれば、こっちのもんである。

「一気にたたみ掛けよう!」

「ええ!」

 ほくとも昴も前線で戦う事は出来ない。 かと言って、強力な呪紋を使える訳でもないが、二人には彼等からもらったアイテムがあるのだ。

「【雷帝霊王新生の巻】!!」

「【火炎霊王爆誕の巻】!!」

 二人が使ったのは強力な召喚系のアイテムだ。 【ランセオル・クー】と【ウルカヌス・クー】が現れ容赦なくトライエッジに襲い掛かる。 もちろんアルビレオとサイリスは巻き添えを受けない為に離脱している。

 襲い掛かる雷と焔の協奏曲。 一気にトライエッジのHPを削りとっていく。

「【トリプルドゥーム】!!」

「【叢雲】!!」

 後は止めと言わんばかりに、アルビレオとサイリスの攻撃スキルが叩き込まれていく。

 今度は先程のように防がれる事はない。 一撃一撃が確実にトライエッジの体に直撃していく。

 HPも先程よりグンと減っていく。 もうHPも残りわずかだ。

 だが、目の前にいる【ソレ】はそう簡単なものではなかった。

 まだ――動く!

「……!!」

「しま――!?」

 蒼い炎のようなものがサイリスの体を絡めとり動きを封じる。 逃げる事も守る事もこれで不可能。

 そうなれば、トライエッジの独壇場であった。

 トライエッジが3体に増えた。 その三体から次々に放たれる斬撃。 既に動きを封じられているサイリスにそれを防ぐ事は出来ない。

 連撃とも言える斬撃の後に、止めの強烈な三撃。 するとサイリスの体に【三爪痕】が刻み込まれる。

「がぁっ!?」

「サイリス!?」

 その一撃でなんとか蒼い炎からは解放されたサイリスではあるが、彼のHPは既にレッドゾーンになっている。

 昴が直にHP回復のアイテムを使おうと動くが、

 ――あまりにも遅い。

 既にトライエッジは彼女の目の前にいると言うのに――!!

「なっ――きゃあぁぁ!?」

「昴!?」

 トライエッジが放ったのは――蹴りだ。

 蹴り飛ばされた昴は一気に聖堂の横の壁に叩きつけられる。

 そしてトライエッジの次の標的は――ほくと。

「がぁ――」

「……!」

「ほくと!?」

 せめてと、防御スキルで杖を盾代わりにするも、そんなものは紙のように砕かれ破壊される。

 そして次の瞬間には昴の反対の壁に叩きつけられるほくと。

 最後に残ったのはアルビレオだが、そんな彼から再びスキル攻撃が放たれるが――

「そんな!?」

「……」

 まるでなんでもないように、その全ての攻撃を受け止めてしまった。

 そして繰り出されるトライエッジの一撃。

 【蒼炎・虎輪刃】

 容赦なくアルビレオに刃が襲い掛かる。

「があ!?」

 直撃を受けたアルビレオは祭壇まで吹き飛ばされる。

 立てる者は―――いない。

 昴もほくともアルビレオも――サイリスも。

 残るはリコリス、ただ一人。

「……」

 立ちすくむリコリス。 それに向かって歩き出すトライエッジではあるのだが、

「……!」

 急に動きを止める。 だが、それは標的を変更したにすぎなかった。

 狙いは――サイリス。

「……が…ぁ…」

 しかしサイリスは動けない。 プレイヤー本人の意識も朦朧としているのか、動く事が出来ない。

 トライエッジが聖堂の中心で倒れ伏すサイリスにその刃を向ける。

 すると、サイリスの耳に妙な声が聞こえてきた。

『なんだ、もう終わり?』

「な……んだ……お前…は……?」

『私? 私の事なんてどうでもいいでしょう。 どうせここで朽ちる存在なんだから』

 小馬鹿にしたような様子で話す謎の声。

『しかし、貴方がこの程度しかないとは思わなかった。 これが私と貴方――与えられた者と与えられなかった者の差、なのかしらね』

「……」

『だからつまらない。 だけどまぁ、ここで終わりならそれでもいいでしょう。 何故、貴方が【ここ】に呼ばれたのか? 貴方がここに居る本当の【理由】、貴方の名の【意味】。 それすら知らず、朽ち果てる』

「……」

 意識はある。 だが、今のサイリスに何か言い返せる程の力はなかった。

『これでさようなら、月白白夜。 その【世界】で散りなさい』

 その声が終わると同時にトライエッジがその刃を振り下ろす。

 そしてその一撃はサイリスへと――

「えっ――?」

「……あっ……」

 届く事はなかった。

 その刃は――昴を貫いていた。

「すば……る……?」

「――」

 何故、とサイリスは心の中で叫ぶ。

 どうして、とサイリスは声に出さず叫ぶ。

 なんで、とサイリスは目で叫ぶ。

 君が、と白夜は――叫ぶ。

スバルウゥゥゥ!?

 まさか、とサイリスは思う。

 トライエッジにPKされれば、意識不明となる。 それを白夜だけが知っていた。

 それを知らない彼女は庇ったのか!? そうならば、もし昴が意識不明になったのなら――。

 だから吼える。 サイリスは、白夜は吼える。

 既に真っ当な意識は働いていない。 意味もなく、ただ吼える。

 死ね、と叫ぶ。 死ね、と叫ぶ。 死ね、と叫ぶ。 死ね、と叫ぶ。 死ね、と叫ぶ。 死ね、と叫ぶ。 死ね、と叫ぶ。 死ね、と叫ぶ。 ただ死ね、と咆哮した。

あぁぁぁああぁぁぁぁあぁぁあ!!

『――まさか、これって!?』

 ただ無我夢中に剣を握る。

 その手にあるのは、【黄昏】の、【薄明】の、【暁】のツルギ。

 それをサイリスは何も考えないで、振るった。

 秘奥義【―――――】

 その一撃はトライエッジを直撃して、今、確実にトライエッジを破壊した。

 reverseout


 ■□■□■


「昴! 昴!!」

 俺は倒れている昴に向かって叫んだ。

 どうやってトライエッジを倒したかは覚えていない。 ただなんとなく俺が奴を斬った、ような気がするだけだ。

 だけど、そんな事はどうでもいい。 今は昴のほうが心配だ。

 昴のPCが消滅するような気配はない。 とりあえず完治の水でHPは全回復させたが、プレイヤーのほうは不明だ。

「ちょ、ちょっとなんでそんなに慌ててるの!? PCがHP0になっても――」

「トライエッジにPKされれば、現実のプレイヤーの意識も失われる」

「えっ――」

 ほくとの言葉に俺がそう答えた。

 これは事実の筈だ。 実際に【.hack//G.U.】では志乃が意識不明者になっているのだから。

「……」

「……」


 ――それを聞いたほくととアルビレオが何かに気がついたような表情になったが、今の俺には到底気が付かなかった。


「ぅ……ぁ……」

「昴!?」

「サイリス……」

「大丈夫か昴?」

 良かった。 昴は意識不明者にはなってない!

 PCが消滅する気配もない。 大丈夫……の筈だ。

「頭がクラクラしますけど……とりあえずは……」

 昴の声にほっとしながらも、やはり何処か力がないように聞こえる。

 やっぱりトライエッジと戦ったのが原因なんだろうか?

 よく俺も落ち着いてみると、何故か現実の俺の体が痛む。 まるでさっきまで実際に戦っていたように――!

「とにかく今は休め昴」

「はい……」


 ■□■□■


 こうして、俺と【奴】の第一接触が行われた。

 俺はまだ知らない。 これから起こる事に。 これから【俺】を中心に行われる事に。


 ――俺はいまだ知る由もない。


続・あとがきっぽいもの
何、この超展開? これ本当に.hack? ちょっと俺の脳内に問いかけてみたい衝動に駆られました。 でもこのままで行く駄目な俺。


思った事とか思わなかった事とか
今回は、トライエッジ最強伝説とか、サイリスは普通の人じゃなくて、実は主人公補正を持っていたとか。
後、何故かすばるんヒロイン化計画が実行されています。 なんでさ?
二次創作の鬼門の一つ。 オリキャラ×原作キャラなのに。 駄目じゃね俺?
とりあえず昴にフラグがたったとか立たなかったとか。
後、白夜はG.U.はVol.1 再誕までしかプレイしてないので。


レス返しだと思う

・もけさん
というわけで、続きはこんな超展開になりました。
大丈夫か俺?

・森羅万象さん
こんな続きになりました。 まだ序盤の癖になんでこんな超展開になっちまった事やら。

・kinさん
悟空はこんな超展開で満足してくれたでしょうか?

・SSさん
更に伏線が増えるという、駄目な自分の小説。
今回は結構無茶苦茶展開だったので大丈夫でしょうか? 面白かったでしょうか?
すげー不安。

・箱庭廻さん
なんとか打ち勝ちましたけど、あんな超展開でカ○ーユが使うようなハ○パー○ームサーベルがなかったら、普通に負けてます。やっぱりトライエッジは強くないと。
これからどうなるかは自分でも分かりません(核爆死)
勇者カイト君はまだプレイしてません。 まぁ、後にオルカに誘われて普通にプレイする事になりますが。 っていうか彼が来てくれないと困るし。

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