思えば、あれが前兆だったのかもしれない。
「うわ、カカシ先生が時間通り来たってば。」
「今日は1日晴れって言ってたけど・・・・この分だと雨かも。」
「それはマズイな。溜まってた洗濯もん干してから来たんだぞ俺は。」
「お前ら、俺の事何だと思ってるのさ・・・・」
『遅刻魔だ(よ・ってばよ)』
今日の忍務の為の待ち合わせ場所に集合した俺達。そこで俺達はとんでもなく珍しい光景を見た。
・・・・・・まあ、前の会話から分かる通り、カカシが遅刻せずに―しかも待ち合わせの時刻の数分前に!―やって来ただけなのだが。
今日の忍務は、里から少し離れた山の中での薬草集めだ。
依頼主は薬で財を成した金持ちだそうで、私有地である山で薬の原料となる薬草を栽培しているとか。集めた薬草は山の入り口付近に位置している屋敷兼工場(?)で精製し、薬としてあちこちの国で流通していると聞いていた。
薬草を集める時は毎回木の葉の里に頼んで人員を派遣してもらってるらしい。ま、自前で雇うよりこっちに頼んだ方が人件費がかからないのかもしれないが、その辺りは知らない。
依頼人の屋敷に向かう道の途中、俺はナルトにある物を渡した。昨日ギンジさんの工房から持ってきたもう1つの包みだ。
「何だってばよこれ?」
「知り合いに頼んで作ってもらったお前用の忍具だ。かなり遅いがナルト、下忍合格祝いの餞別だ。」
とたんに目をキラキラ輝かせ始めるナルト。俺は苦笑しながら、いつものように頭をポンポンと撫でてやった。
―――――この先、何が待ち受けているのか知らぬまま。
「いやあ、毎度の事ながら木の葉の里は元気な子供達が多くて良いですな。」
「まあ忍びと言ってもアカデミーを出たばかりのヒヨッ子ですからねえ。忍びとしての心構えを覚えていくのはこれからですよ。」
カカシは屋敷の応接室にて、依頼人である主人とのんきに話をしていた。
部下の3人は既に山の中に入って薬草集めの真っ最中だ。他の班も狩り出すほど範囲は広くないが、それでも結構な面積はあるから1人1人手分けしてやっている。
そして本当なら下忍達の監督役であるカカシも何かあった時の為に3人を監視していなければならない身の筈なのだが・・・ちゃっかり依頼人の前で寛いじゃっている。それで良いのか?
そんな外野(作者)の心配をよそに、応接室に近づいてくる『気配』がした。
お手伝いさんらしい女性が、案山子の前にある低い机に2人分のお茶の入った湯飲みを置く。
カカシは例を言って、湯飲みを手に取ろうと屈んだ――――――次の瞬間。
お手伝いさんが袖下から短刀を抜き出すと、目にも留まらぬ速さでそれを振るった。
ザシュッ!
カカシの首が、飛んだ。
「も〜、何が『すぐに終わる』なのよ〜!カカシ先生の馬鹿ー!」
背中の籠には、3分の1程度しか薬草は溜まっていない。
ノルマは『背中に背負った籠がいっぱいになるまで』だったか。辺りに生えている薬草で、依頼人から主にこれを採ってくれと頼まれた種類のものはほぼ採り尽くしたのだが、ノルマを達成するにはあまりに足りない。
「せっかくすぐに終わらせてサスケ君を手伝ってあげようと思ってたのに・・・・」
ブーブー文句たれたって籠の薬草は増えやしない。しょうがないので他にも薬草がありそうな範囲に移動して、サクラは再び集め始めた。
思えば、彼はアカデミーの人気者だった。
家柄については子供心にあまり興味はわかなかったが、それでもうちは一族が木の葉の中でも有力な家柄『だった』のはアカデミーの教師や大人の反応から理解できた。
そして美形で成績優秀で運動能力も抜群ときたら、アカデミー中の女の子から注目されるのは当たり前だろう。
更に誰でも分け隔てなく――ヒナタみたいな名家の子でも、ナルトみたいな親の居ない子でも――接するから、アカデミーに居たほぼ全員から好かれてたと思う。
そりゃ、アカデミーにも何人かは彼の事を嫉妬して、気に入らない目で見てた子も居るには居た。
けど彼の周りにはいつも人がいっぱい居て、その数に圧倒されて表立って彼の事は悪く言ってなかった。いえなかった、の方が正しいかもしれないけど。
そして私も、彼の事が好きな1人だ。
ただし友達とか、そんな感じの『好き』なんかじゃなくて、女の子として彼の事が『好き』だ。彼に一目惚れした、と言ってもいい。
だから一緒の班になれた時、これはチャンスだと思ったんだけど・・・・・
「でもサスケ君、私が行った頃にはもう終わらせちゃってそうだし・・・・・」
そう、この1ヶ月サスケ君にいいとこ見せようと色々やってるんだけど、サスケ君たら私の予想の遥か上まで行っちゃってるのよねー(泣)。
この前もお弁当作って持って行ってあげたら、サスケ君も手作りのお弁当持って来てて(しかもナルトの分も作って来てた。羨まし過ぎるわよナルト!)、少し分けて貰ったら私のよりよっぽど美味しかったし。
ハアァァァ〜〜〜〜〜、と内なると言うよりいじめられっ子の頃に近い雰囲気でサクラはため息をついた。と、
ふと、微かに匂いを嗅ぎ取った。甘い匂い。
「何これ・・・・・花?・・・・・・・・」
急速に、意識が遠のく。
(これ・・・ま・・・・・・幻・・・・じゅ・・・・・・)
そして、意識は途切れた。
次回はバイオレンス?というか血まみれな予定です。
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