さてと、おばさまに言われた通り生徒同士の組み手にしたけど何考えてるのかしら?
間違いなく横島くん絡みで悪巧みしてるんでしょうけどそうは問屋がおろさないわ。私を講師にしたのは失敗だったわね。
横島くんの力を狙ってるのはおばさまだけじゃないって事を教えてあげる!
「横島さん、野井原さん、私とお手合わせ願えるかしら?」
美神が組み手を始めた生徒達の指導をするために歩いていると体育館の一角からなにやら丁寧な言葉遣いとは裏腹な殺気の篭った声か聞こえてきた。
あれは…横島くんね。
相手の方は知らないけどそれなりに修行してそうな身のこなしをしてる。
少なくともドシロウトの横島くんが勝てる相手じゃないわ。
全く、実力の近い人同士って言ったのに……でもまぁ、しばらくは見物かしら
「弓さん!?是非喜んで!!この横島が手取り足取り腰取りお相手を勤めます!!!」
「わ、若殿!?」
「それではこちらへ」
そう言って弓、横島、緋鞠は物理攻撃は全て無効化される結界へと向かっていった。
六道学園の生徒は大なり小なりあるがたいていが熱狂的な美神のファンである。
その中でも特に弓は美神を崇拝と言って良いほど尊敬し、憧れている。
そんな弓がさきほど聞いた言葉、「美神令子さんにまで手を出すとわ!」
美神おねえさまに手を出した!?あの見るからに冴えないボンクラが!?
そう言えばあいつ、入学初日に私にもチョッカイかけてきましたわ!
これは少し懲らしめてあげる必要がありそうですわね。
それにあの野井原さん、横島さんの式神らしいけれどたいした事はなさそうね、私と人気を二分する存在だしGSの世界は実力主義、この際まとめて身の程をわからせてあげますわ!
と、こうなるなるのは当然の流れだろう。
「ムフフフ…弓さんとくんずほぐれつ愛の授業……」
「…良いのか?若殿、あの牝それなりに経験を積んでいそうじゃぞ?」
「経験!?あんなあどけない顔して実は大人の階段昇っちゃってるのか!?」
「そっちではない!戦闘経験の事じゃ!」
「うげ、マジか?俺なんかじゃ勝てないかな?」
「殺されなかったら御の字じゃろうな」
「…………」
幸せ気分が一転して人生の瀬戸際に立たされてしまった横島は考える。
いくらなんでも死ぬ事はないだろうがきっと痛いに違いない……。
というかなんで自分はこんな勝負を受けてしまったんだろう。
まぁ色香に惑わされたのだがこれはデートのお誘いではなく闘いのお誘いだ。
……お札もろくに使えない俺が勝てる訳ねーじゃん!
「いきますわよ!お互い怪我のない程度に全力で!」
怪我のない程度にと言っているがそんな気がない事は一目瞭然、目がマジだ。
緋鞠もそれなりの使い手とか言ってるし、生きて帰れる気が全くしない。
「な、なんか弓さん怒ってないか…?」
「そうじゃろうな、どうするのじゃ?若殿」
「よ、よし、この横島忠夫実力はないが嘘と挑発は得意だ!」
横島はなにやら情けない事を言って弓をビシリと指差す。
「弓さん!俺を相手にしたければますはこの緋鞠を倒すが良い!」
コケっ!
それを聞いた緋鞠がずっこけるが横島は構わず挑発を続ける。
「どうやら相当鍛えてるみてぇだがうちの緋鞠に勝てるかな!?」
「私は二人相手でもよろしくてよ?」
「うぉ、そ、それはまずいからまずは緋鞠の相手をだな…」
「まぁ、どちらでもよろしいですわ」
弓は内心、どの道二人とも叩き潰すのですから同じ事ですわ。と思っているのだが横島にはわからない。
「よっしゃ、任せたぞ緋鞠!」
「……あとで素振り5000本じゃ」
あきれた緋鞠にそう言われて横島は灰になる。
今、横島は鬼斬り役の力を目覚めさせるためにいろいろ修行をしているのだが素振りもそのうちの一つだ。
横島はもちろん緋鞠も実は力を目覚めさせるための修行方法など知らない。
なのでとりあえず有効そうな修行をしているのだが素振りというのは見た目以上にしんどいものなのだ。
緋鞠はなるべく授業には介入せずに横島に修行を積んでもらおうと思っていたのだが、相手の弓はかなりの使い手のようだし、やたら殺気だっている。
横島に大怪我をさせる訳にもかないので今回は自分がやるしかないだろう。
だがただ自分がやるのでは横島のためにならないので後日修行をさせる事にしたわけだ。
「妖脈は良いのか?」
廃人から復活した横島が緋鞠に問いかける。
やはりなんだかんだ言っても緋鞠の事が心配なようだ。
「半人前の小娘相手にそんなものは必要なかろう」
「そ、そっか…」
「うむ。と、いうわけで待たせたな牝」
「誰が牝ですか!私は弓かおりですわ!」
「早くせねば時間がなくなるぞ」
緋鞠は弓の呼称の修正をさらりと無視する。
「そうでしたわね、どこからでもかかってきなさい!」
「承知!」
弓が言い終わるか終わらないかのうちに緋鞠は一足飛びに間合いを詰め、安綱を抜刀すると弓に斬りかかる。
開始の合図などない、二人がリングに上がった瞬間に闘いは始まっているのだ。
まずは様子見だ。
弓の方も愛用の薙刀で安綱を受ける。やはりかなり修練を積んでいるようで、その動作は淀みなく、流れるように受け流して次の攻撃へと繋げていく。二人とも一歩も譲らずしばらく打ち合いが続いた。
「やりますわね、薙刀の間合いをものともしないとは恐れ入りますわ!」
「私もここまで流されるとは思わなかったぞ、やるではないか牝」
両者共打ち合いながら喋る。まだまだ余裕そうだ。
「牝はお止めなさい!でもこれはどうかしら?食らいなさい!零距離射程の霊波砲!」
「ぬるいッ!!」
弓が撃った霊波砲を素手で叩き落とした緋鞠はそのまま爆煙を利用して姿を隠す。
「くっ!どこですの!?……!?」
弓は姿が見えない緋鞠を必死に探すがフイに背筋に悪寒を感じ、半ば反射的に身体を捻る。
すると背後から一瞬前まで弓がいた場所に緋鞠が左手に構えた安綱を突きの体制で伸ばし、尋常じゃない速度で通りすぎていった。
「惜しい、決まれば必殺だったのじゃがな」
「さ、さすがに突きは危険じゃありませんこと!!?」
「ってゆーか今のは牙○…?」
今までの戦闘にまったくついていけなかった横島だがこれはつっこんでおきたい。
そういや昨日押し入れから引っ張り出して読んでたな……
「うむ、一度やってみたかったのじゃ、やはり新撰組は良いのう。それに当たるとは思っていなかったしな」
どうやら単なる茶目っ気らしい。
だが弓としてはおもしろくない。
人が真剣にやってる時に漫画の技などで遊ぶとは!だいたい私は蒼○様の方が!
「バカにしてらっしゃるのね!」
「そんなつもりはないのじゃがな」
「お黙りなさい!ここからは手加減なしですわ!!弓式除霊術奥義!水晶観音っ!!」
そう叫んだ瞬間、弓の首に付けていた水晶の輪が全身を包む鎧と化し、腕が左右共に2本ずつ増えて計6本になる。
「すげぇ、なんか昔こんな感じにメタリックな特撮ヒーローがいたよな…」
「とくさつ…?どうやらあの水晶を全身に纏って防御力を上げたようじゃな、霊的なものじゃから攻撃力、身体能力も上がっておる。たいしたものじゃ」
「ホントに妖脈はいいのか……?」
「…必要ない」
「参ります!!」
今度は弓が先に仕掛ける、6本の腕を使い様々な角度から攻撃を加えてくるので避けづらい。
おまけに一時的に霊力も増しているので受けるのも一苦労だ。
徐々に緋鞠は結界の隅へ追いやられてしまう。
「もうあとがありませんわよ!これで詰みですわ!弓かおり式除霊術奥義!回転霊波砲六連!!」
6本の腕から時間差を付けて微妙に軌道をずらした霊波砲を放つ。
さっき漫画の技がどーたらこーたら言ってた割にどっかで聞いた事のある技名だ、弓かおり式だし……。
だが威力と効果は抜群で今までの緋鞠なら受ける事も避ける事もできなかっただろう。
しかしインパクトの瞬間、緋鞠の頭から今までしまっていた可愛らしいネコミミが生える。
ドゴーーン!!
「緋鞠っ!!!!」
煙りが晴れるとそこに緋鞠の姿はなかった。
「や、やりすぎてしまいましたの…!?」
弓も顔面蒼白だ
あまりにも舐められていたのでついカッとなってしまった、完全に手加減なしの全力の霊波砲を撃ったのは間違いない。
生半可な妖怪があれをまともに食らったら一たまりもないだろう。そう、生半可な妖怪ならば。
「勝手に死んだ事にしないでほしいのう」
「なッ!?」
「緋鞠、大丈夫なのか!?」
「この通りぴんぴんしておる」
そう言って腰と後頭部に手を当ててセクシーポーズをする緋鞠。
一見無意味な行動だが、これこそ美神除霊事務所式究極奥義、その名も”相手を怒らせてこっちのペースに引き込んじまえ”作戦だ!そのまんまじゃん、なんて言う人は嫌いです(オイ
「まだバカにしますのね!!!?」
「良いよ〜そのままもう少〜し顎上げて目線くれるかなぁ?OKOK、次肩出してみようか!」
「あなたは何をやっていらっしゃるのッ!!」
「ウギャ!」
どこから出したのか、一眼レフを緋鞠に向けて悪ノリしていた横島に弓が投げた破魔札(50円)が炸裂する。
「隙ありじゃ!」
人間、物を投げた瞬間というのは無防備になるものだ。
その隙を突き、ネコミミ戦闘モードになってスピードもパワーも上がった緋鞠が一気に間合いを詰める。
「なッ!?、水晶壁!!」
弓は咄嗟に水晶観音を解除して水晶で作った防御壁を展開する。これで防げなければ何をやっても無駄だろう。
ガキンっ!!
緋鞠の渾身の突きは水晶壁を突き破るまではいかなかったがヒビを入れた。
「か、間一髪ですわ…」
「凄まじい反応速度じゃったな、水晶観音の効果か…」
さっきのは人間に防げるタイミングではなかった。
緋鞠のスピードもそうだが故意か偶然かはわからないが横島がやらかしたボケに気を取られていた弓には到底防げるはずがない。
それでも防げた水晶観音の効能は恐るべきものだろう。文字通り妖怪と同等だ。
「お褒めに預かり光栄ですわ」
「じゃが水晶がそれではもう水晶観音は使えまい?」
「そうですわね、今回は私の負けですわ。そちらにはまだ奥の手がありそうですものね…私の方はもう打ち止めですわ」
弓は素直に負けを認める。
まだ水晶を使った技を使う事はできるのだがどれも水晶観音ほどの威力はない。
それに妖怪の本性を現した緋鞠には例えこのまま水晶観音を使えても勝てなかっただろう。やはりまだまだ修行が足りない、それがわかっただけでも良しとする。
「弓さん、君は頑張った。だけどボクの力が少し勝っていただけさ、どうだい?これから親睦も兼ねて一緒にお茶でも!!」
「あんたは何もしてないでしょうがッ!!」
傷心の美少女に甘い言葉をかける、これぞまさにナンパのキホーン!!!!とばかりに弓を誘う横島だが遠巻きに緋鞠と弓の闘いを見ていた美神が神通棍でしばき倒す。
「うぉぉぉぉ……!み、みがみざん、いつの間に…?」
「最初からいたわよ!」
気付かなかったが美神だけでなく、ほとんどの生徒達が緋鞠と弓の闘いを見物していた。
六道学園の上級生同士でもここまでハイレベルな闘いにはならないので注目されるのも当然だろう。
「美神おねえさま!?あああああの!私は弓かおりといいまして、あのその…!」
「弓さんね、あなたはもう少し冷静な判断力をつけないとそのうち足元すくわれるわよ?」
「え…?」
「でも戦闘技術はもうプロのGS級だわ、その調子でこれからも頑張りなさい」
「は、はい!ありがとうございます!」
さすが一流GSの美神令子。見る所はきちんと見ている。褒める所は褒めて改善すべき点をしっかり伝える、臨時講師としての仕事もきっちりこなしているようだ。
緋鞠にも二三言講評を言うと他の生徒達に続きを始めるように言って、自分はその指導にまわっていった。
その後ろ姿を弓はポゥっとしながら見送る
「嗚呼、美神おねえさま……」
「これが女子高で流行りの百合ってやつか!」
「美神殿しか見えておらぬのう……」
「失礼ですわね!!これはあくまで尊敬の眼差しですわ!」
「それにしちゃ熱が篭りすぎな気が……」
「ポゥっはなかろう?ポゥっは」
「う、うるさいですわ!そんなマニアックな耳の人には言われたくありませんわよ!」
「何を言う、これは自前じゃ」
そう言って緋鞠はネコミミをピコピコ動かす、弓へ言った通り本物である証明のつもりで動かしたのだが緋鞠はネコミミの魅力の絶大さというものを知るには古風すぎていたようだ。
「「「ネコミミ萌ゑーーーッ!!!!」」」
「にゃッ!?」
近くで組み手をしていた男子達がいっせいに叫び、押し寄せる。
そこいらのコスプレっ娘が付ける偽物の耳飾りではない本物のネコミミの魅力は彼らの燃えたぎる情熱を爆発さするのにはじゅうぶんすぎたようだ。
それから緋鞠は安易に人前で耳と尻尾は出さないようにしようと誓うのだった……。まぁ無理だけどね♪
とぅーびーこんてぃにゅー
あとがき
こんばんわハルにゃんです。
今回は難産でした…何回戦闘描写を書き直した事か……。とりあえずようやく形になったので投稿します、でもまだ文章がちぐはぐな気が……うぅ頑張ります。
さて次回はGS原作からの話しを書きますので楽しみにしていただけると嬉しいです。
ではレス返しです。
○山の影様
レスありがとうございます。
<料理を横島に作りに行っているんでしょうか?
残念ながら今のところ料理番は緋鞠に奪われています、しかし緋鞠nの料理はアレなんでもしかしたらばん回のチャンスがあるかも(?)
おキヌちゃんにはもう少ししてからメインの話しをやっていただく予定なのでしばらくお待ちをww
○February様
レスありがとうございます。
もちろん1位は緋鞠ですよぉ。
あ〜確かに”わかどの”とも読めますねぇ、私の中では”わかとの”がデフォだったので気づきませんでした……。
私の書く緋鞠にツボっていただいてホントに嬉しいです!
これからも頑張りますんので応援していただけると嬉しいです。
最後に誤字報告ありがとうございました。
○スケベビッチ・オンナスキー様
レスありがとうございます。
弁当騒動は実はALMAネタだったのですがちょいマニアックすぎましたかね?
最初は今回で横島の力を少し目覚めさせようかとも思ったのですが、いくらなんでも早すぎかな〜と思い今回は緋鞠に頑張ってもらいました。
横島の見せ場は次回に持ち越しです。
水死体……確かにカラーの清水久(しずく)はインパクトでかいかもしれませんね…。
ちなみに私は子供の頃にカキ氷5杯でお腹壊したことがあります……。
最後に誤字報告ありがとうございました。
レス返し終了です。
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