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「蟲と獣のコンチェルト第13話(まぶらほ+GB)」

ラッフィン (2007-02-05 23:43)
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和樹達がメイド達を撤退させていたとき、ピンクパジャマ中隊はどうしていたか?

「大尉!この動物達がジャマで進行できませ・・・きゃあああ」
「きゃああん!こっちも無理です!」
「く!なんなんだ?この動物達は!ああああん」

あのメイド部隊の大半を沈めた動物達の大移動に足止めされていたのだ。
森の中にあった大人数の足跡に、メイド達が森の奥に逃げ込んだと判断し、いざ突入といったときにこの動物達に遭遇してしまった。
完全に不意打ちとなり、瞬く間に呑み込まれてしまう。

「く・・・」

ドォオオオオオン!

アリシアは空に向かってショットガンを一発撃ち放つ。その音に驚いた動物達は一目散に森の中に逃げ込み、ピンクパジャマ中隊はやっと落ち着きを取り戻すことができた。

「全員、状況を確認」
「りょ、了解!」

すぐさま、今の状況を確認させ隊列を整えるように指示をとばす。幸いにも被害はなかったようで数分後には突撃できるようになっていた。きもちを切り替えピンクパジャマ中隊は森の中へ突撃をかける態勢になる。

「突撃!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

アリシアの掛け声とともにピンクパジャマ中隊という水銀旅団の秘密兵器、歴戦の猛者達がメイドを殲滅せんと突撃をしかけた。


第十三話「新生メイド大隊」


「さて、いよいよ敵さんも突入してきたみたいだね」

メイド達を船に押し込み出港させた和樹達は再び森の中に身を隠していた。
チーターが得物を狩るが如く身を低くし、気配を殺して様子を伺う。ピンクパジャマも周囲を警戒しながら進んでいるようだが、森の中で魔里人と戦うとなるともはや結果は見えているといっても過言ではない。それほどまでに魔里人は自然を味方につけることが出来るのだ。

「じゃ、私達が最初に行くわね」
「わかった。気をつけてね」
「「うん」」

ピィイイイイイイイイイイイイイ

和樹の獣笛が森に響き渡り、動物達が再び激しく動き始めた。さきほど、動物の襲撃というか大移動に巻き込まれたピンクパジャマ中隊は『またか!?』と緊張に体を強張らせてしまう。そこに二つの影が奇襲をかける。

「行くわよ矢夜」
「OK。ケイちゃん」

奪還屋が誇る親友コンビの矢夜とケイである。

『筧流針術――飛燕――』
『風鳥院絃術【攻の巻】第弐拾七番の壱――流水の刃――』

強張った体は反応速度を一瞬だけ鈍らせる。二人にはそれで充分な時間だった。あるものは木に磔にされ、あるものは絃によってから娶られる。襲撃をした二人はまたすぐに身を隠した。二人が姿を隠すと再び笛の音が森に響き、動物達の移動が始まる。今度の移動は鳥達で、ピンクパジャマ中隊の頭上を飛び去っていく。それに反応して上を見上げてしまう中隊員達。足元は死角になってしまう。そこに第二の襲撃が開始された。

ボコン!ボコン!

「きゃぁあああああああ」
「うわああああああああ」

突然、足元に大きな穴が開きピンクパジャマ中隊院はなすすべなく穴に落ちていく。穴に落ちていく仲間達に気がつき視線を下に戻した直後、今度は頭上からの襲撃が開始された。

『楼蘭舞踏鞭!呑み込め 洪水の如く(カジャ・ノ・ア・マーヤ)』

幾筋もの軌跡を描き、一条の鞭がパジャマ達に襲い掛かる。この上下の襲撃にますます数を減らしていくパジャマ達。一通り攻撃したら、また姿を眩ます襲撃者。残ったパジャマ達は次はどんな攻撃をされるのか戦々恐々としている様子。最早、冷静な者はいないだろう。隊長のアリシアでさえ緊張で冷静な判断ができない状態である。パジャマ中隊は自然に固まり始め周囲を警戒するようになった。

「くそ、次はどこから来るんだ?」
「どこだ?」
「どこからくる?」

皆回りを慎重に注意深く観察する。さきほどの襲撃からしばらくたったのだが、一行に次の襲撃が始まらない。それでも、警戒を解くわけにもいかずに、時間だけが過ぎていく。

「まだか?」
「もう、こないの?」

それから、しばらくたっても襲撃がこない。隊員達は長い緊張状態が続き疲れがたまってきていた。アリシアは敵の目的がこれだということに気がつくも、打開策も見つからず、時間だけが流れていく。やがて、隊員達の注意力が低下し始める。それでも、襲撃は来ない。

「ハァハァ・・・」
「どこだ?どこからくる?」

それからさらに時間が経過し、パジャマ中隊の全員が汗をダラダラたらし疲労困憊の様子になっていた。銃を持ち続けていた腕も鉛のように重く水平に持っていられない隊員も続々と出ている。隊長のアリシアも水平に持つことが困難になってきていて、何も襲撃されてないのに壊滅の危機に陥っていた。


「そろそろいいんじゃないかしら?」
「ここまでくると可哀想に思っちゃうね」
「そうだね。でも、最後にちょっと仕掛けるよ」
「慎重すぎない?」
「念には念を、だよ。それに、彼女達も鍛え抜かれた歴代の戦士達だからね。油断したらやられちゃうもん」

ピンクパジャマ中隊の状態を気配を殺しながら観察していた和樹達。彼女らの疲労が限界に近いことを見て取ると行動に移そうとする。和樹は彼女達を一目見て、リーラ達と同様に彼女らも歴戦の戦士だと直感し、ケイ、矢夜、松葉の3人が慎重過ぎると思うほど、入念に追い詰めていった。和樹は相手に情けをかけたら自分が死ぬという戦場を知っているからこそ、頭を働かせ油断なく闘うのだ。
そして、ピンクパジャマ中隊に最後の襲撃がかけられた。

ピィイイイイイイイイイイイイイイ

森に今日何度目かの獣笛が鳴り響き、動物達の動きが激しくなった。
再三のこの動物達の大移動に疲労した体に鞭打って、パジャマ中隊のメンバーは対策を練る。先ほど、アリシアが見せた対処法で。

ドドドン!

数人のパジャマが銃を真上に撃つ。その音に我先にと怯えて逃げ出す動物達。それを見て、安堵のため息を吐く暇もなく、次の襲撃を受けた。

ヒュパン!パシィイイイ!!

鞭と絃が木々の合間を縫ってくるが如くパジャマ中隊に襲い掛かってくる。

「きゃああああ」
「ああああ」

鞭や弦が飛んでくることがわかっていたが疲労の溜まった体ではついていけず、次々と戦闘不能に陥いるパジャマ中隊。多少、冷静なものは木の裏に隠れてやり過ごそうとしているものもいたのだが、鞭は木に引っかかると伸びて勢いをさらに増し襲い掛かるのだ。哀れ、隠れたものは隠れないものよりも強烈なダメージをくらい戦闘不能になってしまった。
対して絃は鞭とは違い、数十数百本の絃が四方八方へ散らばり、異なる方向から同時に襲い掛かってくるので逃げることもできないままに戦闘不能にされてしまうのだ。ちょっとえげつない攻撃だと思うのは秘密だ。

「隊長!」
「止むを得まい、引くぞ!」

どこにいるかもわからない敵と戦闘はできない、このままいても被害が増えるだけなので、撤退の指示を出すアリシア。残った数十人のピンクパジャマを連れて森からの脱出を図る。が、撤退路に人影を見つける。

「仲間を置いてどこに行くの?」

両手に飛針を構える矢夜である。襲撃しているのはこいつだと一目で判断できた。アリシアは一瞬驚いたものの、相手が一人とわかると、強行突破を決断する。

「そこをどきなさい!さもないと命はないわ!」
「それは聞けないわ。通りたかったら私を倒してみなさい」
「しかたない。撃て!」

ガガガガガガガガガ

数十人が一斉に射撃を開始し、その撃ち放った銃弾が矢夜を貫かんと襲いかかる。矢夜は腕を交差させて銃弾を防ぐつもりのようだ。アリシア達はすでに逃走することを意識していたのだが、それが叶わないと直後にわかるだろう。

ガギギギギギギギギギ

「な!!」
「嘘!?」
「素手で弾丸を防いだ!」
「そのうえ無傷ですって!?」
「人間じゃないわ!」

パジャマ中隊が放った銃弾は全て矢夜の交差した両腕に命中していた。しかし、その銃弾は矢夜の細腕を貫通するどころか、傷一つつけることなく地面に落下したのだ。さらに、弾は自分のスピードと矢夜の腕の板ばさみに合い潰れてコインのようになっていた。もちろん、パジャマ中隊が使っていたのは本物の銃であり、人間の腕など簡単に貫通できるものである。それが、自分達より下手すると年下で細身な矢夜の腕にとめられたことが信じられないのも当然である。

「く・・・怯むな!次弾、撃て!」

ガガガガガガガガガガガガ

さきほどのは何かの間違いだとばかりにピンクパジャマ中隊のメンバーは銃を撃つ。悲しいかな、それが、これが現実だと悟ることになってしまった。

「もう、わかったかな?これが現実だってことに」

そこにはさきほどと変わらずに立っている矢夜がいた。

「うわああああああああああ」

錯乱し、またも矢夜に銃を撃とうとした者がいたが、それを撃つことはなく意識を刈り取られた。

「少し眠っててね」

いつの間にいたのか、背後から和樹がパジャマ中隊の隊員を気絶させていたからだった。気がつくとアリシア以外の隊員は全員気絶させられていて、残っているのはただ一人、アリシアだけとなる。

「さて、残るはあなた一人だけです」
「銃を下ろして、素直に投降してもらえますかね?」

前門の矢夜、後門の和樹。アリシアに逃げ場はない。
それでも、アリシアは投降することはなかった。銃を矢夜のほうへ放り投げると、姿勢を低くしスカートの裾をたくし上げ隠し持っていた特殊警棒を伸ばし矢夜に殴りかかる。

ガチィイイ

「『筧流針術―孔針剛』・・・経絡を針で突いた私の腕は鋼と同様。銃弾すら弾くこの腕にそんな棒が効くわけないでしょ」
「ちっ・・・」
「逃がさないわ。『攻の型―孔針波』!!」
「きゃああああ」

棒を腕で受け止めた矢夜から距離をとろうと後退しようとしたアリシアを逃さず、矢夜の攻撃がアリシアを捉えた。アリシアは吹き飛ばされるも後ろにいた和樹に受け止められる。アリシアを受け止めた和樹は暴れられないように間接を極め、動きを封じ込めた。こうなっては抵抗もできない。ついにアリシアは観念したのだった。

「一思いに殺しなさい。今、私達を逃がすとまたあなた達を襲いますよ」
「まぁまぁ落ち着いて。その話はリーラ達がきてからしましょう」

アリシアを宥めると和樹はケイにリーラと連絡をとってくるように頼み、ケイはそれを受け伝令に走る。

「え?水銀旅団も第二装甲猟兵侍女中隊も退けたんですか?」
「嘘だろ?たった四人で、あの大軍を?」

ケイから水銀旅団並びに第二装甲猟兵侍女中隊を退けた報を聞き、自分の聞いた言葉が理解できない様子のリーラ達。それもそうだろう。自分達の何倍の兵士を有していた大軍がわずか四名の少年少女達に短時間で攻略されたのだ。信じろというほうが無理である。しかし、現実に両軍の姿が見られないために受け入れるしかなく第五装甲猟兵侍女中隊のメンバーは狐につままれたような顔をしていた。

「アリシア!?」
「ってことは、さっきの言葉は本当だったんだな」

10分後、ケイから連絡を受けたリーラ達が和樹達と合流し、両手を縛られたアリシアとの対面を果たしていた。これを見れば、ケイの言葉は真実だと認めなければならない。まさに言葉を失っていたリーラ達に和樹は声をかける。

「さて、これでアフターサービスは終わりだよ。この人をどうするかはリーラ達が決めてね。じゃ、僕達はこれで「待ってください!」・・・ん?」

仕事が終ったので去ろうとした和樹の言葉を遮り、リーラが待ったをかける。その顔は何か大事なことを言おうとしている顔であり、和樹は真剣に返す。それを確認するとリーラはため息を一つ吐き、言葉を紡いだ。

「この度は私ども第五装甲猟兵侍女中隊を救っていただきありがとうございました。皆の代表としてお礼を申し上げます。そのついでといってはなんですが、式森様にお願いがございます」
「なんでしょうか?僕達にできることはもうないはずなんですが・・・」
「はい、私どものご主人様になっては頂けないでしょうか?」
「「「「へ?」」」」

リーラの願いに和樹をはじめ、ケイ達3人も驚き間抜けな声を出してしまう。和樹は混乱しつつもなんとか疑問を問いかけることに成功する。

「なんで僕なんですか?」
「それは、私どもにご主人様がいらっしゃらないのはご存知でしょうか?」
「はい、ネリーから聞きましたが」
「そうです。落ちこぼれの監獄と言われていて一癖も二癖もある我が隊を雇ってくれる人はいません。それどころか、嫌われていて爪弾きにされている状態です。その私どもに救いの手を差し伸べてくれた、優しくしてくれたのは式森様達だけでした。そして、さきほど見せてもらった強さにこあなたこそが私たちが仕えるべき主であると確信した次第です。どうか、私達の主になって頂けないでしょうか?」
「それだとケイさん、矢夜ちゃん、松葉ちゃんも該当すると思うんだけど?」
「そうですね。しかし、その御三方の中心は式森様です」

何かべた褒めされていると思い照れる和樹。だが、それと主になるのは別問題である。まず、リーラ達を雇うだけのお金がないこと。雇っても住まわせる場所がないこと。ご主人様という立場に抵抗があることなど3点が主な理由である。難しい顔をして悩んでいる和樹にリーラ以外の人にも声をかけられる。

「私からもお願いします。私達にあんなに優しくしてくださったのは式森様だけです」
「ネリー・・・」
「わ、わわ私からもおね、お願いします」
「エーファ」
「私からも頼むよ。またあんなバカどもがくるかもしれないし」
「私からもお願いします」
「セレン、ロヴェルティーネ」

「どうでしょうか?私達のご主人様になっていただけないでしょうか?」

ここまで言われてしまったら、断るという選択肢は存在しなくなってしまう。和樹が後ろを振り向くと『わかってるわよ。仕方ないわね』という表情のケイ達。それに苦笑して『ごめん』と謝るとリーラ達に振り返り、言葉を発する。

「わかった。君達の主になることを受け入れるよ」

「「「「「「「「「「ありがとうございます!!ご主人様!」」」」」」」」」」

和樹の言葉に歓声が沸き起こる。こうして、式森和樹はリーラ達第五装甲猟兵侍女中隊のご主人様となる。誓約日はまだなので今日は形だけで後日、改めて誓約するということで決まった。
メイド達は歓喜をあげ、涙を流している者までいるくらいだ。それを見ると主になってあげてよかったなと思う和樹。


「さて、次はアリシア及びピンクパジャマ中隊の処遇だけど、リーラはどうするつもりなの?」
「全て式も・・・和樹様の判断に従います」
「でも・・・」
「ご主人様の意思が私達の意志です」
「ハァ・・・わかったよ」

これは絶対に意見を曲げそうにないと思い、自分で判断することにした。

「リーラ」
「なんでしょうか?」
「ピンクパジャマ中隊ってどんな部隊なの?」
「はい、水銀旅団の中で最強の部隊だと認識しております。戦闘力、組織力もそうですが、何よりもどんな不利な状況になろうとも絶対に折れない強い精神力を持っています」
「へぇ、すごいな」
「そして、一番の特徴は、彼女達は元はメイドだったことです」
「え?元メイド!?」
「はい、捕虜にされメイド服を脱がされた元メイド達がピンクパジャマ中隊なのです」

アリシアのほうを見ると、親の敵を見るが如く睨んでいた。和樹はやれやれとため息を吐く。

「はやく殺せ!私達は降伏より死を選ぶ!さもなくば、何度でも貴様達の命を狙い続ける」

殺気を放ちいまにも斬りかかってきそうだ。幾人かのメイド達がアリシアを取り押さえる。和樹はそれを気にした様子はなく歩み寄る。

「ねえ、君の名前は?」
「・・・・アリシアだ」
「そう、アリシア。水銀旅団から抜ける気はない?」
「どういう意味だ?」
「僕達の仲間にならない?って言ってるの」
「私達にメイドになれと?馬鹿を言え!何故我らが敵であるメイドにならなければならんのだ!!」
「でも、君達も元メイドだったんでしょう?」
「それはもう過去だ!今はピンクパジャマ中隊という水銀旅団の一員だ!それにわれらはメイド達から見れば裏切り者だ。捕まれば人間としての誇りを切り裂かれる。我らはメイドとしての誇りは失ってしまったが、人間としての誇りまで失うつもりはない!裏切り者は裏切り者らしく戦場で死ぬしかないのだ!」

和樹はアリシアから高い誇りと信念を感じた。そして、心の奥底に隠れている後悔の念を。自分達は裏切り者だが、信念は死んでいないと。

「君は勘違いをしているよ」
「なんだと?」
「僕は『僕達の』仲間にならないか?っていったんだ。誰も『メイドの』なんていってないよ」
「どこが違うのだ?お前もそこにいるメイド達のご主人様なのだろう?」
「うん、大きな間違いだよ。僕は彼女達の主になることは承認したけど、MMMに所属するつもりは全くないんだ」

「彼女達もMMMでは異端として嫌われているんだよ。そんな扱いをしているMMMに僕が好意を持つと思う?答えは否。むしろ、嫌悪すら持ってるんだ。だから、リーラ達の主人になってもMMMからの命令等は一切受けない。僕達は独立した組織のようなものになるのかな?だから、もう一度言うね。僕達の仲間にならない?そして、僕の元で誇りを取り戻してみないかな?」

和樹の言葉にアリシアは言葉を失ってしまう。そんな様子に考える時間も必要だと思った和樹はリーラ達に振り向き話しかけた。

「みんな、勝手なこといってごめん。さっきのが僕の気持ちなんだ。だから、嫌だったら主の件はなかったことにしてくれて構わないよ」
「いえ、私の気持ちは変わりません。むしろあなた様に仕えることを選んでよかったと強く感じました」
「私も同感です。あれは私達のことを考えてくれているからこその言葉ですから」
「感謝こそすれ、嫌がるなんてことはしねぇよ」
「はい、私。感激しました!」
「ありがとう。みんな」

これにより、リーラ達と和樹の絆はさらに深くなったようだ。一方のアリシアもどうやら決まったようだ。さて吉とでるか凶とでるか。

「仲間になるとどうなるのだ?」
「ただ君達の所属が水銀旅団から僕になるだけだよ」
「処罰は?」
「そうだね。パジャマを脱いでもらって、メイド服に着替えるくらいかな」
「わかった。私達は敗北した側だ。従おう」
「受け入れてくれてありがとう」

こうしてピンクパジャマ中隊は消滅し、リーラ達の部隊と併合する。ピンクパジャマ中隊と第五装甲猟兵侍女中隊との仲は意外にも良好である。戦場で直接戦っていなかったこともあるが、片や、もう一度メイドとしての誇りを取り戻せることを喜び、片や、組織でも嫌われ者だった自分達を受け入れてくれたことを喜ぶ。それをしてくれた人物を慕う者同士だからだろう。
二つの中隊は一つになり名前を式森和樹直属親衛侍女大隊と変え、大隊長をリーラ。第一親衛侍女中隊の中隊長にセレン、第二親衛侍女中隊の中隊長にアリシアを据える。
その夜は、リーラ達の居城でみんなの親睦を深めるために親睦会が開かれた。あちこちで元ピンクパジャマ中隊と元第五装甲猟兵侍女中隊の隊員達が仲良くおしゃべりをしている。その中でケイ達3人もこの部隊創設の立役者として感謝され照れるということがあったのは別の話。そんな中、城のテラスに出ている影が。
真新しいメイド服に身を包み、夜空に浮かぶ月を眺めている。

「どうしたの?アリシア」
「あ、ご主人様」

和樹はテラスにいたアリシアに近づいていく。和樹の隣にはリーラがいた。さきほどから和樹の傍を離れようとはしないのだが、いつも一歩後ろに下がった位置にいた。

「いえ、裏切り者である私達がここにいて本当にいいのだろうかと思いまして」

仲間になりアリシアの和樹達に対する言葉使いは変わった。リーラ達には対等に接している。彼女は裏切り者である自分がこんないい待遇で受け入れられたことに疑問を感じていたのだ。

「その上、メイドとしての誇りをもう一度取り戻すチャンスを与えてもらいました」
「迷惑だった?」
「いえ、迷惑などあるはずがありません!ですが、裏切り者である・・・「ストップ!」え?」
「裏切り者とかはもう言っちゃ駄目だよ」
「ですが・・・」
「君達は僕に仕えてるんでしょ?僕は君達に裏切られてないよ」
「私達がMMMを裏切ったのは事実です」
「それを取り戻すために僕に仕えるんでしょ?」
「・・・・」
「それに僕は君達がどんなに誇り高く、信念を持っているかを知っている。そんな君達が裏切るはずがない」
「ですが、また捕虜にされたらどうなるかわかりません!!」
「大丈夫だよ」
「なんでですか!」
「僕が君達を守るから」
「え?」
「僕が君達をどんな外敵からも守るから大丈夫だよ」

和樹はアリシアに微笑みながら断言する。その言葉にアリシアは暖かな気持ちが広がっていく。気がつくとアリシアは和樹に抱きついて涙を流していた。

「わわ!!」
「少しの間だけこうさせてください」
「・・・わかったよ」

アリシアに抱きつかれて慌てたものの、涙している姿を見て和樹は優しい気持ちになってアリシアを抱き返す。そのぬくもりを感じるとアリシアの心に安堵感が広がっていき、不思議と安らいでいった。

「守るって本来なら私達の台詞ですよ?」
「そうだっけ?女性を守るのは男の義務だと思うんだけど」

そうとぼける和樹にアリシアは小さな声で『ありがとうございます』と微笑む。そして、これからもよろしくお願いしますと。

「ああ、和樹様に抱きつくなんて・・・でも、今回はしょうがないですけど、今回だけですからね」

隣では和樹に抱きついたアリシアを見てリーラが拗ねていたのは秘密だ。


あるところに一人の少女がいた。

メイド服に身を包み、己の仕事に誇りを持っている少女だった。常に鍛錬を怠らず、責務をまっとうするそのさまに将来を期待されている少女だった。

ところがある日、水銀旅団に攻められ彼女の部隊は敗北、彼女は捕虜として捕らえられた。
その日から彼女の苦悩の日々が始まった。水銀旅団は捕らえた彼女達の有能さに目をつけ仲間になれといってくる。だが、彼女達には誇りがそれを承認するはずもなく拒否した。それで諦めるはずもなく、彼女達を拷問にかけ無理やり仲間に引き入れようとしたのだ。

後ろで縛られた状態で、ある一室に案内された少女達が見たのは誇りが積もった汚い部屋だった。彼女達のメイド魂が『この部屋を掃除しろ!』と叫んでいるのだが、取り押さえられている彼女達は身動きがとれない。半日の間、その部屋に入れられたが、掃除をさせてはもらえなかった。

あるときは、泥などで汚れた服の前に立たされ目の前でその服を着られていくのをじっと見させられる。

またあるときは目の前でお皿を割られた。

あるときはみんなが働いている中、彼女達だけがイスに座っているという状態でいさせられた。

このような過酷な拷問が1ヶ月も続いた。彼女達は最初は耐えていたものの日に日にやつれ、精神が擦り切れていく。そして、とうとう降伏したのだった。

そんな彼女達がとある島でメイドを一掃するという命令を帯び、言った先で運命の出会いをした。これからの彼女達に幸あらんことを。


あとがき

メイド編終了!!やっとだぜ。ラッフィンです。

今回でメイド編終了しました。結局、アリシア達も受け入れちゃいました。まぁ、予想通りの展開です。

シリアスの展開がやっとこさおわったところで、やっと私の得意な展開に持ってける〜!!と喜びを感じております。

次回は修学旅行編です!和樹達の活躍にこうご期待!

では、また次回!


レス返しです。ご主人様


D,様

こうなりました!なぜか最後のほうはケイ達の出番がなくなってしまいましたが。


BLESS様

アハハハ、キノセイデスヨ。キノセイ。ナニヲイッテイルンデスカ。


覇邪丸様

シンシア達は今後、出番があるのかは未定です!


秋桜様

今回は電波受信できませんでした・・・。
でも・・・でもでも!次回こそは!!


黒冬様

すいません、セレン萌化計画を立てているのですが今回はいい策が思いつかず、できませんでした。いずれ、書くつもりですので、応援よろしくお願いします!

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