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▽レス始

「蟲と獣のコンチェルト第12話(まぶらほ+GB)」

ラッフィン (2007-01-16 00:07)
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戦場に4つの影が飛び出した。彼らは今行われている戦争をとめるため、自分達を頼ってくれたメイドのために闘う。彼らは魔里人という日本の先住民族の末裔であり、奪還屋という大切なモノを奪われた人のために働く仕事人でもあった。


「和樹君、まずはどこから攻めるの?」
「水銀旅団の主力がメイド部隊を攻めているから、水銀旅団の上層部を狙おう」
「なるほどね。今主力がいないから、絶好の機会ってわけね」
「そういうこと!」
「じゃ、いこうよ!」

戦闘経験の多い、和樹と松葉を前衛に医療の心得のある矢夜と後方支援ができるケイが後ろについているという布陣である。目指すは水銀旅団の上層部。目標に向かってノンストップで駆け抜ける。
水銀旅団の本陣も和樹達の姿を捉える。

「カーボン卿!!」
「どうした?」
「我らの陣地に接近する影を感知しました」
「ほう、メイドにしてはなかなかやるな。して、数は?」
「4つです」
「は?私の聞き間違いか?すまん、もう一度頼む」
「は!4つです」

兵の報告に何かの間違いかと確認をしたが、答えは同じだった。キョトンとした顔は次の瞬間に大笑いに変わった。

「あ〜はっはっはっは。たったの4人だと?4人で我々を攻略するつもりか?馬鹿馬鹿しい。我々を舐めているのか?それとも4人が限界なのか?所詮はメイドということか・・・すぐに兵を向かわせろ。迎撃だ」
「は!!」

水銀旅団太平洋方面指揮官、サーの称号を持つカーボンは兵に指示を出すと、メイドとピンクパジャマの戦いを映しているモニターに目を向け呟いた。

「我々の勝利は目前だ。この勝利を機に一気に忌まわしきメイド服をこの世から消し去ってやるわ!」

この数十分後に自分達が壊滅するとは夢にも思わないだろう。


第12話「アフターサービスのお時間です」


『目覚めの嫡羅よ、すべての閉ざされし力を白日の下に解き放て!』

ケイの目覚めの嫡羅が和樹達の潜在能力を覚醒させる。前には水銀旅団のオタク兵が。軽く見積もっても数百は下らないだろう数である。たいして、こちらは4人。普通なら勝負にすらならないのだが、この4人には常人にはない力があり、それは数の利なんて一瞬で消し去ってしまうほどの力を持っている。

『百獣擬態!土竜擬』

和樹は普段の数倍の速さで地面を掘り進み、第一波の背後から跳び出る。和樹が掘り進み始めた場所には矢夜が立ち、そこに手を置いて何かを呟いている。

『死の嫡羅よ。すべての生きとし生けるもののぬくもりを冥府の暗闇に誘いたまえ』

矢夜の奥の手にして文字通り『必殺』の死の嫡羅が発動する。それによって水銀旅団は一瞬にして・・・・死なない?
そう、矢夜が『殺した』のは水銀旅団のオタク兵ではなく、和樹が掘った地面だったのだ。地面は急激に風化しちょっとの衝撃で砂と化す。そこに大勢の体重がかかると?結果、まるで消失マジックのように綺麗に消える。というか大きく開いた穴に落ちた。

「なんだ!?一瞬でやられてしまった!!」
「ひぃいいいい!!」

大勢が一瞬でやられてしまった光景を目の当たりにしたオタク兵の歩みが止まる。ある者はすでに逃亡を開始している。兵士が止まったところを容赦なく追撃が襲う。

「楼蘭舞踏鞭!呑み込め 洪水の如く(カジャ・ノ・ア・マーヤ)」

一鞭しかないはずの鞭が縦横無尽に軌跡を描き何本にも見える。まるで、網を広げたように鞭が奔り、その網に捕らえられた者達を容赦なく弾いていく。

「第一陣は突破したみたいね」
「すぐに第二陣がきてるよ!」
「んじゃ、次は任せるね。松葉ちゃん」
「了解」

今度は松葉が最後尾になり、ケイが最前列に上がってくる。旅団の第二陣は構えを取り、一斉射撃を開始した。

ガガガガガガガガガガガガガガガ

「風鳥院絃術、守の巻、第壱拾六番の弐、渦潮の陣!!」

ケイの絃によって生み出された渦潮は銃の弾を呑み込み決して、後方に貫通することを許すことはない。
ケイが稼いでくれた時間で松葉の技が完成する。

『眠りの嫡羅よ。今こそ全ての生きとし生けるものに死にも等しき安らぎをもたらしたまえ』

ドサドサ・・・

眠りの嫡羅によってほとんどの人が強制的に眠りに入り、嫡羅の届かなかったものは何が起きているか理解する前に和樹と矢夜によって眠らされた。

「これで大体は終ったわね」
「後は、本部にいる元凶とそれを護衛する精鋭部隊だけね。まぁ、精鋭って言っても本当に精鋭なのか、はたまたアレ系のなのかは予想できないけどね」

松葉は今眠らせている兵士達を指差しながら言う。和樹達も同じ意見だったので、苦笑して頷いた。

「とりあえず、今メイドと闘ってるパジャマ部隊に連絡されると厄介だから通信部を潰しましょう。それと本部も手早く制圧したいし」
「なら、二手に別れよう。通信部へは僕と矢夜ちゃん。本部へはケイさんと松葉ちゃんってとこかな?」
「・・・本当は和樹君と一緒にいきたいけど、了解よ」
「ケイに同じく」

交渉の得意なケイはどうしても本部組にして親玉と会話してもらわねばならない。後は実戦経験豊富な和樹と松葉の内どちらかと行けばいいのだが、通信組の矢夜のフォローを考えると松葉がケイと一緒に行ってもらうことになる。
それを理解した本部組は渋々だが、納得してくれた。4人は二手に分かれ、旅団攻略を開始する。

「侵入者だ!」
「迎撃しろ!」

第一、第二陣共々いとも簡単に突破してきたケイと松葉に気がついた旅団員に動揺が走る。その隙をつき次々と鎮めていく二人。本部が制圧されるのもさほど時間がかかることはないだろう。

「カーボン卿!」
「どうしたのだ?」
「侵入者です。先ほどの接近してきた影の者です」
「バカな!!あの兵の群れを突破してきたというのか!」
「しかし、現実にこちらにむかってきています!」
「むぅ・・・ピンクパジャマ部隊に連絡だ」
「は!りょうか・・・(ビシィイイイ)
ドサ・・・

「む?どうした・・・ひぃいい!!」

命令を実行しようとした兵士は背後からの一撃で眠っていた。振り返ってみると、そこには鞭を構えている女と腰に手を当てている女が睨んでいた。
その眼光に腰を抜かしそうになるカーボン卿。

「初めまして。あ、自己紹介するつもりはないわ。私達の用件は一つ。この島から即座に撤退しなさい。これは警告じゃなくて命令だから拒否権はないわ」
「なんで貴様らの言うとおりにしなければならん!貴様らには関係が(パシィイイン)ひぃいい!?」

反論するカーボン卿の言葉の途中だが、強制的に鞭で地面を叩き黙らせる。

「拒否権はないって言ったはずよ?即座に撤退しなさい。痛い思いをしたくなければね」
「ふざけ(バチイイイイン)ひゃう!!」
「何度も言わせないで。これは命令よ」

ケイの脅しに怯える仕草は見せても決して承諾しないカーボン卿の態度にだんだんとイライラが募るケイ。同じことを何度も言うのは存外にイライラするものである。そんなケイの心情も知らずに悪あがきをするカーボン卿。

「ふ、ははは。そんなこといっていいのか?私が連絡をとればピンクパジャマ隊という水銀旅団最強の軍団が貴様らを襲うぞ?」

その言葉に苛立ちを通り越して呆れてしまうケイ。隣では松葉がため息を吐いている。その二人の反応に激昂するカーボン卿。

「なんだ!その反応は。はったりではないのだぞ!」

理由がわからないようであるカーボン卿に二人は丁寧に説明してあげた。

「どうやってその最強部隊に連絡するのかしら?」
「あ・・・」

通信機はケイ達の左側にあり、カーボン卿の位置からだとそこに辿りつく前にケイ達の攻撃が届いてしまう。

「たとえ、連絡できてもその人達が辿りつく前にあなたを倒せばいいのよ」

メイドと戦闘中の彼女らを戻すにしても、ここにくるには時間がかかる。その間にカーボン卿をとっちめるには充分な時間が空いてしまう。
二人の説明にカーボン卿の顔色はいよいよ真っ青になった。

「それ以上近づくなぁああ!これを見ろぉおお!」

カーボン卿は奥の手を隠し持っていた。それは一丁の拳銃である。護身用の小型中であるが、殺傷能力はあるので人間には充分だろう。「ただの」人間には。

「その銃がどうしたの?そんなことより条件を受けると早くいいなさい」

自分達につきつけられた銃を気にもつめずに言い放つケイ。カーボン卿はそれが信じられなかった。

「銃だぞ?お前らは死ぬんだぞ?」
「なんで私たちが死ななきゃいけないの?」
「お前らは銃を知らんのか?」
「知ってるわよ。たかが銃如きで私達を殺せるわけないじゃない」
「和樹君に私達の心は殺されたけどね〜きゃぁあああ♪私ったら恥ずかしいぃ///

松葉は平和な子であった。

「それ以上くるな、撃つ!撃つぞ!!」
「撃つなら撃ちなさい。もっとも撃ったらどうにかなるのは覚悟することね」
「うわぁあああ」

ドン、ドン、ドン!

カーボン卿の言葉に怯まず二人は歩み寄る。ついに我慢できなくなったカーボン卿は銃を撃ったのだ。しかし、その銃弾は二人に届くことはなかった。

「風鳥院絃術『守の巻』第拾五番の三『繭玉の盾』」

幾本もの絃がケイの奏でる波動により、まるで盾のように銃弾を弾く。まさか防がれるとは思わなかったカーボン卿は驚愕に動きをとめてしまった。松葉は銃弾をケイが弾くとすぐさまカーボン卿の首に楼蘭舞踏鞭を巻きつけ後ろに周っていた。

「さて、条件を飲むでしょう?」

だんだんと首にかかっている鞭をひっぱり食い込ませていく。ここまでくるとさすがのカーボン卿も飲まざるを得なかった。

「飲む・・・から、これ・・・とい・・て・・・」
「やっと飲んだわね・・・でも、銃を撃ったからおしおきね」

『楼蘭舞踏鞭!彷徨え 独楽の如く(ロブ・ノ・ルウ・ラ)』

カーボン卿の体が勢いよく回転しながら宙に飛び上がり落ち気を失った。

「これで、こっちは終わりね」
「うん、予想以上に簡単だったね」

ピピピピ

司令室にある通信機が音を出していた。どうやら誰かが通信してきたようだ。ケイと松葉はもしかしたらピンクパジャマか?と警戒を抱くも、松葉は通信機を取り連絡を受ける。

「こちら司令室」
『あ、その声は松葉ちゃん?』

通信をしてきたのは和樹だったようだ。松葉は安堵のため息を吐きケイに「和樹君から」と伝える。ケイのほうも相手が和樹からとわかると肩の力を抜き松葉と同様のため息を吐いた。

「和樹君が連絡してきたってことはそっちも終ったの?」
『うん、こっちは制圧完了したよ。そっちもってことは松葉ちゃん達も終ったんだね?』
「うん」
『じゃ、後はこの人達を島から追い出そう』
「了解」

通信を終え、ケイに和樹との話しを聞かせる。ケイも頷くと早速気を失っているカーボン卿と最初に気絶させた一般兵を松葉と二人で引きずっていく。外まで行くと和樹と矢夜が待っていた。

「和樹君、どうするの?」
「うん、矢夜ちゃんが向こうで船を見つけたからそれに全部押し込めようと思うんだ」
「わかったわ」

4人は基地内にいる全ての水銀旅団を船へと誘導する。ある者は素直に従い、ある者は力ずくで従わせた。嫡羅によって眠らされた者は松葉がそれを解き起こし、船へと誘導する。無事に全員を詰め込み終わると、船を出向させた。

「真直ぐにあんた達の家に帰れ。怪しい動きをしても見張りをつけているからすぐわかるからな。もし、僕達の言うとおりにしなかったときは、人食いサメの餌食にしてやる」

と最後に脅しをかけておくことも忘れなかった。


「さて、次はメイドとピンクパジャマだね」
「あ、ピンクパジャマはどうするの?司令官は返しちゃったし・・・」
「彼女らは・・・あとで考えるよ。それよりも大人しくさせよう」
「・・・何も考えてなかったのね」
「さぁ、早く戦争を沈めに行くよ!」
「無理やり話しをかえないでよ」

和樹は冷や汗を流しメイドとピンクパジャマが激突している戦場へ向かう。冷ややかな視線を向けるケイ、松葉、矢夜から逃げるように。和樹に冷たい視線を向けた3人はすぐにため息を吐き苦笑を浮かべ和樹を追った。

「しょうがないわね」
「今はあの人達をとめますか」
「そのためにいるんだもんね」

話にのってくれた3人にわからぬようにホッと安堵のため息を吐き、和樹は苦笑を浮かべるのだった。

――メイドVSピンクパジャマの戦場――

「シンシア大尉!」
「どうした?」
「後ろからピンクパジャマの別働隊が現れこちらに攻撃をしてきています」
「何!?」
「現在、ペルティエ小隊が迎撃に向かっていますが・・・」
「エリカ小隊も応援に向かわせろ」
「は!」

報告にきたメイドに命令をするとシンシアと呼ばれたメイドは再び前を向いた。そこは小高い丘になっており、ピンクパジャマ中隊と自分の中隊の戦闘を伺うことができている。現時点で戦況は五分五分と見ていたのだが、後ろからの別働隊による奇襲でわからなくなった。少なくともこちら側が不利になることは予想できる。
シンシアは忌々しいとばかりに舌打ちをした。

「まさか、こんなことになろうとはな。せめて後、一個小隊でもいればまた変わったのだろうが」

本来なら第五装甲猟兵侍女中隊(正確にはリーラただ一人を)を本拠地にいるご主人様のところに案内(拉致とも言う)するだけのはずであった。そのために部隊の半分しか連れてこなかったのだが(ここでの設定ではシンシアの部隊はリーラの部隊の4倍もの人数がいることにしています)、水銀旅団がくるとは予想外だった。ピンクパジャマ部隊の数はシンシアがつれてきた部隊よりは少ないのだが、本拠地に長期間留まっていたシンシア達とは違い彼女達は移動に慣れている。そのために、長旅で疲れていたシンシア達とは疲労度が違っていたのだ。動きの鈍っているメイド達にピンクパジャマ部隊は果敢に攻め、人数が少ないながら五分五分と善戦していた。さらにそこで奇襲攻撃である。戦況はピンクパジャマに傾こうとしていた。

「アリシア大尉、別働隊が作戦を開始しました」
「そうか。こちらも暴れるとしよう。作戦変更、作戦名『信長』」
「了解!作戦名『信長』各自、準備しろ!」

ピンクパジャマ中隊も別働隊が動いたことにより動きを変える。中隊長であるアリシアの命令の元、ピンクパジャマ中隊は高い士気を持って行動を起こす。彼女らは旅の疲れなど感じさせない。シンシア達、第二装甲猟兵侍女中隊との場数を感じさせるものであった。

「壁部隊、前へ!」
「爆撃部隊、急げ!!」

警備隊で用いられているようなシールドを持ったパジャマが最前線へと並び、2列目には槍を持つパジャマが並ぶ。最後尾の三列目には三列編成のバクダンを抱えたパジャマが並んでいる。

「作戦名『信長』開始!」
「てぇえええええ」

合図とともに最後尾からバクダンが投擲される。バクダンはメイド達の最前線におち、爆発。地面の砂も巻き上げ目晦ましになる。

「シールド部隊!展開」
「第二陣、突撃ぃいいいい!!」
「おおおおおおおおおおおお!!」

シールド部隊が左右に開くとその間から槍部隊がメイド達にむけて突撃していく。これが作戦『信長』である。かの有名な長篠の戦いで織田軍が戦国最強と歌われた武田騎馬隊を破った作戦をヒントにしている。

「シンシア大尉、ピンクパジャマがこちらに特攻してきます!」
「向こうは完全に勢い付いている、このまま戦闘をすればこちらが不利だな。後退し態勢を立て直す」
「了解!」

シンシアの冷静な判断で第二装甲猟兵侍女中隊は後退を開始する。その先にあるのは深い森である。そこで身を隠すようだ。こうして彼女たちは確実に追い詰められていっていた。


「メイドが押されてるね」
「そうだね。先に弱ってるメイド達を片付けようか?」
「そうね。そうしましょう」

和樹達は戦場につくと、戦いには加わらずに状況を把握することに専念していた。そして、メイド達が後退していくのを見て、まずはメイド攻略をすることに。かくして和樹達は森の中へと消えていく。

「アリシア大尉!メイド達が後退する模様」
「何か罠かも知れない。各自、慎重に追撃するように!」

ピンクパジャマは後退するメイド達を警戒しつつ、慎重に追撃をする。それにより進行速度はゆっくりとしたもので、メイド達は後退をなんなくできたのだった。

「ペルティエ、エリカ小隊に連絡。我らと合流し、敵を待ち構える」
「了解」

シンシア達は鬱蒼と生い茂る森の中でピンクパジャマを迎え撃つために陣を敷いた。そこで別働隊にあたっている2個小隊がこちらに来る間に様々な準備をして万全な態勢を持ってピンクパジャマ中隊を迎え撃つつもりであった。森は姿を隠すには絶好の場所である。そこでシンシアは二手に分かれる。木々に姿を隠す本隊と森の先に進む分隊とに。分隊は二個小隊ほどの人数である。深い森といっても足跡を隠すことは難しい。何人もの人間に踏まれれば、どうしても痕跡は残ってしまうものだ。シンシア達はそれを逆手にとることにする。二個小隊を先に進ませたのは自分達はこの先に向かったと思わせ、先に進んだところを後方から奇襲をかけて撃退するという作戦だった。さらに反対側から向かってくるペルティエ、エリカ中隊と先に進んだ二個小隊は合流したときに姿を隠し、本隊が後方からの奇襲を仕掛けたときに相手の混乱に乗じて攻撃を開始する手筈になっている。
これが成功すればシンシア達の勝利だったであろう。が、これが彼女達の失敗であった。何故なら、森は魔里人のテリトリーであるから。

「ペルティエ、エリカ両小隊。森の中に入りました」

伝令から報告が届き、後はピンクパジャマ中隊がこの森の中を進んでくるのを待つばかりになったときだ。森の中が騒がしくなった。森に棲んでいる動物達が騒ぎ出したのだ。メイド達は突然騒ぎ出した動物達に何か不吉なことが起こるのでは?と思い出す。事実、この後起こることは確かに『彼女達にも』不吉なことだっただろう。

ピィイイイイイイイイイイイイイイイイ

森に指笛か口笛か判断がつかないが、そのような音が響き渡る。その直後、森の動物達が一斉に大移動を開始。その移動経路上にいたメイド達は動物の波に呑まれてしまう。

「きゃぁああああ」
「いやあああああああ」
「そんなとこに入っちゃ駄目〜!!」
「イタイイタイ・・・引っかいちゃ嫌〜」

もう揉みくちゃである。動物達の大移動が過ぎ去ったときには、ボロボロになったメイド達の姿が。ほとんどが倒れていて、立っているものもフラフラでそれがやっとと言った様子。そこに四つの影がシンシアの前に舞い降りる。

「初めまして」
「何者だ!?貴様らは!」
「僕達は奪還屋。仕事で君達を排除しにきたんだよ」

シンシアと対峙するのは和樹。他の3人は和樹を護るように周囲を警戒している。薄暗い森の中なので姿は影によってよく見えないが、突然現れた和樹達に多少驚くもすぐに冷静さを取り戻すシンシア。さすが、厳しく訓練されたメイド達を束ねる隊長だ。

「そうか、私達も仕事を終えたらすぐに撤退する。それまで待ってもらえないだろうか?」
「無理です。僕達はあなた達の目的であるリーラから仕事を受けてますから」
「なんだと!」
「そろそろ、お引取り願います」
「ふざけるな!」

ドン!

シンシアはスカートの中に隠していた小さな拳銃を引き抜き発砲した。もちろん、殺すつもりはないため、足を狙ったのだが。足に銃弾を受けた和樹は蹲るどころか、細かく千切れ空に舞っていく。そして、森自体が唸っているような低い声が響く。

『見たか、我ら魔里人が操獣術―影朧―の不思議を』

「何!?」

シンシアが撃ち抜いたと思っていたモノは、小鳥が覆いかぶさっていた木であった。本物の和樹はシンシアの後ろにいて、それに気がついたシンシアは振り返ろうとするも、足払いをされて抱きかかえられる。倒れ掛かっているシンシアに和樹の左手は腰、右手は首に回され、まるで、社交ダンスの最後の決めポーズのようになっていた。 顔はかなり近く角度を変えるとキスをしているように見える。

「お引取り願えますか?」
「言うとおりにすると思うか?」
「今、あなたの命を握っているのは僕ですよ?僕が右手にちょっと力を加えるだけであなたを殺すことだって出来る」

そういうと和樹は右手に少しだけ力を入れる。首を圧迫された形になっているシンシアは和樹の言っていることは真実だと悟った。だが、メイドにとって主人の言うことは絶対であるために引くことは出来ない。

「ご主人様の言うことは絶対だ。私達は引くことは出来ない」
「どうしてもですか?」
「どうしてもだ!」

しばし見詰め合う二人。ケイ達はそんな二人に嫉妬を感じるが仕事だと我慢をしている。和樹もシンシアも真剣な目でお互いの目を見詰め合っている。そして、お互いに悟る。『こいつ(この人)は引かない』と。

「そうですか、手荒な真似はしたくなかったんですが」
「ほう、力ずくか?私達全員を相手に出来るのか?」

自信たっぷりに言い放つシンシア。今までのやりとりの間に倒れていたメイド達も起き上がり完全にケイ達を包囲していたのだ。それに気がついたシンシアは形勢は逆転したと思い言ったのだ。それでも、和樹は余裕で言う。

「ええ、力ずくでお引取り願います。松葉ちゃん!」
「OK!」

和樹の言葉に応え、松葉は眠りの嫡羅を発動。たちまちメイド達は深い眠りへとおちた。その様子を呆然と見ていたシンシアに向かって和樹は微笑みながらのたまった。

「では、お引取り願いますね」

その言葉を最後にシンシアの意識は途絶える。


シンシアが目を覚ましたとき、海の上であった。回りを見回すと自分達の乗っていた船に乗せられていることに気がつき、先ほどまでいた島はもう小さく見えるくらいになっている。

カサ・・・

「ん?なんだこれは?」

そこで、シンシアは自分の手が何かを握っていることに気がつく。それは紙だった。広げてみるとそこには。

『次に同じことをやろうとしたら壊滅させます。お覚悟を

                                     式森 和樹』

と書いてあった。間違いなく、私を気絶させたあの少年だ。とシンシアは思う。そして、これに書いてある通りのことを実行することも。思い出せるのはあの真直ぐな黒い瞳。

『面白い』

なぜかそんな風に思えシンシアは笑みを浮かべる。

「式森和樹・・・・か」

もう遠くに小さく見えるメイドの島を見つめながら呟くシンシア。そんな彼女の頬はほんのりと赤く染まっていた。


あとがき

次回、メイド編終了です。  セレン萌キャラ化計画を検討中のラッフィンです。

メイド編、長くなりました。正直、ここまで長くなるとは思わなかったです。2話くらいで終らせる予定だったのに、なぜか気がつくとこれで五話目・・・。なんででしょw

ピンクパジャマ達の処遇は決めました!みなさんがなんと言おうと決めました!やっと決まりました(泣)というわけで・・・次回をお楽しみにw

では、また次回wアギュ〜♪


レス返しです、ご主人様♪


良介様

あやw萌えさせられたとはなによりですw
今後はレギュラーは難しいですが、準レギュラーとしてちょくちょくと出そうと思ってますのでご安心を。そして、現在はセレンを萌キャラ化しようと計画中。

萌えあがれ!!私の小宇ち(グシャ)・・・後ろからの砲撃により沈黙。


覇邪丸様

今回は前回は特別ですよ?和樹がもろ好みのリーラだからなったのですよ?そのへんを間違えないように(泳ぐ目)


D,様

むしろ、働かなくても良いのでは?と思っちゃったりw
でも、まだ和樹がご主人様と決まったわけじゃ・・・え?なるんだろ?って?それは今言ったらつまらなく・・・え?ならせろって?だから、それを言ったら面白くなく・・・はえ?やれって・・・あの、なんです?その100tって書かれたハンマーは・・・え?ちょっと!待って!!

ぎゃあああああああああああああああああああ!!


秋桜様

今回はどうでしょうか?イマイチ、中途半端な妄想になってしまったような・・・
不完全燃焼ですわ・・・

さて、次回はどんな電波が受信できるんだろ?
受信開始〜♪


黒冬様

メイドに代わっておしおきよ〜♪ってな感じでおしおきの話でした〜♪
ピンクパジャマは次回に持ち越しです。意外と長くなってしまったので・・・
メイド編も次回で終了です。いや〜、長くなっちゃったな〜。
次回もお楽しみにw

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