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「男三人麻帆良ライフ 第七話(GS+ネギま!)」

宮本 (2007-02-04 01:37)
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「いつまでも逃げられる訳じゃないし・・。はあ、僕どうしたらいいんだろう・・・。」

茶々丸襲撃に失敗した翌日、ネギは山の上空を飛んでいた。

カモと明日菜と一緒に作戦会議を開いていたネギだったが、カモが調べた結果エヴァンジェリンは15年前まで600万ドルの賞金首だったという事実が判明したのだ。
エヴァンジェリンが茶々丸の報復にくるという考えが現実味を帯びてきたため、さすがに明日菜も事態の深刻さを知り青くなる。
そしてネギをよそに明日菜とカモはネギが寮にいると他の者が巻き込まれるのでは?と言い出した。
精神的に追い詰められたネギは泣きながら窓から文字通り飛び出したのだ・・・。

明日菜や木乃香、他のみんなに迷惑をかけるわけにはいかない。どこか遠いところへ逃げようと思うネギだがいつまでも逃げれないだろうとため息をついた。
そして山を見て故郷、ウェールズの事を思い出した。

「はあ・・・ウェールズに帰っちゃおうか・・そうすればエヴァンジェリンさんもあきらめるだろうし。・・・ん?」

若干ホームシックになったネギは前方不注意から辺りの木より一際高い木に引っかかる。
はじかれる杖、宙に浮く小さな身体・・・。
滅多に無い事に驚き、慌てる。

「し、しまった!!落ちるー!?」

さすがにこの位置から落ちたらまずい。
ネギは落下しながら混乱する思考を何とかしようとするが、怖いものは怖い。

だが、そろそろ地面か?というところで横から何かがぶつかってきた。

「う、うわ!?」

ぶつかった何かはネギを抱え込むとそのまま横に滑り込むように転がった。
バシャバシャと水音がして、ネギの服が濡れる。
そして・・・

「大丈夫か?坊主。」

「あ・・・雪之丞さん。」

川岸で男の上に乗るような状態で抱えられていたネギは目を開け、目の前の見覚えのある男の名を呼んだ。
雪之丞はなぜか上半身裸で、いくつもの傷のある鍛え上げられた身体があらわになっている。

「・・・凄い。」

男の子供の多くは筋肉への憧れがある。
ネギは思わずつぶやくと、雪之丞の体へ手を伸ばした・・・。


      『男三人麻帆良ライフ 第七話』


伊達雪之丞は本日非番。
警備の仕事が休みなのをいい事に麻帆良学園都市に近い山へ来ていた。

「横島は修行して強くなっているんだろうに、俺は警備・・・。仕方がないとはいえ、イラつくぜ。ジジイもなにかもっとおもしれえ仕事をくれりゃいいのによ。」

先ほどまで武術の基本の型を行っていた雪之丞は上半身裸になり、川岸へやってきていた。
そこへ聞こえてきたのは聞き覚えのある泣き声のような情けない声。

「上か?って、落ちてる!?」

ピートからネギが自分に愛を打ち明けてきたのはやはり勘違いだったのだと聞き、次会ったら誤解を招くような事を言うなと言おうと思っていた雪之丞は声のする方を見て落下してくるネギに気づいた。

タイミングをはかり、川岸を蹴ってネギに横からぶつかる。
落下エネルギーがきつかったが普段から鍛え抜いている体はそれをものともせずキャッチに成功した。
後は着地、ネギを抱えたまま川に落ち、横に動いていた力そのままに川岸までたどりつく。

「大丈夫か?坊主。」

「あ・・・雪之丞さん。」

とりあえず雪之丞はネギに声をかける。
ネギもこちらに気づいたらしく、名前を呼んできた。
そして・・・

「・・・凄い。」

そしてネギはぽつりとつぶやくと、雪之丞の体へ手を伸ばした。

「お、おい。」

雪之丞の上半身の筋肉を確かめるように触るネギ。

その時、雪之丞の耳にがさがさと草を掻き分ける音が聞こえてきた。
ネギも気づいたらしく音源に目をやる。

「ニンニン・・・。」

細い目の少女がそこにはいた。
木の陰から、頬を染めてこちらを見ている。
少女の視界に入っているのは上半身裸の男の上に乗った男の子供、しかも先ほどまで子供は男の体に手を這わせていた・・・。

「し、失礼したでござる。まさかこのようなところで逢引とは・・・。噂は本当だったでござるか。」

少女はそそくさとその場を後にする。
ネギと雪之丞は今の状態に気づき、慌てて立ち上がった。

「誤解だ〜〜〜!!」
「誤解です〜〜〜!!」

二人は誤解を解くべく慌てて少女、長瀬楓の後を追いかけた。


「へー、土日は寮を離れてここで修行をしているんですか?」

「そーでござるよ。」

ネギと楓、そして雪之丞の三人はネギを真ん中に並んで会話をしていた。
濡れた服を干しているので毛布に包まっているネギがくしゃみをすると少し風が巻き起こるがそれを楓は気にしていない。
雪之丞は楓の言う修行というのに興味があるようだ

「しかし二人が土日は寮を離れてこの山で逢引をしているとは思わなかったでござる。」

「「だから違う(いますよ)!!」」

同時にネギと雪之丞が突っ込む。

「そうそう、誤解だったでござるな。ならば雪之丞殿はこの山で何を?」

「俺も修行だ。」

「ほう。雪之丞殿も修行でござるか?」

「ああ。俺は強くなければいけないからな。」

なんの気負いもなく言う雪之丞。
それを興味深げに見るネギと楓・・・。
そうでなければいけないという決意を口にするにはあまりにも自然に当然の事を言ったような態度。

「・・・なんでか聞いていいですか?」

「誓ったからさ。今のおまえよりちっちぇえ時にな。」

失礼かと思いながらもたずねたネギに雪之丞は何も考えず迷いなく答えた。

「すごいでござるな。自分が目指すものを見据えて進む。それに全く疑問を抱いていないというのは。」

「当然だろ?ずっとそうだったんだから。強くなるのは悪い事じゃないしな。それを手に入れる手段やそれの使い方に問題ありって奴はいるだろうが。
俺もいくつか回り道をした事はある。でもそれもまた経験だ。」

回り道をした。だがそれによって手に入れた力もあるし、手に入れた友達もいる。
雪之丞はメドーサの部下だったころの自分を思い出した。

「・・・いつか手合わせしてみたいものでござるな。」

「年下の女に手を上げるのは趣味じゃないけどどうしてもっていうならもんでやるぜ?」

雪之丞は好戦的な笑みを浮かべた。

「胸を・・・でござるか?」

「え!?ダ、ダメですよ、雪之丞さん!僕の生徒に手を出すなんて!!」

「ち、違う!!揉むっていうのは稽古をつけてやるって意味でだな・・・」

ボケる楓、慌てるネギ、そして弁解する雪之丞。
その喧騒が続き、疲れたように雪之丞はため息をついた。

「・・・長瀬だっけ?おまえとの手合わせは勘弁だ。代わりに俺のダチとやるといい。」

「ダチでござるか?」

「ピートさんですか?横島さんの方ですか?」

興味深々といった感じでたずねる楓、ネギは二人の男を思い出す。
雪之丞はにやりと笑った。
この少女はこのスタイルで中学生。横島ならばかなり困惑し、悩み、ロリコンの称号と煩悩の狭間で苦しむだろうと。
だが彼は知らない、横島が龍宮真名というハイレベル中学生とすでに出会い、新たな世界の扉を開きかけた事を・・・。

「横島の方だ。やつなら楽しい戦いをしてくれるぜ。」

楓にからかわれた雪之丞は逆に横島を使い、からかってやろうと思い、くくっと笑う。
その時、ネギが口を開いた。

「あの、横島さんってどれくらい強いんですか?」

ネギは最近知り合った横島の事を聞けるのでは?と思いたずねた。
すると雪之丞は懐かしそうな顔をしたり苦々しげな顔をしたりしてからつぶやいた。

「・・・大した事なかったな。」

「え゛!?」

「まあ最後まで聞け。俺が一番最初にあいつと戦った時は大した事無かったらしい。でも俺は勝てなかった。ダブルノックダウンで引き分けだ。
それでその後はダチっていうか戦友になったんだが、いつも戦いの中心になんでかあいつがいたんだよ。
なぜか横島が中心にいて、動き回って、馬鹿やって、最後は俺達が勝っていた。」

ネギはそれを聞いて、横島が言っていた事と合わせて横島像を思い浮かべる。
戦いの重要なところ、その局面で仲間を守り、敵に打撃を与える横島・・・。素直に凄いと思う。

「他人のためにあんなに強くなれる奴を俺は知らねえよ。」

最後に雪之丞は誇らしげに胸を張った。
雪之丞の脳裏に浮かぶのは上司の美神令子とともに戦うため自分とともに妙神山で強くなり、魔族の前に飛び出してきた横島。
ルシオラという魔族の女のために魔神にすら立ち向かい、倒してみせた横島。
いつも馬鹿ばっかりやっている奴ではあるがいざとなったら頼りになる最高の親友だ。

「ほう、それはぜひ手合わせしてみたいでござるなあ。」

「おう。基本的に女の頼みは断れない奴だから見つけたら頼んでみるといい。渋るかも知れないが押しに押せば大丈夫だ。」

完全に横島に興味を持ったらしい楓に雪之丞は答えてやる。

(他人のために強く?)
雪の日の記憶、幼い頃の悪夢、そしてその悪夢の中で出会えた希望・・・。
それらがネギの頭の中に去来する。
自分はどうなのだろう?会いたいから?怖いから?・・・それは全てが自分のためで。

「雪之丞さんは・・・、雪之丞さんも他人のための強くなるんですか?」

思わずたずねた。

「俺か?う〜ん、最初はそうだったかもな。でも理由っていうのは時とともに変わったり、増えたりするもんだ。究極的には自分のため。
最初の誓いがあって、色々な理由があって、それで俺が強くなりたいって思うから強くなるんだ。」

ニッと雪之丞は笑った。

「坊主、なんか悩んでるみたいだな?
男ならでかくなるまでに悩みは何個も何個も抱えるもんだ。でも、その悩みをむりやり考えないようにして逃げちまったらお終いだぜ。
男ならぶつかって、乗り越えてみせろ。」

思い浮かべたのはメドーサの部下だった時の友人。
魂まで魔に堕ちる事で本当の強さなど得る事はできないという事をわかっていただろうに最後の最後まで目をそらして死んでいった男・・・。

雪之丞はネギの頭をクシャッとなでた。
ネギがハッとしたような顔をしたのを見て楓はほーっと感心した。やはり男同士通じ合うものがあるのかと思い、うんうんとうなずく。

「ふ〜む、やはり雪之丞殿もなかなかの御仁。手合わせ願いたいでござるな〜。」

「・・・断る。この間妙な疑惑を言いふらされた時と言いおまえといい、どうも坊主のクラスのやつらとは相性が悪いらしい。こんどはなにが起きるか予想もつかねえや。
じゃあ俺はもう行くぜ。坊主にはおまえがついてるから大丈夫だろ。」

「あいあい。」

「あ、雪之丞さんありがとうございます。」

雪之丞はその場を去って行く。
その後姿を見ていた二人だったが、見えなくなると楓がネギの方を振り返った。

「ネギ坊主、しばらく拙者と一緒に修行でもしてみるか?」

「え?」

―― ぐう〜、ぎゅるるるっ
返事をしたネギの腹がなる。

「ふふ・・・ここでは自給自足が基本でござる。岩魚でも獲ってみるでござるか?」

楓の言葉にネギはうなずいた。


「ははは。それで果たし状を出すのかい?」

「もー、笑わないで下さいよ〜。」

一晩楓のところに泊まり、楓にも励まされたネギは元気を取り戻して月曜日には朝早くに学校に行った。
エヴァンジェリンに誰も巻き込むことなく魔法使い同士で決闘をしてほしいと果し合いを申し込もうと思ったのだ。
だがエヴァンジェリンはカゼをひいて休みだという。
またサボりかと思い、エヴァンジェリンの家を目指して学園都市内を歩き始めたネギだが途中でピートと出会い、同じ方向に行くと言うピートと一緒に歩いていた。

年は離れているがイケメン外国人二人組みが一緒に歩いている姿は道行く人々の注目を集めている。

「ごめんごめん。でも一対一で決闘って本気かい?相手は600年も生きている真祖の吸血鬼だろ?」

自分は700年以上生きているバンパイア・ハーフだがそれをおくびにもださず言う。

「はい。力は封印されているみたいですし、それに僕の生徒です。本当は悪い人じゃないと思いますから。」

学園長などに相談すればいいんじゃないかと思うのだが、それを考えず自分の生徒だからと一人で解決しようとするネギは必ずしも正しいとはいえない。
一人で解決しようとして失敗し、それがもとでもっと大きい問題になる事くらいいくらでもある。
だが今回の件は学園長も知っている事であり、ネギが思うとおりにやればいいという事らしい。
それにエヴァンジェリンはネギを殺したり、大怪我させたりするようなつもりもないそうだ。

ピートもネギが思う通りにやればいいと考えつつ、その純粋さとまっすぐさに目を細めた。
本当は悪い人じゃないと思う。それを本気で信じて疑っていない。
純粋さは、ひどく裏切られた時大きな泥沼にはまることになるだろう。
まっすぐさは、悪意ある壁にぶつかった時に折れ曲がる事もあるだろう。
ネギの純粋さ、まっすぐさをまぶしく思いつつもピートは少しこの少年の事が心配になった。

「あ、そうだ!ピートさん雪之丞さんと仲いいですよね?」

「な、仲いい?・・・う〜ん、友人という意味ではよい友人だと思うよ。」

ネギの言葉にピートはこの前聞いたネギ、雪之丞との三角関係疑惑を思い出して冷や汗を流した。

「土曜日に山で雪之丞さんに会ったんですよ。その時に雪之丞さんは強くなるためにって言ってたんです。」

雪之丞が強くなりたいから修行をしていると言っていたとネギはピートに話す。
そして雪之丞の友人であるピートは何を目指しているのか聞いてみたくなったらしい。

「僕かい?うーん、僕はねえ・・・。」

さてどうする?とピートは考えた。
向こうの世界の事は言わないつもりだ。だがそれではオカルトGメンの事は説明できない。

「身分や貧富、人種や種族の差に関わらず他人の役に立ちたいと思ったのさ。」

「え?じゃあピートさんも『立派な魔法使い』を!?」

ピートの言葉にネギは自分も目指している『立派な魔法使い』を連想した。

「う〜ん、『立派な魔法使い』だけがそういう仕事ではないから一概には言えないけどね。」

苦笑してそれに僕は魔法使いじゃないし・・・と続ける。

「へ〜。じゃあピートさんは他人のために頑張っているんですね?」

「それは違うよネギ君。」

『立派な魔法使い』に似た目標を持つピートにキラキラと輝く目を向ける。
だがそれにピートは違うと言う。

「へ?」

「他人のために頑張る、聞こえはいいけど僕はちょっと違うと思うんだ。僕は僕がそれをしたいから頑張っているつもりだよ。」

「え〜っと・・・。」

「僕は自分のためにそういう仕事につきたいと思っている。他人のために何かしたいと思っている事でもそれは自分がそれをしたいからするんだ。他人のためにっていうだけではそれは押し付けなんじゃないかと僕は思う。
『立派な魔法使い』になってる人達にもそれぞれ『立派な魔法使い』として頑張っている理由があるんじゃないかな?
まあ考え方は人それぞれだから僕は自分が正しいなんてとても言えないけどね。」

ちょっと難しかったかな?と言って照れくさそうに頭をかくピート。

ネギはそれを聞いて考え込んだ。
世のため人のために陰ながらその力を使う『立派な魔法使い』。
だがその『立派な魔法使い』の人達にもそれぞれに『立派な魔法使い』として頑張っている様々な理由があって・・・。
そう思うと『立派な魔法使い』が少し近い存在に思えたから不思議だ。

「ピートさんはどうしてそれをしたいって思ったんですか?」

今度はもう一歩深くたずねた。

「う〜ん、生きている多くの命達は自分の生まれを選べないよね?人種だったり、生物としての種族だったり・・・。そういうどうしようもない理由での迫害とかは昔も今も多い。僕はそれを何とかしたくてね。」

「そうなんですか・・・。」

ネギは納得したようにうなずく。

「まあネギ君はまだ十歳なんだ。もっと考えればいいさ。それとね、ネギ君は問題を一人で解決しようとしているみたいだけど、一緒にそれを考えてくれたり解決に手を貸してくれようっていう人はいないのかい?」

「え?」

「君が問題を何とかしたいと思うのは君の意思だ。それは頑張るといいよ。でも君を心配してくれている人達の存在を忘れちゃいけない。その人達が君を心配して手伝いたいと思うのはその人達の意思だろ?
その意思を君にぶつけているのなら君はそれに対してはぐらかすんじゃなくイエスかノーかは別としてしっかり君の答えを返した方がいいんじゃないかと思うよ。」

ネギは明日菜とカモを思い浮かべた。
事情を知っていて、自分の事を気にしてくれている一人と一匹・・・。
自分は二人に果たし状の事も何も言わずに動こうとしている。それは正しい事なのか?

「桜ヶ丘4丁目29・・・着いたよネギ君。」

「え?あ、はい。」

「じゃあ僕は向こうだから。とりあえず気をつけてね。」

「分かりましたピートさん。ありがとうございます。」

ネギはピートに手を振り返すと可愛らしいログハウス、エヴァンジェリンの家に向かって行った。


「あ、兄貴!?こんなにボロボロになって!なにがあったんだ!?」

「ネギ、あんたどっか行ったと思ったらどうしたのよそれ!もしかしてエヴァンジェリンに!?」

「え、いや・・・ちょっと。それより二人に話が。」

ピートと別れ、エヴァンジェリンの家にいったネギだったが成り行きからエヴァンジェリンの看病をする事になりその寝言に父の呼び名が出てきた事から気になってついエヴァンジェリンの夢を覗いてしまったのだ。
エヴァンジェリンからほうほうの体で逃げ出したがネギはボロボロになってしまっている。

「話?なによ。」

「はい。実は僕、今日エヴァンジェリンさんのところに一対一の決闘を申し込みに行ったんです。」

「「ええ!?」」

驚く一人と一匹。
ネギは果たし状のことを話す事にした。
ピートも言っていたように明日菜とカモが自分を心配してくれているのは確か。
それならば自分はしっかり考えている事を話し、そしてそれでも一人で行くべきだと思った場合は二人にちゃんとそれを言うつもりだ。

「な、なんで勝手にそんな事してるのよ。」

「そうだぜ兄貴!水くせえ!!」

「うん。他人に迷惑をかけたくなくって・・・。」

ぽかっとネギの頭が叩かれる。
顔を上げると明日菜がこっちを睨んでいた。

「他人に迷惑をかけたくないっていうけどね、それであんたがやられちゃったりしたらこっちも気分悪いわよ。ここまで知っちゃってるのに何も知らないとこであんたがやられた時、私が何事も無かったように学校通えると思ってるの?」

「あ、明日菜さん・・・。」

「少しくらい頼りなさいよ。まだそんなに長い付き合いじゃないけどさ、それでもあんたが一生懸命だって事は分かる。
向こうには茶々丸さんもいるんだし、あんたがエヴァンジェリンと一対一で戦えるくらいの手伝いはしてあげるわよ。」

恥ずかしいのか顔を赤らめて言う明日菜。
ネギはそれを聞いてしっかり考えてから、ぺこりと頭を下げた。

「よっしゃ!それじゃ早速仮契約だ!!」

「「な、なんでそうなるの!?」」

「だって兄貴がいつエヴァンジェリンに狙われるかわからねえんだぜ?戦いが始まってからじゃ仮契約する暇なんてないだろ。」

「う・・・。」

ネギが唸る。

「それに、仮契約をしていたら召喚もできる。つまりいつ兄貴が襲われても姐さんを呼び出せるってわけだ。いざという時に姉さんがいなかったら二人がかりで兄貴がやられちまう。」

「う・・・。」

明日菜が唸る。

「さらに、パートナーはアーティファクトが使える!その能力しだいじゃ茶々丸を無力化できるかもしれねえし姐さんの危険も減る。

「「ううう・・・。」」

最後に二人が唸り、顔を見合わせた。
そして顔を真っ赤にする。
仮契約といえばキス、しかも唇で・・・。
だがやっておいた方が相手が少しは安全になるのでは?とお互いに考える。
状況が状況なだけに恥ずかしいという理由だけでそれを先延ばしにする事は二人には難しかった。

「え〜い!いくぜ!!『パクティオー』!!」

じれったい二人を見かねてカモはその足元に魔法陣を書いた。
足元から光が湧き上がり、二人を照らし出す。
魔法の光による胸の高鳴り以外のドキドキを感じながら二人の顔は近づいていった・・・。


エヴァンジェリンはネギが見舞いに来た翌日、風邪が治ったので学校に行った。
そしてどうせ学校にいるのだしとネギの授業に出席してやるとネギは嬉しそうにはしゃぎ始めた。
だが実のところ嬉しいのはエヴァンジェリンも同じ・・・。

「・・・どうだ?」

「予想通りです。やはりサウザンドマスターのかけた「登校の呪い」の他にマスターの魔力を押さえ込んでいる結界があります。この結界は学園全体に張りめぐらされていて大量の電力を消費しています。」

「ふん、10年以上気づけなかったとはな。」

パソコンに端末を接続し、ハッキングを行っている茶々丸の横に立ってパソコンの画面を覗き込んでいるエヴァンジェリンは自嘲する。

「しかし・・・魔法使いが電気に頼るとはなー。え〜と、ハイテクってやつか?」

「私も一応そのハイテクですが・・・。」

二人は会話をしながら歩きだした。
向かうのはお気に入りのスポット、屋上。

「まあいい。おかげで今回の最終作戦を実行できる訳だな?」

「そうです。」

「よし、予定通り今夜決行するぞ・・・フフフ、坊やの驚く顔が目に浮かぶわ・・・って横島、おまえ何をやっている?」

ご機嫌で笑っていたエヴァンジェリンだが双眼鏡を目に当てて遠くを見ている横島を発見し、何をやってるのかたずねる。
しかしよほど集中しているのか横島は双眼鏡を目から離さず、返事すらしようとしない。
ムッとしてさらに声をかけようとするエヴァンジェリンの耳に茶々丸の声が聞こえてきた。

「・・・あの方向、双眼鏡で見れる距離の範囲、横島さんの行動パターンを考慮するとテニスコートを覗いているものと思われます。」

――― ごすっ

「みいいいいぎゃあああああああ!!目が、目がああああああああ!!!!」

「こんの愚か者が〜〜〜!!って、・・・これは?」

エヴァンジェリンは無言で手のひらで双眼鏡を叩いた。
ごろごろと転げまわる横島。
そんな彼の元から転がってきた二つの文珠をエヴァンジェリンは拾い上げる。
『拡』と『大』。その文珠を見てエヴァンジェリンはぴくぴくと頬を引きつらせた。

「き〜さ〜ま〜は〜!!この文珠がどれだけ貴重なものなのかという自覚はあるのか?うん?おまえの前の飼い主はその辺ちゃんと躾けてくれなかったのか?」

「あ〜、やめて!幼女に踏まれて気持ちいいなんて思いたくない!!」

「誰が幼女だ!!」

この!この!と横島を踏みつけるエヴァンジェリン。
数分後、少し気がすんだのか踏み付けを中断し、首を傾げた。そしてあろう事か多少まともに聞いてしまった。

「おい横島、どうして『拡』『大』なんだ?覗きならば『透』『視』の方がよかったんじゃないか?」

横島は何を言っているんだとばかりに不満げな表情をして指をちっちっちっと振る。

「分かってない。本当に分かっていないぞエヴァちゃん!俺がいつもいつも裸ばかりを狙っていると思ったのか?」

「・・・違うのか?」

「ああ。テニスコート、そこには男の浪漫がつまっている。
ひるがえるスコートから伸びる白くなまめかしい太もも!時にめくれ上がり、その姿をさらす尻!そして運動によって時に一部が隆起し、体の動きに合わせ躍動する乳!!
それら全てが我々を魅了してやまない!チラリズム。これは時として裸より艶かしく、そして美しい。
だが悲しいかな覗きで鍛えた俺の動体視力を持ってしてもこの映像の遠さはどうしようもない!だからこの『拡』『大』の文殊であたかも俺もあの乳、尻、太ももと共にテニスコートにいるかのような・・・」

「あ〜わかったもういい。詳しく聞くものじゃないな、こちらの精神が侵食されておかしくなってしまう。」

エヴァンジェリンは突如風邪がぶり返してきたかのような頭痛を感じて頭を抑える。
そして自分の従者の変調に気づいた。

「どうした茶々丸。何か気になる事でもあるのか?」

「い、いえ・・あの・・その・・・申し訳ありませんマスター。ネギ先生はすでにパートナーと仮契約を結んでいます。」

「なに!?」

初めて聞く情報にエヴァンジェリンは驚く。

「それは聞いていないぞ、何故黙っていた!?相手は誰だ!?」

「・・・相手は神楽坂明日菜です。なぜ報告しなかったのかは・・・自分でもわかりません。申し訳ありません。」

申し訳なさ気にうつむく茶々丸。
そのような茶々丸は始めて見るため毒気を抜かれたエヴァンジェリンは「まあいい」と言おうとするが・・・

「ああ、それなら俺も知ってたぜ。神楽坂明日菜ってあの将来有望そうな女の子だろ?ネギと一緒にいた・・・。」

「貴様もかあ!!」

「ぬがはあああ!?」

エヴァンジェリンの飛び後ろ回し蹴り。
その可愛らしい見た目に似合わぬアグレッシブな攻撃に横島は吹っ飛ぶ。そして・・・

「「あ・・・。」」

茶々丸とエヴァンジェリンが声をあげた。

「な、なんでやああああああ!!」

二人の耳に聞こえる横島の叫び声が少しずつ離れていき、ぐしゃっという音がした。

「・・・茶々丸、誰にでも間違いはあるよな?」

「え、あ、はあ・・・。あのマスター、私はいかなる罰でも・・・。」

「・・・大丈夫誰にでも間違いはあるんだ。それはこの私とて例外ではない。」

いつになく優しげなエヴァンジェリン。

「とにかく今夜だ!もしただのつまらんガキだったらその時は坊やの血液を吸い尽くしてくれる!!」

下の方で聞こえてくる「大丈夫か!?」「救急車あああ!!」「自殺?他殺!?事件の匂いが!!」などという声はつとめて無視し、エヴァンジェリンは歩き出した。

「いくぞ茶々丸。」

「は、はい。」

主に呼ばれて後を追う茶々丸。
彼女のセンサーは「あ〜死ぬかと思った」というのんきな声と「生きてる!?」「ゾ、ゾンビ?」などという様々な驚きの声をとらえていた。


そして、夜が訪れる。

「停電か〜。出歩いてる生徒がいないかしっかり見て回らないとね。」

「でも先生とはいえまだ10歳の兄貴が夜の見回りさせられるとは、ちょっと関心しねえな。」

見回りを行うネギとカモ。


「橋の周辺の警備か。でも今日は侵入者があるかもしれないってジジイが言っていたから楽しみだな。」

むしろ侵入者来い!とばかりに笑う雪之丞。


「あと三分・・・。え〜い、まだか?まだなのか!?」

時間を待ち望むエヴァンジェリン。


「ピートと雪之丞は警備ご苦労様って感じだよな。エヴァちゃんは意外に仕事を言ってこないから楽やな〜。」

自室でのんびりとくつろぐ横島。


「さて、では予定通りに頼むぞい。」

学園長室の椅子に座り、電話をかける近衛近右衛門。


そして、麻帆良から人工の明かりが消えた・・・。


あとがき
ついに準備が終わり、次はようやくVSエヴァンジェリンです!
ピートは真面目にネギに助言で活躍。
雪之丞は大活躍!!です(笑

文の書き方ですが<SIDE〜>というのはやめようと思います。
色々考えたのですが誰かを中心にした書き方をする事はあっても誰かの視点で書いてはいないかな?と思ったからです。
読みにくいのはやはり自分の文才のなさ。頑張って読みやすく書けるよう頑張ります。
注意や助言はとても嬉しいので気づいた点があったらよろしくお願いします。


レス返しです。感想ありがとうございます!

>つきしろさん
横島の思考自体にかなりギャグが入っているから逆に呆れてしまうのではw
三人に勘違いされ、・・・突っ走るのは次回です。お楽しみに

>遊鬼さん
横島は派手にやり、代わりに今回は出番が少ないです。
しかし今回はその代わりに少し弱いですが雪之丞が楓とハッスル。
次回は雪之丞、ピート、横島・・・絡むかな?といった感じで。

>twilightさん
横島勘違いネタはとりあえずエヴァ編では前回が最後です。
くどく、くどく勘違いさせた成果がついに次回でますw

>kenさん
勘違いはどうにでも進めますが下手すると意味がなくなることもあるので奥が深いです(汗
明日菜は何かあったら美神のような突込みをするかもしれませんが基本的には年上を敬うような態度かな〜と思っていい出会い?にさせてみました。

>眠生さん
茶々丸のところは原作と同じでしたので少し簡略化してしまいました。今読み返すとあ〜、少し飛ばしちゃいけないとことばしたかな?と反省です。
SIDE〜は私の力不足ですね。もっとわかりやすく、しっかり伝えられるように文を書くよう頑張ります。

>スケベビッチ・オンナスキーさん
勘違いスパイラル!いつかそのスパイラルがぶっ壊れてしまう時が楽しみですw
明日菜、ハカセは今後のためにもしっかり勘違い組みに・・・です。
世界に愛された横島はいつ世界に落とされるのか(笑

>鋼鉄の騎士さん
我らが横島はこのままいい人で終わるわけがありません(笑
今回の格好いい横島は雪之丞からの申告でしたw
無作為なフラグは・・・京都で!!

>八雲さん
横島の本当の姿を知っている人は多いことは多いのですが、それがなかなかネギ達に伝わらないw
今回の騒動は伝説になりそうな屋上ダイブです。
次回はもっと派手な伝説を・・・

>ヴァイゼさん
確かに勘違いというかすれ違いに近いものがありますね(汗
横島の土壇場での行動理念は確かにそうですね。ちょっとその後の会話のために夢と希望の部分を膨らませすぎました。
茶々丸フラグは・・・ヒントをあげるならば茶々丸は横島の本性を知っています(涙

>アクセル・ウェイカーさん
一話に男三人を躍動させるのがかなり難しいです(涙
まだまだ能力がたりないです。残りの二人にもっと活躍して欲しいんですが・・・。

しゅりさんの件ですがありがとうございます。発見しました。一言・・・すごいっす。

>六彦さん
横島のドジッ娘はたしかテレサ事件のときに言っていた気がします(うろ覚え)
カモとは魂の共鳴、明日菜はネギとカモから与えられた情報によるミスリードです(笑
エヴァのもしもしは確かにちょっとおかしいですね。一方的に命令がエヴァっぽいw
負けるような・・・の部分は完全にチェック漏れです。すみません(汗
PS ユッキーのマジバトルはド派手ですw

>らっかーさん
質問への返答ありがとうございます。少し自信がつきました。
らっかーさんのSSも更新が早いし、イベントでの行動が新鮮なのですごく楽しいです。
むしろ更新してないかな〜と毎日チェックしています(笑
らっかーさんも頑張って下さい!

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