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「退屈シンドローム 第17話(涼宮ハルヒの憂鬱+ドラえもん)」

グルミナ (2007-01-31 23:58)
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 幽霊教会から三十分で帰還せよ。

 SOS団一の暴君こと涼宮ハルヒによってその無謀極まりない命令が発令されてから三十分後、僕達二人は揃って駅前のベンチの上で死にかけていた。全身筋肉痛どころではない。死ぬ、少しでも油断したら今すぐ死ぬ。これは別に比喩ではない。ハルヒが本当に全力疾走三十分を強行してくれたおかげで、駅前までノンストップで駆け下りる羽目になってしまったのだ。マラソンではない、百メートル走のペースで三十分間をである。

 しかしそれだけならば別にハルヒだけを勝手に行かせて、ペナルティ覚悟でゆっくり歩いて来ると言う事も出来た筈だ。少なくとも、僕にはそう言う選択肢も在った筈なのだ。だけど僕は律儀にもハルヒに付き合ってこのチキチキシリーズ第二弾めざせ地獄の一丁目(僕命名)で感動の二位完走を果たし、挙げ句今現在ハルヒの隣で死にかけている。その理由は簡単だ。ハルヒの奴、目を離すとすぐに道を間違えやがるのだ。だから僕は猟犬のようにハルヒの背中を常に補足し続け、間違った道に入りそうになる度に声を上げて修正しなければならなかった。……全く、僕は何処の忠犬だよ。

 そんな訳で文字通り命懸けで集合時間に間に合わせた僕とハルヒだったのだが、長門と一緒に十二時ジャストに現れた古泉には物凄く心配された。

「だ、大丈夫ですかお二人共? と言うか、何があったんですか? 何やら油断したら今すぐにでも天国への階段を駆け上がってしまいそうな程にお疲れなご様子ですけど」

 開口一番にこれである。鋭いな古泉、まさにその通りだよ。

 ……あ、川の向こうで死んだお祖母ちゃんが手を振ってる。


 その後、十分遅れて集合場所に合流したキョンに昼飯を奢らせるべく、僕達は最寄りのハンバーガーショップへと場所を移す事にした。昼食の後にもう一度クジ引きをして、午後の部の探索を始めるとはハルヒの言だ。今まで一緒にヘバってた癖にまだやるのかよ。

「それで、何か収穫は? まさかデートでもしてたんじゃないでしょうね?」

 朝比奈先輩の肩を借りて歩きながら、ハルヒはそう言って喰い殺すような眼でキョンを睨んだ。その問いにキョンは僕に貸している肩を器用に竦め、「何も」と簡潔に返す。

「本当に探してた? ふらふらしてたんじゃないでしょうね。みくるちゃん?」

 いきなり矛先を向けられた朝比奈先輩は一瞬怯えたように身を竦ませ、ふるふると首を振る。

「お前等こそ何してたんだよ?」

 朝比奈先輩を庇うように問うキョンに、ハルヒは立ち止まって振り返り、

「SOS団の名を地域に広めて来たわ! スポンサー候補や民間協力者も確保出来たし、我がSOS団の外部進出の日も近いわ!!」

 と、サムズアップしながらのたまった。

「……野比、通訳しろ」

「……商店街で引ったくりを捕まえたついでにビラ撒きして、偶々知り合った小学生を顧客に勧誘して、丘の上の廃教会で幽霊探しして、最後は全力疾走三十分」

 そしてハルヒはもう元気一杯、僕はもうイッパイイッパイ。何さこの不条理。

「……本当に、何してんだよお前等」

 呆れられてしまった。


 ● ● ●


 ハンバーガーショップでの昼食のひと時。大体全員が食べ終えるのを見計らって、ハルヒは喫茶店で使用した六本の爪楊枝を取り出した。どうやらあれから態々持ち歩いていたらしい、エコロジックな奴だ。今度のクジ引きの結果はキョンと長門が赤い印、ハルヒと朝比奈先輩が黒い印、そして僕と古泉は無印だった。

「四時に此所で落ち合いましょう。今度こそ何か見つけて来てよね」

 ハルヒのその一言を合図に僕達は三手に別れ、今度は思い思いの方向へと散策を始めた。さて、どうしようか古泉。僕としては探索をサボってずっとこの場に居座って、昼寝でもして時間を潰しながら体力回復を図りたい所なんだけど?

「それは困りましたね」

 近くのベンチに深々と座り込んだ僕の提案に古泉は苦笑を浮かべた。言っておくけど僕はもう立ち上がるつもりは無いよ?

「僕は残念ながら午前中に何の成果も挙げられませんでしたから、ここで一気に挽回したいんですけどね」

 本当に困ったように、古泉は頬を掻きながら曖昧な笑みを浮かべる。だけど敢えて言ってやるよ、……嘘吐けこの野郎。

 瞬間、古泉の眉が僅かに動いた。

「……嘘、とは?」

 恍けたように尋ねる古泉に、僕は遠慮無く言ってやる事にした。

「成果を挙げる、つまり何か不思議なものを見つけると言う事は、その不思議な何かをハルヒに認識させると言う事だろ。『機関』とやらにとっては、それは不都合な事になるんじゃないの?」

 以前に古泉の話していた『眠れる神』の女の子、それは多分ハルヒの事だ。朝倉の言っていたハルヒの「環境を操作する」能力、それはつまり「願望を実現する」能力と言い換えても良いと僕は考えている。もしもハルヒの前に不思議なものの存在を提示する、例えば古泉が自分の正体を明かしたとしたら、ハルヒはその存在を日常のものとして認識してしまう、そしてその願望通りに世界は作り直されてしまうだろう。

 それは古泉達『機関』の人間にとっては厄介な事態に違いない。古泉は以前言っていた、ハルヒの存在を巡って水面下での抗争が続いていると。ハルヒが超常の存在を認識すると言う事は、『機関』にとっての敵対勢力を無制限に量産するのと同義なのだから。

 ……まぁ、これは朝倉や古泉の話が真実だと仮定した場合の話だけどね。

 と、仮説に仮説を重ねた戯れ言をキャラにもなく熱弁した僕に、古泉は感嘆したような顔で拍手を送ってくれた。ご清聴をどうもありがとう。

「流石は『機関』の最重要警戒人物、と言った所でしょうか。70点を差し上げましょう」

 万年赤点の僕としては小躍りしたくなるような評価だね。

 古泉は僕の隣に腰を下ろし、交差させた脚に頬杖をついて口を開いた。

「確かに貴方の言う通り、我々超常の存在を涼宮さんの前に晒すのは好ましい事ではありません。例えば我々超能力者と言う限定されたカテゴリだけでも、彼女がその存在を知ってしまえば世界は本当にそのようになります。既存の物理法則は総てねじ曲がり、質量保存の法則も、熱力学の第二法則も意味を成さなくなる。世界は滅茶滅茶になりますよ」

「……元々在って無かったようなものだと思うけどね、僕は」

 古泉は知らない事だろうが、科学技術さえ進めば竹トンボで人が空を飛んだり、物体の大きさを自由に変えたり、挙げ句の果てには生身で宇宙遊泳するのも夢ではないのがこの世界だ。物理法則なんてその内迷信になるだろうさ。

「確かにそうかもしれません。しかし今現在、この惑星の科学文明は物理法則に依存する事で成り立っているんですよ」

 真剣そうな古泉の反論に、僕は思わず目を瞬かせた。僕としては今物凄いカミングアウトをしたつもりだったのだが、思いの外あっさりと流されてしまった。僕の怪訝そうな表情に気付いたのだろうか、古泉は苦笑しながら肩を竦めた。

「末端とは言え、三年もこの世界に身を置いてますからね。それなりにこの世の不条理は見て来ましたよ。……ムー連邦のテキオー灯なんて、その最たるものですよ」

「ムー連邦?」

 唐突に聞き覚えのある単語が耳に入り、僕は思わず聞き返した。ムー連邦、それは一万年もの昔から太平洋の海の底に存在する海底人の国家だ。まだあの猫型タヌキが健在な五年前の夏休み、アイツや仲間達と海にキャンプに出かけた際に、件の国家のいざこざに巻き込まれた事がある。だけど、何故古泉の口からその名が出て来る?

 僕の問いをどう解釈したのか、古泉は件の国家について語り始めた。

「ムー連邦。マリアナ海溝の底に位置し、高度な文明と科学力を誇る海底人類の国家です。我々『機関』は彼等と協力関係を結び、幾らかの技術提供も受けています」

 古泉の説明に、僕は眉間に皺が寄るのを自覚した。ムー連邦が古泉達の組織に協力、その上技術提供? 俄には信じられない話だった。僕の知る海底人達は闘争を忌避し、争いを繰り返す僕達陸上人類を軽蔑さえしていた。その彼等が何故、嫌悪している筈の闘争に介入しようとしていると言うのか。

「……それだけ、ハルヒの存在が重要だって事か?」

 思わず口に出た僕の呟きに、古泉は重々しく頷いた。

「海底人だけではありませんよ。涼宮さんの覚醒から既に三年、地球の内外を問わず様々な組織が動き出しているんです。知ってますか? 異星人って本当にいるんですよ。この惑星は今激動の時代を迎えているんです。涼宮ハルヒと言う一人の少女を巡って、その本人の知らぬ場所で」

「いきなりスケールが大きくなったな。僕はてっきり宇宙人関係は長門の担当だと思ってたんだけどね?」

 だんだんと真剣味を帯びて来た古泉の言葉にそんな茶々を入れてみたものの、そんな単純な話で済む筈が無いと言う事は僕自身が良く解っていた。どうやら僕の知らない間に、僕の周りは相当複雑かつ面倒な事態になっているらしい。古泉の言葉は、今やハルヒを中心に世界が回っていると言っているに等しい。

「我々『機関』内部ですらも一枚岩ではありません。中には彼女を捕まえて解剖でもしてしまおうと主張する強硬派も存在します。或いは彼女の『鍵』候補の、貴方やキョンさんに何らかのちょっかいを賭けてみようとか。今でこそ軽々しく手を出すべきではないと言う意見で大勢が占められていますが、いつ上層部が路線を転向しても可笑しくないのが現状です。喩え火傷を負うと解っていても、人は火鉢の中の焼き栗を食べたがる生き物ですから」

「……やってみれば?」

 最早口元だけの微笑みを浮かべる古泉に、しかし僕は冷ややかに返した。キョンやハルヒに手を出す? やりたいのならばやってみるが良いさ。ただしその時は火傷程度で済ますつもりはない。アイツの残してくれた箱を、僕は躊躇無く開けるだろう。そして……、

「その時は、僕がお前達の未来を閉ざすから」

 僕にとってはキョンもハルヒも、既に日常と言う名の世界の一部だ。結成から一週間も経っていないけど、SOS団は僕の居場所だ。それを切り取ろうとするのなら、相応の報いは受けて貰う。何故僕がこんなにも二人に執着しているのかは、僕自身にも解らないけど。

「……それは、怖いですね」

 嘘か本気か解らないような言葉と共に、古泉は降参したとばかりに軽く両手を上げた。

「取り敢えず、今はご安心を。そんな事態にならないように、僕達がしっかり頑張っていますから。基本的に我々が望んでいるのは現状維持ですから、僕の本音も含めて涼宮さんには平和な生活を送って頂ける事を切に望んでいますよ」

 古泉の言葉を聞いて、僕は少しだけ安心出来た。少なくともSOS団員の中には、僕のこの退屈な日常を壊そうとする奴はいないらしい。建前上は、だけどね。


「あぁ、突然話を戻しますけど、」

 一瞬前までとは打って変わったようにいつもの営業スマイルを取り戻し、古泉が唐突に口を開いた。なんと言うか、今までのシリアスな空気が台無しだった。

「何か成果を上げておきたいと言った僕の言葉。あれ、あながち嘘でもないんですよ」

 何でも無い事のように言い切られた古泉の言葉に、僕は思わず大口を開けた。ちょっと待て、それなら今までの会話は一体何だったのさ?

「確かに涼宮さんに超常の存在を認識させる事は愚の骨頂です。しかしそれは『機関』の都合であって、それは僕達の事情と必ずしも一致している訳ではありません。僕達は『機関』の一員である前に、《神人》を狩るだけが能のただの超能力者なんですから」

 何やら不穏当極まりない事をカミングアウトされているような気がしないでもないが、このご近所不思議発見ツアーとあの青い巨人との間に一体何の関係があると言うのさ?

「《神人》の正体は涼宮さんのイライラの具現なんですよ。心のわだかまりが限界に達すると閉鎖空間が発生し、《神人》が出現します。そして《神人》が破壊活動を続ければ続ける程、閉鎖空間も拡大してしまう。涼宮さんの鬱憤が晴れない限り《神人》は暴れ増えまた暴れ、それに伴い閉鎖空間は無限に拡がり、僕達の仕事は雪達磨式に増えていく訳です」

 まるで消費者金融の借金地獄だな。

「つまり逆に言えばハルヒの心が満足感で満たされていれば、《神人》も現れず古泉達の苦労も減る訳だね」

「察しが良くて助かります。実の所僕の本音としては、少しでも涼宮さんに刺激を提供して僕達の仕事を減らしたい訳ですよ。その結果多少世界がおかしくなったとしても、……まぁ些細な事故です」

 ……オイオイ、最初と言ってる事が180°反転してるぞ?

 思わずジト目を向ける僕に古泉は相変わらず腹の底の読めない笑みを浮かべたまま、一言。

「建前って良い言葉ですよね、日本人の文化の極みですよ」

 僕はこの時、古泉の腹の裏側を垣間見たような気がした。

「……古泉、今の宇宙規模なカミングアウトも省みながらもう一度話を戻すけど、」

 僕はこめかみを揉み解しながら大きく息を吐き、喉元から迫り上がって来る百万語を押さえ込みながら、

「最初の科白、あれやっぱり嘘だろ?」

 と、微笑する古泉の顔を見ながらもう一度言ってやった。

「おや、何故そう思うんですか?」

 再び恍けたような笑みを浮かべる古泉の顔は、しかし気のせいか僕の戯れ言を待ちわびているようにも見えた。

「この世の常識を犠牲にしながらハルヒに『不思議』を与え続けていれば確かにハルヒはその間は満足してるだろうし、君達の仕事は減るだろう。でもハルヒの能力と言うか性質と、あの巨人の正体がハルヒのイライラだって事を省みれば、君がその選択肢を選ぶ事はまず有り得ない」

 待ち焦がれていた『不思議』と遭遇する、確かにその瞬間だけはハルヒは満足するだろう。だけどその幸福は決して長続きするものじゃない。ハルヒと出会った瞬間に『不思議』は不思議ではなくなり、退屈な日常の一部としてカテゴライズされてしまうのだから。だから常に新たな『不思議』を常にあたえ続ける必要が出て来る訳だけど、人間の想像力は決して無限じゃない。いつか必ずネタが尽きる。そしてそれは同時に、『不思議』の絶滅をも意味している。

 そうなったら本当におしまいだ。『不思議』の何一つ無くなった世界でハルヒのイライラはどんどん蓄積し、結果的に《神人》もゴキブリのように量産される。古泉達は今以上におかしな世界で今以上に過酷な労働を強いられる羽目になる訳だ。

「まぁ要するに一言で言ってしまえば、……飽きた時の反動が怖い」

 どうだ、反論出来るものならやってみろ。

 古泉は暫く思案するように沈黙し、そして悪戯の不発に終わったように残念そうな、しかし何処か楽しそうでもある十五歳相応の笑みを浮かべて、一言。

「何だ、気付いていたんですか」

 結局の所、僕は古泉に遊ばれていただけだったのだ。一体何処からかは解らないけど。


 ● ● ●


 時が流れるのは速いもので、四時が徐々に迫って来た。集合時間十分前、まずハルヒ朝比奈先輩ペアが現れた。この時点でキョン達の奢りが決定だ。

「疲れました。涼宮さん、物凄い早足でどんどん歩いて行くんだもの。付いて行くのがやっとでした」

 そう言って疲労困憊な顔で苦笑する朝比奈先輩。僕は結局ベンチから一歩も動かなかったと言うのに、ハルヒの体力は底無しか? 僕は古泉と共に立ち上がり、お疲れな女性陣にベンチを譲ってやった。


 四時ジャスト、キョンと長門の姿はまだ無い。

「二回連続で遅刻するなんて、キョンの奴良い度胸してるじゃない」

 ペリカンのような口をして、ハルヒが不機嫌そうな声で呟いた。もう少し堪え性を持とうよ、ハルヒ。


 四時十分、影も形も無い。

「……キョンの奴、まさか約束の時間忘れてるんじゃないでしょうね」

 それも有り得ると内心で頷きながら、僕は一見普段通りなハルヒの横顔をチラリと一瞥した。表面的には平静を装っているみたいだが、きっとその内側ではイライラのボルテージが鰻登りしているに違いない。古泉の苦労が忍ばれる。


 四時二十分、まだ来ない。

「……ふふ、ふふふふふ。ここまで他人に虚仮にされたのはこれが初めてだわ。キョンの奴、一体どうしてくれようかしら?」

 何やら物騒な科白を呟きながら、ハルヒが据わった眼で両手を握り開きしている。怖い、問答無用の洒落抜きで怖過ぎる。僕はこの時、ハルヒの背後に恍惚とした表情で処刑鎌を入念に手入れする死神の幻影を確かに見た。

 ……キョン、もう寧ろこのまま帰った方が賢明かもしれないよ? 命が惜しければ。


 そして約束の時間から時計の長針が半周回った、四時三十分。

「遅い遅い遅ぉぉぉーーーいっ!!」

 ハルヒが遂に爆発した。

「何やってんのよあの馬鹿キョンは! これは最早SOS団員の自覚云々以前にこのあたしへの宣戦布告よ!!」

 ハルヒは癇癪を起こした幼稚園児のように喚き散らしながら乱暴に携帯電話を取り出し、朝に登録したキョンの番号を呼び出しながら息を大きく吸い込み、

「何やってんのよこの馬鹿!! 今何時だと思ってんの!?」

 電話が繋がった瞬間、物理的攻撃力すらも伴っていそうな超弩級の怒号を通話機の向こうのキョンに叩き付けた。今この場にいる全員の気持ちを代弁するかのような、聴いていて爽々しくなるような怒鳴り声だ。もっと言ってやれ。

「とっとと戻りなさいよ! 三十秒以内にね!!」

 最後にそう一声怒鳴り、ハルヒは乱暴に携帯電話を折り畳んだ。この時点でキョンの命は風前の灯火と言うか寧ろ処刑確定な訳だが、はっきり言って自業自得だ。


 ……結局、キョンと長門が帰って来たのは、それから二十分後の事だった。

「遅い! 大極刑!!」

 怒りで震える指先をキョンに突き付け、ハルヒはタバスコを一気飲みしたような顔でそう宣告した。

 だ、大極刑って何……?


ーーーあとがきーーー
 グルミナです。『退屈シンドローム』第17話をお届けします。今回は不思議探索後半、ではなくのび太と古泉による第二次創世論談義でした。結果は実はお茶目さんな古泉の勝利、SOS団軍師の座はまだのび太には早いのです。
 原作中での古泉達『機関』の一番の強みは、人と人との繋がりにあると自分は解釈しています。多種多様な人間のネットワーク、則ち「人の和」で繋がった「人の環」こそ、宇宙未来超能力の三大勢力中一番力の弱い古泉達が、他の二大勢力と相対する一番の原動力なのではないでしょうか。そう考えて、今回ムー連邦を名前付きで登場させてみた次第です。
 さて、意外と長々と続いてしまった不思議探索編も今回で終わってしまいました。これから一日のインターバルを置いて、のび太は遂に運命の日を迎えます。そして謎に包まれていた演劇部部長の素顔も、そろそろベールを脱ぐかもです。

>龍牙さん
 『鷹の眼』の男の正体はお察しの通りです。最適な銃さえあれば、『彼』の能力ならば決して不可能ではないでしょう。
 経験者は語る。件の答えを語る時、キョンはさぞかし感慨深かったでしょうね。朝倉の生死は今の所はまだ禁則です。
 タイムパラドクスを逆用したのび太の「賭け」は、結果的には未来に負けてしまいました。でもよく考えてみると、のび太のこの行動ってある意味時空テロですよね。ギガゾンビなどよりも性質悪いです。
 のび太とハルヒのニアミスは、はっきり言ってどっちも覚えていないでしょうね。この時点では互いが互いにとって全く価値の無い他人な訳ですから。

>まさのりんさん
 はじめまして、読んで下さってありがとうございます。
 のび太とジョン・スミスを絡ませるのは、やはりこの時しかないでしょうね。ハルヒが宇宙に向けて自己主張したその時に、のび太は未来に向けて自己主張していた訳です。
 しかしのび太、何かだんだんと人間をやめてきてるような……(汗

>砂糖菓子さん
 のび太がヤンデレですか。言い得て妙ですね。
 『鷹の眼』の真相や『殺人鬼』の行く末も含めて、本ssは原作よりも更に風呂敷を拡げていこうと思います。グルミナクオリティは終わらない。

>蒼夜さん
 猫型タヌキが最後に遺していった道具。あれ、実は箱の方に秘密があるのではないかと当方は睨んでおります。箱がのび太の思考をリアルタイムで読み取って、その時一番必要な道具を装填するとか。

>HEY2さん
 一つ一つのピースは揃い始めましたが、それを組み立てるのは作者である自分次第なんですよね。良い一枚絵が完成出来るように頑張ります。
 箱の中身、……そんなブラックギャグだけはありません。(キッパリ

「鷹の眼」のスナイパー、もう本当に人間じゃないレベルですねw、ところでこの高校には宇宙製ロボ、未来人、超能力者と揃ってますが、元全米No1スナイパー、亡霊の名を冠した暗殺者とかいませんかね。

>rinさん.
 のび太の過去は、執筆開始当初から何となく書きたいと思っていたエピソードの一つでした。実はその後のカウンセリング室時代の小ネタも色々と考えているのですが、書くかどうかは微妙ですね。
 北高には、残念ながら亡霊な暗殺者はいませんね。その代わりに元暴走族な社会科教師とか極道育ちの数学教師とかは、まぁいてもおかしくはないですよね。
 誤字指摘ありがとうございました、修正しておきました。

>315さん
 はじめまして、読んで下さってありがとうございます。
 銃の所持は、実はそう難しいものではないらしいです。「競技用」として申請登録すればレミントンとかも持てると言うのが現行の銃刀法の穴です。
 ところで銃刀法で思い出したんですけど、……ビームは規制対象外なんですね。特撮でヒーローや地球防衛隊の銃が光線銃な理由が納得出来ました。

>パーマニズムさん
 はじめまして、読んで下さってありがとうございます。
 伏線、見え見えですか……。精進します。

>J.B.ヴァーデルさん
 このエピソードのキョン視点は、正直言って難しいですね。元々本編の語り部がのび太な上に、この時『のび太』は『のび太』で大変な目に遭ってますから。
 午後の組み合わせは古泉と一緒、二人揃ってサボってますww

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