インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「男三人麻帆良ライフ 第四話(GS+ネギま!)」

宮本 (2007-01-30 03:21)
BACK< >NEXT


「それで昨日の子は吸血されていなかったようだという事か。いまいちエヴァンジェリンさんの考えてる事が分からないね。」

「あ〜。」

朝、眠い目をこすりながらピートと雪之丞は道を歩いていた。
一応警備員なので見回りだ。
昨夜起こった事は先日の近右衛門とエヴァンジェリンの話から大体想像できた。
エヴァンジェリンはあのネギという少年に接触する事に成功したのだろう。
それにしても普通の少年だと思ったあの少年になぜエヴァンジェリンはこだわるのかとピートは首をかしげる。

「ま、ごちゃごちゃ考えても仕方がねえ。それよりおまえはどうだったんだ?横島を追いかけていってよ。横島を追っていった嬢ちゃん結構な強さだっただろ?」

雪之丞のバトルマニア的思考にため息をつき、昨夜の事を思い出すピート。
刹那と呼ばれた少女は今までにない反応をしてきた。
思考の迷路にいる者特有の戸惑い。
そして彼女がこちらに見せた羨望の眼差し。
あれはなにを意味するのか・・・。
横島とエヴァンジェリン、茶々丸がいなくなった後、彼女は失礼しますと頭を下げて走り去って行ったがその態度もまた気になる。

「ん?どうしたピート。」

「え?あ、なんでもないよ。昨日は横島さんに追いついて、誤解を解いて、それで帰ったんだ。戦ってはいない。
それにしても君が行かなくて正解だったね。絶対に戦っただろうし・・・。」

ピートはじと目で雪之丞を見る。
そんな二人に近づいてくる喧騒・・・。

「おっはよーネギ君!!」

「おはよーネギ先生―!!」

少女達の元気な挨拶、そしてそれに混じって聞こえてくる子供のわめき声。

「お・・おろしてください〜っ!エヴァンジェリンさん達がいたらどーするんですかーーーっ!!」

「学校で襲ってきたら校内暴力で停学にしちゃえばいーでしょ。」

「そそ、そんな簡単な話じゃ!!」

走って近づいてくるツーテールの少女、その肩に担がれているのは先日少し世話になったネギ少年。

「よう坊主。」

「ネギ君だったよね?おはよう。」

「え?あ、あれ・・・って・・うわっ!?」

なぜ担がれているのかは分からないがとりあえず朝の挨拶をする事にした二人。
驚いたのかネギは肩の上で暴れ、そして地面に落下する。

「大丈夫かい?」

「おいおい、男がみっともねえぞ。」

「あ、おはようございます。確かピートさんと、雪之丞さんですよね。」

「ああ。よく名前覚えてたな。男の名前なんておぼえねえって言い切る俺らのダチとは大違いだぜ。」

ピートはネギに手を貸して立たせてやり、スーツについた砂埃をはたいてやる。
雪之丞は笑みを浮かべてネギの頭をくしゃくしゃとなでた。

3−Aの少女達はイケメンのピートに興味深々で話しかけ始め、木乃香は昨夜雪之丞に助けてもらったので改めてお礼を言っていた。

ネギは二人を見た。
学園長に会わせるために案内している時に魔法使いなんですか?と聞いたら似たようなものだと言っていた二人。
特に雪之丞は魔法なんかよりこっちのが俺の趣味にあっているけどな・・・と言って拳を突き出し、ニッと男臭く笑っていた。
その拳には修行で出来たと思われるいくつもの傷と拳ダコがあって、それはとても頼もしく見えた・・・。

思い出すのは昨夜の事。エヴァンジェリンの言葉が頭に流れる・・・。
『パートナーのいないおまえでは私には勝てんぞ』。

「お、お願いがあるんです!!」

本当は異性が望ましい!しかし今の状況では・・・。
ネギは雪之丞の頼もしい手を両手で握り、上目遣いで雪之丞を見るとみんなの視線など気にせず爆弾を投下した。

「ぼぼ、僕の・・・パートナーになって下さい!!」

ひゅうううっと風が吹き、桜の花びらが舞う。
しかし3−A女子に見えたのは桜の花ではなくバラの花で・・・。
ピートは思わず後ずさった。

雪之丞の記憶の奥、開けてはならないトラウマ的記憶がよみがえる。
『もう、いけず〜』  『よるな!』
『きゃっ、ピンク』  『触るな!』
『可愛いお尻ね〜』  『なでるな!』
『へ〜、私とヤルの?雪之丞だったらいいわよ?』  『そっちのやるじゃねえ!!』

そう、それは闘争の記憶。
男として生き残るために必死だったころの・・・。
その時の奴、鎌田勘九郎は俺よりでかいくせにいつもなぜか上目遣いで・・・。

ガクガクと震える雪之丞。ワイシャツの襟をぬらすほどに冷や汗は溢れ、流れ出す。

(あいつよりはまし・・・いやましってなんだ?この坊主も男!俺には弓っていう恋人が!なんで上目遣い?パートナーって・・・。)

混乱する思考を押しとどめて雪之丞は相手は子供、もしや男と女の区別がつかないのかもしれない?などと詮無きことを考えて何とか答えをひねり出す。

「わ、悪いな・・・。ちょっとそういうのは・・・。俺じゃ無理だと思うが・・・。」

「いえ!僕はあなたのこの逞しい拳で、守って欲しいんです!!」

やはり自分も男なのに守って欲しいというのはちょっと恥ずかしいのかネギは頬を染めている。
しかしさすが外国人。
ストレートに自分の考えている事を伝えた。
そしてそれは場に更なる混乱を与え、すでにピートの顔面は蒼白。3−Aの少女達は顔を真っ赤にして事の成り行きを見守っている。

ネギはそんな周囲には気づかずに誰もが、雪之丞もが黙っているのでもう一押しだと思い、止めの一言を放とうとする。
だが、魔法の事を言うのはまずいと気づき、魔法の事がばれないように台詞を構築し、言葉をつむぐ。

「あの時、こっちの方が俺の趣味に合っているとかって言っていたじゃないですか!僕、僕それを聞いてこの人ならって思ったんです!!」

すでにいっぱいいっぱいだった雪之丞は追い詰められる。
だが、そこにピートが割り込んだ。

ピートはこの世界に来て間もない雪之丞がいつネギと会っていてそんな気を持たせるような事を言ったのかなど知らない。
だが、前の世界で雪之丞が照れくさそうに言っていた事は覚えている。
『俺、あいつが卒業したら弓と結婚しようと思う。横島には内緒だぜ。嫉妬してどんな妨害してくるか分かったもんじゃねえし。』
こちらの世界に来てネギと・・・?いや、わからない。だが言っておかねばならない。

「ひどいよ雪之丞!もう少ししたら結婚するって言ったじゃないか!!嫉妬しないようにって内緒にしてきたじゃないか!!」

それを聞き、雪之丞は弓かおりの事を思い出す。
だが他の者はそんな事情などしらない。雪之丞とピートの仲を誤解する。

「俺は・・・俺は・・・違うんだ〜〜〜!!」

「あ、待て!あれは遊びだったのか?」

トラウマ(勘九郎メモリー)を刺激され、男の子供に告られ(勘違い)、ピートに彼女の事を持ち出され、雪之丞はうお〜んと泣きながら走り出す。
その後をしっかりと問い詰めるべくピートが追って行く。

残された者達は・・・
「あぶぶぶぶぶぶぶ・・・・」
「あわわわわわわわ・・・・」
「さ、三角関係!?」
「ピートさんってイケメンやのに。」
「うひゃあ、ネギ君大胆やなあ。」
「ネ、ネギ・・・あんた・・・。」
それぞれ混乱し、うろたえている。

「雪之丞さん・・・なんで・・・。」

雪之丞に手を振りほどかれたネギが雪之丞たちが去って行った方を絶望したように見ていた。
だれもが傷心?のネギにかける言葉など持っていない。

「お〜い、そこの将来有望そうな中学生達〜。早くしないと授業に間に合わんぞ〜。」

その時、能天気な声が聞こえてきて明日菜が我に返る。

「ほらネギ!ショックなのはわかるけど早く行かないと遅刻よ!!」

明日菜はネギを再び担ぎ、他の少女達も現世復帰する。

「遅刻すんなよ〜。」

「は〜い、ありがとうございま〜す。」

こちらに手を振る額にバンダナを巻いた警備員に手を振って少女達は走り出した。


「と、いうわけで本格的に貴様には私の仕事を手伝ってもらう。基本的に私の仕事はこの学園都市の結界を無許可で越えて来るものの監視と調査だ。」

エヴァンジェリンは学校の屋上の壁にもたれかかって言う。

「だが忌々しいが私は学校にも通わねばならん。
今までは自分で調べたり、ジジイを通して魔法先生に行かせていたのだがついに私にこき使われる貴様という存在ができたのだ。
この私のために働ける事を光栄に思うがいい。さて、何か質問はあるか?」

「ああ、ある。」

横島はじろっとエヴァンジェリンを見た。

「なんだ?言ってみろ。」

面白い、とばかりにエヴァンジェリンは横島を嘲る。

「・・・なぜ俺は縛られてるんや?」

横島はロープでぐるぐる巻きにされたままピチピチと跳ねた。
言われるがままに時間通りに学校の屋上に来た横島は縛られてしまったのだ。

「聞きたいか?」

「ぜひ。」

「・・・野放しにすると何をしでかすか分からんからだ。向こうでもよく言われてなかったか?」

エヴァンジェリンに言われ、何か思い出そうとするように視線をさまよわせ、横島はゴロリと転がってエヴァンジェリンがいない方を見た。

「言われてたみたいだな。とにかく!今朝渡した携帯電話を肌身離さず持て!そして私から連絡があったら1秒と待たせずに電話に出ろ。そして私の命じるままに仕事を遂行するがいい。」

「へ〜い。分かったよ。それで、もう行っていいかエヴァちゃん!なんかこう、美人のねーちゃんが俺を呼んでる気がしてさ!!早く行かないとまずい気がするんや!!」

ピチピチと跳ねながら力説する横島。
エヴァンジェリンはため息をついて行っていいぞとつぶやいた。
すると縛られていたのが嘘のようにするりと戒めから抜け出した横島は走っていく。

「・・・あいつは本当に人間か?全く、あきん奴だ。」

くすっと微笑んでエヴァンジェリンはあくびをした。


「だからよ〜、俺は知らねえんだよ・・・。男相手なんて・・・男相手なんて・・・」

「はいはい。今度ネギ君にあったらちゃんと詳しく話を聞いてみるんだね。あれはさすがにちょっとおかしいよ。」

公園のベンチに座り、コーヒー片手に弱々しくつぶやく雪之丞にピートは冷静に言う。
二人の視界の先では横島がナンパにいそしんでおり、いつもは呆れるところだが今の雪之丞にとってはその健全な姿がひどくまぶしく感じた。

「どちくしょー!やっぱり男は顔か!?どこの世界でも『ごめんなさい!』『馬鹿じゃない?』『あははは・・・』。なぜ!なぜ人とはこんなに悲しいものなのか!なぜこんなにこの世は不公平なのか〜!!」

横島の叫びが聞こえる。

「そろそろだよ。次のポイントに行こう。・・・とは言っても特にやる事はないけどね。」

「あ〜そうだな〜。」

二人は立ち上がり横島を呼ぼうとする。
だが横島は携帯電話片手に誰かと何か話していた。

「は?・・・で?ああ、そっちに向かってる?う〜ん、分かった。じゃあ俺もそっちに向かってみる。」

横島は携帯電話をたたむと二人の方へやってくる。

「なんか侵入者?があったみたいでさ。ちょい行ってくる。」

めんどくさいと体中で表現しながら言う横島に二人は言って来いといった。

そして横島は走り出す。
エヴァンジェリンのいるはずの女子中等部の場所へと向けて駆ける。
さすが逃げ足は速いと言われただけあって普通に走るのも速い。

「きゃっ!?」

高い声が横島の鼓膜を叩いた。
女性の声を聞き逃すような横島ではなく、顔を横に向けるとそこには転んだらしき美女が足を開き、倒れている。
その足の間に見える魅惑の黒い布が彼の本能を刺激して身体を動かせた。

「大丈夫ですか美しい尻〜じゃなかったお嬢さん!!よろしければこのわたくしめがその美しいお尻についた砂埃をはたきますよ!!」

「むっは〜!!」

横島は一瞬で女性との距離を詰め、さらに接近する。となりで知らない声がしたが無視だ。
女性は最初は何か分からなかったようだが理解すると真っ赤になった。

「い、いやあああああ!!」

ごすっと拳が横島を襲い、直後にハイキックを食らい横に吹っ飛ぶ。
着地の瞬間「ぐえっ」とか声がした。
女性は怒りもあらわに去って行く。

「いててて・・・、しかしそれにしてもいいもん見たな〜。白い肌に黒い下着。実にいい!」

横島は先ほどのお宝画像のなかに「むっは〜!!」とか「ぐえっ」とか言った声が聞こえたのも思い出した。
そして自分が何か柔らかいものをつぶしているのに気づき、それを摘み上げた。

「何だこりゃ。・・・おい、もしかしておまえがしゃべったんか?まあ魔法使いがいるんだしイタチがしゃべっても別に驚かんが・・・。」

「イタチじゃねえ!」

「じゃネズミか?」

「違う!おりゃあケット・シーに並ぶ由緒正しいおこじょ妖精!あんた魔法関係者みてえだな。俺の名はアルベール・カモミール。カモって呼んでくんな!!」

「・・・ふ〜ん。」

しゃべるおこじょに飽きたのか興味なさ気な声を出す横島。

「それにしてもすげえ動きでしたね。さっきの女に近づいたあの動き!!」

「ああ、まあな。転んだ女性に手を差し伸べるのは男の義務ってやつさ。それにあの白と黒のコントラストがたまらん!あの下着はおそらく×××製のものだろう。絹のような素晴らしい肌触りが期待できる。」

「す、すげえ!あんたあの一瞬でそこまで!?俺っちなんてそのような素晴らしい下着を見てもただ『むっは〜』って言って注目してるだけで・・・。」

「ふふ、それは慣れだな。最初は見るだけから始まる。しかし次第にそれはより高度なものへと変わってくる。どのようなものか!それの値段からくる持ち主の性格と思考!さらにはその女性が持つこだわり!!
たかが下着と侮るなかれ!その下着というパーツ一つでも多角的に見れば多くの事が見えてくるのだ!!」

「なんてお人だ。あんたマジですげえよ!!師匠と呼ばせてくんな!!」

カモは感動に打ち震え、短い前足で敬礼をする。

「ふっ、カモって言ったか?これに感じ入るものがあるとは、おまえなかなか素質あるぜ。おまえとは気が合いそうだ。」

ニヒルな笑みを浮かべ、肩にカモを乗せて歩き出す横島。
初めて会ったはずなのだがずっと昔からの親友だったような気がして一人と一匹は笑いあった。


「・・・奴はなにをやっとるんだ。」

「横島さんが寄り道をしない確立は、非常に低いと思われますマスター。」

「ぐぬぬぬ。役に立たん奴め。」

会話をかわしながら歩くエヴァンジェリンと茶々丸。
そんな二人組みの耳にネギの名を呼ぶクラスメートの声が聞こえてくる。

「ふんっ、面白い。少しからかってやるか・・・。」

「ちょっとネギどこ行っちゃったのよ・・・。」

エヴァンジェリンがつぶやいた直後、建物の影からよく知る少女が飛び出してくる。

「神楽坂明日菜か。」

エヴァンジェリンはわずかに笑みを浮かべ、茶々丸はぺこりと頭を下げる。
ネギをどこにやったと噛み付いてくる明日菜に次の満月まで自分がネギを襲う事はないと説明する。
さらにネギを気にかけている明日菜をからかう。
真っ赤な顔をしてネギに手を出したら許さないと言う明日菜を見てからこの辺が潮時かと思いエヴァンジェリンは明日菜に背を向けた。

「フフ、まあいいがな。仕事があるので失礼するよ。」

「仕事・・・?」

訝しげな明日菜だが、『キャー』という黄色い悲鳴が聞こえてきたためそちらに気をとられ、走っていった。

「ふむ。またなにか騒ぎか?まあ私には関係ない・・・おい、遅いぞ横島。」

エヴァンジェリンは不機嫌そうに言う。

「ああ、悪い悪い。ちょっと迷ってさ。」

明日菜と入れ違いにやってきた横島は頭をぽりぽりとかいた。
そんな彼にエヴァンジェリンはピクリと反応し、横島に近づき肩の辺りの匂いをくんくんとかぐ。

「・・・横島、なにかここに乗っていたな?」

「え?あ、ああ。さっき知り合ったおこじょのカモって奴だけど・・・。」

「おこじょ妖精か。なにか言ってなかったか?」

「なんかネギの兄貴を探しているとかって言ってたな。」

横島の言葉にエヴァンジェリンはにいっと笑う。
おこじょ妖精がネギの助言者になるのかもしれない。やつらは特殊な魔法を使う・・・。
手ごたえがなく、まるっきり子供なネギをつまらないと考えていたエヴァンジェリンは少しは手ごたえが出てくるのではないかと考え期待をしてしまう。
おそらく侵入者はそのおこじょ妖精だろう。ならばとりあえず放っておいても構うまい。
それならば侵入者探索の仕事はまあいいとして問題はこの男だ。
遅刻、道草、やる気なし・・・何とかせねばなるまい。
そこまで考えてエヴァンジェリンはいい事を考えた。まさに一石二鳥のアイディア。

「・・・横島。」

「な、なんや?」

「仕事はもういい。今から別荘に行くぞ。いい事を思いついた。」

優しげな声音に少しびびる横島。
そんな彼にエヴァンジェリンはニッコリと笑いかけた。


エヴァンジェリンの別荘。
時の流れの違うこの場所にこの世界にやってきてから横島は毎日来ていた。
使える文珠には限りがあるし何かあった時に文珠がなければ困る。という事で文珠を使う修行はせず、行う修行といえば限界まで霊力を放出したり、精神を集中させたりといった修行だ。
だが本日はエヴァンジェリンが思いついた新しいアプローチというのをやってみるらしい。
しかし・・・そのエヴァンジェリンの様子が変だった。

「血を吸って・・・。いや、確かに奴の血はうまかったが、やはりなんというか罪悪感が・・・。しかしそれでは・・・。」

腕を組み、ブツブツつぶやいている。
横島はそれをなるべく見ないようにして文珠を精製してみた。

「・・・これの使用を五個同時。精神の集中以外に根本的に何かが足りんと思うんだよな〜」

感覚だけど・・・と付け加える。
だがそういった感覚は正しい事が多いという事を横島は経験上知っていた。

「あああ、もう!!よし、決めた。おい横島!!立って目を瞑れ。」

「へ?おう分かった。」

信頼しているのかそれとも何も考えていないのか・・・。
横島は立ち上がると目を瞑った。

「高い!中腰になれ!!」

「へいへい。」

エヴァンジェリンの注文通り、中腰になる横島。
そしてその唇に何か柔らかいものが押し付けられた。
彼が驚き、目を開くと眩しい光をバックにエヴァンジェリンの顔が至近距離にあった。
ゆっくりと離れる彼女の顔。
エヴァンジェリンはチロリとなまめかしく唇をなめるとしゃがみこみ、地面に落ちているものを手にした。
それは一枚のカード。
黒と赤を基調とした戦闘服に身を包み、真っ黒なマントをつけた横島がうつっている。額にはバンダナではなく白いバイザー・・・。

「ふむ、おそらくこの衣装とバイザーがアーティファクトか。」

「よ、幼女とキス・・・しかも唇に!?」

「称号は『中心の道化師』。確かに道化だ。・・・それにいつも騒ぎの中心だしな。」

「しかも舌入ってきた!!」

「アーティファクトにどのような能力があるのかが楽しみだが・・・推測しにくいな。」

「ちょっと気持ちよかったのがなんかくやしい!!」

「え〜い五月蝿い!これが仮契約。魔法使いとその従者の間での契約だ。呪文を唱えれば私がおまえに魔力を供給する事もできる。まあこの別荘の外では私の魔力が制限されているから大した魔力供給はできんがな。」

エヴァンジェリンはおもむろに無詠唱呪文を横島にヒットさせて黙らせてから説明を始めた。

「おまえが強くなるにはかなり手っ取り早い方法だ。まあ説明するより実際にやってみた方がいいな。『契約執行180秒間!!エヴァンジェリンの従者横島忠夫』」

呪文を唱えるとエヴァンジェリンから横島へ魔力が流れ込む。

「え?うおっ!なんだこりゃ?」

「私から送り込まれた魔力だ。・・・まてよ。そうだ!横島、貴様その状態で霊力を練ってみろ。」

エヴァンジェリンはだんだん沸いてくる探究心を抑えきれなくなってきた。
基本的に気と魔力は反発しあう。だがそれを制御して融合させ、爆発的な力を得る咸卦法という技術もある。
それならばこの世界にないエネルギー、霊力はどうだろう?と考えたのだ。

「え〜っと、こう・・・か?」

自分の霊力を高める横島。
だがエヴァンジェリンはまだ足りないと激を飛ばす。

「まだだ!そんなものではあるまい!もっともっと霊力をひねり出せ!!」

「そ、そんな事言われても・・・。くっ、あの技を使うしかないのか?」

横島は何かをひらめいたように目を見開き、目を閉じて集中を始める。

「はあああああ!!煩・悩・全・開!!!!」

そして叫んだ。頭の中はピンク色の妄想でいっぱいだ!
すてーんとこけるエヴァンジェリン。

「こ、このアホが。・・・む?」

「お、おお。なんかすごいぞ・・・。」

あまりのアホっぷりにこけたエヴァンジェリンは立ち上がり、横島に注目する。
魔力と霊力が混じりあい、強い力が立ち上っていく。初めてやったのに力が混じりあい、相互作用で力が増したという事は魔力と霊力はなかなか力の相性がいいのだろう。
代わりに咸卦法のような爆発的な力ではない。
咸卦法を掛け算とするならば魔力と霊力の相乗効果は足し算といったところか?

「ほう、素晴らしいものだな。全くもって興味深い。未知なるエネルギー、霊力。魂の力か・・・。」

この世界の住人でももしかしたら理論上は使用可能かもしれない。
肉体の力である『気』、各々が生まれ持った魔力容量に取り込んだ魔力を精神の力で扱う『魔力』。そして個々によって違う霊能があり、技術というより能力としての側面が強い魂の才能、『霊力』。
ピートは魔力を使っていた。バンパイア・ハーフなのだから使えるだけかもしれないが、もしかしたら横島も技術を教えれば己の力で魔力を扱えるかもしれない。
肉体を扱っているのだから気も無意識のうちに多少なりとも使っているだろう。ならば教えれば気も使えるかもしれない・・・。

エヴァンジェリンは文珠を出したり霊波刀を出したりしている横島を見た。
できるかもしれないという過程ばかりだが非常に興味深く、やってみる価値はある。
頭の中でこれからなにをさせるべきかを考え、楽しくなってきた。

「ふ、ふふ・・・」

「ん?どうしたエヴァちゃん。」

「ふはははははははは!!」

突如笑い出したエヴァンジェリンにびびる横島。

「おい横島!私は非常に気分がいい!!」

「ひ、ひい・・・。」

横島は後ずさる。
だがエヴァンジェリンは一歩前進した。

「どうしたのだ?ああ、契約執行が切れたか・・・。『契約執行180秒間!!エヴァンジェリンの従者横島忠夫』。これでよし。」

「こ、これでよしって何をするのでせうか?」

横島は冷や汗を流す。なぜか妙神山修行場管理人の小竜姫が思い浮かんだ。

「きまっている。新しい力の使い方が見つかったのならば試さねばならんだろう?『リク・ラク・ラ・ラック・ライラック・・・」

「ちくしょー!なんでや〜〜〜〜!!!!」

魔力を高め、始動キーを唱え始めるエヴァンジェリンから横島は逃げ出した。

「馬鹿め!!逃げ場などないわ!!」

エヴァンジェリンは嬉々として横島の後を追いかける。
別荘の中で、命がけの鬼ごっこ(横島主観)が始まった・・・。


あとがき
色々書いてて戦闘シーンって難しいよな〜と頭を抱える宮本です。
SS書くのは難しい。
ネギより先にカモと会話する横島。
明らかになった雪之丞のトラウマ?
そして横島仮契約・・・って感じです。

修学旅行編を書いてて基本的に原作のシナリオから大きく抜け出すのは難しいんだな〜と思いました。

次回はちょこっと新しい出会いがあります。


レス返しです。みなさん感想ありがとうございます!

>八雲さん
ここで刹那です。ちょっとずつ刹那に変化が起きればな〜っと思ってます。
確かに横島は刺激強すぎますね(笑

>twilightさん
増えましたね〜。ネギま作品。みなさんがおもしろいのを書かれているので焦ります。
ギャグでは横島は無敵状態ですw
揺れる刹那はこれからも揺れてくれます。ぜひ萌えて下さい!!

>遊鬼さん
突っ込みをよけたら横島の横島としてのあり方が・・・(w
やはりピートは刹那に一度ぶつけないとという感じです。
シリアスでもなく、ギャグでもなくそのまま別れたって事になってます(汗
あの二人でっていうのは難しかったです。

>六彦さん
誤字訂正ありがとうございます。
ピートの言葉遣いは難しいです。横島には敬語ですよね?雪之丞には香港編あたりで厳しかったので少しフランクな感じにしました。
エヴァンジェリンの突っ込みはあれだけの横島の突っ込まれる日々を見てきているので自然ときつくなるんじゃないかというかんじで(笑

>忍さん
エヴァちゃん、刹那ちゃん・・・今回はカモですが次回は・・・お楽しみに。
多分予測不能な子です(笑

>yanさん
横島だけじゃないから広げられる事、表現できる事。ありがとうございます。
yanさんのこのコメントがちょっと京都編のあらすじに影響しました(w
これからもピートと雪之丞にうまく動いて欲しいです。

>ヴァイゼさん
そ、そうでした!1歳未満の幼女のペットでしたね(笑
さすが横島。凄い経歴だ・・・。
刹那の早い登場と横島の価値観でなんとかいい感じにストーリーを進めていきたいです。

>鋼鉄の騎士さん
横島なら美女美少女にはがんがんフラグをたてに行ってくれるはずですよねw
刹那への影響はお約束ですね。刹那は人気キャラだし主要キャラ、それに絡ませやすいですから・・・。
お約束に走らせていただきます(汗

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭

yVoC[UNLIMIT1~] ECir|C Yahoo yV LINEf[^[z500~`I


z[y[W NWbgJ[h COiq O~yz COsI COze