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「男三人麻帆良ライフ 第三話(GS+ネギま!)」

宮本 (2007-01-28 03:04)
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キーンコーンカーン・・・と鐘が鳴る中、教室のプレートが中等部二年A組から中等部三年A組へと架け替えられる。

「3年!A組!!」

「「「「「「ネギ先生ーーーっ」」」」」」

クラスの中でも騒がしい鳴滝姉妹と椎名桜子の音頭にあわせ、他のクラスメート達も叫び、騒ぐ。
中には冷や汗を流しつつそれを見ている者達もいる。
エヴァンジェリンはその中の一人だった。

「えと・・・改めまして3年A組担任になりましたネギ・スプリングフィールドです。
これから来年の3月までの一年間よろしくお願いします。」

教卓に手をついて挨拶をするネギを見て様々な感情が去来する。

(奴の息子なだけあって面影はある・・・。しかし、それだけだ。軟弱そうな、ただのガキ。まあ力の程はこれから分かるだろう。そう、運がよければ今夜にも・・・な。)

昨夜襲った佐々木まき絵は学校へ来ている。
横島の友人だという男達の話ではまき絵についていた魔力の残り香にネギは気づいたという。
ならば夜にネギが見回りを行い、その時に出会う事は十分にありえる。

(さて、どれほどのものか・・・)

エヴァンジェリンはネギを睨みつける。それに生意気にも気づいたらしいネギと目が合った。
エヴァンジェリンは一瞬青い顔をしたネギから興味を失ったように視線をはずした。
教卓ではネギがクラス名簿を確認している。

「ネギ先生、今日は身体測定ですよ。3−Aのみんなもすぐ準備して下さいね。」

「あ、そうでした。ここでですか!?分かりましたしずな先生。」

教室の入り口から声をかけてくる源しずなの言葉でネギは慌てて名簿を閉じる。

「で、では皆さん身体測定ですので・・・えと、あの、今すぐ脱いで準備してください!!」

慌てながらも言ったネギの言葉はすこし不適切だった。何人かの生徒が口元に手を当て、にやっと笑う。
ネギは己の失言に気づき顔を赤くした。

「ネギ先生のエッチ〜〜〜ッ!!」

「うわ〜ん。」

まちがえました〜っと叫びつつ走り去っていくネギ。
教室は笑い声につつまれた・・・。


           『男三人麻帆良ライフ 第三話』


身体測定が始まり、3−Aは彼女ららしい馬鹿話に花を咲かせる。

「ねえねえ、ところでさ最近寮ではやってる・・・あの噂どう思う?」

「え・・・なによそれ柿崎。」

「ああ、あの桜通りの吸血鬼ね。」

柿崎美砂が切り出し、それに神楽坂明日菜と春日美空がくいつく。
そうなれば騒がしい3−Aの事、クラスメイトのほとんどがその話題に耳を傾け、あるものは話にまざる。

「え〜何!?何ソレー!?」

「何の話や?」

「知らないの?しばらく前からある噂だけど・・・何かね〜満月の夜になると出るんだって、寮の桜並木に・・・真っ黒なボロ布につつまれた・・・血まみれの吸血鬼が・・・」

妙に迫力を込めて柿崎が言うと怖がり組は震えだす。
鳴滝姉妹はびくうっと驚き、宮崎のどかはガタガタ震えている。
椎名桜子と近衛木乃香は興味深げだ。

「そ、そういえばまき絵・・・昨日桜通りのとこで寝てるのを見つかったんじゃ・・・。」

和泉亜子がふるえつつまき絵にたずね、クラスメート達がえ〜っと騒ぐ。

「ちょっと亜子〜。あんなとこで寝てたなんて恥ずかしいから言わないでって言ったでしょ〜。」

「じゃあ認めるんや!まきちゃん、どうやった?」

恥ずかしげなまき絵に木乃香がたずねる。

「う〜ん、どうだったって・・・寝てたみたい。通りかかった人が起こしてくれて寮まで送ってくれたけどとくに何も出なかったよ。

まき絵が答えると教室はまた騒がしくなった。
すでに血を吸われたあとだったのだ・・・とかその通りかかった人が吸血鬼だったのだ・・・などなど。
・・・実は間違っていないのが恐ろしい。

「もー、そんな噂でたらめに決まってるでしょ。アホなこと言ってないで早く並びなさいよ。」

明日菜がばかばかしいとばかりにため息をつくと桜子が近寄ってきた。

「そんなこと言って明日菜もちょっとこわいんでしょ〜。」

「違うわよ!あんなの日本にいるわけないでしょ!」

叫び、黒板を指差す。
書かれているのはまるっきりどこかの妖怪・・・いや、空想上の宇宙人のような生物だった。

だが明日菜は視線を宙にさまよわせ、直後あごに手をやってうげっとうめく。

(ん・・・?待てよ。でも魔法使い(ネギ)がいるんだし吸血鬼くらいいてもおかしくないか・・・?)

小声で図書館島の事もあるしな〜とつぶやく。
そんな明日菜の様子を見てエヴァンジェリンはふっと笑みを浮かべた。
ネギの保護者のような事をやっている明日菜、同室で、妙に仲がいい・・・それを考えると魔法の事に気づいていてもおかしくない。

「その通りだな神楽坂明日菜。うわさの吸血鬼はおまえのような元気でイキのいいい女が好きらしい。十分気をつけることだ・・・」

「え・・・!?あ・・・はあ。」

からかうように言うエヴァンジェリン。
呆気にとられる明日菜の隣で桜子がありゃーエバちゃんから話しかけてくるなんて珍しーとつぶやいている。

――― ガシャンッ!!

その時、騒がしい教室の窓がわれ何かが室内に飛び込んできて、その何かは床でバウンドし、ぴくぴくと痙攣しはじめた。
室内は騒然とする。
叫ぶもの、ふらっと倒れかけるもの、慌てて物陰に隠れる者・・・。
だがエヴァンジェリンの反応は他とは違っていた。

「な、なああああああ!!」

驚き、指差し、そして叫ぶ。
なぜならその飛び込んできた物体を知っていたからだ。
物体は現在は意識を失っているようだがなぜこのような事になったのかがエヴァンジェリンの豊富な経験、知識を総動員してもわからない。
いつも静かなエヴァンジェリンが叫んだ事に驚いたらしいクラスメート達が注目する中、エヴァンジェリンは茶々丸に指示を出し、物体の頭を持たせる。

「何をやっとるか貴様〜〜〜!!」

エヴァンジェリンと茶々丸は協力して物体、今日からエヴァンジェリン直属の警備員として働く事が決定している横島忠夫を窓から放り投げた。


「それにしてもよかったじゃねえか!元の世界に戻る希望が出てきたんだからな。」

「そうだね。まあ文珠とおそらく宇宙の卵の作用でこっちに来てしまったんだから文珠をもっとたくさん使えば帰れるだろうということは自分達で気づかないといけなかったね。」

朝から上機嫌な雪之丞。
ピートもニコニコしているが横島だけは少し元気が無い・・・。

「ああ、あっちではナイスバディな美神さんの下僕で丁稚。ここでは幼女の下僕で丁稚・・・。せめて大人のおねーさまの・・・。」

「げ、元気出して下さいよ。僕ら二人よりはたぶん仕事は少ないですよ。」

学園長直属で警備員になることになったピートと雪之丞と違い、横島は警備員として結界の侵入者を監視しているらしいエヴァンジェリンの直属の部下となることが決まった。
エヴァンジェリンに魔法について教わったり、修行法の相談をしたりせねばならないということもあるからだ。
ピートは図書館島という巨大図書館でなにか役に立つ事がないか資料を調べるといった事も行う事になった。
文珠を使えず、資料から何か調べる事にもむいていない雪之丞は学園長から頼まれた仕事が中心だ。

「ふん。おまえには分からんのや、このむなしさが・・・。それにしても大変やな。おまえら今は一応仕事中だろ?」

「ええ。今日は全校一斉身体検査らしくって、僕らは覗きがいないかどうか見回りですよ。」

「あ!馬鹿!!」

にこやかに言うピートの頭を軽く殴り、雪之丞は睨んだ。
ピートがなにするんだとばかりに雪之丞を見ると、彼はピートを置いて走り出していた。

「大学部!大学部はどこや〜〜〜!!!!」

などと叫びながらいつの間にか人外のスピードで走り出していた横島を雪之丞が追っていく。
そこでピートは己の失敗に気づいた。
『覗きがいないかどうか見回り』。自分の仕事をピートはそう言ったが自分の横にその種があったのだ。
ピートの言葉はその悪しき種に肥料をやり、水をやり、日光を与えて一気に育ててしまった・・・。

「くっ、うかつ!真の敵は仲間のなかにいた!!」

「急げピート!雇われ初日、身内の不祥事で解雇なんてアホ過ぎるぞ!!」

「おね〜さま〜!!!!」

三者三様に叫びながら走っていく。
その追いかけっこは数分間続き・・・

「く〜ら〜え〜横島〜〜〜!!!!」

「ぐはあ!?」

ピートの過激な足止めを食らったあと、雪之丞の友に向けるものとは思えないほどの破壊力を秘めたアッパーで逃走劇は終了した。だが・・・

「「あ・・・。」」

吹っ飛んでいく横島。
がしゃーんと割れるガラス。

「・・・どうする?」

「どうするって言われても、回収しに行くかい?」

立ち尽くし、ガラスの割れた窓を見る雪之丞とピート。
するとそこから横島が戻ってきた。

「お、おお。跳ね返ってきたのか?」

「そんなわけあるか!!」

二人はなぜか飛んできた横島をキャッチする。
すると窓から感じる鋭い視線・・・。

そこには、昨日戦闘行為を行い、その後和解した少女、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルが立っていてこちらを睨んでいた。

『あ・と・で・は・な・し・が・あ・る』

確かに彼女の口はそう動いた。
二人は顔を見合わせると、慌ててその場から逃げていった・・・・


バサッと身にまとった闇夜に溶けるような漆黒のマントがひるがえる、蝙蝠で出来ているそのマントは吸血鬼に相応しい。
風が吹き、雲が流れ、空に浮かぶは満ちた月・・・。

「ふっ、素晴らしい夜だ。」

「はい、マスター。」

黒に包まれた少女はにやりと笑い、従者はひざまずき、主に頭を下げる。
一枚の絵画のような世界。
だがそれは少女とよく似た真っ黒なマントを着せられた男によって一瞬にして台無しにされた。

「なんでワイがつれて来られなあかんのや!!それにこの服は!?」

「声がでかいわボケ!!」

少女のハイキックがいい気分を台無しにした男の横っ面にめり込んだ。


「お・ま・え!これが隠密行動だとわかってるのか?」

「おう。そりゃあ女の子が女の子を襲うなど他人に知られたくないに決まってる。」

「そういう事を言っているんじゃない!!」

「マスター、少しお声が・・・。」

ボケボケしている横島にエキサイトしていたエヴァンジェリンは茶々丸の言葉で落ち着きを取り戻す。

「おほんっ!とにかくだ、今日も血を吸う。・・・まあすでに必要はないが、エサだな。あのぼーやがどう出てくるか、楽しみだ。それとおまえのその服だが、私の部下なのだから我慢しろ。」

「よく分からんが遊びみたいなもんなんやろ?タコのじいさんも黙認してるみたいだし。」

「ああ、今となってはそういう事だ。じじいが黙認しているのはやつの考えがあるのだろうがこちらとしてはありがたい事だ。
まあおまえを連れて来たのは保険以上の何ものでもない。何も無ければ特に動かんでいい。だが私や茶々丸、そしてぼーや以外に怪我人が出そうならば動け。
くれぐれも言っておくが、面倒はおこすな?今朝のようなアホな尻拭いは私はごめんだ!!」

最後はうがーっとばかりにエヴァンジェリンは怒りをあらわにする。
窓を突き破って飛び込んできた気絶した横島を外に放り捨てたエヴァンジェリンは、場を収めるために・・・

『あれは、私と茶々丸が仕掛けたドッキリだ』

などと言ったのである。
言ってからなんてあほな言い訳を・・・と思い、真っ赤になってうつむいてしまったエヴァンジェリン。
こんな言い訳を信じるわけがないと思ったのだが、予想以上に能天気でアホなクラスメート達は信じた。
『もー、エヴァちゃんお茶目さん』『赤くなっちゃってかわいー』などと言って駆け寄ってくるもの、子供の悪戯をみつけたように微笑ましげにこちらを見るもの、生暖かい目でこちらを見るものなど・・・非常に居心地の悪い、恥ずかしい思いをしてしまった。

「こんどバカな真似をしたら女子中学生の身体測定を覗こうとした事を広めるぞ!」

「そ、それだけは・・・。わいはただ大学部を目指していただけやのに・・・。」

敗北を認め、がっくりとうなだれる横島。

「マスター。クラスの方々が通りかかられます。」

「ふむ・・・。ん?別れるようだな。よし、私は行く。おまえらは手はず通りに・・・」

エヴァンジェリンはふわりと宙を舞い、時を待つ。
そしてびくびくとおびえているクラスメートの近くの電灯にの上に降り立った。
こちらに気づき、ひっと息を呑み青くなる少女を見てニイッと笑う。

「27番宮崎のどかか・・・。悪いけど少しだけその血を分けてもらうよ。」

「キャアアアアッ!!」

マントをはためかせ、接近。響き渡る悲鳴、そして

「まてーっ!!」

予想していた子供の声。
宮崎のどかは恐怖からか気絶し、のどかへの興味を失ったエヴァンジェリンは声の主を見る。
ネギ・スプリングフィールド・・・。
杖に足をかけ、『ラス・テル・マ・スキル・・・』と魔法の始動キーを唱える少年は、

「ぼ、僕の生徒に何をするんですかーっ!」

叫ぶと、地面に降り立ち魔法の矢を放ってきた。

「魔法の射手・戒めの風矢!!」

エヴァンジェリンは魔法薬の入った小瓶を投げ、『氷盾』とつぶやいた。
――― バキキキキンッ!
戒めの矢と氷の盾はぶつかり合い、相殺される。

「僕の呪文を全部はね返した!?」

驚きの声を上げるネギ。
だが驚いたのはエヴァンジェリンも同じ。
魔法の余波で帽子が飛び、指から血が流れた・・・。

「驚いたぞ。凄まじい魔力だな。」

「えっ、君はうちのクラスの・・・エヴァンジェリンさん!?」

「フフ・・・新学期に入った事だし改めて歓迎のご挨拶といこうか先生。・・・いや、ネギ・スプリングフィールド。」

のどかを抱えるネギを見て、指から流れている血をペロリとなめるとネギの心を大きく揺るがすであろう一言を発する。

「10歳にしてこの力・・・さすがに奴の息子なだけはある。」

効果は劇的。
ネギは目を丸くしてエヴァンジェリンに注目した・・・。

「な・・・何者なんですかあなたはっ!僕と同じ魔法使いのくせに何故こんなことを!?」

「この世には・・・いい魔法使いと悪い魔法使いがいるんだよネギ先生。・・・氷結・武装解除!!」

エヴァンジェリンは試験管と小瓶を両手に持ち、ネギに向けて放る。
中身の液体が空中で混じりあい、魔力のこもった言葉に反応してネギに向けて効果を発した。

「うわっ!」

「レジストしたか、やはりな・・・。」

嬉しげに笑うエヴァンジェリン。
ネギはわれに返って抱えていたのどかを心配するが、魔法の効果で半裸になったのどかをみて真っ赤になって慌て始める。

「あわっ・・あわ」

「何や今の音!?」

「あっ、ネギ!!」

そして、よく知った声が聞こえてきてネギはびくっとおびえつつその声の主をみる。
そこには自分がお世話になっている二人、神楽坂明日菜と近衛木乃香がいた。

「うひゃっ」

「あんたそれ・・・!?」

「い、いえあのこれは・・・」

半裸ののどかを抱えたネギを見て木乃香と明日菜は真っ赤になった。
ネギはそりゃ勘違いされるよなと思い、必死で弁解しようとする。

「ネ、ネギ君が吸血鬼やったんか〜〜〜!?」

「ち、違います誤解です〜〜〜」

両手をせわしなく動かして言う木乃香。
自由な左手を動かして誤解を解こうとわめくネギ。
それを傍観している明日菜・・・。
そんな二人を見てエヴァンジェリンはわざとネギに分かるようにその場を離れる。

「あっ待て!!」

「え・・・今のは?」

魔法の余波のせいか濃い霧がある中、明日菜の普通よりいい視力は霧の向こうの人影を目撃した。

「あ、明日菜さん木乃香さん宮崎さんを頼みます!身体に別状はありませんから・・・。僕はこれから事件の犯人を追いますので。心配ないですから先に帰ってて下さい。」

「え、ちょっとネギ君・・・」

「じゃあ!」

ネギは言いたい事だけ言うと杖を背負い、反動をつけて駆け出す。

「ネギく・・・うわっ、はや!?」

「ちょっとネギーーーッ!!」

すごいスピードで走って行くネギを見て驚く木乃香と、心配になる明日菜・・・
明日菜は少し考えてから

「ごめん木乃香、私も追ってみる!宮崎さんの事お願い!!」

「あ、ちょ!明日菜〜〜〜!!」

木乃香が叫ぶが明日菜はネギが走っていった方向へ走っていった。

「も〜。二人して走ってって〜。うち一人でどうしろっていうんよ。」

愚痴を言いつつも木乃香は「のどか、のどか〜」と声をかけたり、ペチペチと頬を叩いたりして起こそうとする。だがぜんぜん起きる気配はない。
こんなところにいてもしかたがないしと思い、自分のベストをのどかに着せてここから運ぼうとする。
だが力のない木乃香一人で軽いのどかが相手とはいえ人一人を運ぶ事などできず・・・。

「あ〜ん、もう。風邪ひいてまうえ〜」

ついつい泣き言を言い、そしてジャリッという音を聞いた。
誰か知り合いでも通ってくれればと思った木乃香は期待半分、不安半分で振り向き・・・そして見てしまった。
真っ黒なマントのようなものに身を包み、口元に真っ赤な布を巻いている人影・・・。
人影はゆっくりこちらへ近づき、マントをばっと動かす。

「きゃ、きゃ〜〜〜〜〜!!!!!」

思わず木乃香は悲鳴を上げた。


桜咲刹那は己の護衛対象であり、最も気になる存在である近衛木乃香の身を守るため、相棒である刀、夕凪をたずさえて桜通り付近を通る木乃香達を見ていた。

最近起こっている桜通りの騒ぎには関与無用と学園長から言い含められている。
そして刹那は今回の騒ぎがクラスメートであるエヴァンジェリンの仕業であろう事も予想していた。

(他の者ならともかくお嬢様を襲おうと言うならばエヴァンジェリンさんを止めよう・・・。)

普通に考えると近衛近右衛門の孫である木乃香に手を出す事は一線を越えることであり、エヴァンジェリンはやらないだろうと思う。
だが、それでも念には念を入れてと本日も刹那は離れた場所から木乃香達を見ていた。

すると駆け出した明日菜の後を追って木乃香が魔力のぶつかり合いがあった場所へ向かったのだ。
巻き込まれるのでは?目撃する事によって魔法の存在に感づくのでは?など不安がわいてくるがとりあえず現状維持で見守り続ける。
明日菜と木乃香は半裸ののどかとそれを抱えるネギを目撃。そしてネギは犯人を追って走って行き、明日菜はそれを追って行く。

「お、お嬢様・・・。」

一人残されて孤軍奮闘している木乃香を見て手を貸したくなるが、陰から木乃香を守るという自分自身に課した戒めのため、思いとどまる。
そこに人の気配が現れ、刹那は緊張と警戒から身体に力を入れる。
黒いマント、口に巻いた布・・・見るからに怪しい。

「きゃ、きゃ〜〜〜〜〜!!!!!」

「お嬢様!!」

そして木乃香の叫び声が引き金になった。
ざっと一気に桜並木の間を駆け抜け、手加減など忘れて抜刀!人影と木乃香の間に割り込むようにして攻撃を繰り出す。

「のわ〜〜〜!?」

「せ、せっちゃん!?」

「大丈夫ですか?お嬢様・・・。」

「ちょ、ちょっとまっ・・君・・・」

「問答無用!!」

おかしな叫びとともに初太刀はかわされたが、木乃香が無事なのを確認してからすぐに目の前の男に向かう。
情けなく慌てながら後ずさる男だがそのようなものは刹那には関係ない。

「はっ!!」

幾筋もの剣線。

「うひい!?」

だがそれも全く当たらない。
情けない声をあげながら、おかしな動きをしてかわしまくる男。

「くっ!避けるな!!」

「避けるわ〜〜〜!通り魔や!わいは子供には手だしとらんぞ〜!!」

どうせなら色っぽいねーちゃんに〜と叫ぶ男。
刹那はかわされ続けた事から頭に血を上らせてさらに剣速を上げる・・。

「はああああ!!!!」

「ひい!?」

「な、なに!?」

キンキンキンッと金属同士が当たるような音がして、刹那の放った夕凪の剣撃を淡いグリーンの刀のようなものが防いだ。

(こいつ、ただの変質者ではなく『こちらがわ』の人間!?まさかお嬢様を狙う刺客か!)

手を止めた刹那は目の前でビクビクとおびえている男をぎろりと睨む。
今まではみねうちだったが、『こちらがわ』の人間ならば、生かしておくわけにはいかない!!
再び攻め手を再開しようとして・・・

「どちくしょ〜!!わいが、わいがなにしたっていうんや〜〜〜!!!!!」

「あ、まて!!」

目の幅の涙を溢れ出させながら、こっちに背を向けて男は走り去る。
刹那は逃がさないとばかりに慌てて後を追う。

「あ!せ、せっちゃん!?」

木乃香はのどかを抱いたまま声をかける。
だが刹那は走って行き・・・。

「どうしたんだ?あ〜、俺は怪しい者じゃないぜ。警備の仕事をしている者で、人呼んで伊達雪之丞だ。」

再び取り残された木乃香の元にスーツを着たつり目の男が現れた。
見た事のない男だが手には身分証を持っていて確かに警備員であるらしい。

「あ、あの・・・友達が倒れてて、先生がいたんやけど走ってって、明日菜も後を追いかけて・・・それで怪しい人が・・・せっちゃんで〜〜〜って違うううう!!」

木乃香は説明をしようとしたが慌てて妙な言葉を発してしまう。
雪之丞は苦笑して落ち着くように言った。

「あ〜、落ち着いてくれ。ゆっくり話してくれりゃいいから。それとさっき走ってった怪しい奴は俺の同僚の警備員だ。・・・なんであんな怪しい格好してたかはわかんねえけどな。」

相変わらず騒ぎを大きくする奴だと舌打ちして雪之丞は怪しい格好の友人の後を追ってバンパイア・ハーフの友人が向かった方向を睨んだ。


「あ〜、なんでこうなるんや〜!!」

横島は叫んで飛んでくる斬撃を大げさに避けた。
現在彼は長い刀を持った少女に追われている。

横島としては、エヴァンジェリンに無理やり怪しい格好をさせられているのが恥ずかしいのでバンダナを口元に巻いて顔が分からないようにしてエヴァンジェリンに襲われた少女を運んでやろうと思ったのだ。
少女の友人らしい長い黒髪の少女が運ぼうと孤軍奮闘していたため、手伝うために近づいたのだが、叫ばれた。
そして現れたのは長い刀を持った通り魔少女・・・。

「うひゃあ!?」

「くっ!避けるな!!」

飛んできた斬撃を再び慌ててかわす。
理不尽な声が後からついてくるが、とりあえず反論はしないでおく。

「殴る蹴るならまだええんやけど斬られたらかなり痛いやないか!!」

しかしいつまでもそうしているわけにもいかない・・・。
辺りには霧が立ち込めてきた。
横島は覚悟を決め、立ち止まると向かってきた少女の刀をかわし、木の後ろに隠れる。

「お、落ち着け〜!わいは、わいは無実や〜〜〜!!」

「五月蝿い!お嬢様に手をかけんとする不埒者!!生かして帰すわけにはいかん!!」

なにか・・・勘違いしている。
横島は再び迫ってくる少女の攻撃をなんとかかわしてからさらに言い訳をしようと決めるが、次の瞬間、よく知った気配を伴った霧が横島を包み込んだ。
身体が軽くなり、溶けていくような感覚・・・。
そして横島はさっきまでいた場所から離れたところに降り立つ。隣には見知った気配、見知った友人。

「た、助かった〜。サンキューピート〜〜〜」

「全く、ほんっとにトラブルに事欠かないですね。」

ピートは苦笑する。

「な!?魔力・・・?それにこの気配は・・・。新手かと思ったら人外の者か!!人型の物の怪を使役するとは!どこの手の者だ!!」

和む二人に鋭い声がかけられた。
ピートは一瞬表情を歪め、横島は首をかしげて一歩踏み出した。

「何言ってるんだ?お嬢ちゃん。誤解しているようだけど、こいつは俺の友達だぜ。それで俺はここの警備員。まあ昨日雇われたんだけどな。」

少女が足を止めたため落ち着けた横島はやっと説明できるとため息をつき、ほいっとばかりに身分証を投げる。
ピートもそれに習い、身分証を投げた。
近右衛門が言っていた治安維持のためにいる魔法先生、魔法生徒。この少女は魔法生徒なのだろうと考える。

少女はちらりと身分証を見ただけだ。そこまで身分証にはこだわっていないらしい。
その顔に浮かんでいるのは驚きと、困惑。

「・・・とも・・だち?」

首をかしげ、小さな声でつぶやく。

「ああ。こいつは女の子にモテモテだわ!昼に弁当作ってもらうわ!男の最大の敵や!!でも友達だ。それに物の怪じゃないぞ。ただのバンパイア・ハーフだ。」

「よ、横島さん・・・。」

ピートはこの世界で自分のような存在がどのような印象を受けるのかなどわからないにも関わらずあっさりと言った横島に焦る。
だが横島は最初からこういう人間だったと考え、苦笑した。
人外である、幽霊である、ハーフである・・・そんなものは一つの個性。そういった受け取り方。
全く意識せず、そして誰にでも同じように自然体。女性関係にすぐに食いついてくるのは正直勘弁していただきたいが・・・。

「ハ、ハーフ?」

「おう。ニューハーフじゃないから安心してくれ。」

「え、あ、いや・・・。」

目に見えて少女はおかしくなった。
驚きと困惑以外に興味、羨望などの感情も見え隠れする。

「とにかく、俺らは警備員。さっきは倒れていた女の子をもう一人の女の子が運ぼうとしていたのを見かけて、大変そうだったから声をかけようと近づいただけだ。」

「そうですか。それで、バンパイア・ハーフだというのは?」

「ああ、僕はバンパイアと人間のハーフ。バンパイア・ハーフなんです。」

ピートが苦笑して言うと少女は自分が無神経な事を言ったと考えたのだろう。申し訳なさそうな、そして今にも泣き出しそうな顔をする。
この少女は悪い子ではないなと感じたピートは口を開く。

「気にしないで下さい。普通はどのように見られるかは分かっているつもりですから。」

「い、いえ!そんなつもりでは・・・!!「おい!何をしている!!」」

厳しい声が聞こえ、少女が慌てて上を見るとそこには背中のジェットをつかって空に浮かんでいる茶々丸とその茶々丸の腕に座っているエヴァンジェリンがいた。

「あ〜、エヴァちゃん。ちょっと厄介事に巻き込まれてさ。」

「何かに巻き込まれないと気が済まないのか?」

横島を睨んだエヴァンジェリンは額を押さえて頭を二、三度左右に振る。

「あ、あのエヴァンジェリンさん。知り合いなんですか?」

「・・・桜咲刹那か。そこの黒髪の方は私の下僕だ。なんとなく何が起こったかは分かる。世話をかけたな。」

「え?いえ・・・。」

刹那はそういうとちらちらとピートの方を見る。
エヴァンジェリンは昨日ピートがバンパイア・ハーフだと聞いた事を思い出し、にやっと意地悪げに笑った。

「そこの男が気になるか?まあ異国の者は日本人にもてるようだしな。だがその男、見た目通りの年齢ではないぞ。人外とのハーフだそうだ。」

「!?・・・先ほど、聞きました。」

なに!?ピート!貴様今度は女子中学生に毒牙を?と叫ぶ横島と誤解です!!と弁解するピートを視界に入れないようにして刹那はなるべく感情を表に出さないようにエヴァンジェリンに答えた。

「ふむ。そうか。私はおまえを気に入っているから教えてやったのだが・・・。知っていたのか、つまらん。いらんお世話だったようだな。さて、横島!!」

「ん?なんだ?エヴァちゃん。まだこの女ったらし、すけこまし、ついでにロリコンへの追求が終わっとらんのや!!」

「だから誤解です!!いつものだって女の子が勝手に!」

「モテ言葉きた〜〜〜〜!!許さん!勝手になんだって!?寄ってくるってのか?おまえは!おまえはやはり男の敵や!!」

「・・・茶々丸。」

「はい、マスター。」

疲れたような表情をしたエヴァの言葉に反応し、茶々丸は横島に接近してごすっと拳を打ち込んだ。

「ふぬがっ!?」

自分の攻撃を一撃も食らう事のなかった横島が茶々丸の攻撃をあっさりうけたのを見て突込みは回避しないのか?と刹那は冷や汗をながした。

「な、何するんや〜。」

「五月蝿い、行くぞ。貴様と言う奴は全く・・・。」

茶々丸が横島を小脇に抱え、右腕にエヴァンジェリンを乗せて再び飛ぶ。

「じゃあな。ああ桜咲刹那、安心しろ。おまえのお嬢様には私は手を出さんよ。」

「何!?あの子のお嬢様?まさかあの子も百合?それにお嬢様には手を出さないってお嬢様以外には手を出すのか?違うと言っていたがエヴァちゃんもやっぱり百合!?」

「もういい、貴様は黙れ。疲れる・・・。」

アホな言い合いをしながら三人は飛んで行く。取り残された二人は思わず顔を見合わせた。


あとがき

投稿の際に読み直して今回はオリジナル展開少ないな〜と凹んだ宮本です。
最初は少しずつ原作と違う出会いや、会話を入れていってそれが後でストーリーの変化につながるみたいな感じの書き方が出来ればと思います。

作品の中での行動や台詞に納得がいかない事、こんなの○○じゃないと思う事などあると思いますが多少はご理解いただけると嬉しいです。

現在書いているところではやっと京都へ向かったところ・・・。
やはりストックはいくらあっても足りません(汗


レス返しです。感想ありがとうございます!

>meoさん
こんな感じで宇宙の卵の影響も受けて吹っ飛んできたって感じです。
そうですよね、あれでゆっきーが年いってたらちょっとかわいそうです。主に身長が。

>八雲さん
やはり痛いものはいたいんじゃないかと(笑
そして横島といったらあの奇行と、たまに見せる優しさで!さらに雪之丞からは熱血、友情ははずせないです。

>遊鬼さん
ソロモンの魔神のところもっと驚くシーン・・・今思うと欲しかったです。遊鬼さんの感想みてあ、しまったみたいな感じです。
横島のルーツさがしが主でしたからすこしおざなりになってしまいました。
ピートの活躍が三人の中で一番むずかしいです(涙

>みょーさん
ありがとうございます。
横島にきつい女性はやはりセットでw
でも女運はある・・・気がしますよね?

>米田さん
お世話になります。今後ともよろしくお願いします。

>鋼鉄の騎士さん
フラグを立てて放置。横島の残念な特技ですよね(涙
虎は、やはり哀れです・・・

>忍さん
エヴァちゃんに見せてしまいました。色々なフラグが立って今後にすこし役立つかと。
これをきっかけにどう進んでいくか・・・。まだ自分でも決めてないですw

>ヴァイゼさん
横島のコンビでは突っ込み役、ピートとのコンビでは熱血先走り役。ユッキーはとてもいいキャラですよね。
やはりエヴァは力、知識、別荘と色々持ってますから幅を広げやすいです。キャラとしても好きですし。
虎は・・・(涙

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