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▽レス始

「男三人麻帆良ライフ 第二話(GS+ネギま!)」

宮本 (2007-01-27 03:32)
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「・・・か?・・丈夫・・・・?」

遠くから鈍く響いてくるような声。
佐々木まき絵はゆっくりと頭を振るとぼんやりとした思考のまま目を開き、

「キャー!!」

突然叫んで足をばたばたと動かした。
なにやら「はうっ!」と言う声が聞こえ、ぐにゃりとした感覚が足に伝わってきたがなぜか逃げなければならないという気持ちだけが頭に浮かんでくる。

「おい、落ち着けよ。」

ぽんっと肩に置かれた手。
まき絵はひっと息を呑んで振り向く。視界に入ったのはつり目の男性。

「なんかおまえそこに倒れてたんだが・・・どうしたんだ?春とはいえ寝る場所としては適切じゃないと思うぞ。」

「え?へ・・・?あ、あれ?」

まき絵は苦笑する男を見て首をかしげる。
自分は風呂に入って・・・それで・・・?どうしたのだろうか?
とにかく目の前の男は寝ていた?自分を見つけて起こしてくれたらしい。

「あの、すみません。叫んじゃって・・・。あとありがとうございます。」

「見つけたのは俺じゃねえよ。お礼なら、そこで苦しんでいる奴に言ってやってくれ。」

くっくっくとおかしそうに笑いながら男は横の方を指差す。

「か、神よ。これが私に与えられた試練なのですか?」

ならばそれはひどく痛い・・・などとつぶやいている金髪の男性は、股間を押さえてうずくまっていた。


    『男三人麻帆良ライフ 第二話』


「本当にごめんなさい、ピートさん。」

「あはは・・・。いや、もういいですよ。・・・これからは気をつけてくだされば。」

ぺこっと深く頭を下げて謝るまき絵にピートはほんの少し腰を引かせながらも苦笑する。
どうやらまき絵は自分が襲われた事などは全く覚えていないようで、自己紹介がすむと危ないから寮まで送って行くと言うピートと雪之丞に持ち前の明るさで話しかけてきた。

「それで、桜通りで吸血鬼が出るって噂が少し前から流れていたから怖かったんですよ〜。」

それを聞いてピートは確信する。
あの人影が言った『同族』という言葉、そして満月の夜になると出るという吸血鬼の噂。
ちらりと雪之丞の方を見ると雪之丞もこくりとうなずいた。

「そんならあんな道歩かなきゃいいじゃねえか。」

「そうですよね〜。」

照れくさそうに頭をぽりぽりとかくまき絵。
横島がいたらワイはロリコンじゃないと言いそうなほどにまき絵の仕草はとても可愛らしく・・・・

「マ、ママに・・・「ストーップ!!」ぐはあ!なにしやがるピート!!」

「こっちの台詞だ!年下、しかも中学生にむけていつもの台詞を言うか!?普通?」

「だ、だけどよ。」

「だけどじゃない!
・・・そういえば合コンの時に弓さんにも同じ台詞を!!彼女も年下、あの時高校一年生!!今度は中学生とは・・・。
雪之丞、君は横島さん以上に節操なしだ!!」

ピートは雪之丞に反論すら許さず言い切った。
背後にビシャーンっと雷の効果を背負い、ふらふらと崩れ落ちる雪之丞。

「は、はは、ははははは!!横島?横島以上?横島以上に異常なのか?」

ああママ、俺は知らない間に汚れちまっていたようだぜ、と力なくつぶやく。

「あの〜、どうしたんですか?大丈夫なんでしょうか?」

「HAHAHA、彼はちょっと今まで気づかなかった現実に気づいたせいでショックを受けているだけですよ。大丈夫です。それよりまき絵さん、少したずねたい事があるんですが。」

ちょっぴり外人風味に高笑いしたピートは話を変える。

「なんですか?」

「あなたを送っていく先の寮に誰か管理人のような方はおられるでしょうか?少し話があるのですが。」

ピートとしては横島がさらわれた今、早めに対応をとらねばならねばならないのでここの治安維持を司るような存在に話をしたいと思ったのだ。
管理人のような人物がいるなら頼んで偉い立場の人間に会わせてもらいたい。
どこまで話すかは相手次第だが、横島がさらわれた今しっかりこの世界や相手を見極めてから・・・などという事は言っていられない。

「う〜ん、管理人・・・あ!私達の担任の先生が寮に住んでます〜。」

「本当ですか?じゃあちょっとその人を紹介してくれませんか?少し話したいことがあるので。」

「いいですよ〜。・・・って、いた!お〜い、ネギく〜ん。」

まき絵は住み慣れた女子寮の入り口に見知った顔を見つけて声を上げ、手を振った。

「あれ?まき絵さん!夜に出歩いたらダメですよ〜。」

「へへ〜、ネギ君こそ。子供は寝る時間だよ〜。」

手を振るまき絵の呼びかけに答え、近づいてきたのはグリーンのスーツを着て、長い棒状のものを持った子供だった。
それをピートと、復活した雪之丞は訝しげに見る。

「え〜っと、この子供は・・・弟さんですか?」

「馬鹿野郎。どう見ても日本人じゃねえだろうが。」

「はい、この子が私達の担任のネギ先生です。」

「は?え?まき絵さん、なんなんですか?・・・あれ?」

まき絵は二人の様子など気にせずに可愛いでしょ〜といいながらネギを前に押し出した。
ネギは知らない人二人の前に押し出されて戸惑うが、同時に違和感を感じてじっとまき絵を見る。

「ん?どうしたのネギ君。」

「え、いや、まほ・・・じゃなかった、なんか変な感じがしたものですから。」

なんとかごまかすネギはまき絵の首筋を見ていた視線をはずしてあらぬ方向を見る。

「へ〜。ま、いっか。じゃあ私部屋に戻るね〜。ピートさん、雪之丞さんありがとうございました。」

ネギの頭をなでたまき絵はピートと雪之丞に頭を下げると手を振りながら女子寮の中に入っていった。
せめて紹介くらいはして欲しかったな〜と思い冷や汗を流しつつピートはこの子供にどう切り出すべきか迷う。
まき絵が担任の先生だと言い、子供も否定しなかったのだからそうなのだろう。・・・この世界の常識に大きな疑問が残るが。
しかし同時にこの子供はさっき魔法と言おうとしたようだ。そして魔力の残りかすがついているまき絵の首筋をじっと見ていた。
おそらくこの子供は魔法というのに関係がある。だがこの世界では魔法は秘密だという事だから真っ向から聞いても答えてくれないだろう。

「あ、あの〜。」

見知らぬ二人の前に取り残されたネギはどうしようかと思いつつ二人に声をかける。
ピートがまず世間話と、倒れていたまき絵を発見したという話から始めようと思い、口を開こうとすると、

「おい坊主。魔法、知ってんだろ?」

目つきの悪い友人が真っ向からストレートに突っ込んでしまった・・・。


「おい坊主。魔法、知ってんだろ?」

その言葉が染み込み、ネギは慌てる。
自分は何か失態をおかしただろうか・・・と。
だが自分は特に何もしておらず、目の前の二人とは初対面である事を考えてその事からこの二人も魔法使いで自分に接触してきたのではないかと思い直した。
そう、たとえばさっきまき絵から感じた魔力の事について話がある・・・とか。

「え〜っと、僕達は怪しい者じゃないんだ。さっき桜通りというところで倒れている佐々木まき絵さんを見つけてね。担任?の先生?だという君にちょっと話があるんだけど。」

担任という言葉と先生という言葉に疑問符がついているがそれは置いといてとりあえず話を聞こうと思い、ネギは口を開いた。

「とりあえず、そこでお話しませんか?」

指差した先には公園にある机と椅子。
依存は無いようで二人の見知らぬ男はネギの後をついていき、机の側に行った。

「僕はピエトロ・ド・ブラドー。ピートって呼んでくれると嬉しいよ。彼は友人の伊達雪之丞。」

「あ、はい。僕はこの麻帆良学園中等部で英語教師をしているネギ・スプリングフィールドです。」

「・・・本当に子供が先生やってんだな。」

さっき無遠慮かつストレートに質問をしてきた男の相方が意外にも礼儀正しく自己紹介してきたのに驚き、ネギは慌てて自己紹介をし返す。
雪之丞のあきれたようなため息は気にしないことにする。

「そ、それで、あの〜さっき魔法・・・とかって言っておられましたけど。」

「ばればれだよ。隠さなくていい。さっきあの嬢ちゃんの首に残った魔力の残りに反応してただろ?
あれな、桜通りってとこで嬢ちゃんが黒いのに襲われてたからついたんだと思うぜ。」

「え?まき絵さんが!?」

驚いて反応するネギ。
雪之丞は「誘導尋問ってのはこうすんだよ」と小声でピートにささやき、ピートはその強引さに眉をひそめる。

「そ、それでまき絵さんは・・・?」

「その黒い人影は追い返したし、大丈夫だと思うけど、ちょっと詳しい話をしておきたいから・・・その、魔法の事が分かる責任者みたいな人に会わせてくれないかい?」

なにか子供を騙すようで気が咎めるがピートはネギに学園長なる人物の元へ案内してもらう事になり、小さくガッツポーズをした。


水着を着た美女で埋め尽くされたプールに飛び込み、もみくちゃにされる横島。

「て、天国や〜」

――― 暗転
雇い主である美神令子がベッドに寝転び、自分を誘っている・・・。

「いいんっすね!?18禁指定にしてもいいんっすね〜!!」

――― 暗転
おキヌちゃん・・・
――― 暗転
冥子ちゃん・・・
――― 暗転
エミさん・・・
――― 暗転
小鳩ちゃん・・・
――― 暗転
魔鈴さん・・・

これは夢だと簡単に分かる。
思春期の少年にありがちな青い妄想の夢。
しかし、それにしてはレパートリーが多すぎる。
まるで自分が今まで出会った者、そしてその時の出来事をコマ送りで見ているような、そんな違和感・・・。

そして彼女が現れた。
記憶の中の彼女と寸分違わず、真っ黒な髪を揺らしてこちらに微笑みかける。
彼女は自分自身の服に手をかけたりなんかしない。

なぜかはなんとなく分かる。
汚したくないからだ。
彼女を、彼女の尊厳を、自分の中に残った彼女の意思を、そして・・・大好きだった彼女の全てを・・・。

『ヨコシマ。』

彼女は綺麗に微笑んだ。


エヴァンジェリンは見つけた侵入者三人のうち、最も興味を持ったバンダナの男を拉致するように茶々丸に命じた。
自分と同じような感じのする金髪の男も興味深かったが、彼女を吹き飛ばした今まで見た事のない妙なアイテムに大きな興味を持ったのだ。
茶々丸の話では元々こちらが特に危害を加える気がなかったのを知らない男は、佐々木まき絵をかばうようにして茶々丸に電流を流され、痺れたところに睡眠薬を投与されて動けなくなったらしい。

拉致したバンダナの男を自分のフィールドであり、魔法も使える『別荘』に放り込み、そこでせっかくだからとばかりに男の首筋に牙を突き立てて、血を少し吸った。
だがそこでエヴァンジェリンはびくっと体を震わせる。
血からほのかに香る、己よりも強力な魔の香り、濃厚にして非常に上質な血液・・・。
処女の血にもこれほどのものはなかった。どう見ても普通の人間のはずなのだが。

「この男は・・・なんだというのだ?」

首筋から少し流れる血をもったいないとばかりにペロリとなめる。
この男を連れてきてよかった。
時が経てば経つほど、ますます増加してくるこの男への興味。

「茶々丸、私は今からこの男の夢に入り、記憶を暴きだす。不測の事態に対応できるようにしておけ。」

「はい、マスター。」

うなずいて己の側にしゃがむ茶々丸に満足げにうなずくと、エヴァンジェリンは「リク・ラク ラ・ラック ライラック」と魔法の始動キーを唱え、さらに魔法を唱えていく。

そして横に倒れたエヴァンジェリンの身体は茶々丸に抱きかかえられ、精神体ともいえる意識が男の夢の中へと潜って行った。

精神を刺激し、記憶を刺激し、必要の無いものは飛ばしていく。
幼いころの男は本当にどこにでもいるようなガキだったらしい。
自分が見たいものはこんな何の変哲も無いつまらない日常ではない。
延々ととばされるつまらない日常に飽き始めた時、変化は起こった。

偶然か、必然か、一つの出会いが男の世界を変化させ、エヴァンジェリンを興奮させる数多くの出来事に巻き込まれ、興味深い出会いを繰り返して行く・・・。

「ほ〜、ふ〜ん、なるほど・・・。しかし、これが本当ならばこいつは別の世界の?ふむ、ますます興味深い。それにしてもあきれた頑丈さだな。」

エヴァンジェリンが見ている光景の中では大気圏を生身で突破して地面に激突した男、横島忠夫が「死ぬかと思った」などと言いながら地面から出てきているところだった。
それを見てエヴァンジェリンは冷や汗を流す。

横島の物語はまだまだ続く、そしてその内容にエヴァンジェリンは驚きと、罪悪感を隠せなかった。

「馬鹿な・・・。ならばこいつの血はあの女の影響で・・・?」

慟哭する少年。
そして彼のそばで悲しげにうつむく彼の仲間達・・・。

エヴァンジェリンは自分がひどく神聖な、こえてはならない一線を無遠慮に乗り越え、他人の大事な物を踏みにじってしまったような後味の悪さと罪悪感を感じた。
自分は悪の魔法使いなのだからという言い訳など使えない。
自分が持っている守るべき『悪の美学』を知らないうちに破ってしまったような気がして、さっき飲んだ極上の血が体の中で自分を責めているような気がして、ひどい胸の痛みを覚えた。

そして同時に自分の長い過去に思いをはせる。
人にあらざる者に対する本気の慟哭と、そして本気の思い。
それを自分は向けられた事があったのだろうか?

最初は不純だったかもしれない、だが最後の思いは本物で、それだけの思いを向けられる存在――ルシオラと呼ばれる蛍魔を心の底からうらやましく思い、同時に尊敬した。


エヴァンジェリンが思考の渦にとらわれている間にも物語は進む。

仲間達と一つの仕事に出向いた三人。
だがその仕事の元となっていた原因が『宇宙の卵』と呼ばれるもの。それはかつて魔神が造ったもので・・・三人はその暴走に巻き込まれる。
吸い込まれそうになった三人は吸い込まれる寸前で横島の『転』『移』の文珠で脱出しようとしたが、三人という人数、不安定な場所、側にある宇宙の卵などなどといった不確定要素によってエヴァンジェリンがいるこの世界にやってきてしまったというわけだ。


エヴァンジェリンはゆっくりと目を閉じ、精神を集中させる。
そして横島の夢の中、精神の世界から離れて行く。

「・・・すまない。」

ぽつりとつぶやいた言葉。最初の興奮はすでに彼女には残っていなかった。


「・・・スター、マスター」

「ん・・・?茶々丸?大丈夫だ、問題ない。」

「そうですか。脈拍の異常と呼吸の乱れが見られますが。」

「ああ。少しな。」

「それと、そちらの男性が起きるようです。」

茶々丸の言葉にはっとして横を見ると、横島忠夫がなにやらうなっている。

「・・・そうか。私が何か言うまで手を出すな。」

「はい。」

横島は最後に「ん〜・・・」とうめくと目を開いてゆっくりと辺りを見回し、エヴァンジェリンと茶々丸の方へ視線を向ける。そして・・・

「ずっと前から愛してました〜!!!!」

叫びながら、魔力の満ちた空間で大人の姿になっていたエヴァンジェリンに飛びついた。
だが、いつもと勝手が違っていた。
いつもなら女性に飛びついた場合、回避されるならまだいい方、蹴られる、殴られるなどといった事が起こっていたのに今回はそのような事はなかった。
体に伝わる柔らかな感触、背中に回された細い腕・・・。そして

「・・・すまない」

耳元でのささやき。
横島はとどめの一撃にすっかり体から力が抜け、意識を明後日の方向へ飛ばした・・・。


「・・・と、いうわけでおまえが寝ている間に少し記憶を見させてもらった。少しは事情が分かったのでおまえらが元の世界へ戻るために協力をしてやろう。・・・って、聞いているのか!?」

エヴァンジェリンが選択したのは協力者という立場。
一応謝罪の言葉だけは言ったが相手に意図の伝わらない謝罪など謝罪ではない。
だが真実を話して改めて謝罪をするのか?と考えた時に、それは意味が無いと自分の中で結論付けた。
自分が不用意に全ての記憶を読んだ。無遠慮だったと言って謝り、それによってこの男になんの利がある?と考えてしまうのだ。
ならばこの男にとって未知なるこの世界で自分が協力者となってやり、この男が元の世界へ帰るための手伝いをしてやろう。

そのような事を思って、この男の価値観から考えて話しても大丈夫だろうと思い、自分が吸血鬼である事を話す。そして大人の姿の自分の幻術を解いてから横島の記憶を見て横島達が異世界から来たことを知っているので帰るために協力してやると話したのだ。

だがこの男は体育座りをして影を背負い、ぶつぶつとなにやらつぶやきはじめた。

「俺は、俺は幼女に欲情、その上抱きつき・・・。でも吸血鬼だし年齢は!・・・でも幼女・・・いや、外見が大事や!抱きついた時はボインボインで!!・・・でも幼女や。」

「誰が幼女か!!え〜い、五月蝿い!さっさと正気に戻れ!!」

エヴァンジェリンは時折漏れ聞こえる幼女、幼女という言葉にどんどん機嫌を悪くしていき、ついには自分もブツブツとなにか唱え始めた。
しかしそれは横島のような虚ろな言葉ではなく、力ある言葉で・・・

「闇の吹雪!!」

「どわああああああ!!」

吹雪を纏った闇を手から打ち出した。
もろに食らった横島は凍りつきながら吹き飛ぶ。

「・・・脈拍、心拍数ともに異常はあるもののたいしたダメージは受けていません。信じられない生命力です。」

吹き飛んだ横島の状態を茶々丸が冷静に告げる。

「ふんっ、ゴキブリ並みだな。おい、頭は冷えたか?」

「冷えるどころか凍ったわ!!」

「で、私の話をちゃんと聞いていたのか?」

「うう・・・、ボインのねーちゃんが吸血鬼で、だけど実はボインのねーちゃんじゃなくて、それでいて幼女で。わいは、わいはロリコンやないのに!ロリコンを通り越してペドに!?」

「え〜い黙れ!!おまえらの言う霊能力とやらがなくて魔法がある!そしてその魔法を使える魔法使い達は魔法の存在を隠している!そういう事を話してやったが、おまえはそれを聞いていたのかと私は聞いている!!」

がーっと歯をむいて叫ぶエヴァンジェリン。
ようやくそちらを見た横島はまだ落ち込みながら聞いていたとでも言うようにコックリと首を縦に振った。
エヴァンジェリンは話が進まないので頭を抱えるが、直後にいい事を思いついたとばかりにぽんっと手を打った。

「横島?私が登校地獄という呪いのせいでこの麻帆良学園都市にいるという事は言ったな?」

「ん?ああ。聞いた気がする。魔力を封印されたんだったっけ?」

「そうだ。魔力を封印された。そしてその時に本当の姿になれなくなってしまったのだ。」

「本当の姿・・・?」

横島はぴくりと反応した。

「そう、さっきの大人の姿さ。呪いのせいでまともに本来の姿にもなれない。あの姿に戻れたら、少しくらいサービスしてやってもいいのだがなぁ。」

「な、な、なあああああ・・・。」

「おまえの・・・文珠とかいったか?あれなら呪いを解けるんじゃないか?」

「おお!!」

叫ぶと同時に横島は右手に文珠を二つ取り出す。
込める文字は『解』『呪』。
それをエヴァンジェリンに押し当てて、発動させた。

「・・・あり?」

文珠は一瞬光るがすぐに光を失い、横島の手の中を転がった。
エヴァンジェリンは当然だとばかりに横島を見た後で無い胸を張る。

「おまえの文珠は文字を多く連結させればさせるほど精密に、そして強力な効果を出させるのだろう?私にかけられた呪いは『解呪』の二文字では不可能だったわけだ。
だがこの呪いの術式を多少は理解したうえで『登校地獄解呪』と連結させたらどうだ?六文字の連結であるから難しいものだろうが不可能ではない可能性が高いだろう。」

「おお!!」

何せあそこまでの力を持つ神器と言っていいほどのものなのだとつけくわえるエヴァンジェリン。
横島は目を輝かせて文珠を取り出そうとして・・・

「でも、俺が今連結できるの最高で四文字だぜ。しかもかな〜り集中して。四文字じゃ失敗する事が多いくらいだ。だから完全にコントロールできるのは三文字。」

「ふん!そんなもの、修行すればいい。訓練をすれば出来ない事はないだろう。」

そう、エヴァンジェリンは十文字以上の文珠を制御して時間移動すら可能にした『横島忠夫の何年も後の可能性』を知っている。
かなり分厚くブロックされていた記憶に興味を持ち、こじ開けて未来の横島が来たときの事を覗いたのだ。最も断片的にしか見れなかったが・・・。

「そ、そうか〜。でも俺修行とか嫌いなんだよな〜。」

めんどくさいし、疲れるし、痛いし・・・などとぶつぶつつぶやく横島の情けなさにエヴァンジェリンはため息をつく。

「それに、制御できる数が増えれば元の世界に帰れる可能性が出てくるだろう。『元世界帰還』とかでどうだ?『帰還』では無理だったんだろう?」

「おお!!」

再び喜びの叫びを上げる横島。
エヴァンジェリンはホッとする。

これが言いたかったのだ。
多くの回り道を経てしまったがやっと言いたい事が伝わったらしい。
修行し、制御できる文珠の数を増やし、そして元の世界へなんとかして帰還する。
今横島が考えねばならないことは元の世界へ帰る事だ。残りの二人のためにも、そして元の世界で待っている仲間や友人、家族のためにも・・・。

エヴァンジェリンはここまで思考してはっと我に返る。
負い目があるとはいえ、ここまで自分が優しくしてやる必要など無い。
喜んでいる横島を見て出来の悪い弟を見ているような面映さを感じてしまっていた。
美神令子とかいう横島の雇い主もこのような思いを抱いていたのではないかなどと考えてふっと口元をほころばせる。

「あ、『元世界帰還』ができるようになって帰れるようになってもあと一文字制御できるようになるまでこの世界で修行しないとな。」

「ん?なんでだ?」

「だってさ、『元世界帰還』は五文字じゃん。だけど『登校地獄解呪』は六文字だろ?」

横島の言葉に一瞬唖然とする。

「馬鹿かおまえは?帰れるようになったら帰ればいいじゃないか。そんなに大人の私にサービスして欲しいのか?」

ニヤリと笑ってからかうように言うエヴァンジェリン。
だが横島の言葉は予想の斜め上をいった。

「あ〜それも捨てがたいな!だけどそれ以前にエヴァちゃんも15年も同じところにいたんならつまらんだろ?悪い事してたって言ってたけどエヴァちゃんって優しいし、いい子じゃん。」

「な、な、な・・・。」

横島は元の世界で弟子にやっていた癖でエヴァンジェリンの頭を優しくなでる。
だが自分の素性、力を知った上で自分にこんな事をする人間は本当に久しぶりで・・・

「こ・・・」

真っ赤になったエヴァンジェリンは顔をうつむかせ、プルプルと震える。

「ん?こ・・・?」

横島はなんかおかしいと思いつつエヴァンジェリンの顔を覗き込もうとする。

「この、クソボケ性犯罪者が〜〜〜!!」

「ひでぶっ!!」

エヴァンジェリンの顔を覗き込もうと腰を落とした横島の顔面は低い位置にあったため、最高に力の乗った拳が横島の顔面を捉えた。

「な、なんでや!って性犯罪者ってなんや!!」

大人バージョンのエヴァちゃんにならともかく幼女のエヴァちゃんに言われる筋合いはない!!と付け加え、顔面を押さえる。

「また幼女と言ったな貴様!!どこでもかしこでもセクハラを繰り返し、挙句の果てには学校の授業で裸をさらして興奮するような男は性犯罪者で十分だ!!」

「なに!?そんな細かいところまで見られていた!?まさか俺の恥ずかしい秘密を!!」

「ふん!煩悩が霊力源という事か?奥義と呼んでいるのが煩悩全開とかいうアホな妄想だということか?」

「いや〜!言わんといて〜!!幼女に恥ずかしい記憶を掘り返されるなんてトラウマになる!!」

「だから幼女と言うな!!」

ぎゃいぎゃいと言い合う二人。
取り残された感のある茶々丸は運んできた紅茶を机の上に置くと口を開いた。

「よかった。あんなに元気なマスターは初めてです。」

どこかずれている茶々丸。
横島は知らないがこのエヴァンジェリンの別荘で経つ一日は外では一時間。
二人は残りの時間を騒いですごすのか?などと考えながら茶々丸は紅茶が冷めてしまう事を憂えた。


夜、いや感じる人によっては夜中といってもいい時間かもしれない。
そんな時間に麻帆良学園学園長、近衛近右衛門は妙な訪問者二人を自室である学園長室に迎えていた。
感じているのは困惑。

(・・・あやつはどう出るかの。)

思い浮かべるのは金髪の幼い少女の外見をした囲碁仲間。
いつもいつも鋭く、厳しい一手を打ってくる彼女には困らされているが現実で厳しい一手を打たれても困る。

彼女を縛り付けている呪いと、学園都市という名の檻・・・。
かわいそうだとは思うが彼女の安全のためにも、そして自分達のためにも彼女の『やり過ぎ』だけは困るのだ。
そしてそれを彼女も分かっている。
ぎりぎりのところ、ぎりぎり学園側が容認できる位置で少女は加減しなければならず、学園側もぎりぎりまで彼女の行為を黙認し、フォローする。

彼女が限度を超えれば少女は始末される口実を与える事になり、近右衛門自身もそしてその支持者や同士達も立場が危うくなる。
と、いうか社会的責任を問われるだろう。

考えてから目の前の二人を見た。
金髪の青年。なんの陰りもなく自分をバンパイア・ハーフだと紹介してきた青年。
黒髪の青年。バンパイア・ハーフだという青年のことをなんの躊躇いもなくダチだと言った青年。
驚くべき事に二人は異世界、あるいは平行世界と呼ばれる場所から来たのだという。
そしてもう一つの驚きが近右衛門の囲碁友達ことエヴァンジェリンらしき少女に彼ら二人の友人が拉致られたとの事だ。
嘘を見抜く魔法を使っているので嘘をついていれば分かるはずだが嘘をついている様子はない。

二人を自分に引き合わせた子供先生、ネギには夜遅いし明日は学校があるだろうと言って桜通りの事には特に答えず寮へと帰させた。
エヴァンジェリンの狙いはネギ。
だがネギが死ぬほどに血を吸わせるわけにはいかない。
しかし二人が知り合い、エヴァンジェリンがネギを認めるようになればそれはネギにとって大きなプラスだ。
とりあえずネギが桜通りの件に興味を持つのはかまわない。
だが不確定要素である異世界からやってきた三人が勝手気ままに動くのも困る。
しかし異世界から来たという人間が大っぴらになると本国が騒ぐかもしれないし多くの者が関心を寄せるだろう。
そのような事で秩序が乱れ、諍いが起こるのは望むべき事ではない・・・。

近右衛門はう〜む、と考え込んだすえに重々しく口を開いた。

「伊達雪之丞君。君はこの麻帆良学園で警備員をやらないかね?」

もちろん、衣食住は保障するぞいと言って近右衛門はひげをなでつつ二人の反応を見た。


「伊達雪之丞君。君はこの麻帆良学園で警備員をやらないかね?」

その言葉に雪之丞とピートはほっとした。
職の手当てをする、そしてその上衣食住を保障してくれるというのだ。
これほどの好条件があからさまに怪しい自分達に出されるなどというのはラッキーだと考えていいだろう。

だが次の近右衛門の言葉に雪之丞は眦を吊り上げた。

「ただし、ピート君はダメじゃ。ハーフとはいえバンパイアじゃからの。問題になっては困る。」

黙っていないのは雪之丞。
ぐっと握り締められる拳、食いしばられる歯、そして元々釣り目だったのがさらに釣り目になる。
だが怒りのままに声を発そうとした雪之丞の前にピートの手がすっと出された。

「・・・わかりました。仕方がありません。」

「ふむ、物分りがよくて助かる。そしてできれば麻帆良学園都市からも出てもらえると嬉しいのじゃが。
君達の世界でもそうじゃったと思うが、人は自分達と違う存在を恐れるものなのじゃよ。」

「・・・わかりま「ふざけんじゃねえ!!」雪之丞!!」

うつむきながらも了承しようとしたピートの言葉を雪之丞がさえぎり、近右衛門に詰め寄ろうとしてピートにしがみつかれて止められる。

「くっ!止めんなピート!!」

「止めるよ!ここで問題を起こして横島さんを助けれなくなったらどうするんだ!!」

雪之丞より冷静に考えられる分ピートはなだめるように雪之丞を諭す。
だがピートのそんな冷静さを溶かし、蒸発させるほどに雪之丞は怒っていた。

「横島?んなもん俺らで力づくでも助けりゃいい!!俺は、俺のダチにあんな事言われてはい分かりましたなんて言って従えるほど、人間出来ちゃいねーんだよ!!」

その言葉にピートは少し感動する。
横島を通してではない付き合いの時はしょっちゅう雪之丞とは喧嘩をしていた。
だがそんな雪之丞が自分の事をこれほどまでに思っていてくれたという事実はこそばゆく、そして心が温かくなるものがある。

しかしそれとこれとは別問題。
ここで雪之丞がこの老人を殴ってしまえばまずいことになる。
だが、取っ組み合う二人の目の前の老人は立ち上がると・・・

「すまん!!」

「「は?」」

頭を深々と下げて謝罪の言葉をのべた。
組み合ったまま固まる二人をよそに近右衛門はさらに言葉を続ける。

「わしはこの麻帆良学園の学園長として学園の生徒の事を考えて物事を決定せねばならん。
そして関東魔法協会という組織の理事もしておってのう。多くの魔法使いを指導し、魔法に関する事で責任を取らねばならない立場におるのじゃ。」

近右衛門は顔を上げると二人が話を聞いているのを確認する。

「じゃからして君達二人の言う事をはいそうですかと素直に聞いて終わらすわけにはいかん。わしは証が欲しかったのじゃ。
もしも魔法界に多大な影響を与える問題を君達が起こした時に、わしが雇った者じゃからわしが責任を取ると言い出す決意ができるほどの人間じゃという証がな・・・。」

「ジジイ・・・。」

「ジ、・・・おじいさん。」

その言葉を聞いて雪之丞は体の力を抜き、ピートはつられてジジイと言いかけて言い直す。

「・・・できれば学園長辺りで落ち着いてくれんかのう。まあそういう事で君達の心を試したわけじゃ。君達が不快に思うであろう事をあえて言った。本当にすまん。」

「いえ、気にしないで下さい。警戒するのは当然の事ですよ。僕らこそ、突然一方的に頼みごとをして申し訳ありません。」

近右衛門の謝罪をピートは受け入れてこちらも頭を下げる。

「まあそれならそうでどうでもいいけどよ、結局これからどうすんだ?」

二人の間に和やかな友好ムードが出来始めたところで雪之丞がそれを粉々にぶっ壊す。

「・・・どうでもいいって、ちょっとアバウトすぎんかのう?まあええわい。
君達が我々のルールを守ってくれるのなら何かあった時、わしは全力を持って君達を守る。
君達二人は警備員として雇おうと思う。まあ色々雑用とかもしてもらうが構わんじゃろ?」

「ええ、もちろん。」

「俺も構わないぜ。でも横島はどうすんだ?」

雪之丞の言葉を聞いて、心当たりがあると言おうとした近右衛門は学園長室の前の廊下に気配を感じてそちらを見る。
ばたんっと強くドアが蹴り開けられ、少し前まで話題に上っていた少女がそこにいた。

「じじい!邪魔するぞ・・・って、そいつらは・・・。」

「あ〜、ピート!雪之丞!!喜べ!この子のおかげで元の世界へ戻る希望が出てきたぞ!!」

少し驚いたようにピートと雪之丞を見るエヴァンジェリン。
友人二人を見つけて喜色満面で声を上げる横島。
エヴァンジェリンに気づき身構え、直後に嬉しげな横島を発見してぽかんと口を開けるピートと雪之丞・・・。

「やれやれ、わけがわからんわい。千客万来じゃな今夜は。」

自慢の髭をなでながらつぶやく近右衛門。
横島はそんな近右衛門に気づき・・・

「なあエヴァちゃん、あのタコ仙人が学園長なんか?」

そう言い放った。

(((タコ仙人!!)))

ぷっと吹き出す三人。
その視線は近右衛門の長い後頭部へ・・・。

「・・・聞いた以上じゃの。わしがここの学園長、近衛近右衛門じゃ。よろしく、横島忠夫君。
さっそくじゃが横島君とエヴァの二人の間でどのような話しがなされたのか教えて欲しいのじゃが。」

また厄介そうな青年じゃのう・・・と思いつつ近右衛門は笑いをこらえている三人をじろりとにらんだ。


あとがき

第一話の最初の辺りでクラスメート的な事を書く過ちを犯してしまった宮本です。
いや、本当にすみません。クラスメートである事に特にこだわりはありません。
この三人にしたのは結構動かせやすいし三人が三人ともかなり違う性格だと思うから色々なパターンのネタが書けると思ったからです。

さて、第二話ですがネギが夢に入れたんだから別荘で魔力が使えるエヴァンジェリンはこれくらいできるだろうという感じで記憶を見てもらいました。
記憶を見る事でエヴァンジェリンが横島に少し近づけばおもしろいかと。
ルシオラに関しては賛否があると思いますけど魔力因子がどうのこうのってのはないです。
あくまで霊体の一部が横島の魂にくっついているという原作の設定そのままで・・・。
後、横島はルシオラの事を吹っ切る・・・というか忘れているわけじゃないけど立ち直ってはいる感じです。原作で横島が言っているように『彼女に会えてよかったし、形は違っても幸せにしてやれる可能性は残ってる。悲しむのはやめにする』という事で。

では、あとがきがかなり長くなってしまったうえに第二話は話が特に進みませんでしたが第三話は少し進みます。また投稿しますのでよろしくお願いします。


レス返しです。皆さん感想ありがとうございます!

>杉下右京さん
ありがとうございます。
横島以外に元の世界の横島をしっているキャラがいると話の幅が広がると思うので増やしました。

>もちさん
三人がクラスメートと書いていたのに気付きませんでした(汗
タイガーは一応こっちにくるキャラの候補にしてたんですが・・・ちょっとむずかしいキャラかな?と。

>ふゆあきさん
おもしろかったなら嬉しいです。ありがとうございます。
タイガーは・・・影が薄いのも使いづらさの要因かもしれません(涙

>ナガツキリさん
三人がいる事を生かしてオリジナルな展開を楽しんで書いていきたいです。
特に雪之丞あたりはネギまのキャラの中に気が合うキャラが多いかも(笑
>>応援しています
ありがとうございます、頑張ります。

>米米さん
注意ありがとうございます。転移の理由は今回出てきたこんな感じです。
タイガーは結構どこでも冷遇されてる気がしますねw
結構好きなキャラなんですけど・・・。

>六彦さん
はい、ピートです。
二人に突込みができて、二人に突っ込みされる事もできるキャラw
そして冷静な行動も取れるキャラという事で。
僕も雪之丞は大好きです。しかも書いててかなり動かせやすいですw

>meoさん
すみません、ほんと失敗しました・・・(涙

>八雲さん
そう言ってもらえると嬉しいです。ありがとうございます。
今までに無いタイプになるかはどれだけオリジナルな行動をとらせれるか・・・。
がんばります。

>遊鬼さん
投稿してみるとストックはあってもあっても足りないんじゃないかとちょっと不安ですw
急がず、焦らずに頑張りたいと思います。

>Janneさん
原作でミニ四駆対決をしていた事から二人は二歳以上は離れてないかな〜と私も勝手に思っています。
本当は美神さんも一緒にって思ったんですが・・・三人以上になると収集がつかなくなりそうなのでやめましたw

>yokaさん
非常に適切なピートの説明ですが、雪之丞には伝わらなかったようです

>TXさん
あの辺りは少し描写が足りなかったな〜と思います。
雪之丞は魔装術を使っておらず、横島が捕まったのは今回書いてあるような感じです。

>鋼鉄の騎士さん
ありがとうございます。今回はあまりネギまキャラが出ませんでしたが次からは出てくるので期待していてください。
・・・虎は、虎は・・・すみません(涙

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