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「GSきす 〜第五章〜(きゃんでぃそふと+GS)」

キャンディ (2007-01-27 14:44)
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 妙神山・・・日本屈指の霊山であり、GSの修行地としても有名であるその山に令子は訪れていた。


「美神さん!」
「は〜い、小竜姫様、お久し振り」


 二つの鬼の顔の張り付いた門――鬼門の扉を開くと出て来たのは、この山の管理人にして、神剣の達人――小竜姫である。
 小竜姫は、神族の中で最も令子達と親しい神であり、彼女は快く令子を中に迎え入れた。


「パピリオは元気?」
「ええ。最近、ますます力を付けて来ていますよ」


 パピリオとは先のアシュタロス戦において、敵方の魔族だったが、人間側に寝返り、現在は妙神山で修行をしている。
 令子は和室へと通される。
 すると、そこには眼鏡をかけ、髭を生やした猿が茶を啜っていた。


「む? 久し振りに見る顔じゃな」
「斉天大聖老師!?」


 猿の名前は猿神(ハヌマン)・斉天大聖老師。
 神界でも屈指の実力者で、横島に文珠を伝授したり、令子にも修行をつけたりし、また小竜姫の師匠でもある。


「どうしたのじゃ? まさか、また修行を受けに?」
「そんなんじゃありませんわ。ちょっと小竜姫に聞きたい事があって・・・」
「ま、とりあえず座りなさい」


 老師に座布団を勧められ、令子は老師の対面に座る。
 囲炉裏を囲んで、令子、小竜姫、老師が座る。


「それで? 私に聞きたい事って何ですか?」
「単刀直入に言うわ。最近、魔族側で変な動きとかしてる奴いない?」


 その質問に対し、小竜姫と老師は目をパチクリさせ、顔を見合わせる。


「魔族・・・ですか? 魔族側はアシュタロスの一件以来、静かなものですよ。武闘派連中もアシュタロスが死んで指揮者がいなくなって混乱してるのが現状ですし・・・」
「何かあったのか?」


 令子は、松笠市で起きた事を2人に語った。
 小竜姫や老師も、デミアンの事は知っている。
 一度、この妙神山に襲撃をかけてきた魔族だ。
 その彼が蘇り、再び何者かの元で動いているなど俄には信じられなかった。


「まさか、またアシュタロスが・・・」
「それはありません。アシュタロスは死を認められました。アシュタロスクラスの魔神を蘇らせるとなると、神族か魔族の最高指導者クラスでもないと・・・」


 つまりデミアンの背後にいるのは、アシュタロスではないと小竜姫が言う。


「じゃあ何が・・・」
「ふむ・・・ワシらは人間界駐留の神じゃから、最近の魔族の情勢は詳しくない。ここは、あの方から聞いてみるとしようか」
「!」


 老師がゆっくりと腰を上げると、小竜姫が驚いた顔になった。
 令子は「あの方?」と首を傾げる。


「ちょ、ちょっと老師様!? まさか人間にあのお方を・・・!?」
「そうじゃ」
「ひ、ひぃー! そんな恐れ多い!」
「ちょ、ちょっと小竜姫?」


 あの小竜姫が、此処まで動揺している事に令子は驚きを隠せないでいた。


「まぁこやつにはアシュタロスの件での功績がある。その事を踏まえて面会するのじゃ。構わんじゃろ」
「は、はい・・・」


 小竜姫も師匠である老師にそう言われては反論する事が出来ず、頷いて座布団を立った。
 令子は、2人に連れられ、これから会う人物を想像する。
 先程から前を歩く小竜姫は全身から冷や汗を吹き出し、小刻みに震えている。


「ねぇ、これから会う人って何?」
「ワシの茶飲み友達じゃ。たまたま私用で1ヶ月ほど前から人間界に来ておったんじゃ。今は瞑想中でワシらも立ち入り禁止をくらっとるが・・・その方なら最近の魔族の情勢も詳しいじゃろう」
「良いですか、美神さん。くれぐれも失礼の無いように! 如何にあなたが神族だろうが魔族だろうが大胆不敵で遠慮の無い人でも、その方の前では自重なさってください!」
「わ、分かったわ・・・」


 もし首を横に振れば本気で斬りかかりかねない小竜姫の剣幕に令子はコクコクと頷いた。
 やがて3人はある部屋の前で立ち止まる。
 老師は襖に手をかけると、振り返り令子に釘を刺した。


「良いか? 小竜姫も申したがくれぐれも粗相の無いようにな。本来なら人間が会うのも恐れ多いのじゃからな」
「はいはい。分かってますから、さっさと開けて頂戴」


 しつこいといった感じで襖を開けるよう言う令子。
 老師は、ゆっくりと襖を開け、小竜姫はいきなり跪いた。


「ちょっとは日の光に当たったらどうなんでちゅか!?」
「だってコタツから出るの面倒なんだもん……」
「「「……………」」」


 令子、小竜姫、老師は絶句した。
 襖を開けると、部屋を真っ暗にし、あちこちに弁当やらジュースやらお菓子の食べかすが散らばっており、コタツに入った銀髪を結わえた青年が、寝転びながらゲームをしていた。
 そして何故かその青年をパピリオが怒っている。


「此処に来て1ヶ月・・・もう老師や小竜姫誤魔化すの大変なんでちゅよ!」
「良いんだよ、あの2人マジメなんだから・・・瞑想してるっていえば入って来ないって」
「いちゅもいちゅもゲームするか漫画読むか・・・パピリオの修行はいつしてくれるんでちゅか!?」
「ん〜・・・このゲーム終わったらね・・・」
「3日前も同じこと言われたでちゅよ〜! ・・・・あ」
「ん?」


 そこでパピリオが何かに気づいた声を上げると、青年もグルンと身体を反転させ、振り返る。
 そして赤い瞳が大きく見開かれた。


「げ・・・」
「何を・・・なさっておる?」
「・・・・・・ゲーム」
「瞑想されておるのではなかったのか?」
「これが私なりの瞑想・・・」
「小竜姫」
「は、はい」


 老師に言われ、小竜姫は部屋の電気をつけ、ゴミなどを袋に詰め込んでいった。
 青年は眩しそうに片目を瞑ると、コタツの中に潜り込んでいった。


「で? このニート丸出しの駄目なお兄さんが偉い人? とてもそうは見えないんだけど?」
「・・・・・・そうじゃ・・・・と力強く頷きたいがのぉ・・・」


 この状況を見ている限り、とてもそうは思えない。
 すると青年は、ひょっこりとコタツから顔を出し、令子を見つめる。


「ん〜・・・人間?」
「あ、はい。美神 令子さんです。例のアシュタロスの事件の・・・」
「ああ・・・斉ちゃんや君が随分と買ってるんだっけ・・・」


 青年は大きく欠伸を掻くと、ゴミ袋を強く縛る小竜姫に「あんがと」とお礼を言って、コタツから出た。


「あ〜・・・眩し」
「駄目人間・・・じゃなくて駄目神じゃない」
「口を慎んでください、美神さん! この方は神族の最高指導者に次ぐ権力と実力を兼ね備えた方なんですよ!」
「は?」
「あなた達も御存知でしょう? 遥か昔に魔界の王と戦ったと言われる最も有名で強い天使を」
「ま、まさか・・・」


 サーッと令子は顔を青ざめさせる。
 小竜姫の言葉から、ある一人の天使が思い浮かんだ。
 GSでなくとも、その名を知る者は多いだろう。
 それだけの人に知られ、その神格は西洋文化では最高位に位置している。
 しかし信じたくなかった。
 そんな天使が、今、目の前でニート状態になってるなど・・・。


「この方は大天使ミカエル様です」
「嘘ーーーーーーーーーーー!?」


「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」


 竜鳴館2−Cでは、レオとスバルが何故かずっと頬杖を突いていて一言も発さなかった。
 2人から発するどんよりオーラはクラス全体にも広がっていた。


「対馬クンと伊達クン、全然喋らないネ。喧嘩でもしたカ?」
「その割には2人とも怪我とかしてへんで?」


 カニと仲の良いクラスメイト、楊 豆花(ヤン・トンファー)と浦賀 真名がカニに尋ねるが、本人は「知らね〜」と机に突っ伏した状態で返した。


「カニち、どしたカ?」
「レオもスバルもあんなんだからつまんね〜」
「フカヒレ君がおるやん?」
「フカヒレだけじゃつまんね〜んだよ〜」
「せやけど伊達君と対馬、どないしたんやろ? 喧嘩やないとしたら・・・」
「あぁ〜! 腹立つ〜!」
「それやったらウチが聞いてきたんで〜」


 髪の毛を掻き毟るカニに対し、真名がレオの席に突っ走る。


「なぁなぁ対馬〜。何かあったん?」
「あ、いや・・・別に」


 とレオはいきなり「何かあった?」などと質問されて戸惑うが、苦笑いを浮かべて首を横に振った。


「何もないみたいやで〜」
「マナ・・・ちょとは空気読むネ」


 しかも普通に信じている。
 その時だった。
 クラスメイトの山田君がレオに話しかける。


「あの、対馬君。2−Aの18%の確率で村田君と思われる人物が呼んでるよ」
「100%村田だ! 何だ、その低確率は!?」


 そう言って怒鳴って入って来たのは、2−A委員長で拳法部所属の村田 洋一だった。
 村田はレオを廊下へ連れて出て行った。


「何だよ?」
「近衛が昨日今日と学校を休んでいる。西崎と見舞いにいったが、酷い怪我をしていた・・・」
「それが俺に何の関係があるんだよ?」
「お前、近衛と一緒に烏賊島に行ったそうだな・・・そこで何があった?」


 キツい眼光でレオを睨みつける村田。
 レオはつい視線を逸らしてしまう。
 その余りに情けない態度に、村田は舌打ちし、背中を向けた。


「言いたくなければ構わん。だが、僕のクラスメイトに何かしたのなら、僕は絶対にお前を許さないからな」


 言い残し、クラスに戻って行く村田。
 レオは、何も言い返せずに黙ってその背中を見つめていた。


 学校から帰ると、スバルは黙って家の玄関を開けた。


「よ、お帰り」
「・・・・・・・」


 すると、ひょっこりと台所から雪之丞が顔を出した。
 何故かエプロンをして、フライパンを持っている。
 スバルは黙って自分の部屋に入って行った。


「やれやれ・・・」


 明らかに自分を嫌っているスバルの態度に、雪之丞は溜息を零し、居間を見る。
 居間は酒瓶が転がっており、彼らの父親が寝転がっていた。


「おい、親父。飯作ってやったから食え」
「・・・・・・・」
「ったく・・・年がら年中、こんな親父といると、スバルも苦労してたんだな」
「おい・・・雪之丞」
「あん?」
「オメー、何で今更戻って来やがった?」


 ようやくまともな口を開いたと思ったら、背を向けたままのこの台詞。
 雪之丞は、嘆息して父親を見る。


「俺だって二度と戻って来る気は無かったよ。ただ、仕事の関係だ・・・それで、ついでにスバルの様子を見にな・・・」
「ふん・・・」
「俺も此処にいつまでも居座るつもりはねーよ。スバルも苦労してるみたいだが元気そうだし・・・飯作ったら出て行くさ」
「雪之丞・・・」
「何だよ?」
「オメー・・・スバルと何度か会ってただろ?」


 父親の言葉に対し、雪之丞は「さぁな」と返して台所へ戻って行った。


「ん〜・・・魔族の動き?」


 令子、小竜姫、老師、ミカエルはコタツを囲み、ミカエルに事の顛末を話した。


「ええ。魔族の中でアシュタロスに次ぐ武闘派なんかはどうしてるの?」
「さぁね〜・・・今は神族も魔族も穏健派が主流だし・・・魔族じゃアシュタロスみたいな魔神クラスがやられて、逆に武闘派から穏健派に寝返る輩が増えてる現状だよ」
「じゃあ逆にアシュタロスクラスの魔族が残存する武闘派魔族を率いてる可能性は?」
「・・・・・・・・・・・無きにしも非ず」


 ジュースをストローで啜りながら、ミカエルは答えた。
 それに対し、小竜姫と老師が過敏に反応した。


「誰かは断定出来ないけど、最近、人間界のある地域で巨大な力が集中している。それはまだ初期段階のようだけど、その力はアシュタロスの究極の魔体を大きく上回る」


 究極の魔体を大きく上回る、という言葉に令子は言葉を失う。
 この星を3日あれば滅ぼし、全ての神魔族に対抗する力を持った究極兵器。
 それを大きく上回るなど、想像できなかった。


「魔族か・・・神族か・・・人間か。誰かは分からないが、それほどの力を着々と準備しているようだね」
「そ、そんなの何処で!? 人間界の何処でそんな傍迷惑なことしてんのよ!?」
「ん〜・・・・・・日本の松笠市」

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