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「Tales of the Negima! プロローグ2(TOA+魔法先生ネギま!)」

ローレ雷 (2007-01-26 23:05)
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「ふわ……」

 木の枝の上で横になり、シンクは大きく欠伸を掻く。
 片目を開けて木の葉の隙間から空を見つめる。

「…………暇だな」

 そう言って彼は本を顔の上に載せた。
 彼がこの世界に現れてから早半年。
 ウェールズは夏だった。

 ネカネにより、この世界の言語を勉強したシンク。
 レプリカとして生まれ、2年足らずで世界中の知識を吸収し、一国の幹部にまでなった彼にとって、この世界の知識を吸収する事は、さほど苦にならなかった。

 この半年、特にする事もなく、ただネカネからこの世界の常識について教えて貰い、する事といえばトレーニングとネギやアーニャの子守りさせられるぐらいだった。
 それ以外は、こうして外でボーっと時間を潰す。

「…………情けない」

 元いた世界では、六神将と呼ばれる『烈風のシンク』と異名を持つ自分が、こんな風にダラダラと腑抜けた生活を送っている事に戸惑いを感じていた。

「お兄ちゃ~ん!」

 ずどん!

 その時、聞こえて来た声にシンクは思わず枝から落っこちた。
 すると遠くからネギが杖に乗って飛んで来て、痙攣しているシンクに声をかける。

「お兄ちゃん、どうしたの?」
「…………ネギ、いい加減にその呼び方やめてくれない?」

 出会った当初は、さん付け丁寧語だったが、一緒に暮らしている内にネカネ同様、『お兄ちゃん』と呼び、丁寧語でも無くなった。

 ネギからしてみれば、多少ぶっきらぼうだが何だかんだで優しくしてくれる頼りになる兄貴分のシンクを慕って『お兄ちゃん』と呼んでいるだけである。

「そうだ、お兄ちゃん! 今日、僕卒業式だから学校来てね!」
「何で僕が……」
「その……お兄ちゃんにも僕の晴れ姿っていうか……えと……」

 両手の人差し指をモジモジさせて恥ずかしそうに言うネギ。
 どうやら魔法学校を卒業して、これから修行に旅立つ自分を見て欲しいというのだろう。

「…………卒業証書貰う頃に行ってやるよ」

 ぽんぽん、とズボンに付いた汚れを払いながら答えるとネギは嬉しそうに頷いて、「じゃあ!」と杖で飛んで行った。

「はぁ……あいつ等が今の僕見たら何て言うだろうね……」

 腑抜けになってしまった自分を見られたら絶対に笑われるだろうと思い、舌打ちして本を再び顔に載せ、草の上に寝転んだ。


「卒業証書授与―――」

 メルディアナ魔法学校では、卒業式が行われている。

「この七年間、よく頑張ってきた。だが、これからが修行の本番だ。気を抜くでないぞ――――ネギ・スプリングフィールド君」
「ハイ!」

 5人並ぶ卒業生。
 その中でネギは大きく返事をした。


 ネギ、ネカネ、アーニャ、シンクは式を終えると、学校の廊下を歩いていた。

「ネギ、何て書いてあった? 私はロンドンで占い師よ」
「修行の地はドコだったの?」
「今、浮かび上がる所。お・・・」

 卒業証書が淡い光を放ち、ネギの修行の地が浮かび上がった。

 A TEACHER IN JAPAN

「えーと……日本で先生をやること」
「「「え~~~~~~!?」」」

 日本で先生……と浮かび上がり、ネカネとアーニャ、そしてネギ本人が驚きの声を上げた。
 ネカネとアーニャは慌てて校長を問いただしに言った。

「こ、校長! 『先生』ってどういう事ですか!?」
「ほう……『先生』か……」

 廊下を歩いていた校長は立ち止まり、驚いた様子もなく呟いた。
 ネカネとアーニャは尚も校長に詰め寄る。

「何かの間違いではないのですか? 10歳で先生など無理です!」
「そうよ、ネギったらただでさえチビでボケで……」

 ネギとシンクは少し遅れて2人に追いついたが、彼女らはネギ以上に動揺していた。
 校長は振り返り、女性2人の剣幕を意に介さず、ネギを見つめる。

「しかし、卒業証書にそう書いてあるのなら決まったことじゃ。
 立派な魔法使いになるためには頑張って修業してくるしかないのう」
「……ああっ」
「あっ、お姉ちゃん!」
「っと」

 ショックで倒れそうになるネカネを後ろからシンクが支えた。

「ふむ……安心せい。修業先の学園長はワシの友人じゃからの」
「(逆に不安のような……)」

 シンクは目の前の腹の底が黒そうな老人を見て心の中で呟く。

「ま、頑張りなさい」

 ネギはまだ緊張と不安が交じり合ったような表情だったが、やがて意を決して強く頷いた。

「ハイ! わかりました!」


 それから7ヶ月。
 2003年・2月。
 ネギを見送りに、アーニャ、ネカネ、シンクの3人が空港を訪れていた。

「それじゃあ行って来ます」
「ネギ、日本はいい所よ。しっかりね」
「うん!」
「まぁアンタのことだから泣きべそ掻いてばっかりでしょうけど、頑張りなさいよね」
「あ、あはは……」

 ネカネ、アーニャと激励の言葉を送られる。
 ネギは、ついチラッとシンクの方を見る。

「…………何?」
「こらっ」

 何かを期待するようなネギに対し、冷たい態度を取るシンクに向かってアーニャが蹴りを入れる。
 思いっ切り脛を蹴られて足を押さえるシンク。

「何すんだよ!?」
「うっさいわ、ヒモ!」
「その呼び方やめてくれない?」
「アンタ、この1年、何もしないでネカネさんのお世話になってたんだからヒモで十分よ!」

 そう言われてはシンクは何も言い返せない。
 特に働きもせず、1日中、トレーニングか丘の上でボーっとする事しかしなかった彼をアーニャはいつの間にか『ヒモ』と呼ぶようになった。

 ネカネにしてみれば、僅か1年でこの世界の文字を覚え、色々な知識を吸収して行くシンクに驚かされっ放しだった。
 しかも、独自の格闘技術を持ち、魔法使い相手にも互角以上に渡り合えるポテンシャル。

 やはり、彼から聞いた異世界での経験なのだろう、とネカネは思った。

「ネギは、アンタのこと本当のお兄ちゃんみたいに思ってんだから何か励ましの言葉とかかけてあげなさいよ」
「はんっ! 生まれてこの方、他人を励ましてやった事なんて一度も無いね! 蔑んだ事なら腐るほどあるけどね!」
「アンタ、とことん性根が腐ってるわね……」
「まぁまぁ」

 睨み合うシンクとアーニャをネカネが止めに入る。

「シンク君、ココはお願い。生まれて初めてでも良いから、一人で見知らぬ国へ行くネギを励ましてあげて」

 そう耳打ちされ、シンクはネギを見る。
 不安そうな表情でジッと自分を見つめているネギ。
 シンクは舌打ちすると、ネギから視線を逸らした。

「その自分に自信が無いような……何かに縋ろうとする目……僕は大嫌いなんだよね」
「ぁ……」
「けどまぁ…………頑張るといいよ」

 シンクの言葉にネギは顔を俯かせるが、その後に出た台詞にパァッと笑顔になった。

「うん! お姉ちゃん、アーニャ、お兄ちゃん、行って来るね!」

 大きく手を振ってゲートへ走って行くネギ。
 ネカネとアーニャはネギが見えなくなるまで手を振り続け、シンクは背を向けて腕を組んでいた。


 ネギが日本へ旅立って早2ヶ月。
 シンクは村の花屋でバイトをしていた。
 流石にアーニャにヒモと言われ続けるのは腹が立ったので、こうしてバイトをしている。

「ぷ……くくく……」
「何が可笑しいの?」

 花を買いに来たネカネが急に笑い出すので、不機嫌そうにシンクは花を包みながら尋ねる。

「だ、だって……アナタ、元いた世界じゃ悪人だったんでしょ?」
「かなり腹の立つ言い方なんだけど……」
「ゴメンなさい……でも、今のアナタ見てたら、とてもそうは思えなくて」
「余計なお世話だよ……」

 烈風のシンクが長閑な田舎の花屋でピンクの花柄模様のエプロンを着てバイト。
 とても信じられない光景だが、シンク自身気づいていなかった。
 この1年余りで、出生から死に至るまで歪んでいた自分が変わっている事に。
 今のこの生活が今まで空っぽだと思っていた彼を満たしているという事に。

「で? 花買いに来ただけ?」
「ううん。バイトもうすぐ終わりでしょ? 一緒に帰りましょ」
「…………」

 笑顔で言うネカネ。
 シンクは何か嫌な予感がした。


 バイトを終え、シンクはネカネと共に喫茶店に来ていた。
 ネカネは紅茶を飲むと、フゥと息を吐いて窓の外の空を見上げる。

「ネギは今頃、日本で先生頑張ってるかしら……」
「さぁね」

 オレンジジュースをストローで飲みながらぶっきらぼうに答えるシンク。

「ねぇシンク君……」
「ん~?」
「日本に行ってくれない?」
「ぶーーー!」

 突然、とんでもない事を言ってのけるネカネに、シンクは思わずジュースを噴き出した。

「な、何言うの? いきなり……」
「実はね……カモ君が日本へ行ったみたいなの」
「カモ?」
「カモ君、っていうのはね……」

 ネカネの話では、カモと言うのはオコジョの妖精で昔、罠に掛かっていた所をネギに助けられ、彼を兄貴として慕っているらしい。
 ここ2,3年は姿を見せなかったが、そのカモが最近、色んな女性の下着を盗んで日本へ渡ったらしい。

「え? 何? それって僕に下着ドロを追えって言うの?」
「ええ。聞いた話じゃ、ネギが修行している麻帆良学園に行ったそうよ」
「それじゃあネギに手紙でも何でも知らせて捕まえさせたら良いじゃん?」
「……………」

 何故かバツが悪そうにわざとらしくシンクから視線を逸らすネカネ。
 その態度でシンクは、ある事に気が付いた。

「まさか……僕を日本へ向かわせてネギのお守りをしろってんじゃ……」
「お、おほほ……」
「冗談じゃない! 何で僕が!?」
「だってだってネギが心配なんだも~ん!」
「…………」

 シンクは額に指を当てて葛藤しつつも、目の前のサンドウィッチを頬張る。

「お願い、シンク君! ネギを見守ってあげて!」

 頭を下げられ懇願するネカネ。
 シンクとしては、ほぼタダ飯を食らっている分、断るに断り切れなかった。
 というより、彼女にココまでお願いされるのは初めての事だった。

「…………分かったよ。行くよ、日本に」

 やや納得出来ない部分もあるが、シンクは不承不承ながらも頷いた。

「ありがとうシンク君! ネギをよろしくお願いね!」
「…………はいはい……」

 ネカネの姉バカぶりに呆れつつも、シンクもシンクで実はネギが気になっていたが、本人は自覚していなかった。
 しかし、彼の唇は少しだけ吊り上がっていた。


 後書き
 シンクは絶対にツンデレです。

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