さて、突然な話になるが、俺はマイホームを手に入れた。
いや、現実の話じゃないぞ。 もちろんザ・ワールドでの話だ。 先日、それなりの金を使って購入したのだ。
えっ、なんでホームなんか買ったかって?
もちろんホームに興味があったからだ。 .hackシリーズの中で、ホームの話は結構あったのだが、ゲームでは購入出来ないし、かなり興味があった。
そんな訳もあって、マク・アヌにあるホームを一つ手に入れた訳だ。
まぁ、ホームの機能はたいした物じゃない。 せいぜいアイテムの保管庫とか、仲間同士が集まって、チャットを行うとか、そんなもんぐらいだ。
ホームの中は、西洋風のフローリング。 まぁ、はっきり言ってしまえば俺の趣味ではないのだが、文句は言えない。
しかし、後日、俺はとあるイベントの賞品も見て、愕然として無性にやる気になった。 もちろん賞品を手に入れる為に。
イベントを久しぶりに真面目にやった結果、優勝。 俺は賞品を手に入れた訳だ。
その賞品をホームに使用して俺は何か一つやり遂げた気分になった。
で、その後、知り合いをホームに誘った訳だが、全員が全員、最初は愕然としていた。 俺のホームを見て。
そんなに変だろうか?
「畳張りに、土間。 それに囲炉裏がついた俺のホーム」
.hack//Dwan 第7話 歳万畳家・謎一意志
reverse/??
彼は非常に困っていた。
先日、購入したこのザ・ワールドというゲームにはまって一週間。 今日も楽しく、友人達とダンジョン攻略をしていた。
ここまでは良かった。 その後、フィールドで友人達と別れ、一人になった後だ。
突然、
「ねぇ、助けて欲しいの」
そんな事を言われた。
「えっ?」
彼は慌てて後ろを振り向くと、そこには白い少女が居た。
美しい白銀を思わせるような髪を持ち、白い服に身を包む少女がそこに居たのだ。
「助けて欲しいの」
また言われた。
彼はちょっと困ったが、すぐに考えを思いつく。 これはイベントなのだろう。 しかもプレイヤーが一人になった時にしか起こらない特殊なイベントだ。
なるほど、とその答えに行き着いて彼は納得した。 それなら突然、目の前の少女が現れた事も納得出来る。 何せ彼女が現れたのは仲間達と別れて一人になってからだ。
となれば、そのイベントをこなして見せようと思う。
内容は簡単だろう。 まだレベルが低い自分にそれほど難しい問題が出されるとは思えない。
「なんだい? 何を助けて欲しいの?」
「人を探しているの」
「人かぁ」
つまりはNPC探しと言う訳だ。 彼女ぐらいの年齢からすれば、母親探しかもしれない。
「人って誰だい?」
「白い人」
「白い人って……言われても……?」
――よく出来たNPCだなぁ。
自分の問いに人のように答えたのだ。 驚いて当然だ。
それよりも問題は違う。 彼女は白い人、と言って来るが、白い人と言われても分からない。
ホームタウンだって複数あるのだ。 そこからたった一人の白い人を探せるとは思っていない。
「うーん、名前が分からないと辛いなぁ……」
名前さえあれば、何かしらヒントを手に入れられる事になるのだが。
「名前は……」
「ん?」
どうやら名前はちゃんと知っているらしい。
それならなんとか自分でも出来るだろうと、彼は思う。
「名前は【サイリス】。 もう一つの意志を止める事が出来る騎士」
■□■□■
「……どういう事だ?」
彼は再び困っていた。 白い少女――名前はスターレスと言うらしい――は自分のPCの左手に手で繋がれている。
スターレスが言う【サイリス】探しに困難を極めた訳ではない。 実際、【サイリス】と言う名はすぐに見つかった。
そう、見つかったのだが、
「PCの名前だよな……これ」
NPC達は【サイリス】と言う名を聞いても無反応。 が、他のPC達から【サイリス】は結構有名だった。
なんでも【サイリス】ザ・ワールドのβ版からのプレイヤーで、最近は初心者を案内とかしてくれる事でそれなりに有名らしい。
「んー、だけどなぁ……」
NPCの人探しイベントで、何故プレイヤーPCの名前に行き着くのかが、分からなかった。
しかし、このまま何もしない訳にはいかないだろう、と彼は考える。
先程から、スターレスも不安そうに彼を見上げてくる。
「こうなったら当たってくだけろ、だね」
彼は力強く頷くと、【サイリス】を探しに行く事にする。 まずは会ってみよう。 もし間違ったとしても、今はこれしか道はないのだから。
「すいません」
「はい、どうしました?」
とりあえず彼には【サイリス】の場所が分からない。 ならば、聞き込みしか道はなかった。
「あの【サイリス】って言うPCを知りませんか?」
「サイリス……? 彼に何か?」
「あー、それは……俺、このゲームの初心者なんですけど、【サイリス】さんが、初心者案内をしてくれるって話を聞いたから」
「ああ、なるほど」
目の前にいる女性――昴が彼の言葉を聞いて、少し困ったような表情になる。
少し時間がたったが、昴はマク・アヌの路地を指して、彼が欲しい答えを教えてくれた。
「彼なら、ちょうど今ホームにいます。 表札がかかってるので、すぐ分かると思いますよ」
「ありがとうございます」
それを聞くと、彼はスターレスを引っ張ってすぐに路地に向かって走り出した。
そして、
「すいません、【サイリス】さん、居ませんか?」
「ん? 誰だ?」
ホームから全身白いコートのようなものを来たPCが現れた。
reverseout
■□■□■
「ん? 誰だ?」
俺は突然、ホームの外から聞こえてきた声に反応して、出てみた。
普通の現実だったら、対応はもっと違うのだが、ここはザ・ワールド。 ホームに関してはちゃんとしたルールが存在する。
我がホームに入るには、俺のメンバーアドレスが必要になるのだ。 この声は知らない声だし、すぐに開けても問題ない。 例えドアが開いていても入る事は出来ないのだから。
「君は?」
ホームのドアの前に立っていたのは、男性タイプのPC。 呪紋使いかね、杖持ってるし。 それに手を繋いだ女の子が一人。
んー、誰だろうか? さっぱり分からん。
「あっ、俺はカズって言います。 実は聞きたい事があったので」
「聞きたい事?」
「はい! 実はこの子なんですけど……」
「この子……?」
彼――カズの視線の先には白い服に身を包んだ少女が居た。 誰だろうか?
「この子がどうかしたのか?」
俺は正直分からないので、聞いてみる事にする。
俺の知り合いにこんな女の子の姿をしたPCはいないし。 でも、あれ? どっかで見た事ないかこの子?
「この子――スターレスが【サイリス】っていう人に会いたいって言うから探したんですけど」
「ふむ……?」
うーむ、分からん。 だけどどっかで見た事があるような……。
ああ、そうか。 確か、リコリスやゼフィみたいな放浪AIにそっくりなんだ――ってええ!?
「貴方がサイリス?」
「ああ……。 君はもしかして放浪AIか?」
俺の言葉を聞いて、目の前の少女が軽く頷いた。 ああ、どうやらビンゴらしい。
しかし、なんで俺の所に放浪AIが来るんだ? 放浪AIであるこの少女もモルガナだっけに負われてるんじゃなかったのか?
「貴方を探していたんです」
「……?」
ますます話が見えてこない。 っていうか、更に言えば、彼女と手を繋いでいるカズも困惑気味だ。
「……とりあえず入ってくれ」
ひとまず、彼等を招待する事にした。
■□■□■
「……凄いっすね……っていうか……」
「変……か?」
「……ぶっちゃけて言えば」
俺のホームを見たカズがお約束な言葉を言ってくれる。
昴もカールもアルフも、しまいにはオルカやバルムンクまで唖然された我が和風な家。
そりゃあ、中世を思わせるマク・アヌにはあまりに似合わないのはわかってるんだけどなぁ……。
先日のイベントで好きなように、ホームグラフィックを設定していいと言う、珍しいものだったから、畳部屋にしたんだけどなぁ。
「まぁ、いいか。 とりあえず、だ」
俺は畳の上に胡坐をかいて座ると、畳の上に座っているスターレスのほうを向いた。
「とりあえず、なんで君は俺を探しに来たんだ? いや、そもそも何故、会いに来た?」
「貴方がこの世界を蝕むもう一つの意志を倒せる存在だから」
「もう一つの意志……?」
「……?」
カズはさらにさっぱり分からない顔をしているが、俺もはっきり言えば、訳が分からなかった。
もう一つの意志――それ即ち意志が二つある事を意味している。
そのうちの一つはなんだ? それはもちろんモルガナだろう。
だが、もう一つ? なんだそれは? このザ・ワールドを蝕むもう一つの意志。 さっぱり分からない。
すくなくてもR:1の世界での元凶はモルガナの筈なのだが。
もしかして、この前の【蒼炎のカイト】と何か関係あるのかもしれない。
くそっ! 訳が分からない!
「あのー、サイリスさん。 これって何かのイベントなんすか?」
「……イベント……イベントか……。 イベントならどれほど、よかったかな」
「へ?」
俺のせいか? だが俺が何をした?
ただ俺は普通にゲームで遊んでいただけ。 モルガナや【もう一つの意志】が気に障るような事をした覚えはない。
だけどイレギュラーな存在が現れはじめている。
まだ【蒼炎のカイト】しか遭遇していないが、まだ何か現れるかもしれないのだ。
俺はその時どうすればいいのだろうか?
「ふぅ……まぁ、いいか。 で、スターレス。 君は俺に何をして欲しいんだ?」
「……これを貴方に」
「ん?」
スターレスから何か渡された。
ウィンドウに表示されたのは【暁の鍵】。 さっぱり分からないアイテムだ。
だが、捨てる事が出来ないご様子。 ……きっと何か特別な代物なのだろう。
だけど、何故俺なのだろうか?
「……これは?」
「まだ一つ。 だから探して、残りの欠片を」
「っておい!?」
「スターレス!?」
俺に【暁の鍵】を託した直後、スターレスの体が光始める。
そして一気に爆発したように視界が真っ白になる。
俺が視界を元に戻った後、スターレスの姿は何処にも存在していなかった。
「消えた……」
「スターレス……」
沢山の謎を残した後、俺とカズの二人は訳が分からないまま、スターレスと別れてしまったのだ。
■□■□■
「あの、今日はありがとうございました」
「いや、気にすんな。 何かあったら呼んでくれ」
「ありがとうございます」
結局、その後、カズと別れた。
俺は訳の分からないまま、マク・アヌの空を見上げる。
彼女が託した謎の鍵。 そして【もう一つの意志】に【蒼炎のカイト】。 もう俺にはどうすればいいかわからなくなってきた。
関わる気なんてなかった。 だけど【何か】が俺を関わらせようとする。
「嗚呼……まったく……」
――なんて、無様。
続・あとがきっぽいもの
カズ遭遇編終了。 だけどカズ君が全然目立ってないぜ。 しかも主人公はカズの事を覚えてないしまつ(駄目ジャン)
次回、やっとこさ三作品編に入ります。 あー、やっとだぜ。
レス返しだと思う
・趙孤某さん
ハーレムは無理(即答)
フラグ立てれそうな原作の人は二人かね。 納得してくれるかは分からんけど。
遭遇編はカズで終了だけど、あんまり主人公と関わってないなぁ。
・SSさん
どうも、面白いって思って下されれば何よりです。
フラグは原作キャラは二人考えてるけど、どうだろ?
次回も頑張ります!
・箱庭廻さん
タイムアタックに結構無駄に頑張る自分がいます。
6話はほのぼのでしたけど、三作品編に入ると、どうなるんだろう?
今は時間があるだけです。
次回も頑張りたいので、また見てやってください。