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「ゼロの丁稚 第三話(GS+ゼロの使い魔)」

まじ (2007-01-24 00:02)
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横島が目を覚ますと辺りはすっかり暗くなっていた。
ルイズを探すが当然おらず、とりあえず一番近い建物へと向かって歩いていった。

「あー腹減ったー。さっさとルイズちゃん見つけて何か飯食わせてもらおう」

建物についたあとぶらぶらと歩き回るが誰にも出会わない。
誰かにルイズの部屋の場所を聞こうと思っていたが前途多難である。
そして、それは他の場所を探そうかと辺りを見回したときのことだった。
近くの窓から外を見ると、塔に入っていく少女達の姿があった。
入れ替わりに出てくる体を火照らせた少女達。
何かに気付き慌てて空を見る横島の目に、塔から立ち上る湯気が見えた。
そうそこは桃源郷だった。
わかりやすく言うと女湯だったのである。

「うおー!! 神は俺を見捨てなかった! 待っていろ、まだ見ぬ裸体たちよ!」

横島は窓から飛び出すとそのまま塔へ向かって全力で走り出した。
しかしまっすぐは向かわず、大回りに塔の裏の森へと進む。
一見遠回りに見えるがそこが最適ルートだ。
まず正面突破は不可能。
そして塔の周りの森には覗き防止用のトラップが大量に設置されており不用意に近づけない。
しかしそのトラップの山の中、最もトラップが少ない道が横島には本能的に理解できた。
もちろんトラップの存在など横島が知っているはずがなかった。
これは横島の女体にかける情熱が霊力を爆発的に増大させ、その結果非常に強力になった霊感が彼に女湯を覗くための最適ルートを瞬時に理解させたのだ。
霊感の強化による危機回避。
すごい能力の無駄遣いをしているのだがそんなことには気付かない。

「うお、殺す気か! なんつー罠を仕掛けてやがるんだ! 」

森に入り塔に近づくたびに飛び出す魔法の数々。
火の矢が、土の槍が、水の鞭が横島を襲う。
這いつくばって避ける、飛び上がって避ける、ブリッジして避ける。
ぎりぎり避ける!
無理でも避ける!

「絶対、あきらめんぞー!! 女体の神秘ー!!」

避けきれずに少しづつぼろぼろになっていく体を酷使し、走り抜ける横島。
あと3m。
鉄の檻に捕まる前に飛びぬける。
あと2m。
電撃の嵐も不思議な体勢で避ける。
あと1m。
ついに森を抜け、塔の裏の空き地に出た。

「長く険しい戦いだったが、俺はついに勝利した! というわけで、さっそく……」

塔の壁に張り付くやいなや、ゴキブリのような奇妙だがすばやい動きで壁を登っていく。

「うへへへへ、どれどれっと」

地上から5mほどの位置にある窓から中をそーっと覗いた。
しかし、そこには誰もいなかった。
かぽーん、とどこかから軽い音が響く。

「どちくしょー!! どうせこんなこったろうと思ったよ!!」

大量の涙を流しながら地上へと降りた横島。
別のところに行こうと振り向くと横島の周りを囲んでいる少女達。
誰もがきっちり制服を着込み、額に青筋をうかべながら杖を横島の方へと向けていた。

「あ、あれ? みなさんこんな夜更けにどうしました?」
「あんたねー、あれだけでかい音立てといてばれないとでも思ってたの?」

大量のトラップが作動し、どっかんどっかん音が鳴っていたのだ。
寝ていても気付く。
音が聞こえ始めた時点で彼女たちは風呂を上がり、服を着て外に出た。
そして横島が森を抜けた時点でトラップを停止し、こっそり周りを囲んでいたのである。
冷や汗を浮かべ後ずさりする横島、しかし背中には塔の壁の感触。
一歩横島に近づき詠唱を開始する少女達。

「どうせぼこるんやったら、ちょっとくらい見せてくれてもええやんかー!!」
「見せるかー!!!!」

多種多様な魔法が飛び出すや否やすぐさま逃げ出す横島。
背後から聞こえる轟音に横島はおそるおそる後ろを向く。
すぐそこまで大量の火の玉と石の矢が迫ってきており、外れた矢が木をえぐるたびに大きな音がなっていた。

「ぬおー! 美神さんの折檻と同じくらい厳しい!! 死んでまうー!!」
「待てー!!!!」

森の一部がなくなるまで彼らの鬼ごっこは続いたが、森を抜けた段階ではすでに横島は逃げ切っていた。
杖より重いものを持った事のない貴族の彼女達に対して、ふだんから荷物運びで鍛えている横島とでは勝負にならなかったのだ。
森から離れ、横島は寝床を探してさまよった。
覗きと鬼ごっこに時間と体力を大幅に使ってしまい、今夜はもうルイズを探すのをあきらめたのだ。

「くそー、次は罠を作動させないよう気をつけよう」

懲りずにそんな事を言いつつぶらぶら歩いていると、他の建物から少し離れた場所に小屋のようなものを見つけた。
いくつもの小屋をくっつけたようなデザインの建物に近づき中に入る。
そこにはサラマンダー、蛙、フクロウやウインドドラゴンと言った生き物達が沢山いた。
そうここは使い魔の寝床だったのだ。

「こ、これは!?」

横島はあまりの事実に驚愕した。

「畜生の癖に俺よりも良いもん食ってやがる! ちょっとよこせ!!」

ウインドドラゴンの前に置かれた皿を見ると、そこにはでかいステーキがおいてあったのだ。
普段からカップラーメンばかり食べており、肉に飢えていた。
そして今日は昼から何も食べておらず、激しい運動もしたのですごく空腹だったのだ。
その叫びに周りの使い魔がみんなずっこけた。
もっと他に言う事はないのか、と。
いち早く立ち直ったウインドドラゴンが興味深そうに横島の顔を眺める。

「半分、いや四分の一で良いから!」

ウインドドラゴン相手に真剣に交渉をする横島。
その飢えた獣のような目に哀れさを感じたのか、ウインドドラゴンが皿を横島の方へ押しやる。

「おお、まじでくれるのか? あとで返せって言っても返さんからな!」

さっそく肉を食べる横島。
塩も胡椒もついていなかったが、久しぶりの肉の味に頬が緩む。
他の使い魔がステーキを食べるくらいだ、自分にも同レベルの食事が出るかもしれない。
以前より良い食生活が送れるという期待に横島は胸を弾ませた。
満腹になった横島は手を桶にたまった水で洗い、藁のベッドの上で横になった。
するとサラマンダーが近づいてきて横島のそばで寝転がり、空気がとても暖かかくなった。
上手い飯に暖かい寝床、グラマーな美女と会う約束まである。

「うーむ、使い魔生活も悪くないかもしれんな」

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