「しろー!!おかわりー!!」
「俺もおかわりだ!!」
「す、すごい……」
「藤ねえが一人増えちまった……」
あまりの光景に言葉を無くす士郎と桜。食卓に出されたおかずが飢えた虎と飢えた煩悩魔神の口に吸い込まれていく。
「こらうまい!!こらうまい!!」
「うーん!おいしー!!」
「「………」」
「ふぁ!!ほへははひのほ!!」
「ははひほほはひっふほ!!」
口いっぱいにご飯を突っ込みなぜか会話を成り立たせる二人。二人を尻目に一口一口味わいながら世間話をしている二人と、二部に別れていた。
「あの二人は何でアレで会話が成立するんだ?」
若干呆れながら様子を見ている。
「なんでですかねぇ?…わっ!今一瞬で煮物なくなりましたよ」
半分以上残ってたのに、と苦笑しているが後ろ頭にでかい汗を掻いている……まあ仕方がないだろう。
「食費どーすっかなあ」
大河に食費を期待することは無駄だと悟っている士郎は切嗣の遺産を売り払おうと半ば本気で考えていた。
「はあー!おいしかったー!ごちそうさまー!」
「食った食った……」
「おそまつさま。口には合ってたみたいだな忠夫」
「ああ、うまかったよ。おキヌちゃん並みの料理が食えるとは思ってなかったしな」
「そいつはよかった」
料理に満足してもらうことは最大の喜びであり、なにより料理人冥利につきるらしい。
「横島さん、そのおキヌって人も料理が上手なんですか?」
桜の質問に微笑みながら懐かしむように答える。
「ああ。おキヌちゃんは仕事の元同僚でな、家事が出来るのがそこでは彼女だけだったんだ。時々家にきて作ってくれったっけ」
「へー。どんな仕事してたんです?」
「んー……」
これには困った。ここにはGSが存在してないことは士郎に確認済みだ。やっと警戒を解いてくれたのに、また不信感を与えるのは良くない。
「探偵みたいなことかな?いろんな地域の悩み事を解決してたから」
「探偵……ですか?」
「ああ、所長が金さえ積みゃ何でもするって人だからな」
桜と横島の話を聞いていた士郎がちょっと不機嫌な顔をして
「じゃあ、金が無きゃ何もしてくれないのか?」
「まあな。俺やおキヌちゃんはそうでもないんだが美神さん……あっ所長のことな。その人は只働きが死ぬほどダメでさ、いっぺん公務員やった時なんか入院なんかしたんだぞ」
「色々とすごいですね……その人」
さすがに幽霊関係のことは伏せていたが横島の話はおもしろく士郎と桜と大河は笑っており、和やかな雰囲気で時間は過ぎていった。
「それじゃあ士郎、横島くんまた明日ね」
「おやすみなさい先輩、横島さん」
「ああ、おやすみ。桜、藤ねえ」
「桜ちゃん、藤村さんまた明日」
大河と桜が帰っていくのを見送り、二人は居間へと移動してテレビを見ていた。テレビはニュースを見ていおり横島も情報が必要なので普段は見ないが今は集中してみている。
「そういえば忠夫」
「なんだ?」
テレビのニュースも天気予報に入り一息ついていたところでお茶をいれた士郎が話し掛ける。
サンキュ、と言いながら湯呑みを受け取り入っているお茶を飲み視線を向ける。
士郎もお茶を飲み一息ついて
「お前確か俺に言ったときはGSだっけか?そう言ってただろ。なんで桜の時もそう言わなかったんだ?」
「別に深い意味はねえけど……ただいやな予感がしてな」
お茶をゴクゴクと飲み干しおかわりを頼む。士郎も急須を持ちお茶を入れ先を促した。
「いやな予感?」
「そっ!まあ、そう言うことだ。ところでな士郎」
「ん、なんだよ?」
お茶を啜りつつ天気予報から世界が仰天するようなニュースを放映するバラエティが始まった時に、真剣――とまでは行かないがそれなりに真面目な感じになってる横島。
「バイトしたいんだけど紹介してくんねえか?」
「はあ?」
横島の話によると、下宿する身としては自分の生活費や食費くらいどうにかしたいとのことだ。士郎にしてみればまさに天佑で二つ返事で了承した。
と、言っても士郎が紹介する所は自分もたまにバイトしているコペンハーゲンしか無いため、明日一緒に行くと話がまとまり今日は床に就いた。
「先生検証の結果がでました」
「ご苦労さま、西条くん」
彼の手から渡された数枚の書類に目を通す。
美知恵に命じられ横島が消えたとされる現場を霊的、科学的の両方から検証した。彼自身にしてみれば別に横島がどうなろうと知ったことではなかったが、自分の師匠と妹分で恋人候補に頼まれればいやとは言えない。
「……なるほどね」
何かに納得した様に書類から目を離す。
「磁場が狂っていたのね」
「はい。これは両班からの共通の報告で通常ではありえないほどだったそうです。それともう一つ……」
「まだあるの?」
「ええ、科学班からは一部分には強烈な電磁波が、心霊班からは霊力による爆発が起きたとの報告が」
「偉く詳しく分かるのね」
「僕も詳しくは分かりかねますね。後、なおも原因は調査中とのことです」
「わかったわ。報告ありがとうね。後、急がなくていいから原因は必ず突き止めるよう伝えといて。私は今から令子にこれを見せてくるから」
美知恵は書類を片手に事務所を出て娘の元へと向かった。
横島が冬木に来てから一週間が経った。最初はどうなるか不安だったものの、順応性はかなりあるためすっかり町に溶け込んでいた。コペンハーゲンでのバイトも決まり、仕事内容も雑用とたまに接客をやることになった。給料は今までの約3倍、つまり時給750円と言われたときは涙を流したそうだ。仕事も順調で常連さんからは忠ちゃんと言われ馴れ親しまれてるそうだ。
士郎も毎日が横島が来てから充実していた。今までがつまらないわけではないがより楽しく毎日が送れるようになった。
今日も士郎は学校、横島も士郎より遅くではあるが、バイトへと朝から向かった。
一日も終わりに近づき夕暮れの時間になったとき士郎は弓道場の雑巾掛けをしていた。弓道でもないのに何故こんなことをしてるかというと、士郎の友人である間桐慎二――桜の兄――に頼まれたからだ。
人に頼まれたら断らない損な性格である士郎はすぐに安請け合いしてしまい、もう一人の友人柳洞一成を悩ませている。
弓道場の掃除も終わる頃にはすでに辺りは暗くなりはじめていた。
帰ろうと帰路につこうとした瞬間音が聞こえた。金属を金属で弾き返すような音に誘われるように近くまでいく。
少しずつ音が近くなり、とうとう士郎は音源に辿り着いた。その場所を覗き込む。
「(な…なんだあいつら……ッ!?)」
士郎は目の前の光景に息を呑む。そこには深紅の槍を振るう青い鎧の男と、白と黒の双剣を振るう赤い外套を着た男が戦っていた。まさに命懸けの戦いで視認するのでさえ困難なスピードで繰り出される槍を白と黒の双剣で捌き躱す。
槍の猛攻を防ぎ切り死合いは仕切り直しになる。
「(は、早くここから逃げないと……!!)」
士郎は一つミスを犯してしまった。足元にある小枝に気付かず踏み付けてしまった。
―――パキンッ!!
「(し、しまった……!!)」
駆け出そうとした槍の男がこちらを睨み付ける。獣のような鋭い眼光に思わず後退りをしてしまう。
士郎は駆け出した。混乱した頭でも理解していることがあった。アレは見てはいけない、見つかったら殺される、と。
夢中で走る。校舎の中へと逃げ込み、息切れする呼吸を整える。
「(逃げ切れたか?)」
「よう」
ビクッと体が反応し声のする方を恐る恐ると向くとそこにさっきの槍の男が経っていた。
「わりと遠くまで走ったなオマエ。まあ、こっちにゃ恨みなんかねえがルールなんでな。大人しく死んでくれ」
士郎は深紅の槍に心臓を一突きされ血を出しながら倒れこんだ。
「士郎の奴遅いな」
バイトが今日は夕方までだった横島は頼まれた買い物を冷蔵庫にしまう。
「またなんか手伝ってんだな……」
やれやれとため息を吐きテレビでも見ようと居間にいき座り込んだ瞬間
ガララッ
「おかえり士郎……ってお前その胸どうした!?」
「……ああ、色々あってな……ってマズイ!!ヤツが来る……!!」
「!!伏せろ士郎!!」
いち早く敵の接近に気付いた横島が士郎の前に立ち瞬時に具現させた栄光の手で迎撃する。
「忠夫……それは?」
「へー、中々おもしれえじゃねえか。はじめて見たぞそんなもん」
薄く緑色に光る刀を士郎は見ていた。
「お前魔術師か?」
「魔術師?なんだそりゃ?俺は――」
その瞬間横島が掻き消え槍の男の横へと移動し
「GSだぜ!!」
栄光の手により弾き飛ばす。しかし相手も並の相手ではない。素早く反応し避けると同時に槍を突き出す。
「うわちっ!!」
紙一重に避け空いた左手に具現させたサイキックソーサーを投げ付ける。
「無駄だ」
あっさりと槍で防ぎ横島を外へと追いやる。しかし、槍は当たる事はなくすべて避けられるが横島もギリギリな為、攻撃を仕掛けることができず外にでる。
お互い向き合い武器を構える。
「くっくっくっおもしれえ!!ただの人間が俺の攻撃をここまで避け切るとはな」
「ぜー…ぜー…いやもう限界何すけど……」
「大丈夫か忠夫!!」
「大丈夫なわけあるか!!お前も早く武器でも何でもいいから持ってきて加勢をしろっ!!」
色々と限界が近そうな横島は半分涙目になっていた。
「わ、わかった!――そうだっ!!土蔵に行けばなんかあるかもしれないから探してくる!!」
走りだす士郎を止めようと槍を向けるがその隙を突かれる。
「喰らえっ!!サイキック猫だまし!!」
パアンと破裂音がし閃光が槍の男の目が眩む。
「チッ!!味な真似を……!!」
視力を取り戻した頃にはすでに士郎は土蔵に着いていた。
「いくぞっ!蝶のように舞い―――」
来るかっと身構えるが
「―――ゴキブリのように逃げる!!」
敵に向かったと思ったらそのまま走りぬけていく。相手も思わずだあぁぁ!!とずっこけてしまう。
「まじめにやれーっ!!」
「と、見せ掛けて蜂のように刺ーす!!」
振り返りさっきの隙に準備していた二個の文珠に【加】【速】といれ一気に切り掛かる。なんとか一撃を入れることに成功し致命傷とまでは行かなくとも負傷を負わせる。
「で、ゴキブリのように逃げる!!」
「この野郎……!!」
その頃士郎は
「くそっ!!何かないのか!!」
土蔵を漁るが何も出てこず両手を床に付いてしまう。すると、突然士郎の悔しさに反応するように床が光りだす。
「な、なんだ!?」
突然の状況に戸惑いながらも光が納まるのを待ちそこを見る。
そこに立っていたのは一人の少女。暗くなった空に一つだけ輝く月に照らされた金色の髪に銀の鎧に蒼い衣。夜風に金色の髪を揺らし少女は目の前の少年に問い掛ける。
「―――問おう、貴方が私のマスターか」
役者は揃った。今ここに聖杯を求め戦い合う七人の戦士がFate(運命)に導かれここに集う!!
あとがき
なんとか仕上がりましたよ第三章。どうもさくらです。今回は二度目の戦闘シーンがあり改めて難しさを実感しましたw
何とか本編にやっと辿り着いたって感じですね。ここからが大変なので今まで以上に頑張ります。
ではレス返しを
>遼雅様
ええ、迷いましたよ。マスターかサポートかで。ちなみにマスターだったらキャスターでしたけど。指摘どうも。
>rin様
ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
>アブリアル様
それは嬉しい限りです。更新お楽しみにw
>七位様
すいませんまだ未熟なもので。これからは日々精進していきます。
>おみくじ様
的確なアドバイスありがとうございます。…バランスはやっぱ重要ですね。
>帝様
気に入って頂ければ幸いです。ありがとうございます。
>ZEROS様
違和感がないならよかったです。期待されて大丈夫かな俺。(おい
最後にこの文を見てくれた方達に感謝を。
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