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「妖使い!?横島の生活! 第四話〜荷物片手に、出会いの子猫〜(元ネタ GS+おまもりひまり)」

ハルにゃん (2007-01-18 02:45)
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………あの人だ…あの人が良い…
ようし!


ぜぇはぁ…ぜぇ…はぁ…

一人の少年が背中に自分の身長ほどもあろうかというほど巨大なリュックを背負って歩いている。

ぜぇ…はぁ…ぜぇ…ぜぇ………ドテ……

「くはぁ〜さーんーそぉぉぉ……」

早くも精魂尽き果ててぶっ倒れたのは言わずと知れた横島忠夫(16)である。
ここはオロチ岳という山の中腹に位置する場所で、今まさに横島の命の灯は消えかかっていた。

「横島く〜ん大丈夫〜!?」

100メートルほど先を行く美神から安否の確認の声をかけられた横島は、息も絶え絶えに、

「み゛が゛みざぁ〜んぢょっど待ってくださいよ〜〜」

「若いんだから頑張って」

「あ…あんた俺の命を屁とも思っとらんやろ……!」

「若殿、それも鬼斬り役の力に目覚めるための修行なのじゃ気合いを入れぬか!」

「うそや!!!単にお前が持ちたくないだけやろ〜〜〜!」

横島はすでに涙がちょちょぎれている。
尤もらしい講釈を述べた緋鞠も目線を逸らしているところを見るとどうやら横島の言った事が正解なのかもしれない。

今回の依頼はこのオロチ岳の山頂付近にひっそりと建つ温泉宿からの仕事だ。
なんでもそこのホテルに出る幽霊を退治してほしいとの事だが幽霊の正体はまだわかっていない。
依頼書には”温泉宿に出る幽霊の退治”としか書かれていなかったからである。
本来なら霊の強さや知能の有無などが書かれているのだが、ホテル側にそこまで調べるお金がなかったのだろう。
除霊料金は一千万円。
本来、金にガメツイ…ゲフンゲフン。
もとい自分の除霊技術を安売りする事のない美神はにべもなくお断りするような金額だが。
昨日の一流デパートの依頼で、美神自身はほとんど何もせずに一億円儲けた事で上機嫌だった事に加え、温泉でゆったりできるというのがおいしかったので依頼を受ける事にしたのだ。
ともあれこうして美神除霊事務所御一行様は一路山頂を目指している訳だが横島があまりにも遅いのでそろそろ美神は焦れてきた。

「それじゃ私は先に行ってるからそいつのお守りよろしくね野井原さん」

野井原というのは緋鞠の名字だ。
都会に出て主を護るためにはとりあえず戸籍はあった方が良いだろうという事で緋鞠の兄であるクロサキがどこからか調達してきたのだ。
字はいろいろ悩んだ末に横島の祖父が住んでいた町の名前をいただいたという訳である。

「うむ、心得た」

「うぁぁ…行っちゃうんスか美神さん!女っ気が減るとますます意識がモーローと……!」

「何を言うか、ここに見目好いおなごがおるであろう?」

美神がスタスタと先に行ってしまうとヘナヘナと腰砕け状態になった横島の発言に間髪入れずそう返す緋鞠は早くも阿吽の呼吸だ、とても昨日が初対面とは思えない。

「そりゃそーだが俺には美神さん分も必要なんやぁ〜〜」

まったく贅沢な話しである
作者なら緋鞠だけでご飯三杯は逝ける!(誤字に非ず
まぁそれはともかく、せっかくのアピールをそんな風に流されると緋鞠としてはおもしろくない。

「むぅ…そんな事を言うなら私も先に行ってしまうぞ若殿」

「うぇ!?いやいや冗談だよ緋鞠!俺は緋鞠がいれば幸せですよ!!?ただちょ〜っと魔がさしただけさ!ハハハハ」

渇いた笑いが山中にこだまする。

「……わかれば良いのじゃ、ほれ早く行かねば所長殿に怒られてしまうぞ!」

そう言うと緋鞠はスタスタと歩きだす

「待ってくれ〜〜これマジ重いんやからせめて後ろから押してくれ〜!!」

そんなやり取りをしている二人を近くの木の影から盗み見る少女の姿はひどく暗く陰っていてよく見えない。
一人は気付いているようだがもう一人はまったく気付いていない。
そして虎視眈々と何かのチャンスを狙うかのように潜んでいた少女は緋鞠がカーブで見えなくなったところでついに行動に出る事にした。
すなわち。

「え〜〜〜〜〜い!!」

「どわっ!!!?」

いきなり横島に体当たりをかましてきました。

吹っ飛んだ横島は訳もわからず自分の体重の3倍近くありそうな荷物の上に仰向けに横たわって起き上がる事ができずにジタバタしている。

「大丈夫ですか!!?おケガは!?私ったらドジで…」

「今「えいっ」とか言わんかったか!?コラっ!!」

そう言って横島は首だけを少女に向けると言葉を失った。
そこにいたのは年の頃は自分と同じくらい。
端正な巫女装束に身を包んだ腰までかかる長髪の可憐な女の子だった。

「大丈夫ですか!?僕ったらドジで!!立ち話もなんですしそちらの岩影で愛とかいろいろ語らいましょう!!?……アレ?」

「ふえ?」

いきなり爽やかな笑顔を浮かべてナンパらしきものを始める横島だが、少女の肩に触れるとなにか違和感を感じた。
これはつい最近、具体的に言うと昨日あたりにも感じた気がする……横島はその違和感の正体を恐る恐る口にしてみた。

「……もしかしてキミ、人間じゃない?」

「!!?」

「ご!ごめんなさい!悪気はなかったんですぅ〜〜〜決してあなた死んでいただこうなんて思ってなかったんです〜〜〜!!!」

下手なナンパに戸惑っていた少女はそう言われたあと、一瞬硬直し、そう叫びながら文字通り飛び去って行った。

「うお!?飛んだ!なんじゃありゃ?」

「ふむ、おそらく浮遊霊じゃろうな。さっきからあの木の影から若殿に熱視線を送っておったぞ?」

先に行ってしまったはずの緋鞠がひょっこり姿を表すとそう解説してくれた。
どうやら一部始終を見ていたようだ。
そもそも横島の護り刀である緋鞠が幽霊に気付いていながら横島の傍を離れるはずはない。
それはまぁともかく、

「熱視線!!?マジか!」

「冗談じゃ、殺気ビンビンじゃったぞ」

「………」

横島はガックリと地面に手をついてしまった。
やはり緋鞠はさっきの一言に少しご立腹らしい。

「と、とにかく美神さんに相談だな」

「うむ、今回の依頼と何か関係があるやもしれぬしな」

辛うじて持ち直した横島はそう言って起き上がると今度は緋鞠も特に頓着せず、荷物持ちを手伝ってくれたのでほどなくして人骨温泉ホテルに到着した。
とりあえず美神と合流すべく従業員に居場所を尋ねると、美神は宴会場にいるらしい。

「15、6くらいの女の子の幽霊?温泉に出るのと同じやつかしら?」

「うんにゃー、ウチに出るのはムサ苦しい男ですわ。そったらめんこいおバケなら、かえって客寄せになるで」

「ふーん、だそうよ。今回とは別件ね」

「でも、なんか訳ありみたいでしたよ?あの娘」

「そんなの関係ないじゃない、それとも横島くんがお金払ってくれるの?」

「……いやそれは無理っス…」

「だったら文句言わずに私たちは私たちの、ちゃんとお金を支払ってもらえる仕事をするわよ」

それが今の今まで酒飲んで鍋つついてた人の言う事かと思わなくもないが美神の言っている事は正しい。
プロである以上正当な報酬で動くのは当然だ。
自分たちはボランティア団体ではないのだから。

「わかりました……」

「…若殿、何か思うところあるなら私が聞くぞ?」

まだ納得しかねるという感じの横島を気遣ってそう緋鞠が聞いてきたが、

「いや美神さんの言ってる事は正しいよ。
でもあの娘可愛かったんだよなぁ…」

「………」

そう言うと横島と、な〜んか複雑そうな顔をした緋鞠は美神の後についてった。
美神の言う通り可哀想だからとか可愛いからとかいう理由だけで、幽霊を全て助けてまわる訳にはいかないのだ。
だいたい幽霊やってるやつなんてみんな訳ありに決まっている。


気持ちも切り替え、場所も変わってここのホテルの名物である人骨温泉にやってきた三人は、霊体探知器の見鬼くんで幽霊の居場所を探っていた。
だが、いっこうに霊の気配は見当たらない。
どうしようかと悩んでいるところに横島が提案をしてきた。

「や!!やっぱり女性が風呂に入ってないと出てこないのでワ!!?」

提案というか願望であった。
だが一考の予知のある願望だ、温泉に出るくらいなのだから、のぞきや痴漢の類が死んで、未練たらたらの幽霊になった。
とかいう事も十分考えられるのだ。試してみる価値はありそうだ。

「そうね、とりあえず入ってみましょう。」

「うぉっしゃー!!!!」

横島くん嬉しさのあまりガッツポーズである。
が、その時近くにあった手桶を緋鞠が壁の方へと投げ付けた。

ズビュッ!!!
カランカラン……

「またお主か、何か私たちに用事でもあるのか!」

「は!はひ!!ひゃあぁぁぁあの!私はただの幽霊でして決して全っっ然!怪しいものじゃないです!」

いや幽霊に怪しくないとか言われても……。
そこにいたのはさっき横島を襲った巫女さん姿の幽霊だった。

「へぇ〜この娘がさっき言ってた幽霊?」

「ふむ、どうやらあとをつけてきたようじゃが何用じゃ?先程は見逃したがまた若殿に危害を加えるようなら容赦はせぬぞ?」

そう言うと緋鞠はぴょこんとネコミミを出し、戦闘体制をとる。

「ち!違うんです!あの、今度はご相談があって……」

それを聞き緋鞠は戦闘モートを解除する。

「相談って…俺たちに?」

「はい、私はキヌといって、300年ほど前に死んだ巫女の娘です」

そう言うとキヌと名乗った巫女さん幽霊(以下おキヌちゃん)は自分の身の上話しをし始めた。

ここらへんは読者の皆さんもご存知なので割合します。


「うぅ、でも私才能なくて、成仏、できないし、神様にもなれないし……」

そんな涙と微妙に笑いを誘うおキヌちゃんの身の上話しも終わる頃、今度は仕事の方で変化が起きる。

「自分は今、猛烈に感動したっス!!!!」

なんか出てきた……。

一言で言うとむさい、
そんな感じのヒゲヅラな幽霊がいきなり涙をダバダバと流しながら温泉から飛び出てきたのだ。

「に゛ゃッッ!!?」

「どぅわ!?」

「キャア!?ちょ、なに!?」

意外にも1番うろたえたのは緋鞠だった。
どうやら戦闘モードではない緋鞠は奇襲攻撃に弱いらしい。
それはさておきこれがおそらく除霊を依頼された幽霊だろう。従業員の証言とも一致する。
お互い落ち着いたところで美神たちは本人の話しを聞いてみる事にした。
それによればこいつは生前、大学のワンゲル部員だったらしく、遭難して死んだが未だに死体を発見してもらえずにいるので無念を抱えて化けて出たという。
で、問題はこいつの発言なわけだが……

「自分はお湯の中でその娘の話しを聞いて感動したっす!!!自分はその娘のために何かしてあげたいっス!!」

との事だがいきなり言われても困るだろう。
そもそも美神的にはこいつが姿を現してきた以上問答無用でシバき倒してしまえば良いのだ。わざわざ望みを叶えてやる義理もない。ってゆーかなぜお湯の中なんぞに潜んでいた貴様!?
とゆー訳で、

「んな事言われてもあんたにできる事なんて大人しく成仏する事だけなのよ。わかったら極楽へ、いかせてあげるわ!!」

「待ってください美神さん!」

横島が美神に組み付いて止める。

「だったらコイツにおキヌちゃんの変わりに山の神様になってもらえばいいじゃないですか!」

横島にしては名案だ。
こいつがおキヌちゃんの変わりになってくれるならわざわざおキヌちゃんは肩代わりの幽霊を作る必要もなくなり、横島を襲う必要もなくなるだろう。

「そうじゃな、それにこやつを縛っているのもそう難しい呪でもなさそうじゃ」

「ん〜〜そうね、確かにその方が楽そうだし、一石二鳥ね」

緋鞠の鶴の一声によりワンゲル部の幽霊はいきなり山の神に昇格した。

「おぉ!これで自分は山の神様っスね!?」

「まぁね、力をつけるにはまだまだ長い時間と修行が必要だけど」

「おおっ!!はるか神々の住む巨砲に雪崩の音がこだまするっスよー!!」

ヨホデリヒーとか言いながら山へと飛んでいくワンゲル部員を見送ると今度はおキヌちゃんの問題だ。

「ありがとうございます、これで私も成仏できます。」

「いーのよ、こっちも手間がはぶけたもの」

「元気でな…って言うのも変か、まぁ来世で会おうな」

「はい、横島さんの事も忘れません!幽霊を口説いた男として次の人生でも語り継いでいきます」

「その時は是非俺の嫁……いやできれば忘れてくれると嬉しいなぁと…」

緋鞠と目が合った瞬間横島の意見が180度変わる。

「ふむ、来世では妙な男に目を付けられぬ事を祈っておるぞ」

妙な男って…
まぁお別れの挨拶も済んで、おキヌちゃんは無事、天へと昇っていった……
はずだったのだが…


「あのー、つかぬ事をうかがいますが、成仏ってどうやるんですか?」

ドテっ!

三人がづっこける。
どうやら長い事地脈に縛られていた事により安定してしまったようだ。
これはその手のおはらいをしなければ成仏できそうにない。

「あの…やってもらえないんですか?それ」

「あんた、お金持ってる?」

「………えと、緋鞠さんは?」

「私は屠る事はできるが痛いのはイヤであろう?」

「「「「…………」」」」

長い長い沈黙ののち、
仕方ないわね〜ってな感じで美神が妥協案を出す。

「それじゃ、こうしましょう。あんたウチで働きなさい。日給はフンパツして30円!!」

「やりますっ!いっしょーけんめー働きます!!」

「30円って美神さ…!」

あまりの日給に講義しようとした横島の脳天に美神はひじ鉄を落として強制的に黙らせる。
この日、横島は美神の金への強欲さを知る事になったが、おキヌちゃんの給料に比べて自分たちの給料の不自然さに気づく事はなかった……


とぅーびーこんてぃにゅー


あとがき


こんばんわ、ハルにゃんです。
今回でおキヌちゃん登場です。
これで獣っ娘はまだまだ先なので事務所の正式メンバーがあと一人になった予定です。
前回で横島の時給についていろいろ意見をいただきましたが、これにはきちんと理由があります。
最初から下手な伏線を入れていたのですが私の技量不足のせいで読者様には伝わらなかったようです。読み直してみて確かにこりゃわからん…と自分でも思いましたよぉ。明らかに描写不測でした。ですが敢えて修正とかはしません。犯したミスは次、そのまた次でとりかえしていきたいのです。
そういう訳で次回幕間的な話を挟んでから時給の怪異(?)を明かしたいと思います。(いやそんなたいそうな理由じゃないんですが……。

それではレス返しです〜


○やや様
レスありがとうございます。
<気色悪いです、そこまでの流れも。
気色悪かったですか〜不快な思いをさせてしまって申し訳ないです。
「にこポ」とやらのシーンですか?それとも緋鞠の除霊シーンですか?
前者ですとこれは申し訳ないとしか言いようがないです。私の技量不足です、今後は不快な思いをさせないように頑張ります。
後者ですとあの流れは今後の横島的にも緋鞠的にもはぶけない話でした。
ですが注意書きかなにかをすべきだったかもしれません。必要でしたら修正させていただきます。
最後に横島らしさが出ていてGoodと言っていただいてありがとうございます。一安心です。
今後もどんどんご意見いただけたら嬉しいです。

○G様
レスありがとうございます。
<物凄い違和感が一つ・・・
いきなりのツッコミありがとうございます。
あとがきでも言った通り、実はきちんと訳があるんです。
ですが私の技量不足でした、ホント〜にすいません!
次々回で明かしますので読んでいただけると嬉しいです。
最後に、こんなにも早く内容について良い評価をいただけるとは思いませんでした!やる気がモリモリ沸いてきます!絶対完結させますので最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。

○somosomo様
レスありがとうございます。
<元を取ろうと明らかな無茶をさせる……
う〜ん…残念ながらそういうおっかない理由ではないのです。
あくまで常識的というか保身的というか………
ってゆーかおっかないのはむしろ美神ではなくおばs……うわなにするやめ……!!(返事がないただの石像のようだ
それではお大事に…

○000様
レスありがとうございます。
<美女・即・ナンパな横島だと思うんだがこの作品では違うようなので
そうなのです、うちの横島は”まだ”そこまで過激な行動にはでないのです。なんといっても16歳です。原作より1歳幼いのです、セクハラ発言はしますが飛び掛る事は多くありません。
まぁそれも時間の問題ですが……
ともあれご期待ありがとうございます、私にとっては読者様の期待が一番の糧なのです。

○ZEROS様
レスありがとうございます。
読みやすくなったと言っていただいて嬉しいです、
これも読者様のアドバイスのおかげです、これからもどんどん教えていただければ嬉しいです。
横島の性格はまだ原作なみの煩悩がないので違和感はぬぐえないかと思いますが、
美神は原作とあまり違いなく書いていくつもりなので、おかしな所があったら容赦なく指摘していただけると嬉しいです。
<天変地異の前触れか?
う〜ん…これは若干、的をかすっていますねぇ…

それではレス返し終了です。

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