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▽レス始

「GSきす 〜第一章〜(きゃんでぃそふと+GS)」

キャンディ (2007-01-16 16:09/2007-01-17 14:23)
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 俺の名は横島 忠夫。これでもゴーストスイーパー(略してGS)だ。GSってのは、悪霊や妖怪なんかを相手に霊能力を駆使して戦う、人々を助ける誇り高い仕事だ。
 俺もGSのアシスタントのバイトからプロ試験に受かって、晴れてGSを名乗る事を許されたが、今、俺の目の前を歩く人には、誇りとか人助けとか、そんなもんとは無縁の人だ。
 美神 令子。外人モデル顔負けのスタイルと美貌を持ち、かつ日本でも屈指の実力を持ったGSだが、『金さえあれば何でもする』という言葉で人生を表せるほど、金に執着している人だ。金を払えば、人助けもするが、法律違反も平気でする。その額は、ゴ○ゴ13やブラック○ャックも真っ青だ。


「何しろ下手すりゃ国家予算並の金額を要求しかねないし、脱税なんて日常茶飯事だもんな〜。でもまぁ、俺としちゃあ尻や太もも拝めるから構わんけどぶろぁ!」
「聞こえてるわよ、馬鹿!」


 どうやら口に出してしまっていたらしい・・・某ゲームの主人公じゃあるまいし。美神さんの強烈なハイヒールの蹴りを喰らって倒れる。せめて、下着ぐらい見せて欲しかった。


GSきす 〜第一章〜


「よ、横島さん、大丈夫ですか?」
「平気よ、おキヌちゃん。これぐらい日常茶飯事なんだから」


 血の海に倒れている俺を気にかけてくれている優しい娘は、おキヌちゃん。氷室 キヌという名前があるが、幽霊時代からの呼び名で俺達は呼んでいる。
 そう、おキヌちゃんは300年前、人身御供で幽霊になっていたが、反魂の術で生き返り、正式に美神さんの事務所で働いている。おっとりしてるけど、これでも数少ない死霊使い(ネクロマンサー)の力を持ってんだよな。


「さて、確かこの辺りな筈だけど・・・」


 俺達は現在、ある有名な避暑地に来ている。山あり、海あり、寺ありと観光地としては絶好の場所だ。そんな古都が、今回の依頼主の住んでいる所だった。
 来る時に、狼と狐が『一緒に行きたい!』などと騒いでいたが、あいつらが一緒だと仕事もまともに進まんからな〜。無理やり留守番させて来た。


「お、此処ね」


 商店街を抜け、住宅地に入ると、大きな純和風な家の前に立った。『柊』と表札がかけられている。


「ねぇ、横島さん。この町、ちょっと不思議じゃないですか?」


 美神さんがベルを鳴らして用件を言ってる際、おキヌちゃんが小声で話しかけてきた。


「ああ、美神さんに誰も見惚れてないんだろ?」


 俺もそれは不思議に思っていた。美神さんの格好は胸の谷間を強調し、太ももを曝け出しているというハッキリ言って男を誘惑しているとしか思えん格好だ。当然、依頼地へ赴けば、現地の男どもは必ず美神さんに釘付けになる。羨ましいか? 俺は毎日、そんな美神さんの傍にいるんだぞ! あの女の乳も尻も太ももも俺のもんじゃい!
 と、落ち着け俺。しかし、この町の男は、そんな美神さんに対し、特に反応を示さなかった。これは、どういう事だろう?


「ちょっと、横島クン、おキヌちゃん。入るわよ」
「あ、はい」
「ういーッス」


 既に門を潜っている美神さんに言われ、俺達も中に入った。


「い、いらっしゃいませ」
「な、何だとっ!?」


 家の中に入ると背の高い美神さんに勝るとも劣らないプロポーションを持つ女の人が迎えてくれた。長袖のシャツにジーンズと露出度は少ないが、そこからでも分かるスタイルは、逆にその凄まじさを物語っている。


「初めまして、横島 忠夫と申します。貴女が今回の依頼人ですか?」
「え? あ、あの・・・」


 俺は女性の手を握り、紳士的に挨拶する。これで俺の爽やかさが分かってくれるだろう。その後、俺が華麗に依頼を遂行し、そこから一つの恋が生まれるのだ。


「ご安心ください。このボクが貴女から悪霊から護って差し上げます。とりあえずホテルにでも行って、今後の打ち合わせでも・・・」
「あ、あぅ・・・」
「アンタはすっこんでろ!!!」


 どげし!


「ぬが!」


 後ろから美神さんの踵落としが決まる。ふふ・・・美神さんったら、ヤキモチなんか妬いちゃって可愛いんだから。


「フフ・・・フフフ・・・」
「み、美神さ〜ん・・・何か横島さん、変な笑い声上げてますけど」
「放っときなさい。それより、貴女が依頼人の柊 雛乃さん?」
「い、いえ・・・私は妹の巴です。姉さんは、座敷で待っています」
「な、何だとぉ!?」
「きゃ!?」


 い、妹だと? 妹でこのスタイル・・・そうなると姉は・・・だ、駄目だ! 数多くのAVを見て来た俺ですら想像出来ん!


「うおおおおおおおおお!!!!! 貴女の忠夫が今、参りま〜〜〜す!!!!!!」


 ずどどどどど!!!


「あ、あの・・・行っちゃいましたけど?」
「すいません。後で海にでも沈めておきますんで」
「よ、横島さん・・・」


「お待たせしました! GS横島、ただ今、参りました! 貴女の為、粉骨砕身で頑張ります!!」
「おぉ、待っておったぞ」


 座敷の襖を開け、第一印象としては最高の挨拶をする。しかし、そこにいたのは、着物を着て、白い獣を抱いた小さな女の子だった。


「あ、あれ? え〜っと・・・」
「苦しゅうない。早く座るが良い」


 女の子は、何故か妙に威厳のある言葉遣いで、手にしていた扇子で向かいの座布団を指す。あ、きっと巴さんの妹さんだな。まだ小さいが、これはきっと将来、美人になる。10年後・・・いや、5年後が楽しみだ。
 なので将来、『横島さん、私、大人になりました。だから・・・抱いてください!』と言われるように、ここは好印象を与えておこう。


「お嬢ちゃん、お姉ちゃんは何処かな〜?」
「・・・・・・貴様、今、何と言った?」
「ん?」
「・・・・・・粛清・・・淘汰・・・弾圧・・・処刑・・・」


 な、何だ? 何か物凄い威圧感と独裁者が好きな言葉を並べてるぞ?


「雛乃姉さん、お客様連れて来た・・・姉さん?」
「え?」


 すると美神さんとおキヌちゃんを連れて来た巴さんが、ブツブツと呟いている女の子に言って来た。
 姉さんって・・・この人が柊 雛乃さん?
 どう見ても10歳かそこらの女の子にしか見えん。美神さんやおキヌちゃんも驚いている。


「重税・・・奴隷・・・拷問・・・」
「あぅ・・・ね、姉さん。お客さん連れて来たから・・・」
「およ? どったの、モエ〜?」
「あ、瀬芦里姉さん」
「ぬお!? こ、これはまた・・・」


 廊下から、ひょっこりと顔を覗かせたのは、美神さんや巴さんをも凌駕するスタイルを持った金髪をポニーテールにした女性だった。


「こ、これは正に・・・前世の頃から好きでしたーーーー!!!!!」
「ん?」


 げし!


「はぐぅ!」


 ル○ンダイブして飛び掛ったが、女性が足を出してきてカウンターを喰らってしまう。


「モエ、誰そいつら? 泥棒?」
「あぅ・・・ち、違うよ。雛乃姉さんの雇ったGSの人達・・・」
「へ〜。こいつ等がね〜」
「アンタの前世が惚れてた奴は違うでしょうが!!!」
「あぁ、美神さん。それ以上やると本当に横島さん、死んじゃいますよ!」


 そういえば俺の前世が惚れてたのって美神さんの・・・と、美神さんに踏まれつつ、薄れ行く意識の中で確信した。そりゃこんなエエ女が住んでたら、美神さんを見て驚かないのも納得だ、と。


 俺の名は柊 空也。柊家の養子にして、6人の姉+育ての姉2人とまぁ、お姉ちゃんで八方塞りな生活を送っているクールな男だ。子供の頃に沖縄に10年間預けられたり、1年ほど海外で修行の旅へ連れて行かれたりロクな事が無い。
 さて、そんな俺もこうして柊家に戻ってからは見事なまでの丁稚奉公をこなしている。現在も買い物袋を両手に抱えている始末だ。
 普段は、ともねえの仕事なんだけど、俺もたまにはこういう風に買い出しに行かないとな。


「ただいま〜」
「堪忍や〜〜〜!!!! しょうがなかったんや〜〜〜!!!」


 な、何だ?
 奥の方から男の鳴き声が聞こえて来た。この家に出入りする男で俺以外といえば、クソ親父’Sか要芽姉様のボディーガードの摩周さんぐらいしかいない筈。
 俺は急ぎ、座敷に向かう。


「アンタは、何人にセクハラかませば気が済むのよ!?」
「しょうがないやんか〜〜〜!! こんだけ綺麗どころが揃ってて何もするなってのが無理な話でしょうが〜〜〜!!」


 そこには、姉8人と見たことの無い女の人と少女、そして何故か天井から吊るされ棒で叩かれている男性がいた。


「あ、く〜や〜。お帰り〜」
「くーくん」


 柊家末娘っの海お姉ちゃんと、沖縄で世話になった犬神家次女、歩笑ねーたんが駆け寄ってきた。


「何やってんの?」
「あのね〜・・・」


 海お姉ちゃんがボソッと耳打ちして来た。
 雛乃姉さんの呼んだGSの人の一人が、要芽姉様や瀬芦里ねえねえ、それに帆波ねえやを見て発情したように襲い掛かったんで、美神って女の人が制裁を加えたそうだ。
 普段は、こういう事を止める雛乃姉さんも、タブーを言われた為か止めずに、寧ろ説教垂れたそうだ。


「あん。空也ちゃん、お姉ちゃん、もう少しでこの男の子に犯されそうになっちゃった」
「ね、ねえや・・・」


 犬神家長女の帆波ねえやが、この中の誰よりも大きな胸を顔に押し付けてくる。


「うわぁ・・・」
「な・・・き、貴様ああああああ!!!! 何をしとるかーーーーー!!!!!!?」


 いきなり吊るされてる男――横島とかいうらしい――が、鼻血を吹き出し、青筋を浮かべて怒鳴って来た。


「じょ、女優の犬上 保奈美に抱き締められるなんて・・・磔獄門にすんぞ、コラァーーーー!!」
「くーや〜。お姉ちゃんも〜」


 ねえやとは反対側から海お姉ちゃんに抱き締められる。


「くーくん・・・」


 更に後ろからねーたんに服を引っ張られ、愛の視線をビンビンに感じる。


「あはは・・・皆、仲良し」
「ともねえ、見てないで助けてよ・・・」
「ちょっとイカ! 鼻の下伸ばしてんじゃないわよ!」


 俺は悪くないのに、何故か高嶺姉貴に膝を蹴られる。頭は天才だけど、運動能力は0だから、痛くも何とも無いけどね。


「・・・・・・・」
「ね、姉様・・・」


 そして俺の憧れの人にして、氷の弁護士の異名を持つ要芽姉様の冷たい視線が異様に痛かった。


「美神さん! 後生です! 縄ほどいてください!! あの野郎、マジでぶっ殺します!!」
「駄目よ。一応、依頼人の弟なんだから怪我させたら大変だもの」
「んな殺生なーーーーー!!!!!」


 横島さんを吊るしたまま、美神さんと氷室さんは、雛乃姉さんから話を聞くことにした。何故か柊6姉妹に犬神姉妹も加え、12人という大所帯になってしまった。


「松笠市・・・ですか?」
「うむ。松笠市には我がかつて世話になった方がいてな・・・その方から、最近、頻繁に現れるようになった悪霊を浄化する依頼を受けたのだ」
「え? 雛乃さんって、悪霊払い出来るんですか?」
「おキヌちゃん、知らないの? この柊 雛乃さん、『鎮魂の舞姫』って言われてて、ネクロマンサー顔負けの霊を浄化させる実力を持ってる、その筋じゃ結構有名なのよ」
「はぁ〜・・・」


 流石は雛乃姉さん。GSの世界でも結構、有名らしい。まぁ、確かに姉さんの鎮魂の舞は、一度見ると病み付きになるからな。


「我も、その方には世話になった恩を返したいのだが、バイトが立て込んでいてな。そこで、お前達に依頼を願い出たのだ」
「なるほど・・・事情は分かりました。では、料金の方はこれぐらいで・・・」


 美神さんは、電卓を取り出すと営業スマイルで雛乃姉さんに見せる。その額を見て、雛乃姉さんはニヤリと扇子を広げる。扇子には『不敵』と書かれている。


「ふふん・・・聞きしに勝る強欲ぶりよな。法外も法外な・・・」
「どれどれ? うわ、すご・・・島一つ買えるじゃん」


 電卓を覗き込んだ瀬芦里姉さんの一言。一体、どんぐらいの値段ふっかけられたんだ。


「残念だが、我らが支払える額の上限は此処までだ」


 雛乃姉さんは電卓のボタンを押して美神さんに見せ返す。すると、美神さんの額に青筋が浮かぶ。


「ご冗談を・・・この私が、この程度の額で動くとでも?」
「かなめを敵に回しても良いのか?」
「!」


 そこで雛乃姉さんはチラリ、と姉様に目配せする。すると美神さんの顔色が変わった。


「かなめの噂は、お前も知っておろう」
「こ、この私を脅すと言うの?」
「いやいや。ただ我は、古い知人である者から、お前に『こらしめてくれ』とも頼まれていてな。松笠の件もあったし、丁度良いと思ったのだ」


 そういえばこの前、姉さんのお客さんに前髪の薄い眼鏡をかけたオッサンが来てたっけ。確か、スズメとかツバメとか鳥の名前だったような・・・。


「かなめよ。仮に今の美神の金額を支払わされるようになった場合、お前なら裁判で勝てる可能性はどれくらいだ?」
「姉さん、愚問ですね。私に勝てる可能性を聞きますか?」
「で、あるな」
「ふ、ふん・・・裁判なんかになっても問題ないわ。そんなのお金をかければ、いくらでも、こっちが勝てるように出来るんだからね」


 ウチの姉ちゃん達も悪人顔負けだけど、この美神さんも相当あくどい気がしてきた。


「ほほう。そんな事をしても、うみの情報処理能力があれば証拠を幾らでも手に入れられるぞ?」
「データ削除しても、すぐに復元しちゃうよ〜」
「更に、ほなみなら めでぃあ も十分、お前の汚さを あぴーる できる」
「人を陥れるのは好きじゃないけど〜・・・空也ちゃんの生活を守る為ならやっちゃうわよ」
「く・・・」
「うわ、すげ・・・あの美神さんを屈服させてるぜ」
「やっぱり年季が違うんですね〜」


 滅茶苦茶、怒ってる美神さんに対して横島さんや氷室さんは感心してる。


「別に断っても構わんぞ? が、既に先方にはお前達の事を伝えておってな・・・仮に約束を裏切るようであれば、その方の怒りを買う事になる。竜の怒りを買うなど愚の骨頂だぞ?」
「竜の怒り?」
「お世話になった人って、ひょっとして小竜姫様なんでしょうか?」
「れっきとした人間だが、まぁ素手で熊の9頭は簡単に倒せるし、後戦闘機も多分、素手で落とせる」
「んな人間がいてたまるかぁーーー!!」


 っていうか、そんなことが出来る人間なんてマ○ター・ア○アぐらいしか知らない。が、雛乃姉さんは扇子で口元を隠し、美神さんに尋ねる。


「さて、どうする? やってくれるか?」
「ぐ・・・ぐ・・・」


「あ〜〜!! 腹立つ〜〜!!」


 結局、雛乃さんの依頼を受ける事になった美神さん。私達は現在、松笠市に来て、カレー屋で夕飯を食べている。
 ホテル代は雛乃さんに頂いて、雛乃さんがお世話になったっていう人――人間かどうか怪しいけど――の所へは、明日、行く事にした。
 で、柊家を出てからの美神さんは、ずっとご立腹だった。


「まぁしゃあないッスよ。ありゃあ人の上に立つ者の器っつ〜か、支配者になる人間ッスね」
「この私が・・・この美神 令子が、あんな安い金で仕事を引き受けるなんて〜〜〜!!!」

 それでも提示された額は一般サラリーマンが3年ぐらい働いて稼ぐお金なんですけどね。


「はぁ・・・にしてもズッケーよな、あの空也って奴・・・あんな綺麗な姉ちゃんに・・・しかも犬上 保奈美とか柊 要芽なんて有名人まで・・・ちきしょ〜〜!! 人間なんて滅んじゃえ〜〜〜!!」


 最低な事を言って横島さんはカレーを頬張る。もう・・・あんな風に言ってるけど、横島さんを慕ってる人って結構、多いのに・・・。


「いらっしゃいませー・・・って、ココナッツ!?」
「激辛スペシャルカレー」


 ふと入り口の方では可愛らしい店員さんが、長い黒髪の女の人を見て明らかに嫌そうな顔をしていた。


「うわ・・・美人」


 黒髪の人を見て、思わず呟いた。そこで横島さんを見ると、やっぱり黒髪の人をジッと見ていた。


「84・・・85・・・馬鹿な・・・まだ上がるだと!?」


 横島さんは一体、何の数値を計ってるんだろう?


「86・・・87!? は、87だとぉ!?」


 視線の先を見ると、そこには黒髪の人の胸だった。むぅ・・・やっぱり男の人は大きい胸が好きなんでしょうか?
 ちなみに美神さんは、怒り任せにカレーを自棄食いしてて、横島さんにツッコミを忘れちゃってます。


「テンチョー! ココナッツのヤローがまた挑戦しにきやがったぜー!」
「OH! カニサーン! モウコレ以上、挑戦サレタラ、ワタシノプライド粉々デース! 此処ハ素直ニ白旗フリマショー!」
「は! やなこった! テンチョーのプライドなんか最初から知ったこっちゃないけど、ボクのプライドが許さねーんだよ!」
「オメー、バイトノクセニ生意気バッカ言ッテンジャネーゾ」
「うるせー! 早くココナッツも土下座して『参りました。偉大なる蟹沢様』とか言えるようなカレー作れ!」
「ショウガナイデスネー。ヤッテミマース」


 何だか口の悪い女の子だなぁ、と思いつつ様子を見ていると、ふと横島さんがウエイトレスの子を手招きした。


「ちょっと君々」
「ん? 呼んだ?」
「あっちの娘にセイロンティーをご馳走してあげてくれないか? あ、此処は俺の奢りで」
「(何かフカヒレと同じニオイがする奴だな・・・まぁ良い。今度は手で触れないぐらい煮えたぎったのをプレゼントしてやる)畏まりましたー」


 ウエイトレスの子は、笑顔で厨房に入って行った。


「オ待タセシマシター。20分以内ニ食ベレタラ御代ハイリマセーン」


 テンチョーさんが赤く煮え滾ったカレーを持って来た。思わず私も横島さんも口を押さえた。アレって、もはやカレーじゃない。カレーの形をした何かだ。
 けど、黒髪の人は黙々と、それでいてスプーンに大量のカレーを載せて食べていく。


「うわ・・・」
「すっご〜い」
「ご馳走様・・・」


 食べ始めて僅か5分程度で、その人はカレーを平らげた。


「オーマイガ! ヤッパリ完食デース!! ワタシ、故郷ノトランシルバニアニ帰リタイデース!」


 え? テンチョーさんインド人じゃないんですか?


「ふふん・・・やるじゃねーか、ココナッツ」
「・・・・・・まだいたのか、甲殻類。食べきったからタダだぞ?」
「まぁ、待てよ。ホレ、あっこの兄ちゃんからの驕りだぜ」


 そう言ってウエイトレスの子は、やっとこでグツグツと煮え滾ってるセイロンティーを差し出した。


「おい、ちょっと待てや! んな熱いもんが飲めるわけ・・・」


 横島さんが思わず叫ぶけど、黒髪の人は気にせず、普通に掴んで飲んだ。


「・・・・・・ご馳走様」
「な・・・!?」
「残念だったな、カニ」
「ち、ちきしょーーー!! これで勝ったと思うなよーーー!!」
「負け惜しみを」


 目に光るものを見せながら、ウエイトレスの子は厨房へと走り去って行った。何だか凄いものを見ちゃった気がした。黒髪の人は、出て行く際、しっかりと横島さんに『セイロンティー、ご馳走様』と言い残して行った。


「あぁ! まだムカつく〜!」


 ホテルへ行く途中、美神さんは未だに怒りが収まっていなかった。


「何処の誰よ? あんな小娘ババァに変なこと頼んだの! 判明したら、コンクリ詰めにして東京湾に沈めてやるのに!」


 その頃、某教会。


「おお、雛乃くん・・・頼むから美神くんに私の名前は出さないでくれよ」
「神父・・・そんな事で神に祈りを捧げなくても・・・」
「しょうがないのだよ。最近の美神くんは、アシュタロスの一件もあって増長してるから、彼女のお母さんに強く言われてね・・・かと言って、もう私の言う事なんか聞きゃしないし・・・」
「美神さんを屈服させられる人間が、この世に存在するんですか?」
「彼女が無理なら、もう諦めるしかないよ・・・」


 というような会話がなされていた。


「俺は別に良かったッスけどね〜。珍しく美神さんが言い負かされたり、綺麗なお姉ちゃんとお知り合いにもなれたし」


 唐巣神父は元より、最近はお母さんにも反発する事が多くなった美神さんを言い負かした柊 雛乃さん。世界には、まだまだ凄い人がいるんだって思える一日だったな〜、今日は。


「う、うあああああああああああ!!!!」
「「「!」」」


 その時、近くの公園から悲鳴が聞こえた。振り返ると、悪霊に一人の少年が襲われていた。
 大変! 早く助けないと! 私はリュックからネクロマンシーの笛を取り出そうとすると、美神さんが神通根を持って悪霊に向かって突っ走って行った。


「え? み、美神さんが・・・人助け?」


 な、何の見返りも無く!? 私は自分の目を疑った。何も言わずに少年を助けようとするなんて、美神さんらしくなかった。


「甘いよ、おキヌちゃん」
「ふぇ?」
「ふ、ふふふ・・・アンタみたいな奴がこんな所に現れるから、こんな面倒な事になったのよ・・・」
「ただの腹いせだ」


 私はズッコけました。


 悪霊をぶった切る。これで少し、そう、ほんの少しだけ気が晴れたわ。あの柊 雛乃・・・次に会ったら絶対に負けない。こんな屈辱、横島クンの母親に敗れて以来だわ。
 後、あの小娘ババァに余計な事を頼んだ奴にも報復しなきゃ。まぁ予想はついてるけど・・・・唐巣先生かママね。帰ったら問い詰めてやる。


「だ、誰・・・?」


 私の後ろで腰を抜かしている男の子が話しかけてきた。


「私?」


 怯えている男の子に振り返り、私は高らかと名乗った。


「令子・・・ゴーストスイーパー、美神 令子よ」


 人生ワースト3に入る屈辱的な事のあった今日。そして、この出会いが、あのアシュタロスの騒動を上回るような事件に繋がる事を私は、まだ知らなかった。


 <ATOGAKI&RESUGAESI>

 と、いうわけで今回はGSメインで、姉しよキャラと、つよきすで私が大好きなキャラ、テンチョーの登場です。横島のセイロンティーやなごみの胸を見ての台詞はフカヒレのパロディです。ちなみに、雛乃に除霊を依頼した人物は言うまでも無く、つよきす最強キャラのあのお方です。出来れば、小竜姫とドラゴン対決させてみたいです。竜神vs生まれるのが遅過ぎた竜です。雛乃、神父、館長の関係は後々、明らかにしていきます。


 >rin様
 横島もフカヒレも声同じですからね。だからクロスさせようと思いました。横島もフカヒレも行動パターンが一緒ですし。


 >九頭竜様
 つよきすとGS・・・そうですね、意外っちゃあ意外ですね。
 横島とフカヒレの場合、夕日の浜辺で女体の好みが合わず、殴り合いになるけど、互いの好みを認め合い、友情を育む、アホらしいけど漢臭い演出を考えてたんですが・・・2人とも、女に関しては節操ないので無理っぽいです。


 >髑髏の甲冑様
 初めまして、キャンディです。
 当初、つよきすは戦闘とかはありますが、霊能という点は祈先生だけで、ちょっと難しかったので、どうやって2つの作品をクロスさせるのか悩んでましたが、パイプ役に姉しよを持って来ると、上手く嵌まったので、GS+きゃんでぃそふとという元ネタにしました。
 横島とフカヒレの出会いも早く書きたいです。


 >ソティ=ラス様
 致命的にヤバいのが見つかったらご指摘ください。
 茨の道を挫折するか渡り切れるか・・・見守っていてください。


 >ショッカーの手下様
 カップリングですか〜・・・私も余り考えていません。けどまぁ妥当に考えたらレオは乙女さん、横島は・・・まぁ分かりませんね。でも、それは、これから先の展開ですので。そもそも、恋愛描写が苦手な私が、カップリングなんて出来るのか不安です。


 >スケベビッチ・オンナスキー様
 私はPS2版しかやってないので、よっぴーシナリオや祈ちゃんシナリオ知らないんですよね。
 横島とフカヒレは、性格も声もヘタレ具合も似てます。というか、魂の兄弟じゃないでしょうか?
 これからの展開をお楽しみに。後、誤字の方も訂正しておきました。ありがとうございます。


 >Heckler様
 ツンデレ・・・ある意味、GSキャラもツンデレ多いような・・・。
 デレなごみは好きですよ〜。心配をかけないよう、更新を頑張りたいと思います。これからもよろしく。


 >エセマスク様
 おお、地方妖怪マグロ。当然、ソレも出す予定です。
 乙女さんの場合、恐怖する前に正々堂々と立ち向かって、『負けたら、ストーカー行為をやめろ!』とか言いそうです。私的には。でも、横島って考えたら文殊で雷出せるんですよね〜・・・乙女さんには時間移動は無理っぽいです。

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