「……ついに明日、か」
セイランの本邸で宛がわれた部屋の窓際に立ち、カガリは憂鬱な声でつぶやいた。
ユウナからの突然の求婚と、自分の意思に関係なく進んでいく結婚式の準備に最初こそ慌てていたが、数日経つといくらか落ち着きを持つことができるようになったカガリは、今時分の置かれている立場を鑑みてあまりの無力さに愕然としてしまった。
自分の意思のひとつも貫き通すことができず−しかも結婚という人生において重要な位置を占める一大事の当事者でありながら、周りに流されていたということがまた重くのしかかっていた−言われるままに身支度をさせられている自分にカガリは憤りを感じずにはいられなかった。
しかも、その憤りに拍車をかけるように、ユウナの言うとおり門は常に開放されており、警備上の主要な箇所は警備されているようだが、その死角をつくような逃走経路と幾ばくかの金銭の入ったケースが屋敷の門の横にカガリ宛に置かれているのを見つけたときは、カガリは言いようのない無力感をまた味わった。
ユウナ・ロマ・セイランにとって、自分との結婚はまさにオーブを纏める為の手段でしかなく、自分に対して愛情と呼べるものが一切ない、という事実がそのケースが如実に物語っており、それを悟ったときカガリは指に嵌めている指輪に触れるのだが、指輪は何も答えてくれず、ただカガリにつらい現実だけが突っかかってくるのだった。
それをかみ締めながら、なんとか結婚を中止にしようと思うカガリだが、ユウナに突きつけられた方法以外でオーブを纏め上げる手段が思い浮かばなかった。一瞬、武力蜂起をするべきかと思ったが、そんなことをしてしまっては父の残してくれた理念に反することになり、そのような手段をとってしまったオーブを国際社会は決してよい顔で見てはくれないだろうと想像に難くなかったので没にした。
それを除いた方法を考えると、どう考えても自分とユウナの結婚で融和方針を採らなくてはならないように感じていた。
感じるのだが、それでもカガリはその方法は容認できなかった。感情がそれを許さず、自分の女としての本能が彼を、アスランを求めているのだから。
だが、そんな本能を淘汰し、理性で納得をしなくてはならない時が迫っているのをカガリは感じていた。
屋敷に移ってから街には出ていないが、街は自分の結婚式にむけ賑わっていると、弟宛の手紙を乳母のマーナに託したときに聞き、その事実がまた重くのしかかっていた。
国民が賛同していてくれるその思いを、私は裏切ってよいのだろうか。
カガリは一人静かに悩みながら、ただ空に輝く星を見上げるのだった。
あの星の海のどこかに自分の思い人がいるのだと思いながら。
「アスラン………助けて」
静かに涙を一筋落とし、その呟きは静かに消えていった。
「?……カガリ?」
地球へ向かうナスカ級戦艦内にある自分に与えられた部屋の中で、アスランはカガリの声が聞こえたような気がしてつぶやいた。
だが、現実的には自分のそばにはカガリがいないのだから、空耳かと考え、それほど自分はカガリを恋しがっているのかと、自分の女々しい部分に苦笑しながらアスランは与えられているセイバーの仕様書に改めて目を通した。
現在、アスランは地球への移動を行う傍ら、セイバーの習熟訓練を行っていた。
いくらアスランが抜きんでたパイロットとしての才能を秘めているとはいえ、二年間のブランクと、ZAFTの最新技術の結晶であるセイバーを慣らしもなく性能を100%引き出す自信はないし、動かしてこそわかる機体独特の癖を把握するため、アスランは寸暇を惜しんでセイバーの習熟訓練に励んでいた。
そして、訓練課程を消化していく中で、アスランは自分の愛機となったセイバーの性能に舌を巻いた。
動力源こそバッテリーだが、機体のレスポンのよさはかつての愛機ジャスティスに負けるとも劣らない反応を示していることに驚きを隠しえなかった。
高機動性能に、過剰ともいえる火器の搭載数に威力、時間が限定されていれば核動力のフリーダムにも負けない性能である。
アスランは仕様書を読み進めながら、改めてセカンドシリーズの抑止力としての有効性と、兵器としての凶悪さをかみ締めた。
『だが!強すぎる力は、また争いを呼ぶ!』
かつてカガリが叫んだ言葉がよみがえる。それは正しいと思える。
だが、またそれは間違っているようにアスランには感じられた。
これは、強すぎる力『核ミサイル』を平然とプラントに向けて放った地球軍と、それを迎撃しきったプラントを見たための考えであった。
歴史にIfはない。だが、もしカガリの考えのようにプラントが歩んでいたとしたら、今自分はこんな考えをすることができなかっただろう、とアスランは思った。
オーブという限定された世界から一時一人で離れたことで、アスランは少し世界を見る目が広がったように思えた。
カガリにあったら、話をしよう。
自分がプラントで見たこと、感じたこと。そして、悩み考えたことを。
そうすれば、よりよいオーブを造れるはずだから。
アスランはそのようなことを夢想しながら、静かに眠りへとつくのだった。
その夢は、そうそう叶うに値しないということを知らずに。
「覚悟は決まったようだね」
白のタキシード姿のユウナは、朗らかに笑いながら部屋の中にいる人物へと声をかけた。
「・・・・・・・・・・」
「沈黙は肯定と見るよ?」
純白のドレスに身を包み、化粧を施されている顔を俯かせているカガリにユウナはそばにいた侍女たちを下がらせて語りかけた。
「僕が与えた猶予期間内に逃げ出さなかった、っていうことはこの結婚に同意したんだよね」
そう言い身を屈めてこちらの瞳を見ようとするユウナの瞳から顔を背けるカガリの塞がれていない耳に、聴きたくない言葉が響いた。
「ありきたりだけど誓うよ、カガリ。君を不幸にはさせないよ」
その言葉には、一切の感情がこめられていないようにカガリには思え、より身を固くさせ、世界を拒絶するように俯いた。
それをユウナは苦笑しながら見て、外に控えている侍女たちを呼び寄せカガリを伴い外の車へと歩いていった。
空は、青く澄み切っていた。
不沈艦アークエンジェル。
前大戦でキラたちの母艦として活躍した、攻撃力と機動力を併せ持った高性能艦であるそれは、戦後、キラを始めとした人間たちがオーブに亡命した際、同じくアークエンジェルも秘密裏にオーブにかくまわれ、アスハ派の首長及び軍関係者、モルゲンレーテの協力の下その姿をオーブの秘密海底ドッグに寄せていた。
二年間の時の中、傷ついたその身を癒しきった大天使は、新たなる旅立ちの時を今か今かと待ち望み、そしてその瞬間がついに訪れた。
キラ、ラクス、マリュー、バルトフェルド、そして前大戦で一緒だったアークエンジェルクルーを乗せたアークエンジェルは、その名の通りの力を表すかのように力強く海底から発進した。
これ以上、オーブにいてはラクスの安全を確保できないと判断したためだ。
アークエンジェルが浮上を開始するのと同時に、キラは格納庫にあるフリーダムに乗り込んだ。
『本当にいいのね、キラ君?』
アークエンジェルの艦長、マリューからフリーダムのコクピットへ通信が入る 。
「はい。カガリにまであんな馬鹿な真似をさせるわけにはいきませんから」
『それにしても花嫁泥棒なんてね………。ラブストーリーなら、ロマンチックなんだけど……』
これからキラが行うことを、どこか茶化すように苦笑するように言うマリューに、キラも苦笑しながら答えた。
「そうですね。これから僕らがやることが、正しいかどうかなんてわからないですけど………でも、こんなのは間違っていると思いますから」
そう言うと、キラは通信を切り、大きく息を吸った。
アークエンジェルが海面から浮上しきると同時に、カタパルトが開き、陽光が差し込んでくる。
その光を見つめながら、キラは、自分が正しいと思うことを、間違っていると思うことを正すために、カガリを不幸にさせないために力を振るうことに決めた。
「キラ・ヤマト。フリーダム、行きます!」
蒼い翼を持つそれは、大天使から飛びたち、一路結婚式が行われる場所へと向かい羽ばたいた。
アークエンジェルが海底より飛び立つ時より遡ること一時間。
未来のオーブを共に背負うことをこれから誓い合うカガリとユウナの二人は、市内パレードを行いながら祭場へと向かっていた。
街道に立つ市民は、皆笑顔で手を振り、二人の結婚を祝福していた。
もちろん、全国民が二人の結婚を祝福しているか、といえばそうではない。
ウズミの代からのアスハ派を自認している国民は、この結婚に対して難色を示しており、できることならば潰したいと考えていた。
だが、そのための力がないため、それらの多くは明るいうちから酒精を摂取することにいそしんでいた。
そして、この結婚を好意的に捉えている多くの国民の奥底には、二年前の戦争で焼け出された恐怖が、愛しき者を奪われた悲しみが、大事なものを失くした喪失感が根強く残っていた。
オーブの理念は素晴らしい、と思う反面で、その理念は今度こそ守ってくれるのだろうか、という疑念を大なり小なり持てずにはいられなかった。
そんな思いを抱えるからこそ、現実的過ぎる路線を歩むセイラン家の跡取りとの理想を掲げるアスハ家との結婚は、多くのものにはオーブを磐石にする出来事に捉えることができた。
だからこそ、国民の多くはこの婚礼を支持した。
代表の幸せを願いながら、これで自分たちは守られるのだと無意識に安堵しながら。
多くの国民は代表という存在に祝福を送るが、そのなかにカガリとしての存在に送る祝福の言葉はあまりにも小さく、少なかった。
「ほら、カガリ。手を振ってあげなよ。みんな君を祝福しているんだからさ」
仕事用の笑みを浮かべながら如才無く市民に応えているユウナは、自分の隣で俯いている花嫁に語りかけた。
「………」
花嫁であるカガリは、その言葉に応えず俯いていた。
そんなカガリの様子に嘆息すると、ユウナは備え付けの冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出すと、備え付けのグラスに注ぎながら気分がよくなる言葉をカガリにかけた。
「そんなに悲観することは無いよ、カガリ。この結婚なんて所詮ただの政治的道具の一つに過ぎないんだ。愛だの何だの関係ない、ただの舞台さ」
「……お前……」
「だから、君が僕に君の卵子を提供してくれれば、後はこっちで人工授精させるからさ、君は愛人を囲ってその相手と愛を育んでくれてもかまわないよ」
「…………何を、何を言っているんだ、ユウナ」
伝えられたあまりにもな内容に、カガリは絶句した。
この男はいったい何を考えているんだろうか。
愕然とするカガリを無視し、ユウナは言葉を続けた。
「なに。ただ、僕たちの家に課せられている業を全うできれば、後は君が誰と愛し合おうが僕には関係ないさ。カガリだって嫌だろう?愛のない営みなんて」
「………」
「納得いかない、って言う顔だね。でもね、カガリ。それは、君があまりにも無知だからだよ。アスハがセイランに課した役割を。アスハが負うべき役割を。こんな言葉がある。『無知は罪だ』ってね。そのしっぺ返しが、まあ、現状なんだけどね」
「………ユウナ」
「教えてあげるよ。カガリ、君が知らない、知ろうとしなかったオーブの闇の部分を。そして、それを知ることで共にオーブを守ろう」
ちょうど逆光でユウナの表情が隠れた。それがよりカガリに恐怖を感じさせた。
目の前の男はいったい誰なのだろうか。
自分の立っている場所はいったいどこなのだろうか。
カガリは自分があまりにも無知で、力のない矮小な存在のようにかんじられてしかたがなかった。
その瞬間、カガリは自分の世界がひどく脆いものだと感じた。
「さあ。この劇のクライマックスだ」
ユウナの声に促され外を見ると、いつの間にか車は止まり、祭壇へと向かい敷かれた赤絨毯が、自分がその上を歩むのを待っているかのように存在していた。
それを見ながらカガリは願った。
誰か、この劇を壊してくれ、と。
厳かな神父の言葉が響く会場に、突如場違いな音が響いた。
「なんだ?」
「お、おい!あれを見ろ!!」
その音に促されるように空を見上げた参列者たちは、その存在を捉えた。
青い空を切り裂くように飛ぶ、蒼翼の機械仕掛けの天使を。
「フ、フリーダム……」
参列者の一人である軍人のつぶやきに応えるように、フリーダムはビームライフルを構えるとそれを放った。
その光線は警備に当たっていたM1アストレイのライフルをことごとく打ち抜いていった。
それだけでは足りない、とばかりにフリーダムはアストレイの脚を打ち抜き、腕を吹き飛ばした。
その破片が参列者達の方にも吹き飛ぶのを感知せずというばかりに、フリーダムは愚直にも真直ぐに祭壇の前へと降り立った。
そのさまは、まさに天使降臨といっても遜色ない力強さがあった。
「………キ、ラ?」
その光景を目にしたカガリは、呆然と自分の弟であるパイロットの名を呟いた。
『カガリ!助けに来たよ!!』
外部スピーカーから流れるその声と同時に差し出されたフリーダムの手にカガリは掴まれた。
自分の状況を把握しきれないカガリにお構いなく、フリーダムは飛び立とうとした。
カガリは飛び立つ瞬間、祭壇の上に立っているであろうユウナのほうへ視線を向け、後悔した。
そこに浮かんでいた表情は、今までカガリが見たことのないものであった。
憤怒、侮蔑、嫌悪、諦観、そして裏切られたという、感情が合わさったような表情が浮かんでいた。
その鋭い視線から顔をそらすように、少しでも離れるようにフリーダムへと身を寄せるのを合図に、フリーダムは空へと飛び立った。
カガリは、自分の体へと叩き付けられる空気の強さに耐えながら、自分が自由になれたように感じた。
「領海域内にアークエンジェルが出現したとの報告が入りました」
フリーダムが飛び立った方角を睨み付けるユウナの背後に立ったレナスは情報を報告した。
それを聞き、ユウナは顔を顰めるとはき捨てるように罵った。
「アスハ派の豚どもが。こんなことがカガリの、オーブのためになると思っているのか。カガリの結婚式を見たくないだろうと思って、仏心を出して海上警備にまわしてやったというのに、それが裏目に出るとはね。無駄だとは思うが攻撃命令を。それと、今日の海上警備に当たっていた者達のリストをすぐに作成してくれ」
「わかりました」
ユウナの命に頷くと、レナスはすぐにその作業に取り掛かった。
それに変わるように、来賓として招かれていた地球軍の礼服を纏った将校が下卑た笑みを浮かべながら近づいてきた。
「これはこれはユウナ殿。大変な事態ですな」
「………お恥ずかしいことです」
白々しい言葉にユウナは嫌悪感を感じ、内心罵詈雑言を吐きながら沈痛な面持ちでそう応えた。
「いやはや。それにしても、貴国の警備網はどうなっておられるのですかな?まさか、まさか白昼堂々一国の代表を攫われるとは、しかも、このような来賓を招いての場で許してしまうとは」
「………返す言葉もありません」
嫌らしい笑みを浮かべながら言う言葉を、ユウナはただ耐え聞いていた。
そんなユウナを嘲笑うかのように、フリーダムとアークエンジェルが逃げたとの報告が飛び込んできた。
「いやはや。ずいぶんと優秀な軍隊ですな」
「………(アスハ派の無能が!)」
内心際限なく湧き上がってくる怒りを抑えながら、ユウナはこれから起こる現実を想像していない無能な軍人達に呪詛の言葉をつむいだ。
そんなユウナの内心を知ってか知らずに、将校は朗らかにある案件を口にした。
「なに。ユウナ殿。安心なされ。二度とこのようなことが起こらないように、我が軍から精鋭を貴国に駐留させ防衛に当たらせましょう。なに、遠慮なされるな。同盟を結ぶ友好国へのあれわれの親愛の証ですよ。その方がユウナ殿もよろしいでしょう?自国の代表が攫われるのを、みすみす見送った腑抜けな軍に守られるよりは」
そう言うと、将校は笑いながらユウナの前から立ち去った。
その背中をユウナは黙って見送り、黙してそこに立っていた。
ただ、ユウナの白い手袋が、静かに赤く染まり始めていた。
「…………カガリ。君は、最低の答えを出してくれたな」
呻くように呟くと、ユウナは乱暴にネクタイを解きその場から立ち去った。
空が、ユウナの心を無視するかのように青く澄んでいた。
この日から、ユウナの戦いは始まった。
オーブを守るという戦いが。
「なんだって!」
アスランは、与えられた自分の部屋で聞いた情報に驚きを禁じえなかった。
地球降下準備をしていたアスランの耳に、オーブ代表誘拐の知らせが飛び込んできたのは、事件から半日経ってからのことだった。
オーブ政府へのセイバーの着陸受け入れの要請を行ったときに、オーブの現状を説明され戒厳令が発令されているため受け入れができないと説明された。
「カガリを、アスハ代表をオーブはみすみす誘拐されたというのか!!」
アスランは報告に来た一般兵に食いかかって尋ねた。
「は、はい。なんでも、実行犯はフリーダムに似たMSを使用しており、オーブのムラサメ部隊を一蹴して代表を連れどこかへと逃げ去ったとのことです」
「な?!フリーダム、だって……」
その名に驚くアスランに、更なる情報が知らされた。
「はい。また、オーブは連合との同盟を結ぶこととなったので、わが国の軍籍のものの入国を受け入れられない、との回答がありました」
「そんな………」
絶句するアスランに、兵士は一礼するとそのままその場を立ち去った。
その後姿を呆然と見送ったアスランは、すぐにはじかれたように部屋に備え付けの端末にかじりつき、オーブのとあるサイトへとアクセスした。
そのサイトは、オーブ政府に所属するSP達が利用する情報交換所であった。
そこの掲示板に掲載されている文をある方法で解読すれば、別の文として読み取ることができるのだ。
何かと情報を共有しなくてはならないSPたちの間では重宝されているサイトであった。
そこにアクセスしたアスランはすぐに掲示板を開き、何か事件について詳しく書かれていないかを血眼になって探した。
そして、それをアスランは見つけた。
それは他愛無い文章であった。
だが、解読をすると、ある人物への要請であった。
ある人物とはアスランの偽名であるアレックス・ディノへであり、その要請とは以下のようであった。
『アレックス・ディノへ
ポイントW1043N948にて会談望む
ユウナ・ロマ・セイラン』
「ユウナ、だって……」
送り主の名に驚き、アスランは一瞬自分を消すための罠かと勘ぐったが、現状−カガリが不在な今―たとえ自分を殺してもユウナが得る利益はないのでその可能性は低いだろう、と考えた。
では、一体ユウナはなにを得ようと考えているのだろうか。
アスランは疑心を抱きながら、今の自分にはオーブに関しての情報が圧倒的に不足しているのが現実なので、それを得るためには危険を犯す必要があると考えた。
(コケツに入ればなんとか、だな)
オーブの前進である国の格言を思い浮かべながら、アスランは会談に応じる書き込みを暗号形式で書き込んだ。
それを送り届けた後、アスランは今地球のどこにいるかわからない親友のことを考えた。
「……キラ。お前は一体なにを考えているんだ」
そう呟くが、その呟きには誰も応えてはくれなかった。
「……やっぱりやったのか」
カーペンタリアでGイーグルでの訓練飛行を終えたシンは、インパルスのコックピットで水分補給しながらそんな言葉をこぼした。
ここカーペンタリアでもオーブ代表の誘拐のほうは瞬く間に広がり、そこに現れたフリーダムの行方についてもさまざまな場所で話題になっていた。
シンは、そんな周りの空気を観察しながら、オーブの対応の悪さに歯噛みしていた。
「まったく。こっちが親切心で色々なダミー回線を使ってオーブ行政府のHPに代表誘拐の兆候あり、っていう書き込みを何件も入れてやったっていうのに。その努力がすべて無駄ですか」
アーモリー・ワンでの苦い経験を元に、打てる手を打ったというのに、それが結果を出さなかったことはシンに少なからずショックを与えていた。
自分がどう関与しようが、運命って言うのは変わらないのではないだろうか。
そんなことを考えてしまわずにはいられなかった。
暗い気持ちにならずにはいられないシンを励ますように、太陽はさんさんと輝いていた。
そんな陽光に誘われるように外に目を向けると、パイロット、整備士、それぞれがそれぞれの仕事を全うしようと精力的に動いている熱気が立ち込めており、そんな基地内をMA形態のガイアが元気に駆け回っている情景などシンの心を優しくする。
「………って、ちょっと待ていーーー!!なにそれ!!その犬のように動いているMS!!」
驚くシンの声が聞こえたのか、ガイアの外部スピーカーから声が響いた。
『シン、見つけた!』
「ステラさん!!あんた、なんばしょっとねー!!」
その声の主にシンは仰天しておかしくなった言語で叫ぶしかなかった。
叫びながら、シンはこの件がこれからすごく面倒なことを招くんだろうな、と思いながら空を見上げた。
今のシンの顔を笑うかのように、ウミネコが嘲笑うように鳴いていた。
―後書き―
新年明けましておめでとうございます。ANDYです。
年末に投稿しようと思ったらパソコンのHDDが突如壊れ、今までの設定集やら書き溜めていたものやらがすべて消えるなんていう最悪な年末を経験しました。あれは地味に心臓に悪いですね。
さて、諸々の理由で年末にあった総集編を見なかったのですが、出来の方はどうだったのでしょうか?
映画関係の情報は流れたのでしょうかね。
第2クールに入ったコードギアス、またまた面白くなっていますね。
友人の父親を故意でないとはいえ殺してしまう。その罪に悩むルル。そんなルルを焚きつけるCC。まあ、その台詞はどうかと思いますが(苦笑)童貞ボーイって、ゴールデンではいえない言葉ですよねw
これから彼の修羅道はどうなるのでしょうか。とても楽しみです。シャーリー、退場しないとよいのですが。
今回の結婚式イベントですがどうだったでしょうか。
一国の代表の結婚式には同盟関係や友好国の代表の方が訪問されるのが世の習い(実際、皇太子殿下と雅子様の結婚式にも各国の代表が祝福に訪問されましたしね)なので、オーブにも参加している、ということにさせてもらいました。
で、そんな状況で誘拐事件……うわ、国際社会の信用がた落ちですね。
原作ではどうだったのでしょうかね。
では、恒例のレス返しを
>R・ジャジャ様
お久しぶりです。感想ありがとうございます。
ドクターヒビキですが、その人物の正体はいずれ明らかにします。
ただ、まあそれなりにねじが外れている人にするつもりです。
これからも応援お願いいたします。
>鳴海様
感想ありがとうございます。
ナギについてですが、彼の全容はそろそろ色々と明らかになります。
ドクターとはお互いの利害が一致している、という関係で、ケーラに対しては使える駒、というのがナギの基本スタンスです。
ユウナは、少なくとも政治の世界に数年はいるのですから、しかも復興なんていう大変なときを体験しているのでそれなりに悟っていてもおかしくないと思います。
実際、原作の『国はあなたのおもちゃではない』という台詞は格好良かったのですがね。再登場したら……
カガリは、やはり18の少女であるが故の未熟さなのではないでしょうか。側近に誰か高齢の方がついていればまた違ったでしょうに。
これからも応援お願いいたします。
>佳代様
感想ありがとうございます。
ヘイト、ということですが、そういう思いで描いているわけではなく、演出上そのような部分が出てしまうのでご容赦のほどをお願いいたします。
オーブの再開発は、少なくともカガリは陣頭指揮を執っていないはずなんですがね。スペシャルエディションでマルキオ導師のところで孤児達と戯れている描写があったので確実です。
カガリが担がれたのは、ウズミ達自爆した首長達の最後の情報を公開していなかったためなのではないでしょうか。
自爆ではなく、連合に殺された、という発表を行ったので、ウズミの遺児であるカガリに国民の多くが何か希望のような願望のようなものを向けてしまったのではないでしょうか。
そのため、国民感情を抑えるために仕方がなくカガリを代表の椅子に座らせたのではないでしょうか。
ですが、18の子供に代表職は無理なのでは、と思いましたが。(正月、Wを見たのですが、リリーナは養父に外交の場を幼少のころより見せられていたようなので即位しても、外交の何たるかを理解していたようなので困らなかったようですね)
その付けが回ったのでしょう。
これからも応援お願いいたします。
>飛昇様
感想ありがとうございます。
襲撃部隊はこのように変更になりました。というか、原作のほうのバックボーンがいまいちわからないのでこのようにしたのですが。
これからも応援お願いいたします。
>ジム3様
感想ありがとうございます。
あげられた疑問ですが、私なりの回答をそのうち出したいと思います。その内の一つは上の佳代様へのレスで上げていますので確認のほうを。
これからも応援お願いいたします。
>通りすがりのオタ様
感想ありがとうございます。
原作のほうでは襲撃者達が新型に乗っていたからプラントだ、という結論での行動だったと思います。
彼女達の行動は、結果だけを求めてその過程を無視しすぎだと思います。
その行動が招いた結果が、今回のオーブに地球軍の駐留を飲まざるを得ない状況にさせました。
それを見て彼らはなにを思うのでしょうかね。
これからも応援お願いいたします。
>仮の俊介様
感想ありがとうございます。
TV版ですが、総集編の数とその挿入時期を考えれば……
キラのその台詞は、ある意味人間くささが出ていると思います。
ストライクという大きな力を得たためにどこか驕りがあったために出た言葉なのでしょう。
これからも応援お願いいたします。
>ATK51様
感想ありがとうございます。
ユウナとカガリ、お互いになにを基準にして歩んできたのかがこのような差になったと思います。現状を少しでも改善しようとあがいたものと、理念に少しでも近づけ様と訴えたものの差なのではないでしょうか。
カガリが、ちゃんとした教育機関に短期留学でもしていれば現状が変わったのでしょうが、16の時にゲリラ活動をしていたんですから少なくとも大学などの専門の知識を学ぶところには通っていないでしょうから、その辺がネックなのではないでしょうか。
ナギのほうは、彼は「あくのけしん」を体現しようとしているのかもしれません。
「せいぎのみかた」は勝ってこそ勝利ですが、「あくのけしん」は負けてこそ勝利の場合もあるので、彼に挫折があるのかどうか。
彼の終焉はどのような舞台なのでしょうか。お楽しみに。
キラですが、どうも彼の原作での言動を鑑みるに己というものが欠如しているように、無色透明になっているように感じました。変に悟っているような感じだったためでしょうか。
これからどのような行動をするのでしょうか。
これからも応援お願いいたします。
>戒様
感想ありがとうございます。
カガリは、その場の考えで発言してしまうのが癖のように思いますので、深く考えない発言が多いのではないでしょうか。
ですから、人として正しいと思うことをすぐ口にする。自分の掲げる理念と照らすことをせずに。
そのようなことだから、国同士の戦闘にも乱入をするのではないでしょうか。
ただ逃亡生活を送っていればよかったと、私も思います。
これからも応援お願いいたします。
>御神様
感想ありがとうございます。
原作とは違い、今回はカガリ誘拐を見逃したためのペナルティをオーブが被ることになりました。
それをどのように判断するのでしょうか。
これからも応援お願いいたします。
>レンジ様
感想ありがとうございます。
原作のほうは、まあ、突っ込みどころが満載なのは事実ですからね。
これからも応援お願いいたします。
>航空戦艦『琴瀬』様
感想ありがとうございます。
レスが二つありますのでまとめて返事させていただきます。
アンチを目指し描いているわけではありません。ですので、その辺を勘違いなされないようにお願いいたします。
オーブですが、今回の誘拐で安泰とは程遠くなりました。
腹の中に爆弾を入れられるような状況になってしまいましたから。
これからも応援お願いいたします。
>G様
感想ありがとうございます。
カガリが看護系……先生、自分には想像できませんw
カガリ人気は、ウズミ人気の延長上なのではないでしょうか。それかおっしゃるように金でしょうかね?
これからも応援お願いいたします。
>はてなマン様
感想ありがとうございます。
テンプレ的黒幕、という意味がよくわからないのですが、彼の味はこれからじょじょに出てきますのでお楽しみに。
ソキウスですが、アストレイBの方で、『L4でイレブンとセブンはソキウスのSEEDを見つけだし、イレブンとセブンの二名と同じ段階に成長していた者たちが多少存在しており、その殆どが整形手術を受け、経歴を偽造し、名前を変えて地球連合とプラントの社会の中に溶け込み、イレブンとセブンが選んだ対抗策を実行すべく暗躍している』とあったので、L4以外にもSEEDがあってもおかしくないと重いこのようにしました。詳しくは小説の方を。
ヒビキの方ですが、劇中で両博士の死亡は未確認でしたので私は生きていると考えていますので、そのような名前の科学者がいてもおかしくないと思います。それとも、劇中で明言されていましたか?
マユとナタルは出てきません。ナタルは陽電子砲の直撃を受けたんですよ。生きているはずないじゃないですか。回想シーンなどでは登場するかもしれませんが、生きている存在では出ません。マユもほかの作品では生存しているのもありますが、本作では登場しません。こちらも回想シーンか携帯の音声だけの登場です。
最新鋭機についてですが、まず、鹵獲した機体ではザフトのせいに出来る説得力がないからです。戦場で残された残骸をバザールに出すようなジャンク屋連合が存在するのです。旧式の機体ではキラたちに犯人を特定させる説得力が弱いと私は考えました。
また、最新鋭機をどうやって入手したか、というと、ブレーク・ザ・ワールドの混乱に乗じて手に入れたのです。
地球をおそった震災の混乱に乗じて、アッシュを輸送するために乗せていた船が流された、と処理し入手したのです。
作中でも、『新鮮な海の幸』という隠語でナギが指示を出しているように表現していたのですが、わかりづらかったのでしょうか。
プロットの方ですが、ご指摘の通り見直します。ですが、そんなに変節的ではない、と自分では思うのですが。
私の力不足でしょうか。
これからもがんばりますので、応援お願いいたします。
>ヴぉい様
感想ありがとうございます。
主人公はこれからはシンを主体にして活躍させますので、ご安心を。
ただ、オーブ編は重要な場面でしたのでユウナにがんばってもらったのです。
同期生達も、これから色々と活躍の場面をお見せするのでご安心を。
これからも応援お願いいたします。
>ユキカズ様
感想ありがとうございます。
そのような切り換えしが出来ればカガリも立派なのですが。
また、ユウナが静観したわけは、ミネルバの実力、なにせ最新鋭の戦艦ですから、その実力を見ればプラントの力がわかる、という魂胆で報告を遅らせたのかもしれません。
これからも応援お願いいたします。
>もももも様
え〜、このように言われるのは小学生以来でしょうか。
あの、ご不快になられるのでしたら、感想を書かれなくてもよいですし、読まれなくてもよいのですよ。
よい感想を書いていただけるようにがんばります。
まだまだ寒い日が続きますが、皆さん体調にはお気をつけてください。
では、また次回お会いしましょう。
では。