インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「ガンダムSEED Destiny――シン君の目指せ主人公奮闘記!!第十二話 そして、選択・・・  中編 (SEED運命)」

ANDY (2006-11-20 04:29/2006-11-20 04:46)
BACK< >NEXT

「これは一体どういうことだ、ユウナ!!」
 大量の書類との格闘を一時切り上げ、息抜きにリラックス効果のあるハーブティーを口にした瞬間、開け放たれたドアが壊れるのではと言う勢いで飛び込んできたカガリに驚き、変な所に入った紅茶に咽ながらユウナは尋ね返した。
「ゴホ。代表、入室の際にはノックをするというのが一般常識です。いくらあなたが一国の代表であるとはいえ、最低限のマナーは守るべきでは?」
「そんなことはどうでもいい!私の質問に答えろ!!」
 ユウナのどこか揶揄するような問いかけを一刀の元に斬り捨て、カガリは噛みつかんばかりにユウナに詰め寄った。
 そのカガリの前に秘書のレナスが立ちふさがろうとしたが、ユウナが軽く手を上げてその行動を制した。
 そんな二人のやり取りも目に入らないのか、カガリはユウナの目の前に立つと、勢いをつけて机を叩き改めて詰問した。
「この報告は一体なんだ!何故私に黙っていた!!」
「………代表。せめて主語を付けていただかないと。何をあなたが詰問されているのかわからないのですが」
 どこか疲れを感じさせる声でそういいながら、ユウナはカガリが突きつけた書類に目を通した。
 そこには、『オーブ領海域外でのZAFT軍艦と地球軍艦の戦闘についての報告書』という題が記されていた。
 その一文を目にしてユウナはカガリが何を問いただしたいのかが予想できたが、あえて本人の口から聞くために尋ねることにした。
(それにしても、いまさらカガリに耳に届くとはね。戦闘終了からもう六時間以上経つと言うのに。情報規制の方はなかなかのようだね)
 自分の部下の優秀さに満足しながら、それを表情に出さずに問いかけた。
「その件が何か?」
「何か、だと!何故私にすぐ報告しない!!」
「その件でしたら夕方の閣議の時にご報告する手はずになっています。もちろん、国防総省のほうには既に報告しておきましたので最悪の場合の対処は出来たと思われますが」
「そのことではない!なぜ、オーブ軍は静観をしていたんだ!!」
 のらりくらりとかわすユウナに元々頑丈でない忍耐の紐が切れたのか、カガリは感情のままに口にしては、少なくともアスハの名を持つ彼女が口にしてはいけないことを口にしてしまった。
(チェック)
 その言葉を聞いた瞬間、ユウナの中で静かな怒りと諦念の感情が浮かんだがそれを押し隠しながらカガリの問いに答えた。
「はい。それはその戦闘がオーブ領海外で行われていたためです。もしほんの一メートルでも領海を侵犯して戦闘を行っていたのならばオーブ軍もその戦闘に参加しましたが、そのような事態にはならなかったため領海ギリギリで待機をさせていたのです。なにか問題が?」
「問題だと!戦闘をしていたZAFT艦はあのミネルバなんだぞ!なぜミネルバを援護しなかった!!」
(チェックメイト。その言葉はアウトだよ、代表殿)
 何も理解できていないその言葉に、ユウナはまるで信じられない、と言う表情でカガリに尋ねた。内心の嘲笑を押し隠して。
「何を言われておられるのです、代表。あなたはご自身が言われておられる言葉の意味をご理解できておられるのですか?」
「なんだと!!」
 頭に血が上っているカガリは、ユウナの問いかけの意味がわからずに怒声を発するが、それを柳に風とばかりに聞き流しながらユウナはレナスに尋ねた。
「レナス君。一つ尋ねたいのだが」
「はい。何でしょうか、ユウナ様」
「おい!ユウナ、私の質問に―」
「オーブが掲げる理念はなんだい?」
 カガリの声を斬り捨てるように、静かにユウナの声は執務室の中に響いた。
「はい。オーブの掲げる理念は次のとおりでございます。『1・他国を侵略せず2・他国の侵略を許さず3・他国の争いに介しない』この三点でございます。僭越ながら申しますが、先ほどの代表の問いかけは、我が国の理念である『他国の争いに介しない』に反すると判断いたします」
「ははは。まさか。カガリ・ユラ・アスハ代表が、オーブの理念を擁護するかたがそのような愚を犯すはずないじゃないか。そうですよね、代表」
 ユウナとレナスの言葉を聞き、カガリは頭の中が真っ白になってしまった。
 この二人は何を言っている?
 なぜ恩人達を守ろうとしなかった不義理な者達から責められなくてはならない?
 なぜ私が責められなくてはならない?
 なぜ私がオーブの理念を反しなくてはならない?
 なぜ、なぜ、なぜ?
 私は、正しいことをしようとしているのに。
 なぜこうも否定される。
 自身のアイデンティティーの一つでもある、いや、そのものであるといっても過言ではないオーブの理念を自らが犯しているという指摘は、カガリに想像を絶する衝撃を与えた。
 カガリ本人からしてみれば、アーモリーワンからオーブまで、安全とは言いがたい船旅であったが、それでも共に寝食を有し、地球の危機を自らの命を顧みずに救おうと奮起してくれた大恩人であるミネルバが、地球軍の攻撃を受けていたときに自国の軍が何の援護もせずに静観していた、と言う事実が許されるものではないと判断した。なので、そのとき軍部で指揮をしていたというユウナに文句をいい、謝罪の言葉を聞くはずだったのが、なぜ自分が理念を、愛する父親が残した理念を冒したと問い詰められなければならないのか。
 自身の想定していた結果とは異なる現実に、カガリは対処できず、無意識に左薬指の指輪に手を触れた。
(ふ〜ん。あれが心の拠り所か)
 そんなカガリの所作を眺めながら、ユウナは呆れていた。
 日ごろあれだけ「オーブの理念、オーブの理念」と訴えているのに、ほんの少し情を感じた相手の危機に反応して自らがその理念を冒すということに目が向かない、と言うカガリの度量に呆れるしかなかった。
(これがアスハの業、かな?)
 前大戦時、ザフト軍から逃げていた地球軍艦を匿う事になった切欠も、なぜか搭乗していたカガリの口利きであり、ウズミもそれを容認した、という報告を受けていたユウナはそのような人情に走る姿勢が酷く薄っぺらな信念のように思えてしかたがなかった。
 それでも、その当時はストライクと言う一騎当千のMSの戦闘データやOS、アークエンジェル級戦艦の戦闘データ等を提供してもらい自国の防衛力を強化する、と言う政治的取引が行われていたのでウズミを批判しようとは思わないのだが、今回仮にミネルバに加勢をしたとして一体どのような恩恵を授かることが出来たというのだろうか。
 それなりのリスクを犯すのならば、それに見合った見返りはあるものだと考えるのは果たして間違っているのだろうか。
 それが一国を支える政治家の一人としてならばどうなのだろう。
 仮にミネルバに加勢したとしても、その後ミネルバがカーペンタリアに向かってしまったならばその後の地球軍の報復攻撃に耐え切ることが出来ず滅ぼされるか、ミネルバが残留したとしても圧倒的な戦力差に滅びるか、そのどれかしかなかったのではないだろうか。
 少なくともプラントの防衛に心血を注いでいるZAFT本部からの援軍は当てにできない状況で、カーペンタリアからも援軍が必ず来るという確証はなかったのだ。そのようなハイリスクを犯して得られるものがあやふやならば、必ず得られる、一時とはいえ平穏を選んだとしても誰が責められるというのだろうか。
 その一時の平穏の間に、地球軍を上手くやり過ごすことを考えればよい。
 なのに―
(なのに、その代表が感情のままに叫ぶのは本当にどうなんだろうか)
 嘆息しながらそう思うユウナだが、閣議の時に叫ばなかっただけでも成長はしたのか、と考えることにした。そうでもしなければ胃が痛くてしかたがない。
「それで、代表。私の判断に何か間違いがありましたでしょうか」
 恭しい態度で尋ねるが、カガリからしてみれば答えなど一つしかなかった。
 その答えを口にしない、と言うことは、父と、今日までの自分を否定することと同義なのだから。
 だから、カガリは心が悲鳴を上げるのを無視して答えた。
「……いや、何の問題もない」
 そう耐えなければならない。自分はカガリ・ユラ・アスハなのだから。
「双方の誤解が解けたようで大変うれしく思います」
 血を吐くような声で答えるカガリの内心を想像しながら、慇懃無礼な態度でユウナは大仰にそう答えた。
 その声を聞くかどうかで、カガリは何も言わずに去って行った。
 その後姿を見送り、これからのことを考えながらユウナは紅茶のお代わりを頼むのだった。


「いやはや。ZAFTの艦もがんばるね〜」
 オーブ領海外でのミネルバの戦闘データを眺めながら、ナギは率直な感想を口にした。
 艦の数でいえば二十倍以上、MSの総数も圧倒していたのに、それでもそれを切り抜くことが出来た相手に感嘆の拍手を送りたいと思うのはしかたがなかった。
 それとも、あの艦隊を指揮していたものがあまりにも無能すぎたのだろうか。
 そんなことを考えていると、自分の側近と言ってもよい男からの報告をしに来た。
「ナギ様」
「ん?なに?」
「は。オーブで動きがありました」
「オーブで?どんな動き?」
「はい。オーブ代表であるカガリ・ユラ・アスハと宰相の息子であるユウナ・ロマ・セイランとの婚礼が近々行われるとのことです」
「へ〜」
 最初その報告を興味なく聞いていたナギだが、結婚式と言う単語を聞いた瞬間口をネコのように歪めて笑みを浮かべながら尋ね返した。
「結婚?婚約発表ではなく、結婚式をやるの?このご時勢に?」
「はい。元々二人は婚約を結んでいたとかで。ですが、実際には、オーブの内部にあるアスハ派とセイラン派をという二派を一つにすることが目的なのではないでしょうか」
「だろうね。内憂外患な状況でいれるほど世界は優しくないからね。形だけでも自分たちは一枚岩だぞ、と見せなかったらそこを突かれるからね」
 結婚の動機をそう考えながら、ナギは楽しそうに笑みを深めるのだった。
 その様子を訝しく思ったのか、男はナギに尋ねた。
「ナギ様。なにをそのようにお楽しみになられておられるのですか?」
「ん?君はさ、オールドムービーの『卒業』って見たことがあるかい?」
「いえ。お恥ずかしながら見たことがありません」
「そう?まあ、ストーリーははしょるけどね、ラストシーンでね、花嫁が花婿以外の男に掻っ攫われてしまうんだよ。花嫁同意の下で」
「それが?」
「もし、もしだよ。そんなことが現実に、しかも一国家の代表の結婚式で起こったらどうなるだろうね〜」
 楽しげに語るナギの顔を見て、男は戦慄を覚えた。
 ナギの顔に浮かんでいた『無邪気な悪魔の笑み』に、人間味を感じられなかったからだ。
 その顔から視線を外すために、うつむきながら言葉を発した。
「……国家の代表の結婚式ですから、当然厳重な警備体制が敷かれているでしょう。その網を潜り抜け、一国家の代表をさらわれる、と言う醜態を演じてしまえば、当然国際社会での発言力の低下などは防げないのではないでしょうか」
「だよね〜。ま、普通ならそんな絵空事の展開は起こりえないんだけどね〜」
 ナギの言うとおり、一国家の代表の結婚式ともなればそれ相応の警備体制になって当たり前であり、そのような場所から花嫁を掻っ攫うなど普通の人間には不可能である。普通の人間には。
「ああ、そういえば。『新鮮な海の幸』ってまだ届けていなかったっけ?」
「はい。届けさせますか?」
「うん。お願い。英雄様と歌姫様にご馳走しなくちゃならないからね」
「わかりました。届け人はいかように?」
「そうだね〜。そうだ、『戦友』に任せようか。何人かいたよね」
「はい。ではそのようにいたします」
「うん。お願い」
 そういい下がる男から視線を外すと、ナギは机の上に投げ放たれていた資料に目を通した。
 そこには、紫水晶のような瞳を持った青年と桃色の髪の女性との写真が貼られており、二人の住んでいる場所や生活環境について書かれていた。
「さてさて。そろそろ猶予期間は終わりですよ、造られた英雄殿。君が最も輝ける世界に帰ってきなさい。そう、戦場と言う名の舞台にね。それが君に、君たちスーパーコーディネイターの存在意義なんだから」
 そう呟くと、もう一つの資料に目を通した。
 そこには、月の工廠にあるMS、カオスとアビスの改修状況と、自分が派遣したパイロットであるケーラのバイタルデータが記されていた。
 その報告書を眺めながら、ナギはある場所へと通話を繋げるのだった。
「ああ。僕だけど。そう。ドクターはいる?そう。ドクターヒビキ。彼にね、聞きたいことがあるんだよね」
 楽しそうな声でそう尋ねるナギの顔には、やはり悪魔のような嘲笑が張り付いていた。


 先のミネルバに関する討論から数日経った午後の静かなテラスで、表面上関係を修復したカガリとユウナは二人で静かにお茶を楽しんでいた。
 忙しい激務を何とかこなしたカガリを労う様に、ユウナがお茶に誘ったのだった。
 それに付き合う形でついてきたカガリは、出された英国式のアフタヌーンティーに感激しながら、ティースタンドに盛られているスコーンにジャムをたっぷりと塗り口にした瞬間、ユウナは爆弾発言をした。
「結婚しようか、カガリ」
 突然告げられた言葉に、口に入れていたスコーンを誤って気管に入れてしまい、咽ながらカガリはそんなふざけたことを口にしたユウナに睨みかかった。
 対面に座っていたユウナは、カガリから吹きかけられたスコーンのカスを払いながら、それでも真摯な瞳で見つめていた。
「……何をふざけているんだ?」
 その視線にひるみながら、カガリはユウナに当然の疑問をぶつけた。
「ん?なにが?婚約状態に我慢できなくなった婚約者が求婚しているだけじゃないか」
 さも当然のように答えるユウナに、カガリは鋭い視線を投げつけた。
 カガリ自身はこの婚約は破棄したいのだが、なぜかこのことになると叔父であるホムラを筆頭に、アスハゆかりの者たちが拒否反応を示し破棄させてくれずにいた。
 アスハとセイランの関係を知らないカガリからしてみれば不可解なことであるが、周りからしてみればその部分は妥協できないのであった。
 その事情を知らないカガリでも、相手であるユウナが自分との結婚に乗り気でないのが唯一の救いであったのだが、突然掌を返したように求婚してくると言う事実に、カガリは驚きよりも不信感を感じずにはいられなかった。
「ユウナ。お前が私との結婚に乗り気でない、と言うことはいくら鈍い私でも知っていることだ。そんなお前がどうしていきなり結婚しよう、なんて言を口にするんだ?」
 その質問に、ユウナは先ほどまで浮かべていた笑みを消し、真剣な表情で告げた。
「必要だからさ」
「………は?」
 その、あまりにも理解できない答えに、カガリは呆けたように口を開きユウナを見た。
 目の前の男は何を言っているんだ。
 結婚をする理由が「必要だから」だと?
 なんだそれは。なんなんだ!
「ユウナ、ふざけるのも大概にしろ!!」
「別にふざけてなんかいないさ」
 そんなカガリの激昂を、ユウナは慣れた様に聞き流しながら事実を話し始めた。
「カガリ。君も知っているだろう?今、オーブは大きく分けて二つの派閥がある、って言うことを」
「ああ。アスハ派とセイラン派というやつだろ。私の耳にも入っている」
「結構。まあ、そんな派閥が出来る、何ていうのは人が集まれば出来るのが自然な流れなんだけどね。これが平時、つまり戦争のない状況でならば無視してもかまわないのさ。お互いを刺激しあい成長すればいいんだからね。でも、今は平時ではない。いつ戦争と言う災時に巻き込まれても可笑しくない状況だ。そんな状況で、国の内部が互いにいがみ合うのは建設的ではないだろう?」
「ああ。だが、それと結婚がどう関係するというんだ」
「まだわからないかい?その二派の旗頭として見られているのが君と僕だっていうことさ」
「なに?旗頭はホムラ叔父とウナトではないのか?」
「二人とも高齢だよ。そんな二人よりも若い方に目が向くのはしかたがないさ。で、実際僕たち二人が旗頭に見られているんだよ。そんな二人が結婚したら、どうなると思う?」
「………おい。待て。もしかして、そんな理由でお前は私と結婚する気なのか?」
 何かに気がついたのか、慌てた声で問いかけるカガリにユウナは答えた。
「そう。君と僕が結婚することで、オーブの中の派閥を一つにまとめるのさ」
 実際にはそう簡単に纏まるわけはないだろうけどね、という内心の呟きを流し込むように紅茶を一口口にした。
 紅茶の味を楽しんでいるユウナをよそに、カガリは告げられた内容に愕然とした。
 そんなことのために結婚をしろと言うのか。
「そんなことをしなくても、互いに歩み寄れば!!」
「それが出来る猶予がないんだよ。今日までの間に溜めていたツケが一気に返ってきたんだよ。それを乗り切るには、国を挙げての結婚しかないのさ」
「だが!」
 ユウナの言うことも理解できる。
 だが、それでも結婚と言うものをそう安易に扱ってよいものなのだろうか。
 そう考えるカガリの思いを読み取ったのか、ユウナは驚いたように尋ねてきた。
「もしかして、カガリ。君、結婚になにか幻想めいた憧れでも持っている?」
「っ!悪いか!!」
 カガリも女の一人として、結婚には憧れを持っていた。
 どこかの小さな教会で、友人達に祝福されながら愛する男と式を挙げる。
 そのようなことを夢見るのはいけないことなのか、と噛み付くようにユウナに叫んだ。
 その叫びを聞き、ユウナは深く息を吐きながら答えた。
「はぁ。率直に言わせて貰うと、悪いよ」
「な?!」
「あのね。カガリ。君がただのカガリならばそんな夢を見る権利はあるさ。でもね。君は、オーブ首長国連合の代表であるカガリ・ユラ・アスハなんだよ。そんな君がそう簡単に惚れた男と婚姻を結べる、何て夢に思って良いわけないだろうに」
 その告げられた言葉に、カガリは愕然とした。
 何を言っているんだ、目の前の男は。
 ユウナの告げる言葉は、まるで遠い異星の言葉のようにカガリには聞こえていた。
 そんなカガリの様子を無視して、ユウナは言葉を続けた。
「どうして世の中に『政略結婚』なんていう言葉があると思うんだい?政治の世界ではね、結婚も一つの道具として扱われるからなんだよ。そんな政治の世界に身をおいておきながら、幸せな結婚、何てものを夢に見ていたのかい?それは甘すぎるよ。現実を見てなさすぎさ。そもそも、君は誰と結婚するつもりなんだい?首長たちが納得できるような経歴の男がいたのかい?」
 ユウナの問いかけに、今はプラントにいる自身の想い人の姿が脳裏に浮かんだ。
 だが、ユウナの指摘するものを考えると、自分の前に立ちはだかる壁の高さにめまいを覚えた。
 アスランかアレックス。まずどちらの名前で紹介すべきなのだ。
 それ以前に、経歴、身分、その他の問題をどうクリアすればよいというのだろうか。
 今まで無意識に目を逸らしていた問題を突きつけられ、カガリは虚脱感に襲われた。
 そんな時、ユウナの次の言葉が福音のように聞こえた。
「………まあ、自由に結婚できる方法はあるんだけどね」
「っ、それはなんだ!!!」
 身を乗り出し尋ねるカガリに、自分との結婚はそんなに嫌なのか、とどこか清清しくその態度に感心しながら、ユウナはその方法を口にした。
「ん。カガリ、オーブを捨てればいいんだよ」
「な?!」
 告げられたあまりの内容に、カガリは一瞬喉を詰まらせると、すぐに罵声をユウナに浴びせた。
「馬鹿なことを言うな!!そんなこと出来る訳ないだろう!!」
「そうかい?これが一番簡単な方法なんだけど」
「どこがだ!!」
「ん?だって問題点は、君が『オーブ首長国連合の代表』カガリ・ユラ・アスハだから自由に結婚できないんであって、君が『ただの』カガリ・ユラ・アスハなら誰と結婚しようが自由なんだよ」
 その場合少なくともアスハの名は捨ててもらうけどね、と言うユウナの言葉を耳にしながら、あまりのないようにカガリは言葉を失ってしまった。
 確かに、代表と言う役職がなければ、ただの女として女の幸せを得られるかもしれない。だが、それはオーブを裏切る、と言うことなのではないだろうか。
 そんなことを考え葛藤しているカガリを無視し、ユウナは話を進めた。
「ま、そんな夢物語は終わりにして。僕たちの結婚式は大西洋連合との条約調印式の前に行おう。そうすれば、国民意識も一つになれるからね」
 そう言うユウナの声もどこか遠くに聞こえていた。
「そうそう。君も知っているだろうけど、結婚の際には新婦は新郎側の家で結婚の準備をしないといけないことになってるんだから、そのように準備しておくれよ」
 ユウナの声がどこか遠くに聞こえる。
 どこか呆然としているカガリに、ユウナは近寄ると耳元で囁いた。
「結婚式当日まで、僕の家の門は開けておくよ。女の幸せを取るか、代表としての責務を負うか、よく考えるんだよ」
 そう囁くと、ユウナは静かにテラスから出て行った。
 残されたカガリは、一人静かに涙を流しながら、辛い現実から自分を救ってくれる存在を願った。
 その相手は誰なのかはカガリ自身にもわからなかった。
 だが、ただこう願った。
―力が、自由が欲しい―


「103、作戦開始はいつになりますか?」
「142、作戦開始は0400に開始する」
「165、ターゲットに関する資料は?」
「103、これがターゲットに関する資料です」
「152、お前たちは支給されたMSで待機。我々が失敗した場合は君が指揮を取り任務を遂行するんだ」
「103、資料にはナチュラルの方々が多くおられるということです。その方々を傷つけないようにするにはMSはあまりにも不向きでは?」
「172、お前の疑念ももっともだ。渡されたあの建物の見取り図によると、地下にシェルターがある。MS使用の場合は、そこに隠れたターゲットをあぶりだすように、最低出力の攻撃でシェルターに攻撃を加えるのだ。そうすれば、錯覚したコーディネイターがどこかから出てくるはずだ。それを見つけ始末すればよい」
「103、わかりました。確認しますが、ターゲットはこのコーディネイター三体ですね」
「186、その通りだ。情報ではその三体以外は善良なるナチュラルの方々のようだ。コーディネイターがナチュラルの方々を盾にする可能性もありえるので、そこを十分気をつけるように」
「103、わかりました。細心の注意を払います」
「では、諸君。行くぞ」
 そんな会話が、どこかで交わされていた。


 かつて『砂漠の虎』と呼ばれたアンドリュー・バルトフェルドは、その夜どうしても寝付けずにいた。
 家の周りから聞こえてくる虫の音を子守唄代わりに目ついたはずが、なぜか眠れずにいたのだった。
 眠りに落ちた、と思うと、かつて失った最愛の女性の顔が浮かび何かを訴えているのだった。それに驚き目を覚まし、寝なおす。
 そんな反復行為を何度も繰り返し、いつのまにか眠気がなくなってしまった。
「やれやれ。僕もそろそろ年かね」
 原因不明の不眠症に苦笑しながら、ならばそれに付き合うのも面白い、と考え特性のコーヒーを作ろうと立ち上がった瞬間、眠っていた戦士の勘に何かが触れるのを感じた。
 一瞬気のせいかと思ったが、すぐにその考えが間違っていることに気がついた。
 先ほどまで聞こえていた虫の音が聞こえなくなってしまったのだ。
 そのことに気がついたバルトフェルドは、すぐにマリューとキラ、その他大人の部屋に備え付けられている警報機のボタンを押し、非常事態を知らせるのだった。
 それを終えるとバルトフェルドは、自分のベッドを押し上げ、下に隠していた銃器を取り出し弾倉を装填した。
 それを終えると、唯一の男であるキラの部屋に駆け寄った。
「バルトフェルドさん。一体何が?」
 部屋から寝巻き姿で現われたキラに眉を顰めながら、銃を押し付けながら手短に用件を伝えた。
「わからん。だが、何かがおかしい。すぐに着替えてラクスたちのところへ。その後は訓練どおりにシェルターへ向かうんだ。いいな?」
「は、はい」
 頷くキラに一応の満足をすると、すぐに侵入者の確認をするべく足音を立てずに走り去った。
 この館は、元の持ち主の身分上、侵入者にも対処できるような造りになっており、二階に向かうには一つの道を通るしかないのだった。
 それを知っているバルトフェルドは、一階と二階を繋げる表向き唯一の階段へと走りよった。
「よう。どうだい、調子は?」
「あなたね……」
 途中で合流したマリュー・ラミアスに軽く声をかけると、どこか呆れた声で返事をされた。
 それを肩をすくめながらやり過ごすと、意識を戦場のそれへと切り替え一階に降り立った。
 すり足をしながら部屋の一つを覗く。
 普段どおりの部屋だったが、なにか違和感を感じずにはいられなかった。
 その違和感が何か考えていると、かつて嗅ぎ慣れた匂いが一瞬鼻についた。
 銃に差す油の匂いが。
「そこだ!」
 匂いの元と思われる場所へバルトフェルドは銃弾を叩き付けた。
 銃声が響くと同時に、侵入者の一人が倒れた。
 それを確認しようと思った瞬間、暗闇から複数の殺気を感じたバルトフェルドは、すぐに壁に隠れた。その瞬間、マシンガンの嵐が、バルトフェルドがいた空間を過ぎていった。
 それをやり過ごすと、バルトフェルドはマリューが用意した机を盾に、銃撃戦を開始するのだった。

「ラクス、それに皆。起きるんだ」
 キラの声に、全員が体を起こした。
「なあに」
「眠いよ」
 子供たちは、目を擦ったりしながら不平を垂れていた。
 ラクスも、何故キラがこんな時間に起こすのかわからないようで、すぐにこの状況が理解できないようだ。
「キラ?」
 何事かを聞こうとしたラクスは、別の人が自分の想い人の名を呼ぶことで遮られた。
 部屋のドアには、キラの母親であるカリダとマルキオ導師が立っており、二人は部屋に入ってきた。
 二人を見る限り、二人も現状を理解していないようだった。
 改めてラクスが尋ねようとした瞬間、激しい銃撃戦の音が聞こえてきた。
「きゃー」
「怖いよー」
 突然の銃撃戦の音に、子供たちが悲鳴を上げる。
「みんな、静かに。ラクスと母さん、それにマルキオ導師に付いてシェルターにいくんだ」
 キラはそう指示を出しながら、渡された銃の安全装置を解除するのだった。
 子供たちを黙らせながら、キラのそのような姿見て、言いようのない悲しさをラクスは感じずにはいられなかった。
「窓から離れて。シェルターへ急いで」
 殿を勤めるキラの声に従うように、ラクスたちは隠し通路からシェルターへと向かうのだった。


「ちぃ!ロートルには結構きついね!!」
 シェルターへとマリューを先に後退させ、襲撃者達の足止めをするべく銃弾を放つバルトフェルドは相手の力量に驚きを隠せなかった。
 相手の放つ正確な射撃をかわしながら、お返しとばかりに銃弾を放ち命を奪うが、突如不具合がバルトフェルドの銃に襲いかかった。
 排出する薬莢が詰まったのだ。
「ジャムったか!」
 そのことに驚き、予備の銃を構えようとした瞬間、襲撃者の一人がナイフ片手に飛び掛ってきた。
 それに慌てて回避するが、相手は恐るべきスピードで接近するとナイフをバルトフェルドの心臓に突き立てようとした。
「死ね」
「君がね」
 襲撃者の温度を感じさせない声に応えるようにそう呟いた瞬間、重厚な音が廊下に響いた。
 襲撃者の脇腹から、大量の血が流れ落ちその体が崩れ落ちると、そこには左手の代わりに硝煙を上げる銃を構えるバルトフェルドが立っていた。
「ふむ。左手が銃の男、なんて格好よいと思わないかね?」
 物言わぬ躯になった相手にそう軽口を叩くと、左手のカバーを被せると、大急ぎでシェルターへと向かうのだった。
 襲撃者はこれだけではない。そう勘が囁いていた。

 その勘を証明するかのように、バルトフェルドがシェルターの元に着くと、マリューが一人で銃撃戦を展開していた。その後方では、マルキオがシェルターの扉の暗証番号をインプットしていた。
 それを見ると、相手から奪ったマシンガンの弾丸を襲撃者達に叩き込み、その命を奪い取った。
「みんな無事のようだな」
 全員の無事を確認し、バルトフェルドは安堵の息をついた。
 その苦労に労うかのように、シェルターの硬い扉が開かれた。
 ラクスは子供たちを連れ入って行く。全員入り終ると、バルトフェルドは扉を閉めるためシステムに手を伸ばした。
 その瞬間、ハロが突如通常とは異なる機械音声を出し始めた。
 それに弾かれるように何かを感じたキラがシェルターの外に視線を向けると、通風孔に何かがあるのをコーディネイトされた視力が捉えた。
 通風孔から伸びていたのは銃だった。その狙いは、ラクスへと向けられていた。
「ラクスッ」
 それを察したキラは、すぐにラクスに飛び掛った。その瞬間、今までラクスの頭のあった場所を、銃弾が通過していった。
 それに弾かれるように、銃を持っていた二人は通風孔に銃弾を叩き込んだ。
 通風孔から流れ出る夥しい赤い水から、相手の絶命を確認するや、すぐにシェルターにロックをかけた。
 シェルターの扉が閉まると、皆一様に荒い息をついた。
 マリューはその場に座り込み、酸素を取り込むことに勤しんでいた。
「はあはあ・・・コーディネイターだわ」
 酸素を取り込む傍らで、マリューは襲撃者から感じた感触から掴んだ正体を口にした。
「ああ、それも素人じゃない。ちゃんと戦闘訓練を受けている連中だ」
 その言葉を肯定するように、どこか苦々しくバルトフェルドも同意を示した。
「ザフト軍、ということですか?」
 青い顔色でカリダは尋ねた。
「まだ分からんが・・・その可能性が高いだろう」
 そう答えるバルトフェルドの顔色も悪かった。
「でも・・・何故、ザフト軍が彼女を狙うの?」
「そこまでは分からんさ」
 マリューからの問いかけにもどこかお座なりに答えながら、バルトフェルドは視線をラクスへと向けた。
 それに触発されるように、みんなの視線がラクスに集中するが、そのラクスは泣く子供たちを慰めており、こちらの視線には気づいていないようだった。
 そんな折、強い地響きがシェルターを突如襲った。
「これは・・・?」
 マリューの悲鳴にも似た疑問の声がシェルター内に響き渡った。
「これは・・・まさかMSか?!」
 信じられない、と声を荒げるバルトフェルドに答えるように、地響きは激しさをました。
 どうやら襲撃者にはまだ仲間がいたようで、その仲間がMSを出してくるとは予想だにしていなかった。
「何が何機いるか分からんが、火力のありったけで狙われたらここも長くは持たんぞ!」
 そう叫びながら、バルトフェルドは悪態をついた。
「何か対抗する手段はないのですか?」
 そう問いかけるカリダにバルトフェルドを重々しく答えた。
「……1つだけ、ある」
 そう言うや、バルトフェルドはラクスのほうに目を向けた。
「……ラクス……鍵は、持っているな」
 その問いかけに、ラクスの顔に陰りがよぎった。いや、ラクスだけではない。子供たちを除いた全員の顔に力がなくなったのだ。
 そんなラクスを気にすることも無く、バルトフェルドは続けた。
「扉を開ける。仕方なかろう。それとも、今ここでみんな死んでやったほうがいいと思うか?」
「いえ、それは……」
 力なく響く声とは対象的に、キラの手を握るラクスの手に力が入る。
 そんなラクスの態度に、バルトフェルドは申し訳ない気持ちになるのだが、自分たちの置かれている状況を考えるとそれを許容する余裕がないのもまた確かであった。
 それらを踏まえてもう一度ラクスに催促の言葉をかけようとしたそのとき、ラクスの握る手を優しく包む者がいた。
「キラ……」
「貸して、僕が開けるから」
「えっ、いえ、でもこれは……」
 キラの言葉から逃げるように、ラクスは胸に抱くハロをきつく抱きしめた。
 それは、体全体を使いキラを、愛する者を戦場へとは行かせようとはしない、ただの女の姿だった。
 そんなラクスをキラは優しく抱きしめた。
「大丈夫。大丈夫だから……」
「でも……」
「このまま君たちのことも守れずに、そんなことになる方がずっと辛い」
「キラ」
 その言葉を聞き、ラクスの頬を涙がつたう。
 ああ、なぜこの人を自分は戦場へと送り出さなくてはならないのだろうか。
 ラクスは、運命と言うものに憤りを感じた。
「キラ………いいんだな?」
 どこか偽善めいた問いかけだと自覚しながら尋ねるバルトフェルドに、キラは無言で頷き、ラクスの胸から取ったハロを渡した。
 ハロの中から出た鍵を持ち、バルトフェルドは禁断の扉を開けることにした。
(まるで、ダンテの地獄門だね。いや、この場合はパンドラの箱かな)
 厳かに、重奏に開く扉を眺めながら、バルトフェルドはそんなことを考えた。
 扉の向こうにあるのは、果たして希望か、それとも―

―蒼い翼の自由が、再び空を舞う


 ソキウス・152は、リーダーである103からの通信が途絶した瞬間から、作戦を第二段階に移行させた。
 支給された、ZAFT軍の最新型MSであるアッシュを操りながら、シェルターがある場所に最低出力の攻撃を加えていた。
 その攻撃を加えながら、ソキウスである152はこの作戦の後に与えられる報酬に胸が知らずに踊っていた。
 彼らソキウスに与えられる報酬は、正規の市民IDと地球軍への任官賞であった。
 ソキウスである彼らには、ナチュラルに絶対服従と、ナチュラルのために働くことに喜びを感じるように造られたのだが、そんな彼らの安全性を疑問に思う声があり、その後の強化人間製作の成功の後、ソキウスシリーズは破棄されることになった。
 そのうちの何体かは逃げ、あるものはアマノミハシラに存在することになったが、それら以外の、当時肉体年齢などが幼かった三桁ナンバーのソキウス達はそのまま破棄される運命になっていた。
 だが、その情報をどこかで手に入れたナギによりソキウス達は彼のものとなり生きながらえることとなった。
 そのことに恩義を感じたソキウス達はナギのために働いた。
 その主が、自分たちのために、他のナチュラルの方々のために働く機会を与えてくださるという。
 それを成就させるために、ソキウス達は作戦を成功させるために活動する。
 だが、そんなソキウスたちの事情など知らない、とばかりに突如一体のMSが現われた。
 最新のMSの情報までを記憶しているそこからそれに該当する名前を、ソキウスの誰かが呟いた。
「フリーダム……」
 仄明るくなり始めている空に浮かぶそれは、存在してはいけないものだった。
 だが、ソキウス達はそんなことを気にせず、作戦の最大の障害になると判断し、攻撃を加えた。


 久しぶりに座るコックピットのシートの感触に、どこか懐かしさを感じながらキラは眼前に構えるMS達を見つめた。
 今まで見たことのないそれらは、かつて戦ったZAFTのMSに似ている意匠が感じられた。
「やっぱり、ZAFTが………」
 そう呟くと、キラは意識を集中させあの領域へと触れた。
 頭の中で何かが割れるのを感じると同時に、自分の体がフリーダムと一体になったような万能感を感じながら敵MSへと斬りかかった。
 相手の打ち出すビームとミサイルを全て回避し、最高速で間合いを詰めると相手の戦闘力を奪うためにサーベルで四肢を斬り捨てる。
 それを終えると接近戦を仕掛けてきた敵を避けるように上空に飛び、ライフルを構えすぐに相手の四肢へと向けて放つ。
 相手の命を奪わずに、武器だけを、機動力だけを奪うという、崇高で、傲慢な行為を行った。
 腰のレールガンで足を撃ち抜く。
 バラエーナでまとめて腕を吹き飛ばす。
「もう、やめてよね……」
 そう呟くキラの言葉を無視するように、最後の一体が最大加速で掛かってきた。
 それをキラはシールドで防ぎ、そのままMSを持ち上げ投げるという暴挙を行った。
 数十トンもあるMSを持ち上げるという行為もそれなら、それを投げ放つと言う行為も常識の範疇外であった。
 投げられたMSのパイロットに掛かる衝撃はどれほどなのだろうか。
 投げられどこか不具合を起こしたのか、緩慢な動作で立ち上がる相手に、キラは冷酷にビームを放った。
 右手を吹き飛ばす。
 それでも前進する。
 左手を吹き飛ばす。
 踏鞴を踏むも、前進を敢行する。
 両足を吹き飛ばす。
 倒れふすも、バーニアを吹かし掛かって来ようとする。
 バーニアを壊す。
 それで初めて相手の行動は止まった。
 その様子を見て、キラは不毛な結果だと思わずにはいられなかった。

(………作戦失敗)
 朦朧とする意識の中、152は自分たちの作戦が失敗したことを認めた。
 そして、それと同時に、ナチュラルの、ナギ様の役に立てなかった道具である自分たちに、これ以降価値があるだろうかと考えた。
 考えた結果、ないと判断した152は、最後の奉公として自分たちの情報を相手に残さないように自爆装置に手をかけた。
 他の仲間達も自分と同じ行動を取る、と確信しながら、152は自分をここまで弄った相手がこれから多くのナチュラルの方々を殺すのかと思うと悔しく感じながら炎に飲み込まれた。

 目の前でコックピットを中心に爆発する機体達を見つめながら、キラは言いようの無い悲しさを感じた。
 何故彼らは助かった命を自分から捨てるのだろうか。
 機密保持、と言う言葉の意味を書物などの知識でしか知らないキラはその行為が無駄にしか思えなかった。
「トリィ」
 そんなキラの心を慰めるように、いつの間にか潜り込んでいたトリィが擦り寄ってきた。
 その姿を見つめながら、これを送ってくれた幼馴染へと思いを馳せた。
 彼は今何をしているのだろうか。
 そう物思いにふけ佇むフリーダムの足元に、ラクスたちが歩み寄ってくるのを確認しながらキラは海から上る朝日を見つめるのだった。


―おまけ―
「え?今回も俺の出番なしかよ!!」
 カーペンタリアの工廠で、技術者達とGイーグルの機能検証をしている某S・Aがそう叫んだとか叫ばなかったとか。


―中書き―
 一気に寒くなり、毛布を出そうかと悩んでいるANDYです。
 敬愛する石川賢氏の訃報がとてもショックです。氏のご冥福をお祈りいたします。ゲッターサーガ、未完ですね……

 そして、やっぱりコードギアスはすごく面白いですね。
 皇帝のあの理屈、あまりにも凄いです。十歳になるかどうかのルルでは腰を抜かしますわ。
 そして、至る所で春の匂いがすると思えば、コーネリアとの格の差を見せられての惨敗。
 ああ、いいな〜。あのへこまされ方に、極限状態に陥りながらも打開策を模索する泥臭い足掻き。ルルーシュはとてもよい主人公だと思いました。

 さて、今回はついに復活してしまいました。
 個人的には、色々と突っ込みたかった回ですね。
 原作でも結局襲撃犯の黒幕は明言されていませんでしたので(その後の公式サイトの補足説明とかは無視していますのでw)、アストレイの方からソキウス君たちに登場してもらいました。
 全体数は知りません彼らですが、アマノミハシラや、社会に溶け込んでいるということになっているので、誰かの子飼いの兵として存在してもよいのではとおもいこのように使いました。
 三桁ナンバーは某死神漫画を参考にさせてもらいました。(ちょび髭の男は色々な作品に共通して強いと思うのは私だけでしょうか)
 さて、結婚式イベントも目前ですね。
 どのようになるのでしょうかね。

 では、恒例のレス返しを

>航空戦艦『琴瀬』様
 感想ありがとうございます。
 パパさんは、愛ゆえにあそこまで狂ってしまった、と考えますのであのような態度もOKではないでしょうか。
 催眠学習は議長は行ってはいませんよw
 カガリは……どうなるんでしょうね。
 これからも応援お願いいたします。

>彼方様
 感想ありがとうございます。
 気に入っていただけたようで、大変うれしくおもいます。
 これからも応援お願いいたします。

>ユキカズ様
 感想ありがとうございます。
 自問自答をするということは、それだけ真剣に考えた結果だと思います。
 アスランの蝙蝠ですが、彼の事情を知らない他人から見れば日和見主義の蝙蝠に見えてしまうのではないでしょうか。
 情報源ですが、手持ちにその号がないので暇を見つけたときに漫画喫茶か古本屋で確認をして見たいと思います。
 ですが、この作品では私の設定でいくことをお許しを。
 これからも応援お願いいたします。

>なまけもの様
 感想ありがとうございます。
 故人の励ましの言葉ほど熱いものはない、と思うのでこうなりました。
 サトーさんの最後を聞いたら、ホッとするのではないでしょうか。光を見つけて逝けた事に。
 CCは、いけない娘だと思いますw
 男の前でああも無防備に服を脱ぐなんて、恥らう仕草がいいんではないか!!
 まあ、彼女の設定も何か面白そうですよね。多重人格っぽくて。
 ナナリー、幼い頃の姿がとても痛々しい。がんばれ。
 若本さんの声、嵌りすぎで怖いですね。あんな声で恫喝されたら………(ガクガクガク)
 これからも応援お願いいたします。

>ATK51様
 感想ありがとうございます。
 ご指摘の通り、お約束な選択になってしまいました。
 確かに、「自身の掲げる考えばかりを刷り込んでさえいれば完全OKなのか?」と聞かれれば、答えに窮しますが、それでも自分の中の指針を固める意味ではこのような選択もありなのではないでしょうか。
 自分の掲げる正義を通そうと思えば、いつかその正義と真っ向からぶつかる正義にあたり、それを淘汰するかされるか、それとも共存するか、新たな正義を見つけるか、そんな試練を受けながらよりよいものが生まれていくのではないでしょうか。
 完全な正解など、数学の世界にしかないのではないでしょうか。
 天動説と地動説。これらがぶつかり合うことで天文学は発展したのもまた事実。
 その考えに誇りを持っているかどうかがやはり大事ではないでしょうか。
 私の大好きな台詞にこんなのがあります。
「善でも!悪でも!最後まで貫き通した信念に偽りなどは何一つない!!
 もしキミが自分を偽善と疑うならば戦い続けろ武藤カズキ! 」
 ブラボーな人の言葉です。TVで聞いても良い台詞だと思います。
 ご指摘の件も考慮しながら、アスラン、そしてシンも苦悩しながら活躍させたいと思います。

 某SRWOGのその回ですが、ちょっとリュウセイの精神年齢が低すぎるように感じたのは愛好者ゆえでしょうか。
 ガンダムじゃなくても、彼の好きなスパロボ系でもそういうエピソードはありそうなのに。

 MSですが、宇宙世紀ではミノフスキー粒子が活躍し、レーダ系の不具合や核融合炉の誕生などの裏打ちされる説明がありましたからね。
 リアル系ならば、やはり説明力は必要ではないでしょうか?

 これからも応援お願いいたします。

>御神様
 感想ありがとうございます。
 アスランはこれからどのような道を歩むんでしょうか。
 平坦な道ではないのは確かです。
 これからも応援お願いいたします。

>Kuriken様
 感想ありがとうございます。
 アスランの複隊の動機付けにこのようにしました。
 やはり、一度抜けた軍に戻るのですから、これぐらいの心構えは持つべきだと思いました。
 上にも掲げたブラボーの言葉のように、自分の正義を貫いて欲しいです。
 間違っていればいつか止める者が出るのですから。
 これからも応援お願いいたします。

>戒様
 感想ありがとうございます。
 アスランの苦悩、気に入っていただけたようで安心です。
 このような経験を踏まえたアスランに出会えば、シンは驚くのではないでしょうか。
 隊長と呼んで慕うかな?
 これからも応援お願いいたします。

 さて、めっきり寒くなってきました。
 皆様体調にはお気をつけてください。
 では、また次回。

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭

PCpylg}Wz O~yz Yahoo yV NTT-X Store

z[y[W NWbgJ[h COiq [ COsI COze