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「狩人の世界に現れし福音者達  第54話(エヴァ+HUNTER×HUNTER)」

ルイス (2007-01-10 23:44)
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 マコトはリツコ達と合流する為、車のある所まで走っていた。突如、幾つにも増えたビル群。明らかに、敵を警戒する為のものであり、リツコの指示で、その場から離れようとする。

「!?」

 しかし、突如、自分の影が大きく広がった事に気付いた。ソレと同時にマコトは後ろに跳ぶ。すると影の中から3人の男女が出て来た。

「黙示録か……!」

「お兄さん、人ん家覗き見して何するの〜?」

 ギターを鳴らしながら問いかけるイスラーム。マコトはリツコ達に連絡しようとしたが、流石にそんな暇は与えてくれそうに無い。マコトは、拳銃に手を添えて、3人を警戒する。

 レインが、スッとポケットから手を出そうとすると、イスラームが制した。

「やめとけ坊主。このお兄ちゃんの始末は俺様がしてやんよ」

「……………」

「ミストも手ぇ出すなよ〜」

 無言でマコトを攻撃しようとしたミストにも牽制し、ギターを鳴らすイスラーム。彼は2人が手を出さないよう注意し、マコトの方に向かって歩く。

「一人で相手する気かい?」

 マコトは後ろに下がりながら、イスラームに問いかけると、彼はニッコリと笑って頷いた。

「可愛い弟分と妹分には、なるべく汚れ役をさせたくない年寄りのお節介だよ」

「テロリストが何を……!」

「そりゃそうだ。この2人だって常識的に見れば人殺しと変わらない。けど、俺様、一応、こいつ等の教育係だから♪」

 弦を激しく鳴らし、歩く。マコトは表情を苦くし、イスラームを睨む。

「(せめて能力を使ってくれたら……)」

 一人だけ、というのが救いだった。一人なら上手くいけば逃げ切れるかもしれない。そして、このまま戦闘になるなら、能力を使ってくれれば、より有利に状況を進められる。

 マコトの能力“全てを見透かす眼力【サーチグラス】”は、相手の念能力を先に見ることで愛用の眼鏡により、その能力がどのようなものか分析するもので、また長時間見続ける事により、相手の能力のリスクまでも知る事が出来る。

 マコトは、先に相手の能力を見ようと距離を開ける。すると彼の目の前で信じられない事が起こった。

「これは……!」

 ギターを弾きながら静かに歩み寄って来るイスラーム。その彼の姿が2人、3人、4人と次々と増えて行った。

「な……!?」

「“多人数の独り舞台【オンステージ】”」

 10人に増えたイスラームは、一人を残し、ギターから刀を抜いてマコトに襲い掛かって行った。

「くっ!」

 マコトはとりあえず銃で一人を撃ち抜く。しかし、撃ち抜かれたイスラームは、瞬時に穴が塞がった。それには驚かず、マコトは逃げ回りながら相手の能力を分析していた。

「(具現化した自分を遠隔操作する高等技術……分身は、ほぼ不死身。けれど、その分、能力のリスクの高さを示している……アレか)」

 マコトはギターを弾き続けているイスラームを見る。恐らく彼の能力は、彼がギターを弾いている間しか発動しない。ギターを弾いている間、分身が物理的な攻撃でやられる事は無い。しかし、それは本体が完全に無防備、という事だ。

「(けれど、そのリスクは向こうも承知か!)」

 本来、念で作った分身は、普段の自分をイメージする為、怪我や汚れなどは再現するには、かなりのリアルなイメージが必要になる為、まず無理である。

 しかし、イスラームの能力は、リスクや弱点など相手にモロバレだが、ほぼ不死身の分身体を複雑な遠隔操作で行う事が出来るものだった。

「(俺の能力は、殆ど役に立たないな……)」

 相手の念能力を分析するマコトの能力だが、全てを曝け出しているイスラームには、効果は薄い。苦笑いを浮かべ、眼鏡を外して、捨てた。

「なら!」

 マコトは両手に銃を持って、襲い来る分身体に向かって乱射する。が、当然、傷は塞がって行くが、その間、分身の動きは止まる。そして、狙いをイスラーム本人に向け、引鉄を引こうとした。

 しかし、次の瞬間、マコトの胸を何かが貫いた。

「な……!?」

 視線を下げると、いつの間にか刀が彼の胸を貫いていた。信じられなかった。分身は10体、全てに弾丸を撃ち込んで動きを止めておいた筈だった。イスラームの方を見る。彼は、いつの間にか演奏を止め、自分の刀を投げ、マコトの胸を貫いていた。

「残念だったな、お兄さん。分身の本来の役割は囮だよ」

 相手が不死身の分身を足止めし、ほぼ無防備な本体に攻撃して来る事などイスラームにはお見通しだった。なら、分身に攻撃している瞬間に、本体で攻撃する。

 イスラームは、膝を突き、血を吐くマコトにゆっくりと歩み寄り、刀を引き抜いた。そして彼は再びギターを弾き、分身を生み出す。分身体は、刀の切っ先をマコトに突きつけた。

「ぐ……!」

「何か言い残す事はあるかい?」

「は……テロリストが情けをかけるのかい?」

「いや……」

 イスラームは手を高く上げ、一気に振り下ろして強い音を鳴らす。すると、分身体は次々と、マコトに向かって刀を突き刺した。胴、手足、喉、頭……あらゆる部位を突き刺されたマコトは、糸の切れた人形のように倒れ、雨水に混じって血の海に沈む。

「俺様が出来んのは、葬送曲を奏でてやるぐらいさ……あの世の土産にしてくれや」

 マコトの返り血を浴びながら、イスラームは目を閉じて静かな曲を弾いた。


「遅いな……」

 廃ビル群の外れに停めてある車の中で、カジは未だに戻って来ないマコトに対し、ハンドルを指で叩いた。その後ろの席では、リツコとマヤも心配な表情を浮かべている。

「もしかして……誰かに見つかったんじゃ……」

「その可能性は高いわね。一人ならともかく複数なら逃げ切るのも無理かも……」

「そんな・・・わ、私探して来ます!」

「いや、俺が行こう」

 車から出ようとしたマヤだったが、カジが制し、彼が出た。

「カジ君……」

「心配するな。見つかるようなヘマはしない……ただ1時間以上待って、俺が帰らない時は、先にカツラギと合流してくれ」

「…………分かったわ」

 正直、この3人で戦闘技術に最も長けているのは彼だ。もし見つかったとしても、逃げ切れる可能性が一番高い。リツコは、自分も行こうと考えたが、彼の意見に素直に従った。


「(何かが昨日と違う……!?)」

 見張り役に旅団と黙示録のアジトに来たキルア、レイ、カヲルは、昨日と違う目の前の光景に眉を顰める。

「場所が違う? いや、そんなハズはない……!! まさか……建物が増えてる!?」

 信じられない光景に、3人は増えているビル群に近寄る。

「間違いない……昨日は確か広い道だった。明らかに、昨日は無かった建物で密集している!」

「念能力……だね」

 ビルを不敵に見上げ、カヲルが呟く。

 これは明らかに念で具現化されたもので、どのような罠が仕掛けてあるか分からない、とカヲルが釘を刺す。ふとその時、レイが何か気付いて、その場から離れるが、2人は気付かずに話を進める。

「けど、これって連中がまだ此処をアジトにしてるって証拠だよな?」

「うん。さて、どうしたものか……下手に動いて見つかるのは勘弁して欲しいしね」

 とは言え、建物が密集し過ぎていて全体の二割程度しか把握出来ないのも問題だった。

「そうだよな〜……今だって背後から奴等の声がしたらって考えると心臓バクバクだからな……」

「はは……それは僕も同じ……ん? 声に心臓?」

「? カヲル?」

 ふとカヲルは何かを思いついたように薄っすらと笑うと携帯を取り出し、何処かに電話をかける。

「もしもし、センリツ?」

<カヲル? どうかしたの?>

「ああ、ちょっとね……そっちはどう?」

<買い物だけど、ある意味ボディガードより大変よ。バショウとヴェーゼはブチ切れ寸前>

「ははは。あのお嬢様らしい……実はね」

「2人とも……!」

 カヲルの電話を聞いていたキルアだったが、ふとレイに呼ばれた。キルアは何かと思い、レイの声がした所へ向かう。レイは、ビルの間で呆然と立ち尽くしていた。そして、キルアはそこにあったものを見て大きく目を見開いた。

「ん? レイ、どうし……!?」

 そこへ、電話を終えたカヲルもやって来て、絶句する。そこには、青年の死体が一つ……無残にも横たわっていた。レイは、その死体の名前を思わず呟いてしまう。

「ヒュウガさん……」

「? 知り合い?」

「ああ。さっき話しただろ? 僕らと同盟を結んでいる人の一人さ」

 憂いを帯びた瞳で、カヲルはゆっくりとマコトの目蓋を下ろしてやった。

「その中の一人が、こうしてやられてるって事は……俺達もバレてる!?」

 3人は表情を変えると、背中を合わせて周囲を警戒し出した。すると、雨音とは別にパシャン、と水の跳ねる音がした。3人が表情を厳しくし、音のした方を睨む。

「ん?」

 ふとビルの角から、男性が一人、顔を覗かせた。

「カジさん?」

「君達か……」

 現れたのはカジだった。カヲルとレイは、カジだという事で、つい警戒を解いた。キルアは、未だ警戒を解いていないが、カジはマコトの死体を見て、大きく目を見開いた。

「これは……! ヒュウガ君!?」

「僕らが来た時には既に……」

 マコトの死体を抱えるカジ。安らかに眠っているマコトに、唇を噛み締める。死体のあちこちには、刃物で突き刺された跡があり、大量の血が流れ出てしまっていた。

「カツラギ……悲しむだろうな」

 ミサトは、マコトが新人の頃から目をかけていた後輩だった。NERVE社に入り、新米だったマコトを教育して来たのは彼女だ。戦闘技術から戦術の練り方などを教え込んで来た。いずれ彼女は、マコトを第一戦闘局新人育成顧問を引き継いで、自分の後釜にするつもりだったのだろう。

 その後輩が、余りにも無惨な姿となってしまい、彼女に伝える事はカジには些か辛かった。その時、ふと彼は地面にマコトの眼鏡が落ちているのに気が付いた。

「これは……」

 カジは、眼鏡を拾い、ジッと見つめると、やがて笑みを浮かべてマコトを見る。

「なるほど……これが君の形見、か」

 カジは眼鏡をかけると、視界が多少、歪むが何とか我慢し、マコトの死体を抱えて立ち上がった。

「君の意志……しっかりと受け取ったよ」


「終わったぜ〜」

 その頃、アジトの中では、イスラーム、レイン、ミストの3人が戻って来た。

「あん?」

 が、そこで陽気な笑顔だったイスラームは、表情を一変させた。何故か幻影旅団のクロロ、ノブナガ、コルトピ、マチ、シズク、パクノダの6人がいたからだった。

「何やってんの?」

「さぁ? 今、来られたばかりですから……」

 イスラームが怪訝な表情でシフに尋ねるが、彼も肩を竦める。クロロは、瓦礫に腰掛けているシンジを見下ろして話をする。

「鎖野郎の居所が分かった」

「…………へぇ。それで?」

「影を使って長距離移動できる能力者がいるだろう? 力を借りたい」

「…………ミスト」

 シンジは、帰って来たばかりのミストに話しかける。が、彼女は首を横に振った。

「濡れたから……シャワー浴びたい」

「だ、そうで彼女は拒否してるよ」

 笑顔でやんわりと断るシンジ。ノブナガは、その返答に青筋を浮かべ、ミストを睨み付ける。

「そうか……早く着けば、それに越した事は無かったんだがな……行くぞ」

 クロロはフッと笑い、部屋から出て行くと、他の旅団員も揃って出て行く。

「ユーテラス、ウィップ、マギ」

「あん?」

 旅団員が出て行くのを見計らい、シンジが3人に話しかける。

「旅団を追う」

「え? マジ?」

「あっちから鎖野郎にアプローチをかけるなら、待ち伏せする意味が無くなる。なら、こっちから仕掛ける」

「「っしゃあ!!」」

 パァン、とスカイとマギが声を張り上げ、ハイタッチする。

「出来んの、マスター?」

 すると、誰よりも高い瓦礫に腰掛けているアクアが、頬杖を突いてシンジに問う。彼女は不敵な笑みを浮かべ、皆が視線を彼女へ集める。

「ちゃんと殺せるの? あの子達を?」

「おい、アクア」

 ライテイが制止するが、彼女は更に続ける。

「私達がマスターに付いて行ってるのは、マスターが大切なものを絶対に護ろうとする強い意志があるから。私達は、大切なものの為なら、世界中の全てを壊す事も厭わないからこそ此処にこうしている。そして、今からマスターが殺そうとしているのは、昔とはいえ、大切に思っていた連中なんでしょ? 本当の本当に……戸惑いなくやれるの?」

「アクア!」

 スカイが怒鳴って今にも彼女に向かって飛び掛ろうとした時だった。彼の腕をシンジが掴んで止めた。

「マスター?」

「アクア……」

 シンジは表情を見せないようにして彼女に語りかける。

「君は僕と一番付き合いが長いからね……君の言いたい事は分かってるよ。もし僕が3人を殺せない、という事は、君達の信頼を裏切る事になる……そう言いたいんだろ?」

「………………」

「これは一つのケジメだよ……過去を……未練を断ち切る、ね」

 そう言って、シンジは部屋から出て行った。マギ、ユーテラス、ウィップ、スカイ、ウチルもその後に続く。

 6人が出て行くと、アクアは「くっくっく……」と笑みを漏らした。

「アクア……言い過ぎだよ」

「だって、これからマスターがやりに行く相手は、赤の他人じゃないのよ。マスターが、ずっと求めていた連中なんだから」

「求めていた?」

 アクアの言葉に、ミストが首を傾げるとライテイが言った。

「オレらはマスターの駒だ。命令があれば、素直にソレに従う。オレらは、その上でアイツを慕ってる……」

「けどマスターが本当に求めているのは、駒じゃ無いのさ」

 ライテイの説明を、マインドが引き継いだ。

「あの人が欲しかったもの……それは肩を並べて同じものを目指せる戦友。私達のように、マスターを慕って、従う大きな理由のある人間には無理な事さ」

 シンジにとってソレはクロロが最も近いものだったのだろう。だからこそ2人は妙に気が合っている。

「私達はマスターの意志に共感している。けれど、分かるだろう? あの人の大きさと、この世界に対する憎しみと絶望、そして虚無感は私達の誰よりも深い。そんなマスターと肩を並べる事が出来るのは……あの人の言う『審判の日』とやらを知る例の3人なんだろうね」

「ソレを知ってて未だにマスターに付いて行ってる俺様達も酔狂というか……健気だねぇ〜」

 何処か楽しそうにギターを弾きながらイスラームが呟くと、マインドはやんわりと微笑んだ。

「あの人は、10年以上……ずっと望んでいるものを我慢しながらも耐えてきた。けれど、求めていたものには拒絶される予言があった……なら、私達が少しでも支えになれれば、それで良いと思う」

 マインドの言葉に、シフ、ライテイ、イスラーム、レイン、そしてミストは頷いた。それを見て、アクアはヤレヤレと肩を竦め、マルクトはフゥと息を吐いた。

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