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▽レス始

「.hack//Splash login_11(黄昏の腕輪伝説+.hackシリーズ)」

箱庭廻 (2006-12-20 02:10/2006-12-20 21:13)
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【リアル】


 今日は七月六日。

 私、国崎怜奈は机の上の宿題から目を逸らして、窓の外を見上げていた。

「はぁ……」

 めんどうくさい。

 つまんない。

 その言葉だけで頭の中が一杯。

「……お兄ちゃんどうしてるかなぁ」

 つい半年前までずっと一緒だった双子の兄を想う。

 テスト期間だという理由でここ最近ザ・ワールドにもログインしていないらしい。

 明日にはもう終わるとか言ってたけど、退屈だ。

「ふぅ……」

 ぼんやりと空を見上げてみる。

 二階の窓から見える景色は障害物もなく視界全てが空で埋め尽くされている。

 雲は無く、月だけが見える真っ暗い空。

 空気が汚れて、星も見えないお空。

「……そういえば、明日って七夕だっけ」

 ミレイユたちに誘われていたイベントの日付を思い出し、私はためいきをついた。

 まるで私は織姫のようだ。

 会えない大切な人を思うお姫様……っていうのはちょっと洒落過ぎてるかな?

「さっさと済ませよ」

 私は窓にカーテンを引き直し、宿題に取り掛かった。


【.hack//Splash】
   login_11 波乱はゆっくりとやってくる


【リアル】


 七月 七日。

 この日の2−A組の教室は俺にとって決闘場と化していた。

「ぬぉおおおおおおおお!!」

 全身に気合を溜めて、俺は構える。

「ふふうぅうううううううううう!!」

 目の前の宿敵もまた油断ならない構えで、俺を睨み付けた。

 お互いに隣同士の席。

 給食があれば早食いを競い、昼休みとなれば足を競い、掃除とあれば共謀して逃げ出し、下校とあればお互いのカバンを賭けて手と手をグー・チョキ・パーで交える宿敵。

 いわゆる強敵と書いて宿敵と呼ぶべきにっくき敵。

 この俺、国崎秀悟と小宮山の戦いは長きに渡って続いていた。

 その決着を今ここで付ける!!!

「行くぞ!」

「応!」

 お互いに声を上げ、全力で――

 突き出す!!



「――68点!!!」

「――75点!!」


 ガビンッ!!?

「しゃあっ! 英悟で勝ったぞ!!」

「な、なんだと!?」

 ま、負けただと。 ソンナ馬鹿ナ!!?

「きっしっし、これで四勝三敗! 俺の勝ちだな、国崎秀悟!!」

「くっ、国語で60点しか取れなかった馬鹿に負けるとは……」

 ガクリと絶望に打ちのめされて、オレは膝を着いた。

 ちなみに俺の国語の点数は79だったりする。

「ぬははははは、自慢じゃないが英悟はまだ得意なのだよ。馬鹿国崎」

「くっ!」

「これで来週の貴様の給食のデザードはオレのものなのだ〜、きっしっしっしっし!」

 敗北だ。

 もうどうしょうもないぐらいの敗北だ。

 さようなら、俺のデザート。

 マイ・スイートハート……

「おーい」

「ん?」

「なんだ?」

 何故かその時、クラスメイトの一人が声を掛けてきた。

 ちょいちょいと指で、俺たちの後ろを指している。

「んん?」

 二人で振り返る。

 そこには。

 ――鬼がいた。


「席に着かんか!! 馬鹿者!!!」


 スパンッ!

 次の瞬間、俺と小宮山のドタマに担任の出席簿アタックが決まったのは言うまでも無い。


 やっと痛みが取れてきたのは、HRが終わった放課後のことだった。

「ご、ごげふふぁ〜……」

「なんだ。その謎の奇声?」

 通りすがりのクラスメイトに突っ込まれ、俺は間髪入れずに言い返した。

「心境風景」

 そうか、とどこか冷たい目であしらうクラスメイトの態度に涙しつつ、俺は手に持った箒を動かした。

 現在、放課後掃除の真っ最中。

 折角テスト返しで早く帰れるっていうのに、掃除当番というのは最低についてない。

 早く済ませて、ザ・ワールドやるか。

 今日がテスト最終日でプレイ出来るってことで、約束してるし。

 かなり適当気味に箒とちり取りを動かして教室の埃を片付ける。

「おーい、国崎〜」

 同じく掃除当番のクラスメイトから声が掛かった。

「なんだ?」

「カレンダー取替えといてくれ。まだ六月のまんまだから」

 そういって、クラスメイトが指差したのは教室の隅にあるカレンダー。

 そこに移っている日付は確かに六月だった。

「えー、お前がやれよ」

「俺ゴミ出しにいかないといけないんだが、なんなら交換するか?」

 そういって突き出してくるゴミ袋に、俺は全力で首を振った。

 横に。

「いや、俺がカレンダーを交換する!」

「じゃ、よろしく〜」

 サンタかどろぼうよろしくゴミ袋を担いで去っていくクラスメイトを見送りつつ、俺はカレンダーの近くまで歩いていった。

 そのままベリッと六月分の表紙を引き剥がす。

「そういや、もう七月か……」

 剥がした紙の向こう側から現れた七月のカレンダーに、そういえばと思い出す。

 そして、ふと今日の日付を見ると、そこには【七夕】と記載されていた。

「……七夕、か」

 その言葉に、誰もが知っている七夕の伝説を思い出す。

(たしか……一年に一回しか会えないお姫様と貧相な男の伝説だったっけ?)

 そういったら、怜奈の奴怒ってたなぁ。

 デリカシーがない! って。

 でも、それももう聞けないんだよなぁ。

「……はぁ」

 つい半年前まで一緒に居た妹との記憶を回想しつつ、俺は掃除を再開しようとして。

「――まてよ」

 不意に、“とあることを思いついた”。

「幾ら残ってたけかな?」

 手探りでポケットの財布を探り、その金額を確かめる。

 大体数千円程度は残っているようだった。先月、好きな漫画とかが出てないのがよかった。

 これならいける。

「いけるぞぉ……」

 計画の成功を確信して、俺はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


 そして、その数十秒後戻ってきたクラスメイトにキモいと言われて、俺は落ち込んだ。


【Δ 清浄なる 大空の 輝き】


 きらきらと輝く夜空の真下。

 ゲームとは思えない美しい夜空と緑一色に広がった草原の下。

 ここは【Δ 清浄なる 大空の 輝き】。ザ・ワールドでも観光……といっていいのかな? イベント用に作られ、モンスターが発生しない特殊なエリアだ。

 そこでミレイユから借りた特製の衣装を纏った私たちは、とある遅刻者を待っていた。

「来ないね〜」

「来ないな」

「遅いデス」

「事情があるんだよ、きっと」

「しばらくすれば、くるだろう」

「もうー、なにやってんのよ、あの馬鹿兄貴!!」

 苛立ちに任せて、がーと腕を突き上げていると。

「おーい、お待たせー」

 空気を読まずに、能天気にやってくる馬鹿兄貴が一匹。

「いやあ、悪い悪い。ちょっと学校掃除が立て込んでさぁ……ってどしたの? その格――」

 メキョシッ!

 シューゴの顔面に突き刺さるは、私の鉄拳。

「あー、痛そ」

 ミレイユのコメントを聞きながら、顔面を押さえて悶えているシューゴの襟首を掴む。

 重剣士の腕力だと、片手で引き起こせた。

「おにーちゃん♪」

「な、なんでしょうか?」

「なんで三十分も遅れて来るのかなぁ♪」

 にっこりと出来るだけ笑みを浮かべて訊ねた。

 もちろん含むことなんてない。ただ純粋に理由を聞きたかっただけ。

 でも、なんでそんなに怯えた顔つきをしているの? シューゴ♪

「いや、あの、本当に学校がたて込みましてね、いや、ほら、俺ってば真面目だから、学校掃除も出来るだけ隅々までやっちゃおうかな〜なんて気になったりなんかしたり、つうか許してくださいレナ様!!!」

「どうしょっかな〜?」

「……その辺にしておいてやれ、レナ」

「はーい」

 凰花の言葉に、私は兄をからかうのをやめることにする。

 実際怒っていることは怒っているが、それも最初の一発殴って気が晴れている。後のは、今後の教訓も兼ねた説教のつもりだった。

「うへえ、助かったー」

「今後は遅れないこと! いいね、お兄ちゃん」

「き、キモに命じておきます。うん」

「じゃあ、さっさと着替えて」

 そういって、私はミレイユから渡されていたアイテムを取り出した。

「着替え?」

「今日は七夕だよ。となれば、決まってるじゃない」

 私は着ている服装の裾……すなわち“浴衣”の裾を掴んでクルリと回って見せた。

 私たち女性陣とほたるは浴衣。

 そして、シューゴと砂嵐さんとオウルさんの三人は作務衣という和服姿。

「これもレアアイテムなのだ〜♪」

 と解説してくれたミレイユ提供のアイテムだ。

「なるほど、道理で見かけん格好なわけだ。しかし、これはこれで新鮮だな」

 早速渡したアイテムで外装を作務衣姿に変えたシューゴが、腕を組んで頷く。

「まあ、たまにはこういうのも良いと思うよ」

「うむ。和というやつだな」

 砂嵐さんとオウルさんの二人が、仲良く笑って肯定してくれた。

 出会って数十分の二人だったけれど、仲が良い。まるで昔からの友達みたいだ。

 やっぱり男同士何か繋がるものがあるのかな?

「じゃ、皆でまわろっ」

 本日行われるイベントを楽しみにしながら、私は皆にそういった。


 本日は七夕。

 織姫と彦星が出会うロマンチックな夜だ。

 なんかいいことあるといいな。


【Δ 清浄なる 大空の 輝き】


 忙しいったら、忙しいっ。

 仕事もしない上司の所為で忙殺されまくりだよ、俺の人生。

 あはは〜♪

 返せ、俺の人生。

「るるる〜……ううふぅぅ」

「……レキ。大丈夫か?」

 遠目を見ながらデータの調整を続けている俺の背後に、忌まわしき声が一つ。

 聞き間違えようもない上司の声だ。

「はーい。なんですかー」

 精一杯の笑みを浮かべて、振り向いてみせる。

 ギリギリギリとオレの外装の首が奇妙な音を立てているような気がするけれど、多分気のせいだ。

「ばーる〜む〜ん〜く〜さーん〜」

 おや、何故か声が震えているなぁ、はは。

「レ、レキ……お、怒っているのか?」

 あはは、どうしたんですかバルムンクさん。そんな青い顔して。

 俺、怒ってなんかいないデスヨ?

「怒ってなんかいませんヨ〜、なんせ上司の仕事の手伝いをするのがオペレーターの仕事ですしネ」

「そ、そうか……それで準備の方はうまく行っているのか」

「エエ。誰かさんが発案だけした計画ですけど、今頑張って準備が終わりそうですヨ」

「そうか。それならいいんだが……」

「――まあジョークはこれぐらいにしておいてですね」

 いい加減疲れてきたので、上司イビリ終了。

 真面目な思考に切り替えて、俺は改めて目を向けた。

 銀髪に純白の翼、西洋風のプレートを見につけた聖騎士を思わせる剣士。

 それは、この世界のGMにして管理者――【蒼天のバルムンク】

 彼に向かって、俺は情報パネルに向かう手とは逆の左手を差し出した。

「例の頼まれたデータ収集完了してます」

 そういって、俺は本状に構築しておいた記録データをバルムンクさんに渡した。

「ごくろうだったな、レキ」

 それを空中に掻き消すように格納するバルムンクさんの姿を見ながら、俺は疑問に思っていたことを訊ねた。

「それにしても、たった“一名のPC”の行動ログなんて手に入れてどうするんです?」

「それは……まだ話せん」

 バルムンクさんは珍しく、渋い声音でそう答えた。

(なんなんだろ?)

 俺は疑問に首をかしげながらも、その際に自分の手に握られた一枚の用紙を見て、ため息を付く。

【タナバタ DE タナボタ】

 それが今俺の頭を悩ませている最大事項だった。

「本当にやるんですか?」

 用紙に書かれた一文が意味する内容に、俺はそれを実行する本人に再度確認する。

「ああ。“よろしく頼んだぞ”」

「あー、本当にやるんですね。バルムンクさん、もうどんなことになってもしりませ――」

 あれ?

「今、変な言い方しませんでした?」

 なんかまるで、それを頼んだぞとかなんとか聞こえたような気が……

「ふっ」

 な、何故そこでニヒルな笑みを浮かべるんですか?

「私はな、レキ」

「はい?」

「常々思っていたのだよ。今までのGMのやりかたでは生ぬるいと」

「はぁ」

 常々思っていたというか、そのくだりで発せられる言葉にはなんかもう耳がタコなんですけどね。

「そこで私は思ったわけだ。今までのGMは高みから見下ろしているだけで、本当にプレイヤーたちの気持ちを理解しているのかと」

「はい。それは今までよーく聞かされているんで知ってるんですが……結局何が言いたいんです?」


「後は任せたぞ、レキ」


 へ?

「私はイベントに参加して、プレイヤーの側で進行を監視することにしたのだ」

「え?」

「その方が効果的だからな。ではなっ」

 その次の瞬間、バッとバルムンクさんの姿が掻き消えた。

 GMとオペレーターしか使えない転送スキル。それによる消失。

 そして、残された俺は。

「NoOOOOOOOOOOOOOO!!!」

 と絶叫するしかなかった。

 俺の名はレキ。

 現在、ザ・ワールドの管理を勤めるオペレーターの一人だ。

 そして、多分もっとも不幸な人間な気がする。


【Δ 清浄なる 大空の 輝き】


 ほのぼのとするなぁ。

 仲良く作業している二人の兄弟を見ながら、ボクは微笑んだ。

「嬉しそうだな、“オウル”」

「うん。やっぱり平和なのが一番良いよ、“三十朗さん”」

 隣に立つ旧友に応えながら、ボクはそういいきった。

 PC【砂嵐 三十朗】

 それはかつてボクらと一緒に戦った【.hackers】の一人だ。

「まるで昔のお前たちを見ているようだな」

「……そうなの、かな? 自分だと自覚出来ないんだけど」

 ボクはぎこちなく微笑んで、軽く息を吐いた。

 そして、かつての仲間と出会った数十分前の出来事を軽く回想した。


 この日、ボクはレナたちに誘われてやってきた。

 用件は二つ。

 新しい仲間が出来たとの紹介と限定イベントへの誘いだった。

 幸い、早めに帰宅することが出来たボクは誘われるままに、このエリアにやってきた。

 そして――彼と再会した。

 その姿を見た時はまず目を疑い、次に世間の狭さにため息を吐いた。

 その次にボクは出来るだけ平静を装って挨拶をして――


 五秒でバレました。


 ……いや、まあ変声用ソフトも使ってなかったからしょうがないんだけどね。

 声を聞かれた途端に、バレるとは思わなかったよ。

「ん? その声は……何してるんだ? カ――」

「わぁああ!!!」

 怪訝な顔つきで、カイトの名前を出そうとする三十朗さんをボクは口止めした。

 不思議そうな視線を浮かべる四人に笑顔で誤魔化しながら、路地裏に三十郎さんを連れ込んで、慌ててショートメールを三十朗さんに送りつけた。

 ショートメールの内容は『事情がある。出来るだけばらさないで。あとカイトの名前を、ボクに対して絶対に使わないで。他の皆にも知らせないでください』

 トークモードで話さなかったのは、口で出したログだとスパイロボットに解析される恐れがあると、ヘルバから警告されていたため。

 ネットを介したショートメールでも危険性はあるけれど、それしか方法がなかった。

 幸い、理解力がある三十朗さんだったから納得して黙ってくれることになったけど、これがピロシさんやニュークだったらどんな大惨事になったことやら。

 隠し事が壊滅的に駄目そうな二人だしなぁ。

 逆にガルデニアとか月長石とかだったら、ばれないような気もするけどね。


「ふぅぅ……」

 額に手を当てて、ボクは再びため息を吐いた。

 ここのところ、色々とため息ばっかり吐いているような気がする。

(やっぱり不味かったかな)

 まあ三十朗さんなら腕も確かだし、ボクが居ない時でもしっかりシューゴたちを護ってくれるだろうから僥倖だったかな。

 自主的に接触したわけじゃないから、不自然ではないだろうし。

(問題ないか)

 いささか楽観的過ぎるかもしれない思考を止めると、ボクは目線を上げた。

 そこには巨大な竹があった。

 極太の竹に、無数の笹と、そこに結わえられた数え切れないほどの短冊。

 JP(ジャパン)サーバならではの七夕イベント。

「ここの短冊は本当に願いが叶うと言われるそうだ」

「……へえ」

 ボクよりもJPサーバの内情に詳しい三十朗さんの話に頷いた。

 ザ・ワールドは日々変化していく。

 たった半年ほど離れていただけで、ボクにも知らないことが出てくる。

 知っているようで、知らないことばかりだ。

 このイベントもそんなことの一つ。

 ボクと三十朗さんが微笑ましく見ていると、短冊を笹に結わえていたミレイユが声を掛けてくる。

「二人とも、なにしてんのー? さっさと短冊書きなよー!」

「ん? オレもか」

「書くこと決めてる?」

「うーむ。日々精進とでも書くかな」

 それは年始の目標に書くことじゃないかな?

 でも、困ったな。咄嗟に言われても、書くことなんて思いつかない。

 そう考えながら、ボクは声を掛けてきたミレイユの方に歩み寄り、他の面々が何を書いているのか見てみた。

 何かの参考になるかと思ったんだけど……

「……レア☆人生?」

「いいでしょー♪」

 レアだらけの人生ってことかな? よく分からないけど。

「ええと凰花さんは……」

求む 強敵!

「…………」

 ど、どうコメントすればいいのかな?

「……ええと、ホタルちゃんは」

争いのない平和な世界になりますように

「…………」

 い、善い事だとは思うんだけど。

 なぜだろう、明らかに短冊に書く内容じゃないと思うのは。

 ある意味直視するのも大変だったので周りを見渡すと、なにやら厳しい目つきをしたシューゴがとある一角の短冊を見ていた。

「どうしたの? シューゴ君」

 ボクは近寄って、シューゴに話しかけた。

「え? あ、いや」

「なんか気になる短冊でもあったの?」

 シューゴの視線から逆算して、見ていたであろう短冊に振り返る。

 そこには。

レナちゃんと結ばれるロミオになりたい ついでに国崎秀悟 早めに死すべし By孤高王

 と書かれた短冊があった。……あったんだけど。なんかコメントしずらいね。

「ええと、知り合い?」

「……あまり聞かないでくれ」

 そういって、ビリビリとその短冊を破り捨てるシューゴ。

 な、なにがあったんだろう?

「そういやオウルはもう短冊書いたんか?」

「え? ボク?」

 何を書こうと迷っている最中だったから、当然書いてない。

 普通に考えれば受験合格だろうけど、それも面白みないしね。どうしょうかな?

「んー、まだ。もう少し考えてから書くよ。シューゴ君は?」

「え? お、オレか? オレは一応決めてるけど……」

 なにやらそこまで言って、もごもごと口どもるシューゴ。

 見せたくないのかな?

「んー、別にイヤなら見せなくてもいいよ」

 そう言おうと思った時だった。

『皆様 お待たせしましたー!』

「おや?」

 スピーカーで拡大されたと思しき声と共に、今まで照らし出されることのなかった竹林の中心。

 広場となった場所に作り上げられた特製のお立ち台みたいなステージがスポットライトで照らし出される。

 その上に立っているのは金髪の呪紋使い。

「なんだ?」

「なにかのイベントが始まるみたいだね」

 ステージの上でマイクを握った金髪の呪紋使いが、大声で叫ぶ。

『これより年に一度の七夕イベントを開催したいと思います!!』

「おー、さすがは七夕」

「やっぱりイベントがあったみたいだね」

 まあそもそも限定イベントがあるから呼ばれたわけだしね。

 それにクリスマスとかバレンタインデーとかにイベントがあるのはもはや定番。

 さて、どんなイベントなのかな?

『今回のイベントは名づけて【織姫争奪バトルロワイヤル】!!!』

 え?

「織姫?」

「争奪?」

 バトルロワイヤルって……なにさ?

 と、その時だった。

「え?」

「あ、あれ?」

 金髪の呪紋使いの隣に、見覚えのあるPCが立っているのが見えた。というか、何故そこにいるのという感じだった。

「な、なあ……あれって」

「う、うん。あれは――」

 ちなみにボクの視力は両目共1.5。

 見間違えるはずがない。

『イベント内容は簡単です。皆様方にはここにいる【織姫】を賭けた勝負をしてもらいます。名づけて――』

 それは。

『タナバタ DE タナボタ!!!』

 そう司会者の呪紋使いが叫んだ瞬間、ボクらもほぼ同時に叫んだ。


『レナーッッ!!!???』


 そう、その司会者の隣。

 織姫役として立っていたのは、つい先ほどまで共に行動していた『レナ』そのものだったのだから。


 そして、この時のボクたちが気付くはずがなかった。


 これより始まるイベントが、あの悲劇を生もうとは……


 きっと神様だって分からなかった。


あとがき


 すいません。
 三週間もかかってコレだけの分量です。仕事とインフルエンザのダブルノックアウトでのたうちまわってました。

 週末には、どさっと長い一本を投稿する予定ですので、お楽しみに。
 多分次回は【壊れ】表記が付くかも?

 これからはペースを取り戻して、進んでいこうと思います!!!


12月20日 誤字脱字を修正


 はてさて、遂に10桁に入って初めてのレス返し!

 某大作RPGのオンライン版と同じ回数です!


>シャミ様
 両方とも主人公ですよ〜、ダブルヒーローですから!
 役割的にはシューゴが表で、オウル(カイト)が裏の主人公です。
 これからシューゴも主人公としての貫禄……は厳しいですけど、成長していきます。
 彼もカッコよくなりますよ(ニヤリ) 何せ腕輪もちですからね。

“カズはどうなってるのでしょうか?”
>連星を除いた二人は基本的に情報収集メインで動いている予定なので、戦士系と比べたら特に重要なアイテムは貰っていません。描写してませんが、どういう風に活動しているかは考えていますのでお楽しみにw

“オウルと三十朗の邂逅がとても楽しみです”
>ご覧の通りです。五秒でばれましたw カイトは変声用ソフトも使ってなさそうですし、声を聞いて分からなかったらそれはそれで問題かと思いましてw


>応龍様
 どうもはじめまして、応龍様。
 こんなつたない作品ですが、楽しんでもらえてとても感謝しています。

 自分としてはあの四人の名称は外見もしくは本質を象徴的に言い表したもので、魔女というのは一概に魔法使いではなく、異端もしくは弾圧された悲劇をイメージしています。彼女を表すには御伽噺のお姫様か、魔女という言葉しか浮かびませんでした。(ZERO参照)


“あのレベルであの戦闘能力いや、ここは戦闘センスといた方が適切かな?”
>戦闘センスも高いのでしょうが、どちらかというと蓄積された戦闘経験によって強いと自分は考えています。明らかに規定外のウィルスバグや異常とも言える能力を秘めた八相などとの戦闘はおそらく尋常な強さでは勝てなかったかと。
 レベルや腕輪だけに頼っていては勝てない戦いを潜り抜けてきたと思っています。

“神威(出番あるなら)とどう相対するのか。”
>彼女の出番もちゃんと考えています。そして、“彼”もまた現れるでしょう。
 おそらく期待には反しない内容にはするつもりです。個人的には今もっとも書きたいシーンの一つなので。


ロードス様
 慣れないコンビネーション戦闘でしたが、どうでしたでしょうか? 初対面の三人でしたが、それなりに連携を取れていたと思います。
 一人だけだと勝てない相手でも協力すれば撃破出来る。パーテが推奨されるザ・ワールドにおいて仲間同士の助け合いは凄い力になるかと。

“そういえば黄昏の腕輪伝説だとPTメンバーの数も増えてるんですよね、連携がしやすくなってそうな感じです”
>個人的には連携するなら速攻なら三人、一番良いのが四人ぐらいがベストだと思っています。
黄昏の腕輪伝説では砂嵐も入れれば六人で、数の多い上では有利だと思いますが、ゲーム版の三人という単位は連携と補助がしやすいコンビネーションプレイが駆使されるテクニカルな戦闘だったのではないかと考えています。

“天才子供対決見たくなる…。”
>なんかその言葉を見るとほのぼのしてしまいますw


グラム様

 漫画版よりも波乱に満ちたレースになります(ニヤリ)
 具体的にはオウルとバルムンクが……(閲覧削除) シューゴもいいところを持っていきますよ!
 四年間の付き合いで段々丸くなっていったバルムンクを見ているので、いまさら驚きませんw

“雷神の破壊の鎚を持つ"魔女"たるカール”
>イメージコンセプトは【魔女の鉄槌】
 ノートゥングと違って、【障壁破壊】スキルは有してないので、削除効率が高いです。単独で雑魚のウィルスバグなら半壊させることが出来ます。オウルと違って腕輪を持つシューゴたちとは一緒に行動しないので、ヘルバは削除能力のみを持ったこれを与えました。

“その荒れた心を解きほぐすのは誰なのか”
>……誰でしょうかねぇ? あまりカップリングは考えていませんが、色んな人間との触れ合いだけが彼女の心を癒せると思います。まあシューゴと出会ったら珍種を見るようなほのぼの空間が形成されそうですけどw
(しかし、書いて後見直すと妙にオウルとのコンビネーションがいいなぁ。思ったよりも仲良くなったのだろうか? うぬぬw)


焔片様
 どうも、お久しぶりのレスをありがとうございます。
 見事に皆様も予想を裏切られているので、ご安心ください(なにを?)w
 結構分かりやすくしたつもりなのですが、堂々過ぎて惑わせているみたいですね。


“カールは印象薄くて”
>まあ未完ですからね。他の主人公と比べるとちょっと印象が薄いのかも? マイナー好きな自分としてはこんなに派手に活躍させていいのだろうかとガクガクしてます。

“連星も怪しいなぁ”
>……連星に関しては多分間違っていませんよ(ニヤリ)w
 多分四人の中で一番カッコいい予定です。見せ場も考えていますよ。

“現CC社のあの人も眼は連星だし”
>ふふふ、どこぞの騎士団長もしっかり出てきますよ。多分、今後書くシーンのベスト3に入るぐらいカッコいい登場シーンを予定しています!


盗猫様

 予想は外れていませんよ〜、【ノートゥング】は本当にデータドレインのサポート用アイテムですから、削除用スキルの出力は低いです。倒せたのはカールの斬撃で崩れたところを、削減したからですね。
 【ミョルニル】は削除スキルに特化したアイテムで、出力はノートゥングの倍以上あります。
 目的と用途によって、それぞれ機能を選択してヘルバが与えました。

“主人公サイドが圧倒的な感じですが”
>そう見えますかな? 腕輪もちのシューゴはともかく、オウルたちは常に危ない橋を渡っているような気が。実質オウルの場合は油断すれば一撃で即死するほど脆弱ですし。

“首を長くしておまちしております”
>長くなる前に出ましたかな?w

 今回もレスをありがとうございますw
 寒くなってきたのでお体に気をつけてください。


KOS-MOS様
 取り合えずカールとは停戦状態ですねw
 仲良くなったのかどうかは皆様の評価にお任せしますw
 ノートゥング単独だとおっしゃるとおりに手足を削り取るのが精々ですが、カールとの連携でかなりの致命傷を与えられました。
 やはり一人ではなく、協力すれば強くなれますねw
 今回もレスをありがとうございましたw もっと楽しく出来るよう今後も精進します!

“ミョルニル”
>文字通りミョルニルは【変形】しました。チートアイテムということで偽装を掛けており、登録したボタンで本来の削除スキルを発揮できるように設定されていおり、破壊力も高まっています。 削除出力は【影を持つ者達】のチートアイテムの中でも最大です。
 【連星】と【魔女】の二人は単独でウィルスバグと相対出来ます。

“シューゴ活躍できるかな?”
>頑張っているのだけど、どこか決まらない。それがシューゴクオリティw お兄ちゃんは全力疾走で駆け抜けました。


白雨様
 今回も鋭い指摘と推理に嬉しい悲鳴が上がってます。
 これは大量にお答えしないと失礼ですね!

“ネット検索によりvol.4の攻略本に書かれていたようです”
>あ、攻略本に書いてあったんですか。自分はウィキペディアで最初知りました(おい)
 多分ZEROで知らせる予定が、未完になったので宙ぶらりになったようですね。お陰で情報が少なかったようです。

“男性なら一度は体験してみたいこと”
>……体験してみたいこと?
 はっ! 光○氏計画という言葉が脳裏に!!

“アルフも、ヘルバにあっていたのかな?”
>カールのストッパーとして、アルフと一緒にヘルバが会っています。一応アルフはオウルの正体を知りません。オウルの正体を知っているのはカールだけです(アルフが知っているのは同じ協力者ということだけ)

“カールがツンデレの様に見えるのはなんでだろう。”
>どっちかというといじっぱりというイメージがありますね。仲良くなってもツンツンしてそうです、照れながら(はっ、それがツンデレという奴なのか!?)

“オウルが落としにかかっているように感じるのは何でだろう。”
>特に意識してないでやっていると思います。というか、カイトは女性でも男性でも全然気にしないタイプだと思っています。ある意味奇特な人間かと。というかゲームでも女性ということで意識したようなシーンが皆無なんですよね。そういう意味だとかなり老成しているようです。
 でも、オウルとカールのコンビネーション戦闘は書いてて楽しかったですね。

“ブラックローズとカールが意気投合しそうな気がするのは何でだろう”
>多分最初は喧嘩して、その後お互いを認め合いそうですね〜。
 ……あれ? なんかカイトの変人ぶりに愚痴り合っている二人のイメージが頭に浮かびましたw

“微妙に名前が似てるキャラがいて間違えそうになる今日この頃”
>オウルとアウラが時々皆様のレスで名前がごっちゃになっていて、誤解しそうになりますw アウルって誰やねん!!w

 最後に今回もレスをありがとうございました。
 長文失礼しました(ペコリ)


偽孤高王様
 どうも、初めまして。
 箱庭廻と名乗っているものです。
 ご要望に応えて、レベルをLogin_10に記載しておきました。
 23というレベルの理由は積極的に上げないで、でも長期間やっているならば最低限これぐらいはあるだろうという推定です。
 普段はプチグソレースとかで楽しんでそうですねw

“コミヤンはPKを何度も受けてそうだ”
>何故かアンドレでPKを轢き逃げのイメージが。
 フィールドに出て、PKに襲われる度に「カモン! アンドレェエエエ!!」 ぶぉおぉおおおお(プチグソの笛) 「アッモーレ!!(目がギランッ)」
 とかいって、PKを撥ねるんですよきっと。
 暴れん坊将軍の如くw


SS様
 宇宙意思に負けないで!
 自分はウィルスに打ち勝ちましたw これからは身体を大切にしつつ、再起を図ります。


“自分の過去像との対面、そしてそれを否定しつつある彼女”
>過去との対立。それは未来に続く物語において、過去の役者たちを出す故に描きたいテーマの一つです。それはカールはもちろんですが、オウルにもあります。
 彼の過去との対立シーンがいつになるかは話せませんが、シューゴたちだけではなく彼らも少しずつ成長していきます。


“アッシャ様へのコメントの太字を見たときにはダウン寸前”
>太字コメント……ああ、あなたも体が痺れたんですねw(態と曲解してみる)


“斧系は知らないのでコレを”
>実際北欧神話を調べて見ると、驚くほど斧系がありませんでした。それだけがもちろん理由ではないのですが、カールに持たせるのはミョルニルに決定したわけです。
 イメージコンセプトは【魔女の鉄槌】です。


“スケコマシ元祖勇者”
>だ、誰のことですか……? か、カイトはそんな酷い人じゃ……ナイデスヨ? たぶらかしたり、うっぱらったりなんかしません! 単純に友人としか思ってませんから(それも酷い)


“ママママはキツイよねぇ”
クリスマスが近いので、かなえましょうかね(ニヤリ)


アッシャ様

 連携を褒めてもらって、凄いうれしいです。かなり努力したので、凄い達成感があります。
 けれど、あの連携って文章で見るとけっこう普通ですけど、イメージするとけっこう危ないことに気付きました。いや、なんというか密着?(意味がわかりませんね)
 今回遅れて真に申し訳ございません(土下座)

“ヒロイン”
>騙されてはいけません! “女主人公と書いてヒロインと読む”可能性が大ですよw。


“オウル正体露見の危機!!”
>危機はあっという間に去りました。まあ、肝心なのにばれなければいいんですヨ。ええ(ニヤリ)
 それに長年の友人なのに声一つで気付かないのはちょっと変ですよね?


“楽しみすぎて夜も眠れません。昼寝してるけど。”
>両方寝るとお肌にいいですよ?w


ATK51様

 今回も深い感想ありがとうございました。おっしゃるとおり、現在のカールは完全に味方というよりも敵にはなっていない、という方が正しい立ち位置でしょう。
 これから彼女がどう動いていくのか、そして他の三人がどう動いているのか。それらは少しずつ分かっていきます。
 これからの語りをお見逃し無いようお願いします。


“カール対美智”
>狙ったわけではないのですが、偶然にも同じ重斧使い。そして、同じような精神を持った二人の少女。けれど、彼女たちには決定的な違いがあります。それがなんなのか、それは二人の対立の時に語りたいと思います。

“マザー…原作準拠だとモルティですがはてさて…?”
>さて? その答えの返答は出来ませんが、もう一度Login10の会話を見直してくれると一種の返答が出るかもしれません。原作はほぼ忠実に踏んでいますが、全てが同じわけではありません。


“カイト”
>製作者曰く主人公らしく特色がないという設定らしいのですが、こうやって書いていると結構性格が個性的な気がします。言い方は悪いですが、一種の異常者かと自己解釈しています。
 彼がこれからどのように振舞うか、それは見てのお楽しみですw

“銀漢”
>ROOTSに出てきた理由がさっぱり分からない人ですよね。アニメスタッフが好きなんでしょうか? 謎です。

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