「「バカかお前。」」
「うう、ハモッて言わなくてもいいってばよ〜・・・」
声を揃えて言った2人の少年の言葉に、ナルトは思わずテーブルに突っ伏した。
言われなくたって分かってる。自分がどれだけのヘマをしたのかぐらい。
細長いテーブルの反対側に座って自分を睨みつける2人を見やりながら、ナルトはそう思った。
細面でやや目つきが悪く黒髪をちょんまげ風にまとめた少年と、ややざんばら気味の黒髪の美形の少年。瞳の色はどちらも黒。
奈良シカマルとうちはサスケ。
共にナルトと同じく、『火影』に所属するヤングガンだ。
シカマルは狙撃、サスケは近接戦を得意とする。ちなみにナルトはオールマイティにこなすが、この2人との付き合いはもう5年近い。
「仕方ねーってば、つい反射的にやっちまったんだから。」
「それはよく分かった。問題はだな、全部見ちまったかもしれない奴の口を封じなかった事だ!めんどくせー事になんのは確実だろうが!」
「その通りだこのウスラトンカチ。4人も撃たれて死んだんなら警察も大きく動く。そんな事もわかんねーのか?」
「返す言葉もないってば・・・・」
食堂の壁一面に埋め込む形で設置されている超大画面のテレビでは、15階のレストランで会食中だった政治家の狙撃事件を報じている。ナルトがあのゴタゴタの直前にやった『仕事』だ。
使った弾は1発だけ。オリジナルの特製10mm徹甲炸裂弾があの政治家――根っからの汚職議員だった―‐の頭を吹き飛ばしたのをはっきり確認している。
もっとも直後のゴタゴタのお陰でその事をすっかり忘れていたが・・・
(でもあの女の子、可愛いかったなあ・・・)
女性関係にあまり興味のないナルトには珍しく、ふとそんな事を考える。
生まれてから10年以上を戦場で過ごしてきたナルトにとって、まともに接してきた女といえば綱手とその右腕のシズネ、そして『火影』の関係者と戦場で出会った女兵士ぐらいだ。
そのほぼ全員が硝煙と血の臭いを纏った――当たり前だ、『火影』の関係者は全員元軍人か元犯罪者か殺し屋だ――女性なものだから、ナルトはおよそ普通の女性と呼べる人間と接した事は殆ど無い。
街中に出ればナルト本人は結構な美形なので女を引っ掛けるのに苦労しないだろう。だがナルト自身はそんな事をする気はあまり無い。逆に引っ掛けられた時はというと、後腐れない1夜限りの恋は何度か体験があるが、深い関係にまでなった事も無い。
そんな訳で、ナルトがこれだけ女の事を気にするのはかなり珍しいと言える。
もしまた会う(?)時があるとしたら、その時はかなり面倒な時かもしれないが―――
誰かが近づいてくる気配がした。鍛えられた感覚のお陰で何となく正体は分かる。よく知った人物だ。
「綱手さんがお前達を呼んでいる。」
うちはイタチ。
『火影』の中最年少の幹部にしてサスケの兄。どんな時でもロングコート(防弾・防刃の特別製)を着ている変わり者である。
ナルト達は食堂を出ると、揃って幹部用直通エレベーターに乗り込んだ。
『火影』は火の国のあちこちに支部を持っている風の国や土の国といった他国にも支部があり、その規模は裏組織の中でも上位に入る。
その『火影』にも、表の顔があった。
シャドウファイア・ウェポン・インダストリーズ――――通称SFWI。
一口に言って武器商人だ。主に歩兵用の兵器や装備を開発しており、評判や実績は高い。警察などの法執行機関からも大口の注文を受けているのはかなり皮肉的だが。
それはともかく、SFWIの本社は『火影』の本部も兼ねている。そのため本社の社員全員が『火影』の構成員であり、ナルト達はといえば書類上ではバイト扱いになっている。
本社自体も一見10階建ての広めのオフィスビルのようで、実は軍事施設も真っ青な要塞と化していた。
エレベーターが10階に着いた。そのまま目的地の社長室に向かう。
そこではナルト達のボスが待っていた。
「揃ったね、お前達。」
ぱっと見20代後半から30代前半ぐらいの美女が重々しい木製デスクの向こうで悠然と座っている。
一言で言ってナイスバディ(古い)の持ち主で、特に胸はナルトが見た女の中では彼女が一番大きいと思う。
綱手とだけ呼ばれている『火影』のボスで、ナルトをこの組織にスカウトした張本人が彼女である。
「綱手のねーちゃん、また仕事だってば?」
ナルトだけが、この組織に入って以来姉の様に慕っている彼女をこう呼ぶ。
ちなみにナルト以外が彼女をこう呼んだら、もれなく5秒以内にお迎えが来る羽目になるのでご注意を。
「その通りだが、今回はかなり特殊な仕事になるのでお前達4人で行ってもらう。」
「4人でって・・・・そりゃまたえらくデカそうな仕事っすね。」
シカマルは冗談で言ったつもりではない。
ナルト達3人のヤングガンは10代半ばながら1人で特殊部隊1個小隊を軽く相手に出来るほどの実力を持つ。そしてそれ以上の腕を持つイタチも混ざるとなると・・・クーデターでもあっさりこなせそうな気がナルトはした。
「いや、そうではないが内容が内容でな・・・・」
「?」
ナルト達は眉をひそめる(イタチは無表情だが)。
綱手が手元のリモコンのスイッチを押すと、ナルトから見て右手の壁が大型スクリーンに早代わりする。そこに1枚の写真が表示された。
ナルトには、見覚えのあるものだった。
「――――!?」
見たのはほんの数時間前、けれどあまりに心に残っていたあの顔が、そこに映っていた。
あの黒い髪。あの乳白色の瞳。
「お前達にはある学校に潜入してもらい、しばらくの間彼女に張り付いて守ってもらいたい。」
綱手はそう、ナルト達に告げた。
あとがき:うちは兄弟は仲良し、暁の面々は『火影』の幹部という設定です。
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