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▽レス始

「終わった世界のその後に 十一話(GS+Fate)」

シヴァやん (2006-12-12 00:05)
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 no side

 蛍光灯が照らす部屋の中央で、チェスの盤を挟んでブルーと瞳が対峙していた。

「チェック。そういえば前から不思議に思ってたんだけど、あなたたち五人の内炎帝だけは眷属じゃあないのよね。なんで?」

 カツッ

 ブルーが駒を動かし、白のルークが黒のキングを射程に入れる。

「ふむ。なに、あやつは主の眷属になる必要が無かったし、第一主よりあやつのほうが強いのでな。それに主の義妹だし」

 カツッ

 それを、瞳の黒のナイトが遮る。

「チェック。?聞いた話では確か星を一つぶった切ったこともあるって聞いてるんだけど?」

 カツッ

「ふむ。正確には直径260キロの小惑星だな。もう一つ言うなら斬ったのではなく打ち抜いたが正しいが」

 カツッ

「チェック。そんな化け物よりも彼女のほうが強い?」

 カツッ

「ふむ。信じられんだろうが事実だ。といっても、どちらも最大攻撃力が消滅だから、比べる事にたいして意味は無い」

 カツッ

「チェック。消滅?」

 カツッ

「ふむ。無限加速による質量無限大の質量砲弾と、能力収束による熱量無限大の蒸発焦滅の違いはあるがな。まあ両方とも今は使用不可能だがな。封印が押さえ込んでいるし」

 カツッ

「くっ。それにしても彼女がね。かなり大人しいイメージだったんだけど」

 カツッ

「それは融合した大天使ガブリエルの影響と、もともとの性格ゆえだな。本来なら人間を皆殺しにするくらいはやっても仕方が無い境遇だったからな。まあ、それは私以外の全員に言えることだが。っと、チェックメイト」

 カツッ

「チェック………って、へ?」

 駒を動かしてから間抜けな声を上げる。

「チェクメイトだ、ブルー。ちなみに今更皆殺しなんぞはせんから安心しろ」

 見ると、確かに彼女のキングには逃げ場が無かった。

「え?嘘、いつの間に?」

「七手前のこのチェックだ。ここで自分で逃げ道を塞いでいる」

 カツッと瞳が白のクイーンを指で弾いた。

「うわしまった。そんなところか。あーあ。これで通算成績私の二百五十一連敗か。というか全敗ね」

 さして悔しくもなさそうにそう言う。

「そもそも全可能性を演算している我にゲームで勝とうと言う発想自体が間違っているのだが」

「まあいいじゃない、暇つぶしなんだし」

「まあ、それはそうだが。それでもフラストレーションたまらんか?」

 不思議そうに瞳が聞くと、ブルーは笑って、

「溜めてるのよ。これから派手にやるんだし、溜めたストレスぶつけてスカッとしたいじゃない?」

 瞳に向けてウインクひとつ。

「いやそこで同意を求められてもな」

 頬をかきつつ苦笑した。

「まあとにかく、そろそろ時間よ」

 ブルーはそれに笑みを返し、座っていたソファーから立ち上がる。

「そうだな。ぞろぞろと集まってきているようだし。さっさと片付けて続きが見たいしな」

 ついたままのモニターを横目に、瞳は懐から二枚の手袋を出して両手にはめ、更に腰のホルスターに入れていた銃を両手に握る。

「確かここにいる死徒は白翼公の所から逃げ出したなりたてが十三体、だったか?」

「いや、後から調べたら他にも五体が離反してここと合流していたらしいわよ。だから合計十八体」

「それでこの惨状か。やはり白翼公を討伐したほうがよくは無いか?」

「そうするとあそこを纏める奴がいなくなって、あいつら全部が迷うことになるし、それならまだ現状維持の方がいいってのが当面の見解みたいよ」

「まあ、人間がどうなろうと我らとしては知ったことではない、というのが総意だからな。どうするかははたで見てるさ。ただし、我らと敵対するなよ。そうなれば最悪、世界人口の半分はもらって行くぞ」

 そう言い置いて、瞳は両手の銃を壁に向け、

「では、先に行ってる」

 引き金を引いた。その瞬間壁には音も無く直径二メートルほどの穴が開き、瞳はそこから外に出て行った。

「人の事は言えないけど、相変わらず馬鹿げた威力ね。あれで、専門は防御らしいし。やれやれね。さて、それじゃあ私も行こうかな」

 そう言うと、今度はブルーが壁の穴から外に出て行った。


 この後僅か五時間で死都が一つ、物理的に消滅した。


 side YOKOSIMA


 深夜。遠坂邸屋根上。

 雲間から覗く月を見上げる形で目を閉じている。

 気息を整え、自分の体に常時開放されている霊気を一時的に留めることで霊気回復力を高める。ただし、霊的防御能力が著しく下がり、実質無いも同然にな る。まあ、現在はそれは関係ないが。

「ふぅ」

 ゆっくりと息を吐き目を開ける。

「ようやく必要量の三分の一ってとこ、か。予想よりは早いけど、まだ一時間はかかるわね」

 体内の霊気量を測り、そう結論付ける。衛宮邸を出てから大体一時間。移動時間も計算すれば残り時間はそんなものだろう。

「それにしても意思は私に何がやらせたいのかな?こいつまで持ち出すなんて」

 召喚された当初からの疑問を思い、懐から取り出したのは純白………とは言え無いものの刀身が白い刀。ただし刃が付いていないので切れ味は皆無だ。

「あんなところからわざわざ持ってきて、しかもこんな封印までつけて存在と能力を隠すなんてね。つまりはこれの出番があるってことかな?」

  私、フェイスレスを喚ぶ為の触媒として使われた、私と縁の深い武器。名を『無蝕龍牙』。それは言ってしまえば、前世界から存在するということである。その通常では考えられない文字通り桁外れの蓄積年数と、もともとの構成物質そのものの莫大な神性は、これが疑問の余地無く世界最高位の概念武装であることを示している。まあ本来の用途が『斬る事ではない』から、いくら強くても棍棒にしかならないし、言ったとおり封印かまされてるから、概念自体封じられてるけど。

 しかもこれは確か、水星まで吹き飛ばされていたはずだ。つまりそれをどうやってか回収させたということになる。

 まあそんなことを気にしても仕方がないし、意味がない。その時がくればわかる事だ。

 それよりも今問題なのは、別のことだ。腕を軽く振り上げ、

「やっぱり、動きにくいな」

 霊力量、瞬間最大放出量は人を止めたときより若干下。筋力、情報伝達速度も下方修正。それによる、精神動作と肉体動作反応のずれ。それを考えると、総合戦闘能力は全盛期の十分の一以下。同格同期融合状態の万分の一以下。

 その現実を思い思わずため息が漏れる。前の能力そのまま復活してほしいとは言わないけど、せめて意識をそれように調整しておいてほしかった。はっきり言えば、能力の低下より認識の齟齬のほうが戦闘行為にはつらい。

「まあ、言っても仕方がないんだけどね」

 独り言で苦笑して、庭で拾った石を取り出して真上に投げ、落ちてきたところを瞬時に霊波刀を具現化し十字に斬る。

「よっ!」

 当然のことながら、あっけなく石は切り裂かれ三つの欠片が屋根に落ちた。

「こんなことができてもあの二人には効果無いだろうし。っていうか改めて考えるとアサシンは蛍鱗以外受け付けなくて、セイバーは霊力そのものが効果無しか。実質手札半分以上削られた状態で戦わなくちゃいけないんだよね。しかも身体能力低いから妙神流も使えない技とかあるし。はぁ、やりにくいなぁ」

 凛が下種なら首捻って終わりで早くて簡単だったのにな、となかなかに外道なことを思いつつ、そうならなかったことに感謝して。

 そうやって酷く無駄な思考で時間をつぶしていると、

「ん?」

 近づいてくる人間の気配に気がついた。直線で移動しているそれは、どうやら屋根の上を移動しているらしい。

「ふん?」

 その、明らかに常人ではないというアピール度を感じて、さてどうしようかと悩む。迎撃するのは簡単だけど、どうも霊感に引っかかる。何故かその気配に、どうも覚えがあるような無いような?そんなはずは無い筈なんだけどどうしよう………?

「ま、待ってみようかな」

 敵意があるようには感じないし。というか、この敷地の近くで凛と私に害意を抱くと、昨日黙って設置した罠が作動するから結構気楽である。ちなみに報復は害意の大きさと種類によって各種色々取り揃えております。

 第一、今凛を起こすのは乙女の肌的に賛成できないし。

 まあともかく、屋根から下りて塀に乗り、懐に手を入れ内ポケット四次元風味から武器選択。相手が人間ならどうせどれでも同じと適当に選んだら、出てきたのは神通棍だった。うわ懐かしい。と言うか入ってたんだこれ。

 まあ取り出してしまったものは仕方が無いので、折りたたまれていた先を伸ばし軽く霊気を流す。

「…………………………」

 まったく反応しませんでした。

 くそぅ、そう言えばこういうタイプの武器と相性悪かったなとか思いつつ、乾いた笑いを浮かべてまあしばくぶんには十分だろうと神通棍を持ち直し、

「それで、この家に何用かな?」

 ちょうど向かいの塀に降り立った不審者めがけて問いかけた。


 目の前に振ってきたそいつは、見た目からして不審者だった。

 真っ黒な外套で体を隠し、包帯を巻いて顔を隠し、挙句その両手に剥き身の日本刀をぶら下げていた。もう見るからに不審者だった。警察に見つかったら一発逮捕間違い無しだ。

 そして相手はまだ一言も喋っていない。

「いったいこの家に何の用で来たのかな?」

 もう一度繰り返すがやっぱり無視。むぅ。美人の言葉を無視するとは。もしや女に興味が無いのかな?

「まったく。美少女の質問にはきちんと答えないといい男になれないよ?答えたらなれるかって聞かれたら知らないと答えるけど」

 そんな馬鹿なことを言って、相手が女の可能性を思いつく。もしやと思い再度問う。

「もしかして、女だった?」

 相手のまっ平らな胸元を見て言う。うん。膨らんでいるようには見えない。これで女だったら悲惨だ。

 しかしそれにも相手は一貫して無視で貫いている。

 その無反応ぶりを見て内心溜息を吐く。これじゃあ情報が引き出せない。

 どうしたものかと思案を巡らせると、

「おっと…………」

 唐突に走った斬撃を避けるために首をそらす。ふむ、なかなかに鋭い。衛宮もせめてこれくらいはできるようにならないとな。やっぱりセイバーと実戦組み手が基本かな?

 なんてことをつらつらと考えつつ、

「で、何がしたいのあなた?」
 目の前で飛来する鳥もちの罠を避けまくっている不審者に聞く。自動追尾する鳥もちを慌てて避け続ける黒尽くめ。刀はすでに鳥もちに絡めとられ使用不能。いや実際見ていて非常に愉快だ。人の不幸は蜜の味。

 このまま見ているのも面白げでいいけど、話が前に進まない。まあ十分に堪能したからいいやと罠を解除し、肩で息をしている不審者に言う。

「もう一度言うけど何がしたいのあなた?漫才?コント?それならなかなか愉快な見世物だったよ?」

 返答はまたも斬撃だった。学習能力が無いんだろうか?鳥もち付けたままだし。まあ、罠は解除しているけど。

 それらを避けつつ思案する。さて本気でどうし…………!

「ぬっ!」

 突然、それまでのものとは異質な斬撃が襲い掛かってきた。それを紙一重で避け、慌てて距離を取る。

 別に食らうほどでは無かったけれどその技の軌跡に驚いた。二重の位相螺旋軌道、さらにそこから派生する縦の螺旋と逆十字斬撃。恐るべきはそれが僅か一呼吸で繰り出されていることだ。そしてその軌跡は自分がよく知るものだった。中央で断斬された神通棍を横目に見て、

「『断篝』?一体何の冗談よ?」

 断篝。本来は逆十字の後にさらに十字斬を体当たりの要領でぶちこむ技である。そして、妙神流の剣技の一つ。

 なぜそんなものを使えるのか?と思った瞬間、黒尽くめは目の前から消え去った。

「……空間転移?ってことはキャスターのマスター?あれが?」

 いや本気で予想外だ。まさかマスターが出張ってくるとは。というか、アレがマスターとは。

 だからって何で妙神流?それはまあ、表層は人間に使えなくも無いけど。私の知る限り、妙神流を使える人間に心当たりは無いんだけど。

「まあ、十中八九顔見せと揺さぶりだろうし、ならまたその内会うか。今は考えても仕方が無いし」

 ただあの刀。あの、街灯の光に照らされて鮮やかに輝いていた緑色の刀身。それが酷く気にかかる。色の怪しさとは別に、その存在自体が酷く馴染み深い懐かしいもののような気がした。それが何かは思い出せないけれど。

「まったく、召還されてからこっち、何でこんなに忙しいんだろ?この二日でアーチャー、セイバー、アサシンと会って、姿は見てないけどキャスターとも
一戦交えて、しかも今度はそのマスター。残りランサーと会えばパーフェクトだよ。この遭遇率ははっきり異常なんだろうし、そう考えると意思がなんか弄ったかな?」

 もう一度屋根に上り、腕を組んで思考再開。生命と意思思考を持つ者以外の存在の運命を、不自然でない範囲である程度操作することが可能な彼女なら、その手の工作も余裕だろう。無理をすればそれこそ世界を思うままに改変することも可能であるし。

 どころか、水星に『創世』前から存在する『無蝕龍牙』を、どうやってかこの地球に持ち込んだのだから、彼女のこの戦いへの介入は当然ながらあるだろう。

 そうすると問題は、その程度と必要性だ。超上存在である世界意思でも、生命の意思には作用できないから、この戦争とは名ばかりの聖杯戦争中は、ほぼ無いと見て間違いないだろう。となると、そうやって介入してまで、わざわざ私をこの世界に存在させ、この回の聖杯戦争に送り込んだからには、それなりの理由があるはずだ。

 …………暇つぶしとか娯楽とかの下らない理由でないことを願いたい。というか信じたい。なんかありそうでいやだけど。

 とそこまで思考し、

「ん?」

 途轍もなく遠方に、よく知っている攻撃の波動を感じた。場所は距離的に考えて多分アフリカ辺りだろう。

「これは………瞳のスペルガン?ってことは、あの娘達ここにいるのね。まあ私が実体化した以上、この世界にあの五人が跳んできてないわけ無いんだけど。でもみんな怒ってるかな?」

 僅かに苦笑を浮かべる。まあ、行為の終わったあと、気絶している五人を謝罪の手紙と一緒に強制的に時間跳躍させたのだ。恨まれていないわけが無い。まあ、いつまでも引きずるような娘達ではないだろうが、それでもまったく恨まれてないわけがない。

 ………再会して、即搾り取られそうな俺に向けて心中で合掌。腎虚にならないよう切に願う。まあ、負けないだろうけど。

 なんですぐ恨み晴らしに来ないんだろうと疑問に思い、まあ理由があるんだろうと深く考えずにその思考を放棄した。

「しかしこの規模は………対軍クラスの魔弾術、しかも連射系?ってことは過速弾?いったい何を考えて……」

 その技の選択の物騒さに、変わってないなと更に苦笑する。脳裏に浮かぶのは、薄っすらと微笑を浮かべながら絶好調に両手の引き金を引きまくる、私の眷属筆頭の姿。ああ見えて彼女は重度のトリガーハッピーであった。現在敵対している相手がいっそ哀れだ。

 そう考えていると、呼応するように次々とよく知る力の発現を感じた。ドイツと南アメリカ、イギリス、最後に日本。

 それを『自分たちはここにいる』というメッセージとして受け取り、みんな無事かと笑みをつくり、

 更に四つ増えた力に頬を引きつらせた。

 五つの内の二つとよく似た、しかし微妙に違う力の波動。それが意味するところは………

 ひょっとして最後のアレ当たってたかな?

 かなり一生ものの責任問題に冷や汗を感じ、背筋を振るわせた。


 <後書きですたぶん>

どもです。

今回は閑話的というかまんま閑話です
またもや一ヶ月以上空いているくせに話が短いです。
まだちょっとギャグ調引きずってます。しかもなんかグダグダ
むぅ

色々と小細工張り巡らせつつ、試行錯誤しております。やっぱり口調が安定していませんが


 ではレス返しをば

○メガネ猿さま
気に入っていただけて何よりです
これからも完結目指してがんばります

○SSさま
宝具の内容はまあ出てきてからのお楽しみということで
ただ、出たら出たで非難対象じゃないかと思ったりします
それから、バーサーカーの宝具は攻撃力皆無です
「煩悩魔人」はだそうかどうか悩み中って感じです

○蝦蟇口咬平さま
すみません、心構えに関してはこちらの勘違いでした
話の長さは一応それなりにしているつもりなのですが


ではでは

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