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「幻想砕きの剣 11-12(DUEL SAVIOR)」

時守 暦 (2006-11-29 22:16/2006-11-30 12:26)
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 大河は無言で目の前を浮く物体を見つめている。
 これを何と評するべきか?

 でっかい黒玉…リヴァイアサンが崩壊し始めているのは、まぁいい。
 透が上手くやったのだろう。
 憐ちゃんが開放されるなら、それは無条件でいい事だ。

 大河が注目しているのは、航空力学とか完璧に無視して空中浮遊する、理不尽な物体だった。
 ハッ○リ君でももう少しリアリティがある飛び方をするだろう…実写もあったし。
 ○ットリなら…能天気雲の術で大風を起こして飛ぶくらいはするかもしれない。


「ししょ〜、迎えに来たでござるよ〜。
 こっちに飛び移って、拙者の腰とかに、こうギュッと掴まってくだされ〜」


 しかも声までかけてくる。
 あまつさえ師匠?
 彼を師匠と呼ぶ人間は少なくとも一人居るが、彼女はちょっとボケた性格をしていても、物理法則を無視するようなマネは…。
 マネは……。

 なんか手から炎みたいな気っぽいのを出すカエデ。
 攻撃した瞬間に木切れに変化するカエデ。
 空中で45度くらい方向転換するカエデ。
 どう見ても3,4本しか入らない筈の懐から、大量のクナイを取り出すカエデ。
 そして酔っ払い、意味もなく逆さまになって笑うカエデ。


「…なんだ、物理法則無視する程度じゃ大した事ないな。
 俺だってノリでよく無視するし」


 余計な悟りを開いているようだが、そこはそれ。
 遠い目をして呟いた透に、カエデがまた声をかける。


「し〜しょ〜!!
 早いところ、こっちに飛び移ってほしいでござるよ!
 もうリヴァイアサンが…来た来た来た!
 来たでござるぅ〜!」


 慌てているのを主張するように、8の字を描いて飛んでみせる。
 しかし、そうウロチョロされては飛び移ろうにも飛び移れない。


「落ち着け、ちょっとじっとしてろカエデ!
 ……時に、念のために聞いておきたいのだが…」


「は?」


「どうやって浮いてるんだ?
 レビテーションとか使えないだろ。
 俺が飛びついたら、重みに耐えかねて落下するのと違うか?」


「はぁ、この術は知人から教わった術で、まぁぶっちゃけ空を飛ぶ秘術でござる。
 原理は不明。
 でも人間一人抱えて飛ぶ…のは無理でも、滑空する程度なら問題ないでござる。
 さっ、お早く!」


 疑問は多々あるが、もう時間がない。
 大河はナナシの頭(自分の足元)をコツコツ叩いて、目を回しているナナシを起こしてやる。


「は〜にゃ〜?
 だーりーん?」


「しっかりしろ。
 一度撤退するぞ。
 俺はカエデに掴まって離れるから、ナナシは予定通りの場所で小さくなるんだ。
 その後は…」


「ルビナスちゃんの所に行って、憐ちゃんの看護ですの〜」


「よし、よく覚えてた。
 憐ちゃんを助けられるまで、あと一歩だ。
 終わったら頭から首筋からアソコから撫で倒してやるから、気合入れろよ!」


「はにゃ〜(赤)」


 ナナシを赤面させて、大河はカエデに「もっとこっちに寄ってくれ」と合図する。
 カエデはリヴァイアサンが起こすよく分からない衝撃波とかに体勢を崩されながらも、フヨフヨ大河の側に近寄ってきた。


「それじゃ、掴まるぞカエデ」


「どうぞ、でござる。
 拙者のくびれた腰をご堪能あれ…と言いたい所でござるが、エロい事は禁止でござるよ?
 空を飛ぶのには、結構集中力が居るのでござる」


「ああ、分かってる…」


 ちょっと残念だったが、無用なちょっかいを出して落下した日には目も当てられない。
 大河は大人しくカエデの腰に腕を回してぶら下がった。
 まぁ、それでもイイ感触が伝わってきてご満悦だったのだが。


「じゃ、ナナシ。
 撤退する時はリヴァイアサンと足元に気をつけてな」


「それでは、また後で会うでござる」


「はいですの〜」


 ナナシがソロソロと下がり始めるのを確認して、大河とカエデは空を滑空していく。


「で、作戦は順調なのか?」


「滞りなく。
 そろそろ未亜殿が、リヴァイアサンに通信用の矢を打ち込む手筈となっているでござる。
 後は未亜殿の説得に賭けるだけ…」


「どっちかと言うと未亜と憐ちゃんのブラコンパワーにな…」


 ボヤく大河。 
 それはそれとして、結構なスピードで滑空しているのに、あまり風が身に当たらない。
 となると、やはり空気抵抗や風を利用して飛んでいるのではなさそうだ。
 …こういう術を使う人間に、大河は心当たりがあった。


「…なぁカエデ。
 この術…誰から教えてもらったんだ?」


「は?
 はぁ、昔里を訪れたお客人に教えてもらったでござる。
 休暇と言っており申したが」


「………まさかとは思うが、ソイツはロジャー・サスケとか名乗ってなかったか?」


「人違いでござるよ?」


 アッサリ否定。
 大河は安堵のため息をついた。
 もしもカエデにこの術を教えたのがロジャー・サスケ…すなわちセプテントリオン・七星工業だとしたら、話がとてつもなくややこしくなるだろう。
 かの企業は、7つの世界を股にかける死の商人。
 もしも何かしらの技術や実験材料を求めてカエデの里に入り込んだのだとしたら?
 仮に、カエデの父母の仇…八虐無道が里に入り込めたのは彼らの手引きだったとしたら?
 最悪、カエデはセプテントリオンに仇討ちを仕掛けるかもしれない。
 しかし、例えアヴァター全土の戦力を結集したとしても勝てるかどうか…。

 まぁ、杞憂だと分かったのだからもういいか。


「確か“あーるえす”と名乗っておられたでござる」


「フェイントかよ!」


 “あーるえす”つまりRSは、セプテントリオンにおけるロジャー・サスケのコードネームである。


「? お知り合いでござるか?」

「…やや敵より…」


 結局カエデに術を教えたのはロジャー・サスケだったらしい。
 まぁ、仮にロジャー・サスケでなかったとすれば、あのド派手な忍者衣装とか着て、アレな忍法を駆使するちょっと頭の弱いっぽい(本性はともかく)人物がもう一人存在するという事になるので、その意味では幾らか救いがあったかもしれない。


「敵でござるか?」


「まぁ、積極的に対立する必要もないんだが…。
 何かされなかったか?」


「いえ特には。
 …ただ、術を教えてくださった事を忘れていたようで、後日『体得した』と見せたら、頼むから里の人間に知られるな、と土下座までされたでござる。
 しかも土下座した時、額が足元の岩にでっかい皹を入れて」


「…そうか、ならいい」


 カエデは知らなくていい事だ。
 もしもロジャー・サスケが何かしていたら、というのも所詮は想像の領域を出ない。
 余計な疑念を吹き込む必要は無いのだ。


 …実際の所、ロジャー・サスケは本当に休暇を取っていて、カエデの父と意気投合した挙句、その場のノリと酒の勢いでカエデに術を教えたのだが。
 セプテントリオンのエージェントとしてはカエデを殺すべきだったのかもしれないが、当時のロジャーはそこまで割り切れていなかったようだ。
 無道が里に入れたのも、全くの別件である。


 リヴァイアサンを迂回するように、カエデは滑空する。
 大河はカエデに掴まったまま、眼下を見下ろした。
 改めて見ると、えらく高い。
 高所恐怖症ではない大河も、流石にちょっと血の気が引いた。

 それはそれとして、上から見ると、浄化の魔力が帯状に連なって、陣を描いているのがよく分かる。
 要所要所に兵達が陣取り、何やらナナシを指差して騒いでいた。
 まぁ、無理も無いだろう。
 浪漫を感じて騒ぐ兵、常識外れな光景を見せ付けられて騒ぐ兵。
 そして…ナナシの後ろ辺りで、上を見上げて嘆く兵達。


「なぜあれ程に巨大なのに、肝心な所が見えないのだ!?」

「この角度ならバッチリの筈!
 折角こんなオイシイ場所に配置されたというのに!」

「惜しい!実に惜しい!」

「いや、丸見えではチラリズムに反する!」

 ……大河は黙ってトレイターを召還し、両足でキャッチ。
 爆弾に変えて、ガーゴイルよろしく眼下の兵達に向けて放り投げた。

 一拍おいて、爆音。


「…いいのでござるか?」

「いーんだよ」

「左様でござるか」


 カエデも特に問題があるとは思わなかったようだ。
 さらに加えて。


PISHAAAAANNNN!!


「にぎゃっ!?」

「ぬお!?」


 爆弾が落っこちた辺りに、謎の閃光が直撃した。
 リヴァイアサンの周囲で起こっている謎の発光現象で生じた光が、流れ弾(じゃないかもしれない)で飛んできたのである。


「…憐殿も怒っているよーでござるなー」


「ここは礼を言うべきなのだろうか…」


 悩む大河。
 …しかし、実際どうして巨大化してもナナシのおパンツとかが見えなかったのだろう?


 兵士達の悲喜交々を他所に、ナナシはリヴァイアサンから目を離さず、ジリジリと後退する。
 途中で何人か踏み潰しかけたのが居るが、それはナナシの真下からのステキアングルを狙って寄ってきたバカモノドモなので、特に同情の必要なし。
 周囲に誰も居ない所まで後退して、ナナシはようやく一息ついた。
 そして体の中に取り込んでいた、ナナシ曰く「ぽわぽわ」を放出してスモール化を開始する。
 噴出された「ぽわぽわ」が周囲を薙ぎ払い、突風が吹き荒れる。
 もしも大河がナナシの頭の上に乗ったままだったら、風に吹き飛ばされて虚空に舞っていた事だろう。

 全ての「ぽわぽわ」を放出しきって、通常サイズに戻ったナナシは、黙って後ろ向きに倒れこんだ。


「ぷはぁ〜〜〜〜、つ〜か〜れ〜た〜で〜す〜の〜〜〜」


 元気が有り余っているナナシにしては珍しく、冗談抜きで疲労しているらしい。
 巨大化が強い負担を与えるのか、それともリヴァイアサンを止める事がキツかったのか。
 いずれにせよ、すぐに動く気力は無い。


「…ちょっと休むですの…。
 とりあえず血が止まるまで…」


 よく見てみれば、ナナシの両腕はベッタリと血で塗れている。
 ずっとリヴァイアサンを抑え込んでいたのに、この程度なのは僥倖と言えた。
 しかし、それでもナナシにとっては慣れない痛みを齎す傷なのには変わりない。
 まだ頑張っている兵士達やクラスメートには悪いが、こうも血が流れていては…。
 深い傷という程でもなかったが、さりとて無視できるような傷でもない。
 幸い、体は既に治療を始めているようだ。
 これなら5分もすれば完治するだろう。


「う〜、ダーリンごめんなさいですのぉ…」


 などと理論武装してみても、自分だけ休んでいる状況が何とも申し訳なく思えるナナシだった。


 ユカ・汁婆


「…暇だね」


『…暇だな』


 ユカと汁婆は、特にする事も無く、リヴァイアサンが居る平野から少しホワイトカーパス側に行った高台の上で待機していた。
 この二人は対リヴァイアサン戦では殆ど役に立てないため、ホワイトカーパスから魔物が押し寄せてきた場合に備えての見張り役である。
 しかし、魔物なんぞ押し寄せてくる所か気配も感じられない。
 やはり、リヴァイアサンの存在を本能的に恐れて逃げ出しているのだろう。
 でもやっぱり何時来てもおかしくない訳で。


「…大河君達、大丈夫かなぁ…」


『リヴァイアサンの気配が揺らいでいる
 とりあえず作戦自体は順調みたいだな』


 振り返って平野を見れば、徐々に小さくなりつつあるリヴァイアサン。
 作戦が順調なのはいい。
 憐が孤独から開放されるという事だから。
 しかし…こう言っては何だが、つまらない。
 自分もあそこで戦いたい。

 ユカは殊更に好戦的ではないが、やはり自分の力を全力で振るいたいという欲求はあるし、そもそも何気に寂しがり屋さんだったりする。
 自分は…自惚れでなければ結構な使い手で、人類軍にとっては重要と言える戦力の一つだ。
 それがどうして、こんな所で燻っていなければならないのか?

 いや、理屈は分かる。
 今はリヴァイアサンを恐れて魔物達は近寄ってこない。
 と言う事は、リヴァイアサンが解放されるなり消滅するなりしたら、少々様子見をしながらも怒涛の勢いで押し寄せてくる可能性がある。
 その時のためにユカや幾つかの部隊は温存されているのだ。
 …が、やっぱり面白くない。
 故に…蚊帳の外に置かれたユカは拗ねていた。


「う〜」

『……』


 こっちはまぁ、平和だった。


 さて、この作戦の要たる未亜。
 リコと一緒に赤の力を極限まで注ぎ込んだ矢をジャスティに番え、力の限りに弓を引いていた。
 見る者が見れば、番えられた矢から、細い赤の力の糸が未亜に繋がっているのが見えただろう。

 未亜はチラリとリコに目をやった。
 リコはその視線を受け、未亜の正面…ジャスティの矢の直線状に移動した。
 注・よい子は弓矢を人に向けたり、構えている人の前に立ってはいけません。


「…では、いきます!」


 リコは宣言すると同時に、両手を前に突き出した。
 その手の中に魔方陣…召還陣が現れ、幾何学的な紋様の中心に黒い穴が開く。
 その穴はどんどん大きくなっていき、終にはリコの背丈よりも少々大きい程になった。


「マスター、繋がりました。
 どうぞ!」


「届けええぇぇぇぇぇェェ!」


 未亜は魂の叫びと共に、ジャスティの矢を解き放つ!
 一直線に飛んだ矢は、リコが作った黒い穴に風切音と共に飛び込んだ。
 黒い穴の中を、疾風の勢いで駆ける矢。
 矢は瞬きをする間に、穴の中に消えてしまった。


「どう!?」


「…飛び出しました!
 ……狙い通り、リヴァイアサンの真上です!」


 ちょうどその時、リヴァイアサンの真上に幾何学的な紋様が現れた。
 直径1メートル弱の、小さな陣。
 逆召還による転移陣である。
 その中心に、黒い穴が現れる。

シュパッ

 そしてその穴の中から一直線に飛び出してくる一つの影。
 未亜が放った、赤の力付の矢。
 つまり、一種の狙撃である。
 未亜のジャスティだけでは届かない場所に居る相手に、リコの逆召還で送った矢を射る。
 しかも、その気になれば逆召還の際に方向も変えられるので、大抵の障害物を無効化し、より狡猾に急所を狙えるという中々凶悪な連携である。

 逆召還の穴から飛び出した矢は、重力による加速も得ながらリヴァイアサンに向けて落下する。
 しかし、ある程度まで近づいた所で空間の歪みに捕まってしまった。

 右へ、左へ、人間ではまず知覚できない方向へ、翻弄される矢。
 しかし、そこは召還器だけあって、未亜の意思である程度操作できる。
 巨大な標的…リヴァイアサンに向かい、グルグル回りながらも接近していった。

 リヴァイアサンは、それに気づいているのか居ないのか。
 例え当たった所で、こんな矢の一本が何になろう?
 だからリヴァイアサンは、構わず透の元に向かおうとした。

 事実、未亜の放った矢は、リヴァイアサンの内部に入り込んだが何の影響も齎さなかった。
 ただ…未亜と繋がった赤の力だけが、リヴァイアサンから飛び出している。


「…繋がったよ」


「何とか成功ですね。
 …それにしても、ジャスティの力がまた強くなってるんじゃないですか?」


「…そうかも。
 でないと、一発目から成功するとは思えないし」


 未亜は腕の中のジャスティを見る。
 こうして毎日のように手にしているから気付かないが、よくよく思い出してみれば初めて手にした頃よりも、威力、迫力、威厳が数段増している。
 理由は未だに不明。
 リコによれば、『根源から力を汲み上げているのでもないし、召還器そのものがパワーアップしているのでもない』との事。
 ならば単純に未亜が扱える力の絶対量が上がっているのだろうか?

 それはそれとして、未亜はジャスティを握り締めて座り込んだ。


「それじゃ、これから説得するから。
 ガードはお願いね」


「了解です、マスター」


 未亜は目を閉じた。
 そのままジャスティを使って、テレパシーを送る。
 本来ならトレイターとしか通信できないのだが、今回は話が別だ。
 何といっても、呼びかける相手はリヴァイアサン…マナの法則をこれ以上無い程に熟知している存在。
 どんな滅茶苦茶な周波数で呼びかけても、それを翻訳する術は持っている筈。


(…何て言おうかな…。
 取り合えず、反応が出るまで呼んでみよっと)


 とにかく反応を、と考え、ただ只管に大音量(音じゃないけど)の呼びかけ。


(れーーーーんーーーーちゃーーーーん!!!!!!)


 コメカミが痛くなる程に精神を集中し、心の中で大絶叫。
 その絶叫は赤の力の糸を伝い、矢に届き、そしてリヴァイアサンの中で解放された。
 すると…。


「…マスター、なんかリヴァイアサンが苦しんでるんですが」

「ほへ?」


 目を開け、リヴァイアサンに目をやると、成る程リヴァイアサンがグラグラ揺れていた。
 何故に、と首を傾げる。

 リコは暫く考えていたが、ポンと手を打った。


「アレですね、マスターの念話がうるさいんですよ」

「…確かに絶叫したけど、それでそんなに苦しむかな?」

「召還器と赤の力を通した事で、念が物凄く増幅されているんです。
 しかも、解放点の矢はリヴァイアサンの文字通り中でしょう?
 人間に置き換えれば、腹の中でジャイ○ンがマイクを使って音量最大にして、ロックっぽいシャウトをかましたような感じかと」

「…わ、悪い事したかなぁ…」


 思わず冷や汗。
 これで悪印象とか与えてなければいいが…。


「今度はもうちょっと抑えて念を送りましょう。
 受信は私が受けて、マスターに直接転送しますから、念の大きさの調節に集中してください」

「ウイルスみたいなのが来てたら、きっちりブロックしてよ?
 オートプロテクトオンで」

「私はNortonですか…」


 ボヤきながらも、リコはリヴァイアサンから念が送られて来ないか神経を研ぎ澄ませる。

 未亜は悶えているリヴァイアサンに向けて、もう一度念を放射した。
 今度は小さめの音量から、徐々に大きくしていく。



(あー、憐ちゃん憐ちゃん連荘、聞こえたら小さな声で返事くださーい。
 さっきはゴメンね?
 ちょっとお兄ちゃんと憐ちゃんについて大事なお話があるから、お返事くださーい。
 聞かなかったら後悔するよー)


 本気で謝っているとは思えない口ぶりだが、未亜は真面目だ。
 まぁ、このくらいですぐに返事が貰えるとは思ってない。
 聞かないようなら、こっちを向くまで何度も大音量の念を叩きつけるまでだ。
 心の中で念じるだけなら、喉の負担にもならないし、何ぼでも叫び放題である。

 もう一回念を送ろうとした時、リコが弾かれたように顔を上げた。


「…マスター、返事が来ました!」


「え、もう!?」


 こんなにアッサリ返事が来るとは、予想外である。
 透と憐について大事な話がある、とは言ったものの、憐のブラコンレベルを考えると、無視してそのまま透に突っ込む可能性が非常に高かった。
 しかしまぁ、返事をくれたなら好都合だ。


「それで、何て言ってる?」


「待って下さい、ウイルスが入ってないか検閲してからマスターに送ります。
 何せ他の霊達の念も混じってますから、ノイズも除去して…。
 …どうぞ」


 リコは背伸びして、未亜の額に人差し指を押し付けた
 その指を通して、未亜にリヴァイアサンの返事が転送されてくる。


(…だれ…?)


(…あ、そういう事か)

 転送されてきた憐の声を聞いた途端、未亜は一人で納得した。
 何もかもを無視して透の所に行かなかったのは、警戒していたからと、そして寂しかったからだ。
 先ほど、折角意識を取り込んだ透を、強引に引き戻された事に対する警戒。
 放っておくと、また邪魔をするのではないかと警戒している。

 それと張り合う程に、リヴァイアサンの中の憐は寂しかったのだ。
 今透の側に居る筈の憐は、時々だが人に話しかけていた。 
 洗脳されていたツキナやクーウォン、それにカイラや洋介。
 しかし、リヴァイアサンの中の憐は、ずっと誰にも話しかけられず、話しかけもしなかった。
 取り込んだ魂の殆どは意識を持ってなかったし、持っていても憐が近づけば大抵は意識を押し潰された。
 ずっと誰にも話しかけられなかったのである。
 憐は、それこそ何年ぶりかに声をかけられ、『透の所に行きたい』と『人と話がしたい』の板挟みに会ったのだ。

 なら話しかけよう、幾らでも。
 この作戦の最大の要は、憐の欲求を満たす事にあるのだから。

 未亜は極力優しく念を送った。


(私は当真未亜。
 相馬透さんの妹の、憐ちゃんだよね?)


(う、うん…)


(怖がらないで。
 おねぇちゃんは憐ちゃんの味方だから)


(………)

「…あの、マスター。
 言っては何ですが、幼子をにちょっかいをかける怪しい人みたいな言い方ですよ」


「だまらっしゃい」
(信じられない?)


(……う、うん…)


 リコをピシャリと黙らせて、未亜は急かさないように話を続ける。
 元より、最初から信用されるとは思ってない。
 とにもかくにも、彼女の興味を引かなければ。


(それは、さっき相馬さんが憐ちゃんから取られたから?)


(…未亜さんが、やったの?)


(私はそんな器用な真似は出来ないよ。
 まぁ、それよりね?
 相馬さんと一緒に暮らせる方法があるんだけど、一口乗らない?)


(!?)


 かかった。
 ここからが本番だ。

 リヴァイアサンは、徐々に透に向かって進んでいるものの、徐々にスピードを落としている。
 浄化されて力を失いつつあるのか、それとも未亜の方に意識が向いているのか。


(で、でも、憐がお兄ちゃんをさっきみたいに取り込んじゃえば…)

 彼女にしては強引な話だ。
 本人にしてみれば、当然の権利だと思っているのかもしれない。
 しかし、それを許す訳にはいかない。
 それをやられると透は死んだも同然だし、もう一人の憐が置いて行かれてしまう。


(ダメダメ、それじゃ相馬さんに怒られるよ?
 最悪、嫌われちゃうかも)


(う、うぅ…)

 薄々そう思ってはいたらしい。
 ただ、嫌われても孤独よりはマシだと思っていたのだろうか。
 そんな所に、未亜は付け込む。


(まぁまぁ、そんなに落ち込まないで。
 私がどうにかしてあげるから…ね?)


(…本当?)

 リヴァイアサンに送られる念は、それこそネクロマンサーの笛でも吹けそうなくらいに慈愛に満ちている。
 が、リコには未亜のお尻から生えた尻尾が見えていたそうな。
 確かに憐を救おうとしてやっているのだが、心の隙間に滑り込むのが妙に鮮やかだ。
 いい詐欺師になれるだろう。
 あるいはジゴロ…女だけど。

 しかし、やはり憐は透を自分の内に取り込む事に執着しているようだ。
 自分の内側に取り込んでしまえば、憐が何処に行こうとも、二度と離される事はない。
 ずっと一緒、一つになる。
 狂おしいまでに透を求めた彼女の、終着点の一つだ。


(…やっぱり、憐はお兄ちゃんを…)


(あら、本当にそれでいいの?
 こっちに来れば、取り込んだら手に入らないモノも手に入れられるかもしれないのに)


(?)

 が、未亜はそれすらも予測の内だったようだ。
 ブラコンパワーを舐めてはいけないのは、『明らかに人として間違っている程のブラコン』と称された彼女がよ〜く知っている。
 そして、何処をどうすれば突き崩せるかも大体分かる。


(こっちに来ればね、相馬さんのお嫁さんにもなれるわよ?
 あ、血縁云々だったら大丈夫。
 クレア…王女様にクチ聞いてあげるから、正式にお嫁さんね。
 もちろん結婚式も挙げられるよ)


(…………で、でもそんなの、お兄ちゃんを連れて行っちゃえば)


(あ・まーい!

 それって要するにカケオチでしょ?
 それもロマンチックだけど、どうせなら沢山の人に祝福されたいと思わないの!?
 文字通り、公式に認められるんだよ?)


(う、うぅ…)


 リヴァイアサンが動きを止めた。
 どうやら、憐の迷いが現れているようだ。

 こんな口先三寸であんなデカブツを止める未亜に、リコは密かに感嘆しつつ呆れていた。
 言葉は人間の最大の武器?


(それに、憐ちゃんが相馬さんを奪って逃げたとして、何処に行くの?
 絶対誰かに捕まるわよ。
 相馬さんを取り込んだら、もうテレポートみたいなのは出来ないなじゃい?)

 うっ、と言葉に詰まる。
 考えてなかったらしい。
 リヴァイアサンは魔力やらマナの塊で、実体を持たないからテレポート紛いのマネが出来る。
 しかし、透を抱えたままそれをやったら、実体のある透だけその場に残していく事になるだろう。
 なら実体化したままゆっくり移動する事しか出来ず、そうなるとこの場から逃げるのも不可能に近い。
 そんなにトロトロしていたら、リヴァイアサンの殆どが浄化されてしまう。


(何より、これが大きいよ。
 こっち側に来れば、体を上げるから…)


(ほ、本当!?)


(うん、本当本当。
 ただ、今の憐ちゃんだと全部は入らないからね。
 取り込んだ魂とか、全部吐き出してもらう事になるよ)


(う、そ、それは…)

 憐にとって、魂を吐き出す事自体は問題ない。
 元々透の代用品みたいな扱いだ。
 魂にしても、呪縛から解放されるのだから大して問題はあるまい。
 呪縛されても現世に留まりたいと願う者も居るかもしれないが、そーゆーのは成仏せずにモンスターとしての幽霊になるだけだ。

 それより問題なのは、魂を吐き出す=鎧が剥がれて武器も消える、という事だ。
 もしも未亜の言葉が嘘だったら、リヴァイアサンは何も出来ない小娘に成り下がる。
 当然、透を取り返す(憐主観)事も出来なくなる。
 一か八かの賭けである。

 未亜は冷静な判断をさせまいと、一気に畳み掛けた。


(体を手に入れたら、何が出来ると思う?
 そりゃ、相馬さんを取り込んだら、意識と意識を繋げて、スリスリとかベタベタとか、作った世界の中で添い寝とか、他にも色々と出来るでしょ。
 でも、それじゃ絶対に出来ない事が一つだけあるのよ!)


(そ、それは何?)


(ズバリ!
 子供を産む事!)


(こっ、こども!?)

 ガビーン、と憐が受けた強いショックが伝わってくる。
 やはり中身は性教育の何たるかも知らない少女。
 『ずっと一緒に居る』までは想像していても、その先は考えていなかったのだろう。
 リコは未亜に向かって目配せした。


(あと一歩ですね! さすがマスター)


(ホホホ、伊達に憐ちゃんより長くブラコンやってないわ!)


 もうノリノリだ。
 甘言を弄して、見事に憐の判断能力を無効化させつつある。

 子供を作れる、なんて言われた憐は、もう想像の範疇を超えてしまったらしい。
 心なしか、リヴァイアサンもフラフラしているし、微妙に赤く染まって見える…夕日のせいだろうか?

 …どうでもいいが、結婚の話といい子供の話といい、見事に透の意思が無視されている。
 この状況で否なんぞと言えるものでもないし、透の承諾を得ようが得まいが関係ないが…。


(で、でもそれならお兄ちゃんを取り込んで、憐の中の世界で…)


(何言ってるのよ、それって単なる想像みたいなモノでしょ?
 憐ちゃんのイメージで作られた子供なんだから。
 言わば想像妊娠。
 憐ちゃんが想像した以上の事は起こらないし、子供が成長する喜びとかも感じられないわよ)


(うぅ…)


(その点、こっちは本物の赤ちゃん。
 ああ、心配しなくても、新しい体を上げるって言ったでしょ?
 血の繋がりは無いから、近親相姦にはならないわ)


(え…?
 お、お兄ちゃんと憐、兄妹じゃなくなるの?)

 おっと、と未亜は慌ててフォローする。
 結婚できると言い含めても、やはり血の繋がりは一種の消せない絆。
 それが断たれる恐怖は、未亜にとっても分からないでもない。
 未亜も、大河から血の繋がりが無い事を教えられた時は、絆が断ち切られたような錯覚を覚えたものだ。
 まぁ、最初から異母兄妹なのだが。


(心配しなくても、戸籍上ならどうとでも出来るし…。
 血の繋がりが欲しいんだったら、相馬さんの血を憐ちゃんの体に注げばいいわ。
 これでノープロブレム!)


(う…う〜ん…)


(可愛いだろうな〜、憐ちゃんの赤ちゃん。
 お肌なんかもうプニプニしてるんだよ?
 ばぶぅばぶぅとか泣きながら、憐ちゃんにだっこを強請ったり、大きくなった憐ちゃんのオッパイからミルクを飲んで…。
 勿論、その隣では相馬さんが、とっても幸せな表情で憐ちゃんを見守ってるの)


(う、う゛う゛う゛う゛う゛!!??)

 悩む。
 悩む悩む。
 悩む悩む悩む悩む悩む悩む悩む悩む憐。
 そしてどんどん浄化されるリヴァイアサン。
 既に半分以下にまで縮んでいる。

 憐はもう完全に、未亜の提案に心が傾いていた。
 あと一押ししてやれば、憐は完全に堕ちる。

 そしてその決定的な一押しを、未亜はさり気なく放った。


(相馬さんも、憐ちゃんとこっちで一緒になりたいって言ってるよ。
 つまり、こっちの世界で赤ちゃんを作りたいって事だよね)


(…お兄ちゃんも…)


 堕ちた。
 未亜はそう確信する。

 事実、リヴァイアサンの浄化スピードは急速に上昇していた。
 見る見る内に小さくなっていくリヴァイアサンに、歓声が上がっている。

 未亜はリコに向けて、親指を立てる。
 リコも同じ動作を返した。


(………本当なのね?)


(ええ、私のお兄ちゃんに誓って)


 誓った割にゃーオモックソ嘘だが。
 確かに憐と一緒に居たいとは思っているが、赤ん坊の事までは…。

 甚だ頼りない誓いだが、憐にとっては充分だ。
 何せ、同じブラコンである。
 兄の為なら神でも踏み倒すというシンパシーが、未亜を完全に信用させた。


(それで、私はどうすればいいの?)


(そのまま暫くじっとしてて。
 魂を全部吐き出してほしいの)


(それから?)


(相馬さんの所に行ってちょうだい。
 そしたら…)

「あの、マスター」


「ん?」
(…ちょっと待って、話しかけられたから)


(うん)

 ふとリコが未亜の袖を引いた。
 一度憐との交信を中止して、リコに顔を向ける。
 リコは真剣な目で未亜に具申した。


「相馬さんの側に居る憐さんの事は、話さない方がいいです。
 リヴァイアサンの憐さんにしてみれば、孤独を全て押し付けた張本人ですし…。
 彼女がそこに居ると聞いたら、反発を起こすかもしれません」


「でも、どっちにしろ二人は会わないといけないよ。
 そうしないと、新しい体に入れられないし」


「ええ、ですが今知られるのと後で知られるのは別でしょう。
 何故なら、今はまだリヴァイアサンとして抵抗する力がありますが、浄化してしまえば知られても暴れる事はできませんから」


「…何気にリコちゃんも腹黒いよね」


 しかしリコの言う事も尤もだ。
 自分が穢れた大人になったような気がして心の中で涙ぐむも、それも今更だと気付いて大きく溜息。
 気を取り直して、憐との通信を再開した。



(待たせてゴメンね。
 魂はどれくらい残ってるかな?)


(…もう殆ど、憐から離れちゃった…。
 なんて言うか、ホッカイロが急に無くなっちゃった感じで、ちょっと寒い…)


(…魂って暖かいの…?
 とにかく、魂を全部吐き出したら、相馬さんの所に行って。 
 そこにルビナスって人が新しい体を用意して待ってるから、その人の指示に従えばいいわ)


(ルビナスさん?
 で、でも憐の姿は…)


(大丈夫、そこに相馬さんも居るの。
 ちゃんと憐ちゃんの姿は見えるから)


(………)

 今更と言えば今更だが、やはり疑心を捨てきれないようだ。
 ブラコン仲間は信用してもいいと思うが…。


(一人で行くのが怖いなら、私と一緒に行こうか?
 憐ちゃんの姿は見えないけど、私に触ってくれれば感触は分かるよ)


(本当?)


(私の魔力感知はちょっと特別なの。
 目では殆ど分からないけど、触れたら分かるわ)

 いつぞや山で目覚めた魔力感知である。
 目で見えるように訓練もしたが、天性の素質なのか、触れて感じる方が未亜には向いているようだ。
 リリィでさえ見えない憐を、触れる事で感じることが出来る。

 しかし、憐は暫く考えて首を横に振った。
 …リヴァイアサンの中で振っていたから、全く見えなかったが。


(憐一人でいい。
 おねぇちゃんと一緒に居たら、また魂とか欲しくなっちゃいそうだから)


(そ、それはちょっと遠慮願いたいなぁ…)


 ベリオ、リリィ


「…本部から信号です!
 解読……『リヴァイアサン消滅』!
 ミッションコンプリートです!」


「…終わっ…た…?」


「…そのようで…」


 力を振り絞り、汗まみれになって魔力を捻出し続けていたベリオとリリィは、呆然と顔を見合わせた。
 まだ魔力を放出しながら、重い首をゆっくり動かしてリヴァイアサンが居た方向を見る。
 確かに、視界を覆っていた巨大な黒い球体は既に無い。
 よく見れば、ごく薄い黒い霧が漂っているようだが、これはリヴァイアサンの残骸だろう。
 放っておいても、すぐさま浄化されてしまう程度でしかない。

 草原のあちこちから、大歓声が沸き起こっている。
 実はまだ作戦は完遂されてはいないのだが、ここから先は機密事項だ。
 ルビナス達が、こっそり憐を体に入れるまでが作戦である。

 ベリオとリリィはもう一度顔を見合わせ、『やり遂げた笑み』を浮かべると、無言で後ろ向きにひっくり返った。


「し、死んだー…」


「私ももう限界…」


 大の字になって荒い息をつきながら、茫洋と呟く。
 ベリオが視界を動かせば、背後でベリオ達のの援護をしていた筈の魔法使い達が、力尽きて気絶しているのが見えた。
 中には口から泡まで吹いている者も居る。
 ベリオ達よりもずっと先に気絶していたのだが、これは責められまい。
 むしろ、召還器持ちにある程度まで着いて行けただけでも勲章モノだ。

 もう、ここには気絶してないのは3人しか居ない。
 ベリオ、リリィと、信号を読み取る役だった兵士一人。
 兵士は本部から信号の続きを読み取り、それからベリオ達の元に水を持って来た。


「あ、ありがとうございます…」


「私たちの事は後でいいから、あっちの皆さんを介護してください。
 私達は、少し休めば復活できますから…」


 半分は強がりだが、実際あちらの方が重症だ。
 兵士は素直に頷き、魔法使い達の看護に当たる。


「…未亜さんと相馬さん、うまくやったみたいですね」

「後はルビナスの領分か…。
 ま、それこそ失敗のしようが無いわね。
 マッドでもルビナスなんだし」

「ふふ、確かに…」

「ま、ここまでやったんだから、成功してくれないと話にならないわ」

「あ…えっと、ブラパピ?」

「略すな!」


 ベリオの懐から、ブラックパピヨンが現れた。
 パペットを起動させたのである。
 慌ててリリィは、魔法使いの看護をしている兵士を見るが、幸いこちらには意識を向けていないようだ。

 それを見て、ブラックパピヨンは鼻で笑った。


「フン、アタシはこれでも怪盗だよ?
 ヒトの意識が逸れた瞬間を狙うなんて、基本中の基本だね」

「前から思ってたんですが、盗みのイロハとか何処で習ったんです…?」

「へぇ、アンタが単独行動できるようになったって聞いたけど…本当だったのね」


 考えてみれば、ブラックパピヨン(パペット)をリリィが見るのは初めてだ。
 しかも、普段の格好ではない。
 その辺の兵士と同じような鎧を纏っていた。
 まぁ、それでも要所要所で露出度が高かったが。

 ブラックパピヨンは、ちょっとポーズを取ってみせる。


「ルビナスの話じゃ、アタシのイメージ次第で服とかも変えられるって話だけど…。
 どうよ?
 ヘンな所は無い?」」

「露出度が高い事を除けばね」

「じゃ問題ないわ。
 それじゃ、とにかくルビナスの所に行ってくるわ。
 …アンタ達も来る?
 お望みとあらば、連れて行ってあげるけど」


 二人は少し考えた。
 別段、この後の事は指示を受けてない。
 好きにしていいという事だろうか?
 しかし、勝手な行動は軍規の乱れに繋がるし、そもそも先程の信号では何か言われているのか?


「…あの、すいません…。
 ……すいませーん、この後の指示はありますかー!?」


 リリィが声を振り絞って(でも普段の声程度しか出なかった)兵士に問いかける。
 兵士は突如出現していた、見慣れぬ兵士(しかも微妙に露出度が高い)に警戒心を持ったようだが、ベリオが知人だと言って誤魔化した。

 兵士によると、リヴァイアサンの消滅が確実なモノとなるまでこのまま待機して、もう大丈夫だと判断されたら、ホワイトカーパス側を警戒しながら後退、そして一度戦端を閉じて(それでも警戒は怠らないが)、体勢の建て直しを図るのだと言う。


「という事は、私達は暫くここを動けないわね。
 リヴァイアサンがいきなり復活して動き出したらコトだし…」

「イヤなコト言わないでくださいよ…」


 正直、もう気力体力魔力精神力その他は限界に達している。
 もう一度出てくるなんて言われた日には、世を儚んで怪しい宗教団体にでも入りたくなってしまう。
 サ○ンはばら撒かないが。


「そーゆー訳で、ブラパピ、ルビナスの方で何があったのか、後で教えてね」

「私が実況中継できますよ」

「あ、そなの?」

「だから略すなって…」

「こんな長ったらしい名前をつけたアンタが悪い」


 自分でも連呼し辛い名前だなー、と思っているブラックパピヨンには反論の余地が無かったそうな。
 それでもせめてBPと、とブツブツ言いながら、ブラックパピヨンはルビナスの元に走り出した。

 走り去るのを眺めて、ベリオとリリィは改めて体の力を抜き、空を見上げる。
 心地よい虚脱感が全身を包んでいる。
 今にも眠ってしまいそうだ。


「…あー…ねむ…」

「まぶた、あけてられない…」


 ウトウトと、二人は眠りに引きずり込まれていった。


 さて、俊足を活かしてルビナスが居る本陣に辿り着いたブラックパピヨン。
 時々警備の兵に見咎められたものの、そこは自前の口八丁を使って煙に巻く。

 ルビナスを見つけるのは簡単だった。
 兵達から少し離れた所で、妙な機械が乱立している。
 誰だって、それがルビナスの仕業だと気付くだろう。


「…ルビナス、いいかい?」

「え? 誰…って、BP?」

「アンタも略すのか…まぁいいけど。
 首尾はどうだい?」

「トントン拍子ね。
 それにしても…」


 ルビナスは鎧姿のブラックパピヨンをしげしげと見る。
 見るだけでなく、手を取って弾力性を確かめたり、鎧の艶を見たり、髪の毛を引っ張ったり。


「な、何すんのさ?」

「いや、使いこなせるようになるのが予想外に早いな、と思って。
 もうちょっと訓練しないと、独立して行動するのは無理だと思ってたんだけど。
 しかもコスチュームまで作れるなんて…」

「そうなのかい?
 コツを掴めば、後は持続力の問題なんだけど」

「意外と適正があったのかしらね…?」


 適正があるのはいい事だが、どうもルビナスが言うと『モルモットの』という枕詞が付きそうで怖い。
 それはともかく、周囲の機械は得体の知れない動作を続けている。
 ルビナスには心地よい場所かもしれないが、ブラックパピヨン的にはあまり居たくない。


「それで、どうなの?」


「さっき未亜ちゃんから、説得が完了したって通信があったわ。
 後は私の領分。
 見えないだろうけど、この辺に…」


 虚空を指すルビナス。


「この辺に、リヴァイアサンじゃない方の憐ちゃんが居るの。
 リヴァイアサンの方の憐ちゃんは、あっちで待機してる相馬さんが連れてくる手筈になってるわ。
 その後、この辺の機械を使って力場を形成、用意された体に一気に押し込むって寸法よ」


「ふぅん…」


 憐が居るであろう虚空に向かってヒラヒラと手を振るブラックパピヨン。
 それはともかく、機械で死角になっている場所に、小柄な少女の体が転がっていた。
 色々な管とかが付けられていて、とても物々しい。


「どうでもいいけど、この体…何時作ったのさ?」


「前に私とナナシちゃんの体を造る時、予備としてストックしてたのよ。
 ホムンクルス創造には色々とミスと言うかランダム要素が含まれるんで、創るときは最低でも3つ以上ってのが常識よ。
 ちなみに造詣は、ツキナちゃんとかヒカルちゃんの証言を基にしているわ。
 ロリっ娘なのに発育がいいって言ってたけど」


「まて、それをあの二人が言ったのか…?」


 言った事は言ったが、もう少しオブラートに包まれていた。
 それはともかく、ピクリとも動かない体はマネキンのようだ。
 ルビナスに言わせると、今は魂も篭ってないし生命活動もしてないから、タンパク質その他で出来たマネキンと大差ない、となる。

 幾つもの機械に囲まれ、死んだように眠る少女。
 その無表情さ故か生気の無さ故か、どこか現実味が感じられない。
 どう見ても生贄に捧げられた少女にしか見えない。


(という事は、生贄を要求した悪魔はルビナスで…いや、ルビナスは悪魔崇拝者で、悪魔は科学?
 むしろ生贄ってのは、人体実験…)


「…ねぇ、いいコト教えてあげよっか?
 あのパペット、私が何もせずに渡したと思う?」


「え゛」


 ニコニコしたままのルビナス。
 が、ブラックパピヨンにはその笑顔の裏になんかオソロシイ物が透けて見えた。
 そのオソロシサに比べたら、心を読まれたっぽい事など些細な事だ。
 何をした、と聞くべきか?
 いやいや、それこそ恐ろしい…。


「そそそそそんな事より!
 本当に大丈夫なんだろうね!?
 ここの憐ちゃんとあっちの憐ちゃんが顔を合わせたら、反発するんじゃないのかい!?」


「あー、大丈夫大丈夫。
 そりゃ反発はあるだろうけど、それ以上の充足感をあげて誤魔化すから」


「? 充足感…?」


 ルビナスは少し考え込んだ。
 魂の構造などは、ルビナスも把握しきっているのではない。
 大体そういうモノとしか言えないのだ。
 そんな曖昧な認識を確定事項であるかのように語るのは、真理を求める錬金術師としては少々噴飯モノだが…。


「孤独を埋めてあげればいいのよ。
 いい?
 未亜ちゃんが提案した作戦…つまり、相馬さんを餌にしてこっち側に引き込んだのは分かるわよね」


「ああ、要するに『こっちにくれば一人じゃなくなるよ』ってコトだろ?
 リヴァイアサンのまま孤独を和らげるのは難しいから、待っている人が居るここに来い、と」


「そういう事。
 でも、それじゃ寄り添う温もりを得る事が出来ても、内に抱えた孤独は消えない。
 本体から切り離された、捨てられたという意識がある。
 ……憐ちゃん、申し訳ないと思っているなら、ちゃんとあっちの憐ちゃんを受け止めなさいよ」


 虚空に向かって話しかけるルビナス。
 憐は孤独を押し付けた半身を思って沈んでいたが、ルビナスに声をかけられて持ち直した。
 …でもルビナスは明後日の方向を向いていたが。


「温もりは相馬さんが居る。
 だから、残った孤独は憐ちゃんが埋める。
 一つになる事で埋める。
 元々、魂と体はお互いを求め合うのよ。
 普通なら切り離された時点でその働きを止めるのだけど、切り離されながらも何らかの繋がりがあった場合は」


「死滅せずに、魂は肉体に帰りたいと願い、肉体は魂を渇望する?」


「そう。
 魂同士も同じ事。
 欠けた状態なら、完全な状態に戻りたがる。
 そもそも、人間とは不完全な存在で、生まれた時から何処か欠けている。
 それを埋めようとして、生きて、友を作り、恋人を作り、家族を作り、子を為す。
 ま、どんな形が『完全』で、どこを指して『不完全』というかはまた別の話ね。
 憐ちゃんだってそうでしょ?
 向こうの子ほどじゃないけど、また一つになりたいって思ってるんじゃない?」


 図星だ。
 ルビナス達には見えないが。
 ずっと、辛い事全てを押し付けた事に対して負い目を感じてきた。
 彼女と分離した瞬間、片腕が消えてしまったかのような喪失感を感じたのを覚えている。
 しかし、それを今更埋められるのか?
 孤独と狂気を押し付け、一人でのうのうとしていた自分が…。
 憐はそれが気懸かりだった。


 結局の所、憐の懸念は杞憂に終わった。
 透が連れてきた憐を見た途端に、負い目が全て吹き飛んだのである。
 それはリヴァイアサンの憐も同じだった。

 憐と憐は、黙ってお互いを見据えて近づく。
 それを透は、ハラハラドキドキしながら見守っていた。
 ルビナスとブラックパピヨンも、有事に備えてすぐに動ける体勢になっている…何も見えて無いが。

 沈黙を保って対峙する憐と憐。
 沈黙に耐えかね、透が口を開こうとしたその時。


『…寂しかった』

『憐も寂しかった』

『ずっと欠片のまま彷徨っていた』

『ずっと欠けたまま彷徨っていた』

『私は憐、憐はあなた、憐は憐』

『憐達は二人で憐だから、憐の寂しさは憐の寂しさ』

『どっちが切り捨てられた欠片かなんて、関係ない』

『どちらかが感じた事は、もう一方が感じた事』

『『私は憐。
  欠けた魂を埋めたいと願う、一人の憐』』

 まるで催眠術にでもかかったかのように、二人の憐は朗々と語る。
 唯一聞こえている透には、二人が何を言っているのか理解できない。
 無理も無いだろう、自分が二人居る感覚など、普通は理解できない。
 大河という同一存在こそ居るものの、似ているというだけで根が別人だ。

 何が起こっているのか理解できないが、少なくとも危険な雰囲気はしない。
 むしろ、離れ離れになっていた家族が再会したかのような印象を受ける。


「…相馬さん、どうなってるの?」


「よく分からないけど…どうも、一つになりたいって言ってるみたいです…」


 直感的に意訳する透だが、大筋はそれでいい。
 憐は、切り捨てた憐に対する負い目を持っていた。
 リヴァイアサンの憐は、自分を切り捨てた本体に対して、怨みを持っていた。
 しかし、二人は今、その両方を圧倒する感覚に支配されている。
 それは、魂の共振。
 分かたれた存在が、あるべき姿に戻りたいと願う衝動。
 その衝動は、あらゆる垣根を取り払ってしまう程に強力なのだ。

『…憐は、憐の溜め込んだ狂気を受け入れるよ』

『…憐は、憐が経験してきた喜びを感じたいよ』

『『だから、一つに戻るの』』


 ゆっくりと、二人の憐は互いに向かって倒れこむように歩を進めた。
 まるで、恋人に抱きとめてもらうのを期待するかのように。
 まるで、世界一柔らかいベッドに向かって身を投げるように。
 まるで、泉の中に身を投げるように。

 透は見た。
 二人の存在が溶け合う…否、組み合わさって作り変わるのを。
 二人の体が触れ合った途端、触れた場所からノイズが走ったかのように不鮮明になるのを。
 そして、激しいノイズの中に、一人の憐が立っているのを。

 言葉も出せずに唖然とする透の前で、目を閉じ両手を合わせて立つ憐。
 その左目から、涙が一滴零れた。
 それはリヴァイアサンだった憐が感じた、喜びの涙。
 その右目から、涙が一滴零れた。
 それは憐が受け入れて知った、寂寥の涙。

 憐はゆっくり目を開いた。
 自分の存在を確かめるように、両手を開いたり握ったりする。


『……』

「……憐…?」

『………お兄ちゃん…!』


 暫く視点が宙を彷徨っていたが、やがて透を捕らえる。
 すると、憐は透が今まで見た事もないくらいに満面の笑顔を見せた。


『お兄ちゃん!』

「憐!」


 感極まって、透に抱きつこうとする憐。
 そして受け止めようとする透。


 スカッ


 素通り。


「…………」

『…………』

「…………」

『…………』


 …とても気まずい。
 憐も透も額に汗を垂らし、抱きつこうとした両手を微妙にワキワキさせている。

 二人だった憐が一人に戻っても、物理的に触れられるようになったりはしないらしい。


 そんな二人(或いは透だけ)を、何が起きてるのか大体把握しつつも黙って見物しているのが二人。
 ブラックパピヨンなんかは、今にも笑い出しそうだ。
 が、今笑っては流石に…。
 もう雰囲気なんかはブチ壊れているが。


「ぷぷ……。
 ル、ルビナス?
 アンタ、これを予想してたの?」


「可能性の一つとしてはね。
 全く同じ魂同士が立ち会う瞬間なんて、私も聞いた事無かったから…。
 衝動的に一つに戻る可能性はあったけど、正直確立は低いと見てたわ」


「ココロもカラダも一つにならない?
 それはとても気持ちいい事なのよ…ってヤツ?
 いやそっちもだけど、どっちかと言うとあのザマを…」


「…確立は低いと見てたわ」


 ブラックパピヨンから視線を逸らし、微妙に震える口元を隠すルビナス。
 幾らなんでも悪趣味だ、と自分でも思っているのかもしれない。

 もう暫く見物していたい所だが、そろそろ憐が泣き出しそうな雰囲気が伝わってくる。


「はーいはいはい、コントはその辺にしておいて。
 憐ちゃん、体をあげるから、その後改めて抱きつきなさい」


『「コ、コント…」』


 何気ない一言で落ち込んだ二人だが、憐はアッサリ立ち直った。
 念願の肉体を手に入れられるのだから、こっちが先だ。


「相馬、アンタも何時までも項垂れてないで、憐ちゃんの通訳しなよ」


「あ、あぁ…」


 ブラックパピヨンに軽く蹴られて、透は何とか立ち直った。

 ルビナスはスイッチでも入ったのか、物凄い勢いで周囲の機械を操作していく。
 …ブラックパピヨンは、こっそり機械郡から距離を取った。


「あー、憐ちゃん、そっちの巨大フラスコの中に入ってちょうだい。
 相馬さん、入ったら教えてね」

『はーい』

「もう入ったよ」

「それじゃ、そこに転がってる体をそっちの座席に座らせて」

「転がって…?
 うおっ、死体遺棄!?」


 指示された憐は、壁抜けを使ってフラスコの中に入り込んだ。
 ルビナスは計器のみに視線を注ぎながら指示を飛ばす。
 透が滅茶苦茶ビビッてたが、まぁ無視の方向で。


「…ところで相馬。
 現場の方はどんな按配だい?」


「現場…って、ああ戦場の方か。
 まぁ、ヤバそうなのが消えたってんで大喜びしてるよ。
 さっき将軍達にも会ってきたけど、一山越えて安心してるって感じだった」


「撤退の準備は?」


「最優先でやってる。
 今ここで魔物に襲われたら、抵抗の仕様がないからな」


 さすがはドムとタイラー。
 勝って兜の尾を締めよ、を実践しているようだ。
 やはり、リヴァイアサンを相手にするのに使った労力は生半可ではなかったらしい。
 話を聞いた憐がどんな反応をするのか、と思った透だったが、幸い憐が入っているフラスコは防音らしい。


「それじゃ、機構兵団の方は?」


「もうすぐ目を覚ますってさ。
 ただ、やっぱり即座に戦闘とは行かないから…」


「奥に引っ込めて、念入りに調査する必要がある…か。
 こりゃ戦線離脱かな?」


「多分」


 機構兵団の火力が無くなるのは痛いが、仕方ない。
 とは言え、そうゆっくりもしていられないのだ。
 まだV・S・Sの件は片付いていない。
 クーウォン率いるフェタオが今頃攻撃を仕掛けているだろうが…。


「…リャンも戻ってきたんだし、アキラもクーウォンも無事で居てくれよ…」


 V・S・S本社


 本来なら、人工的な、不自然なまでの静寂が満ちている筈のV・S・S本社。
 しかし、この日に限っては静寂など一片たりとも残さぬ大音量が吹き荒れていた。

 爆音。
 足音。
 悲鳴。
 銃撃音。
 鈍器の音。
 戦いの音。

 V・S・Sを襲撃したフェタオと、反撃のために借り出されたシュミクラム部隊が戦っているのである。
 轟音の嵐を圧して、クーウォンの檄が響く。


「怯むな!
 奴らはシュミクラムの性能を活かしきれていない!
 スピードで引っ掻き回せば、銃弾は殆ど怖くはないぞ!」


 クーウォンの言う通り、戦っているシュミクラム部隊の錬度は、お世辞にも高いとは言えない。
 一つ一つの技量は高い方だし、連携も及第点なくらいには上手い。
 だが、どうにもぎこちないのである。
 まるでハイスペックな機体を素人に持たせたような感じで、何をするにも判断に一瞬のタイムラグがあるのだ。

 この欠陥が、単に個人個人の素質によるものなのか、それともレイカ・タチバナに施されたであろう洗脳処理の構造的欠陥によるものかは定かではない。
 いずれにせよ、そこに弱点があるなら付け込ませてもらうまでだ。


「私が切り込む、後に続け!」


 クーウォンは躊躇いもせずに、弾丸の嵐に身を晒した。
 恐怖する様子も見せず、火花の散る廊下を突進して行く。
 勿論、ヤケや勢いでこんな事をしているのではない。
 飛び道具に対する場合のセオリーは、身を低くする事。
 中国拳法にありそうな歩方で、クーウォンは銃弾の下を潜り抜ける。
 その神業的技量に、フェタオから感嘆の声が上がる。


「ぬぅん!」


 ある程度まで接近すると、クーウォンは自分に多くの銃口が集まっているのを確認してから、壁に向かって鋭く跳躍。
 足から壁に着地し、強靭な脚力と腹筋で角度を保ち、もう一度銃口が向けられる前に壁を走って進む。
 シュミクラム部隊が反応する前に。


「ねりゃあ!」


 クーウォンは壁を強く蹴って飛んだ。
 シュミクラム達の頭上を通過し、反対側の壁にまた足から着地する。
 そしてもう一度跳ぶ。

 シュミクラム部隊は自らを飛び越えたクーウォンに向けて銃口を向けようとするが、腕が上がらない。
 頭上を飛び越える一瞬に、クーウォンが神速の一撃を叩き込んだのである。
 肩を叩き潰された者、手を砕かれた者、延髄に一撃を食らった者、銃を粉々にされた者。
 このような事態を、レイカ・タチバナは予想しなかったのだろうか?
 非常識…想定外のクーウォンの行動に、反応の遅れが生じた。


「いっけぇぇぇぇぇ!」


「ウラアアアアァァァ!!!」


「ダワイダワイ!」


 なんか色々な言葉で叫びながら、アキラを筆頭にフェタオがシュミクラム部隊に突撃する。
 咄嗟に反応したシュミクラム部隊も居たものの、発砲された銃弾は数人の手足を傷つけるだけ。
 致命傷にもならないし、戦闘力が奪われるような傷にもならなかった。

 そして、フェタオは一気にシュミクラム部隊の防衛戦線を突破する。
 勢いのままにシュミクラムにタックルし、数人係りで組み付いて、見えるコードを片っ端から引き千切りにかかったのだ。
 こうなるとシュミクラムの耐久力とか防御力は、殆ど意味を成さなくなる。
 厄介だったのは、シュミクラム部隊を数人がかりで捕まえると、その密集している所を狙って別のシュミクラムが銃弾を打ち込む事だが…。
 どうやら洗脳されて刷り込まれたマニュアルには、効率的に敵を倒すためなら味方を犠牲にする方法も記載されているらしい。

 フェタオの戦闘員も無事では済まず、銃弾を受けたり殴り飛ばされたりして重傷を負う者も居た。
 そんな怪我人達は回収され、後方で回復魔法による治療を受けている。


 シュミクラム部隊は、不利な状況に追い込まれつつあるが声も出さない。
 酷く機械的な、或いは昆虫のように無機質な印象のまま、ずっとフェタオに抵抗し続けている。

 敵味方問わず、廊下には怪我人・死人が横たわる。
 このままではジリ貧だ。
 このシュミクラム部隊は、恐らくレイカ・タチバナ直属の親衛隊だろう。
 どのシュミクラムも、装甲の一部にV・S・Sのマークが入っている。
 このマークは、学生時代にレイカが好んで使っていたマークだ。
 彼女は妙に自己顕示欲が強い所があり、何かというとシンボルマークをあちこちに書き残す癖があった。


(こういう所だけは変わらんな…)


 苦々しげに思う。

 それはともかく、敵はシュミクラム部隊だけではない。
 生身の警備兵も来るだろう。
 クーウォン一人でも、生身の警備兵を圧倒する事は出来るが、人海戦術で来られると抵抗しきれない。
 シュミクラムで覆われている親衛隊とは違い、こちらは防御力はそれほど高くないのだ。
 さほど威力の無い攻撃でも、当たり所によっては充分に戦闘力を奪える。


(増援が来る前に、何か手を打たねば…)


 リャンが居ないのが痛い。
 彼女が居れば、生身の警備兵が来ても幾らか持ち堪えられただろうに。

 王宮から齎されたV・S・S本社の地図によれば、レイカ・タチバナの居ると思しき場所は遥か遠い。
 ならV・S・Sの不正の証拠になるナニかが無いかと思えば、ありそうな場所はこれまた遠い。
 計画通りなら、フェタオの影に隠れて間者がV・S・Sに忍び込み、不正の証拠を探している筈。
 フェタオは不正の証拠が見つかり、更に王宮がV・S・Sに戦力を派遣する(建前上)まで粘っていればいい。


(できれば私の手で終わらせたかったのだがな…)


 それが出来れば、クーウォンは自分の過去を少しだけ清算できるような気がしていた。
 しかし、それもこの状況では単なる夢想である。
 無理に進行して、犠牲者を出す訳にはいかない。
 自分達が陽動である事を悟られない程度に進行しながら、クーウォンは透達の事を思う。

 憐はどうなっただろうか?

 過ぎった思いを、すぐに振り払う。
 ここは戦場だ。
 余計な思いを抱いていれば、足が鈍って集中砲火を食らう。
 今は余計な事を考えない。


「大型火器が来たぞ!
 防壁を張って、衝撃に備え!」


 建物の中だというのに、ロケットランチャーまで持ち出してきた。
 レイカが施した洗脳やら戦闘マニュアルやらに疑問を抱く。
 この建物ごと心中するつもりか?


(まぁ、確かにレイカは頭がいいが…。
 何もかもを最初から知っている訳ではないしな。
 あれで意外とアバウトだし…)


 大方、洗脳に力を入れすぎて、スキルの刷り込みに失敗したか、適当に見繕ってきたマニュアルが見当違いのモノだったのだろう。
 それに、親衛隊がこれほどに追い込まれた経験は一度も無いだろう。
 いや、そもそも戦闘自体全く無かったのかもしれない。
 何せV・S・S本社を警護しているだけなのだ。
 こんな所に戦闘を仕掛けるのはフェタオくらいしか居ないし、仮に忍び込もうとしたバカが居ても、精々危険を危険と認識できない愚か者程度。
 一方的に打ち据える経験ならあっても、危機に追い込まれた経験は無い。


(何にせよ好機だ。
 あれを防いだら、嵩にかかって一気に攻める!)


 深い追いしすぎないように注意しつつも、親衛隊を丸ごとブチのめす勢いのクーウォンだった。

 防壁を張った廊下に向けて、ロケット砲が飛ぶ。
 爆炎が吹き荒れる事を予想して、クーウォン達は身を低く伏せた。

 轟音。
 V・S・S本社がビリビリと震えた。
 …レイカ・タチバナは、本当に彼らを警備員にするつもりでいたのだろうか?
 どう考えても、選別基準というか行動理念に致命的な欠陥があると思うのだが。


(…まさか、親衛隊とは名ばかりで、単なるモルモットなのか?
 使い物になる一部のメンバーだけを連れて高飛びし、今残っているのは不要になった元親衛隊だけ…?)


 少し考え、クーウォンは内心で首を横に振る。
 レイカの偏執的とも言える性格はよく知っている。
 良くも悪くも、彼女は自分の物を他人に傷つけられたり、手の中の物を捨てる事を良しとしない。
 それが高じて、自分の物を手元に留めておく為なら、他の何者をも排除する…という風に歪んだのではないか、とクーウォンは推測している。
 何にせよ、レイカ・タチバナにも美学というモノがあるのだ。
 同じ切り捨てるにしても、こんなやり方はしない。
 始末するなら、徹底してやる。
 敵の前に放り出して、『適当にやって全滅しろ』なんて事はしないのだ。
 むしろ、逐一自分で指示して、襲撃してきたフェタオを粗方撃退した後、戦って死んだように見せかけて自殺させる。
 そう、自分の指示で。

 ついでに付け加えると、こうして見る限り、親衛隊達はレイカ好みの美少年美少女ばかり。
 大方、洗脳する過程でアレやコレやと楽しんでいたのだろう。
 洗脳した後も、彼らを並べて鑑賞したりしていたかもしれない。
 言わばコレクション。
 それをそう簡単に手放すか?

 それより何より、V・S・Sはレイカのやってきた事の集大成だ。
 勿論、この建物も。
 それを崩壊させようなど、レイカには思いも寄らぬ筈。


「という事は、やはりレイカ・タチバナはこの先に居る。
 あの雌狐も、所詮は人…。
 捨てられぬモノがあるのだな」


 実際、レイカが何を考えてここまで来たのかは知らないが…。


「もういい、底が見えた。
 お前との因縁も、ここで全て終わりだ。
 どぉけぇぇぇぇぇ!!!!!!」


 裂帛の咆哮と共に、クーウォンが再び突撃する。
 その気迫に揺るがされたのでもないだろうが、親衛隊達の射撃が一瞬止まる。
 そして、フェタオはその隙を見逃さなかった。


「これでも食らえィ!」

「うおりゃぁ!」


 密集している場所に向けて、フェタオのメンバーが何かを投げる。
 金属で出来た楕円の何か……手榴弾である。
 動けなくしたシュミクラムから、適当にかっぱらって来たのである。
 ちなみに、シュミクラムから取り外したのはアキラだ。
 彼は既に、クーウォンの右腕ならぬ左腕と呼ばれる程の信頼を得ている。
 元々器用なヤツなのだ。

 親衛隊達は、普段ならすぐに散会する所だろうが、迫るクーウォンと手榴弾、そしてうかつに動けない程に密集した状況のため、判断から行動にタイムラグが出た。


ズドオオォォズドオオォォン!


 連鎖する爆発。
 V・S・S本社が洒落にならない勢いで揺れ、柱にヒビが入った。
 もうちょっと暴れれば、本社を丸ごと解体できそうである。

 バランスを崩し、立て直そうとする親衛隊達。
 その隙間を縫って、銀光が走りぬけた。
 そして、急にシステムダウンするシュミクラム。
 クーウォンが親衛隊達の隙間を通り抜けながら、懐に持っていたナイフでシュミクラムの重要な回路や配線を傷つけて行ったのである。
 こうなってしまえば、もう親衛隊は怖くない。
 シュミクラムというクソ重たい鎧を着込んでいるため、防御力こそ高いものの動きが酷く鈍間になってしまう。
 殆ど動けない親衛隊達を、フェタオのメンバー達が拘束して回る。
 拘束に使用したのは、やっぱりシュミクラムの装備だったワイヤーである。
 まず引き千切れない。


「さて、親衛隊はほぼ片付いたようだし、レイカは…」


「クーウォン殿」


「む!?」


 背後からかけられた、聞き覚えの無い声。
 反射的に、クーウォンは背後に裏券を放っていた。
 しかし、手応えは返ってこない。

 素早く周囲を警戒するが、まだ動ける敵は誰も居ない。
 フェタオのメンバー達は、親衛隊を縛るのに忙しい。
 …相手が美少女とは言え、シュミクラムの上から亀甲縛りにして楽しいか?

 クーウォンが何者、と誰何の声を上げる前に、謎の声は続けた。


「潜入していた別働隊でございます。
 お役目ご苦労さまでした」


「…いえ。
 それで、成果の方は?」


「充分です。
 あと5分程で王宮からの部隊が参りますので、合わせて撤退をお願いします」


「了解した。
 ………レイカ・タチバナは…」


「既に確保しております。
 …申し訳ありませぬが、クーウォン殿と合間見える事は…」


「…いや、分かっている。
 それでは、そちらはお任せします」


「御意」


 声は聞こえなくなった。
 去り際も気配は一切無い。
 改めて王宮の力を実感した気がするクーウォンだった。

 それよりも…。


「…結局…これが私とお前の終わりか…」


 誰とも無しに、クーウォンは呟いた。
 この手でレイカを斬り捨てるのでもなく、この手で彼女の悪行を世に晒すのでもなく。
 クーウォンは単なる囮として、レイカ・タチバナと顔を合わせる事無く終わるのか。

 何とも宙ぶらりんな気持ちだった。
 過去の過ちに決着をつけたのではない。
 彼女と決別したのでもない。
 彼女を止め、終わらせるのはきっと自分だと思っていたのに。


「…いや、こういうモノなのかもしれんな。
 罪を犯した子羊には、神は懺悔の機会も与えない…。
 レイカを殺して、一つの物語を終わらせる事は出来ない。
 一生背負っていくのだ…」


 物語の終末に立ち会えず、蚊帳の外で、ただやりきれない思いだけが残る。
 クーウォンは唇を噛んで、それを受け入れた。


「…みんな、撤収するぞ!
 後は全て予定通りに運べ!」


 フェタオが撤退を始めてから数分後、王宮から警備隊が派遣されてきた。
 本来なら機動隊に当たる部隊が派遣されるのだが、フェタオが予想以上に暴れてくれたため、こっちでもよかろう、との事になったのだ。
 機動隊よりも警備隊の方が、動かすのに必要な手続きが少ない。
 よりスピーディな派遣が可能となる。

 その警備隊は、フェタオによって壊滅的なダメージを受けたV・S・S本社に乗り込み、動けなくされていたレイカ・タチバナ親衛隊員を次々に保護していった。
 またレイカ・タチバナも、一室で書類に埋もれて眠っていたそうだ。
 その書類は幾つもの不正の証拠だったらしい。
 気絶していたレイカ・タチバナは、軍の病院に運び込まれた。
 洗脳を受けていた親衛隊は、精神病院へ纏めて収納。

 そして洗脳を受けてなかった一般社員達は、纏めて大会議室に放り込まれていた。
 幾人かが襲撃から逃れ、外に出て助けを呼んだようだが…結局意味は無かったようだ。
 彼らはそれぞれ検査を受けた後、事情徴収を受ける事になる。


 クーウォンは離れた場所から、大騒ぎになっているV・S・Sを眺めていた。
 警備隊やら逮捕令状を持った警察やら赤十字やら、あんなに沢山でドタバタしたら、ダメージを受けている建物が倒壊してしまうのではないかとクーウォンは思った。

 そのクーウォンに、アキラが駆け寄ってきた。


「クーウォンさん、透達の方も終わったみたいです。
 何とか成功、って言ってました」


「そうか…。
 これで、悪夢は終わりだ…」


 大きなため息をつく。
 クーウォンは一度に10年も老け込んだかのように、気力の尽きた表情をしている。
 無理も無いな、とアキラは思う。
 …だが。


「…これで全部、じゃないんですよね」


「…そうだな。
 洗脳技術を持っているのは、V・S・Sの上位会社である謝華グループも同じ…。
 こちらも叩き潰すまで、戦いは続くのだ」


 …戦の巷からは逃げられそうにない。




卒論ほぼ完成しました!
先生に検査してもらってから提出しようと思ったのですが…ティーチャー、どこ行ったー?
でも同じ研究室の人達は散々苦労してるみたいです。
あと2週間くらいなのに…。
手伝ってますが、言ってはなんだけど所詮は他人事w

リヴァイアサン説得は、かなりご都合主義というか作戦も何もあったものじゃありませんでした。
不満とか沢山出るような気もしますが…まぁ、取りあえずこれも修羅場の為の伏線という事で。
それではレス返しです!


1.renga様
そう、あのRSです。
一見すると勘違いした忍者マニアなのに、その実…という、珍しいくらいの2面キャラ。
個人的に、ああまで変わりようが激しいのは珍しい気がします…いや、そうでもなかったっけ?


2.パッサッジョ様
アフロ神?
外見で言うなら、完全に荒神サマですw
ムキムキマッチョで黄金率的アフロを誇り、ついでにアフロの中から小さな角が二本ほど顔を覗かせています。
なお、胸毛凄まじし。

マジでRSはバカンスだったんですが…どうしても深読みしてしまいます…。


3.アレス=ジェイド=アンバー様
死神って、死者を行くべき所へ連れて行く役目もあるんですよね…。
連れて行こうにも問答無用で逃げられる気が…。

個人的には、因果と称してストレートとかパイルバンカーとかやらせてみようかと思ったのですが。
しかし、ああいうシリアスシーンぶっ壊しは久々にやった気がします。
最初は「これ、雰囲気ぶっ壊されて怒る人とか居るかも…」と考えていたのですが、よくよく考えるとずっと前からこんな感じだったような。

憐は一人に戻してしまいました。
これ以上キャラを増やすなら、誰か退場させんと…。


4.くろこげ様
久々に本領発揮が出来た気がしますw


5.Campari様
事実は小説より奇なり、です。
あと100分の1の確立は、最初の一回で起きるという言葉もあります。
だからカエデが偶然RSと接触してても、何もおかしくないんです。
…という事にしておいてくださいw

セプは絡んでませんよ。
一応ネットワーク…セプも一応これに含まれます…の力が及ばない世界、という事になってますから。

そうですね、バルド祭りもほぼ終了ですし、後始末をして、それから救世主クラスにスポットが戻る…という事になるでしょうか。

時守も、まさかここまで話が続いて、ここまで話が大きくなるとは…予想外でした。
最初は原作に沿ってチョコチョコやってくだけだと思っていたのに…。
その分、伏線の消化を山ほど忘れてそうですが。
これも皆様のお陰です!


6.amount様
使ったのはカエデですよ?
しかも悪ノリして見につけたヤツです。
だからどんな不条理があってもおかしくないし、設定無視も…ごめんなさい、深く考えてませんでした。


7&8.イスピン様
歌月ですか、懐かしい…。
たまたま月姫より先に入手してやったんですが…。
やっぱ原作やってなかったから、中身がサッパリ理解できませんでした。

うーん…経験してない事を覚えていても問題は無い、ですか。
確かにその通りです。
まぁ、ぶっちゃけコレの場合はご都合主義なのですが。

うお、アフロ神が無視された!?
ぬぅ、もっとインパクトのあるヤツを出せという事ですか?


9.竜の抜け殻様
これからもちょくちょくこのコンボを使おうかな、と画策していたりします。
まぁ、アフロになれるヤツがあんまり居ないんで、企画倒れになりそうですが。

タイラーって格闘技素人ですよね…それで活を入れるのは無理っぽいなぁ。
実際、アレってどうやるんでしょう?
殴るだけ?


10.カシス・ユウ・シンクレア様
…ゲンハって、ナチュラルアフロだったような気が…。
確かにボリュームはあまり大きくなかったですが。
…確認してきました。
ありゃアフロじゃ無いっすね。
横から見るとアフロっぽいんですが。

タイラー閣下って、天才なんですけど何処かで洒落にならないミスをしてそうなんですよね。
そのミスが何故か有利に働きそうなのですが。
ルビナスのスタンロッド、実は現実世界のシュミクラムの武器だったりしますw

憐嬢が増えたら、もう手に負えません。
ただでさえ(消音)を計画しているのに…。
そういう訳で、一人に戻ってもらいました。


11.悠真様
すいません、時守の頭の中では何故かゲンハがアフロになっていました。
正面から見るとアフロじゃないんですが、角度を変えたら何故かアフロに見える。
それでインプットされてしまったようです。
ま、成仏したんだからいーかw

アフロ神族?
…アース神族やヴァン神族よりよっぽど手強いな…。


12.だれかさん
あ、ミスってた…。
ご指摘ありがとうございます<m(__)m>


13.なまけもの様
ご指摘ありがとうございます<m(__)m>

コードネーム…ブラコンと1千歳にしようかと思ったのですが、前者はインパクトが無さすぎ、後者はルビナスにブッコロされそうなので止めました。


14.YY44様
シュミクラムの武装は、あれは夢の中だからドラエもんのポケットよろしく幾らでも出てくるんです…という事にしておいてください。
どういう風に装着してるかなんて、全然考えてなかった…(汗)
アーマードコアなら、重量過多で出撃不可かな…。
使用の基準としては、時守の印象に残っている武器ですかね。

最終回に…ザ・パワーとして出てくるとか!?
…しかし、空とか宇宙にうっすら浮かぶゲンハ…不気味だ…。


15.陣様
風邪ですか、寒い季節ですからね…お体にお気をつけて…。

…想像して、それが実現してしまうから…洋介やカイラは入れなかったんですよぅ。

ラブラブ天驚拳?
むぅ…Eフィンガーでゴッドフィンガーが出来るんだから、シュミクラムの機能に何か付いてるかも…。
いや、出来ればその前に超級覇王電影弾を…。

……おえ。
いやいや、両性じゃなく無性という可能性も…そっちの方がまだマシ…。

あとヒルアンドン又はチョーキョヌー(ダリア)とメガネネコ(ミュリエル)かな。
何でミュリエルにメガネ立ち絵が無いんだろう…戦闘ではあるのに…何故だー!


16.神竜王様
本当、何であのタイミングで来るんでしょうか…。
半ばマジで書いた記憶が…。

きっとルビナスの狂雷は、それはもういい塩梅に迸っていた事でしょう。
だってルビナス作のシュミクラムの武装ですよ?
生身の透が食らったら普通に心停止しますって。

カエデ巨大化…うーむ、どうしよう…。
前からやりたいやりたいと思っていたのですが。
いっそ満月を見たら体がムズムズして巨大化…だめだ、シッポが無い…。


17.ナイトメア様
お久しぶりです!

今の所出すつもりはないんですが…と言うかそもそも出した覚えもないんですが…。
…また何処かで顔を合わせそうです…。
具体的に言うと、某主幹近辺で。

鼻毛アフロか…。
ボーボボとかもあるし…でも試した事ないなぁ。
ダウニー7変化のオマケにでもやってみようかな?

カエデとRSって、ニンジャって事以外は共通点無いですよね。
狼男の方は、敵討ちって点で一致してますが。

バルド編は一応これで終了です。
後始末と、それからデュエルメンバーと一緒にちょくちょく出てくる予定ですが。
“破滅”にはお笑い属性必須なら、救世主クラスにはアレな性癖必須ですな。
どっちが幸せだったのやら…。

時守もアフロ神に一票!


18&19.JUDO様
ゲンハについては、純粋に時守の力量不足ですね。
根が小心者なだけに、狂気や完全な悪人を書くのが辛くて…。

そーいえば、893未亜が全然出てませんね。
軍曹未亜も一回きりだったし…。
また何処かで出番作ろうかな…。

多分、レイカ・タチバナには見せ場は巡ってこないと思います。
もう捕獲されてしまいましたし…何よりこれ以上長引くと、本気で時守が…。

マテリアルパズルですか、時守は途中までしか読んでませんが…あの人ですからねぇ。
清杉の頃から読んでますから、ある程度の予想は付くんですがw

ダウニーの側に居た人影は、完全にオリジナル…いや、そうでもないのかな…。
まぁモデルとなったキャラからは大分違ってますし、オリキャラって事で。
もう出てるキャラですよ。

うう、SPIRITまだ読んでません…。

投稿図書の過去ログですか?
あっちは読んでなかったな…。
今度巡ってみます。


20.なな月様
40冊…時守もそこまで買った事は無いです…。
頑張って読破してくださいw

いっそデュワッ、とか言わせてみようかと思ったのですが、ナナシの被るのでパスです。

シュミクラムバトル、何とか上手く描けたようでホッとしています。
あのデカブツミサイル、誰が使うんだろう…?
着弾までに30秒くらいあったような。

あのヒゲオヤジの方だと、キノコ食べさせて巨大化させねばならない気がするので…。
む? リクエストがあった巨大化カエデ、それで実行してみようかな…。

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