シネマ村の貸衣装屋で、ネットアイドルちう――本名、長谷川千雨は、ため息混じりに地味な巫女服を選んだ
(もしも個人で来ていたら色々試してみたかったけどな…)
クラスメートがいる前ではそうもいかない。千雨の横ではシルクハットを被った千鶴が、町娘風の着物をチョイスした夏美の着付けをしている。
(つくづく中学生離れした体つきしてやがんなー)
千雨は、スーツとドレスを足して二で割ったような服装を内側から押し上げる、千鶴の二つの脂肪の塊を見ながら思う。自分の体型も捨てたものではないとは思うが、クラスナンバーワン巨乳を目の当たりにすると、そんな自信も霞んでくる。
(つか、胸がでかいのが多すぎるぞ)
千鶴と楓と、そして龍宮が三強。そしてそれに加えて
(あの横島も、でかいよなぁ…)
同じ胸囲の楓と10センチ以上の身長差があるにも関わらず、アンバランスな感じがしない。それはひとえに形が良いからだ。
(アイツはホント変人クイーンだ)
千雨は横島という人間について改めて考える。
ルックスのスペックはもとより、その他の経歴も嗜好も行動原理も、常識というものを無視するどころか、ワザと踏破しているようにしか思えない。
おまけに、なんとプロのGSだというではないか。
(中学生で幽霊と戦うってどんな三文ラノベだよ!)
GS――ひいてはオカルトというものは、四年前のアシュタロス事件によって大分認知されてきているが、しかし根本的にはまだ胡散臭いものという風潮が蔓延している。千雨のような一般人にしてみれば、GSなんて職業は、ある意味宇宙飛行士よりも縁遠い職業だ。
(そういう非常識なもんには死んでも関わるつもりはなかったんだけどなぁ…)
残念ながら、その非常識は向こうからやってきて、千雨の周囲で様々なイベントを引き起こしまくる。
初日の行方不明然り。
相坂さよの件然り。
数日後の同性愛者宣言然り。
そして昨日の夜の―――
(…あれは絶対、怪しすぎる)
クラスのバカ共は大半納得したようだったが、しかし客観的に考えればおかしい所だらけだ。
(それに、あのパパラッチも今朝から様子が変だ)
昨日の正座の段階ではあんなにホクホク顔だった朝倉が、今朝自由行動に出てからは、どこかその言動に精彩を欠いている。今も一人だけさっさと浪人風の衣装を来て、一人で外に出てしまった。
朝から出かけまでの間に何かがあった。そう考えるしかない。それも、あのバイタリティーの塊のような朝倉を凹ませるような何かが。
それは、一体どれほどの非常識なんだろうか?
(…って、ヤベェ!関わらねぇって決めたじゃはずだろうが!)
千雨は小さく首を横に振って、思考を中断する。
そう。自分には関係ないことだ。
朝倉が凹もうが、横島が空を飛ぼうが関係ない。
ただ自分の周囲に、常識という居心地のいい平穏さえあってくれればそれでいい。
(ちくしょー!早く帰って部屋でHPを更新してぇ!)
あの自室こそ自分のオアシス。安息が約束されたエデン。
千雨は残りの日程を思い、憂鬱なため息をついた。
「はぁ……何かパッとしないなぁ……」
ベンチで頬杖をつきながら、朝倉は空を眺めていた。
思い出すのは今朝の横島の言葉。
「……そんなつもりはなかったんだけどなぁ……」
呟きには横島への否定の意思は篭っていない。なぜなら、朝倉自身が横島の言葉の正当性を理解していたからだ。
「死ぬ可能性、か……」
死というものに、朝倉は具体的なイメージを持つことが出来なかった。
まほら新聞はいくら有力紙と言っても所詮学生新聞。殺人事件や死者がでるような事故を取り扱うことはほとんどない。ましてあったとしても中学生の、しかも狙いが大衆が好むスキャンダルに絞られている突撃班に所属している朝倉には縁遠い。
「舐めてたのかなぁ…」
次に思い出すのは、ベトナム戦争の取材をした従軍記者のエピソードだ。
絶対特ダネをものにするぞと意気込んでベトナムに行きったカメラマンには、目に移る全てが刺激的で、ファインダーを覗き込みながらひたすらシャッターを押しまくった。
だがある時、アメリカ軍がゲリラの基地だといいながら、女子供しかいな村を蹂躙するのを取材していた時、自分の足を何かが掴んだ。
蹴飛ばすが、それでも掴んでくる何かにいらだちながら、カメラマンは初めてファインダーから目を離してそれを見て、息を呑んだ。
自分の足に捕まってきたのは、体中が焼け焦げた子供だった。片足は撃たれたのか、引き千切られたように吹き飛んでいた。目も見えず耳も聞こえないようで、記者の足にすがりつきながら、現地の言葉で母親を呼んでいた。
初めてレンズを解さないで見た、戦争。
記者は悲鳴を上げて子供から逃げ、そしてそのままベトナムからも逃げ帰ったそうだ。
「私もそう成りかけてたのかな…」
ペンは剣より強し。新聞は巨悪に立ち向かうために存在する。
――マスメディアは社会正義を守るものだというのが朝倉の持論だ。だが自分が機能した行為はそれに反していた。いや、反するというのもおこがましいほどの、考え無しの行動だった。
「……凹むなぁ…」
反省している。だが、だからといってそれですぐにスイッチを切り換えれるほど朝倉の顔の皮は厚くない。
「はぁ…」
「どうしたんだい?」
何度目かのため息をついた朝倉の後頭部に声がかけられた。
顔を上げてみれば、そこには最近知り合った男性がいた。
「確か、朝倉君だったね」
「西条さん?」
霊能生徒 忠お!〜二学期〜 十六時間目 〜ソードのキングの逆位置(無法地帯)3〜
ネギが雷の暴風で、まとめて鳥居を倒そうとした時だった。
「ちょいと待たんかい!」
「兄貴!上だ!」
カモの声より先に、ネギは上から自分に投げかけられた声と、そして影に気付いて横っ飛びに避ける。その直後に、ネギがさっきまで立っていた石畳に黒い何かが激突した。
ドン!
地面が砕け、土ぼこりが舞い上がる。
「やっぱり来やがったか!?」
「ネギ、大丈夫!?」
カモの緊張した声と、アスナの心配の声。
ネギはどちらにも返すことなく、意識を集中し術式を練り上げ、三本の雷の矢を作る。
無詠唱の魔法の矢。
ネギな体勢を立て直したのと同時に、土煙の中に放つ。それと同時に更に距離をとべくバックステップ。
土煙を割って雷の矢が叩き込まれる。だが…
「ハッハァッ!」
襲撃者は三本の矢を潜り抜け、入れ違うように土煙を割って飛び出す。
出て来たのは、ネギと同じくらいの年頃の、ニット帽をかぶった学生服の少年。
その姿に、ネギは見覚えがあった。
「君は…!」
ゲームセンターで会った…!
ネギが言い終えるより早く、少年はネギに向かって一直線に加速。一気に跳躍する。だがその途中を阻む者がいた。
「このっ…!」
アスナだった。ネギが後ろに飛びのくと同時に、アスナが敵の着地地点とネギの間に割り込むように動いていた。
完全に足が地面についているアスナと、跳躍直後で空中に浮いた少年。体勢ではアスナの方が有利。
アスナはハリセン――ハマノツルギを振りかぶる。
ネギは少年がアスナの一撃に上から叩き潰されるの予想図を幻視した。
しかし現実には、その予想図にはなかった存在が追加された。
「来い!」
ネギ達でも、そして襲撃者のでもない第三者の声。
次の瞬間、アスナの足元数歩先から石畳が下側から砕かれた。そして出来上がった隙間から緑色の何かが噴出する。
「……竹っ!?」
アスナの言葉通り、それは道の両側に生えているのと同じような、青々とした孟宗竹。
驚くアスナの目の前で、襲撃者の少年は新たに生えた竹の所まで到達。少年はそのすべすべとした表面に掴まると、まるで器械体操のような動きで回転し、その軌道を変える。
「しまった!」
慌てて踏み込みハマノツルギを振るうアスナだが、その先端が学生服の裾を僅かに掠るだけ。
少年の体が消えた視界の中、その向こうにアスナはもう一人の人物を見つけた。それはハンチング帽を被ったジャンパー姿。
目が合い、ハンチング帽がにやりと笑い返す。そのときなんとなく、アスナはこの竹を生やしたのが誰かを確信した。しかし、今更解ったところでどうしようもない。
学生服の方は道の両脇に備え付けられた手すりでワンステップ。改めてネギに向かって跳ぶ。今からではアスナのフォローは間に合わない。
だが、ネギとてアスナ達の攻防の間、何もしていないわけではなかった。
「光の精霊、集い来たりて…
魔法の射手(サギタ・マギカ) 連弾(セリエス)光の22矢(ルーキス)!」
二十二本の矢がネギの周囲に浮かび、その半数が少年に向かって放たれる。
「効かんわ!」
少年は懐から札を出しかざす。札は燃えて灰になりながら、その対価として襲いくる魔法の矢を打ち消した。少年はそのままネギに向かってくる。
ネギは焦らない。残り半数をその場に固定。一方、学生服の少年は、また同じように撃ってくるだろうと予想して懐から防御用の呪符を取り出す。
ネギはそれを見て、自分のトラップの成功を確信。
少年が近づいてくると同時に目を瞑り
「解放(エーミッタム)!」
矢の形に留めていた光の精霊を術から解く。精霊たちは光となって解放される。魔力を含まない純粋な光は、呪符では防ぎようがない。
「ぐあっ!」
視界全てを包む閃光を直視し、学生帽の少年はネギを見失う。その隙にネギは飛び退き呪文を唱える。
「闇夜切り裂く(ウーヌス・フルゴル) 一条の光(コンキデンス・ノクテム)
我が手に宿りて(イン・メア・マヌー・エンス) 敵を喰らえ(イニミークム・エダット)
白き雷(フルグラティオー・アルビカンス)!」
強烈な雷がネギの手から放たれる。
蔦のように広がる白い雷撃は視力を失った少年には避けようがない。だが、それをフォローする動きがあった。
「巽象招来!」
ジャンパー姿が学ランの後ろに現れ、地面に片手を付く。
その瞬間、先ほどのアスナの足元で起こったのと同じ現象が、しかもそのときより遥かに大きなスケールで起こる。
いっせいに石畳が砕け、竹が林立する。それこそ一分の隙すらもないほどにだ。
ネギの放った雷は竹の壁を直撃する。雷は竹の壁を突き破るが、その威力は大きくそがれ、ジャンパー姿が学ランから奪った呪符によって中和される。
閃光が収まった後に残ったのは、煙を上げるへし折られた竹だった。直接確認したわけではないが、おそらく二人の襲撃者も無事だ。ネギは手ごたえからそう感じていた。
アスナはネギを背にして二人のいる方向に立ち塞がる。ネギへの追撃に構え、ネギもいつでも魔法の矢を撃てるように精神を研ぎ澄ます。
だが来たのは攻撃ではなく、歳相応の甲高い声だった。
「ふぅ…危なかった。
気をつけてよねコタ!もう少しでやられるところだったよ!」
「ふん、ちぃと油断しただけや」
「それがコタの弱点なんだってば!…目は大丈夫?」
「ああ。大分な!」
会話を続けながら、襲撃者達は立ち上る煙の後ろから姿を現した。
その姿を見て、ネギは眉根を潜める。
一連の攻防で、二人の帽子が取れていた。そしてそこから通常の人間にはありえないものが見える。
それは、耳だった。学生服姿の方には犬のような耳が、ジャンパー姿の方には猫のような耳が頭から生えている。
「やっぱり君達はゲームセンターの…」
「あっ!そ、そういえばアンタ達…!
さてはあの時、私達を下見してたのね!」
「…なんや。ねーちゃん今頃気付いたんか?」
「う、うるさいわね!
何よヘンな耳のコスプレなんかして!バカはそっちじゃない!」
「バカってなんや!?そこまで言うてへんやろ!」
「それに、この耳はコスプレなんかじゃないし」
学ラン姿は歯を剥いた闘犬のような獰猛な笑顔で、ジャンパー姿は口元を吊り上げたチェシャ猫のような笑顔で名乗りを上げた。
「俺は狗族!犬上小太郎や!」
「僕は化け猫のケイ。よろしくね」
子供の姿をした物の怪達の眼光が、アスナとネギをまっすぐに捕らえた。
結構やるじゃないか。
小太郎はまだチカチカする目を瞬かせながら、大きな杖を背負った少年――ネギを睨みつける。
西洋魔術師といえば、遠くからセコセコ魔法を使ってくるような奴ばかりだと思っていたが、なかなかどうして、このチビ助は違うらしい。
以前戦ったことのある西洋魔術師は自分の間合いに入れば終わりだった。だがコイツは接近されても慌てることなく、術を駆使して戦いを続ける。
ケイには強がってみせたが、正直最後の術を放たれた時は敗北を覚悟したほどだ。
自分と同じ年代の相手で、ここまで強い奴とあったことはない。
(ま、それでも所詮、女の後ろに隠れているような奴やけどな、西洋魔術師なんてもんは!)
そんな奴相手なら、一対一で遣り合えば敗北はない。小太郎は強気にそう思ってから、一歩前に進み出る。
「さて、続きをやろうやないか、ネギ・スプリングフィールド!」
「ちょ、ちょっと待った!なんでこんなことするんだい!?」
やる気満々に踏み出したところで、ネギから向けられた言葉に、小太郎は不機嫌そうに首をかしげる。
「…なんや、こんなことって?」
「なんで、親書を渡すのを妨害するかってことだよ!」
「そうよ!この親書を渡さないと、西の政権とかが…えっと…と、とにかく大変なことになるのよ!アンタ達それ分かってるの!?」
一昨日の夜にエヴァに聞いたことを伝えようとして、結局欠片も理解できていない自分に気付いたアスナも説得に回る。だが、小太郎はそんなことかと鼻で笑う。
「ハン!知ったことやないわ!
俺はただイケ好かん西洋魔術師達と戦いたくて手を貸しているだけや!」
「僕は興味ないよ、人間同士の喧嘩なんて」
ヒートアップする小太郎の横で、ケイは胸元の竹のプレートを弄りながらいう。
「ただ千草お姉ちゃんが人探しに協力してくれるって言うから手伝ってるだけ。
だからネギ君やそっちのお姉ちゃんが親書を渡してくれるんなら、見逃してあげてもいいよ?」
「そんなこと出来るわけないでしょ!
そっちこそ、さっさとこのわけのわかんない所から私達を出しなさいよ!
でないと酷いわよ!」
「ア、アスナさん落ち着いて!もっとよく話し合いましょうよ!」
言いながら、ハリセンを構えるアスナとそれを止めようとするネギ。
そんなネギの姿を見て、小太郎は不快感を露にする。
「いい加減、覚悟を決めろや、ネギ!
それとも西洋魔術師は戦いも出来んような臆病もんなんか!
その分なら、お前の親父のサウザンなんたらってのも大したことないんやろ!」
「……!」
尊敬する父親。それはネギの精神的な支柱であると同時に逆鱗でもある。
無言のまま、ネギは普段からは考えられない厳しい表情で、小太郎を睨みつける。
ネギの変化に、小太郎は手ごたえを感じて喜びをあらわにする。
「へへっ…それや、その感じや!
来いやネギ!男やろ!」
「……分かったよ。その代わり、僕が勝ったらここから出してもらうからね」
「上等や!
行くで、ケイ!」
「はぁ〜。結局こうなるのかぁ…」
憂鬱そうにため息をつくケイ。だが息を吐き終わった後に残ったのは、らんらんと輝く狩猟者としての猫の瞳だけだった。
「じゃあ!ちゃっちゃと済ますよ、コタ!」
「おうっ!」
「ネギ!」
「ハイ!契約執行(シス・メア・パルス) 180秒間――」
結界の中に四つの声が響き渡った。
「さて、と…。マジでどうしよう…」
完全に外部と遮断された部屋の中で、横島は頭を悩ませていた。
「これは明らかに魔法の罠だよなぁ…」
文珠が効かなかったことからしてほぼ確実だ。ならば、文珠による空間転移による脱出も阻まれる可能性が高い。単に魔法がかけられた壁ならば文珠で飛び越えれるだろうが、これは封印の結界。『出れない』という呪が掛けられている以上、それから逃げおおせるのはやはり魔法を利用しなくてはならないだろう。
「夕映吉やのどかちゃんは無事かな?
ネギのことも心配だし、木乃香ちゃんだって…ああああっ、畜生!とにかく出なきゃな!」
言いながら立ち上がる横島。
「えっと…。たしかこういう術を解くには術の中心を発見するか、矛盾を突けばいいんだよな…」
少なくとも、横島にだってそのくらいの知識はある。
「文珠は効かないし、そもそも数が限られているから使いたくないし…。
こういうときになると、美神さんの言ってたことが身に染みるなぁ」
文珠を多用しないこと。文珠に頼らないこと。文珠なしで済むならそれで済ますこと。修行時代から自分の師匠が口をすっぱくしていっていたことを思い出す。
「やっぱ美神さんってプロフェッショナルなんだよなぁ」
普段の様子からはあまりそうは思えないなどと、本人に聞かれたら確実にしばかれることを呟きながら、横島は霊力を集中させる。
「せやっ!」
まずは初手とばかりに、栄光の手で床を削ってみる。
石材は特殊な加工を受けているわけでもないようで、簡単に深い溝を刻み込まれるが…
「ダメだな。穴掘って脱出は無理臭い」
その切り口を見ながら横島は断言する。
三十センチ近く抉り取られた床は、しかしその底まで同じ素材で出来ていた。
「多分このまま掘っても同じ素材が続くだけ、ってところだろうな」
流石に無限に続くということはないだろうが、空間を捻じ曲げられ、掘り進んだ挙句天上から出てくる、という展開は大いにありうる。
「となれば…怪しいのはやっぱこいつか」
横島は言いながらこの部屋にある自分以外の存在――合わせ鏡を見る。それぞれ向かい合う壁に埋め込まれた鏡。これが術の要だというのは分かる。だがだからこそ怪しい。
弱点をこんな分かりやすく無防備に晒しておくなんてことはありうるのだろうか?
ここを破壊すれば脱出できる可能性はきわめて大きいが、罠という可能性も同じだけある。
「とりあえず調べてみるか」
横島は恐る恐るという感じで鏡に触れる。
その瞬間、鏡が淡く光ったと思うと、強い力で触れた手が、鏡の向こう側に引っ張られる。鏡はまるで水面のように波打ちながら横島を引きずり込んでいく。
「ちょ!うわぁぁっ!」
悲鳴を上げて横島は鏡の向こうに引きずり込まれ、そのまま投げ出される。
「ぐへっ!」
顔面から転げ落ちる横島。
ぶつけて痛む鼻先をさすりながら見てみれば、目の前には先ほどの部屋と変わりない光景が広がっていた。
二枚の鏡に、自分がつけた床の傷も変わらない。
同じ部屋に戻されたのか、とも思った横島だが、その床の傷に妙な違和感を覚えた。
「ひょっとして…」
横島はその違和感のしょうたいに気付くと、それを証明してみることにした。
右手に小刀程度の霊波刀を作ると、鏡のすぐ前の床に『上』という文字を刻み込む。
「さってと…」
横島は立ち上がってから、再び鏡に触れてみる。
鏡は先ほどと同じように横島の体を引きずり込むが、横島もそれは予想していたので、今度出るときは転ばずに済んだ。
横島は自分の足元に刻んだ文字を探し、そして文字を見て小さく笑みを浮かべる。刻んだ文字は『下』に変わっていた。
『上』という漢字は上下逆さにしても『下』には鳴らない。二つの漢字は鏡文字の関係にあるからだ。つまり…
「さっきの部屋は、この部屋の鏡像ってことだな」
更に言うなれば、向こうの部屋にあったもう一つの鏡を抜ければ。鏡像のさらに鏡像の部屋に案内されることだろう。その次の部屋の鏡を抜ければさらにその鏡像の部屋が待っているはずだ。それが、延々と繰り返されるに違いない。
鏡を破壊しても、おそらく隣の部屋に行けなくなるだけで結界自体に問題は生じないだろう。
横島は文字通り、合わせ鏡の中に閉じ込められたのだ。
「どうしろっちゅーんじゃ…」
横島は灰色の天井を仰いだのだった。
千本鳥居の中で、最初に動いたのは小太郎とケイのほうだった。
二人はそれぞれ左右に分かれ、アスナを回り込むようにネギに迫る。
どちらに対応するべきかアスナは迷うが、そこにカモがアドバイスを送る。
「コタローって奴の方だ、姐さん!」
戦士は戦士と、魔法使いは魔法使いと戦うというのが定石だ。
そして最初の戦いから見て、小太郎は徒手格闘の戦士タイプ、ケイが植物を利用する魔法使いタイプだというのは明白だ。
「分かったわ!」
アスナは左、小太郎の方に向かって駆ける。
それを見て、小太郎は嫌そうな顔をする。
「邪魔すんなや!俺は女を殴るのは趣味とちゃうで!」
「うっさい!」
一言で切って捨てると、アスナはハマノツルギを振る。小太郎はネギへの接近を一度中断してアスナから間合いを取る。
「ねーちゃんはこいつらの相手でもしとれや!」
小太郎の呼び声に、彼の影の中から反応が返る。
まるで穴から這い出すように、真っ黒な犬が何匹も現れる。
「!…狗神!それもあんなに!」
「ってアンタ戦士タイプじゃなかったの!?」
「基本はな!せやけど本職は狗神使いや!
お前ら!あのねーちゃんと遊んでやり」
小太郎の号令に従い、狗神たちがアスナに殺到する。その動きはしっかりと統率が取れている。
「アスナさん!」
「姐さん!?」
ちびせつなと、カモの悲鳴。
いくら魔法で強化されていようとも、一般人にあれは裁ききれない。
そう思ったちびせつなの予想はことごとく外れた。なぜならアスナも、ただの一般人の中学生ではない。
「悪いけど―――」
まるでバッティングでもするかのように、ハマノツルギを構えて身を捻り――
「――ワンちゃん達の相手をする暇はないわよ!」
アスナは回転した。
黒狗達の第一陣の間をすり抜け、そこに待ち構えていた犬に蹴りを入れる。
アスナの破魔の力は狗神を送り返し、黒い体は霧に代わる。その霧を掻き分けながら前進、そこに最後の狗神の一陣が飛び掛ってきたところに―――
「はっ!」
一振りで二匹。自分の進行方向をクリア。目標を捕らえ損ねた狗神達を置き去って、油断していた小太郎に肉薄する。
「な、ナニィ!?」
まさかあの攻撃を避けられると思っていなかった小太郎は、自分に振り下ろされるハマノツルギを慌てて避ける。
アスナは追撃を使用かとも思ったが、背後に迫る気配を察して思いとどまりその場を離れ、小太郎から距離をとる。アスナの背後に迫っていた気配の正体――狗神達もアスナを追わず、小太郎を守るような位置で待機する。
小太郎はその隙にネギに接近しようかとも思ったが、ネギへの進路上には偶然にもアスナが居る。
(いや、偶然やない)
狗神達から避けた時、アスナは意識してネギを守る位置に跳んだのだ。
やはりこの姉ちゃんは出来る。
小太郎はネギへの攻撃を邪魔された苛立ち半分、アスナの技量への驚嘆半分の、複雑な笑みを浮かべて睨みつける。
「…やるやないか。素人って聞いてたけど間違いやったのか?」
「間違いじゃないわよ。ただちょっと特訓を受けただけ」
答えながらアスナは、エヴァンジェリン戦の前に横島が施した特訓を思い出す。
確かにこの黒い犬達はすばしっこいし、あの少年の動きだって信じられないほどに速い。だが所詮はそれだけだ。
横島はもっと正確で、トリッキーで、容赦なく、そして疾かった。
それに比べれば狗神達の動きはあまりに雑だし、小太郎の動きはあまりに単純だし、両者には圧倒的に隙が目立つ。
流石にそれを突いて反撃するのは難しいかもしれないが、しかし留めておく程度なら十分可能だ。
「さあ!抜けれるものなら抜けてみなさい!」
ハマノツルギの先端を小太郎に向けて啖呵を切るアスナ。その肩にいつの間にかよじ登ったのかカモ、調子づいて囃し立てる。
「いいぞ、アスナの姐さん!
このまま耐えればOKだ!魔法使い同士の戦いで兄貴が負けるはずがねぇ!あのケイってやつを兄貴がとっちめてから、二人係でアイツをぼこって終了だ!
おい!テメェ!今更命乞いをしても遅いぜ!」
アスナの肩の上で、カモは血管を額に浮かべながら、器用なことに中指(?)を突き立てる。カモの挑発に歯噛みする小太郎だったが、しかしアスナの背後を見て、余裕の笑みを浮かべた。
「ハン。おい、イタチ!大口は自分の飼い主見てから叩くんやな!」
『えっ?』
アスナとカモが小太郎の言葉の意味を居解するより早く、
「うわぁぁっ!」
ネギの苦鳴が二人の背後から聞こえてきた。
「行くよ!巽象招来!」
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル!」
ケイとネギの戦いは、呪文詠唱が無用のケイの攻撃から始まった。
何本もの竹がネギを捕らえようと生えるがネギはそれを危なげなく交わしていく。
避けるのは簡単だった。発動の瞬間、魔力と霊力が混ざった気配が、足元から感じられ、そして発動まで若干のタイムラグがある。
(妖怪とかがそういうのを良く使うって聞いてたけど…)
妖怪などが使う先天的な術――狸や狐の変化、吸血鬼の吸血による支配など――は魔力と霊力の両方を使うものが多いらしいが、ケイが使うのもそういう類のものなのかもしれない。猫のモンスターがそういうのを使うというのは聞いたことがないから、
(樹木の妖怪か何かから教わったのかな?)
ネギには、そんなことを考えるほどの余裕をもって、ケイの攻撃を回避する。
そうしているうちに、ネギは呪文を完成させた。
「魔法の射手(サギタ・マギカ)・戒めの風矢(アエール・カプトゥーラエ)!」
捕縛系の魔法の矢が十数本。
「ふっ!」
ケイは跳躍し竹に足をかけると、そのしなりを生かしてまた跳躍。
猫の化生の特徴でもある三半規管の性能を最大限に利用しながら、竹林の間を飛ぶように移動する。その出鱈目な軌道は矢の追尾機能を上回り、風の矢は目標を見失って、竹に激突して効力を失う。
それを見てネギは気付いた。ケイが使った術はこちらを攻撃するために撃ったのではなく、自分に有利な状況を作るために使ったものだと。
「さあ、降参しなよ!」
地面に降り立って、ケイはネギに言う。
この状況では、魔法の矢はおろか、どんな術でもケイに当てることは厳しい。だが、だったら答えは簡単だ。
「先に竹を全部倒させてもらうよ!」
アスナの手法のパクリだが、ケイの動きを止めるにはこれしかない。
ネギは破壊属性の魔法の矢を大量に作るべく呪文を唱える。
「そうはさせない!」
妨害が来る。ネギはそれを察して地面の下に意識を向ける。だがケイが手で触れたのは地面ではなく、隣に立っていた竹だった。
「ハッ!」
感じたのは霊力だけだった。ケイの手から竹に力が流れ込み、手を翳した一節が、繊維にそっていくつかの断片に分かれた。
それを確認することもなく、ケイはネギを見てにやりと笑う。
その金色の瞳に見据えられたネギは、言いようのない悪寒を得る。
何か来る。
ネギは唱えていた魔法を中断。全魔力を防御結界に注ぐ。ケイの攻撃が始まったのはその瞬間だった。
「行けぇっ!」
ケイが叫ぶのと同時に竹のピースが回転しながら飛来する。
竹とんぼ。
ネギが日本語を勉強する過程で知った日本のおもちゃの知識が頭をよぎる。だが、ケイの攻撃はおもちゃというにはあまりに強力だった。
円盤状の残像を作りながら、飛来する竹とんぼ。それらはことごとく風の結界に阻まれて軌道をずらされるが、その外れた竹とんぼたちは、同じ素材で出来ているはずの竹を半ばまで切り裂き、あるものは地面に敷き詰められている石畳に突き立てられる。
そして、障害物にぶつからなかった物達は、ブーメランのように戻って来て、ネギに襲撃を加える。
ネギは、その竹とんぼに込められた霊力によって、自分の結界が少しずつ切り刻まれ、抉り取られていくのを感じた。
「くっっ!」
このままではまずいと、ネギは箒にまたがり加速。
「逃がすかぁっ!」
ケイは、今度は両手で竹に触れて、竹とんぼを量産。
新たに生産された竹とんぼ達は、まだ生き残っていた第一波たちと一緒にネギを追う。
竹林のすぐ上を飛び回るネギの背後を、竹とんぼ達は追跡し、まるで群れのような一団となる。ネギが待っていたのはこの状況だった。
「風塵乱舞(サルタティオ・ブルウェレア)!」
強風に嬲られた竹とんぼは、その軸を不安定化させて回転力をロス。そのまま力なく地面に落ちる。
「はぁ…はぁ…」
ケイの攻撃を凌ぎ切ったネギは、息をつきながら地面に降り、次の瞬間青ざめる。ケイの姿を見失っ手しまったことに気付いたのだ。
ひょっとしたら、コタロー君と二人でアスナさんを…!
慌ててアスナ達の方を見るネギ。
竹林の隙間から見えるアスナの姿は無事だった。小太郎と一対一でにらみ合っている。
ほっとするネギ。だが、それが隙になった。
「こっちだよ!」
背後の斜め上。ケイの声がしてネギははっとする。
青竹を足場にしながら、ケイがこちらに向かってきていた。
次の攻撃は竹か、竹とんぼか?
どちらにも対応できるように、ネギは杖を構えて魔力を高める。だがケイが取ったのは、どちらの攻撃でもなかった。
ケイは右手を握り締めた。その中にはドングリ―――樫の木の種があった。種はケイの力を得て急成長し、そしてケイの腕に絡みつき、木の生皮で作られた篭手のようになる。
そのシルエットは、横島のハンズ・オブ・グローリーに酷似していた。
それもそのはずだ。なぜならケイは、横島のハンズ・オブ・グローリーをモデルにして、この技を作り上げたのだから。
「ハンズ・オブ・グリーン!」
ケイは技名を叫んでから、竹のしなりを利用した跳躍でネギの眼前にまで飛んでくる。
同じ魔法使いタイプ―――そうだとばかり思っていたネギは、ケイの攻撃を避けきることができなかった。
ケイの拳が、ネギの頬を捉えた。
「うわぁぁっ!」
「!?ネギ!」
「兄貴!?」
アスナ達が振り向いた先では、ネギが劣勢に立たされていた。ケイが硬い樫の木に包まれた拳で、ネギを容赦なく殴りつける。ネギは無詠唱の魔法の矢を使いながら回避し続ける。だがそれにも限界があり、何手かに一度の割合でケイの攻撃に晒される。
「ちょっと!あのケイってのは魔法使いじゃなかったの!?」
「ハン!誰がそんなこと言うた!そっちのアホイタチが勝手に決め付けただけやろ」
先ほどの意趣返しと、小太郎はカモを指差して言う。
そうしているうちに、ケイの攻撃が今度はネギの肩を捕らえた。
「…っ、ネギ!」
「っと、させへんで!」
ネギを助けようとするアスナだったが、しかしそれを小太郎が阻む。
「どきなさいよ!」
「どうしても通りたいんやったら力ずくで通りや!」
通り抜けようとする側と、防ぐ側の立場が逆転する。
アスナは小太郎の横を通り抜けようとするが、しかし向かおうとする方向のことごとくに狗神達が配置され、思うようにネギの居る方向にたどり着けない。
「ほらほら、どうした!?さっきまでの勢いはどないしたんや!」
女を殴るのは趣味でないというのは本当らしく、小太郎はあくまでアスナに手を出さずない。直接的な邪魔は狗神にさせ、自分はケイの助けに向かおうとするようなそぶりを見せることで、間接的にアスナの動きを阻害する。
小太郎に釘付けにされたアスナと、ケイに対して防戦一方のネギ。
状況は、明らかにネギ側に不利だった。このままでは勝算がない。
そのことを悟り、そして決断を下したのは外野に居た二人だった。
中身入りのペットボトルをもったカモが、ちびせつなと一緒に二人に呼びかける。
「ダメだ兄貴!」
「アスナさん!ここは一旦引きますよ!」
「はっ!そう易々と逃がすかい!」
小太郎は言いながら狗神を一匹、ちびせつなとカモの方に差し向ける。
ネギとアスナの応答を聞いていたのでは間に合わない。そう判断した二人は、ネギとアスナのアドリブを信じて、用意していた術を発動させる。
「でいや〜〜〜〜っ!」
「オンアクヴィラウンキャシャラクマン!」
ちびせつなを介して、刹那がペットボトル内の水に術を施す。
水は一気に霧となり、辺り一帯を真っ白に染め上げる。
術の発動を確認してから、カモとちびせつなはその場から、ネギのいた方向にダッシュする。背後で、狗神が着地した音がする。
間一髪逃げ延びたことに安堵はするが、しかし安心は出来ない。
この霧が晴れる前にネギ達と合流し、何とか逃げて時間を稼がなくてはならないのだ。
(カモさん…!)
(分かってる!俺っちの鼻で兄貴の血の臭いを嗅いで探す!)
カモは慣れ親しんだネギの臭いを見つけると、すぐそちらの方に向かって走り出そうとする。だがその尻尾を掴むものがいた。
「つっかまえた!」
びっくりして振り返るカモ。そこに待ち受けていたのは、縦に開いた捕食者の瞳孔だった。
「化け猫の超感覚を舐めないでよね。壁越しにコウロギの足音だって聞き分けれるんだから」
「っ!テ、テメェはケイ!?」
「は、離せ!」
左手でカモの尻尾を、右手でちびせつなを鷲摑みににするケイ。
せつなは必死にミニチュアサイズの刀で手に切りかかるが、果物ナイフ程度の切れ味では、霊的に強化された樫の木の篭手に傷をつけることも出来ない。
そんな三人の騒ぎを聞いて状況を把握した小太郎が、ケイに向かって声をかける。
「よくやった!ケイ!そいつら押さえてろ!
さあ!出て来いネギ!まだ近くに居るのは分かってるやで!
逃げ隠れなんてセコイことはなしやで!」
「くそっ!兄貴!せめて兄貴達だけでも逃げてくれぇっ!」
「そういうわけにもいかないよ!」
ネギの声はすぐ後ろから聞こえた。
「えっ!?」
自分の感覚を信じていたケイは、突然に現れた気配に驚き振り向く。
その目が見たのは、霧を切って跳んでくる光の矢。
「うわぁあっ!?」
ケイはその反射神経に助けられた。紙一重でネギの攻撃を避けたケイだったが、その両手は人質を離してしまう。
霧の中から飛び出してきたネギは、カモとちびせつなをかっさらうと、そのまま霧の中に駆け込んでいく。
(ナイスだぜ、兄貴!)
(ですが、一体どうやって…)
ネギの小脇に抱えられながら、ちびせつなは質問する。
自分達をあっさり発見してしまったほどの化け猫の聴覚を、どうやって騙して隙を突いたのか?
その回答は、極めて簡単だった。無言でネギは手を開いてみせる。
ネギの手の中で《隠》の文珠が光を放っていた。
(な、なるほど。自分の気配を隠したというわけですね)
(けど、ちとまずいな。ここで切り札の文珠を使っちまったか…)
(仕方ないよ、これしか方法がなかったんだし。早くアスナさんと合流して隠れよう!)
ネギは言いながら、契約でつながれた魔力のラインを頼りにアスナの元へと駆けていく。
悔しさに歪んだその表情は、霧に阻まれカモ達に見られることはなかった。
「えっ!あのアスナってお姉ちゃんの音も消えたよ!」
「はぁっ!?どないなっとんねん!」
「わ、わかんないよ、僕に聞かれても!」
霧が晴れない中で、小太郎とケイは消えた二人を探していた。だが文珠で隠された彼らは、ケイの超感覚を以ってしても見つけることは不可能だ。
霧がだんだんと薄まり、何とか互いの影が見えるようになった頃、ようやくケイの超感覚が、二つの足音を捕らえた。
「見つけた!道沿い!出入り口の方向!」
「よっしゃ!」
ケイの指示に従い小太郎は駆け出し、その後にケイも続く。
目標はすぐに見つかった。
霧の向こうに人影が二つ。
「犬上流―――狼牙双掌打!」
自分に可能な最大限の気を込めた拳を振りかぶり、小太郎はその人影に向けて跳ぶ。
(一気に決めたる!)
文字通り必殺の心意気で、小太郎は肉薄する。だが、最後の跳躍を終えた瞬間、ケイが明らかに焦りを込めて小太郎に言う。
「ま、待ってコタ!それ違う!」
ケイの言葉と同時に風が吹いた。
霧が晴れ、小太郎の目に目標の姿がはっきりと映り―――そして小太郎の表情も凍りついた。
二人のうち一人は前髪が顔のほとんどを隠した内気そうな少女。
もう一人は身長が自分と同じ程度の、髪を端の方で二つに分けた少女。
そう。どちらもネギでなく、どちらもアスナではない。
Q.これってつまりどーいうこと?
A.人違い
想像外の展開に凍結した小太郎の脳内の、わずかばかりに動いている部分が解答をはじき出し、小太郎の顔から血の気が引く。
いかん!このままじゃ関係のないねーちゃん達をぶっとばしてしまう!
例え技をキャンセルしたところで、貯めてしまった気と自分の体が保有している運動エネルギーはどうしようもない。
(こ、虚空瞬動覚えとくんやった…!)
後悔先に立たず。
技を発動直前にしたままの中途半端な体勢で、小太郎は二人の少女――宮崎のどかと綾瀬夕映に突っ込んでいった。
つづく
あとがき
どうも、夕映を酷い目に合わせてという声があったので死亡フラグを立ててみた詞連です。……ごめんなさい。ウソです。どうも今週、忙しくって中途半端なところまでしか掛けなかっただけです。ネタばれになりますが、こんなアホな理由で女の子を殺す予定はありません。
つか、夕映叩きが多くてびっくり。そんなつもりなかったのに…技量不足が深刻やな、自分。かと言って書き込みまくるとストーリーが進まんし…。短い文章で多くを伝える方法を…ブツブツ…。
年末は忙しく、ひょっとしたらクリスマス以降から一月末までは更新を長期にわたって休む可能性が濃厚です。
さて、今回の目玉ケイの能力ですが……超捏造です。
だって原作じゃあケイ本人が戦わなかったどころか、母親の美衣さんだってろくな戦闘描写もありませんでしたし。
分かってるのは1:敏捷で2:霊力が高く3:様々な超能力をもっている、ってことだけですから。
非難されてしまえばこう言うしかありません。
ごめんなさい。と。
さて、レス返しを。
>D,氏
きっとサウザンドマスターも知り合いから言わせて貰えば『あのナギよ!』って感じだったんでしょうね。
>老の坂
私も悩んでます、道真の強さ。
アシュタロスはヒャクメに比べて霊力が7桁違うらしいですので、ヒャクメの霊力を100マイト弱と見積もってアシュタロスは一億マイト。ただし南極ではパワーが半減ということで3000万マイトと仮定同期合体で一万倍のパワーアップをしたと考えて合体美神横島は合わせて200万マイトと計算。原作ではこの力さでもしっかりダメージを与えられていたし、そもそも香港では霊力が数千マイトあると想像されるメドーサが美神たち攻撃を避けていたことから霊力が100分の一以下でも攻撃を当てれればそれなりにダメージを与えられると判断。
そのことからに数秒間動きを止めるくらいなら、相手が油断している場合かなりの力差があってもセーフと推測。故に道真は数万マイト。ただしアシュタロスから力を与えられてから大分時間が経過しているので、それ以下。
以上の計算から、まあパワーバランスとかを考えて1万2,3千といったところに設定してみました。
>箱庭廻氏
ごめんなさい。彼女に今回台詞なし。
まあ、横島が消えたことで大分状況のやばさに気付き始めてます。
>・・・氏
メドーサの出自は竜族ってだけで、他は全くといっていいほど語られてません。
激突についてですが、ただの瞬間移動なら大丈夫だったかもしれませんが、お馬鹿なことに横島が『ピンチになったら飛んでいってやる』というイメージを込めてしまったことからこんな感じになりました。しかもネギの方は契約カードでの召還をイメージしたため、微妙なワープに。
エヴァちゃんは可能なら来週辺りいけるかも。
>味噌地氏
まあ、メドーサの出自は横島について考えさせるための呼び水的なものであり、ネギま原作にメドゥーサ本人が出張ってこなければ矛盾はしないでしょう。
バイパー。
個人的には龍宮か西条に、ロングレンジで狙撃されて終了な予感。もうどちらが先に相手に気付くかって勝負ですね。
>kurage氏
横島らしいといっていただけてありがたいです。
アスナは、まあ…お猿さんですし。きっとサウザンドマスターも同じ結論に達したに違いないです。
>doodle氏
横島にとって土下座は呼吸と同じようなもんだしなぁ(酷っ)
鳴滝姉妹はいぢりがいがあってダイスキです。あとエヴァと道真がやったような、何かを引用したやり取りって言うのも好きです。気に入っていただけたようで嬉しいです。
>鉄拳28号氏
誤字指摘ありがとうございます。
鳴滝姉妹とは…時間が癒してくれますよ、きっと。鳥居の傷は長さんが東に請求書を送るという方針で。
道真は…まあエヴァたちよりさらに上空に居たということで。
夕映の行動は、知らなかったから、としか言いようがありませんね。
>kon氏
かといって、夕映があのまましゃがみこんだところでどうかなるわけでもなく。
それに状況のやばさも横島が準最強だっていうのも知らないわけですし、どうかご容赦を。
体に気をつけて、次回もがんばります。
>2phase氏
はじめまして。読んでいただいてありがとうございます。
厳しい突っ込みは作家の成長促進剤です。ありがとうございます。
まあ、文珠が発生させる現象はあくまで霊力によるものなので、物質に対しては絶対ですが、霊的なものに対しては絶対ではありませんということで。
ゆえの扱い…個人的には夕映は好きですし、酷い扱いをしているつもりはないのですが…。フォローがんばります。今は無理でもいつか見せ場を…!
>カシム氏
攻撃関係は修行して系統立てて覚えたので様になってますが、回避関係は天然で覚えましたからねぇ…。まあ何事も、基礎が大事ということで。
>ジャン氏
神様関係でも実はいろいろあるんです。それはまたおいおい。
夕映の引かない理由に関しては、GSが身近に居なかったからってことで。
ほら、ネギま原作でだって、麻帆良工学部やら図書館島やらとんでもないものがあるくせに、それでも退屈してたっぽいですし。
なおGSが魔法が霊能でないとわかってしまう理由は至極簡単。霊力を感じないからです。見鬼君も反応しませんし。
また、幽霊退治していると魔法使いや魔法を使った痕跡などにバッティングする場合があるので、経験をつんだGS達は、なんとなく「あ、ひょっとして霊力以外を使うオカルト技術って存在するかも」とか悟ります。
違和感ばかりですみません。少しでも楽しんでいただけるように努力していきます。
>冥氏
ごめんなさい、亜子の苗字間違えてた。突っ込みサンクス。
>ikki氏
渋いメド様?それでしたら画像掲示板の過去ログ292足岡さんの作品『まぶたのチチ』を参照してください。私もメド様を書くとき、あのメド様をイメージしてます。
>ZEROS氏
横島の回避力と回復力は凄いですが、けど、意外と食らってることもあるんですよね。道真とかヌルとかカトラスの破片とか。
実はバイパー編の乗ってるコミックス5巻が手元になかったりします。
覚えているのは『テュラテュラテュラテュ〜ラ〜ラー♪ ヘイ!』って言うのと能力、後は姿だけ。口調は全然覚えてなかったり。
>ナイヅ氏
踏み込んで、さっそくピンチです夕映。
小太郎君のパンチで死なないように祈っててください。
>黒川氏
鳴滝姉妹VSバイパー…盲点でした。
バイパーの能力が全くきかなそうなキャラですよね。あとエヴァちゃんとか茶々丸とか。
夕映の行動は、知らないなら仕方ない行為です。もしあそこで横島が正直に魔法のことを話していたりしたら変わっていたかもしれませんが…。
次回もがんばります。
レス返し終了
ちなみに、今回のケイの能力を踏まえ、魔力と霊力の関係をもう一度。
霊力は波。魔力はその媒質――厳密にはその媒質の偏在による圧力差と、それによって生じる媒質の流れです。
魔力と霊力が混ざった力や術というのは、つまり魔法と霊能を組み合わせて同時に使い、一つの事象を引き起こすということです。
病気を治すのに外科的手術と投薬を併用するのをイメージしていただけると、それに近いと思います。
また、魔力と霊力を両方使うということによりその術は『魔法と霊能、どちらの干渉も受けなくなる』のではなく『魔法と霊能、どちらの干渉も受ける』ようになってしまいます。
この混合術は妖怪などが保有する先天的な特殊能力に多く見られます。
混合術は二つのまったく別の力、別の技術を組み合わせた技であるため開発、習得が極めて難しく、だから妖怪の特殊能力を人間が習得できるのは稀であり、混合術の一つである『失われた中世の秘術』達も継承者が居なくなり廃れてしまったというわけです。
さて、テストも近いががんばろう。では…
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