―――おいおい、マジかってば?
横っ腹を見せた形で停まっているワゴンの中に引っ張り込まれた少女は少しの間抵抗していたが、薬品を嗅がされたのかすぐ大人しくなった。
元々男達(覆面をしていたが体つきから男だと直感した)は引っ張り込み次第すぐにその場から逃げるつもりだったのだろう。そしてその場に他の誰かがいた場合、殺す予定だったに違いない。
助手席にいた男が近くにいて一部始終を見ていたナルトを確認した瞬間、黒光りするやや細長い物体を向けたからだ。
紛れもなく、サイレンサー付の銃。
バズバズッ!
くぐもった、実銃というよりエアガンに似た銃声。
2発の銃弾は確実にナルトの胸部を貫く―――――筈だった。だが、銃口を向けられた瞬間、ナルトは咄嗟に偽装ガンケースを掲げていた。
着弾。ガンケースが大きく揺れるが、外側に仕込まれている防弾版が拳銃弾を受け止めたので貫通はない。いざという時に遮蔽物として利用できるよう作られてあるのだ。
銃口を向けられた瞬間、ナルトは即決した。
――――自分に銃口を向ける相手は、誰であっても敵。
少年兵時代から変わらない、己のルール。
開いている右手をロングコートの後ろ側に突っ込む。ヒップホルスターに突っ込んである『それ』を握った瞬間には、『それ』はピタリと男達に向けられていた。
パラ・オーディナンス・P14カスタムピストル。
パラ・オーディナンス社がコルト・ガバメントにダブルカラムマガジン(複列弾倉)を組み込んで新たに開発したこの銃に、反動を抑えるコンペンセイターを銃口に取り付けたカスタムモデルをナルトは愛用している。
発砲。銃口が跳ね上がり、ドウンッ!と腹に響くような銃声がした。最初に狙ったのは、自分以外に唯一銃を握っている助手席の男。
拳銃弾の中でかなり高威力の45口径弾を食らった男の頭は、高い所から落とされたスイカよろしくド派手に飛び散った。もろに血飛沫を浴びた運転手はパニックに陥る。慌てて運転手側のドアから逃げようとしたが、ナルトの放った第2撃が男の首の真ん中に命中。血の噴水を撒き散らして、車から転げ落ちる。
これでもう、そう簡単に車ごと逃げれない。ガンケースをそのまま手放して、グリップを両手に握る。
3人目は少女を車内に引っ張り込んだ男の1人で、泡を食ってはいたが荷台においてあったサブマシンガン(こっちもサイレンサー付)を向けようとしていた。
だがもう遅い。心臓を2発ぶち抜かれて、吹っ飛ばされたように反対側の閉まっているドアに叩きつけられた。
そして4人目――最後に残った覆面男は、よりにもよってぐったりとした少女を盾にしようとした。
生憎、それはナルトにとってもっとも忌むべき行為だった。
よりにもよって、抵抗できない奴を盾にするのか?
――――このクソ野郎!!
盾にするには少女は小柄すぎることに覆面男は気づいていなかった。胴体は何とか隠れても、頭部や肩などはほとんどむき出しになっていた。
まず1発。右腕で抱えていたので右肩を撃ち抜く。叫びと共に右腕から力が抜けて、少女を手放してしまう。1歩ずつワゴン車に近づきながら、更にそこへと両肩・両肘・両手に1発ずつナルトは弾丸を撃ち込む。
車内は既に血まみれで、男の両肩から両手まで空いた穴から血と骨が覗く。止めとばかりに頭部と心臓に1発ずつ弾丸を撃ち込んで、弾切れの合図にスライドがオープンの状態で固定されると同時に一方的な銃撃戦は幕を閉じた。
少女の様子は・・・・大丈夫だ。怪我はしていない。ただし、制服は男達の血でほとんど紅く染まっているおかげでもう着れないだろうが。
ふと、少女が自分を見ていた事にナルトは気づいた。
「だ・・・・れ・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
だが意識は薬品を嗅がされたせいか朦朧としていたようで、やがて少女は、静かに気を失う。変装も何もしていない顔を見られたのは確実だろうが、どうなのだろう、目を覚ました後少女が自分の事を覚えているかはナルトにはわからない。
もし自分の顔を彼女が覚えていたら、駆けつけた警察に自分の事を言う可能性は高い。そうなったらかなり面倒な――自分にとっても、組織にとっても――事になるだろう。
いくら政府高官が自分達と手を組んでいても、目撃者が居る以上揉み消すのは難しい。
そうならない為にはただ1つ―――証言される前に、彼女の口を封じる。
つまり、彼女をこの場で殺しておく事。
マガジンを取り替え、空マガジンの方はコートのポケットに突っ込む。スライドを戻して弾を薬室に送り込み、意識のない少女に銃口を向ける。
そして。
「・・・・・クソ。」
ナルトは安全装置をかけてP14をヒップホルスターに突っ込むと、踵を返してガンケースを拾い上げて素早くその場を去った。
彼女を殺したくない。殺してはいけない。
そんな気が、した。
夕焼けが綺麗なので、のんびりと眺めながら帰り道を歩いていた。そこまでははっきりと覚えていた。
その後が曖昧で、覚えているのは断片的な事ばかりで、それがバラバラに脳裏をよぎる。
私を掴む手。
知らない男の人達の声。
銃声。
花火みたいな火薬と、鉄錆の嗅ぎなれない臭い。
怪我をした犬みたいな、男の人の苦痛の叫び声。
そして最後に私の前に現れるのは、銃を持った少年。金色の髪と蒼い瞳が綺麗な、見た事の無い少年だった。
――――そこで、夢は途切れた。
今瞳に映っているのは、見慣れない部屋の一室、その天井。
「気がつきましたか、ヒナタ様。」
傍らに居たのは、自分がいつも世話になっている従兄弟の青年。
「・・・ネジ・・・・・兄さん・・・・?」
少女――――日向ヒナタはゆっくりと、ベッドから体を起こした。
あとがき:銃撃戦は某小説の影響がアリアリです(苦笑)。
とりあえず、明日にも続きを書いていこうと思っていますのでお付き合いお願いします。
>A−sen様
YGCとのクロスというわけではありません。もっともYGCの組織やキャラの位置づけみたいな点は拝借するつもりですが、NARUTOの原作では敵だったキャラが味方になってたり(またはその逆)する予定です。年齢やキャラ同士の関係も変えていく考えであります。
とりあえず確実に言える点は、忍術は存在していないという点でしょうか(戦闘技術に関してはそこからアイデアを頂く事もあるかもしれません)。
S・ハンターは自分もスワガーシリーズを全巻集めてます。冒頭の狙撃に関しては、また後で書いていく予定です。
>蒼星様
ストーリーに関してはYGCの1巻どころが全巻あちこちからアイデアを頂く事も無きにしも非ずといった感じですが、なるべくオリジナルのストーリーを混ぜていくつもりです。
>トラスト様
・・・・すいません、その作品を自分は知らないのでコメントできません(土下座)。
ブララグやワイルダネスならわかるんですが・・・・
では、今日はこんなところで失礼します。
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