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「魔法学園にやって来た福音の生徒達  第一幕(ネギま!×EVA)」

砂肝 (2006-11-15 22:31)
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「うむ・・・分かった」


 相変わらずの暗い締め切った部屋で、ゲンドウは電話をしていた。お茶を持って来たリツコは、どうやら真剣な内容のようでお盆を持ったまま入り口の所で直立している。


「ご苦労。引き続き、調査を続けてくれたまえ」


 そこで電話を切ると、リツコが「誰です?」とデスクにお茶を置きながら尋ねた。


「加持君だ」
「加持君? そういえば彼、司令の命令で何かの調査に行ってるようですが・・・一体何の?」
「・・・・・・赤木君、君は“魔法”というものについてどう思う?」


 いきなり意味不明な質問をしてくるゲンドウ。が、ゲンドウのそんな正確には慣れっこなのか、リツコは即答する。


「そうですね・・・非科学的、といえばそれまでなのでしょうが、実際に魔法使いが存在し、シンジ君はその力を身につけました。認めざるを得ません」


 リツコの意見としては、魔法とは“奇跡”。科学の発展により、人は長い年月をかけ飛行機を作った。けれど、魔法とはその長い年月を必要としないものである。
 ゲンドウは、頷くと、いつものポーズを取る。


「魔法使いとは裏から人々を助ける者。18年前のセカンドインパクト、そして第三使徒から始まる3年前の件・・・・・・何故、動かなかったと思う?」
「?」
「これを見たまえ」


 そう言ってゲンドウは筒を出して見せた。リツコは怪訝そうに筒を受け取り、中に収められている紙を取る。


『裏使徒を浄化せよ』


 紙には、そう書かれていた。


「司令、これは?」
「シンジの卒業証書だ・・・」


 魔法学校を卒業した証に授与される卒業少々。それには、『立派な魔法使い(マギステル・マギ)』になる為の修行する地域や内容などが浮かび上がる。当然、シンジも貰っている。


「え? でもシンジ君のは・・・」
「エジプトの魔法学校に頼んで、こちらに送って貰った。奴のは偽物だ。他の6人の卒業証書もある。卒業と同時に浮かび上がるが、シンジ以外の6人は、まだ出ていない・・・が、恐らく同じものだろう」


 何で、そんな事をするのかリツコは少し嫌な予感がしたが、今はこの卒業証書の内容が知りたかった。


「この裏使徒というのは?」
「・・・・・・・・・・・」


 ゲンドウは無言で湯飲みを持って立ち上がると、カーテンを開けて部屋に陽の光を入れる。そして、サングラスを取ると、小さい子が見たら泣きかねない、似合わない穏かな表情で空を見上げる。


「赤木君・・・子供とは、いつの間にか親元を離れて大きくなるものなのだな」
「司令、爽やかな中年男性を演じて意味不明な言葉で誤魔化さないで下さい。と、いうか7人とも片親か親はいません」


 特にシンジなんて父親が存命なのに、家族らしい事などして貰ったことすらない。リツコは冷たい視線をゲンドウの背中にぶつける。


「まさか、また子供達を危ない目に遭わせるつもりじゃないでしょうね?」
「問題ない。麻帆良学園は修行にはうってつけだ・・・・ふ、私は酷い大人だな。子供達に過去の責任を償わせようとしている」
「司令・・・・」


 自嘲するゲンドウを、リツコは胸の前で両手を握り締め、目を潤ませる。


「何を今更・・・子供であろうと他人を利用して悪事を働くのは司令の十八番じゃないですか」
「・・・・・・・・・」
「もし、子供達に何かあったら司令、腹掻っ捌いて下さいね。介錯ナシで」
「赤木君・・・変わったな。そんなに私が嫌いか?」
「司令ほどではありませんわ。それに私、自分を撃った人間を未だ愛し続けるほど馬鹿でも無いので」


 ちなみにリツコは1年程前から年下の彼氏が出来ている。ゲンドウとは泥沼の愛憎劇を繰り広げた仲だったが、今では、すっぱりと縁を切り、技術部部長でありながらNERVのおっかさん役を、しっかりとこなしていた。
 息子に貶され、レイに捨てられ、愛人に見放され、副官は新婚生活真っ只中・・・今度こそ完璧に一人ぼっちなゲンドウは、あの時、EVAに喰われたままの方が良かったかもと後悔した。


「帰りたい・・・・」


 周り全てが女子、女子、女子。赤い麻帆良学園女子中等部の制服を着たシンジは、学園長室へ行く為に駅から歩いて来たが、如何せん周囲には女子だらけ。
 しかし、シンジはその中に見事に溶け込んでいた。それどころか、見慣れない顔のシンジの姿に注目を集めている。そりゃリツコ特製パットに、女子にしては高い身長、また母親譲りの人を惹き付ける知性的な容姿だ。注目を集めない方がおかしい。


「(何故だ!? 父さんの遺伝子と掛け合わせて+−0じゃないのか!?)」


 が、シンジは心の中で、人を惹く母親と人から嫌われる父親の子供なのだから平凡な容姿な筈だ、と叫ぶ。


「はぁ・・・憂鬱だ」


 今後、自分の人生には女装して女子校に通っていたという経歴が付き纏う。EVAのパイロットという経歴の方が、よっぽどマシである。シンジは落胆の溜息を吐いて歩いている、ある男性に話しかけられた。


「君が碇シン君かい?」
「え?」


 顔を上げると、そこには長身で眼鏡をかけたスーツ姿の男性が立っていた。


「あなたは?」
「僕は高畑・T・タカミチ。ここの教師をしている。学園長に言われて君を迎えに来たよ」
「あ、どうもお手数おかけします」


 中々、渋めの男性で煙草のニオイは、シンジに大きく影響を与えた男性を思い浮かべさせる。タカミチはニコリと微笑みかけると、耳打ちして来た。


「後、君と同じ魔法使いだよ」
「え・・・?」


 と、そこでシンジは高畑・T・タカミチという名前にハッとなる。


「本国で有名な・・・! あの『悠久の風(AAA)』の!?」
「はは。まぁ、僕の事は置いといて学園長の所に行こうか」


 エジプトの魔法学校にいる時、シンジは魔法使いの国では有名な彼の名前を聞いた。『AA+』の実力を持ち、『立派な魔法使い(マギステル・マギ)』に値する功績を残していると聞いている。何で、『立派な魔法使い(マギステル・マギ)』の資格を得られないのかは知らないが。
 シンジは、有名人に会えた事に感激しながらも、学園長室に案内される。学園長室には後頭部と眉毛が異様に長い、立派な顎鬚を蓄えた老人がいた。


「学園長、碇シン君を連れて来ました」
「うむ、ご苦労。下がってくれて良いぞ」
「はい」


 タカミチは一礼し、「じゃ」と軽くシンジの肩を叩いて出て行った。


「さて、碇君」
「は、はい」
「・・・・・・・君、本当に男かね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」


 恥ずかしそうに、かなり小声で頷くシンジ。学園長こと近衛近右衛門は、「フォッフォッフォ」と顎鬚を摩りながら笑った。


「いや、スマンスマン。余りに別嬪なもので、ついな」
「うぅ・・・男としての自信が無くなる・・・」
「君の事はこっちの世界でも話題じゃよ、碇シンジ君」


 本名を出されて、シンジはピクリと反応した。学園長は、毛深い眉毛から歳を思わせぬ鋭い眼光を覗かせる。


「3年前のサードインパクト・・・あれにはワシら魔法使いも対応が間に合わんかった」
「そういえば・・・エジプトの魔法学校でも教えてくれませんでしたけど、何で魔法使いは3年前・・・それに18年前のセカンドインパクトでも関わらなかったんですか?」
「うむ・・・まぁ魔法学校が話したがらない理由が理由じゃからな」
「?」


 一応、サードインパクトに関わった者の身としては、知っておきたい。シンジは学園長に問うと、彼は口調を濁らせた。


「ふ〜む・・・SEELEにも魔法使いがいたんじゃよ」
「・・・・・・は?」
「それが大きな理由じゃ」
「ちょ・・・SEELEは魔法使いの育成を諦めたんじゃないんですか!?」


 確かゲンドウはそう言った。それ故、不明確な裏死海文書の記述を信じ、サードインパクトを引き起こそうとしたのだ。


「諦めたは『魔法使いの力によるサードインパクト』じゃ。SEELEは魔法使いの妨害を考え、魔法使いで自分達を守っていたのじゃ」
「で、でも、それでも世界中の魔法使いを相手に・・・」


 サードインパクトみたいな世界を滅ぼしかねない大事変、魔法使いが総出で動けば、どうにでもなった筈だった。


「その辺が人間の醜い所じゃ。本国の中には、一般人を見下し、自分達ならサードインパクトが起こっても生き残れる、普通の人間がどうなろうと関係ない、と魔法使いの風上にも置けん連中が一部におるんじゃよ」


 その一部が上層部にも食い込んでおり、世界の滅亡という事態に陥って尚、下らない議論を交し合っていた。


「またSEELEの魔法使いは皆、強い。彼奴らの中には、サウンザンドマスターに勝ったと言われておる奴もいると噂されておるぐらいじゃ」
「マジですか・・・」


 魔法使いの間で語り継がれている『サウザンドマスター』。千の魔法を使いこなす最強の魔法使いで、シンジも憧れている。20年前にあったという
大戦に活躍し、公式には10年前に死亡されたとされている。


「その魔法使い達は今どこに?」
「国連がSEELEの本部に突入した際、精鋭魔法使いも突入したが、いたのはSEELEの幹部だけで、魔法使いは一人もおらんかった。キール・ローレンツを始め、他の幹部も知らんと言っておったようじゃし」


 素性すら分からないから、手配のしようもなく、魔法使い達は、彼らが動き出すのを警戒する日々が続いているのが現状だった。
 そりゃ魔法学校も話したがらない筈だとシンジは納得する。何しろ魔法使いがSEELEにいるなど、魔法使い達からしてみれば恥曝しもいい所だ。本国の頭の固い連中は、関わりたくないとも思っていたのだろう。


「まぁサードインパクトという最悪の被害は君のお陰で防がれたわけじゃから、良しとしよう」
「(父さん・・・黙ってたな)」


 きっとゲンドウも、その事を知っていたのだろう。が、あえて自分達には教えなかった。教えると魔法に対する恐怖が強くなり、魔法学校に行く事を拒むと思ったからだろうと、シンジは考え、拳を震わせる。


「さて、碇くん。今度はワシの質問に答えてくれるかの?」
「は?」
「君はどうやってサードインパクトを回避したのじゃ?」
「どうと言われましても・・・」


 シンジは3年前の事を思い出す。極限まで追い詰められた精神状態。他人への恐怖。その恐怖を取り去りたいと願っていた。結果、アンチATフィールドで人々はLCLへと溶ける筈だった。


「声が・・・聞こえたんです」
「声?」
「内容は覚えてませんけど・・・ただ、温かくて優しい声でした」


 他人の声がここまで心地良かったのは初めてで、シンジは他人と生きる事を望んだ。父、ミサト、リツコ、加持という人生の先輩、レイ、アスカ、カヲル、トウジ、ケンスケ、ヒカリといった仲間。そんな彼らと、懐かしい平和な世界で生きたいと思っただけだった。


「後は気が付いたら、地軸や南極が戻って、水没した地域が復活してました」
「ふむ・・・なるほどのぉ」


 訝しげに学園長は顎鬚を摩ると、コンコンと扉がノックされ、「失礼します」と少年が入って来た。


「(子供?)」
「学園長先生、その人が転入生ですか?」


 明らかに自分より年下の男の子だった。背広を着て、茶髪を結わえ、眼鏡をかけた賢そうな子だ。何より目を引くのは、彼の背中にある杖だ。


「(この子も・・・)」
「おお、ネギ君。うむ、この子が転入生の碇シン君じゃ」


 ネギと呼ばれた少年は、シンジの方に向き直るとペコッと頭を下げた。


「初めまして。3−A担任を務めるネギ・スプリングフィールドです」
「・・・・え? 担任?」
「はい!」


 少年――ネギ・スプリングフィールドが名乗ると、シンジは目をパチクリさせた。それって労働基準法に違反していないか、とか、10歳の子供が給料貰ってるの、とか色々と疑問が頭を駆け巡る。


「フォッフォッフォ。安心し給え。ネギ君は優秀な子じゃ。何しろ2年生最後の期末テストで、万年最下位だった2−Aを見事、学年トップにしたからのぉ」
「へぇ・・・」


 エヘヘ、と照れるネギをシンジは感心したように見る。


「そろそろ時間じゃな。ネギ君、碇君を連れて教室に行きなさい」
「あ、はい! じゃあ案内しますから、付いて来て下さい!」
「う、うん」


 子供が教師、という事に戸惑いながらもシンジはネギに付いて出て行った。2人が出て行くと、学園長はフゥと重い息を吐いて腰を沈めた。


「あの少年・・・自分が、どれだけ凄い事をやってのけたのか分かっておるのかのぉ?」


 事前にゲンドウから聞いた報告では、葛城ミサト、赤木リツコ、加持リョウジ、そしてトルコの魔法学校にいる渚カヲルの4人やNERV職員の多くは死んでしまっていると聞いた。なのに、彼らまで生き返っている。
 これは即ち、シンジの望んだ世界が形成された、という事だ。四季が戻り、父親と仲直り――かどうかは微妙だが、気軽に話せたり出来るような平和な世界。
 時間跳躍と並び、実現不可能とされる死者の復活や、世界の修正を彼はやってのけてしまったのである。
 それが彼の才能なのか、もしくは別の要因が働いたのか定かではないが、正に神の領域に届きかねない事だ。それが魔法の力で開花したら・・・何とも末恐ろしい少年だと、学園長は思った。


「声・・・か。気になるのぉ。ゲンドウ君に連絡を取ってみるか」


 ゲンドウや自分が危惧している事が現実にならない事を祈りながら、学園長は電話を手に取った。


「えへへ、新学期と同時に仲間が増えるなんて、きっと皆さん喜びますよ」
「そ、そう・・・ですか」


 教室に案内されている間、ネギは嬉しそうに自分の受け持っているクラスの女の子の事を話していた。よっぽど生徒の事が好きなんだな、とシンジは思いながら相槌を打つ。


「あ、そうだ。今日は身体測定ですからね」
「へぇ〜・・・身体測定するんだ。じゃあ、当然服は脱いで・・・・」

 シンジの思考一時中断。


「あの・・・碇さん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・身体・・・測定?」
「はい」
「ええええええええええええええええええっ!!!!!!?」


 転入初日から、とんでもない事態に陥ってしまうシンジだった。

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