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▽レス始

「霊能生徒 忠お!〜二学期〜(十四時間目)(ネギま+GS)」

詞連 (2006-11-13 01:45/2006-11-15 19:06)
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 的が三つ。
ドラム缶の影から二つと柱の影から一つ。腐りかけた肉体を引きずりながら、ゾンビが現れる。
 横島は引き金を引いた。
 BANG!
 その銃声はさらに五つ。全てが頭と心臓を貫き動き止めさせる。だが、それで終わりではない。さらに四匹が現れる。
 横島は慌てない。残った二発を手近な一匹に叩き込んで動きを止めさせてから、リロード。それと同時に散弾に交換。
 十分接近した状態から数十発の鉛弾を叩き込み、吹き飛ばしていく。
 二匹を吹き飛ばしてから、再び単発に戻して最後の一匹を仕留める。
 全く問題ない。

「ははっ!」

 笑ってから前進。
 しばらく進む。油断はしない。だがその緊張をあざ笑うかのように敵は姿を見せない。
 横島がその沈黙に不審を得たのと、敵が動いたのは同時だった。
 十匹以上大挙。さらにはゾンビというにはあまりに異形な姿があった。

「ボスキャラ、ってやつか」

 横島は虎の子の焼夷弾を撃つ。灼熱を孕んだ閃光に、視界が一瞬ホワイトアウト。
 しかしそれをやり過ごして、横島は撃つ、撃つ、撃つ。
 弾丸は敵に向け撃たれるというより、まるで弾倉から目標に向けて弾が吸い込まれるよう。
 八連射、リロード。八連射、リロード。八連射、リロード。八連射、リロード。
 近寄ってくるゾンビを牽制し、余った銃弾をボスに叩き込む。苦しくなったら、散弾で距離をとる。
 だが、その流れが止まる。
 カチン、と乾いた金属音。銃声はない。

「―――!」

 散弾が切れた。
 動揺が隙となり、その隙を疲れる。
 衝撃。そして視界が赤くなる。
 無駄だと分かっていて、しかし焦る意識が引き金を引かせる。
 カチン、と乾いた金属音。銃声はない。
 衝撃。そして視界が赤くなる。

「くそっ…!」

 横島は悪態をつくと銃を棄てる。慣れない得物に頼るのは止める。
 右手を前に突き出して霊力を集中。何千万と行ってきた、もはや呼吸と同じほどの熟練を以って、発動する。

「伸びろ!ハンド・オブ・グロー「やめい!」

 栄光の手が発動する直前、横島の真横からアスナの跳び蹴りが入った。
 横島は光る右手を突き出した状態で、筐体の前から蹴り飛ばされた。

「って、何すんや、アスナちゃん!」
「そっちこそ何するつもりよ!どこかの戦争ボケじゃあるまいしゲーム機壊すつもり!?」

 尻餅をついた状態で文句を言う横島に、アスナが仁王立ちで言い返す。
 その横で、ゲーム機の画面がカウントダウンしながら、コンテニューの是非を聞いてきた。


霊能生徒 忠お!〜二学期〜 十四時間目 〜ソードのキングの逆位置(無法地帯)1〜


 夕映は確信した。
 やはり今日、ネギは何かするらしい、と。
 根拠はアスナの動静だった。
 あの後、上機嫌な木乃香と気恥ずかしげな刹那を置いて、アスナは逃げるように去っていった。夕映はそれを怪しみ、他のメンバーを連れて追跡。
 すると案の定、アスナはネギと合流した。
 本当はそのまま内密のまま付けていきたかったが

「あ、ネギ先生も一緒に回りませんか?」
「おっ、ネギ君!のどかの告白に答えた次の日に別の女の子に手を出すなんて…!よっ!この女っ誑し!」

 というさよとハルナの行動によりご破算。
 まあ、集団でつけていって下手に感づかれて逃げられるより、一緒に行動しているほうが逃げにくいだろうと、夕映も納得して一緒に回ることにした。

(それに…たとえネギ先生に逃げられたとしても、横島さんと桜咲さんがいます)

 アスナをつけるにあたって、横島と刹那は難色を示していた。
 プライバシーがどうのこうのといっていたが、やはり彼女達もネギとアスナには独自に、しかも自分達に、その内容がばれないように動いて貰いたいようだ。

(さあ、さっさと尻尾を出すのです!)

 夕映はゲームそっちのけで、四人の動きに気を配っていた。


「仕方なかったんやぁ…。シューティング系は久しぶりだったんでつい…」
「ついでゲーム機壊しちゃダメでしょうが」

 椅子に座りながら落ち込む横島に、アスナが呆れ混じりにいう。だが横島は首を横に振り

「いや、あの程度なら最高得点出せるはずだったのに…」
「そっちか!」

 アスナは突っ込んでから、騒いでいるクラスメート達を眺める。

「レアカードゲットぉぉぉっ!」

と叫ぶハルナを中心として、図書館組と呼ばれるのどか、夕映、そして木乃香がゲームに興じ、そんな彼女達をゲームとは縁遠い刹那、さよ、そしてザジが眺めているという構図だ。

(今ならネギをつれてこっそり抜け出せそうね)

 アスナは一緒になってゲームを見ているネギを呼ぼうと立ち上がるが、しかしその前に、横島が声を出した。

「おい、夕映吉。画面見てなくていいのか?」
「―――っ!……大丈夫です。ご心配なく。それと吉は余計です」

 応えると夕映は再び画面に目を向けた。
 アスナも横島の言葉で初めて自分が見られていたのに気付く。
 慌てて腰を下ろして夕映を見るアスナ。その視線が、またこちらに向けてきた夕映の横目とかち合った。
 二人はさっと目をそらす。それだけでも不審なのに、アスナは更にあらぬ方向を向いて、下手糞な口笛を吹き始めた。

(アスナちゃん。それはいくらなんでも胡散臭すぎるって…)
(うっ…し、仕方ないでしょ!けど…なんで夕映ちゃんがこっち向いてるのよ?)
(ううむ…夕映吉は常識人な上に頭いいからなぁ…。何か気付いたんじゃないか?)
(ど、どうしよ〜)
(どうもこうも、隙を突くしかないだろ?ま、気長にいこうぜ)

 横島はため息をつくと、椅子から立ち上がる。
 それを、やはり横島達に注目していた夕映が発見して声をかける。

「横島さん、どこに行くんですか?」
「んー。いや、そのゲーム、ルールが解らんから見ててもつまらなくてな。
 UFOキャッチャーでもやろうかと思って」
「あ、私も見に行っていいですか?」
「……」

 さよとザジも、複雑なルールがあるゲームより、分かりやすい方UFOキャッチャーがいいらしく、横島についていく。

「あ、僕も…」
「ダメですよ」

 ネギもUFOキャッチャー、というか横島自身に惹かれてついていこうとするが、そこを夕映が止める。

「のどかの告白に答えておきながら、翌日には横島さんに夢中とは酷いですよ?」
「ネギ君てば女っ誑しだねぇ」
「ゆ、ゆえっ!ハルナぁ!」
「ええっ!ち、違いますよ僕、そんなんじゃ…!」

 顔を赤くするのどかとネギ。その間に横島は並ぶ筐体の間に姿を消した。夕映はちらりとそちらを見てから、まだ赤い顔で言い訳しているネギに自分が使っていたカードの束を差し出した。

「まあ、半分は冗談として、ネギ先生もこのゲームをやってみますか?
 スタートセットをお貸ししますよ」


 横島の操るアームが、取り出し口近くの人形に接近する。

「んんんっ…!」
「………………」

 下降してから上昇。アームは一つの人形を捕まえる。熊だった。

「あっ」
「……」

 ゆっくりと上昇するアームと熊。だが頭の大きい熊の重心を捉え損ねたのか、UFOが上がるほどに大きく傾き、そしてアームから零れ落ちた。

「はぅっ!?」
「………」

 だが、それも横島の計算のうちだった。熊は詰まれた人形の斜面を転がり落ち、そして三分の一ほど穴に身を乗り出していたなんだかよくわからない謎の生物の人形に激突。
 二つは一緒になって、取り出し口に落ちた。

「やったぁっ!すごいです、横島さん!」
「……」

 満面の笑顔で拍手するさよと、無表情に手を叩くザジ。

「UFOキャッチャーって面白いですね」
「いや、俺としてはお前達のリアクションの方が面白かったけど…」

 苦笑しながら横島は取り入れ口から人形を取り出して、熊をさよに、謎の生物をザジに渡す。

「ほい、応援してくれたお礼だ」
「い、いいんですか?」
「……?」
「ああ、俺は取るのが楽しいんであって、人形自体にはあんまり興味がないからさ。貰ってくれると助かる」
「あ、ありがとうございます!大切にしますね」

 さよだけでなく、ザジもその謎の生物人形が気に入ったらしい。
 二人の様子に満足しながら、横島はネギ達のいる方向に目を向ける。

(さてと…夕映吉の奴、どうしたもんかな?)

 夕映は明らかに何か気付いている。というよりも、あれだけの聡さを持って麻帆良にいたのに、今まで魔法に感づかなかったことの方が謎だ。

(何でよりにもよってこんな面倒な時に…)

 普段の日常において魔法に気付いたのならやり様はいくらでもある。例えば『魔法などの超常現象に対して《鈍》くなる』というイメージで文珠を使うなどだ。
 だが上級魔族との戦いを控える今、文珠を無駄には使えない。

(ああああっ!もう、何で魔法は秘密なんや!面倒くさい!)

 霊能と魔法。力の源が違うというだけで、どっちもオカルト。特に東洋魔術はGSの陰陽術と、術式は極めて似通っているらしい。
 それなのに、霊能は公表OKで魔法は公表NG。魔法技術の流出による社会の混乱の防止というのは確かに一理あるかもしれないが、横島達末端にしてみれば、面倒くさいことこの上ない。というか、この政策を打ち出している魔法界のお偉いさん達は、現実が見えてないんじゃないだろうか?

(ま、愚痴ってても仕方ないよなぁ…)

 横島はため息混じりに、UFOキャッチャーにコインを投入した。


「おーーー。すごい、ネギ君」
「おおっ!うまい!
 先生、本当に初めて!?さっすが天才少年だね〜〜〜〜〜!」

 画面の中で、ネギの操るキャラクターがドラゴンを撃破し、ハルナと木乃香が歓声を上げる。夕映はそれを聞き流しながら、UFOキャッチャーのコーナーに意識を向ける。すると、さよの歓声が聞こえてきた。

(横島さんは、まだ向こうにいるようですね)

 夕映はそう判断してから視線をネギが操る魔法使いキャラクターに戻す。だが、意識の焦点は別のところにある。

(てっきり横島さんが離脱するものとばかり思っていましたが…)

 横島を取り逃がすのは、実のところ夕映はそれでも良いかもと思っている。
 先ほどから本命のアスナやネギを監視しているのだが、その途中、何度も横島からそれとなく牽制されているからだ。この状況では自分はもとよりネギとアスナも動けない。

(横島さんには、さっさと別行動に移ってもらいたいところです)

 そうすれば、あるいは隙が生じるかもしれない。
 声をかけられたのは、夕映がそんなことを考えている時だった。

「―――となり、入ってええか?」
「え?」

 ネギがとなりを向くと、二人の自分と同じ年頃の人影があった。
 一人は学ラン姿の、ニット帽で、後ろ髪だけを長く伸ばして一つにまとめて結んでいる。
もう一人は、ジーパンにジャンパー姿のハンチングキャップ。アクセサリーなのか、細長い木――いや、竹のプレートを細いチェーンでぶら下げた、釣り気味のパッチリとした目をしている。
 話しかけてきたのは学ランの方だった。戸惑ったネギは首を縦に振る。

「あ、うん。いーよ」
「勝負だよ!大丈夫、先生!?」
「ネギ君、がんばれー」

 ノリノリで応援モードに入るハルナと木乃香。
 そのノリの良い反応を快く思ったのか、声をかけてきた少年も不敵な笑顔を見せる。

「ほな、お手柔らかにな!」
「がんばれ!コタロー!」
「おう!見てろや、ケイ!」

 コタロー―――小太郎と呼ばれた学ラン姿の少年はケイ――相方のハンチング帽に応えながらカードをセットした。


「なんだ?向こうは盛り上がってるなぁ」
「ホント。何かあったんでしょうか?」

 ケース内の人形の三分の一を取り尽した頃、横島達はネギ達がいるコーナーがずいぶんと騒がしいのに気付いた。

「行ってみるか?」

 横島がそう言った所で、ネギ達のいるコーナーから一際大きい歓声とも悲鳴とも付かない声が上がった。


「あーっ!負けた」
「いやー、初めてにしては良くやったよ、ネギ先生」
「そ、そうですか?」
「そやな、なかなかやるなぁ、あんた」
「えっ?」

 となりの席、小太郎からかけられた声に、ネギははっとして振りむく。
 振り向いてきたネギに、小太郎は人好きのする笑顔を浮かべて

「でも、魔法使いとしてはまだまだやけどな」

と不敵に言った。だがその背後で、相方が笑いながら

「とかなんとかいって、あそこでカエル地獄が出なかったら、コタの方が負けてたくせに」
「や、やかましいわい!
 ―――ほなな、ネギ・スプリングフィールド君!」
「えっ!?ど、どうして僕の名前を!?」

 名乗った覚えのない相手にフルネームで呼ばれて驚き、そして同時に警戒する。
 まさか、ひょっとしたらこの彼らも西の刺客―――!

「だってゲーム始めるとき、自分で名前入れたじゃん」
「あ、そか」

 だがそんな緊張をよそに、ケイが可笑しそうに笑いながら画面を指差した。そこには、自分が入力した本名が、でかでかと表示されていた。
 自分の勘違いに赤面するネギ。
そんな彼を置いて、二人は駆け出す。

「ほな!」
「またね!」
「あ、君!勝ち逃げはずるいよ!」

 ハルナの弾んだ声を聞き流しながら、二人は小走りに出口に向かい、

どんっ

「わっ!」
「おとっ?」

 しかし先行していた小太郎が、筐体の隙間を縫うように歩みだしてきた人影にぶつかって尻餅をつく。
 ぶつかられた人物のほうは、どういうわけか、尻餅もなく平気なようだった。
 その人影は尻餅をついた学ランの少年に手を差し伸べた。

「大丈夫か?」
「ナハハ、ゴメンな姉ちゃ……っ!?」

 小太郎は差し出された手を取りかけて、その手を差し伸べた人物を見て目を見開く。
 言葉遣いに反して、手を差し伸べてきているのは女だった。
 バンダナを巻いた黒髪の美女―――横島だった。


「ん?どうした?」


 刹那は、二人組みのリアクションに不審を覚えた。
 とりあえず、先ほどの時点では木乃香に何かをするつもりがなさそうだったのでほうっておいたが…

(……横島さんを警戒している)

 横島の容姿は初対面で警戒されるような類のものではない。つまりそれはあの二人が横島に対して、緊張しなくてはならない要素を持っているということだ。

「あ、ああ。大丈夫や!こっちもすまんな!」
「ほ、ほら!早く行こうよ、コタ!」

 ハンチング帽がニット帽の少年を引っ張りあげて駆け出したニット帽の方もそれに続く。
 横島は差し出した手を所在無げにしながら見送って、そのあと眉根をひそめた。

「なあ、俺なんか、嫌われるようなことしたか?」
「そないなこと、ないと思うで?けど何か不思議な感じのする子達やなぁ」

 ネギ君と同じくらいか、と木乃香は二人が去っていった方を眺める。
 一方、横島はそれとなく刹那のほうに歩み寄り

(追ってみる)
(…はい、護衛は任せてください)

 すれ違いざまに小さく言葉を交わす。横島はそのままゲームセンターに並ぶ筐体の影に消えていった。


 最初に横島の不在に気付いたのはネギだった。
 ハルナと夕映の対戦を眺めている僅かの間に、横島の姿が消えていた。きょろきょろと周囲を見渡すネギ。その姿に気付いた刹那が小声で言った。

「横島さんなら、先ほどの不審な少年達を追っていきましたよ」
「えっ?不審、ですか?」

 ネギは不審という言葉に首を捻る。見た感じでは二人とも良い人そうだったが…。
 悩むネギに刹那は更に付け加える。

「それより、もうそろそろネギ先生たちも」
「あ、はい」

 答えてネギは夕映を見る。
 夕映はハルナとの対戦に熱中しているようで、先ほどのように、こちらにちらちらと視線を送ってくる様子はない。
 チャンスだと思い、ネギはさよ達と一緒にゲームを観戦していたアスナの手を引く。
 集中していたのか、少々驚いた様子のアスナだったが、しかしすぐにネギの意図に気付いたのか、視線を返して小さく頷いた。

「二人とも、お気をつけて」

 刹那の言葉に、揃って頷き返してから、二人は夕映に気付かれないように、こっそりと逃げ出した。


「にゃ、にぃぃぃぃっ!こ、このパル様のスペシャルデッキが破れるとはぁぁぁぁぁっ!?」
「一つの戦術に特化しすぎたのが敗因ですよ」

 一分後、ハルナの操るキャラを撃破した夕映は周囲を見る。そこには横島の姿どころか、ネギやアスナの姿もない。
 だが、夕映は慌てなかった。

(のどか…二人は?)
(う、うん…アスナさんとネギ先生がさっき出て行ったよ。駅の方に行ったみたい)
(上出来ですよ)

 夕映は口元にうっすらと笑みを浮かべた。
 作戦通りだった。
 横島がいなくなった時点で、夕映はある賭けに出た。自身は全くネギの監視を放棄して、全てのどかに任せたのだ。ネギ達は、あくまで夕映の視線に警戒していた。その自分がゲームに集中しているふりをして見せれば動くだろうと踏んだのだ。
 さて次は追跡だと、夕映は椅子から腰を上げ

「では、私はちょっとトイレに行ってきます。その間、相坂さん」
「は、はい?」

 と、さよに自分が使っていたカードを差し出した。

「見ていて大分ルールも理解できましたでしょうし、やってみませんか?」
「い、いいんですか?」
「ええ。木乃香、相坂さんに教えてあげてください。
 ほら、ハルナもいつまでも燃え尽きてないで」
「ん、えーよ。さよちゃん」
「燃え尽きたぜ、真っ白にな……」

 さよにカードを押し付けると、二人は揃ってトイレの方向に足を向け、しかしトイレの直前で進行方向を外に変えて表に出る。

「急ぎましょう!おそらく二人は電車に乗るはず。同じ電車に乗れなければ追跡は困難です」
「う、うん――」

 かくして、二人によるネギ追跡劇が始まった。


 大路から少し外れた場所にある路地裏。
 そこは、物理的な距離にしてみれば、明るい喧騒の溢れる場所と程近いはずなのに、しかしそこにある空気はよどみ、まるで異界のような雰囲気をかもし出している。
 そこに、横島とぶつかった二人組―――小太郎とケイの姿が駆け込んできた。

「ひゃぁ、危ない危ない!僕達ばれなかったかな?」
「気付かへんやろ。それに気付かれたら気付かれたで戦って倒せばええ話や!」
「もう、相変わらずコタは血の気が多いんだから。
 月詠の姉ちゃんが返り討ちにあったって話は聞いてたよね?
 それに、あんな所で戦ったら、千草さんに怒られるよ。魔法使い達は普通の人に見られるのが嫌なんでしょ?」
「そりゃそうやけど…ああ!面倒いなあ」

 そしてその突き当たりに見えた人影を見て二人は顔をしかめた。
 人影は5つだった。
 一つは小太郎達と同じ程度の年頃の、フェイトと名乗る少年。そしてそれが従える大柄の、角が片方欠けた使い魔。
 そらからフリルがふんだんに付いたドレスを着た小柄な女性――月詠と、そして…

「千草の姉ちゃんは良いとして……なんでお前がおんねん。メドーサ」
「おや?私がいちゃいけないかい?仲間だろう?」

 小太郎の敵意すら込められた視線を受けながら、しかしメドーサは気に留めた様子もなく、しらじらしく答える。

 小太郎はこの魔族――というより、千草が手を結んでいる魔族たちが嫌いだった。西洋魔術師と戦えるという餌がなければすぐにでも手を切りたいところだ。
 それは小太郎の後ろにいる相方も同じだったようだ。

「勘違いしないでよ。僕は人探しを条件に協力しているだけだし、コタだって自分の目的のためだ。魔族なんかの仲間になった覚えはないぞ!」

 ケイが釣り目がちな大きな目にあからさまな警戒を浮かべながら言う。
 その態度に、流石のメドーサも少し気分を害されたのか、眉間に僅かにしわが寄る。

「……ろくに偵察も出来ないクズが偉そうに…」
「ま、まあまあ!ケンカせんと!それで、どうやったんや?」

 流石に不味い雰囲気を察してか、千草が割って入った。
 メドーサはそれ以上追及する期もないらしく、不愉快そうに鼻で笑うだけに留める。
 小太郎たちもそれ以上追及したところで実入りもないと、仕事を果たすことにした。

「ああ、やっぱあのボンボン、スプリングフィールドって苗字やて」
「それと、目標の木乃香ってお姉ちゃんに、やっぱり刹那って人がくっ付いてたよ。あと、あの横島っていう女の人もいたよ」
「ふうん、横島さんもいらはるんですかぁ」

 ケイの言葉に、目を瞑って黙っていた月詠が始めて反応を返した。

「うん。月詠姉ちゃん、怪我は大丈夫?腕を斬られたって聞いたけど?」
「大丈夫ですよー。この通りやで」

 月詠は軽く左腕を振ってみる。引きちぎられたと千草から聞いていた左腕は、全く無事な様子で刀に添えられている。

「よかったね!」

 笑顔で言うケイ。
 それを見ながら、小太郎はケイが千草に協力しているのが、あの霊能力者の女と同じ『横島』という苗字の男を探しているからだということを思い出す。
 霊能力者で、という共通点もあるが…

(……ま、関係ないやろ。横島なんて良くある苗字やし)

 ケイの探している『横島』は、妖怪の母子を守るために同じ人間相手に戦うようなお人よしらしい。
 それに対してあの『横島』という女は、噂に聞く『人界最強の道化師』の妹。関係があるとは思えない。

(ま、どうでもいいけどな。俺は強い奴と戦えればええんや)

 そう結論付けてから、小太郎はメドーサに向き直る。

「どや!偵察ぐらいしっかり出来取るやろ!」

 自慢げに言う小太郎だが、しかしメドーサは呆れたように鼻で笑った。

「あんたらの言う偵察ってのは……―――
 ―――敵を案内することも含めてなのかい?」
「はぁ?」

 小太郎は何を言っているのかと問い返そうとして、頭上にさっきを感じた。

「!!」
「――っ!?コタ!」

 ケイの警告の声が聞こえたのと、小太郎が気付いたのは同時だった。

「獅子!鎮星に力を与え手槍を成せ!」

 強い言霊を含んだ声が響き、小太郎達の左右のコンクリート壁が変質した。
 両サイドの壁全体に縦方向に罅が入り、スティック状に剥離。
無数のツララになって狭い路地裏に向けて降り注ぐ。

「うひぃっ!」
「ざーんくーせーん」

 悲鳴は千草、間延びした声は月詠だった。
 月詠が抜いた二本の小太刀が衝撃波を放ち、降り注ぐ石槍を全て打ち砕く。
 残りの破片は、フェイトと千草は術による結界で防ぎ、小太郎、ケイと月詠はかわす。

「な、なんやぁっ!」
「つけられたのさ」

 声はメドーサだった。小太郎が振り返ると、その視界に二叉の矛を振りかぶったメドーサの姿が見えた。そしてメドーサの槍が、こともあろうか自分に向けて突き出される。

 ギン!

 小太郎は、自分の頭の真上で金属音が鳴り響いたのを聞いた。

「ハハッ!それで隙を突いたつもりかい!?」

 目の前でメドーサが叫ぶ。蛇のように縦に裂けた瞳孔には、小太郎の姿は映っていない。
 写っているのは、おそらく自分の後ろにいる相手。
 メドーサと後ろの誰かは、こともあろうか自分の頭の上で武器をかみ合わせているのだ。それも当の自分を完全に無視して。
 そのことが、力を信じ、自ら鍛え上げた強さに自負のある小太郎のプライドを刺激した。

「クソ…!」

 回し蹴りを後ろに叩き込む。だが、小太郎のかかとは空を切った。

「コタ!上!」

 ケイの言葉に従い上を見る
 そして、その光景に小太郎は言葉を失った。

「いきなりお前か、メドーサ!ボスは最後に出てくるのが礼儀ってもんだろ!」
「相変わらずふざけた奴だね、横島ぁっ!」

 いがみあいながら、メドーサと襲撃者――ゲームセンターのときとは異なる、黒を基調にした、装甲のところどころに赤いラインの入った戦闘服を着た、横島忠緒が戦っていた。
 両者が立っているのは砕けた――おそらく横島が何らかの術を発動させるために壊した――壁だった。重力を完全に無視しながら、両者はある時は同じ壁に、またある時は向かい合った別々の壁に立ちながら、しかし一瞬たりとも動きを止めることはない。
 メドーサは銀髪を、横島は黒髪と黒いマントをなびかせながら、相手に致命傷を与えようと攻撃し、相手の致命傷を求める攻撃を防いでゆく。淀みなく迷いなく高速で、ひたすら彼我の位置を変えながら、しかし一定以上に離れることもない。
 いがみあいながら、メドーサと横島が踊っていた。
 踊るといっていいほどに、それは躍動的で、無駄なく、力強く――命の奪い合いであるはずなのに、優美さすら感じられる程だった。
 二枚の砕けた壁を舞台に、上空の壁の隙間から零れる青い空を背景に、二人の演舞は続いてゆく。

「すげぇ…」

 横島に追撃することを忘れて、小太郎がその光景に見入ってしまったのは一瞬か数分か。
 いずれにしても、その演舞は唐突に終わりを告げた。
 それぞれメドーサと横島が小太郎から見て左右の壁に着『地』するとメドーサが掌を、横島がタロットをかざす。

「消えな!」
「双子!太陰に力を与え砲撃を成せ!」

 メドーサの禍々しく輝く霊波砲と、横島の深く暗い霊波砲がぶつかり、爆風が路地裏を満たした。


 腹の底に響くような重低音に、ゲームに集中していたハルナも思わず顔を上げる。

「ん?何、今の爆発?」
「さ、さあ?雷でしょうか?」
「けど、晴れてるで。
 アスナは何やと……ってあれ?アスナー?」

 木乃香はようやくアスナと、そしてネギの姿までなくなっているのに気付いた。それを引き金に、さよとハルナも自分達以外のメンバーが大量に失踪しているのに気付く。

「あれ!?よ、横島さんもいませんよ!」
「そーいえば、夕映とのどかもトイレに行ったっきり、戻ってないよ?
 桜咲さん、何か知らない?」
「…いえ、私も存じませんが…」

 答えながら、刹那は先ほどの爆発と共に感じられた巨大な霊力を感じていた。

(おそらく横島さんですね…。
 どうやら、やはり今日、向こうも動きますか)

 だとしたら気を引き締めねばならない。
 今、木乃香を守れるのは自分だけなのだから。

「アスナー?ネギくーん?横島さーん?皆どこやー?」
(必ずお守りします、お嬢様)

 ネギ達の姿を探す木乃香を刹那は見つめ、決意を新たにするが、そこを邪魔するものがいた。

「ラブ臭がするわ」
「!?…さ、早乙女さん!?」

 突然後ろから耳元で囁かれて、刹那は飛び上がった。
 見習いとはいえ神鳴流剣士である自分の後ろを簡単に取るなんて…!

(この人も只者じゃない?)

 勘違い気味に戦慄する刹那の気持ちをよそに、ハルナのメガネが怪しく光る。
 その不気味なプレッシャーに、刹那は気圧される。

「ううん、やっぱりするわ、濃厚なラブ臭が!それも百合の香りつき…」
「ゆ、百合?っていうかラブ臭って…!」
「ふっふっふ…いいわねぇ!昔は仲良くて、しかし成長にしたがって疎遠になっていった幼馴染が、修学旅行先で急接近し、忘れていたときめきを思い出す…!
 王道よ!王道過ぎるわ!だがそこがまたいい!」
「お、王道?いや、それよりときめきって…!」
「いやいやいや!言わなくていいわよ!みなまで言わなくていい!
 協力するわ!っと言うわけで、皆!次行ってみようか!」

 戸惑う刹那の話を聞く様子もなく、ハルナは刹那と木乃香の手を掴み、さよとザジに声をかけて、ハルナは歩き出した。

「えっ、ちょ、ちょっと待ってください!横島さんや宮崎さん達はいいんですか!?」
「大丈夫よ、さよちゃん!
横島もアスナもネギ先生もしっかりしてるから、一人になっても問題なさそうだし、のどかはちょっと心配だけど、多分夕映と一緒だから大丈夫でしょ。何かあったら携帯に連絡してくるだろうし、とりあえず今は貴重な修学旅行の時間を楽しみつくさなきゃ!
 木乃香と桜咲さんもそれでいいわよね!」
「うーん。携帯も繋がらんし…うん。私はそれでもええよー」
「……(コク)」

 木乃香とザジはすぐに同意。刹那は少し考える。
 おそらくこの近くで横島が戦っている。ならば少しでもここから離れるべきだ。ならば、このままハルナの意見に従ったほうがいい。夕映とのどかは気になるが、ネギとアスナなら振り切るぐらい可能なはずだし、素人の追跡ぐらいすぐに気付くだろう。

「……わかりました。私もそれでいいと思います」
「うん!決まりだね!じゃあ、行ってみようっ!」
『おー!(……)』

 ハルナの音頭に、木乃香とさよ、そしてザジ(無言ではあったが)が応じて、手を突き上げた。
 裏側の動きに関わらず、今のところつつがなく進行しているようだった。
 一方、刹那はその隙に、一枚の型紙を取り出した。


 爆心地である路地裏から屋根の上に、小さな影が三つと、大きな影が二つ飛び出した。
 小さな三つは、月詠とケイと小太郎。大きな影は使い魔の肩に乗ったフェイトと、着ぐるみモードの猿鬼を着込んだ千草だった。
 爆煙を吸い込んでしまったのか、千草は苦しげに咳き込んでいた。

「ケホッ!な、何さらすねん!
 街中でこない派手なことして、一般人に目撃されたらどないする気や!」
「フン、それは仕掛けてきた向こうにいいな」

 千草の悪態に答えるように、煙を割ってメドーサが姿を現す。それと同時に、黒い人影も屋根の上に飛び出してきた。

「生憎俺は霊能力者でな、ばれても問題ねーんだよ」
「だってさ」
「そんなわけあるかい!魔法使いに協力している以上、そっちかて派手なことはしたくないはずやろ!」
「ま、そりゃそうだが……正直、上級魔族相手にそこまで気にできるほどの余裕はねえからなぁ…」

 いいながら、横島は栄光の手を構える。
 その栄光の手を見て、ケイが目を見開く。

「あの剣…たしか……」
「なんや、お前、見たことあるんか、あの技?」
「う、ううん!なんでもないよ」

 小太郎の言葉に、ケイは首を横に振る。
 そうだ、自分が探しているのは横島兄ちゃんだ。アイツは女だし、そんな怖い人じゃない。だけど…あの技は…。
 目の前の敵と探している恩人の姿がダブり、その幻視を払うケイ。
 その隣で、月詠が一歩踏み出した。

「こんにちはー横島さん。会いたかったですえー」
「ん?たしか月詠ちゃんだっけか?腕、もう大丈夫なのか?」

 つい一昨日に自分の腕を引き千切った相手に対するとは思えないほどおっとりとした口調で話しかける月詠に、横島も腕を引き千切った相手に対するとは思えないほど砕けた口調で言った。ただし、もう大丈夫に含まれる言葉に含まれる感情は、安堵より落胆の色が濃い。

「はい〜。メドーサはん達の手を借りましたー。しかも、なんと『ぱわぁあっぷ』までさせてもらえましたー」
「パワーアップ?オーソドックスなところでロケットパンチとか?それともまさか仕込銃とか言うんじゃないだろうな、スタンピートでヒューマノイドタイフーンな感じの?」
「違いますよー」

 横島のボケの意味は解らなかったようだが、なんとなく気に入らなかったらしく、月詠はやわらかそうな頬っぺたを膨らませる。
 本当に、斬った張ったをした同士の会話とは思えない。
 そんな微妙な雰囲気を、冷たい声が断ち切った。

「ねえ?僕達はもう行ってもいいですよね、メドーサ?」

 言ったのはフェイトだった。

「な、なに!逃げるいうんか、この腑抜け!」
「そや!ここであのバケモンを袋叩きにするのが一番やろ!?」

 その言葉に、小太郎と千草が反発する。ただし、反発の理由の方向性は真逆だったが。
 しかしフェイトは無表情のまま反論する。

「今の戦いを見たでしょ?あのレベルには僕にはとても介入できません。あなた方には出来ますか?」
「んぐっ…」

 先ほどメドーサとの戦いに見惚れていた小太郎はもとより、千草にも反論できない。
 その様子を見てから、フェイトは更に続ける。

「それに、メドーサがここで横島忠緒を足止めしていれば、近衛木乃香の奪取はずいぶん楽になるはずです」
「そういうことさ。早くいきな」

 メドーサが横島から目を離さずに言う。
 千草は一瞬迷ったが、フェイトの言葉に理があると悟り、千草は頷くときびすを返す。

「ほなら頼みますえ、メドーサはん! 
 チビ共は親書!月詠はんと新入りはウチと一緒にお嬢様を戴に行くえ!」
「チビ言うなや!」
「OK、コタ!」
「横島さんー。私、また横島さんとたたかいたいねんでー。死なんようにがんばってなー」

 フェイト以外が一言ずつ残しながら、それぞれ二手に分かれて跳躍する。
 ここに来て、横島が初めて表情に焦りを浮かべた。それを見て、千草たちは自分達の選択が正しいと確信した。

「逃がすか!」

 取り繕うつもりもなく、横島は厳しい表情で千草を追って跳躍し――

「…!?」

 しかし次の瞬間、慌てた表情でメドーサの方を剥いて、サイキックソーサを投擲する。
 メドーサはそれを危なげなく槍で叩き落す。そこに横島は栄光の手を構えて切りかかる。
 重い金属音を上げて、剣と槍が激突した。
 噛み合う剣戟越しに、メドーサの愉しげな視線と横島の苛立たしげな視線が激突する。

「どうしたんだい?追わなくていいのかい?」
「追いかけたところで超加速使ってばっさり、ってやるつもりの癖に…」
「良くわかってるじゃないか」

 あの時、メドーサから巨大な霊力を感じた。横島は知っていた。あれは超加速の前兆だ。
 横島が高校の頃、横島は何度か妙神山に行って小竜姫と模擬戦をやったことがある。
 その時に学んだのは、超加速が意外と不便だということだ。
 超加速は発動すればほぼ勝利が確定する技だ。だがその制御には高度な神経集中と、高い霊力が必要とされる。超加速を完全に習得している小竜姫でさえ、発動の前には僅かの集中期間と霊力の励起が必要となる。
 その隙を突けば倒せる、とまでは行かなくても超加速を阻止するのは可能だ。
 だがそれは言い換えれば、常に相手に隙を与えられないということだ。
 隙を与えた瞬間、超加速に入ったメドーサにやられる。

「さぁて、しばらく付き合ってもらうよ―――横島っ!」
「ド畜生ぉぉぉぉぉぉっ!ここん所、こんなんばっかや!」

 古都の真ん中で、東西の行く末をめぐる戦いの緒戦が、切って落とされた。


「伏見神社、ってのに似てるなぁ」

 それが、関西呪術協会総本山の門を見たカモの感想だった。
 アスナとネギは、軽くいきを付きながら周囲を眺めていた。

「も、もう巻いたわよね?」
「だ、だとおもいますけど…どうですか、ちび刹那さん?」
「はい。周囲には宮崎さん達はいないようですよ」

 答えたのは、ネギの頭の上に浮かんでいる二頭身の刹那――式神・ちびせつなだった。
 ネギ達が電車から降りて、人気のないところに出たところで、まるで人魂のようなものが飛んできて、ポンと弾けたかと思うと…

「大丈夫ですか、ネギ先生、アスナさん!」

いきなり現れた二頭身がちびせつなだ。それだけでも驚いたのに、さらにちびせつなは更に驚くべき情報を持っていた。

「気をつけてください。宮崎さんと綾瀬さんにつけられていますよ!」

 言われて振り向けばちょうど柱の影から覗いていた夕映達と目が合った。
 よもや連れて行くことも、かといって合流してまた逃げるのも至難の業。ならば手は一つ。

『ゴキブリのよーに逃げるぅぅぅぅぅぅっ!』

 ここは逃げの一手のみ。
もともと運動神経がいい二人が、横島直伝の逃走術を以ってすれば、普通の少女の追跡など物の数ではない。

「けど…あとであの二人になんて言い訳しよう?」
「そうですねぇ…」
「なぁに、簡単じゃねぇか!」

帰ってからの問題に頭を悩ませる二人に、カモがオヤジの笑みを浮かべて、こう言った。

「二人で黙ってデートしたってことにすれば良いのさ!」
『デッ!』

 カモの発言に一瞬で真っ赤になる二人。アスナは自分の顔と自分と同じように赤く染まったネギの頬を摘みあげる。

「なななっ、何言ってるのよエロガモ!十歳なのよ、このガキは!」
「あううううっ〜!」
「もうっ!みなさん気を抜かないでください!まだ親書を長の手に渡したわけじゃないんですよ!」

 和んだ空気にちびせつなが、一生懸命に喝を入れる。
 その言葉に、ネギ達も状況を思い出す。
 そう、まだだ。いくら長自身が木乃香の父親で、和平推進派だといっても総本山にいる人全てがそうだとは限らない。まして、まだ総本山にたどり着いたわけでもないのだ。

「そうですね、気を引き締めましょう」
「うん。きっちり仕事を片付けて、思い残すことなく修学旅行を楽しむわよ!」
「おうっ!行こうぜ兄貴、姐さん!」

 二人と一匹、そして一体は、長く続く千本鳥居の向こうを見つめたのだった。


つづく


あとがき

 ちびせつなを打ち間違え&変換間違えして恥部刹那と何度も変換してしまった詞連です。
 初雪降りました。北国はもう冬です。寒いです。

 レス返しを

>プラム氏
 まあ、多少横島にも脅しの要素を含めてきびし目にいきました。
 朝倉は再登場の予定。彼女が原作とどう異なる動きを見せるかお楽しみに。

>レコン氏
 ありがとうございます。メド様にはしっかり魔族してもらいました。
 やっぱり千草はああいうのに引っかかりやすいキャラかなと思いまして。
 お説教は生きすぎ…でうすか。ううむ、確かにちょいと脅しすぎたか。だがアソコで何も言わないのも、このSSの横島らしくないし…。
 やはりレスにもあったとおり、別の説教役を用意した方がいいかも…。
 次回もがんばります。

>D,氏
 悪役、というより大人役ですね。
 どんなにしっかりしていても、スレていても、実際横島の周囲は皆年下という状況ですから。
 月詠パワーアップは以降に持ち越し。残念ながら期待されていた(?)ロケットパンチは無しの方向で。
 あえて言いますが、今までのレスに正解はありません。

>ロードス氏
 悪気がなくても悪いことをしたら怒ってあげるのが大人の責任です。
 夕映とのどか。微妙に原作と異なるこの二人の動静を、私も期待に応えれるように書き上げていきたいと思います。

>鉄拳28号氏
 誤字指摘ありがとうございます。
 まあ、実際朝倉達は、相手が嫌がったら巻き込むつもりはなかったのでしょう。ですが、こちらの事情を話すということ事態が、すでに巻き込むことになるとは気付いていない様子で…。
 夕映についてはお灸は微妙ですね。なんと言っても危険だという警告すら受けていない状態ですから。朝倉達とは根本的に違います。

>doodle氏
 13時間目、おそまつさまでした。
 まあ、厳密にはのどかはネギ+横島というところですね。
 好きな人が何か危険な目にあっている上、目標にしている(一学期参照)人がクラスメートを『消すぞ』と(勘違いながらも)脅していたわけですから。
 さて、横島vsイドの絵日記。どうなることやら作者も予想不能です。

>yuji氏
 シリアスでした。そして今回もシリアス大目。横島が原作に比べて大分修正されていますから致し方なく…。ああ、そろそろギャグをしたくなってきたなぁ。
 夕映の行く末や、このかと刹那の顛末、ご期待に沿えるようにがんばります。

>ジン氏
 ご指摘ありがとうございます。
 原作の最初は確かにそれです。ですが、ストーリーを進めるにしたがって、それもデミアン事件の時は、明らかに横島はただの煩悩少年から、根性のある煩悩少年にランクアップしてます。私はそこに注目して、更に数年後、とある事件を経て、原作の成長率のまま育っていった横島を書いてみようと試みましたしだいです。
 ご指摘は参考にしたうえ、

>ダンダダン氏
 ご指摘ありがとうございます。
 確かにまだ書き込んでいない部分は読者の皆様は知らないんですよね…。
 その状態で横島をあまり大人な感じで動かすのはまずったか…。
 エヴァちゃんを使うのは盲点でした。そっちの方がよかったかも。
 ともかく、参考にしたうえ今後も精進していきます。
 今後も厳しいご指摘をよろしくお願いいたします。

>yanagi氏
 個性を失っていないといわれてとても嬉しいです。横島が原作から乖離している反動というか、その分原作と同じ時空軸に生きているネギたちは、なるべく原作から離さないようにがんばっているつもりだったので…。
 これからも応援に応えられるようにがんばっていきたいです。

>七位氏
 お褒めに預かり光栄です。
 あのシーンは、まあ、ネギまだから、というので通そうかとも私も思いましたが、それでは忠お!の横島のキャラに反すると、構想の初期段階に組み込んだシーンです。
 原作を終えて成長した新横島君を、これからもよろしくお願いいたします。
 
>黒川氏
 たしかにロリコンに拒絶反応を示したのは、ポチがシロに向けた台詞のみなど、二次創作上で確立されてキャラもありますね。まあ、実際シロタマに手を出さないところからして、中学生程度は対象外なんでしょうけど。
 千雨と夕映は根本が似ているのに伸びた方向が正反対のキャラですよね。
 今回も夕映の心理戦が炸裂。ただし、最後は体力任せに振り切られてしまいましたが。そのことや、のどかが本を召還できていないことがどう影響するか、お楽しみに。

>エの氏
 実際、恋人に自分の性で死なれたら、それも原因になったうえ、助かるチャンスを潰してしまったなら、確実にトラウマになりますよね。
 普通に失恋しただけで一月ほど鬱になった経験のある私なんかなら、一生立ち直れないかも…。
 まあ、横島は普段が普段ですから倦厭されることはないでしょうが…ともかく、フォローも予定していますので。

>歌う流星氏
 あ、そういえば美神さんて原作だと20歳だ!
 奇しくも横島君は、自分の師匠と同じ年齢で立場にいるわけか…。
 ただし率いるべき子分達の素質というか精神レベルは段違いですが。
 あ、ちなみに、横島を最後にぶん殴ったのは三蔵ご一行じゃなくて孫悟空単体ですのであしからず。

>ナイヅ氏
 瀬流彦先生の瀬流彦って名前ですよね?実は外人で苗字を世露死苦な感じの当て字にしてたりして(笑)
 新田は味があって大好きです。今後も多用していく予定ですのでお楽しみに。
 これからもがんばります。

>あき氏
 ハーハッハッハッハッハ!無茶は承知の上よ!

 ……ごめんなさいorz
 無茶なのは解っていますが、しかし忠お!のコンセプトである『すでにストーリーを終えたキャラ達が、まだストーリーをつむいでいる途中のキャラ達に影響を与えていく』というのを実現するには、キャラが自由に行き来できる世界融合形式しか…!
 不自然は、全て私の力不足によるものです。
 その設定で滑り出した以上もはや変えようもないので、屁理屈をこね回し続けていくつもりです。
 不恰好な泥舟のような設定ですが、なにとぞ暖かい目で見守ってやってください。

>ttt氏
 ネギま!の戦闘が原則相手を殺さない(フェイトにしろヘルマンにしろ)のに対して、GSは遠慮なくぶっ殺しますからねぇ…。
 まあ、戦っているうちに気付くでしょう。

>みょー氏
 誤字指摘、ありがとうございます。
 おひさしぶりです。楽しんでいただけたよかったです。
 気になることへの好奇心なら、夕映は朝倉を凌ぎますからねぇ。
 しかし間の悪い子だよ夕映吉。
 では次回もがんばります。さようなら。
 

 終了。
 さて、次回からはバトりまくりです。小太郎とケイのコンビネーションにご期待を。良い意味で期待を裏切れるようにがんばります。では…

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