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「見習いが往く 第八回(ドラえもん+機神咆哮デモンベイン)」

ガーゴイル (2006-10-31 23:40/2006-10-31 23:47)
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――漆黒の闇の中。
人気の絶えた石の牢獄の回廊を、何者かが風の如く、影の如く過ぎ去っていく。
闇に浮かぶ、桃色の髪。
――音も無く、回廊を渡る。
そして、闇の中にぼんやりと扉が浮かび上がった。
明かりは無い、人気も無い。
何者かは、チキチキとヒトならざる音色を米神から響かせ、扉の前に立つ。
ドアノブに手を掛け、回す――
勿論、開く訳がない。
だから、ドアノブから手を離し、鍵穴に手をあて――

砕いた――

金属の爆ぜる、小気味良い音色。
鍵穴の部分が丸く消失したのを確認し、扉を蹴り破り、中に踏み込む。
そこは、乱雑する資料と棚に囲まれた書の腐海だった。
乾いた紙とインクの醸し出す、誇り臭さに似た古びた書物の臭いが空気を侵す。
しかし、興味は無い。
目指す物は――この奥だ。
書を掻き分け、棚を掻い潜り――最奥に安置された、目的の物へと向かう。
ブツは、直ぐに見つかった。
大型の金庫――白色の光沢から察するに、恐らく真銀製。
大抵の銃器などでは掠り傷一つ付かないであろう、この金属――しかし、“彼女”にとって、そんな事は問題にならない。
拳を握る。
簡単だ――壊せ……!

「――そこまでだ」

後頭部に、固い金属の感触。
若い男の声が、背に突き刺さる。
「振り向くな。手を上げろ――妙な真似をしたら、撃つ」
有無を言わせない。
彼女は少し動きを止め、そしてゆっくりと両手を頭の上に伸ばし――

と、思わせ――振り向き様に後頭部の金属を蹴り上げる!

見事な後ろ回し蹴り。銃を構えていた男の手は跳ね上がり、凶器は明後日の方に飛ばされた。
息も吐かせず、彼女は男に踊りかかる。
右の手で目を払い、左の手を肝臓に向かって抜き放つ。
しかし、男も然る者だ。瞬時に殺気を感じ取り、バックステップ。
そして――攻撃を避けられ、バランスを崩した彼女の鳩尾に拳を放つ……!
――だが、事態は予想外の方向に流れる。

ふにょん。

手に感じる、やーかいボリューム。
男が硬直した。
何故なら――男の拳の先が、見事に彼女の胸に接触していたからだ。
原因は明白だ。
男同様、彼女もバックステップで回避しようとしたのだが――如何にもタイミングがおかしな具合にずれ、変な方向で噛み合ったらしい。
鳩尾を狙った拳は胸に、退かれた事で拳の先がジャストミート。
嬉しい偶然だ。
「…………!?」
見る見るうちに真っ赤になっていく男。
口をパクパクと動かすが、驚きで声が出ないらしい。
初心だ。
彼女の方はと言うと――何も無い。
ライダースーツに似た全身フィット型の衣服から小ぶりながら見事に張り出た乳には、男の拳が添えられていた。
バイザーで目元を隠し、桃色の髪を靡かせ――何も言わない。
無表情、無感情。
取り合えず、拳を退けようと、男が動く。
しかし――
彼女が踏み込み、拳を放つ。
――速い。とんでもなく速い。
男の顔が瞬時に引き締まり、彼もまた迎撃の為に一歩踏み込む――……!
それが、凄まじく不味かった。

ぽにょん。

そう。互いが一歩踏み出した事により――触れるから握り締めるにランクアップしたのだ。
羨ましい。
シルクのような、モチのような。
とんでもなく素晴らしい、感触――
「…………ぅんッ」
びくり、と僅かに反応する彼女。
――それが、トリガーだった。
「…………■■■■■■――――!!?」
魂の咆哮。
脳の処理能力が限界突破。
男は――頭から煙を噴き上げ、ずざざざ――ッ!! と軽く人類を超えた速度で距離を取った。
まだ感触の残る掌を凝視し、顔から火が出ているのではないかと思わせるぐらいに真っ赤になる。
そして、彼女は――
全く、反応していなかった。
バイザーの下は、恐らく無表情。
先程と変わらず殺気のみがビンビンと発せられているが――感情のうねりや波などは、全くと言っていいほど無い。
ぞくり、と男の背に悪寒が奔る。
人間味が全く無い。
乳は温かく柔らかかったが――生物の息吹が、全く感じられない。
彼女が動く。
腕を振り上げ、胸の前で交差させる。
そして、両腕を激しく擦り合わせ、火花を散らす――!

スパーク。

紫電が奔り、彼女の全身が青白い炎に包まれる。
一瞬の閃光の後――そこに顕現したのは……
『…………』
朱金色の――戦天使。
猛禽を模した鋼色の双翼。
全身を覆う、女性を感じさせるデザインの装甲。
そして――フルフェイスの下から迸る……蒼き瞳光。
男の顔が引き締まる。
目に浮かぶのは――怒りか、哀れみか。
「……そうか。お前も、そうなのか」
引き絞るような声。
彼は俯き。そして、面を上げた。
鋭い視線。それは正しく――戦人の眼だった。
「為らば――俺も全力で……相手をしよう!」
――男の腰が淡く輝く。
闇色の光から生まれたのは――腰に巻きついた、一本のベルトだった。
翼の装飾が為された、荘厳なる意匠。
続いて、男はポケットから何かを取り出した。
それは、一枚のカードだった。
図柄は――闇色の天使。
刻まれた銘は――“Sandalfon”。闇色の片割れ、牢獄を守護する者。
男はカードを、ベルトのバックルに刻まれたスリットに素早く通す――!

「――――変神ッ!!」
――“CHANGE”――

男の全身が闇に染まる。
鋼を鍛える音色、鉄火の響きが闇を満たす。
一瞬の後、大地に闇色の仮面天使が顕現した――
『――容赦はしない。覚悟しろ……ッ!!』
爆発。

――瓦礫と砂塵の舞う空の中、闇の天使と機械の天使が激突する……!


夜霧漂う、異国の街。
霧の都と渾名される、英国の首都“倫敦”の空に、二色の閃光が踊る。
朱金の鋼が電光を刻み、闇黒の拳打が空を撃つ。
手刀を拳で受け止め、蹴りを蹴りで迎え撃ち、雷撃を闇風で穿つ――
高速、連続、豪撃。
朱金色の天使の翼が一際大きく羽ばたき、その双翼から紅い雷を纏った羽根の雨が撃ち出される――
散弾と貫通を兼ね備えた、強力な殺傷兵器だ。一発炸裂する度に、サンダルフォンの装甲が大きく削られる。
『――調子に……乗るなぁ!!』

――“FIST”――
――“DARKNESS”――

二枚のカードをスラッシュ。
電子音が、空気を掻き乱す――

――“DARKNESS・BLAST”

サンダルフォンの右拳に、闇が収束する。
漆黒の衝動が、彼の全身を突き動かす。
『―――ハァッッ!!』
――眼に留まらぬとはこの事か。
単なる正拳突き――そう、単なる正拳突きだ。
空気を根こそぎ奪い、障害を一切合切撃ち砕き――あまりの速さ故に、空間に熱による赤と闇の黒を刻み遺す、音速をも超えた超過の一撃。
しかし、敵も然る者。
羽ばたき一つで距離を詰め、攻撃を避け――勢いを殺さぬまま、サンダルフォンの懐へと飛び込んでくる!

<MAXIMUM――>

朱金の腕が激しく明滅し、螺旋状に展開。剥き出しになった内部機構から、凄まじい高電圧放電が迸る――

<ELECTRONIC SMASH>

――避ける間も無く。サンダルフォンの胸に、高電圧の掌打が突き刺さる。

痛みを感じる間も無い。一瞬の拮抗の後、サンダルフォンの胸板が紫電と共に弾け飛ぶ……ッ!
『…………ガッ、ハ、ァァ………ッ!』
仮面から血飛沫が、破壊された胸板から血煙と電流が溢れ出す。
砕け散った鉄が空に散り、流れる血とオイルがサンダルフォンを赤黒く彩る。
しかし、それでもサンダルフォンは揺るがない。
両の翼と推進機関をフル稼働させ、衝撃を殺し、その場に踏み止まる。
仮面に隠れた瞳からは光は消えず、真直ぐな意思の焔は、絶える事を知らない――
『この程度では……俺は――死なないッッ!!』
吼える。
全身を、黒炎が覆い――闇色の闘気が激しく燃える。
『ハアァァァァァァァァ…………ッ!!』

――“FLAME”――

――“SPIRAL”――

二枚のカードを、更にスラッシュ。
一拍を置いて、サンダルフォンの技が炸裂する……!

――“BURNING・TEMPEST”

サンダルフォンの身体から発せられる、熱量の渦。
漆黒色の轟炎旋風が荒々しく吹き荒び、その渦の中心に――サンダルフォンが飛び込む!
『オォォォォォォォォ――――ッッ!!!』
弾丸などと言う、生易しいモノではない。

――アレは、“弾核”だ。

刃金が黒き焔を纏い、大気を斬り裂き、燃やし尽くす。
触れれば、それだけで微塵となるであろう必焼の一撃。
――不味い、と女が反応するよりも早く、黒穿弾は視界を焼き尽くす。
視界を埋める黒、耳を焼く熱波の残響。

光が――消える。

『…………ッ!』
着弾する直前、女の全身を覆っていた放電膜が消えた。
次の瞬間――女の右足に、太陽の如く眩き閃雷が集う。

<MAXIMUM――LIGHTNING POWER>

今までとは比べ物にならない、超高圧電流。
これもまた、触れれば消し炭すら残らないであろう、最悪の一撃。
そして――

<LIGHTNING INFERNO>

黒焔と瞬雷が、真っ向からぶつかり合い――互いを噛み砕く!
拮抗すらも無く――轟爆の音色が空を粉々に打ち砕き、街を揺らしたのだった――


――残ったのは、朱金の天使だった。
遥か下方――街を貫く巨大な河川に落下した闇黒天使の残骸を見つめ、何も語らず、宙に佇み続ける。
『…………』
何かを、呟く。
しかし、言葉は形に為らなかった。
そして――天使の姿は、久遠の闇の彼方へと、消えたのだった――


翌日――地元の新聞にはこう報じられた

“大英博物館 マヤナの神剣奪われる”

――と。
物語は、ゆっくりと動き始めていた――


――始まりは唐突だった。
ギラーミンとの戦いから暫く経ち――季節はもう、夏に入ろうとしていた。
立ち上げた探偵事務所は相変わらず閑古鳥は鳴いているが、師匠のように苦労している訳でもない。
世は事もなし――ついさっきまでは。
先ずは、電話があった。
アーカム――それも、アーカムの中枢に位置する者からの。

『――野比様。お久し振りです』

覇道財閥執事、ウィンフィールド。
のび太が特に世話になっている人達の一人。
有能でまともそうに見えるが、意外と濃い人物だ。
この人が世間話でわざわざ国際電話をかけてくる訳が無い。
のび太はそう予測し――そして、それは見事に的中した。
電話の内容は、仕事の依頼だった。

『野比様。――昨今、世界各所で起こっている大規模な博物窃盗の事件はご存知で?』

知っている。
近頃、世界のあちこちで似たような強盗騒ぎが起こっている。
主な被害は、博物館や大学といった考古学研究機関。賊の狙いは遺物――それも、魔術的要素が強いモノ。
素人目からは兎も角、魔術を学んだモノから見れば危険なモノばかりが狙われ、奪われているのだ。
しかし、何故こんな話を。
大体の予想は――かなり嫌な予感がするが、何となく予想出来る。

『今週末に、日本のある場所で大規模な展示会が行なわれるのですが……それに展示される物品の一つを、覇道が日本側に貸与する事になりまして』

それが、何か?
のび太がそう問うた。
ウィンフィールドは少しばかり声を潜めて、言う。

『――モノがモノだけに、賊に奪取されると……少々厄介な事になるかと。先日も、リューガ様に大英博物館の護衛に向かって貰ったのですが……』

――喉が凍る。
信じられない、とのび太は言葉にならない息を漏らす。
あのリューガが、サンダルフォンが負けただと?
そこいらのマギウスや怪異が束に為ろうとも、余裕でぶっ潰すあのサンダルフォンが。
狙っている物品から見てもそうだが――単なる物盗りではないと言うことか。

『――此方も尽力を尽くしているのですが……如何にも、人手が足りないのです。野比様――引き受けて貰いませんか』

やはりそうきたか。
予想通りの展開に、人知れず溜息を吐く。
しかし、ここで断っては少々後味が悪い。
それに、リューガを負かす賊――確かに、戦力は幾ら在っても足らないだろう。
返事は決まっている。
その前に、取り合えずこれだけは言っておこう。

「――危険手当は付きますか?」

これだけは譲れなかった。
――彼はこの時、気付いていなかった。
これが――邪神に仕組まれた、巧妙な罠だと言う事に。
後に、彼は血涙を流し、胃薬をリッター単位で飲み干す事と為ったのだった。


「――感じるか? レディ」
「……うん。やな臭いがプンプンしてるね」
イングランド周辺の海上空域で、そんな会話が交わされた。
奇妙な翼機。まるで生物のような雰囲気を漂わせる――奇怪な機械の上に、その人物は威風堂々と佇んでいた。
見た目は老人。だが、彼の醸し出す雰囲気は兎に角若々しく、壮年と呼ぶに相応しい。
分厚いサングラス――その下に隠された、光映さぬ筈の双眸。
それが、老人のトレードマークだ。
「胸糞の悪くなる風だ。しかし――何だ。違う……ああ、そんな感じだ」
「だね。ハスターの――私達が知ってる“邪神”の力とは、少し違う気がする。気分悪いのには、変わりないけど」
少女の声が、機体から発せられる。
――その音色には、嫌悪が篭められていた。
男はああ、と同意し、――そして。次の瞬間には、顔を強張らせていた。
風が――吹き荒ぶ。
「――レディ!」
「解っている……ッ!」
風が悲鳴を上げる。
邪悪な瘴気を斬り裂いて、鋼鉄の翅が空を超えた。
光――そうとしか言いようが無い。
空間を飛び越えたかのように、男と翼は遥か遠方の海域へと飛んでいた。
そこには――風が“在った”。
そう、それは形在る邪悪な魔風。
螺旋。捻狂った台座。
その頂点に――老人が居た。
奇妙な衣装、強いて言うならモンゴル辺りの民族衣装に似た姿だ。
色の薄い――醜悪な気配を醸し出す老人は、彼らの姿を視界の端に止め、にやりと口端を歪めた。
「――貴様か。この風を操っているのは」
忌々しそうに吐き捨てる男。
少女の声も、毒を含めた声色で。
「全く――気持ち悪いよね、ダディ」
然り。と男は頷いて、
「サンダルフォンの捜索を受けて態々進路を変えてみたが――如何やら、“別の標的”がヒットしたようだ」
男はサングラス越しに、見えざる瞳で老人を睨み付ける。
「昨今、世界各地で起こっている謎の刃風現象――貴様の仕業だな」
風で物が切れるという現象は珍しいものではない。
だが――普通の風は“タンカーを真っ二つ”には出来ないし、ましてや障害物も何も無い海上でそんな奇妙な風が一ヶ月近くも吹き荒れているというのは奇怪を通り越して異常だ。
だから――彼らはやってきた。
魔を狩る者――闇の賢人と、その従者が。
老人は答えない。
返答の代わりと言わんばかりに――海が盛り上がる。
現れたのは、またもや風だった。
渦巻き、たゆたい、荒れ狂う――ッ!
水飛沫を纏い、この世に顕現する。
それは――竜だ。
長い首と身体を持ち、鋭き爪と牙を備えた、雲水と大気の流れを血肉とする実体無き虚の竜。
老人は竜の中に解けるように、消えていく。
――竜が吼えた。
それは風の爆発だ。
鼓膜を破るように、肌を切るように。凄まじき波が彼らを襲う――

「く……ッ!」

「……ッ!?」

咄嗟に風を編み、結界を纏う。
耳元で刃が空を斬り、刃金が見る見るうちに刻まれる。
風が止む。病む。
巨大な竜は――息吹を漏らし、暴虐に満ちた笑みを浮かべた――

――気に入らん。

男は思う。
取り合えず一発ぶん殴ろうか。

――気に入らない。

少女は思う。
このファッキン幽霊爺が。取り合えずエーテルライダーで一発突貫でも噛まそうか。
「レディ――往けるか?」
「問題無し」
似た者親子である。
そして――男の朗々たる一声が、病風を分かつ!

「――“機神召喚”……ッ!」

「――我は勝利を誓う刃金。我は禍風に挑む翼――」

少女の声が唱和する。
それは、鋼の翼を呼ぶ声。半身を呼ぶ声。

「――無窮の空を超え、霊子の海を渡り、翔けよ、刃金の翼……ッ」

男の声が重なる。それは無敵なる最速の翼への祝詞。呼び声。
そして――二人の声が、完全に重なる!

「「舞い降りよ――アンブロシウスッ!!」」

風が吹き荒れ、鋼鉄が生じる。
それは――猛禽だった。
それは――骸骨だった。
それは――鋼の翼だった。
痩せ細り、大鎌を構えた――死を呼ぶ凶鳥。
“狩人”ラバン・シュリュズベリイが駆り、魔導書“セラエノ断章”が精霊ハヅキが司る、最速の鬼械神。

刻まれし銘は――――アンブロシウス!

魔翼機上のシュリュズベリイが光の渦と為り、竜巻と化して機体に溶け込む。
そして魔翼機も又、元の鞘――アンブロシウスの頭部へと収まる。
目に光が燈り、全身の魔術回路に字祷子と霊子が満ちる――
魔導書――それは頭脳。マギウス――それは魂。
ここに又一つ、三位一体が顕現した。
「――燃料満タン……ダディ。何時でも往けるよ……ッ!」
鬼械神の中、精霊ハヅキが自らの父にそう告げる。
その声色は戦いの鋼。
決して折れぬ砕けぬ、不変の音色。
そして、応える声も又、鋼であった。
「ああ。……では、貴様に教育してやろう。魔を撃ち滅ぼす術を。マギウスの闘争を――己が魂と肉体を以って、しかと刻み込んでやろう!」
風が駆ける。風が襲う。
流離う風が、澱んだ風が。
貪り、砕き、斬り裂く――
闘争の嵐が――始まった。


――迂闊だった。
今更だが、のび太は深く深く後悔していた。
気を抜けば血涙が流れる、喉奥から鉄錆色の反吐を吐いてしまいそうだ。
震える。
やはり、此度の依頼、断っておけばよかっただろうか。
否、些細な問題だ。
断っていても、然して変わりは無かっただろう。
この悪夢は――最早偶然ではなく、必然へと結晶化していたのだ。
「……最悪だ」
のび太は手に持った垂れ幕を力無く握り締め、再び静かに血を流した。
垂れ幕には、紅い血文字でこう書かれていた――

“歓迎 覇道財閥御一行様”

血涙の流し過ぎでのび太の目は真っ赤に染まっていた。
更に更に、彼を苛む悪夢は続く。
「のび太、まだかよ」
彼の隣に立つ、大柄の青年――タケシことジャイアンが、待ち草臥れたように呟く。
どうやら退院出来たらしい。
「まあまあ。ジャイアン、少しは辛抱してよ」
宥めるのは、小柄な狐に似た顔の青年――スネ夫。
久し振りの登場だ。
「るゆー。瑠璃お姉ちゃんやあるお姉ちゃんに会えるー、嬉しいなー」
ニコニコ笑顔のくする。
本日はオカッパに黒い着物。何気に静香は着付けが出来るのだ。
「か、可愛いわよくするちゃん……もう殺人的に人類を超越した可愛さだわ。もう、良い意味でSAN値ががりがり削れていくわー!」
くするの爆裂な可愛さを網膜と脳と魂に焼き付けつつ、鼻血と涎と涙を垂れ流す静香。
もう別の世界の住人だ。
「覇道財閥総帥……ふふふ。スポンサーとしては申し分ない……」
ノーコメント。
わざわざ認識するまでもない。脳の容量をこんなモノの為に消費したくない。
「――何で君たちがここに居るんだよ! 僕誰にも喋ってないのに!!」
叫ぶ。そんな彼を嘲笑うかのように、出木杉はチチチ、と指と振り。
「のび太君。僕には科学の神が付いているんだ。科学の神の力により授けられた、遠くの声を盗み聞きしてくれる小さな小さな小人さん達が僕に力を――」
「つまり盗聴しやがったなこの糞野朗」
蜂の巣にしてやりたかったが流石に拙いので、潰れる一歩手前まで球をシェイクしてやった。汚いものを踏んでしまった。反省。
馬鹿が地面に転がるが、一切無視。
そして――自然とのび太の目は、最後の一人……ルルに惹き付けられた。
「…………」
珍しく、少々機嫌が悪いルル。
そっぽを向いて、頬を膨らましていた。
可愛いと思ってしまうのび太は駄目人間レベルがそろそろ縁から溢れそうだ。
「……あの、ルルさん。何故に今朝からご立腹なのでしょうか? 下賎な私め如きには見当が付きませんどうかどうか訳をお話下さいませ」
物凄く腰を低くしてお伺いを立てるのび太。
駄目人間というか駄目亭主だ。
始め、ルルはそんなのび太の声など無視していた。
しかし、無視し切れなかったらしい。
彼女は少し怒ったように、そして恥ずかしそうに。
「………たいの」
小さな声。
「え? 何?」
聞き返すのび太。
――ルルは困ったように。そして意を決して、ちゃんと聞こえる大きさで、言った。

「――……おしり、いたいの」

――――。

硬直、沈黙、凍結。
一瞬で場が固まった。
のび太の顔から背から滝のように冷や汗が怒涛の如く流れ落ちる。気分はナイアガラ大自然の誇りよ永遠に。
震える。恐怖ではない。しかし震えざるを得ない。
のび太の脳に、昨夜の光景と行為がフラッシュ爆。
いやんでうふんであはんな逢瀬だ。
お子様お断り――ぼうやだからさ。
冷汗まみれでガタガタ震え始めるのび太を尻目に、ルルは恥ずかしそうに言葉を続ける。

「……ごかいもなかだったから、おなかもいたいの」

――BADEND。
のび太の性癖の一端が日の光の下に曝け出された。
おうまいがっと。男としては正しいが、人間としては色んな意味でもう駄目だ。
現に、男二人は汚物を見るような目でこっちを見ていた。
「……のび太……」
「お前……」
「いやあああああ! 見ないでぇぇぇぇぇ!! そんな目で、そんな人類の最底辺に位置する色んな意味で終わってる右や左の旦那様お恵みをあっしは前後ろどっちもばっちこーい男は寄るな豚は死ねきゃわいい女の子幼女好き好きSMどっちもいけまっせ痛みはそのうち快楽に変わるぜ白い肌がそそるよお嬢ちゃん――初物だと? ならば我が血に染めてくれるわがはははー! 的な人間以下を見るような目で僕を見ないでぇぇぇぇぇ!!」
地面に這い蹲って血の涙を間欠泉の如く噴き出させるのび太。
気分はナイアガラから百年前の世界最大レベルの間欠泉ワイマング・ブラックガイザーにシフトチェンジ。
何かもう駄目駄目だ。
「の、のののののび太さん!? ―――」
静香の思考が疾走する。脳を巡るは圧縮された魔妄想。
カンマ一秒。
そして――フリーズアウト。
「――逆流して食道から気管まで!? 全身白濁漬け!? ちなみに一夜漬け!?」
「アンタの妄想の方がエロいよ下品だよ危険だよー!!」
そこまでやっていない。
ちなみに、お子様なくするはと言うと――マッドな癖に変な常識が残っていた出木杉が球のダメージを圧して、くするの耳と目を塞いでいた。
「るゆー? 出木杉お兄ちゃん、何してるの?」
「ははは。せめてだーれだッ♪ くらい言わせてもらいたかったなぁ」
無駄に和んでいる。
悪夢を認めたくないが故に。
ケイオス、ケイオス、ケイオス。
何ともくだらなく騒がしい混沌模様だ。
その時だ。
ゲートの向こうからも、喧騒が響く。

『くぉのぉ……大うつけがぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!』

――それは、光ですら無く、物質ですらなかった。
ずどむ。と腹の奥底まで響く爆撃音。
しかし、辺りは少し揺れただけで、被害は別段無いように見える。
事の張本人以外は――
ゲートの向こうから現れたのは、少女だった。
白い服、輝く銀髪。
緑の瞳に正しき怒りと憎悪を燃やし、その右手には襤褸屑に似た――いや、襤褸屑そのモノと化した、黒焦げたヒトガタの足が握られ、ズリズリと空港の床を赤黒く汚す。
「……全く、このうつけが……」
地獄の底から響いてくるやふな、おどろおどろしい声。
鬼だ。鬼がそこに居た。
見た目だけは純情可憐な絶対美少女が――般若が、そこに居た。
「――って、来日早々何してやがりますかこのギネス級幼女がぁぁぁぁぁぁッ!!」
「喧しい」
「一言で斬って捨てられたッ!? 間違ってるのは僕の方なの!?」
かくも人間というのは、矮小な常識の範囲外に存在するこの世のモノで無きモノに弱いものだ。
――特にのび太は、絶対と言っていいほど眼の前の幼女には決して敵わず、逆らえない。
最早、恐怖が遺伝子で刻まれているから――
「一般人の前で魔術使うなんて何考えてるんですか!? アレですか、大十字家の一般会話は全て暴力言語なんですか!?」
お前が言うな。と切に言いたくなる。
応える少女――最強の魔導書“アル・アジフ”は涼しい顔で、
「周囲の被害を極限にまで抑え、殺傷力を倍増させた特別呪法だ。派手さは少々欠けるが、威力は上々。――傍から見れば、スタンガンを口に突っ込まれて全身丸焼けになったようにしか見えん」
「いや、充分ヤバイですよ」
突っ込み。
その時――炭状物体が蠢き始めた。
バリバリ、と炭化した表面が剥がれ落ち、中から人が現れた。
黄色人種。割と綺麗な顔立ちだ。しかし、内面から滲み出る……何と言うか色々な気配の所為で台無しだ。
「……い、今のは流石に死ぬかと思った。ED通り越して人生のENDマークがスクリーンに浮かび上がって見えた……! この古本娘、何しやがる!!」
「黙れこの歩く猥褻物。――何なら、汝が妾にした事を今此処で事細かに臨場感たっぷりに演説してやろうか?」
「すいませんそれだけは勘弁してくださいお願いしますアルアジフ様」
怒りから一転。男――“元祖魔導探偵”大十字九郎はその場に土下座した。
見事な土下座だ。
何をやらかしたか凄く気になる。
そんな、九郎のへたれな姿を見て、のび太は哀れむように、蔑むように。
「相変わらずですね、師匠。――最早、哀れを通り越して無様に見えます」
「お前にだけは言われたくねえよッ! この甲斐性無しのクソ弟子がぁッ!!」

どちらも人の事言えない。

同レベルだ、色んな意味で。
「か、甲斐性無し……ッ!? 師匠のような万年金欠駄目貧乏人に言われたくないですよ! 一家の大黒柱として、僕はルルやくするに負担を掛ける生活だけはさせていません! 最近はちゃんと家にも生活費を入れています!!」
胸を張って言うのび太。
何故か九郎は、のび太の背に後光が射しているかのように見えた。
「……ぐ。何故だ……物凄く敗北感を感じる。――お、俺だって最近は三日に一度三食自分の家で飯が食える生活なんだぜ! 参ったかぁ!!」
胸を張り、親指を立てて歯をキラリと輝かせ、大いばりで言う九郎。
そんな彼を、アルは冷めた目で見やり。
「……言ってて悲しくないか、九郎」
「うん。ちょっぴり」
何故か涙が止まらない。
つか、それ以外は相変わらず教会にたかっているらしい。
重ねて言うが哀れだ。
「まー、と言うわけで……くする、垂れ幕」
「うん! かんげーはどーざいばつさまー!」
やる気の無いのび太に促され、ニコニコ笑顔でくするは、のび太から渡された垂れ幕を大きく振った。
そう、血文字で書かれた垂れ幕を。
「――怖っ!? 何で血文字ッ! もしかして俺ら、全然歓迎されてない!?」
「今頃気付いたんですか」
のび太がしれっと言う。
――張り付けたような笑顔が、妙に不気味だ。
「……そうか。のび太……てめぇ、師匠を敬う気が全然無ぇみたいだな」
米神に青筋を浮かばせ、壮絶な笑顔で九郎は言った。
対するのび太は、ハッ、と鼻で笑い。
「――師匠。鏡を見てから、モノを言ってください。つかマジで聞きますが、何処を敬えば?」

――――。

九郎自身も、答える事が出来なかった。

そして、彼のパートナーたる彼女も、

「――言われてみれば」

ポツリ、と呟いた。
――それが、最後通告だった。
「ちくしょおおおおおおおおッ!! アレですかどうせ俺は生きている価値も無い蛆虫ですかお天道様に顔向け出来ず向かって死んだ蜂のムサシなのかー!!」
滝の涙。
いい具合に壊れてきている、九郎だった。
「……全然変わってない。まあ、まだ半年も経ってないから当たり前か」
苦笑。
何だか久し振りに見る光景だ。と、のび太は微かに笑った。
咽び泣く九郎を見かねて、アルは少し眉を吊り上げ。
「其処までにしておけ、のび太。悪戯が過ぎるぞ」
「――すいません。師匠と話してると、ついついこうなっちゃうんですよね」
清々しい笑みを浮かべて言うのび太。
ストレスが溜まっていたらしい。
しかし――ストレスが現在進行で溜まっているのは、九郎も同じだ。
目を血走らせ、のび太を睨み付け。
「――……のび太、いい度胸だな。師匠を甘く見るなよコラ」
「――弟子は師を乗り越えるものです。師匠こそ、何時までも僕を子供扱いしないで下さい」
――交差する視線。
剣呑な空気。
仲が悪いわけではない。この二人の仲を端的に表すなら――同属嫌悪だろうか。
やれやれ、とアルとルルが肩を竦めた。
「されたくなかったら、一人前らしくやってみやがれってんだ。やーい、ガキー! クソガキー!!」
「どっちがガキですか!! 師匠はガキな上にペドでしょうが!! 僕の方が見た目の年が近い分、勝ってます!!」
どうでもいいわ。
しかし、のび太の台詞が逆鱗に掠ったのか、更に青筋を立ててムキになり。
「マジでクソガキだなてめえは!! そんなだから押し倒す前に押し倒されるんだぞ!! お前の方がヘタレ度マックス! 倍率ドン!!」
「な……み、見てたんですか!? 酷い、僕とルルの逢瀬を覗き見してたなんて!! 師匠の鬼畜、変態、スカマニアー!!」
「そこまでやってねえよ!! つか、あん時はわざわざ気を利かせて俺らの方が外に出たんだぞ!! 寒いのに二時間も! どんだけ頑張ってたんだてめえらは!!」
――その時の事を思い出したのか。ルルは頬に手を添えて、真っ赤になっていた。
「それは師匠も同じでしょうが! アルさんなんて時々腰を痛めてるそうじゃないですか!! もう年なんだから少しは労わってあげてください!!」
――アルの額にマスクメロンの如く、ぶっとい青筋がビキビキと奔る。
それだけで人が殺せそうなぐらいに凄まじい殺気と視線が、場を支配する。
しかし――ヒートアップしつつある二人の馬鹿は気付かない。
「僕知ってるんですよ! 師匠がこの前撮った、アルさんにブルマと体操服着せた時の写真をソファの隠し棚に隠してる事を!」
「お、お前だって人の事言えないだろ! 師匠を舐めるな――お前がスク水フェチだと言う事はお見通しだ! 一着や二着なら兎も角、フツー全色揃えるか! 俺だってスタンダートな新式紺色しか持ってないのに!!」
「ふ、旧式は勿論伝説の白スクも在りますよ。――って師匠は僕よりレベル上でしょうが!! 何ですかあのレザーな装飾具は!! アレですかMですか貴方!!」
「馬鹿やろう! どっちかって言うと俺はSだ!! アレは――その、エンネアからのプレゼントだ! 今度売り出す新製品らしい。で、アルがモニターに選ばれたんだ。中々壮観だったぞ」
「何考えてんだあの人!? アレHGより表面積少なかったですよ! しかもボールギャグと眼帯まで付いてたし!! ――って、着たのッ!? この人侮れねぇ!!」 
「ふ、どうだ。師匠の実力が解ったか――そういうお前こそ、この前の裸エプロンは何だ!」
「師匠こそ、裸Yシャツがデフォなんだそーじゃないですか!!」
喧々囂々。
聞くに堪えない、罵詈雑言。
というか、お互いの悪行・性癖をばらしまくっているだけである。
それが、互いの首を絞める行為だという事に、気付かずに――
「……いい加減に――」
爆発五秒前。
アルの両拳に、殺意の光が満ちる。
「――してよね……ッ!」
更に、ルルの両の掌にも同じ光が収束する。
彼女も限界点を超えたようだ。
そして――爆発は、訪れた。

「「この……変態師弟がぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!」」

――光が満ちる。空気が爆ぜる。雷が燃える。
それは蹂躙だ。
正しき憎悪、怒り。
無垢なる乙女の、正しき裁き。
罪人二名、地獄送り。

「ダブルできたかぁぁぁぁぁぁッ!!」
「何かこの感覚ひさしぶりぃぃぃぃぃッ!!」

――渇かず飢えず無に還れ。


――こんな一連の遣り取りを見て、皆は思った。

この二人。間違い無く師弟だ。

「ぱぱ飛んでるー!」
くするが無邪気に笑ってる。教育上やばいと思う。
「……のび太、変わっちまったな、お前」
「ジャイアン、人は変わるものだよ。どんなモノも、変化から逃れられないのさ」
悟りを開きつつあるスネ夫が、タケシを諭す。
――もしかしたら、この面子で一番まともなのはこの二人なのかもしれない。
「しかし……アレが覇道財閥の人間か? どうみても、財閥系の人間には見えないんだけど」
冷静に観察していた出木杉が、ぼそりと呟いた。
正解である。どちらかと言うとお金持ちとは対極である立場である。
――そんな彼らの目に、飛び込んできた。
それは――絶対的なオーラの持ち主であった。
一人は、豪奢なドレスを着こなした、美麗為る令嬢。
その脇に控えるのは、痩身の青年。身のこなしから見るに、かなり出来る男だ。
令嬢は惨状を目にし、額を指で押さえて。
「あ な た が た は……少しは大人しく出来ないのですか!!」
再び地獄の音色。
美しく整った顔立ちは、怒りによって般若――否。閻魔の形相へと変貌していた。
令嬢の声を聞き、アルは鬱陶しそうに顔を歪めて。
「騒ぐな小娘。悪いのは我等ではない――其処に転がっているうつけ共だ」
指したそこには、馬鹿が二名ばかり消し炭になっていた。
ピクリとも動かず、呻きすらも漏らさない。
やばい状態だ。
令嬢は深く深く溜息を吐き――
「日本に着てまで、こうなるとは――。ウィンフィールド! 大十字さんとのび太さんを車に運んでください。このまま行きますわ!」
「畏まりました、お嬢様」
令嬢の命を受け、青年――執事ウィンフィールドは腰を折って深々と礼をし、そして迅速に動き出す。
消し炭と為った物体二つを軽々と肩に乗せ、そのまま扉をくぐり外へと向かう。
ウィンフィールドを見送り、令嬢は再び息を吐く。
「――全く。大十字さんとのび太さんときたら――きゃっ!?」
言葉が途切れた。
何故なら、彼女の背にくするが飛び付いたからだ。
くするは、嬉しそうに笑い、目を輝かせ。
「るゆー! 瑠璃お姉ちゃんとあるお姉ちゃんだー!! ひさしぶり〜!」
抱き付く。抱き付く。抱き付く。
すりすりと身を寄せ、楽しそうに。
抱き付かれた瑠璃は始めは驚いたが、満更でもなさそうに顔を綻ばせ。
「くするちゃん――ええ。お久し振りですわ」

瑠璃――。

この名を聞き、一般人である四人は見事に硬直した。
それは仕方の無い事だ。
覇道、そして瑠璃。
この姓と名を併せ持つ者は、この世でただの一人しかいない――
様子に気付いたのか、瑠璃は背にくするを負うたまま、軽やかな微笑を向け――

「初めまして――覇道瑠璃と申します」

覇道瑠璃――覇道財閥総帥。頂点に立つ者。
こうして又一つ、出会いの歯車が噛み合うのだった――


この世の何処か。
荒れ果てた丘に、少女が居た。
髪は桃色。服はライダースーツに似た戦闘服。
光宿さぬ筈の目に、淡い悲しみを浮かべながら――彼女は渇いた風の中に立つ。
“何を考えている……”
少女の中で、声が響く。
それは邪気。それは悪意。それは――蝕むモノ。
“貴様は人形だ……。私の操り人形……人形がものを考えるな。私に従っていればいい”
そう。自分は人形。
名前は無い。いや、覚えていない。
感情は無い。いや、奪われた。
記憶は無い。いや、封ぜられた。
全てを奪われ、縋る物も無く、自分は荒れ果てた道を行く。
“そう。貴様には何も無い――私に従うのが、貴様の存在意義だ”
そうだ。それしかない。
少女は考えるのを止めた。
しかし――心の奥底に、未だ引っ掛かるモノがあった。
昨日闘った、黒い戦士。
自分の事を悲しそうに、哀れむような目で見ていた、青年。
心に少し、揺らぎが生まれる。
「何故――、何故貴方は――」

私を、そんな目で見るの?

答えるモノは、居なかった。


あとがき

前哨編――又の名を暴走編公開。
シリアスだったのに、何か途中からおかしいよ何で!?(馬鹿
まあ兎も角、第八話公開です。
前後編でも追いつかないとおもうので、一話区切りでお送りします。
兎に角――漸く出せました、マスターオブネクロノミコン。
キャラが上手く出せるといいけど……
では、恒例の返信です!


>とおりすがりさん
今回登場ですよー


>パッサッジョさん
はい、こちらでははじめまして(笑
ウエストは予想外に動きます……
ディバイディングは前々から出したかったので(笑
では、宜しくです!


>meoさん
盗撮小僧よりはかっこよくしたい(無理
イレイザーヘッドか……いけるかな(待て


>剣さん
毎度どうもですー。
人形は今回登場、魔女は本番バトルででるかもです。
ではー


>なまけものさん
ティトゥスかー、言われてみればそうかも(おい
むう……やっぱ解る人には解ってしまうか、正体。
兵団は出せないと思います。巨大ロボはだすけど(にやり


>七位さん
初めまして。
いや、貴方は正常だ(待てぃ


>シヴァやんさん
あはははー、改造されて重力なんてガン無視ですよー(汗


>ひげさん
お待たせして申し訳ないです(汗
ウエストはアレだけど技術は本当に凄いです、それ以外が全てを台無しにしているけど。
次回も宜しくです!


>放浪の道化師さん
もう戻ってこれないのですよ彼は(待て
ブリキはもうちっと後に出す予定です。
……マジでありがとうです(涙


>黒覆面(赤)さん
はい、ディバィディングですよー。
狙ってやりましたよー(待て
……みゅー、まだまだ原作のトークには追いつけないです。これからも精進します。
では、次回も宜しく!


>アレス=ジェイド=アンバーさん
材料……愛と勇気ですよ(待て
もうあの二人は逝ける所まで逝ってもらいます(更に待て
ギラーミン……私もちょいと好きなので(笑
戦闘跡……勿論ぼこぼこです。地底とか海底とかが特に(更に更に待て
はい、次回も宜しくです!


>ジェミナスさん
敵だけではなく、味方キャラも出てきますよー


>ATK51さん
有難う御座います(照
TVは一話しか見てないですねえ。
エルザ・チアキ・ウエストはワンセットキャラに為りつつあります。ちゃんと個々の見せ場も出したいです。
――勿論。私も彼女は大好きなので、しかもハッピーエンド嗜好者なので、幸せにしますよええ絶対! 
来たれ、ご都合主義!
旦那様……デカイ息子がおるので。多分エンネアは九郎辺りを旦那様とか呼んでからかっておると思います。
では、次回に。


――では皆々様、次回にて又お会いを

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