インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「見習いが往く 第七回後編(ドラえもん+機神咆哮デモンベイン)」

ガーゴイル (2006-10-25 01:13)
BACK< >NEXT

――世界が穏やかに廻るその日。
ある街に、一人の男が現れた。
夏が近付いているにも拘らず、全身を真っ黒な外套で覆った、白目の男。
巨大な幅広の帽子は、道行く人達の目を大きく引いている。
「――此処か」
バリトンのきいたボイスを発し、男は傾く帽子の角度を直しつつ、

「――この街に居るのか、スーパーマン」

男の姿は、直ぐに人々の中へと消えた。


「――ジャイアンが入院? あの脳味噌以外の全てが鋼鉄で出来ているような男が?」
凄まじい言い草に、出木杉と静香の頬が少し引き攣る。
――両者の姿は何故か少し焦げているが、全力で気にしないで欲しい。
「のび太くん。なら、彼の脳味噌は何で出来ているんだい?」
「ステンレス」
軽くて丈夫。
言い得て妙だ、と出木杉は納得。
「――まあ、戯言は兎も角。穏やかじゃないねえ……何が原因で?」
「何でも――お風呂場で転んで、何度も浴槽の縁に頭をぶつけたそうだよ」
其れを聞いて、のび太は額を押さえつつ呆れたように、
「……何てジャイアンらしい間抜けな理由だ」

人の事言えないと思うが。

幼馴染二名は喉下までそんな言葉が出かかったが、あえて口には出さない。
彼等も、言うべき時と言わざる時を心得ているのだ。
ギリギリの境界で自我を保っているのび太に、これ以上負担を掛けるとどうなるか解らないからでもあるが。
「……其れは兎も角。――これから、お見舞いに行こうと思うんだけど……」
「僕を誘いに来た、という訳か。……出木杉、帰りに僕を拉致って人体実験をしようとか考えてないだろうね」
ジト目でいうのび太。
出木杉は、憤慨したかのように声を荒げて――
「何を言っているんだ! 友達にそんな事する訳無いだろう!! ――ちっ」
「ちっ、て何!? ちっ、てッ!! 何企んでやがるこのマッド!!」
何かもう、バリバリ企んでますよー、な出木杉君であったとさ。


――まあ、そんなこんなで。
「るゆ……。ぱぱとまま、行っちゃった……」
「寂しがる事ないロボよ。エルザお姉ちゃんが一緒ロボ! ――のび太とルルイエ異本が戻ってくるまで、沢山沢山遊ぶロボよー!!」
見舞いへと出かけた両親を見送った後、エルザとくするは外へと遊びに出かけた。
エルザは何時もの服装、くするは静香の見立てた白黒の中華風の上着とスパッツという活動的な姿だ。
――ちなみにエンネアは、玉子と料理談義を花咲かせている。
主婦と言う共通点もあり、気が合ったようである。
故に、今日はこの二人が一緒なのだ。
「るゆ! いっぱいいっぱい遊ぼ――! ……で、何して遊ぶの? えるざお姉ちゃん」
くするの無邪気な問いに、エルザの表情が音を立てて固まった。

――何も考えていないロボ。

一応この二日で地理関係は頭に入っているが、日本の遊びとは何か? と問われると……
これがアーカムなら、教会のがきんちょ共やウェスパシアヌスの所の三姉妹や暇そうにしているクラウディウスやティトゥスや子供好きなティベリウス等、遊び相手には不足しないのだが……
ぶっちゃけ、寂しそうにするくするを放っておけず、勢いだけで外に出てきてしまったのだ。
抜けているのは、製作者譲りか。
しかし、其処は無駄に高性能なエルザさん。
現代のすうぱあこんぴゅうたあなんかぶっちぎりで凌駕する、ウエスト特性量子ニューロが凄まじい勢いで加速し、世界の大本たる情報の奔流を的確且つスピーディに処理し、現在の状況に最適な答えを弾き出そうとする。
そして、出た答えとは――
「――そうだロボ! くする、昨日のび太が言ってた“アキチ”に行ってみるロボ!!」
「――“アキチ”?」
言われて、くするは小首を傾げて“アキチ”という単語についての記憶を思い出す。

――父と友人達が毎日のように遊んだ場所。
――数少ない遊び場。
――そして、その場所を語る時の父の楽しそうな顔。

一連の知識を思い出し、くするは“アキチ”=楽しい場所と認識した。
「るゆ! 楽しそう!! 行こう、えるざお姉ちゃん!!」
目をキラキラさせて、エルザの手を引っ張るくする。
――知らないって、いい事だよね。
エルザも、くする同様目をこれでもかと言うぐらいに輝かせ、
「勿論ロボ! 座標は既にインプットしてあるロボ――れっつごーロボ!!」
おー! と拳を高く上げ、団結する子供二名。
――落胆しなきゃいいけど(汗。


人々が行き交う、穏やかな街。
道行く人々も何処かのんびりとしているこの街に、酷く不釣合いな男が佇んでいた。
冒頭に登場した、漆黒の男。
病的に青白い肌に一粒の汗も浮かべず、人形のように佇んでいる。
誰もが目を留めるが、声を掛ける度胸のある者など居ない。
男はそんな一般人共に等気にも留めず、大仰な仕草で腕を懐に入れ――三枚の写真を取り出した。
指に挟まれた其れ等――ある一枚には眼鏡の少年、ある一枚にはオッドアイの少女、ある一枚には黒髪の幼女――を一瞥し、男はふんと気難しげに鼻を鳴らして、
「先ずは……この娘を確保するか」
そう言い、写真の一枚――幼女の写った其れを、放り投げる。
宙を舞う、一枚の写真。
――そして、男は奇妙な動作を始めた。
空いている左手の人差し指と親指を伸ばし他の指を握り込み――人差し指の先を、写真へと向けた。
まるで――拳銃の狙いを付けるかのように。

「――――」

乾いた笛のような音色が、男の唇から漏れた。
同時に――乾いた破裂音と共に写真は粉々に弾け、原型を亡くした紙片が風に揺られ、物悲しげに散っていく。
突如起こった騒ぎに周囲の人々がざわめくが、男は一切頓着せず――紙片から視線を外し、左手を崩すとさっさと歩き始めた。
そして、口端を軽く釣り上げて――

「――もう、直ぐだ」

呟きは誰の耳にも届かず、風と共に街の空気へと溶けていったのだった。


「――此処が、アキチ?」
「……みたい、ロボ」
艱難辛苦を乗り越えて漸く理想郷へと辿り着いたお子様二名は、ぼーぜんと立ち尽くした。
二人の視界に先ず入るのは、三方を住宅に囲まれた、こじんまりとした平地。
まばらに草が生えた地面は、野球やサッカー等の遊戯には適していると言えなくもさにあらず。
遊戯施設――いや、何らかの意味在る建造物など全く無い。
只、用途不明の土管が三本、無造作に詰まれたのみである。
――徹底徹尾何も無い、只の開けた広場である。
ぶっちゃけ児童公園以下だ。
「……誰も、居ないね」
「……ロボ」
――言葉通り、空き地には誰も居なかった。
話に聞いた、楽しそうに遊ぶ子供達など全く存在せず、乾いた風が無意味に草を撫でるのみ。
――そう言ったきり、黙り込む二人。
少々盛り上がりすぎたきらいが在るとはいえ、二人の高揚した気分はあっさり壊れた幻想。
気まずげに、黙り込む。

――沈黙が辛い。

「……遊ぶ?」
「……鬼ごっこでもするロボか?」
顔を見合わせる。
――再び沈黙。
胃に悪そうな微妙な空気が、空気を腐らせる。
――五秒ほどその状態が続き、そして、
「――そうだ!」
くするが、掌を打ち合わせて、にぱっと微笑んだ。
そのまま花が綻んだような笑顔を、困惑気味のエルザに向け――
「街探検しよう! えるざお姉ちゃん日本に来たばっかだし、くするの知らない所もまだまだいーっぱい在るし……今日は楽しい所見つけるまで探検しようよ!!」
くするのナイス提案を聞いて、エルザの顔が見る見るうちに笑みへと染まり、輝きが増す。
そして、感動気味にくするを抱き上げ、何時もの激しい頬すり寄せを行ないつつ、
「ナイスだロボ! ようし、このまま探検開始ロボ!! アルビノペンギンの襲撃に備えつつ、古のものの遺産を探すロボー!!」
再び上がる、団結の声。
どうでもいいが、此処は狂気山脈ではない。
――再び暴走を開始するお子様達。
この時、二人は気付いていなかった。
百数十m先から自分等を見つめる、一人の男の存在に。
全く、愚かしいほどに、気付かなかったのだった。


――男は捜していた。
自らの敵を、敵へと繋がるモノ達を。
長く燃え続ける、暗鬱とした炎を心中に宿し。
暗く澱んだ、名状し難き感情を糧に。
男は足を止めず、歩き続け、探し続ける。
長く求めていた敵とまみえる為に――長く待ち望んだ闘いを始める為に。
歩く、歩く、歩く。
遠き宇宙で死した筈の亡霊は、胸に渦巻く昏い無念を石炭代わりに喰らい続け、足を動かす。
歩く、歩く、歩く。
壊れた足を前に出し、壊れた目は意味無き視界を捉え続け、壊れた脳は只一つの事のみを考える。
歩く、歩く、歩く。
戦いたい、闘いたい、死合いたい。
只、一つの事を考えて――

その時だ。

意味無き視界の中に、意味ある物が居た。
壊れた目に飛び込んできた其れ等を見つめ――男は壊れた脳に刻まれた一つの像を思い出す。

黒髪を纏めた、幼き少女。

完全に、脳内の映像と合致。
――知らずに、笑みがこみ上げる。
闘いが、戦いが、死合いが!!
笑みが、喜びが、情欲が。
知らず知らずの内に込み上げ――全てが狂気に埋め尽くされる。
いや、違う。
男は既に――そう、既に存在全てが狂っていた。
白く濁った目に蜘蛛の足を思わせる赤が奔り、手袋に包まれた左の腕が――蠢いた。
ガキゴギと映画のような軋みを上げ――左の腕が狂っていく。
肉が歪み、骨が砕け、神経が潰れていく。
――数秒の間を置いて、左手の蠢きが停止した。
いや、其処に在るのは既に左手ではない。
其れは――銃だ。
人間では到底扱えないであろう、馬鹿げたほどに巨大な銃。
左手だったその銃を持ち上げ、銃口を定める。
――狙うは、邪魔モノ。
標的である幼女の傍に居る、緑髪の人形だ。

――死ネ。

音速超過轟撃が放たれると同時、人形が振り向くが――もう遅い。
既に、目前と迫っていた熱き鋼鉄の雨は――躊躇い無く、障害へと突き刺さるのだった。


時間を少し戻し、場所を変えよう。
――日本から遠く離れた、アーカムシティ。
その郊外に在る墓場で、一組の男女が流血試合を繰り広げていた。
主に血を流しているのは男。激戦の結果、既に顔はアンパンヒーローの如く誰だか判別出来ないほど膨れ上がっていた。
主に殴っているのは女。腰の入った素晴らしいジャブ、ストレート、フック! 一撃放つ度に、血反吐が墓石を赤く染めていく。ぶっちゃけ掃除が大変そうだ。
「ぶ……べぇ!? ぐひゃ……ひでぶぅ!!」
「オラオラオラオラドラドラドラドラアリアリアリアリ無駄無駄無駄無駄ァァァァッ!!」
混じり過ぎて何が何だか解らんラッシュ。
男――ウエスト――はやられ役的呻きを上げ、マット――つまりは地面に沈む事も許されず、タコ殴り。
――とその時だ。
彼の胸に付けられたバッジが、てけーり・り! てけーり・り! と鳴った。
――デザインは勿論、あのオレンジ色のナマモノを模したモノだ。
唐突な怪音に、女――チアキ――は驚いて拳を止め、
「い、一体何や!? そのけったいな音!?」
チアキが問うがしかし、当の本人――ウエストは、アンパン的顔面に真剣な表情を浮かべ、
「ぶ、ぼれば……ばざが!!?」
慌てた調子で、胸元のバッジを見やるウエスト。
見ると、液晶画面には赤文字で“DANGER”という表記が、激しく点滅していた。
「ば、ぼばいでばぐ! ぼぶじぶべがべ、びばばぼぶばぼどじべびぶばばびべばばびべぼびばぶ!!」
「何言ってるか解らんわ!!」
取り合えず一発はたいて、攻撃を止めるチアキ。
彼女も、只ならぬウエストの様子に何かを感じたようだ。
「ばぁ……ばぁ……! いぃーったいなぁにをするであぁーるか凡人眼鏡!! 貴様の馬鹿みたいな超猿人的原始コング馬鹿力で情熱的暴力行為に甘んじてしまっては我輩、我輩もう壊れちゃう! もう少し優しくして欲しいそうあの一夏の切ない少年少女の逢瀬の如く! ――あ。馬鹿みたいではなく、馬鹿そのものであったな。すまん、凡人馬鹿眼鏡。我輩が間違っていたでゲボブヴァア!?」
取り合えず馬鹿みたいによく動く顎を砕いてやる。
赤いモノを盛大に吐き出し、地へと倒れ伏す大馬鹿を、更に踏みつけるチアキ。
――その額には、メロンの如くぶっとくて物凄い青筋がビキビキと奔っていた。
「――で? あんたにこないな世間一般的な極普通の事を求めるのは酷やけど……そろそろ真面目に話そうや? 其れとも今直ぐ死ぬか? うちとしては後者がお勧めやで」
馬鹿の顎を捻りを加えた踵で思い切り踏み付けつつ、淡々と告げるチアキ。
怒りを通り越して、無表情になっているその貌は素晴らしく恐ろしい。
「お、落ち着くのである……。カリカリしているとタダでさえ皺の多い顔に――ゲヴヴォ!?」
最早死ぬか?
地の底から響いてくるようなチアキの声が、ウエストの恐怖神経を思い切り揺さぶった。
――本題を切り出すまで、この後三十分以上掛かったそうである。


咄嗟に愛用のガントンファーを眼前に構え、エルザは迫り来る弾頭を受け止めた。
凄まじい窄撃音と爆裂。
鋼鉄の軋む悲鳴に似た嘶きが空気を塗潰し、皮膚を侵す粘りつくような熱と殺気が神経に突き刺さった。
――弾く。
魔弾がコンクリートを砕く。
見ると、弾丸を防ぎ切ったガントンファーの表面には巨大な罅割れと弾痕が生じていた。
エルザの顔に驚愕が浮かぶ。
このガントンファーの素材は、九郎の使うバルザイの偃月刀の素材を現代超科学で再現したオーバーテクノロジーマテリアル。
並の衝撃では、傷一つ負わない筈の武器が――
「――お前、一体何者ロボ!? エルザに何の用ロボか!!」
両の手に携えたガントンファーの銃口を男に向け、警戒口調で問うエルザ。
男は、大した事ではないという風に――
「――貴様に用はない。用が在るのは――其処の子供だ」
男の視線の先には――くするの姿があった。
……くするを狙っているロボ!?
身を固めるエルザなど気にも留めず、男は更に言う。

「退け、人形。――壊されたくないだろう?」

――思考が沸騰した。
「……ザを……ボ」
無機質な筈の脳が思い切り灼熱し、神経が燃え盛ると同時――全ての深遠に冷たさとも熱さともとれる何かが生じた。
意思の猛り、感情の爆発。
最早細かい事など如何でもいい。こいつは――

「――エルザを、舐めるんじゃないロボォォォォォォ!!」

――ぶっとばす!
動作は一瞬。
一気に間合いを詰め、振り上げたガントンファーを後頭部に打ち下ろした。
しかし――
「――ッ!?」
攻撃を仕掛けたエルザの体が吹き飛んだ。
再び金属色の悲鳴が轟き、強靭かつ華奢な人造の肉体が呆気無くブロック塀に叩き付けられた。
――男の歪んだ左手からは、当然の如く硝煙が立ち昇っていた。
……早い、ロボ。
内臓機構が損傷したのだろうか。夥しい量の人造血液を口から吐き出したエルザは、警戒信号を打ち鳴らす人工脳でぼんやりと考える。
軋む。
見ると、脇腹に五百円玉ぐらいの風穴が開いていた。
ワイヤーが、フレームが、思うように動かない。
喉からやっとの思いで声を振り絞ったエルザは、切れ切れな調子でそう叫んだ。
其れを一瞥し、男はさして興味も無いように――くするへと近付く。
ゆっくり、ゆっくりと。
静かに足音がくするに忍び寄る。
「さあ、こっちへ来――ッ!?」
男の直ぐ傍を、鋼鉄の音速が掠る。
皮膚が切れ、赤い血液がどろりと零れ落ちる。
男が冷徹な――其れでいて怒りに燃え滾った視線を向けると其処には、半壊した右腕でガントンファーを構えたエルザの姿が。
全身から軋むような響きと痛々しく迸る電気色の閃光。
――エルザの身体は、最早半死半生だった。
「――、逃げる、ロボ。く、する……!」
言えたのは、其処までだった。
鬱陶しい、と言わんばかりに男は左手を奔らせ、更に銃弾が飛んだ。
其れは――確実に、脳天を狙っていた。

「あ――」

世界が停滞する。
スロウになった世界の中、エルザはゆっくりと宙を貫く鋼鉄を、間の抜けた瞳で見つめた。
壊れる――
漠然と、エルザはそんな事を考えた。

『博士ー、花嫁修業代わりに今日のご飯はエルザが作るロボー!』
『ダーリン、今日こそはエルザと口では言えない事をするロボ!』
『むむ、邪魔するなロボアル・アジフ! ダーリンとエルザの愛は永遠ロボ!!』
『よーし、お姉ちゃんに任せるロボ!』
『のび太ー、ルルイエ異本ー、暇だから来てやったロボー。茶菓子出すロボー』

今までの思い出が、電子脳の中に浮かんでは沈んでいく。
これが、人間で言う所の走馬灯であろうか。
楽しい思い出、悲しい思い出……色んな思い出がある。
そして――最後に浮かび上がった思い出は……

『さあ、奇蹟の瞬間である!目覚めよ、エルザ! そう……お前の名前はエルザである!!』

目覚めた自分の真ん前で、ギターを掻き鳴らすウざい変態の姿。
“エルザ”が生まれた時の思い出だ。
思えば、アレが生まれて始めて“攻撃”という概念を認識した瞬間であろうか。
取り合えず、反射的に殴り倒した自分は悪くない。
「は、か、せ……」
機械であるエルザには、泣くという機能が存在しない。
だけど……何故だが、とても胸が痛い。目が熱い。
最後に、もう一度だけ――会いたくなってしまった。

「はかせ……ごめんなさいロボ」

もう――会えないロボ。
エルザが、“死”を覚悟した――その瞬間!
何かが、エルザの前に立ち塞がった。
何かは白衣を靡かせ、手に持っていたエレキギターを振りかぶり――音速の鉄塊を殴りつけた。

「ジャアァァァスウゥゥゥトォォォォ・ミートゥゥゥゥゥゥゥッッ!!!」

爆発。
閃光、そして衝撃。
爆煙が迸り、視界が遮られた。
――煙が晴れると其処には、

……緑色のマリモが居た。

熱で髪がアフロに為った、白衣の変態だ。
壊れて只のガラクタと化したエレキギターを手にぶら下げ、真っ黒な息をげほぅ、と吐き出し――彼は男を睨みつけ、
「一体全体出会い頭に何をするであるか貴様はぁ!! 我輩という至高存在の消失は人類にとって大きな痛手、そう言うなれば
我輩は人類の未来にとってスシに山葵、鰻に山椒、コタツにみかん、カレーに福神漬け、ペーにパー子、オスギにピー子――無くては為らない存在なのであぁぁぁぁる!ッ!」
最後の方は関係無い。
「意味解らんわぁ!!」
隣に居た女が変態を蹴り倒す。
しかし、変態は瞬時に甦り、
「へいヘイHEY、其処のナイスガンマン! 我輩の事はまあ別にどうでもいいのでなすがままにナスがマミーに野菜がオカンになのであーる。其れよりも、許せない事は……!」
彼は背を見せ、エルザへと近寄る。
壁に減り込んだままになっていた彼女の腰を抱き、ゆっくりと引き出す。
力無く、変態の胸に倒れこむエルザ。
変態はエルザの頭を撫で、ギラリと男を再度睨み、
「……我輩の愛しい娘を傷物にしやがった事である。貴様は国家権力の狗共に引き渡すまでも無い――我輩が引導を渡してくれる。殺意に満ちた父の愛……しかとその身に刻み込んで微塵切りにし裏漉しした挙句、ニンジン玉ねぎジャガイモ豚肉各種スパイスと共にとろ火で三日三晩煮込んで世界の糧としてくれるのである!!」
変態――ウエストは怒りに燃えていた。
親として、男として。
唯一無二の家族を傷付けられ、彼は激しく正しい怒りに燃えていた。
「…………」
男は無感情に、ウエストを見る。
その目には、何も無い。
「サンドバックに浮かんで消えるその憎いスカした面に一発ぶちこんでやるから覚悟するであぁぁぁるッ!! この白いマットのジャングルが貴様の墓場としれぃ!!」
ウエストが駆け出す――
娘の仇を取る為に。
馬鹿が、駆け出した――


「そんにしても……馬鹿やけど、今回だけはマジでアイツの事見直したわ……」
エルザの介抱をしつつ、チアキは脇に転がる鉄パイプを螺旋状に曲げたような不可思議な機械を見つめた。
――個人用虚数展開磁場発生装置“ティンダロス・ドライブ”。
覇道邸の地下に存在するオーバーテクノロジー“虚数展開カタパルト”をウエストが解析し、個人用に創り出した装置である。
最大五人くらいまでなら、任意の座標に転送する事が出来るらしい。
実は一つ作るのに小国の財政が傾くぐらいの、馬鹿みたいな経費が掛かるのだが……まあ、今の時点でチアキが知る訳も無い。
後日、請求書を見た某姫様が怒り狂ってウエストを半殺しにするのだが、まあ其れはどうでもいい話だ。
「大丈夫? エルザちゃん」
脇に大穴を開けた少女に、問い掛ける。
前後不確かなのか、少女はぼんやりとした目で、チアキを見上げ――
「ん……あ……凡、人……メ、ガネ……ロボ」
「その呼び方やめい」
思わず何時もの調子ではたきそうになるが、思い止まる。
今のエルザは重傷だ。
普通の人間なら、とっくに死んでいる。
「大丈夫、大丈夫や。うちもウエストのアホもおるから……もう、大丈夫や」
優しく、傷に障らぬよう――チアキはぎゅっとエルザを抱き締める。
「あ……」
――あったかい。
チアキの温もりに胸の回路がとくんと、不可思議な音色を醸し出す。
「――えるざお姉ちゃん!!」
チアキとエルザの元に、くするが駆け寄った、
涙で顔をべしゃべしゃにし、必死な形相でエルザを見つめていた。
「く、する……良かったロボ。無事で、良かった、ロボ……」
「良くないよッ! えるざお姉ちゃんが、えるざお姉ちゃんが……」
涙が溢れる。
くするは大粒の涙を流して、エルザに泣き付いた。
「くするが大丈夫でも、えるざお姉ちゃんが大丈夫じゃないよ……ッ! 嫌だよぉ……。お姉ちゃん、死んじゃやだよぉ……」
べそべそと涙を流す。
其れを見て、エルザの胸に温かい“何か”が奔った。
――抱き締める力が強くなる。
見ると、チアキも薄らと涙を浮かべていた。
「そうや。確かに、護る事は大事やけど……エルザちゃんはちゃんと自分も護らんとあかんで。――皆、エルザちゃんが大好きなんや。心配なんや。特に、あの馬鹿は……」
エルザは、ぐったりとする身体に無理に力を入れ、首を起こす。
視線の先には――ギターを振り回すエレクトリック馬鹿が奮戦していた。


「見よ、スーパーデンジャラスエキセントリックな我輩の新発明“ニックジャガーもビックリッ! お袋の味クラシカルエレキテルギター”の雄姿を!! 単三電池を十個使用したエコロジカルな良質サウンドの餌食となれいッ!! ――レッツ・JAM!!」
振りかぶった木目調のギターから、ビーム・レーザー・ミサイル・ニードル・火炎放射・冷凍光線・高圧電流・真空波等が次々と発射され――そして、止めに巨大なドリルが発射された。
既にギターとは関係無い世界に突入している。
種類様々な攻撃が次々と着弾し、ドリルが男に突撃すると同時――全てが炸裂した。
爆音、熱波、衝撃。
道の一角が完全に吹き飛ばされ、全てが粉々に破裂した。
人通りが無かったのは幸いだ。
「FUHAHAHAHAHAHAァァ――ッ!! 思い知ったか、鬼畜外道めがぁ!! この大・天・才ッ! ドクターウエストの娘に手を掛けたが貴様の敗因よ――僕達は貴様の屍を踏み躙って先に往く……地獄でお茶でも用意して待っててネ★」
きもちの悪いウインクをかまし、ほざく変態。
爆煙が晴れる――其処には、男が攻撃前と変わらぬ姿で佇んでいた。
しかも左手の兇悪兵器を構え、ウエストに狙いを付けた状態で。
「――――はい?」
無駄に可愛らしく小首を傾げる――が、男は当然一切無視。
問答無用で連続射撃を叩き込んだ。

「あじゃぱあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!」

吹っ飛ぶ馬鹿。
しかし、あの攻撃を受けて尚、その肉体はかすり傷程度の損傷しか負っていない。
ギャグ特性、恐るべし。
そのまま、ずざざざーっとウエストは着地と同時に地面を滑り、チアキの直ぐ横で止まった。
「ううむ、中々やりおるでアール……」
「何で無傷なんや」
疲れたように突っ込み。今更な感じがするが、これが彼女のアイデンティティなのだろう。
「しぃぃかぁぁぁぁしぃぃぃぃッ!! この程度で我輩を亡き者にしようとは……甘い、甘過ぎる!! そんなに甘いのがお好きなら蜂蜜と餡子と粉砂糖とサッカリンをご飯に掛けて食すが良い!!」
がばりと起き上がり、少女二人と+1を庇うかのように立ちはだかるウエスト。
その眼には、某ジャイアントスターの如く炎が燃え盛っていた。
「今こそ最終兵器ガールフレンドの出番である! そう科学こそ我輩の伴侶なり――くらえッ! 必殺“ヤバ過ぎて名前の出せないスーパー汚染物質ストロングウエストキャノンボム・GRG13”を――」
「街を吹き飛ばす気かぁぁぁぁぁッ!!」
危険なドクロマーク入りスイッチを取り出したウエストの延髄に、チアキが放った渾身の蹴りが叩き込まれた。
呻きを漏らす間も無く、ウエストは再び豪快に地へと沈んだのだった。
「…………」
最早付き合ってられん、と言わんばかりに男が銃口をチアキらへと向ける。
再び、絶体絶命だ。
しかし――この世には、ある法則が在る。
其れは――

「――――……ッ!!?」

男の背に六度、衝撃が突き立つ。
瞬時に熱は冷気へと変じ、男の身体から一切の温もりを奪う。
しかし、男は其れでも倒れず――鉄の砲火を背後に立つ“彼等”へと浴びせた。
そう、この世には居る。愛する者のピンチに必ず現れる――ヒーローが。
その名は――

「――ルルッ! 障壁展開ッ!」
「…………ッ!」

若き魔術師“見習い”、野比のび太。
伴侶たる魔道書、ルルイエ異本。
放たれた凶弾は光の壁に突き刺さり、硝子を砕くような軽やかな拍子が戦のリズムを刻む。
刹那の拮抗。――弾丸が、光を殺す。
しかし、既にマギウスは――空へと逃れていた。
白銀の魔銃に弾丸を叩き込み、逆の手に握り締めた黒紅の魔銃を解き放つ。
音速超過。鉄は炎に、光は熱に。
マズルフラッシュが日の光よりも眩く輝き、魔に魅入られし者を白く灼き尽くす――!
「――――……なッ!?」
回避行動を取るが既に遅い。
神性の炎は男の左腕を噛み砕き、喰らうと同時に燃やし尽くす。
爆音、衝撃。
熱波が男の肌を焼き、周囲の地面を巻き込んで――粉々に砕き焼く……ッ!!
炎が巻き起こり、地面がバターのようにグツグツと沸騰する。
男の姿は――炎に飲まれ、消えた。
「……ふう。間一髪」
「ないす、のびた」
敵が行動不能に為ったのを確認し、のび太とルルは大地へと降り立った。
紙片が舞い、その姿は瞬時に元の姿へと戻る。
「……のびちゃん、いいタイミングにきよったな。まさか、出待ちしとった訳やないよな?」
本当にいいタイミングで現れた二人を見やり、チアキがそんな事を言う。
のび太は手を振って、慌てて言葉を紡ぎ。
「そ、そんな訳ないじゃないですか! あんな大規模な魔力が暴れてたら、どんな間抜けなマギウスでも気付きますって! お見舞いの途中だったから、わざわざジャイアンの病室の窓から此処まで飛んで来たんですよ!!」
ちなみに、その際思いっ切りタケシを蹴飛ばしてしまった為、少し入院が延びたらしい。
「わかっとるわ。のびちゃんはマヌケやけど勘はいいさかい。ウチもよう知っとるって」
貶しているのか褒めているのか解らない微妙な言い方だった。
少しだけ、のび太は落ち込んだ。
だが――和んでいられたのは、其処までだった。

『……く、クク……ククククククッッッッ!!』

炎の中から迸る、不気味な笑い声。
瞬間、のび太とルルの目に真剣な光が宿り、瞬時に合一。
双翼から魔術媒体である“ディープ・ワンズ”が放出され、何時でも攻撃態勢に移れるよう、スタンバイ。
笑いは――尚も響く。

『――漸く、漸く見つけたぞ……! スーパーマン……いや、ノビ・ノビ太ッ!!』

――その台詞を聞き、のび太の脳裏に大昔の記憶がフラッシュバック。
スーパーマン……その呼び方は、過去の冒険の中で、ある冒険の間にしか使われなかった呼び方。
そう、懐かしき友――コーヤコーヤ星のロップル達を始めとした、ある一部の人達しか使わなかった呼び方だ。
そして――そう呼ぶのは、味方だけとは、限らなかった。
炎が掻き消える。
熱が支配するのその場所には――男が立っていた。
黒い葬衣を着込んだ、針金のような男。
血走った白き瞳が、のび太を睨み付けている。
のび太は――その顔に、見覚えがあった。
過去、一度は葬った筈の男。
名は――
「……何故、お前が此処に居る――ギラーミン!!」
“殺し屋”の異名を持つ、ガンマン――ギラーミン。
嘗て一度倒した筈の男が、再びのび太の前に立ちはだかったのだった――


「――会いたかったぞ、我が宿敵よ」
血走った目をのび太に向け、心底嬉しそうにギラーミンは呟く。
のび太は険しい面持ちで、ギラーミンを睨み付け。
「僕は二度と会いたくなかったけどね。――お前は、確かに僕が倒した筈だ。其れに、コーヤコーヤ星とトカイトカイ星と、僕達の住む地球は二度と行き来が出来ない筈だ。――どうやって、この地球までやってきた!」
嘗て、偶然の事故によりある宇宙船とのび太の部屋の畳の下が繋がった事があった。
其れによって、宇宙船の持ち主――ロップルの住むコーヤコーヤ星とのび太の住む地球が繋がり、二人は友情を育んだのだ。
その際に起こった事件――悪徳企業“ガルタイト鉱業”の戦いの後、繋がっていた空間は正常に戻り、そして二度と行き来は出来なくなった。
ギラーミンは、ガルタイトに雇われた殺し屋だった。
非道な作戦――“コーヤコーヤ星爆破計画”を企て、そしてのび太に撃ち負かされ――そのまま囚われた筈だ。
なのに、何故。
「――友好的な協力者が、俺の脱獄を手伝ってくれたのでね。其れに――俺を地球まで運んでくれただけではなく、こんなモノまで土産としてくれた」
そう言って、ギラーミンが懐から取り出したのは――古びた書物。
只の書物ではない。素人目から見てもはっきりと理解る、禍々しき瘴気を濃く纏った狂気の冊子。
題名は――“Black Pullet”
訳するならば、“黒い雌鳥”だ。
明らかに其れは――魔導書。
のび太の眦が跳ね上がる。
「ギラーミン……其れが何か解っているのか? 悪い事は言わない……其れを捨てろ!」
悪人とはいえども、のび太には見捨てる事は出来ず、思わずそう言ってしまった。
普通の人間が魔導書に手を出す――末路は解り切っている。
命を喰われ、意思を砕かれる。
死ぬか、其れか――邪に堕ちる。
生物の範疇を外れた――バケモノへと、堕ちるのだ。
しかし、ギラーミンは狂った笑みを浮かべ。
「アレから数年……俺の魂は既に狂っている。俺の頭には――ノビ・ノビ太。お前を抹殺する事しかないッ!! さあ、あの時の再現と行こうか……ッ!」
既に、彼の魂は闇に堕ちていた。
異常なまでに、闇に染まっていた。

まるで、何かに手を加えられたかのように――

――黒い嵐が吹き荒れる。
頁が舞う。紙片の織り成す不気味な音色は、まるで雌鳥の羽音のように、バサバサと鳴る。
闇の中から、甲高い怪鳥の嘶きが迸る。
闇が覆う。
ギラーミンの姿が闇に飲み込まれ――巨大な質量が大地に具現する。
家屋が薙ぎ倒され、人々の悲鳴が辺りを包む。
其処に存在していたのは――怪異だった。
全身に呪いの文と図を刻んだ、雌鳥の頭と羽根を持つ、人型の物体。
両手は巨大な銃口と化し、鉄と鮮血色の宝石が総身を包み込んでいる。
怪異は――歪んだ神であった。


「で……鬼戒神ッ!? 行き成り――何で!?」
「ちがう。あれはでうす・まきなじゃない」
のび太の驚愕を、ルルが静かに訂正した。
「――あれは、しょうきがめいかくにぐげんしたそんざい。こりかたまったきょうきが、まどうしょのきじゅつをもとにかたちをえたなりそこない。でうす・まきなとくらべてすうだんはおとる。けど――このまちをこわすには、じゅうぶんなちからがある」
そう。ドラグディアの敵ではないが――この街にとって脅威である事には変わりない。
ならば、此方もドラグディアを呼び出せば良いのだろうが――
「前と違って、避難し切るまでの時間が足りない……! このままじゃ――」
そう。前回の戦いの時は、ツチダマとの前哨戦で住民避難の時間が稼げた。
しかし、今回は短すぎる。
このままでは――
「のびた。まよってたら、ひがいがどんどんひろがる。よばなきゃ」
「解ってる。解ってるけど――」
ルルの言葉に、躊躇うのび太。
この街は、アーカムのように災害慣れしている訳ではない。
だが、現実は厳しい。
猶予は無い。
その時――
「……ふっふっふっふっふっふッ!! 漸く我輩の時代が、キターッ! であるッ!!」
今まで死んでいた馬鹿が蘇った。
「……ウエスト。居たの?」
「おうなんとツンデレチックな反応ッ!? 其処でデレにシフトチェンジする気か野比のび太! ううむ、ツンデレ成分はアルアジフと覇道瑠璃で有り余ってるのであるッ! 其れに、男のツンデレなぞ気持ち悪いだけであ――」

ずきゅーん。

「すいません急いでいるので言いたい事が在るのなら手短に解り易くお願いします。でないと撃ちます」
「う、撃ってから言うなんてかなり卑怯臭いんですけど……」
思わず丁寧語で呟くウエスト。
頬にはたらーっと血が流れていた。
――師匠の教育の賜物だろうか、かなりいい性格になっているのび太だった。
「むう。ならば、お馬鹿な貴様等にも解り易く仰ろう。――これをドラグディアにインストールするがいい、悩みは一発即金丸く解決する」
そう言って、ウエストが差し出したのは――簡素な一枚のディスク。
何やら不可思議な記号が刻まれた――真っ当な代物ではない空気を纏う、不気味な存在。
「――これは……?」
「覇道瑠璃の般若面が怖いので、一週間徹夜で昼寝して作った科学的術式プログラムである。本来はアーカムシティでの戦闘被害を減らすものでデモンベイン用に作った代物であるが――まあ、ドラグディアでも何とかなるである」
何とも頼りない。
「二日間、娘が世話になった礼である。元は自分が蒔いた種――親として……深く、感謝する」
ディスクを放り、頭を下げるウエスト。
彼なりに責任を感じ、そして感謝しているのだろう。
のび太はディスクを受け取り、そして笑顔で。
「……誕生会、豪勢にしてやって下さい。僕達は出られないけど」
「無論。既に準備は整っておるである――」
ギターを取り出し、掻き鳴らす。
何時も通り、不快な音色だが――不思議と、深い優しさが感じられた。
「は、か、せ……」
そんな彼の背を見つめ、呟くエルザ。
「エルザ。喋るな――傷に障るのである。言いたい事なら、傷を治した後でたっぷり聞いてやるである」
静かに、言うウエスト。
その声には――音色と同じく、優しさが篭められていた。
エルザは何も言わなかった。
ただ、驚いたように目を見開いて――そして、微笑み、目を閉じた。
そのまま、動かなくなる。
「――エルザちゃん!?」
「落ち着くのである。単にブレーカーが落ちただけである――処置を済ませれば、じきに目覚めるのである」
彼はそう言って、のび太に向き直る。
掻き鳴らす音色は、戦士を奮い立たせる魂の讃歌――
「往くがいい、野比のび太、ルルイエ異本、そしてくするよ。――此処は任された。心置きなく、闘うが良い……ッ!!」
最早、言葉は要らない。
渡されたディスクを握り締め、マギウスは決意を宿す。
彼の隣に、大地を高速で駆け抜ける鉄の獣が降り立つ。
蒼き狐――野比家の愛機だ。
そして、その座席に駆け寄ってきたくするが座る。
手を合わせる。
のび太の手は小さなルルとくするに、ルルの手はのび太の頬と天空に、くするの手はのび太とマシンに――
声が――重なる。


無限の果てより来たりて

儚き祈りを胸に

我等は魔を断つ路を往く

汝、生命の守護者――“ドラグディア”!


空に光が奔る。
空間が破綻し、そして再生を遂げる。
蒼き雷鳴は蒼穹を焼き、大地に途方も無い鋼鉄の残響を与える……!
空に顕現したのは、巨大な鋼鉄の人形。
蒼き装甲に身を包んだ、命の守護者。
悪を掃う、魔断の射手。
優しき破壊神――名を“ドラグディア”!
今、少年の思い出の地に――蒼き神が降り立つのだった。


病院の窓からも、天から地に舞い降りる蒼き守護神の姿が見えた。
「あ、アレは……!」
タケシを踏み付け、ベッドに登り――出木杉は携帯の写真機能を使い、連続激写。
「凄い、凄過ぎる……!!」
興奮するのはいいが、踏まれたタケシは虫の息だ。
「アレが……魔法なんだ!」
目がキラキラしていた。やばいぐらいに。
その隣では――静香が胸の前で掌を握り、祈っていた。
「くするちゃん、ルルちゃん……ついでにのび太さん……」
のび太はついでに祈られていた。
哀れ。


天から地へと落ちる機体の中、指定位置に就いたのび太は、ルルの膝の上に座るくするにディスクを投げた。
「――くするッ!」
「るゆっ!」
心得た、と言わんばかりに返事をし――くするはディスクを受け取る。
そして――目の前のコンソールの下に位置するスロットルに、ディスクを叩き込んだ。
「術式ぷろぐらむ、いんすとーる! ――るるままッ!」
「わかってる。――じゅつしきちかん。われにしたがえ、あらたなえいち……ッ!」
ドラグディアの回路に、新たな力が疾走する。
同時、のび太の脳に無数の術式が焼き付いていく。
――其れは、色んな意味でとんでもないプログラムだった。
「……ウエストさん」
手指を握り、痛みと緊張で脂汗を流しつつ、万感を篭めて呟いた。
「貴方――やっぱ、天才だよ」
瞬間――工程は完了した。
回路に火花が、頭脳に熱が、背筋に冷気が――
「鍵を持ちて、扉を開けよ――」
「虚数の彼方に、久遠の影在り――」
「我、虚を以って実を侵さん――」
三人の声が唱和する。
同時、ドラグディアから無数の光が放射され――大地に印を描く。
其れは――巨大な魔術陣と為り、ギラーミンを中心に街をすっぽりと覆う。

「術式展開……!」
「「――メビウスの箱庭……ッ!」」

――陣が輝く。
瞬間、変化は劇的に起こった。
その常識ではありえない、正気を疑うような現象に、人々は戸惑い――驚愕した。
『……な、何ッ!!?』
中心に立っていた――そう、立って“いた”ギラーミンも驚きの声を上げた。
既に彼の足元には地面は存在していなかった。
そう。何故なら――

『大地が……割れるだと!?』

街が、真二つに割れたのだ。
亀裂は歪みに変わり、円状に歪む。
大地に生じた円状の歪みは、徐々に実体を持ち――その底は、無数の岩礫と砂に覆われた大地となった。
何も無い。生命も何も無い。荒れ果てた土地。
歪んだ街には、被害も損傷も何も無い。まるで騙し絵のように歪んではいるが。
そして――数秒も経たぬ内に、完成した。
機械の神がぶつかり合う、箱庭が――。
砂塵舞う大地に、黒き鳥と蒼き竜が対峙する。
ぶつかり合いが――始まる。
火蓋は、切って落とされたのだった……!


「“メビウスの箱庭”……覇道邸の地下に在る虚数展開カタパルトの演算装置を拝借し、対象座標に“別の座標”を割り込み展開させる事で、人工バトルフィールドを被害無しに作り上げる画期的な術式プログラムであーる!」
つまり、街の指定座標に人の存在しない“別の場所”を割り込んで転送させ、展開。其れによって本来の座標は歪み、出来た隙間に格好の戦闘フィールドが出来るという訳だ。
口で言うのは簡単だが、其れを実現させるのはかなり難しい。
ドクターウエスト……やはり、天才だ。
「まあ、ドラグディアにインストールした事でデモンベインに使用させる事は無理になったが。まあ、如何とでもなるのである」
この術式は、理論の隙間を突いた裏技だ。故に、既に術式が確立したドラグディアは兎も角――同じ術式をインストールしたデモンベインでも、学習した演算装置に弾かれてしまうだろう。
使えるのは一体限り。
のび太が日本に居る限り――アーカムは破壊被害に悩まされるという訳だ。
この後の、ウエストの未来はもう語らずとも解り切っている。
哀れなり。


銃弾が交差する。
片方は闇を纏う爆裂弾。
片方は空を裂く斬撃弾。
ギラーミンとドラグディアは、互いに無数の魔弾を撃ち合い、鬩ぎ合う。
盆地のように、切り立った崖のような山に囲まれた其処は、気にするべき障害も邪魔者も無い、格好の戦闘フィールドだ

故に、両者は高速で動き、宙を舞い、弾丸の乱舞を撃ち合い続けるのだ――
ギラーミンの撃ち放った魔弾を、障壁を纏った銃身で叩き落し、返す刀で返撃を放つ。
向こうも心得たもので、背に生えた翼で宙に逃れ、高速超過の移動と射撃を交えて倍以上に返してくる。
ドラグディアは一応翼を持っているが、単に断鎖術式機関の補助としてあるだけで、飛行能力がある訳ではない。
そもそも、この翼はディープ・ワンズで構成されているので、半分以上を攻撃に出している今では――加速効果は余り期待できないだろう。
「昔より……速い!?」
瞬の言葉通りの、ギラーミンの抜き撃ち。
あの図体に反して、とんでもなく速い。
意識的に神経を加速させ、のび太も反撃するが――防ぐと避けるのに精一杯だ。
「ぱぱ……処理が追いつかないよ〜!」
ドラグディアの動力機関を任されているくするは、思わず泣き言を漏らす。
他の制御を司るルルも、言葉には出さないが――冷や汗を流していた。
『その程度か――スーパーマンッ! 来ないのなら――こっちから行くぞ!!』
更にギラーミンが加速する。
全身に刻印された術陣と宝石が光り輝き、銃身に夥しい魔力が収束する。
黒い雌鳥とは、タリスマンや陣を用いた儀式魔術に特化した魔導書だ。
その儀式を短縮使用し、瞬間的に魔砲の威力を激増させたのだ。
今放たれる一撃は――今までの一撃とは格が違う。
瘴気が凝結し、怨嗟の砲声が放たれる――!
「――緊急回避ッ! 全ディープ・ワンズ、障壁展開ッ!!」
断鎖術式機関作動。
物理法則を超えた超加速による超軌道転換。
慣性の法則を明らかに無視した動き。
しかし、完全に避ける事は出来なかった。
弾丸が突き刺さるよりも早く、ドラグディアの前面に数百のパネルが収束する。
魔術媒体、ディープワンズだ。
全てに装填された防禦術式“ルルイエの守護”が同時に発動し、眩き光の障壁が魔弾を迎え撃つ。
白と黒の拮抗――しかし、瞬間でしかなかった。
黒が白を食い破り――加速した黒はそのまま、ドラグディアの肩装甲を喰い千切った。
――操縦空間に火花が散る。
のび太の脳や神経に焼け付くような痛みが奔り、衝撃が突き抜ける。
「きゃあぁぁぁぁッ!!」
「くぅ……ッ!!」
くするとルルが悲鳴を上げ、コンソールがスパーク。
同時、バランスを崩したドラグディアは――大地を滑った。
衝撃、衝撃、衝撃。
ガンガンと頭に鈍痛が奔り、思わずのび太ひゃ呻きを漏らした。
――衝撃が止む。
巻き上がった土煙が晴れた其処には――倒れ、土と傷に塗れたドラグディアが在った。
意識するよりも早く、のび太は動く。
立ち上がろうとするドラグディア――だが、ギラーミンは其れよりも早かった。
『終わりだ……ッ!!』
再び、銃口に瘴気が満ちる。
終焉の撃鉄が、ゆっくりと堕ちた――


――これでいいのか?
今更ながら、ギラーミンは漠然とそう思った。
人の身を捨て、誇りを捨て、自分は此処まで堕ちて――

これでいい。敵を倒せ、憎きスーパーマンを殺せ!

否。あの戦いは自分の負けだ。今更何を蒸し返す――

そう。自分は負けた。一対一の戦いで、完膚なきまでに。
悔いは無いといえば嘘だろう。しかし――自分は満足感を得ていた。
ギラーミンは考える。
自分は狂った原因は何だ? 自然にか?
残り少ないで理性で考える――だが。


“いけませんね……”


彼の思考に、別の思考が割り込む。
目の中に、自分の領域に人ならざる存在が入り込み――犯していく、侵していく、冒していく。


“駒は黙って……動きなさい”


掌握。
理性が、ぐしゃりと潰された。
同時、ギラーミンという存在は――潰されたのだった。


『■■■■■■――――ッッ!!!』
狂気の叫び。
一瞬、ギラーミンが動きを止めたかと思えば――次の瞬間には完全に狂った。
何だ? と考える間も無く……弾丸が放たれる。
撃鉄が堕ち、黒き塊が発射される――その直前ッ!!

――ギラーミンの背が、爆発した。

不意の衝撃に、バランスが崩れ、魔弾は天空へと撃ち上がる。
ディープワンズではない。
先程の攻撃で全て破壊された。無い物は使えない。
そう、ドラグディアには――まだ、“手札”が存在している!
「ルル、座標補正! 術式再加速――ッ!」
思考が疾走する。
脳に莫大な情報が流れては消え、全身の神経とドラグディアの魔術回路が呼応し合い、のび太の世界が現実の世界を塗り潰し、現実の世界がのび太の世界を高めていく――
一は全、全は一。
一であるのび太は全であり、全である世界は一である。
「りょうかい――高速転移術式弾“ゾス・オムモグ”……さいそうてんッ!!」
ドラグディアの武装の一つ、魔銃“ハスター”に魔力が満ちる。
同時、立ち上がったドラグディアは魔銃の臓腑を高速で撒き散らす。
向かい来る鋼鉄の雨を防ごうと、ギラーミンは銃身を構える。
だが――
『…………ッッ!!?』
弾が、掻き消えた。
イタクァのように、軌道が変化したのではない――文字通り、消えたのだ。
戸惑うギラーミン。
その瞬間――消えた筈の銃弾が、背と翼に連続で炸裂する……!
衝撃を堪え、振り返るが――何も無い。
再び、背で爆発。今度は三度。
更に更に爆発。死角を突くように現れる無数の弾丸は高速で転移を繰り返し――じわじわと命を削っていく。
――ルルイエに名を連ねる旧支配者“ゾス・オムモグ”。
かの存在の力の一つに、自らの神像を介しあらゆる場所に現れる能力というのがある。
この術式は、其れを元にし――解析した空間内に基点となる魔力弾を撃ち込み、其れを介して魔弾を転送させる力を空間に与える術式なのだ。
基点となる魔力弾は、先程の戦いで全て撃ち込み済みだ。
銃撃戦は――布石だったのだ。
「……るゆ! いぐにっしょん――ッ!」
更に更に更に、無数の銃弾がギラーミンの全身に突き刺さる。
同時に、くするの声に応え、ドラグディアの“偽銀鍵守護神機関”が鳴動し――莫大な魔力が銃と腕に満ちる。
「ぱぱ……いけるよっ!」
くするが告げる。
その目には、強き力が宿っていた。
のび太は真っ向からくするを見据え――そしてモニターに目を移した。
「……ギラーミン」
嘗ての敵、そして今の敵。
息を吐く。
躊躇いは無い、情けは無い。
完全に堕ちる前に――引導を渡す。
のび太に出来るのは、其れだけだった。
「戦士として、お前を狂わせた張本人として――僕は、今度こそ……お前を倒す!!」
覚悟。
宿敵として――完全に葬る。
其れが――のび太の決意だった。
『■■■■■■…………ッ!!』
唸りと叫び。
ぼろぼろになったギラーミンは其れでも、戦いの手を止めない。
放たれる黒い魔弾は、直撃には至らない。
ドラグディアの全身に――蒼金の輝きが満ちていく!
「――システム・ザカライア……接続ッ!」
「ヤハウェコード……そうしん!!」
世界が覆る。
莫大な魔力が――邪気を駆逐する。
印を結び、文字を紡ぎ、陣を描く――
世界をも消し去る、滅の気配。
その荘厳なる姿に――ギラーミンは畏怖と恐怖を覚えた。
『■■■■■■…………ッ!?』
魔弾を撃つ。
だが、ドラグディアから漏れる魔力の余波は――全ての攻撃を撃ち落す。

勝てない。

理性を無くした頭に、そう、浮かんだ――
「オォォォォォォ……ッッ!!」
バイザー型の装甲の下で、ドラグディアの瞳が金色に輝く。
其れは――意思の光。
生命を持つ者のみに許される――強き光だ。
右手が動く。
拳を握ったその手に、ナックルガードが装着される。
全身に満ちる魔力の全てが右手に集まり、高まる力が完全に具現する――!
「極光に還れ――ギラーミンッッ!!」

其れは――全てを滅する、救いの光。

破壊と再生――破壊を担う、光の破壊神に与えられた必滅術式――ッ


「――“アポカリュプシス・ノヴァ”ァァァァァッ!!」


――光が満ちる。
迫る蒼金の拳を視認し、漠然とギラーミンは安らぎを感じた。
脳の片隅に、僅かに残った理性が目覚める。
其れは偶然なのだろうか。
光に身を任せ、突き刺さる拳の感触を受け入れ、崩れ逝く身体を見送り――

『見ゴ、トだ……スー、パー……マン……』

最高の賛辞を、宿敵に送る。

『ア、リガ……ト、ウ……』

誇り高き殺し屋、ギラーミンは粒子すら残らず、この世から消え去った。


「「――“Amen”ッ!!」」

光が爆縮する。
黒き鳥は光に喰われ――欠片も残らず、消えた。
窪んだ大地が更に陥没し、広がる荒野に生々しい大穴が刻まれる――
消え去ったギラーミン。
のび太は、歪んだ大地を漠然と見つめ――
「僕は、スーパーマンなんかじゃない……」
弱い心が軋む。
幾ら強くなっても、心は弱いままだ。
こんな自分が、スーパーマンな訳が無い。
そんな事を考えていると――
手に、温かな感触が二つ。
ルルとくするだ。
二人は、のび太の手を取り、
「くするにとって――ぱぱは、大好きなヒーローだよ」
くするが言う。
「のびたは――つよいよ。それは、わたしがいちばんよくしってる」
ルルが言う。
其れは――とても、温かい言葉だった。

「――ありがとう」

涙が出そうだった。
日に照らされる、蒼き鋼の中。
大地に跪く巨神は――静かに、輝いていた。


「――世話になったのである。礼代わりにこのドクターウエスト無料脳改造回数券を――ガヴォブケェェェッッ!!」
「黙れ喋るないわすぞコラ」
すっかり定着した二人のやり取り。
あの戦いから然程時間も経たず、別れの時が来た。
「――のび太。ママさんに宜しく言っといて。次に来る時までに、あの味、必ずモノにしてみせる……」
「又来る気ですかアンタ!?」
メラメラと料理人の血を燃やし、さらっと聞き捨てならない事を言うエンネアに、思わず突っ込むのび太。
如何やら、料理談義ですっかり玉子さんと意気投合したらしい。
「治ったら又遊びに来るロボよ〜♪」
応急処置が終わり、取り合えず会話できるぐらいに回復したエルザがのたまう。
――来るなと言いたいが、この空気では言うに言えず、取り合えずのび太は蹲って血の涙を流した。
「お姉ちゃん、またねー!」
「…………」
くするが笑顔で手を振り、その隣でルルが無表情で同様に手を振る。
「――ほな、そろそろいこか。とっとと起きろや、この馬鹿」
血達磨になった肉塊を蹴り、無情に非情なチアキさんであった。
「ぐふぅ……す、少しは天才を労われである……」
「板割れ? 博士の胸板を割ればいいロボか?」
「……エルザァァァァァッ!」
泣き出す変態。
いい加減鬱陶しい。
「――いいからはよ帰れ!!」
ストレスで死にそうになるから。
のび太の死にそうな叫びが、コダマするのだった――


のび太は考えていた。
ギラーミン、そしてギガゾンビ。
両者とも、“彼”との冒険で対決した敵であり――倒した相手だった。
しかし、今になって彼等は蘇り――魔導書を持って、立ちはだかった。
どういう事だろうか?
其れに、気になるのは――

「……協力者」

ギラーミンに本を渡し、脱獄を手引きし、そして地球まで案内したと言う、謎の人物――
もしかしたら――ギガゾンビに本を渡した人物と、同一人物なのかもしれない。
「……また、厄介な事になりそうだ」
しかも、相当ヤバそうだ。
過去に蒔いた種――それが今になって、出てくるとは。
胸に湧き上がる、嫌な予感。
胸に嫌なしこりを残し、のび太は娘と妻の後追う。

取り合えず、今日の晩御飯は何だろう?

暢気なのか、強がりなのか――
のび太は取り合えず、何時も通りにする事にしたのだった――


――この世の何処か。
シルクハットを被った人物は、薄ら笑いを浮かべていた。
「――少しは進みましたか」
捨て駒を使った甲斐があった、と彼は笑う。
「まあ、取り合えず……第二段階に移るとしましょう」
マントが翻る。
其処には――小柄な老人が居た。
「ドクター。“黒い太陽”は順調ですか?」
老人は、にやりと笑い。
「――うむ。“魔女”が頑張っておるよ」
「そうですか。ドクターも頑張って下さい。ドクターの強化生物は防衛の要になるので」
「解っておるよ」
哂う。
彼も、老人も。
哂う、哂う、哂う。
「重畳――さて。時は動く。次は……彼女に行って貰いましょう」
指を鳴らす。
すると、闇の中に人気が生じた。
明るい髪の色のみが、闇に浮かぶ。
「頑張って下さい、お人形さん――」

――闇の中に、彼の笑いが残響した


あとがき

漸く完成! 
お久し振りです!!
何とか次回に動ける展開に……!
次が何時になるか解りませんがお願い見捨てないで(土下座
――では、恒例の返信に!


>剣さん
お久し振りです。ウエストは私も大好きです。――魔導書子供は公式おっけー……飛翔買ってないので、助かります。有難う御座います


>ATK51さん
どうもです。出木杉、静香の今後は……ギャグしか予定ない(汗 静香は殺傷能力があるから何とかなるかも(待て
コミック版……買おうか悩み中です。


>アレス=アンバーさん
のび太は精神的に弱い。確定事項です。キチガイ対面は次回に持ち越しー。では、有難う御座いました。


>黒覆面(赤)さん
お褒めの言葉有難う御座います。あの台詞を書くのは難しいです(汗 ウエストはシリアスパートになるとかっこいいんだよなぁ……。では。


>ガバメントさん
世界意思です(何


>ジェミナスさん
早めに引き合わせたいです(何 駄目人間……どうしようも無いから駄目人間なのです。


>ひげさん
私も書いていてずきっとしたです(阿呆 待たせて申し訳ありません。魔術師=苦労……なんだろう、すんごく説得力がある(汗


>烏竜茶さん
ノリです(どっきぱり 理屈をつけるなら、エンネアが弱っていてディスペルが上手く働かなかった。彼女はこの世界では、前の世界のような出鱈目スペックは無いので。出木杉は基本的にサポート系に回す予定です。


>meoさん
あう(汗 今回は修正しましたです……


――では皆々様、次回にて又お会いを。

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭

PCpylg}Wz O~yz Yahoo yV NTT-X Store

z[y[W NWbgJ[h COiq [ COsI COze