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「狩人の世界に現れし福音者達  第51話(エヴァ+HUNTER×HUNTER)」

ルイス (2006-10-27 20:05/2007-01-10 22:23)
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 クラピカは、あるビルの屋上に立ち、携帯を切った。

「…………カヲルか」

「おおっ!?」

 両手にジュースを持って現れたカヲルに気づき、声を上げると本人は驚いた表情を浮かべる。

「今の私は誰とも話す気はない」

「旅団の頭が死んだからかい?」

 ピクッとクラピカの肩が揺れる。カヲルも先程、マフィアから聞いたが、旅団の頭と団員が数人、死体で発見されたそうだ。

「こっちは黙示録の頭に逃げられてね〜」

「…………会えたのか?」

「まぁね。アスカとレイも一緒にね」

「…………そうか」

 クラピカは膝を抱えて座り、ヨークシンの街並みを見る。黙示録によって、かなりの被害があったものの、都心は、比較的、襲われる事が無かった。黙示録に狙われて、この被害はかなりマシだったと言える。
 が、いつまた襲われるか分からず、市民の間ではパニックになり、街から逃げ出そうとする者が大勢いた。

「こんな状況なのにオークションを続けるとは……市長も頑張るね〜」

 世界最大のオークションを名乗っているからには、テロが起ころうが関係ない、という安っぽいプライドだとカヲルは軽蔑する。が、それ以上に、それを知り、危険である事を承知でオークションに参加する富豪も馬鹿馬鹿しく思った。

「地下競売も再開されたし……品物は競り落とせたの?」

「緋の眼を……29億」

「そりゃまた……」

 緋の眼を競り落とした事もだが、29億という法外も法外な金額に、カヲルは苦笑いを浮かべながら、街を見つめる。

「こりゃ近い内にゴーストタウンになっちゃいそうだね」

「…………」

「あ、そうそう。アスカとレイ、ゴン君達と一緒にいるそうなんだ。とりあえず会ったらどうだい?」

「…………」

「何にしても旅団も完全に死んだわけじゃないからね」

 そう言い、カヲルはジュースを一本、クラピカに渡した。


 9月4日、クラピカとカヲルはデイロード公園を訪れた。今朝早く、そこで待っているという連絡があった。芝生の上ではゴンとキルアが早食い競争をしており、アスカとレイがチェス盤で向かい合っていた。

「! ぶぁはピカ!! ばぼル!」

「チェック」

「げ……」

 クラピカに気付き、ゴンが顔を上げると口の中のお菓子がキルアの顔に飛び散る。ゴンは、クラピカの元へ駆け寄ると、ジッと彼の顔を見据える。

「ゴ……」

「良かったね!!」

 何か言いかけたクラピカだったが、ゴンの言葉に唖然となる。

「クモが死んで、これでやっと、一番したかった事に集中出来るね! 早く見つけてあげなきゃ! 仲間達の眼……もし、俺達にてつだぶっ!」

 そこで突然、ゴンの後ろからキルアが顔面にアイスクリームを叩きつける。猫みたいな笑みを浮かべるキルアとゴンは、取っ組み合いの喧嘩を始めた。

「う〜む……流石ゴン君」

「?」

「君の一番の目的をズバリ言ったね〜」

「ぁ……」

 カヲルの言葉にクラピカはハッとなる。そうだ、自分がハンターになった一番の目的は旅団への復讐ではない。仲間の眼を取り戻す事だった。旅団が死んで、落ち込むのはおかしかった。ゴンとカヲルの言葉で思い出したクラピカは、彼らの喧嘩を見て、今までの殺伐とした雰囲気がいっぺんに薄れて、微笑を浮かべた。

「ったく、ゴンの奴……アタシらにも励ましの言葉ぐらいかけなさいっての」

「男の友情なんて、そんなものよ」

 チェス盤を睨みながら、アスカとレイはヤレヤレと肩を竦めた。


 その後、ゼパイルと業者市を担当していたレオリオに連絡し、7人はホテルに合流する。

「久々! 全員集合だね!」

「それにしても……」

 再会を喜び合う面々の中、レオリオは、ジッとクラピカを見る。

「? 何だ?」

「何かオメー、威圧感っつーか迫力みてーなもんが出た気がするな」

「そうか? 君は大した変化もなさそうだな、レオリオ」

「駄目だよ、クラピカ。そんな風に言っては。品の無さこそがレオリオの最大の魅力だよ?」

「テメーら、ムカつく度も更に増したな」

 素で人の神経を逆撫でするクラピカとカヲルの相変わらずぶりにレオリオは青筋を浮かべる。

「それはそうとクラピカ。何か旅団の1人と戦って、倒したらしいな。念を覚えて間もないお前が一体どうやって勝ったんだ?」

 アスカとレイも黙示録の1人を倒したそうだが、彼女達は年季が違う。クラピカは、その質問に対し、先に言った。

「もし、お前達がクモの残党を捕えたくて訳を聞きたいならやめておけ。私の話は参考にならない」

「その事だけじゃないよ。俺達だって念を極めたいと思ってる。勿論、残りのクモを捕まえたいって気持ちもあるけど……」

 ゴンは、レイから念はリスクや覚悟によって強くなると聞かされた。恐らく、クラピカが旅団の一人を倒したのは、その事が起因している筈だ。なら、どんなリスクを背負えば、念の初心者である自分達が、旅団や黙示録に対抗出来るのか、それが参考にしたいとゴンが言った。

「これから先も念能力は絶対に必要になると思うから……」

「なら、尚更やめておけ」

「何で?」

「私の能力は旅団以外の者に使えない」

 クラピカの発言に、カヲル以外の5人が驚愕する。

 7人は、ゴン達の使っている部屋に移動し、クラピカから説明を受ける。

「念は精神が大きく影響する。覚悟の量が力を上げるが、それは高いリスクを伴う」

 それはレイから説明を受け、ゴン達も知っている。

「私は念能力の大半をクモ打倒の為に使う事を誓った。その為にルールも決めた。旅団でない者を鎖で攻撃した場合、私は命を落とす」

「!?」

「私の心臓には念の刃が刺さったままだ」

 胸に手を当てて言うクラピカに、ゴン達は唾を呑む。

「分かったか? 私の能力は憎悪が生んだ恨みの産物。クモ以外には全く通用しない力だ。お前達だから話した。他言しないでくれ」

「何で……」

 すると突然、キルアが声を荒げて立ち上がった。

「何で話したんだ!! そんな大事なこと!!」

「キルア?」

「………うむ、確かに。何故だろうな……奴等の頭が死んで、気が抜けたのかもしれない」

「まずいんだ! まだ残ってる!」

 キルアは、旅団の中に対象者に触れる事で、記憶を読み取る能力者がいる事を話す。たとえ、自分達が話す気がなくても、彼女なら自在に記憶を引き出す事が出来る。

「もし、あいつにこの事がバレたら……クラピカに勝ち目は無くなる!」

「でも、あの時はバレなかったよ」

「あの時は俺達もクラピカが鎖野郎だと知らなかった! だけど今はもう全部分かってる!」

「しかしよ、それはこっちから近付かなきゃ安全だろ? あっちは一度調べてシロだって思ったんだから」

 確かにレオリオの言うとおりだったが、キルアは他にノブナガというクラピカを探す事に執着し、自分やゴンをクモに入れたがっている奴がいる事を話す。

「だけど、そいつだってお前ら2人とクラピカの接点は知らねぇんだろ?」

「どちらにしろ鎖野郎が、クラピカというのはバレてると考えた方がいいよ」

 そこへ不意にカヲルが発言すると、クラピカ以外の面子は驚いて彼に注目する。

「僕らの元仕事仲間に、黙示録の一人がいる。彼女は、クラピカが鎖の使い手だという事を知っている」

「マジか!?」

「ああ、本当だ。私の顔と名前は、奴らにバレてると考えた方が良いだろう」

 能力まで知られていないのは、幸いではある、とクラピカは付け加える。

「…………探し出した方が良い」

 そこへ、キルアが唐突に言って来た。

「俺達がクラピカの秘密を知ってしまった以上、受身でいるのは危険だ。俺かゴンが、またノブナガに見つかったら、多分、逃げ切れない。だけど今ならクラピカがいる。奴らが地下に潜って力を蓄える前に、芽を摘んだ方が良い」

 と、キルアは提案するが、彼にはもう一つ狙いがあった。旅団、上手くいbけば黙示録を捕まえ、大金を手にする事であった。


「鎖野郎は誰だ?」

 幻影旅団と黙示録がアジトにしている廃ビルでは、同じ部屋に両組織が集まり、その中でノブナガがウチルに問い詰めていた。旅団の探す鎖野郎を知っているウチルは、何も語らなかった。

「吐け」

 眼光鋭く、ウチルを睨み付けるノブナガ。

「ウチルちゃん、本当に鎖野郎という方を知ってるの?」

 答えようとしないウチルに、ユーテラスが尋ねると彼女はコクッと頷いた。

「デモ教エテヤル義理モ義務モナイ。ソレニ一応元仕事仲間デ、コイツラヨリ親交アッタカラナ」

「んだと!?」

「待て、ノブナガ」

 ウチルに斬りかかりそうだったノブナガをクロロが引き止めた。

「俺達は今夜、此処を立つ」

「!?」

 その発言に、ノブナガは驚愕し、振り返る。

「今日でお宝は全部頂ける。それで終わりだ」

「…………まだだろ。鎖野郎を探し出す。その手がかりが目の前にあんのに、みすみす引き上げるってのか?」

 ウチルを指し、クロロに問うノブナガ。

「拘るな」

「ああ、拘るね」

「ノブナガ、いい加減にしねぇか。団長命令だぞ」

 引き上げる気の無いノブナガに、フランクリンが言った。

「本当に、そりゃ団長としての命令か? クロロよ」

 そう言い、しばらく睨み合うクロロとノブナガ。

「マスター、いいの? このまま放っといて」

 それを見て、ウィップが小声でシンジに尋ねると、彼は「さぁ?」と肩を竦めた。

「ま、もしノブナガ君がウチルに何かしようものなら全力で止めるけどね」

「あら? 私はああいう熱くて一直線なタイプ、好きだわ」

 ほぅっとノブナガの体から発するオーラを見て、頬を染めるウィップ。シンジは笑顔のまま彼と距離を空ける。

「あら? どうしたの、マスター?」

「別に」

 ウィップに対しては、別の意味で一緒にいては危ないとつくづく思うシンジだった。

「ノブナガ……」

 ふとクロロが口を開くと、本を具現化した。

「俺の質問に答えろ」

「?」

「生年月日は?」

「あ?」

「生まれた年だよ。いつだ?」

「9月8日だ。70年のな」

「血液型は?」

「Bだ」

「名前は?」

「ノブナガ・ハザマだ! 知ってんだろ!! 何なんだよ? 次は何が知りてーんだ!?」

「いや、もういい。それをこの紙に書いてくれ」

 そう言われ、ノブナガは用紙に生年月日、血液型、名前を書く。それを受け取ったクロロの左手に奇妙な生物のようなものが現れる。そして、素早く書き記し、それをノブナガに渡した。

【大切な暦が一部欠けて遺された月達は天使と共に盛大に葬うだろう。加わり損ねた睦月は一人で霜月の影を追い続ける。地に降る氷を求めて。
 菊が葉もろとも涸れ落ちて血塗られた緋の眼の地に臥す傍らでそれでも蜘蛛は止まらない。残る手足が半分になろうとも】

 紙に書かれた詩を見て、ノブナガは呆然となる。

「詩の形を借りた100%当たる予知能力だ。ある女から盗んだ」

 その女が、マフィアに占い、競売品が襲われる事を予言したそうだ。そして、自動書記でクロロには、どんな結果なのか分からない。

「どうなんだ、ノブナガ?」

「来週恐らく5人死ぬな」

 その発言に、旅団、黙示録の間に一瞬、緊張が走る。

「誰だ、その5人って?」

「さぁな。俺にゃさっぱり理解出来ねぇ。辛うじて分かるのは、2番目の詩……蜘蛛の手足が半分になるってとこくらいだ」

 蜘蛛の手足が団員を示し、その半分という事はウボォーギンを除く5人だと解釈出来た。

「ちょっと見せて」

 シズクが瓦礫から降りて、ノブナガの予言を見せられる。

「俺の占いにも同じように出ていた。多分、他の団員を占っても同じ様な結果が出るだろう」

「団長、ちょっとアタシ、占ってみて下さい」

 頼まれ、クロロはシズクの分も占う。

【大切な暦が一部欠け遺された月達は天使と共に盛大に葬うだろう。貴方は仲間と墓標に血をそえる。霜月が寂しくないようにと。
 黒い商品ばかりの収納場で貴方は永い眠りを強いられる。何よりも孤独を恐れなさい。2人きり程怖いものはないのだから】

「やっぱりそうだ。来週死ぬの、アタシです」

「マジか?」

 平然と自分が死ぬと手を上げるシズク。

「うん、だって2週目までしか占いないもん。後ね、パクノダとシャルナークも死ぬよ。緋の眼と地に降る氷を求めて、ってのが分かんないけど」

「何で分かる?」

「これね、暦の月が団員の番号を表してるみたい。霜月は11月……ウボォーの番号ね」

「その通り。菊が菊月で、葉が葉月で、涸れるが水無月をそれぞれ暗示している。更に涸れ落ちるが枯れ落ちる掛かり、死を示すとみていいだろう」

「緋の眼は俺達の誰かじゃない」

 そこへ、瓦礫の上で寝転がっていたフィンクスが発言し、クロロが頷いた。

「十中八九、鎖野郎の事だろう」

「緋の眼……思い出した、目が赤くなる連中ね」

「生き残りがいたという事か」

「そいつも死ぬって事か?」

「分からんぜ、血だらけで地に臥してるだけじゃあ」

「けど、この地に降る氷を求めて、ってのは何だ?」

 意味不明な一文に首を傾げる旅団達。すると、シンジがクロロに言って来た。

「ねぇ、クロロ。その占いって自動書記なんだよね?」

「? そうだが?」

「じゃあ、生年月日と血液型を紙に書けば勝手に占ってくれるんだ?」

「ああ」

「じゃ、ちょっと」

 シンジはクロロに近づき、ボソボソと耳打ちする。

「は? 何故?」

「僕の生年月日は色々バレると面倒なんだよ。今度、無償で仕事手伝ったげるからお願い」

「…………分かった」

 訝しげな表情をしながらもクロロは眼を閉じた。そして、シンジはクロロの後ろに移動し、紙に自分の生年月日と血液型を書いてクロロに渡すと、突然、彼の顔に手を回し、目隠しした。

「何やってんだよ!?」

「いや、まぁ……個人情報保護法?」

 怒鳴るノブナガに対し、シンジはあっけらかんと答える。

「出来たぞ」

「さ〜んきゅ」

 クロロから占いの結果を受け取り、シンジは目を通す。

【力を失った天使は破壊を繰り返す。赤く染まる漆黒の中で貴方は思い人達に再会するだろう。
 雨が上がり恐怖は無くなる。翼を捥がれた鳥は安らかに眠る。貴方の望みは叶わない。
 1人目の子供は拒絶。2人目の子供は拒絶。5人目の子供は拒絶。4人目の子供がいい。東を目指せ。貴方の力になってくれる】

「…………なるほど」

 詩を一通り読むと、シンジはニヤッと笑みを浮かべる。

「クロロ、悪いけど他の黙示録のメンバーも占ってくれない? こっちはこっちで、色々とやる事が出来た」

「…………良いだろう。ただ、それは貸しだからな?」

「OK」

「マスター。私、自分の生年月日知らないわ」

「あ、そういや俺もだ」

「以下同文」

 他のメンバーを占って貰おうとしたが、ミスト、マルクト、ウチルの3人が言う。

「この経歴不明のお子様どもめ……じゃあ、それ以外は占って貰って―――」

「ダルいからパス」

「アクア〜〜〜!!」

 そう言って、先に部屋から出て行くアクアに、シンジは思いっ切り叫ぶが、聞いちゃいない。ガクッとシンジは膝を突いて震える。

「何でこ〜皆、自分勝手なの……」

「自分勝手なのはアクアだけで、アタシらが経歴不明なのはしょうがねぇだろうが」

 シンジが落ち込んでいる間に、他のメンバーはクロロに占って貰う。

「よっしゃ。じゃあ、俺様達は部屋に戻るとすっか」

 シンジの服を掴んで引き摺りながらイスラームが言うと、ノブナガが「待てぃ!!」と引き止めた。

「まだ、そのガキから鎖野郎の事を聞いてねぇぞ!!」

「とは言っても、ウチルが話したくないって言ってんだから無理じゃね?」

「だからって引き下がれるか!!」

「まぁまぁ旦那……ちょいと」

 興奮するノブナガの肩に手を回し、イスラームが小声で話しかける。

「このままウチルに迫ると、旦那、ロリコン扱いされちまうぜ?」

「ロリ……!?」

「ロリナガさんになっちまっても良いのか?」

「変な呼び方すんな!!」

「此処は一つ穏便に。な?」

 ポン、とノブナガの肩を叩き、イスラームは部屋から出て行った。憮然としながらも、舌打ちし、ウチルを問いただすのを諦めた。


「で? マスター、あの占いどういう意味?」

 黙示録の面々は部屋に戻ると、マギがシンジに尋ねた。

「え〜っと……とりあえずレイン、マギ、後はマインド。君達はどんな結果が出た? 多分、2週目までだと思うけど?」

 その言葉に、メンバーは驚愕し、全員が3人に注目する。

「ど〜いう意味だコルァ!! 事と次第によっちゃ許さねぇぞ!!」

 すると突然、マルクトがシンジの胸倉に掴みかかってガックンガックンと揺すり出した。

「おお、マルクトが激しく動揺してるわ」

「あらまぁ、これはスクープね」

 と、言いつつ暢気にビデオを撮るユーテラス。

「お、落ち着いてマル」

「どういう事だ!? お!? マギが死ぬってどういう事だ!? 俺か!? 俺がミスるんか!?」

「何でマルクトの奴、あんな慌ててんだ? アタシら別に死ぬ事に対しちゃ何とも思ってねーだろ?」

「「「(不憫っ!)」」」

 本気で不思議そうに思っているマギの台詞に、ライテイ、スカイ、マインドの3人は心の中で激しくマルクトに同情した。

「…………死ぬの?」

「…………さぁな」

 一方、レインはミストに尋ねられたが、そう返した。

「お前らさ……もう少しこう何つ〜の……」

 2人の余りにも淡白過ぎるやり取りに、イスラームが悲しそうにギターを鳴らしながらツッコミを入れた。

「それで? 死を暗示してる詩が出たのですか?」

「うん」

 唯一、冷静なシフとマインドは、淡々と詩の内容について検討していた。マインドが自分の占いの詩を読み上げる。

【力を失った天使は破壊を繰り返す。貴方は破壊をしない。天使達の心を繋げるだろう。
 漆黒の中で貴方の翼は捥がれて安らかに眠る。鳥篭を離れてはいけない。赤くて熱い悪魔が貴方の翼を捥いでいくだろうから】

「って、いうのだけど……2週目までしかないし、こりゃ確かに私が死ぬかな」

「どういう意味なんだ、それ?」

「う〜ん……天使ってのは私達の事だね。で、ノブナガって奴の予言にあった『地に降る氷を求めて』ってのは霰。つまりウチルの事だね」

「(やっぱりロリナガか)」

 つまりこれは、黙示録内しか知らない――厳密に言うとシンジしか知らない――使徒、彼らのかつての魂が司るものを表している。

「マスターの予言を見る限り、力はリキを、雨はレイン、恐怖はマギ、そして鳥は私だ。雨が上がるでレイン、恐怖が無くなるでマギ、で、羽を捥がれるで私が死ぬって事だ」

「赤く熱い悪魔ってのは何だ?」

「多分、火とかマグマじゃないかな? それが私を殺すと思うよ。レイン、マギ、君達の占いは?」

 レインとマギは、それぞれの占いを読み上げた。

【力を失った天使は破壊を繰り返す。貴方も破壊に加わる。多くの命を奪っていくだろう。
 力を奪った者が貴方の前に現れる。戦ってはいけない。貴方は負けない。けれど貴方には終わりが訪れる。黄金を積まれる前に逃げるといいだろう】

【力を失った天使は破壊を繰り返す。貴方は破壊に加わらない。大切なものを守る為。
 貴方の前に大きな壁が現れる。正面から向かっていってはいけない。決して1人でいてはいけない。暗闇の中で1人は危険だから】

 レイン、マギの予言を聞いて、マルクトにガックンガックン揺さぶられていたシンジは目を細める。

「時にマスター」

 すると今まで黙って瓦礫の上に座っていたアクアが、頬杖を突き、笑みを浮かべながらシンジに話しかけて来た。

「マスターの予言にあった1番目の子供とかって何?」

 その質問に対し、全員の視線がシンジに向けられる。皆、彼の予言にあった1番目の子供、2番目の子供、5番目の子供、4番目の子供という単語が引っ掛かっていた。

「ってゆーか、3番目の子供はどうしたの?」

「アクア……何が言いたいのかな?」

「1,2,5が拒絶……そしてマスターの望みは叶わない。マスターの望み、この場で言ったら?」

「おい、アクア。何なんだよ? マスターの望みって?」

 マギが問いかけると、マインド、マルクト、レインが渋面を浮かべる。シンジは、鋭く冷たい眼光でアクアを射抜くが、彼女は対して不敵な笑みを崩さない。

「ま、良いわ。この場で大切なのはレイン、マインド、マギを死なせない事だものね。それには、アスカ、レイ、カヲルの3人に近付いちゃ駄目って事よ」

 アクアは、レイが炎の使い手で、カヲルはオーラを壁にする使い手だという事を知っている。そして、リキを殺したアスカ。予言どおりなら、マインドはレイに、レインはアスカに、そしてマギはカヲルによって殺される事になる。

 その事をアクアが言うと、マギが「はんっ!」と鼻で笑った。

「このアタシが、あんな馬鹿丸出しの連中に負けるだって!? 上等だ! リキを殺した奴らと対峙出来るなら、アタシが直接ぶっ殺しちゃる!」

「馬鹿丸出しなのは、お前だろ」

「あぁん? マルちゃん、何か言った?」

「別に。とにかく、予言にもあったように1人で絶対いるなよ!」

「わ、分かったよ……」

 珍しく剣幕を立てるマルクトに、マギもコクコクと頷いた。

「で? どうするよ、マスター? 言っとくが俺ぁリキを殺した奴ら許すつもりはねぇぞ」

 瓦礫に座り、静かに目を閉じるシンジに対し、スカイが言って来た。

「マインド達が、あの小娘どもに殺される予言が出てるなら、俺は関係ねぇ。とっとと奴ら、ぶっ殺す」

「………………」

「マスターの昔の仲間だか何だか知らねぇが、今の仲間殺されて何とも思わねぇのかよ?」

「………………」

「俺とマギだけじゃねぇ。あの小娘どもを殺したがってる奴は他にもいるぜ?」

「………………」

「おい! マスター!!」

「スカイ……」

 沈黙を辿り続けるシンジに業を煮やして怒鳴るスカイ。シンジは、片目を開けてスカイを見上げて、低い声で言った。

「煩い」

「ぐ……」

 シンジの体から薄っすらと発する不気味で威圧的なオーラに、スカイは怯んでしまう。

「レインの予言の最後にあった『黄金を積まれる前に逃げろ』……これは来週の金曜日になる前に、此処を去れ、という意味だ。クロロ達が此処に留まり、鎖野郎と戦って戦力半減になるのを防ごうとしたように、僕らも此処は立ち去った方がいい」

「黙示録がターゲットを残して撤退するっていうのかよ!? その前に街ぶっ壊して、リキ殺した奴らを始末すればいいだろうが!」

「…………皆の意見は? スカイと同じかい?」

 撤退せずに、リキの仇を討ちたい。そう考えているのか、シンジはメンバーに正直な気持ちを話すよう言った。マギは当然とばかりに頷き、皆、賛成はともかく反対する気は無いようだった。一人を除いて。

「私は別に。興味ないし」

「あん?」

 アクアの軽い発言に、スカイが彼女を睨み付ける。

「リキが死んだのは彼女が弱かっただからだし、仇討ちして自分に得がある訳じゃないもの」

「おい、アクア……テメー、リキが死んで何とも思わねぇのか?」

「それとこれとは話が別よ。むざむざリキの仇を討ちにいって予言通りになったら踏んだり蹴ったりじゃない?」

「テメェ……」

 スカイは怒りで体からオーラを立ち昇らせる。ピクッとそれに反応したアクアは立ち上がり、スカイを瓦礫の上から見下ろす。

「やる気? 私は一向に構わないわよ。その熱くなった頭、冷やさせてあげる」

「テメーのその口、塞いでやる!!!」

 咆哮を上げると、スカイは床を蹴って一直線にアクアに向かって突っ込む。が、その時、2人の間に赤い閃光が横切り、スカイは動きを止めた。次の瞬間、ギィンと音がして壁に槍が突き刺さる。2人は、槍の飛んで来た方を見ると、シンジが瞳孔を開かせて、今まで見せた事のない眼光を放つ。

「2人とも……次やったら、体貫くよ?」

「あら、本気ね」

「マスターって、怒らせると一番怖いタイプだものね〜」

 2人は、シンジに睨まれ戦闘体勢を解く。

「…………ウチル」

「何ダ?」

「鎖野郎ってのを知ってるんだね?」

「オウ」

「そしてカヲル君も」

「ソウダ」

「そうか……」

 シンジは目を閉じて、フゥと息を吐くと、ポリポリと頭を掻く。

「僕としては、無闇に予言が実現して3人が死んだら、余計、リキに悪いと思ったんだけどね……ウィップ、ユーテラス」

「はい?」

「?」

「2人は、今からマギに付きっ切りで護衛だ。決して1人にするな」

「「了解」」

「アクアとマルクトはマインド、ミストとイスラームはレインを護衛。ウチル、スカイは僕と一緒に行動。ライテイ、シフは此処で待機だ」

「マスター。一緒ニ行動ッテ何スルンダヨ?」

 いきなり指示を飛ばすシンジに、ウチルが質問する。

「リキの仇を討つんだろ?」

「! マスター!」

 スカイが驚きの声を上げる。シンジは壁に向かって手を広げると、槍が壁から抜けて彼の手に戻って来た。

「アスカ達を……始末する」


 〜レス返し〜
 髑髏の甲冑様
 テロリストのボス、そして生と死は等価値、特質らしいレアな能力、反則的な強さ……全てがマッチした能力でした。
 はい、そうです。“攻撃する盾【ガードオブアタック】”は、盗んだ能力の一つです。


 弱者様
 クロロの能力と違って、槍だけでも直接的な攻撃能力があるのが強みです。


 七位様
 常に死を伴う能力なので、相当、無茶な設定もまかりとおしました。最強と最凶が見事に組み合わさりました。


 デコイ様
 はい、最初はオーラを斬って、肉体は無傷、というような能力にしたかったのですが、それじゃあ面白みが無いので、もういっそリスクは死、で能力は無限大、というようなものにしました。確かにシンジのオーラの総量は強化系や放出系を軽く超えます。が、シンジ自身、自分が現在、どれだけのオーラを持っているのか分かっていません。ただ、24時間以上、“堅”を楽々保ってられます。
 一つ目の質問は、シンジの能力の大本は槍で、形状が変わる事で取り込んだ能力が使えるものです。
 二つ目は、はい、有効期限は最大1週間で、2回目は6日、3回目は5日と免疫効果で期限は減ります。
 三つ目は、同じ能力にはかかります。その場合、もう一枚、同じフロッピーが必要です。解除の条件を果たせばフロッピーは消えます。
 四つ目は、はい、報酬はパーです。ちなみにナーヴ社の面々は、今もアジトを見張ってます。


 ショッカーの手下様
 そういや、技パクるの得意でしたね。セルもブウも。
 いえ、特定の給料しか支払われない組織はマイサは嫌です。個人的な依頼で莫大な報酬を得るのが彼女の仕事ですから。
 今後、展開によっては旅団と黙示録も対立していくかもしれません。


 流刑体S3号様
 はい。むしろ相手を殺さなければいけないので、能力は際限なく使えます。当然ですが、一般人より念能力者の念の方が死ぬ危険性高いです。
 禍々しさならピトーが上です。あくまで人のレベルで、シンジのオーラは禍々しいですけど。
 はい、マギに死の予言出ちゃいました。


 夢識様
 リスクは常に死、です。マコトの能力……右と左で実は違うんですよね。


 レンジ様
 今のシンジとカヲルは昔と立場が逆になっちゃいました。最強ですが、無敵ではない。ちょっと格好いいです。


 なまけもの様
 すいません、トドメはミスです。
 はい、リツコはシンジが去ると、早速、車の中で薬の精製を始めています。
 クロロや旅団のように、常に死を受け入れてる連中とは愛称最悪なんですよね、実は。
 戦闘技術じゃ、黙示録で一番です。次に強かったのはリキなんですけどね。単純な戦闘じゃ。


 エセマスク様
 シンジの能力は、効果・リスク共に好評で良かったです。
 あ〜、LCL化ですか。シンジにとって、あのサードインパクトは、トラウマですから逆にLCL化はマズいような気が……。
 まぁ、マギの自己主張が強かったって事で。
 マコトの紹介もいずれ。


 通りすがりの戯言様
 上記でも言いましたが、シンジ自身、自分の本気を知りません。『本気で戦う』と言っても、無意識に相手に合わせている可能性もあります。そこを付け込めばアスカ達にも勝機はあるので。
 体術だけなら、マイサはシンジと互角です。ネテロ会長の場合は本編でも正確な強さ分からないですからね〜。
 今回は旅団のフォローが主な仕事でしたからね。それが終われば、後は好きにやる。それに、もしネオンが死んだら元も子もないですし。やるなら、ネオンがヨークシンを出てから、です。


 絶魔様
 ま、ミサトも無駄に能力使うと、シンジに全部奪われる訳ですし、弾丸を一発だけ入れて撃てば、威力は落ちますが、不意打ちや足止めぐらいにはなります。シンジも、何だかんだで遊んでたわけですし。


 拓也様
 はい、ご協力感謝します。
 それは無理です。黙示録は常に死を受け入れているので、そんな事したら、シンジが死んでしまいます。

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