インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「終わった世界のその後に 九話(GS+Fate+その他)」

シヴァやん (2006-10-27 02:54)
BACK< >NEXT

 no side

「やっぱり濁ってますね」

 豪華なデッキチェアに座りながら、茨の冠を頂いた存在が、腕と足を組み、目の前の空中に浮かぶ球体を注視しながら呟いた。

「ああ。確かに砕ける前よりは遥かに澄んどるけど」

 その対面で三対六枚の漆黒の翼を背負った存在が、腕を組み壁にもたれ掛かり、同じく球体に見入っていた。

「ええ。宇宙意思が砕いた魂と、彼女の施した封印が利いていてもまだ完全融合には至っていない」

「ま、完全融合はありえへんやろ。二人が無理矢理起こさせた魂食いを文字通り命がけで中止したよこっちが、今更再度の魂食いなんて起こさんて」

「ま、彼ですからね」

「彼やからね」

「そうだねぇ」

 そしてその空間にいる最後の存在が、笑いながら二人に同意した。

「って、何時からそこにおったんや?混沌?」

「気付きませんでしたね」

 二人を知る物が聞いたなら、到底信じられないことを言って、先の二人は最後の一人に目を向けた。

「そうだねぇ。ざっと五分前ってところかな」

 いたずらを成功させた童女のように微笑み、先ほどの二人のように球体に目を向けた。

「それにしても今回のキャスティングは豪勢だねぇ。魔女、魔眼の大蛇、光の御子に騎士王、大英雄、さらに剣鍛の魔術師、最後に無貌の者。錚々たるメンバーだねぇ」

「その他もすごいで。英雄王に欠片の契約者、二代目影の刃に正義の味方etcetc………。普通に戦ったら冬木消滅やね」

「それは無いでしょう。いくら威力が高くても、効果範囲が狭いものばかりですから。一番が騎士王の聖剣と英雄王の乖離剣、それと彼の禍つ咎星ですしね。最悪でも半壊じゃないですか?」

「それはどうだれうねぇ?この世の全ての悪なら魔力容量ほぼ無限大。当然奥の手は打ち放題。下手をすると初手で星が砕けるね?」

「………それはあり得へんやろ。あそこは残すはずやし」

「そうですね。まあもし復活しても抑止力が動くでしょうし、私たちにも依頼が来ますよね」

 三柱がそんなことを言い合い、

「そういえば、あなたのところの「魔を断つ剣」はどうしましたか?」

「ん?九朗君なら修羅場の真っ最中だよ。本と姫と獣の母とその他とで」

「そりゃまた………、でもよこっちよりはマシか。それで、あんさんは参加せんでもええんか?」

「僕は選ばれようとはしてないからねぇ。時たま気の向いたときに相手してくれれば、悠久の時の中での一時の安らぎにはなるからねぇ」

「それで、その他の時は彷徨うんですか?はっきり言えば迷惑ですよ?」

「いやいや。もちろんススム君の所にも行くさ。ニャアとして、ね」

「なんでこう、こいつの人格はまともなのがおらへんのやろ?サドとかマゾとかホモとか」

「はははははは。それが僕のレーゾンテートルだからね!」

「嫌な存在意義もあったものですね」

「まったくや」

 二柱が揃って顔を顰める。

 それをまったく無視して、球体に目を向け、

「さて、何はともあれ開幕だ。見せておくれよ横島君。君の紡ぐ、狂った道化芝居の行く末を。自侭に気侭に我侭に、望むままに思うままに導くままに。その狂った在り方で、その壊れた在り方で、その孤高の在り方で。万能万変の道化師である君だからこそ、墜ちた英雄である君だからこそ、僕と同じ『無貌』を冠された君だからこそ、この僕を、神々の道化師にして這い寄る混沌である僕を、満足させるに値する、喜劇で悲劇で笑劇な、唯一無二にして絶対な、狂気あふるる演目に見事仕上げて見せておくれよ」

「なんか行き成り締めに入りましたね」

「グダグダ続くよりはええんちゃうか?というか、よこっちなら狂気は溢れんやろ、虐殺はあっても」

「それが狂気じゃないんですか?」

 そうやって温度差を形成しつつ、何処とも知れぬ空間で三柱は球体越しにそれを見る。


 side SHIROU

「え?」

 遠坂が言った言葉の意外さに、思わず間抜けな声が出た。

「?なに?間抜けな声を出して」

「手を組むって遠坂、さっきまで敵同士だって」

「本当はそのつもりだったんだけどね」

 遠坂は苦い顔で笑い、

「あのアインツベルン組は私とバーサーカー二人だけが戦うなら、まず間違いなく私たちが殺されて終わる」

 その言葉に息を呑む。

「そうならない為に同盟を結ぼう、って言ってるのよ。当面アサシンを倒すまで」

「何でだ?バーサーカーはアサシンと互角に戦っていたじゃないか。それはまあ、遠坂と戦わなくてすむならその方がいいけどさ」

 そう言ったら、信じられないという目で見られた。なんでさ。

「はぁ。あのね衛宮君。そんなことだとこの先生き残れないわよ?」

 そう言うと遠坂は指を一本立て、

「いい?あの時、確かにバーサーカーはアサシンと互角に戦った。でもそれは、あくまで何の横槍も入らないときの話よ。向こうにはまだあのハルバードを扱うリーゼリットと、あのアサシンを制御可能な魔力量を誇るイリヤスフィールがいたわ。アサシンがバーサーカーを抑えて、二人が私に向かってきたら私じゃさすがに分が悪いわ。もともと戦闘が得意なわけじゃないし」

「ついでに言うならあいつらの手札があれで尽きてるとは思えないからな。最悪サーヴァントがもう一体、なんてことも十分ありえるだろうさ」

 遠坂に続きバーサーカーもそう言った。

「そうか。それなら俺としてもありがたいくらいだ」

「それじゃあそういうことで………」

「あ、少し待ってくれ」

 そう断りを入れ、今まで黙って成り行きを見ていたセイバーの方を見る。

「セイバー。そういうことなんだけど遠坂と手を組むのをどう思う?」

 ちびちびと緑茶を啜っていたセイバーは、その言葉で湯呑みを置き、

「私としてはシロウが決めたことに反対する理由はありません。むしろシロウがマスターとして、そして魔術師としてリンから学ぶことは多いでしょう」

「そうか、よかった」

 その言葉に安堵する。もしセイバーが反対するなら俺としてもどうしようかと思った。

「それじゃあ遠坂。同盟の方よろしく頼む」

「ええ」

 よかった。これでひとまず遠坂と戦わずにすむ。

「それじゃあこれからの基本方針を………」

「ちょっと待ってくれないか?凛ちゃん」

 遠坂の言葉をバーサーカーが遮った。

「何?」

「話に入る前にいくつか試したいことがあるんだけど、いいかな?」

「私はいいけど………」

 遠坂がこっちを見る。

「俺の方も構わないよ」

 眼でセイバーに確認を取ってからそういう。

「それじゃあ悪いけどセイバー。ちょっとこれに触ってみてくれないか?」

 そう言って差し出す手のひらの上に取り出したのは、先ほどの戦いで使われていた光る円盤だった。

「これに触ればいいのですね?」

「ああ、頼む」

 その言葉に従い、セイバーが指先でそれを突いた。瞬間、

パァン!

 音を立てて消え去った。

「「「?」」」

 それにどんな意味があるのかわからず、その場の三人がバーサーカーを見ると、彼は頭を抱えて天を仰いでいた。

「さっきのでもしかしてと思ったけど、やっぱりか。こりゃ根本的に戦法組替えないとまずいな」

 腕を組んでバーサーカーは悩んでいるが、訳がわからない。一体今の行為にどんな意味があったんだろうか?

「バーサーカー?今のはなに?」

「ん?一応は自分の能力の確認。結論はまあ、セイバーとは戦闘の相性最悪だってことだな」

 はぁ、と溜息をつくバーサーカー。どういうことだかわからず首を傾げる俺たち三人。

「どういうこと?バーサーカー?」

「いや、さっきアサシンに防がれたのが不思議でね。確かめてみたんだ。そしたら、どうやら俺の能力は魔術として世界に認識されてる。そうなるとセイバーの対魔力の対象になってほとんどが防がれる。威力はともかくランクがAに届くのはほとんどないし」

「って、それってかなりまずいわね」

 むぅと遠坂が唸る。

「まあなんとかなるさ。俺の戦法それだけじゃないし。っていうか同盟結んだその場で同盟者対策練るってまずくないか?」

「そんなものは今更ね。それに最後には戦わなくちゃいけないんだし、こそこそするより堂々としている方が衛宮君たちも安心じゃないかしら?」

「いや、遠坂。だから俺は二人と戦う気なんて………」

「こちらがなくても、相手にその気があるなら、戦わなくてはいけないのですよシロウ」

 俺の反論をセイバーが封殺する。

「衛宮君。あなたはこの戦争に犠牲を出させないために戦うと言った。それはそれでいいの。でも、まさか説得で済ませられる、なんて思っていないわよね?」

「この戦争に参加するやつは、まず間違いなく聖杯が目的だ。それを諦めろと言われて、はいそうですかと言うと思っていたのか?」

 至極真面目な顔で俺の目を見るバーサーカーは、普段がどこか緩んでいるせいで別人のように整って見える。

「そうじゃない。でも、戦わなくて良いやつとは………」

「それじゃ、それを判断する前に殺されるわよ?重要なのは戦う準備をすること。たとえば和平が成ったとしても準備が無駄になったね、で済むわ。でも何の手段も持たずにのこのこ相手の罠に出て行って、そこで戦いになったら終わりよ?たとえ一回凌げても、次は続かないわ」

「む」

 そういわれて黙り込む。言われれば確かにその通りだとは思う。しかし………

「ついでに言うなら、衛宮士郎。この戦争に参加するなら当然死ぬ覚悟、殺す覚悟、そして死なせる覚悟はしておけ」

 考えを纏める前にバーサーカーが口を開いた。その展開に追いつかず一瞬思考が空転する。その隙間にバーサーカーの言葉が滑り込む。

「これは死ぬ覚悟は自身の死、残り二つは敵、パートナー、および巻き込まれた一般人の死、だ」

「な!それをさせないために俺は………」

「そんなことは関係なく、いえ寧ろそれだからこそ、しろ、と言っているのよ。バーサーカーは」

「………っ」

 遠坂が静かに平坦にそう言う。その言葉と雰囲気に気圧され言葉に詰まる。

「どういう…ことだ?」

 何とか搾り出した言葉は自然険しくなった。

「はぁ。バーサーカー、あとはお願い。私もまだ完全にできているわけじゃないし」

「わかった。セイバーもいいか?というか、今までのに異論は?」

「いえ。あなた方の意見は戦争を闘うものとしては正しい。それに私はもとよりシロウの剣。剣は口を出さずただ路を切り開くものです。あるいは助言くらいならすることもありますが」

 セイバーが二人に同意したのがショックだったが、彼女がそう言うなら彼らの主張は正しいのだろう。と言うより、二人の口から出ている時点でそれはわかっていた事だが、それでも夢の為に易々とそれに従うわけにはいかない。そんな俺に向け、

「ん。なら俺が言うけど、衛宮、おまえ聖杯戦争嘗めてるだろ?」

 ぞっとするほど低い声で、バーサーカーが言い放った。


 side YOKOSIMA

 俺の言葉で、目の前に座っている衛宮と隣の凛ちゃんがびくりと体を振るわせる。まあ、こういう俺をはじめて見るなら無理もない。セイバーはさすが小揺るぎもしていないけど。

 何はともあれ、同盟を結んだマスターがこんな甘い考えでいるのはいろいろとよろしくない。

 それにこいつの甘さは嘗て忘れた俺を思い出させる。似ているところは殆どないが、戦争と言う戦いを軽く見ているその甘さは、嘗て人間だった頃の俺に近い。まあ、それなら殆どの人間が当てはまるだろう。が、他人を守るために戦争に参加すると言うその思考は、あの世界で最後の瞬間まで俺を憎まなかった奴らと同じだ。

 ならば、その先が見てみたい。自分の終わる最後まで信念を貫き、そのまま邁進するのならどれほどの階位に到達するか。ちょっと楽しみだ。気分はたま○っち?古いか?

 感覚的には動機に若干違和感があるが、大した問題じゃないし。

 無言で見返す衛宮に向け、できるだけ凄みを利かせ言う。

「間違うな。聖杯”戦争”はこの街で起きていて、ここは即ち戦場だ。そして戦場で飛び交う銃弾に、一般人かどうかなど区別はない。つまりこの街で真に安全な場所などどこにもない」

 まあ、テレビで戦争風景見ていればわかると思うが、知らずに巻き込まれたら流れ弾で容易く人は死ぬ。表の人間にはここが戦場って言う認識はないんだし、もしも巻き込まれたらそれはもう麦の穂を刈るように簡単に死んでいくだろう。

「そんなことは……!」

「さらに言えば守るために戦うと言うが、たとえば離れた二点の人間を同時に守れると思うか?街の反対側の人間を瞬時に助けれると思うのか?そして間に合わなかったとき、その度に嘆き悲しみ止るのか?ならその間に新しく犠牲が出るかもしれないな」

 嘗ての自分を振り返り、その失敗をさせないために言う。

「そしてお前が止まり足を引っ張れば、今度はセイバーが犠牲になることになるかもな」

「な!そんなこと……」

「例に出せばついさっき俺に斬りかかるセイバーを止めたな、令呪まで使って。俺がその気ならあそこでセイバーは死んでいた」

「………!」

 自覚があるらしく悔しそうに黙りこむ。

「人が何かを守れる範囲なんて力が及ぶ範囲、つまり両腕が届く範囲+αが精々だ。それ以上の高望みは結果的に犠牲を増やすことに繋がる事もある。それを考え自覚し思考しろ」

 話を聞いた衛宮は思考が纏まらないのか停止している。

 取り敢えず、ややと言うか思い切り極端だが自分の経験した戦争を話した。さて、持ち上げるか。

「それでも俺は………」

「それでその前提のもとでより多くの人間を助けるにはどうすればいいかなんだが………」

「…………へ?」

 衛宮の声をぶった切っていった言葉に反応する、間抜けな衛宮の声。ん、期待通りの反応で満足。凛ちゃんも呆けた顔しているのは、諦めろと諭すと思っていたのだろうな。

 まあそれはともかく、いかにも呆れたと言う風を装い、

「はぁ。言っとくが俺は一言も助けるのは無理だとか、諦めろとか言ったつもりは無いよ」

「ちょ、バーサーカー!?」

「凛ちゃん。俺の経験からして、この手の輩は回りがいくら言おうと変わらんし、実際の場面になれば後先考えずに飛び出すさ。さっきのアサシン戦みたいにな。なら悩ませるよりはまだしもましだ」

「それはそうかもしれないけど………」

「つうわけで、さっきの前提のもとでより多くの人間を助けるにはどうすればいいかなんだが、まあ簡単だ。さっきの例えなら腕を伸ばせば良い。あとは手を増やすとか動作の高速化、効率化を図るとか技を覚えるとか」

 まあ、つまりは力をつけろってことだな、要するに。

「って、そんな当たり前な事………」

「その当たり前に言われるまで気付けなかったんなら反論なんぞするなよ。まあさっきも言ったが、助けられなかった奴にいつまでも拘ってたら進めないんだ。取り敢えず泣くならこの戦争終わった後でな」

 さっきから話が二転三転してる気がするけどまあ無問題。衛宮も気にしてなさそうだし。

 結局この話はここまでと言うことになって、都合よくグゥ!と鳴らせた俺の腹の虫に従い衛宮が全員分の夜食を作った。


「そういえばバーサーカー。あなたのあの力は何なのですか?魔術とは違うようですが」

 頬をいっぱいに膨らませ、コクコク頷きながらすごい勢いで何故か十人前以上作られたチャーハンを平らげていたセイバーが、ふと思いついたようにそう言った。

 ふむ。さてどうするかと悩むと、

『どうするの?バーサーカー』

 ラインに乗って凛ちゃんの思考が流れてくる。

『まあ、わかったからってどうしようもないものばかりだしな。いいんじゃない?』

 実際セイバーには効かないんだし。

『まあ、そうね』

 凛ちゃんの許可をもらい口を開く。

「俺の能力?霊能力だけど?」

「………いえ、聞いたのは私ですけどそんなにあっさり?」

「ああ、別に知られたって対策が取れるような物は無いからな。どうせアサシンにバレまくってるんだし。同盟相手には手の内晒すのもまた一興」

 それにシリアスがあまり続くのも気疲れするし、ここらでちょいとはっちゃけてみようか。

「しかし魔術は本来等価交換。あなたの能力を教えられても私には返せるものが無いのですが」

 やっぱり真面目だな。

「なら一つ貸しとでもしておくさ。気にするな」

 いっても、無理だろうが。

 反論は聞かず、

「まずは基本。俺の能力の名前は霊能。源は霊力。とはいっても今はさっきも言った通り魔術換算されてるからな。魔術と思ってくれてていいよ」
                                 ノーアクション
「……って、ちょっと待ってください。そう考えるとあなたは無動作での魔術行使を行っている、と?」

「おう。その通り」

「なっ!?」

「まあ、セイバーには効かないから意味無いけどな」

 胸を張り堂々と、今の世界ではきっぱり非常識なことを言う。ふと隣を見ると凛ちゃんが頭を抱えて突っ伏してるけど無視。

 ただし今の俺からはGSと言う属性がごっそりと封印されているらしい。そのせいで英霊とは言えど、剥き出しの魂相手による対霊体戦闘の+補正がかからいない。

 まあ、意思あたりが封印したのだろう。あれがあると圧倒的有利に過ぎるから。

 絶句しているセイバーと突っ伏している凛ちゃんを放って置いて、手の平にソーサーを作り出し、

「まずさっき投げたこれ。名前はサイキックソーサー、ってそれは別にいいか。用途はさっき見た通り基本的に投擲、後は盾。ランクはせいぜいC−ってとこかな」

 ふよふよと浮いているソーサーを指先でくるくると回しながら説明する。次にそれを引き寄せ構成を分解、その霊力を腕の回りで再構成し纏う。

「んで、こいつが栄光の手。用途っていうか形状は手甲だな。ランクはC+ぐらい」

 そこから手の甲に集中させ、伸ばし、

「そして霊波刀。見た通りの剣だな。ランク同じくC+。って言うか、これ自体栄光の手の変形だしな」

 最後に霊波刀を消しデモンストレーション終わり。

「これで終わり。さて質問は?できる限り答えよう」

 セイバーの目を真っ直ぐ見つめる。さてこの場合どう出る?

 そのセイバーはちらりと突っ伏している凛ちゃんをみて、次に衛宮を見て、セイバーを見た衛宮と見詰め合い、しかし数秒でこっちに向き直り、

「では質問ですが、先程アサシンに斬り付け砕かれた黒い剣。あれは何なのですか?」

 そんな予想通りの事を訊いて来た。

 先程の対アサシン戦中、ゴッドハンドに守られているはずの彼女の髪を切り落としたそれに、関心がいかない訳が無い。現に衛宮も、説明していなかった凛ちゃんも顔を上げてこちらを見てくる。

 というか、あんたら二人。あれが見えたのか?

「あの剣はそれまでの物とは違い、彼女を傷つけました。あれは何ですか?」

 まあ、これも隠し立てするようなもんじゃないしいいか。

「あれの名前は『斬神刀・蛍鱗』。字の通り、神を斬る、それだけのための魔剣だ」

 もっと正確に言うなら『魔式斬神霊波刀・蛍鱗』といい、霊波刀の亜種である。同列に『神式斬魔霊波刀・竜光』というのもある。ちなみに形状は反りの入った日本刀風。

「神殺しって………最高位の概念じゃないの!?」

 凛ちゃんが思わず、という風に叫ぶ。

 無理も無い。相手を選ばない神殺しの概念などそれこそ魔剣聖剣宝具の最高位、どころか神霊神具の領域である。

 まあ、これはちょっと違うが。

「話は最後まで聞いた方がいい。あれは確かに神を斬れるが、それ以外には訓練ぐらいしか使えないものだ」

「?どういうことですか?」

「”神すら傷付ける”じゃなくて”神のみを傷付ける”概念だよ。簡単に言えば、あれは神以外の一切に傷を負わせられないんだ。例えばそこの硝子に思い切り斬り付けようが毛ほどの傷もつかないし、例え当たっても痛みも感じない」

 因みにティッシュで受け止められたこともあったりする。あの時は流石に泣きそうになったね。
       ヘラクレス
「つまりあれは、半神だから効果があったの?」

「まあそう言うことだな。ほかに質問は?」

 しばらくセイバーが何事か思い出すように顎に手をやり考えていて、その間に凛ちゃん及び衛宮からの質問に適当に答える。例に出せばアサシン戦の爆発は何かとか。ちなみに、正体はソーサーの砕けた破片とそれに偽装した超小型ソーサーの連鎖崩壊による霊的粉塵爆発である。彼女には足止めにすらならなかったが。

 そして徐にこちらを見たセイバーが発した質問は、

「あの時投げた珠は一体何なのですか?」

 これだった。まあ妥当である。順番は逆かと思ったが。

「ふむ。ああ、凛ちゃんもこれは真剣に聞いてくれ。前に教えていない部分だし、かなり切り札的なものだから。宝具に近いし」

 それでも隠し立てするほどのものじゃない。こいつらならこれで歪むような温い心をしていない。

「って、バーサーカー?リンも。そんなに重要なことをこんなに簡単に明かしていいのですか?」

「気にしないで。彼が教えて大丈夫だと判断したって事なんだから」

 そう言いつつこちらを向く目が怖かった。自分には秘密にしてたのに、この場で言うのが気に食わないって事だろう。こんな所まで、嘗ての自分の伴侶と被る。そう思うと苦笑が漏れた。

 それを見てさらに機嫌が悪くなる凛ちゃん。

「それで、バーサーカー?その珠って言うのはなんなの?」

「能力名で言えば文珠。効果は………願望器。聖杯だ」

 そう口にした瞬間部屋の中が凍りついた。その解凍を待たず、

「まあ、簡易型だから本物には到底及ばないよ。縛りはあるし万能って訳でもないし、対魔力には影響されるし単独じゃ効果が薄いし基本的に使い捨てだし」

 まあ、それでも数を揃えて完全に制御すれば魔法クラスの事、時間移動やら事故による世界移動やら条件次第では死者蘇生やらを行えるあたり反則もいいところであるが。

 それから更に数十秒三人は硬直しつづけ、俺が茶を飲み干した湯呑みを卓袱台に置いた音を合図にするように再起動、暴走した。


「こんな珠が聖杯………ね」

 再起動後の三人の爆発をかわし逸らし宥め落ちつかせてから、霊体内に収納されている文珠を一つ取り出し机の上に載せた。

「それで、どう使うの?これ」

 しばらく探るように眺めてから、文珠を注視している二人を置いておいて比較的冷静な凛ちゃんが言う。

「こう使う」

 文珠を持ち上げ、三人に見えるようにしながら念を込め次々に文字を刻む。

 『縛』『爆』『水』『火』『風』『雷』『闇』『光』『周』『病』『男』『女』

 そこで一旦止め、三人を見て

「使用者が念を込めてキーワードを刻み、それに応じた現象を具現する。刻める文字は一文字。さっきも言ったが使い捨てだ」

「ちょっと待ってください。今の口ぶりからすると、これはあなた以外にも使えるのですか?」

 セイバーが言い回しに気付いて弾かれたようにこっちを見た。

「ああ、使える。だからこそ、こいつは俺の宝具たり得なかった。それに使い捨ての宝具ってのも、な」

 何よりこれは唯一と言うわけじゃなかったしな。ただ、あの時唯一の使い手ってだけで、過去にも何人かいたし。

 まあ、俺の宝具発動にはこれは不可欠だし、切り札であることには替わりないけどな。

「んで、これを発動すると………」

 文字を刻んだまま手に持っていた文珠を握り締め、念を送り起動させる。

 すると室内を眩い、ちょっと過剰なんじゃないかと言う位の光が満たし、

 『女』


「「「な!?」」」

 一瞬後。光が消えたその場で、性別の変わった私が座っているのを視認した瞬間、三人ともが驚愕の声を上げ硬直した。

 それも当然。今自分からは見えないが、かつての世界で一時期この姿でいた時に見て、その変化に自分自身で驚いた。

 顔つき体つきは当然のように女性化、膝あたりまで伸びた髪は橙に変化し、瞳の色は深紅に染まっていた。この変化が、かつて失いもう二度と会えない二人の影響だと、見た瞬間にわかり少々複雑にうれしかった。

 ただ一点、胸だけは黒い服を存分に押し上げるほどたわわに実っていたりする。大きさなんと九十オーバー。知り合いの覗きの神様の話では、彼女たちの願望がこんな結果を導いたらしい。女性の執着心て凄い。

 ちなみに今現在、意識まで女性化していたりする。

 まあ説明はこれくらいにして、三人が戻ってくるまでゆっくりと待つことにする。

 ああお茶がおいしい。


 <後書きですたぶん>

どもです。お待たせしました。

やっぱり遅筆です、ごめんなさい。

今回説明ばっかでしたがいかがでしたでしょうか。
かなり独自設定で突っ走ってますけど、なんとかバランスをとろうと四苦八苦してます。
口調がおかしかったり、性格がおかしかったり、設定がおかしいなどのがあればご指摘ください。

光の御子を三番目の子供にしようかちょっと悩みました。赤い槍と全身タイツ繋がりで。
意味が無いので止めましたけど。

最後のは、かなり微妙ですね。
シリアスで通そうか迷いました
不評でしたらこの部分だけ書き直すかもしれません


 ではレス返しをば

○スレイヤーさま
ご指摘ありがとうございます。
改定作業中に送っていただいたようで、この場でお礼申し上げます

○なまけものさま
刀の蛍鱗についてはその通りです。ただ、そのうち出すと思いますがあれは砕かれたわけじゃありません
天龍とパピの子供の蛍鱗は言われて気付きました。特に意味は無いんですが、刀が先ですんでその名前を貰ったと言うことで。
ちなみにナルバレックと一緒にいたのは穿鱗竜です

○綾辻雪菜さま
はじめまして。応援ありがとうございます
えっと、あの三倍は量の事ではなく時間のことなんです。一ヶ月の予定でしたんで。
紛らわしい言い方ですみません

○影mk=2さま
マジですか!?
知りませんでした。ぬぅ、どうしよう………

○蝦蟇口咬平さま
はじめまして
しまった。父親経由の情報源考慮外でした。この設定使ってもいいですか?
アーチャーの狙いは、まあおいおい明かしていこうと思います


 ではでは

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭

e[NECir Yahoo yV LINEf[^[z500~`I
z[y[W NWbgJ[h COiq@COsI COze