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▽レス始

「.hack//Splash login_4(黄昏の腕輪伝説+.hackシリーズ)」

箱庭廻 (2006-10-21 04:07)
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【CC社 オンライン管理区域】


『……“アウラ”が?』

「はい。ユーザーとの第一接触があったと思われます」

『なんと!』

『あのアウラが……』

『イレギュラーだ』

『何が起こる?』

『危険な兆候だな。管理者バルムンクよ』

「……それほどとは思えませんが。ザ・ワールドのサーバーは正常です、重大なウイルス感染もありません」

『戯言はいい。貴様は憶えていないのか、四年前の【黄昏】を。忌まわしき娘だ……奴の存在があったためにあの事故は起きたのだぞ』

「……」

(責任転嫁か。対応が遅れたのは静観していた貴様らの所為だろうに……)

『……それでアウラはそのユーザーと接触して何かしたのか?』

「“いえ、何も”。目立った変化は見当たりませんでしたが」

「そうか。ならば、引き続き監視を続けろ。あの忌まわしい事故の再発だけは防がねばならん」

「わかりました。それと意識不明になったデバッカーの件ですが……そちらの方を調べるべきではないのですか?」

『その件ならば現在調査中だ。管理者如きが口出す問題ではない』

「……」

『もう下がっていい。命令は追って伝える』

(……無駄だったか)

 私は密かにため息をついた。


【.hack//Splash】
   login_4 レアハンターと勇者さま


   【LOG IN】


【△ 水の都市 マク・アヌ】


 ストンと光のリングを抜けて、着地する。

「やれやれ……前回はひどい目にあったなぁ」

 数日前の記憶を思い出しつつ、俺は頭の帽子を直した。

 少なくともザ・ワールド初体験としてはロクでもない体験に間違いあるまい。

 ……いや、美少女とのキスは素敵な記憶だったけどね。

「んで、レナはどこだ?」

 今回もプレイする切っ掛けとなった妹の姿を探そうと、首を回し――

「ばあっ!」

「ごふっ!?」

 目の前に突如出現した妹の顔に、俺は吹きだした。

「レ、レナ?! びっくりするだろが!」

「ごめん、ごめん」

 そんなに驚いた俺が面白かったのか、腹を押さえてケラケラ笑っているレナ。

 この妹は清純そうなフリして、けっこうこういう悪戯が好きなのだ。

 子供っぽいといえばそれまでだが、相変わらず精神的に成長してないなぁ。

 俺を見習えばいいのに。

「って? あれ?」

「どうしたの、シューゴ?」

「あのオウルってやつはどした? 何か誘うってさっき言ってなかったか?」

 つい数時間ほど前に妹からかけられた電話内容を思い出しつつ尋ねると、レナは罰悪そうな表情を浮かべた。

「ん〜、オウルさんなら何か都合悪いらしくて今日これないんだって」

「そうか。まあ向こうの都合もあるしな」

「で、でも次回はなんとか時間空けるって返信きたよ」

「……そうか」

「なんで声が暗いの?」

 いや、なんか兄的にビンビンやばいセンサーを感じるんだなこれが。

 悪い奴じゃないと思うんだが、危険な予感がする。

 ――とまあ、そんな些細なことはおいといて。

「……んで? 今日はどうすんだ? またダンジョンか?」

 マニュアルを見直し、バッチし装備もしたので戦闘意欲は満々だぜ!

「んー、外れ」

「んじゃ、なんだ?」

「ザ・ワールドの楽しみ方はバトルだけじゃないよ。今日はイベントに参加するの」

「イベント?」

「まあ広場に行ってみようよ。そうすれば分かるよ」

 そういって、レナは背を向けて歩き出す。

 俺は慌ててその背を追うことにした。


「にゅふふふ。み〜つけた」


【Δ 水の都市 マク・アヌ】


 ガヤガヤガヤ。

 タウンの中心部。でっかい大橋を越えた先にある広場には、数え切れないぐらいの無数のPCたちが何故か蠢いていた。

 まるで蜜に集るアリの如き光景。

 なんだ?

「なんか混んでるなぁ」

「シューゴ! こっちこっち!!」

 そういって、いつの間にかレナが群れる人ごみの中へと入り込んでいく。

 わらわらわら。

 俺も慌てて追うが、いかんせん人が多すぎる。中々進めない。

「まっ、まってくれぇ〜」

 人ごみを進む。

 人ごみを進む。

 でっかい剣士の方々の股の間をかいくぐり、

 群れる女性PCたちの横をあくまでも偶然的にすれ違い、

 全身甲冑のPC方に板ばさみのペンチプレスにされながら、

頑張って人ごみを抜ける俺。

 そうして、ようやくレナに追いついた。

「おぉい、レ〜ナ〜」

「あ、シューゴ。これ見て」

 そういって、レナが指差したのは広場の中央に突き刺さった一本の看板。



 201X年 X月 X日
 【トレジャー・イベントのお知らせ】
 管理人:バルムンク

 >ALL
 参加者はカオスゲートから エリア【Δ 広き 恵みの 大地】に集合!

 イベントは限定100名さまに。
 皆様方の冒険を素敵に彩るプレゼントアイテムを用意しております。
 これで仲間との親交がグッと深まるかも!?
 ぜひ『パンプキン・パイ』といっしょにどうぞ!
                                              』


 そこにはそんな言葉が書かれていた。

「トレジャー・イベント?」

 なんだそれ?

「ようは宝探しだね・ザ・ワールドじゃあこういう一日限定のイベントが周期的に行われて、それを目当てにプレイする人も多いの」
 なるほど。

「宝探しか……中々心惹かれる言葉だなぁ」

 思い出すのは昔テレビでやっていた埋蔵金の発掘とか、恐竜の骨の発掘とか、鞭持った考古学者の大冒険シリーズ。

 ときめく冒険。

 溢れるサスペンス。

 そして、生まれるラブ。

 ……いいかも。

「シューゴってこういうの好きでしょ?」

「おう!」

 キュピーンとマイシスターにサムズアップ。

「じゃ、さっそくいってみっか。 エリア【Δ 広き 恵みの 大地】だな」

 さっそくカオスゲートに向かうべく、回れ右した。

 ――あれ?

「……人ごみがなくなってる」

「もう皆行ったみたいだね〜」

 早っ!?

 苦労して人ごみ抜けた俺の努力は?!

 っていうか、気配すら感じなかったんだけど!!?

「行くぜ、レナ!! 冒険とお宝と美女が待っている!!」

「いや、美女はどこにも書かれてなかったんだけど?」

 ぬおおおおおおおおおおおおおおおおお!

 俺は全力でカオスゲートへと走り出した。


「チャ〜ンス☆ 到来!」


【Δ 広き 恵みの 大地】


 トレジャー。

 それはいつの時代も男の心を熱く燃え上がらせる言葉。

 男ならば一度は冒険という言葉に心を踊らせたことがあるはず。

 待つのは地獄の迷宮か。

 それとも冥府に通じる谷底か。

 はたまた罠の巡らされた古代遺跡か。

 いずれにしてもただではおかないだろう。

 ――覚悟を決める。

 いかなる障害が現れても屈しないように、覚悟を決めた。

 そして、見える光景。

「着いたか!」

 カオスゲートを抜け、目的のエリアに着地する。

 そして、目に飛び込んできたのは。

「……畑?」

 見渡す限りの牧場。

 というか菜園。

「なんじゃこりゃあああああああ!!!!」

 お、俺の冒険はどこにいった!?

「カントリーだねぇ……というか畑?」

 数秒遅れて転移してきたレナが、ボソリとそういった。

「い、遺跡は? 迷宮は! 険しい谷底はどこにいった!?」

「それはもっとレベルの高いサーバーにいかないとないよ」

 裏切ったんだな!?

 俺の期待を裏切ったんだな!?

 畜生がぁ!

「のぉおおおん……」

 返せ、俺の心のトキメキ。

「……何考えていたのか大体予想つくけど、ツッコまないからねシューゴ」

 いや、ツッコんでくれよ。

「んで? お宝はどこだ?」

 スクッと見せ掛けだけの復活を遂げて、俺は立ち上がり、周囲を見渡した。

 一面見渡す限りの大畑。

 ちょろちょろと他のPCも見当たるが、同じように回りをキョロキョロと見渡し、なにやら探しているのか走り回っている姿が見える。

「ん〜。定番ならダンジョンか何かに潜って宝箱を開けるんだけど……ダンジョンは見当たらないけど……」

 そういって、レナは手元に丸っこい水晶みたいなのを取り出した。

「なんだ、それ?」

 綺麗な水晶みたいだけど。

 そう思って、顔を近づけると……

『チチチ』

 ――水晶から小さな人影が現れた。

「うわっ!?」

 驚いて飛び下がると、その水晶からまるで抜け出るように小さな人――羽を生やしたファンタジー風の小人が現れる。

 クルクルと空中を舞い踊る小人。

 そう、その姿はまるで。

「よ、妖精?」

 童話に出てくる妖精のようだった。

 そして、俺の見ている前で妖精(?)らしき小人はボソボソとレナの耳元に囁くと霞のように虚空に消えた。

 その光景に目を丸くしている俺に気が付いたのか、レナが振り返って説明してくれる。

「これは【妖精のオーブ】 エリア内の魔法陣やダンジョンの位置を教えてくれるの」

「な、なるほど」

 本格的にファンタジーの世界だな。

「んで、その結果なんだけど……やっぱりダンジョンはないみたい」

「ん〜。じゃあ、どこに宝があるんだ?」

 あるのは畑だけみたいだし。

 ……この作物がお宝とか? んな馬鹿な。

「ん〜」

「ん〜」

 二人並んで唸りだす。

 その時だった。

「ニュフフフ。お困りみたいだね〜☆ そこのお二人さん」

「え?」

 不意に聞き覚えのない声がした。

「だ、誰!?」

 俺とレナは慌てて回り見渡すが、周りに人影は見あたらない。

 ――いや。

「上か!?」

 咄嗟に見上げたのは上空。

 何故か不自然に畑に生えていた木の上へと視線を向ける。

 そこには。

 白いローブとウサギの耳のように長いフードを被った少女が立ち、その手にはファンタジーに出てくる魔法使いのような杖が握られている。

 ――呪紋使いってやつか!?

「な、何奴っ!?」

 思わず俺はそう叫ぶ。

「良く聞いてくれた!」

 クルクルと手に持った十字の杖を回転させ、ビシリと構える少女PC。

 キラーンと逆光がきらめく。

「――天が呼ぶ! ――地が呼ぶ! ――なによりレアが呼ぶ!! 人呼んで、愛と勇気のレア☆ハンター! ミレイユちゃん参☆上!!」


 濃っ!?!


「トウッ!!」

「なっ!? 飛び降りる――」

 ミレイユと名乗った少女は掛け声を上げて――

 木を下り始めた。

「……」

「……」

 よいしょ、よいしょ、と頑張って下りる姿は見なかったことにしよう。

 うん。

「フフフ、お二人さん困ってるみたいだね」

 降りてきて開口に言ってきたのはそんな言葉。

 いや、困ってたのは数秒前のお前じゃないのか?

「どうせお宝の探し方も分からないんでしょ?」

「ん? ま、まあな。そっちこそ分かってるのかよ?」

「ニャハハハ。レアアイテムに関してはミレイユちゃんに不可能はないのだ」

 ミレイユと名乗ったPCはクルクルと杖を回すと、ビシリとこちらに突きつけた。

「教えて欲しいのかなぁ?」

「あ? あ〜、教えてくれるなら……」

「ちょっとシューゴ!」

「あ? どうしたレナ――」

 いきなり、レナに腕を引っ張られる。

(ちょっとマズイよ)

 引きずられるように数メートル離れると、レナは囁きかけるような小声で言ってきた。

(マズイ?)

(あの子。レアハンターって言ってたでしょ? レアハンターっていうのはね、名品・珍品をとにかく集めるコレクターなの! きっと何か裏があるに違いないよ)

(……裏?)

 そういわれて、俺はミレイユの方へと目を向けてみた。

 にぱっ。

 笑顔を向けられた。

(そこまで悪い奴には見えないけどなぁ……)

(だから、シューゴは無計画なの!! 絶対将来結婚詐欺とかにあうんだから!)

 いや、そんな大げさな。

「ねーねー、隠し事は良くないよ〜! 別に変なことたくらんでるわけじゃないんだから。ねえねえ聞いてる?」

(……ああ言ってるけど?)

(んー、じゃあ話だけでも聞いてみるわね)

 そう結論付けると、レナはズカズカとさっきまでの位置に戻った。

「それで? あなた、何が目的?」

「え? 目的? そりゃあレアアイテムが目下の目標だけど?」

「そうじゃなくて! いきなり話しかけてきた理由!!」

「ムムッ。鋭い指摘だね!」

 ガビョンとでも言いたげに、ビックリした表情を浮かべるミレイユ。

 まるで百面相みたいだなぁ。

「んー、時間もないし、まだるっこしいこともこのさい面倒だし……じゃあ、本音! ねえねえキミたち、ボクと手を組まない?」

 は?

「エエーー!!? な、なんで?」

「だってぇ、ボク君たちにすっごい興味あるし〜、“この前の腕輪も凄かったよね”」

 そういって、ミレイユが手元からスクリーンパネルを出現させた。

 それに映っていたのは見覚えのある光景。

 鎧超将軍に向かって、腕輪を発動させている姿。

「もしかして、いたのか!? あの時!?」

「そりゃもうバッチリ☆ 凄い腕輪だよね。しかも君たち、限プレキャラ☆ もうレアの香りがプンプンするんだよ!」

 ビシリと不敵に微笑むミレイユ。

「それに――君たちまだレベル……低いんでしょ? 高レベル呪紋使いが居たほうが有利だと思うけど……」

 うっ! それを言われると痛ひ。

 結局この間レベル上げ出来なくて、レベル1のままだしなぁ。

「うーん、分かったわ。じゃあ手を組みましょう。丁度援護キャラも必要だと思ってたし」

 レナ!?

 俺の承諾無し!? いや、反対する気はないんだけどね。

「わーい。じゃ、これがボクのメンバーアドレス☆」


 ――ミレイユのメンバーアドレスを取得しました。


「改めてよろしくね。ボクはミレイユ。呪紋使いだよ☆」

「私はレナ。重剣士よ」

「お、俺はシューゴ。双剣士だ」

「OKOK! これで仲間げっちゅー!」

 クルクルーとその場で楽しげに回転し始めるミレイユ。

 にゃははーと笑っている姿は明るい感じだ。

(次から次へと色んな奴が増えるな〜、ネットワークゲームってのはこんなもんなのか?)

「取り合えず一応他にも双剣士でオウルって人がいるんだけど、また今度紹介するとして。それでさっき言ってた宝物の探し方って奴教えてくれる?」

「ん〜、いいよ〜」

 そういって、ミレイユはひょいっと杖を突き出した。

 ――足元の地面へと。

 正確には畑に埋まっている大根らしき物体にだ。

「ソレだよ」

「は?」

「シューゴ。抜いてみてくれる?」

「お、おう」

 恐る恐る地面に埋まっている茎部分を引っ張ってみる。

 ――ズポッ!

「ぐおっ!!」

 そうして、出てきたのは巨大な大根……っていうかハート型のカブ?

「うわぁ、でっかーい。プチグソのえさかなぁ?」

「でけえなぁ。なんか大きさが俺ぐらいあるぞ?」

 直径一メートルを超えそうな巨大ハートカブ。

「んで? これをどうすんだ、ミレイユ」

「んー、そのまま持っててね」

「おう?」

 言われたとおりにカブを握り締める。

 ――キュピーン。

 その瞬間、ミレイユの目が光ったような気がした。


「――往生セイヤァアアアアアアアアア!!!!!」


 突如振り下ろされる凶器。

「ハイいいいいいいいい!?!?!?」

 ズバシュッ!

 そして、真っ二つになる俺の身体……

 じゃなくて。

 パカッと野菜が真っ二つに分かれた。ミレイユの杖の一撃によって。

 そして、ポンッという効果音と共に野菜の中から宝箱が現れる。

「よーし、ビンゴ!」

 ガッツポーズを決めるミレイユ。

 しかし、俺はそんな気分になれない。

「びっ、びびったよ〜」

「よしよし」

 あれは完全にヤル気の目だったよぉ。

 妹に慰めてもらう俺。

 あれ? なんか最低じゃないか?

「シューゴたちも探しなよ〜。ボクコレあけるからさぁ」

「お〜う」

「OK」

 パカッという宝箱を開けたであろう効果音を聞きながら、俺とレナは野菜を探した。

 さっそく次の野菜を引っこ抜いて、パカパカ開けていく。

 そして、出てくる野菜からの宝箱。

「さぁて、何が入ってるのかなぁ?」

 ――パカッとな。

「……?」

 開けてみると、その中身は非常に形容しがたいものが入っていた。

「おーい、レナ。そっちに何入ってた?」

「……スカだって」

 ピラピラと『スカ。 By バルムンク』 と書かれた紙を見せるレナ。

 そうか、そうか。

 はずれも入っているのか。

 道理で納得。

「シューゴはなぁに?」

「なぁレナ……細長い数本の筒に細い紐が付いていて、その上にチックタックと時を刻む時計が乗ってるガムテープで巻かれた物体ってなんだと思う?」

「へ?」

 なんか昔のドラマでみたことがあるような気がしますよ、コレ?

 具体的に言うとアクション系の爆破シーンがあるやつ。

 さて、皆さんご一緒に。


 どっかーんっ!!!!


 俺たちはものの見事に宙へと吹っ飛んだ。

 あははは、人って空を飛べるんだなあ。

「こんちくしょー!」

「トラップ付きだったのねー!」

「もう俺の人生こんなんばっかりだぁ!!」


【Δ 広き 恵みの 大地】


 それから探す探す。

 野菜を引っこ抜いては叩き割り、宝箱を叩き割ってはスカの紙を引き当て、怒り狂って投げ捨てれば勢いあまって開けてなかった宝箱を開き、その中に仕込まれていたパンチングマシーンに顔面殴打されるような時間が経過した。

 遠くの方からおんなじような悲鳴が聞こえたりするから、きっと他のところも同じ目にあっている模様。

 もう見当たる限りの野菜を引っこ抜いた頃だろうか。

「うきゃああ!!! このイベント企画した奴出てこーい!!」

 ミレイユが切れた。

 まあ俺も切れたい。

「イベント企画した奴って……」

 記憶を回想してみよう。




 201X年 X月 X日
 【トレジャー・イベントのお知らせ】
 管理人:バルムンク

 >ALL
 参加者はカオスゲートから エリア【Δ 広き 恵みの 大地】に集合!

 イベントは限定100名さまに。
 皆様方の冒険を素敵に彩るプレゼントアイテムを用意しております。
 これで仲間との親交がグッと深まるかも!?
 ぜひ『パンプキン・パイ』といっしょにどうぞ!
                                              』


「……の管理人のことだろ? 確かバルムンクって奴」

「う〜、そいつマジで性格悪いわ」

「確かにね、この妙〜に凝ったイベントぐあいといい、よっぽどの性格破綻者だわ。きっとねー」

 そういって、サラサラと爆風で更地と化した地面に指を走らせるレナ。

 そうして描かれたのは……ワイン片手に、猫らしき物体を膝に抱えたでぶった男の絵。

「こんな感じにニヤニヤとプレイヤーが苦しんでいるのを見ているマゾヒストよ!!」

「アハハハハハ!! 見たことないけど、似てる似てる!!」

(うわー、好き放題言ってるなぁ……)

 同情するぜ、バルムンク。


 ――クシュンッ!!


「ううう、早くしないと先着100名様がなくなっちゃうヨ〜」

「でも、探せるだけ探したぜ?」

「まさかとは思うけど、エリアが間違っているとかそういうミスはないわよね?」

「んな訳ないよ〜、ちゃんとコピー取って場所確認してるんだから」

 そういって、ミレイユが先ほどと同様にスクリーンパネルを出現させる。

 それを覗き込む俺たち。

「ほら、ここだよ。ちゃんとエリア【Δ 広き 恵みの 大地】って書いてあるし」

 確かにな。

 ちゃんと名前はあってるし。

 ん?

「そういやさ」

「なに?」

「この『パンプキン・パイ』と一緒にってどういう意味なんだろうな?」

 腹が減ってきたので、思わずそこに目を止めた。

「!」

「!?」

「ザ・ワールドでレストランってあるのかなぁ……ってなに!? なんで走り出すの!?」

 いきなりレナとミレイユが走り出す。

 慌てて、俺も追いかける。

「なっ、おい! どうしたんだ!」

「シューゴナイス!!」

「へ?」

「簡単な指摘だったんだ! ここは畑、パンプキン・パイっていうのはカボチャ。つまりカボチャを探せって意味だったんだよ!! 多分」

 な、なるほど!

「って、見つけたぁああ!!」

 走り出して数分と立たずにミレイユが歓声を上げる。

 その視線の先を辿ると、緑色の丸い物体が畑に転がっているのが見える。

 ――カボチャだ!

「レアアイテムゲットオ!!!」

 ガシッと抱きついて、カボチャを手に入れるミレイユ。

「よっしゃ」

「これでクリアね!」

「いぇーい!」

 カボチャを掲げて、喜び勇むミレイユ。

 その時。


 BATTLE MODE ON


 ディスプレイにそんな一文が映った。

「へ?」

『ケケー!』

 そして、突如聞こえた奇声。

 その発生源は――カボチャ!?

「ミ、ミレイユ!!」

「わわわ!」

 ポイッとミレイユがカボチャを投げ捨てる。

 だが、しかし。そのカボチャは空中で滞空すると、ボンッと爆発するかのような音を立ててナイフを持った二本の腕を生やし、その中心部に二つの空洞を開かせる。

『ケケー!!』

 ――【パンプキン・ヘッド】

 そう表示されたモンスター。

 ようやく宝物を見つけたと思ったのにモンスター。

 ………………

『ケケー!』

 ジャキッ。

 ――剣を抜く。

 レナは背に背負っていた大剣を抜き放ち、ミレイユは杖を構える。

 ギラリと目を向け、俺たちは元カボチャに武器を向ける。

「なんかもー」

「色々とムカついてるから」

「ボコすね☆」

 俺たちはもうなんかそのまま全力でカボチャを袋叩きにした。


【Δ 広き 恵みの 大地】


 グツグツグツ。

 元カボチャがそこらにあった鍋で煮込まれる音を聞きながら、俺たちはカボチャが隠し持っていた宝箱を開こうとしていた。

「中身なんだろうね? 冒険を彩るっていうけど……」

「レアレア〜♪」

「まてまて。今開けるから……」

 カパッ。

 木製の宝箱を開くと、その中には折りたたまれた服らしき物体が入っていた。

 しかも、なんか妙に色が濃い。

「ん? 装備品かな〜?」

「取り出してみるぞ〜」

 中にあった物体を引っつかみ、周知に晒す。

 そう、それは。

「メイド服!?」

「割烹着!?」

「んで、首輪〜」

 ――どう形容すればいいんだろうか?

 っていうか、これは……

「うわぁ、超専門趣味なんだけど……なにこれ?」

 また……

「濃いね〜」

 なんというか……

「……ってシューゴ?」

 首輪。

 メイド服。

 割烹着。

 ……もやもや〜。

「――何を想像してんのよ!!!」

 バキィッ!!!

 顔面に突き刺さるレナの強打。……想像する暇もないのか、俺には。

「ねー、これボクがもらっていっていい?」

「どうぞ。むしろいらないし」

「ありがと〜。レア、レア〜」

 いそいそとミレイユは服を集め終えると、ペコリと頭を下げた。

「今日はありがとね」

「いや。こっちが助かったぐらいだし」

「また今度機会があったらボクのホームに案内するね」

 おー。

 そりゃ楽しみだ。

「それじゃ」

「んじゃな」

 お互いに手を振って、別れた。


 それが俺たちとミレイユの出会いだった。


「おにいちゃん」

「なんだ?」

「変態」

 グフッ!!!

 兄の心に9999ダメージ!!!!


 おまけ


【CC社 オンライン管理区域】


「バルムンクさーん。この間のイベントで大量の苦情がきてますよ〜」

「……うーむ、近頃の趣味はこうだったと思うのだが」

「どこから仕入れたんですか、そんな情報?」

「いや、近くの喫茶店がそんな感じだったのだが。おかしいなぁ」

「○イドカフェですか」


あとがき

 シリアスばっかりだった話も一転してほのぼの(?)に。
 本来腕輪伝説はこういうノリのはずなんです。
 でも、自分が書くと黒くなる……何故だ。

 次回はようやく神拳の娘さんが出そうです。

 桜舞う並木で、血飛沫舞うか。
 次回本格戦闘に移行します。


 というわけで、ついに五回目のレス返し
 っていうかカウントしてみたら倍の10件になっていて恐怖しました。


>ロードス様
 >“1日1時間ということで・・・途中シューゴとかよりLV低くなりそうですねw”

 シューゴたちと違ってレベル上げに時間を割くことが出来ませんから、調査に行ったエリアでモンスターを倒すぐらいしか経験地が稼げません。
 でも、シューゴたちが普段向かうダンジョンよりも多少高レベルなエリアが多そうですから、それでなんとか追いついていってもらうつもりです。
 ……回復アイテムが足りるかなw?


>STERNA様
 お察しの通り、カイトこと如月 陸のお父さんは職業料理人というわけではありません。
 話が進むうちにリアルでの話も展開しますので、そこでどういう人物か分かると思います。

 >“オウルの正体を知る連星”
……その返答はレス返しの最後を見てください。


>グラム様
 おおお、AIバスターを知っている人がこんなにもw 個人的にはZEROやSINGよりマイナーかと恐れていたのですが、知っている人は知っていますね。
 それとは真逆に漫画版は知っていても、アニメ版の腕伝は知られていないようで、ああやっぱりという気持ちになってしまいました。

 ちなみにマメ知識ですが、ノートゥングはグラムの別名で、解釈によって同一の剣だそうです。
 どういう剣か調べると、先の展開が予想出来るかも?(裏切りますが)


>盗猫様
【連星】→****(自己規制)
 ……隠してない。 隠してませんよ! 伏字の意味がありませんがな! ○を抜いたらまんま本人の名前ですがな!!(思わずなまってしまいました)
 メンバーの正体当てに関しては、上記を見てください。
 そして、下を見てください。
(決して嫌がらせではありません)

 >“チートアイテムについて”
 腕輪の代わり……というよりも護身用のアイテムです。
 正規キャラだとウィルスバグみたいなのが出たら意識不明者へと一直線ですので。
 皆様が想像しているような凄いものでは多分ありません。一応イレギュラー用のアイテムですが、どちらかというと“腕輪を生かす”サポート用武器になるかと。
 シューゴたちにはちゃんと活躍してもらいますので、ご安心くださいw

>“某人狼娘のファンです” 次回大活躍です!


>SS様
 直球と見せかけて、ナックルボールを投げる男ですのでお気をつけて。

 >“なんかなあ、あなたは、どうしてこう読みたかった物を直球で作ってくるかな!?”
 何故作るかと言われたら、自分が見たいからだとしかいえませんねw

>“二件目のレス”
 ……ノーコメント(ニヤリ)


>夜偽様
 ゲームをプレイ済みでしたらご存知でしょうが、ビトから渡された双剣はそんなにレベルが高くありません。ゲーム的にも精々レベル10ぐらい上のモンスターと戦うのが限界です。 (私はレベル60ぐらいで80のエリアを攻略したことがありますが……まあ例外で)
 プレイスタイルにも一応限界はありますので、そんな無茶はしないつもりです。

>“シューゴの存在意義が見事に無くなって行きそうですねww”
いえいえ、彼はこれからの物語の中心人物ですよ? 成長すればきっと強く……なるのかなぁ?(漫画とアニメを交互に見たのちに、遠い空を見上げる)

>“貴女様の予想が大当たり”
誤字でした(謝罪) 正解→貴方様


>ATK51様

 >“アニメの腕伝”について
 実際自分も見たときはなんだこれ? と思いました。その前にやっていたSINGの印象が強すぎたのか、それともラブコメというジャンルが理解できなかったのか。
 漫画版ならまだ許せるんですが、アニメはちょっと納得いかない部分が当時ありましたね。
 でも本筋はシリアスですし、背景を考えればおや? と考えられる部分があります。
 そこを上手く使っていこうかなぁ……と。

 二代目レアハンターにはこれから頑張っていってもらうので、出来るだけ本物らしいよう頑張りました。でも、まだまだ難しい……

 >“やはり最終的には原作準拠“
 ……さて、どうなりますかね?


>焔片様
 どうも初めまして。
 知らない人でも楽しめる作品を目指してますので、次回もお楽しみにください。


>アッシャ様
 えっ、ちょっ、あなたオウルに何をさせる気ですかw!?
 そんな堕とすだなんて人聞きの悪い……精々相手の武装よりも高いレベルの装備をプレゼントしまくるのが関の山ですよw
 え? 気前がいい? そんな、大切な仲間に上げるのは当然じゃないか。
(というのが奴の基本ですね)


正体当てについて


 惜しい!!


 ――以上です。
 “一人で全部当てた”人はいません。


 正解は登場をもって、答えたいと思います。
 ヒント:別々の作品から一人ずつ選抜しています。複数の作品に跨って登場している人もいるのでお気をつけて。
 補足:G.Uではいません。勘違いしそうですから付け加えますが、小説版四部作も含まれます。

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