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「鬼畜世界の丁稚奉公!! 第三話(鬼畜王ランス+GS)」

shuttle (2006-10-13 22:53/2006-10-14 07:48)
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ランスがリアの寝室に担ぎ込まれてから2日経った。
しかし、未だ目覚める様子はなく、ぐ〜すかと眠り続けていた。

「ダーリン・・・」

「リア様には他に為さらねばならない仕事があります。ランス殿の世話は侍女にお任せしてください」
傍らで控えているマリスがリアに対して窘めている。

「いやいやいやっ!ダーリンのお世話はリアがするのっ!」

リアはあれからほぼ付きっ切りでランスの世話(意外にも介護チームへの指示は的確であり、手際も悪くは無かった)をしている。

例えどんなことがあろうと、最終的にはリアの我侭は全て叶えてきたマリス。
政務一切を取り仕切るマリスとて、リア自身にやってもらわなくてはならないことも勿論ある。(それでも最小限にまで減らしてきたが)

結局、優先順位の高いものから少しずつ繰り上げて書類に判子だけでも押してもらうよう手配することにした。


〜鬼畜世界の丁稚奉公!!   第三話「鬼畜王と!」〜


―マリス・アマリリス専用執務室―

―翌日

「じゃあランスさんはまだ眠ってるわけっスか・・・」

「はい、見たところ大きな怪我があるわけでもなく、原因はただの疲労としか思えないのですが、それよりも・・・」

現在、横島とマリスは執務室でお茶を飲みながら雑談をしていた。
リアが政務にまったく手を付けないため、その尻拭いとして山のように溜まった書類の半分ほどが片付いたばかりである。

横島はというと、マリスに与えられた部屋の隅の机でこの世界の常識のお勉強をしていた。

(ドキドキワクワクのオフィスラァァブ!)
と、胸中で叫んではみたものの、マリスのガードの固さはあの美神令子でさえ比較にならないほど鉄壁であった。
加えて大人の余裕というか、横島を軽くあしらう言葉一つをとってみても貫禄があり、どこかグレート・マザー百合子を彷彿とさせるあたりが横島に対して無言の脅迫となった。
そして丁稚となって奉公を始めて早三日目、横島にとってマリスは手出しできない雲上の女性、という認識となったのであった。
だって怖いんだもん。

しかし、マリスの美貌、色気、スタイルの良さに溢れんばかりの知性は隣に居るだけで横島の煩悩を充分に満足させるものであり、意外ではあるがマリスと横島の雇用関係は実に良好といっていいものであった。

一方、マリスはマリスで意外すぎる横島の能力の高さに驚いていた。
その一つが識字能力。
言葉こそ通じてはいたものの、この世界で一般的に使われている文字を横島は当初、まったく理解できなかった。
だが、口頭で意味や文字の種類を説明することは可能だったため、一通り教えた後は普通の語学の教材を与えただけで横島は半日で日常で使う公用語ほぼ全てを<学><習>したのだ。

・・・種明かしをすれば文珠2個を使ったドーピング紛いの習得であったが、これも横島の能力ゆえ非難されるものでもないだろう。


そしてマリスは周囲に対し、横島が『異世界人』であることは無用の混乱を避けるためにも隠してある。
現在、大怪我を負い床に伏しているリーザス救国の英雄ランスを助けたJAPAN人、その腕前を見込んでマリスが個人的に雇い入れた、と説明してあった。
素性こそ知れないものの、マリスがリーザスに仇なす者を迎え入れる訳がないため、横島はいとも容易くリーザス城に受け入れられたのであった。

・・・今の時点では、だが。


―閑話休題


「リア様が心配、と・・・」

「ええ・・・ランス殿の側から片時も離れようとせず、御自身の健康も省みることも無く看病をなさっています」

(本当にただ寝てるだけなら文珠<覚>を使えば一発だろうけどな・・・)

心の中でちらっと考えが浮かぶが、すぐに打ち消した。
数に限りのある『切り札』をこんなコトで使うのは馬鹿らしいし、眠る王子様を起こす役など死んでも御免だからだ。


「・・・ところでマリス様、この世界地図なんっスけど・・・・・・」

横島は先ほどまで使っていた教材、この大陸の世界地図を片手にマリスに質問をしていた。
そこには何やらでっかい4匹の怪獣みたいな生物が空中に浮かびつつ、一つの大陸を下から支えている絵図があった。

「これってこの世界のコトっスよね?実は想像図だとかじゃないんっスか?」

横島の疑問は当然である。
元の世界でも、かつての大陸の想像図として巨大な亀が平らな大地を支えている、というものがある。
他にも、地中海にいた時代錯誤な吸血鬼がこれと似たような世界地図を掲げていたことを思い出す。

「いえ、これは実際の測量を元に作られた現在で最も正確な大陸地図です。横島殿のいた世界の大陸はどのように出来ているのですか?」
逆に質問をされてしまった。

こちらの世界では、厳然たる事実として世界は「平べったい」のだ。
そこにはなんの疑問も挟む余地は無い。
大陸の端から見下ろせば「何も無い」真っ暗闇な空間がそこにある。

次々に湧き出る疑問を横島はマリスに質問したが、どうやらこの世界は本当に平べったいことが判る。

そして横島は自分の元いた世界は球体で出来ていることを説明した。

そのことを聴き随分と興味深そうに、そして困惑しながら横島に質問する。
「しかし・・・大地が丸いとなると、下のほうに住む方々はどこかに落ちてしまわないでしょうか?」

マリスほど知性溢れる女性が大真面目に口にした言葉が横島には面白くて思わず苦笑しかける。

しかし、元の世界でもかつてはそのように世界はある、と考えられていた。
横島自身、学校で習うまでは自分が立っている地面が球体で出来ているなど思いつきもしなかったし、日常生活でも地球は丸いのだ、などと一々考えないため、ロクに学業を修めていない横島にはマリスに対して理論立てて説明できない。
特にマリスほど聡明な人物であれば、下手な説明をしたところですぐにボロがでる。

「えーと・・・、俺らの世界で昔、ニュートンっていう偉い学者がいまして――」

うろ覚えの有名な逸話を語りだす。

「――で、リンゴが樹から自然に落ちるのを見て『万有引力の法則』というものを発見したそうっス。まぁ、俺もよく解ってないんっスけど」
あはははは、と誤魔化すように笑い声を上げる。
取ってつけたように『重力』がどうとか、物体が地面へ落ちる理屈を説明している。

「・・・はぁ、興味深い話ですが、今ひとつ理解し難いですね・・・・・・」

明らかに横島の理解&説明不足ではあるが、彼の物理や科学の知識は中学生レベルで止まっているためこれが精一杯であろう。
横島自身、それがよく解っているため、これ以上のボロを出す前に話を打ち切ることにした。


他の話題を探そうと横島はマリスの視線から逃れるように首を回す。
ぐるりと見渡し、やがてマリスの机に山と積まれた書類に視線を止めた。

数瞬後、不意に脳裏に閃くものがあった。

「・・・ところでマリス様、いいアイデアがあるんっスけど」

横島が思いついたアイデアとはランスを文珠で起こすことだった。
これは先ほども考えたことだったが、確かに自分自身が文珠を使うのは御免であったが、少しやり方を変えればリアやマリスに少なからぬ恩と良い印象を与えられると思い至ったのだ。

「良い・・・アイデア、ですか?」

マリスも横島が視線を向けた先、自分の机の上にある書類へと目を向ける。
あの仕事が片付くアイデアだろうか?
だが、横島がいくら驚異的な速度で語学を習得したとはいえ、まだ政務に関わる書類に携わらせるわけにもいかない。

しかし、横島からの提案はマリスの想像からまったくかけ離れたものだった。


「一つ、芝居をやってみませんか?」


―リアの寝室―

「ダーリン・・・どうして目を覚ましてくれないの?リア、一生懸命看病してるのに・・・」
ランスの傍で今も健気に看病を続けるリア。

当のランスは相も変わらず高鼾を繰り返すのみ。

『この様子を見れば別に心配などいらないのでは?』
と後ろに控える介護チーム&メイド達は思わなくもなかったが、懸命に、一途に介護を続けるリアの姿は胸に打つものがあった。
しかし、それもそろそろ限界では・・・と、リア自身の身体を案じたメイドの一人がお咎め覚悟で進言しようと思ったその時。

―コンコン

突如響くノックの音。

「失礼いたします、リア様」
ノックの主は筆頭侍女マリスだった。
そしてその後ろから、つい最近マリスに雇われたという男性が一緒に部屋へ入ってくる。
ご存知マリスの丁稚、横島忠夫である。
しかし、今は着古したジーンズ姿ではなく珍妙な白い貫頭衣のようなものを、赤いバンダナの代わりに黒い山高帽のようなものを着用している。
JAPANの慣習に詳しい者がその場にはいなかったため誰にも分からなかったが、その服装は狩衣に烏帽子と呼ばれるJAPANの術士が好んで着る服装だった。

(そういえば平安時代で高島が着ていたのと同じだな・・・)
今回のためにわざわざマリスが用意したのだが、偶然であろうが横島にもよく似合っていた。

リアは部屋に入ってきたマリスにすぐ気が付くと、涙を浮かべて彼女に泣き付く。
「うぅう・・・マリスゥ・・・ダーリン、ちっとも起きてくれないの・・・リア、ずーっと看病してるのに・・・」

リアを優しく抱きとめ、少し惚けた様に浸っていたマリスだったが、すぐに気を取り直す。

「リア様、今日はランス殿の治療のためにJAPANの呪い(まじない)師、横島忠夫殿に協力をお願いいたしました」

「・・・JAPANの?」

マリスの言葉に首を傾げているリア。
その前に横島は静かに傅いた。

「御紹介に与りましたJAPANの呪い師、横島と申します。三国一と名高い美貌の女王リア・パラパラ・リーザス陛下に御目通り叶い真に名誉な事で御座います。此度は病床に伏すランス様を我がJAPANの秘術を用い深き昏睡より覚ますべく馳せ参じた次第で御座います」

大仰で芝居がかった横島の言葉にキョトンとした表情をマリスに向けるリア様。
その顔は「ナニ言ってんのコノ男?」と物語っていた。

マリスは内心『演出過剰すぎたかしら?』と思いながらも平静を保つ。

「リア様、横島殿は腕の良い魔法使いなのです。彼の魔法でランス殿の眠りを覚ます、と仰っているのです」

「え・・・でも・・・」
少し躊躇うかのような様子を見せるリアだが、マリスも横島もこの反応は予想していた。

「ご安心なさいませ。我が秘術はリア様の手助けをするものに御座います。リア様のランス様を慕う想いを癒しの力へと変えるものに御座いますれば、全てはリア様次第、という事に御座いまする」

どう考えても不自然で支離滅裂な台詞なのだが、マリスが決めた以上仕方が無い。

そう、一連のやり取りは全てマリスと横島の企てによる芝居である。
企画兼助演男優横島、脚本・演出マリス、ヒロイン役は勿論リア、眠る王子様がランスというわけだ。
尤も後の2人はマリスと横島の思惑など知る由もないが。

渡された脚本のままに喋ってるものの横島は自分自身、何を言ってるのかワケが解らなくなっていた。

(まさかここまで芝居がかったことをやらされるとは思わんかった・・・)
確かに芝居を持ちかけたのは横島だったが、自分が今着ている陰陽師のような格好も脚本も全てマリスの手によるものだ。

『リアの為なら隕石すら落とす』
横島の提案を聞いたマリスは、まさにリアの為に手間も金も厭うことなく使った。

横島は今まで自分が出会ってきた人物の中でも、マリスは最もまともな人間だと思っていただけに割りとショックを受けている。
しかし、ここまで来た以上、開き直ってやるしかない。
やること事態は非常に簡単で気楽なものである。


「・・・本当、マリス?」
横島の言葉が真実かマリスに尋ねると、本当だ、とマリスは頷いた。

「リア様、ランス殿の側まで参りましょう」
そしてマリスに促され、リアは先ほどまで自分がいた場所まで戻る。

「リア様、お手を拝借いたします」

そういって横島はリアの両手を左右から包み込むようにゆっくりと自分の手を重ね合わせる。
一瞬、その手の柔らかさに鼻の下を伸ばしかけるが・・・。

(不埒な考えは死を招きますよ?)
耳元で囁くマリスの冷え切った声。

(ギクッ・・・マリス様はするどい・・・)
即座にマリスに釘を刺されてしまった。

気を取り直して意識を集中させる。
そして外からは見えないように、こっそりと発現させた文珠をリアの手の中へと落とす。

「ではリア様、御手はそのままに。次にこちらの札の中央をよくご覧ください」

横島が懐から出したのは、複雑な紋様が描かれた細長い紙切れ。その中央に「覚」の文字。
言われたままに従うリア。
尤も、この文字の意味が理解できるのは横島だけだったが、カタチさえ分かればそれで良い。

「そして強く祈ってください。ランス様が目を<覚>ますように、と」
横島がそう言うと、リアは素直に目を閉じて強く祈り始める。

「ダーリン・・・目を<覚>まして・・・!」

突如リアの手の中から瑠璃色の光が零れ始める。

「・・・えっ!?」
「こ、これは・・・・・・」
リアもマリスも、そして周りにいたメイド達も驚きを隠せない。
何らかの魔法のはずなのだが、リアは勿論、横島からも魔力の発動や呪文の詠唱がなかったからだ。

「では、その光をランス様に向けて解き放ってください」

言われたままに手の中の光をランスへ向けて放つリア。


――そして・・・


「・・・う〜・・・まぶしいな・・・・・・」

なんと三日間、眠り続けていたランスがあっさりと目を覚ました。
・・・まぁ、文珠の力をもってすれば当然のことなのであるが。

「ダ、ダーリンッ!!」
目を覚まし、上半身を起こしかけたランスに飛びつくリア。

「うわっ!お前は・・・リア?それにここは・・・」


「横島殿・・・先ほどの光が貴方が説明した『霊能力』の一つなのですか?」

「ええ、術者のイメージを増幅させて実現させる・・・尤もあまり大したことは出来ないんっスけどね。まさしく『おまじない』程度のもんです」

横島は確かに嘘はついていない。
文珠の能力を簡単に説明するならば、今のような言葉で足りるだろう。
だが、明らかに違うのはその効果の及ぶ範囲、そして応用性だ。

横島は芝居を提案した際、自分の霊能力でランスの目を覚ますことが出来る、とマリスに言っていたが具体的な方法までは説明しなかった。
『文珠』のことを隠すためとはいえ、リア様には絶対に悪影響はないと説得するのに多少苦労したが。


「そうか・・・俺は結局、あの山で倒れていたのか」

「そうよ。私とそこにいる横島さんでランスをここまで連れて来たってわけ」
その時の事情を良く知る者がいたほうがいいだろうと、マリスはかなみを呼んでいた。

感謝しなさいよ、というかなみの言葉に一瞥だけよこして生返事するランス。
男に感謝する気はさらさらないのか、横島のほうへは見向きもしない。
横島のほうも別に男に感謝されて喜ぶ趣味はないため、気にはならなかった。

「ねぇ、ダーリン。一体、何があったの?」

「ああ・・・・・・」
そしてランスは、大体のことをかいつまんでリア、傍にいるマリスやかなみに話した。
成り行き上、マリスの近くにいた横島も大人しく話を聞くことにした。

ランスがヘルマンの国で正義の盗賊団をしていた事。

生意気なヘルマンの軍団がランス達を攻撃した事・・・。

100万人のヘルマン兵を殺したが、さすがにピンチになって撤退してきた事・・・。

「そうだったの・・・。大変だったのね、ダーリン」
リアはランスの頭をいい子いい子している。

「ランス、その・・・シィルちゃんは一緒じゃないの?」
かなみはランスが倒れているのを見たときから気になっていたことを尋ねた。

「・・・・・・シィル・・・」

「いつも一緒にいるじゃない。シィルちゃんはどこ?」

「かなみ!!あんな奴隷の事なんてどうでもいいじゃない!!」

(シィルちゃん・・・奴隷・・・?)

「……シィルは、ヘルマンの奴らに捕まった……。まったく、俺様に迷惑ばかりかけやがって…どじな奴だ」

「……シィルちゃんが…」

「いいの、あんな奴隷の子なんかどうなっても。ダーリンにはリアがいるもん。ねっ?」

しかし、どうでもよくない人物がその場にはいた。

「ちょっとまてええぇぇぇいい!!!」
大音量で唐突に会話に割り込む声。
その場にいた全員が横島のほうへ注目する。

「ど、どうしたのよ・・・急に怒鳴り声を上げて・・・」

「かなみちゃん!『シィル・チャン』ってのは女の子かっ!?可愛い子かっ!?中国人かっ!?」
意味不明で微妙なボケを混ぜつつかなみに問いただした。

(((チュウゴクジン?)))←横島を除く周囲の人間の心の声。

「そ、そうだけど・・・それがどうかしたの?」

「な、な・・・・・・・・・」

(シィルちゃん→奴隷?→女の子→可愛い→中国人→チャイナ服→コスプレ→雌奴隷・・・?→表現できない18禁な妄想)

―ブッ

与えられたキーワードがループし、横島は鼻血を垂らしながら脳裏でダークでピンクな妄想を繰り広げていた。

そして・・・。

「ゆ・・・ゆるせんっ!!うらやましい・・・うらやましいぞドちくしょおおおおおおおおお!!!」
暴走横島、魂の叫びであった。

・・・まぁ、その妄想は一部を除き間違ってはいないのだが、それを指摘出来るものは誰もいない。
いたらもっと凄いコトになりそうだし。


「おい、かなみ・・・アイツはいったい何なんだ?」
窓の外に向かって咆哮し続ける横島を指差しながらランスはかなみに聞いたが、

「・・・私が知るわけないでしょ・・・・・・」

いや、ホントは何となく判ったりするのだが、そんなことを説明したくない。というより、判ってしまう自分が悲しかった。
そしていつまでも叫び続ける横島を黙らせるため、懐へと手を伸ばす。
陰鬱に沈みそうな心を押さえつけて、かなみは取り出した鉤縄を横島へ投げつけた。


―ぶらーん、ぶらーん

鉤縄でグルグル巻き、逆さ釣りにされた上、猿轡を咬まされた横島が蓑虫のごとく揺れている。

「ひゃなみひゃん、ほれはひょっほいふははんへほひほひんひゃ?」

「うるさいわね、話が進まないんだからしばらく黙ってなさい」
パンパンと手を叩きながら仕置き完了、とばかりに息をつく。

すっかり手際の良くなったかなみのしばきに、マリスはジト汗を流している。
あのリアやランスでさえかなみを見る目がいつもと違うのだから相当なものだろう。


「ごほん・・・ランス殿・・・」
「あ、うん、ダーリン・・・」
とりあえずマリスとリアは逆さ釣りの横島を意識の外に追いやることにした。
ランスはランスで男がどうなろうと知ったことではない性格なので何も言わない。

そしてしばらく何かを考えていたようだが、やがてとんでもない事を口にする。
「・・・リア、リーザスの全兵力を俺に貸せ」

「・・・え?ダーリン、どうするの?」

―ぶらーん、ぶらーん

「俺様に屈辱を与えやがったヘルマン国を滅亡させてやる。今すぐにでも攻め込むぞ」

「それって・・・あの奴隷を助けるため?」
リアの表情と口調には不満がありありと浮かんでいる。

―ぶらーん、ぶらーん

「・・・ち、違う、断じて違うぞ。純粋にヘルマンが憎いだけだ。皆殺しにしてやる!だから兵を貸せ!俺様がリーザスの軍団を指揮したら完璧にヘルマン国なんか滅ぼしてやる。だから貸すんだ、リア!」
一個人の恨みで国家間の戦争を起こそうと企むランス。

「・・・・・・駄目」

「なんだとっ!」

―ぶらーん、ぶらーん

「当たり前でしょ、一人の私的な恨みだけで国が動く訳にはいかないのよ」

(コクコク)←横島

「ちっ、わかった、もう頼まん!俺様一人でヘルマンに殴りこみだ・・・!」
当然ともいえる対応だが、ジコチュー男、ランスにはそんなことは関係ない。
立ち上がり、ベッドから出ようとしたところにリアからとんでもない発言が飛び出した。

「でも・・・ダーリンがリーザスの王だったらリーザス国をどう動かそうと勝手、リーザス軍もダーリンのもの」

「え・・・っ」
(???)←横島

「リア?」
いまいち意図のつかめないリアの言葉に浮かせかけた身体を元の位置に戻す。

「ふふっ・・・今、リアと結婚するとリーザス国がついてきまーす」
そんな深夜放送のテレビショッピングじゃないんだから・・・。

「・・・リア様」
「な、な、なんてことをリア様・・・」
「むーむー!!」←横島

当のランスは押し黙ったままだ。

―ぶらーん、ぶらーん

「ダーリン・・・リアじゃ嫌なの?こんなにダーリンのこと愛しているのに。ヘルマンに復讐するんでしょ?リーザスの力が欲しいなら全部あげるわ」

「・・・・・・わかった、結婚してやる」
長い沈黙の後、出てきた返事は承諾の意。

「ちょっとランス・・・自分の言っている意味がわかって・・・」
「むーむーむー!!!」

―ぶらーん、ぶらーん!←大きく揺れている

「かなみ黙れ!それとさっきからブラブラ揺れ続けてる男!うっとおしい、殺すぞ!!」

「ダーリン、大好きぃ!」
心の底から嬉しそうな笑顔でランスの首元に抱きつくリア。

「・・・ふん、ヘルマンめ・・・皆殺しにしてやるわ・・・」


「いいんですか?マリス様、あんな男とリア様が結婚だなんて・・・」
かなみは縋るような声色でマリスに迫る。だが・・・

「リア様・・・良かったですね・・・ずっと夢に描いていた事が現実になって・・・」
当のマリスは娘を見る母の目でリアとランスを見つめている。
かなみの言葉なんか聞いちゃいないようです。

「うっ・・・駄目だわ、これは・・・・・・」

「むーむーむーむー!!!!」

―ぶらーん、ぶらーん、ぶらーん・・・

幸せ一杯夢一杯空間のすぐ隣で、絶望と嫉妬の怨念空間が渦巻いていた。


第三話   完


―マリス・アマリリス専用執務室―


「マリス様、ホントにいいんですか?」

翌日、マリスは執務室に篭りきりでリアとランスの結婚式のプランを立てていた。
国内外への正式な発表、式場の敷設、リアからランスへの王位譲渡に伴う必要な手続き。
そしてランスが如何にリーザス救国の英雄とはいえ、後ろ盾も何も無い一冒険者である以上、中央・地方問わず有力者への根回しも必要であった。

「そうっスよ〜、あんな男の夢を実現・・・じゃない、男の敵、国王なんかになったらどうなるか」

かなみと横島は無駄な抵抗と解りつつも、言わずにはいられなかった。

尤も、リアの幸せこそが第一であるマリスにはそんな言葉など耳にも入らない。

「・・・お二人とも少し静かにして下さい。私は今、とても重要な政務をこなしているところなのです」

と、言いつつも机に山と積んであるのはブライダル情報誌。

((どこが政務ですかっっ!!))

二人の心の中でハモるツッコミ。
しかし、声に出す愚だけは犯さなかった。


後書きのようなもの

今回は微妙で短く、あまり面白くないかもしれませんです。
それにサブタイトルも微妙に間違ってるような・・・。

横島君とランス、ついに邂逅・・・と言っても展開は鬼畜王ランスにある通りです。これがないとランスがリーザス王にならないワケですから仕方が無いのですが。
しかし、文珠<覚>でせっかく恩を売るつもりだったのに、その印象はすっかり消し飛んだようです、蓑虫のせいでw

ここで、今後の展開の指針のようなものを
鬼畜王ランスは「ランスシリーズ」と呼ばれるゲームの「もしランスが王様だったら?」というIF世界を描いたもの、という位置づけですが、
拙作は「鬼畜王ランス」に「もし横島がいたら?」というIFを綴っていく物語です。
つまり大筋や背景、時間軸はランスを国王とした世界征服を中心に進むのですが、肝心の物語の描写は横島君自身の細々とした事件やら何やらが中心となります。

心に留めておいていただけたら幸いです。

次回更新は早いと思います。では第四話「ボーイミーツガール!」をお楽しみに
果たして、横島君は誰と出会うのでしょうか!?

では以下返信です。


>黒覆面(赤)さん
 250円、255円ネタは出したいネタの一つでしたが、かなり早いお目見えとなりましたw
 ランスとの相性は・・・今のところサイアクでしょうねw

>スケベビッチ・オンナスキーさん
 誤用の指摘、ありがとうございます。
 リックと横島、ランスの3人は上手く絡ませてやると面白そうですね。リックが完全におちょくられるでしょうがw

>ウェストさん
 今回でおそらく完全に染まりました・・・。(かなみ)
 ランスをして躊躇わせる何かを身に付けたようですw

>おやさん
 実働12時間くらいとして、時給2000円超ですね・・・くそう、横島のクセに!

>名称詐称主義さん
 メナドはかなみの友達、なので自然に横島との接点も多くなると思います。幸となるか不幸となるかは・・・ザラックよりは100倍マシでしょう、きっと。
 某コンテさんの得意技ですね、リーダー。まぁ、横島がリーザス城に来てから使っても手遅れだと思いますし・・・準備は事前に済ませないと泥縄と言うやつでしょう。

>いじゅさん
 マリスは美人、スタイル良し、大人の色気良し、性格(一部除いて)良し、知性良し、と横島の好みのど真ん中ストレートですからね。
 美神の完全上位キャラではないでしょうか?ツンデレ要素は皆無ですが・・・。

>足軽三等兵さん
 役立たず女神様も、ネタに一役買えたのなら本望でございましょうw
 『ひ、ひどいのね〜』

>Iwさん
 このルドラサウム世界には色々な世界から異邦人が理由の有無、目的の有無問わず訪れている世界だったりします。
 ・・・横島が何故やってきたか、それが明かされるのは・・・。

>吹風さん
 「たとえこの漫画が発禁指定になっても俺はヤる!」
 かつてはそう息巻いていた横島君ですが・・・ランスとどう激突するか次第ですねぇ・・・。
 リックは大好きです、もっと輝け!

>ZEROSさん
 とりあえず叫んで吊るされましたww(ただし、かなみに)

>神雷さん
 確かに凄腕ゴーストスイーパーなんだから日当25,500円て薄給すぎですねぇ・・・。でも横島なのに貰いすぎですよ!

>naoさん
 ヘル○ングネタは使いどころが難しいですが、作中にも何とか取り入れたいものです。
 すずめちゃんは「感情がほとんど死んでいて、何事にも無感動で人形のようだ」というイメージで描きました。
 原作だと違いましたっけ?

>nasさん
 技能レベルありますねぇ、いつかは公表しなくてはならないでしょうが、今は秘密ですw
 少なくとも霊能戦闘LV3とか、女の子モンスター使いLV3とか・・・


 そーゆーのじゃ・・・ありませんよ?筆者は捻くれてますからw

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