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▽レス始

「これが私の生きる道!新外伝8温泉編驚肪の挽歌編 (ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-09-21 22:42)
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(コズミック・イラ75、二月初旬、クライン邸
 内)

 「うーん。今回はハードスケジュールだな・・
  ・」

 「ですわね」

休日の昼下がりのクライン邸の子供部屋で、俺と
ラクスが、これからの予定を確認していた。

 「キラとレイナの結婚式、アスランとカガリの
子供にお祝いを渡す、相羽三佐の結婚式、ユ
  リカと義成兄さんの結婚式、お義理で出る羽
  目になった同窓会。そして、恒例の温泉と来
  ている」

 「それで、お休みはどれほど取れましたか?」

 「何とか一週間だね。さすがに、主任教官とも
  なるとね」

管理職なので、あまり多く休むわけにはいかない
ので、この程度が限界と思われた。

 「仕事はクルーゼ形式にしているから困らない
  けど、部下の手前って事もあるからね。でも
  、俺がちゃんと休まないと、部下達も休めな
  いから、その辺の匙加減が難しいよね」

 「クルーゼ形式って、仕事を押し付ける事です
  か?」

 「いや、(管理職は管理職の仕事をしましょう
  )という事」

 「クルーゼ司令は、管理職のお仕事をしている
  のでしょうか?」

 「それを聞いたらお終いでしょう」

 「そうですわね」

二人で暗黙の内にこの話題を終了させる事にして
、次の問題を話し合う事にする。

 「サクラとヨシヒサが心配です」

 「でも、まだ一歳にもなっていない二人をシャ
  トルに乗せられないよ。お義父さんにお任せ
  するしか・・・」

 「辛いですわね」

 「そうだね・・・」

 「アヤさんは、ディアッカさんのところですし
  ね・・・」

アヤはこの二〜三日の短期間だけ、密かにディア
ッカの家に泊り込んでいた。
きっとエルスマン邸では、目の毒のような光景が
繰り返されているのであろう。

 「しかも、温泉には参加するんだろう?」

 「ええ」

 「大丈夫なのか?マスコミの目があるぜ」

エミリア達の事件が終わってから一年も経ってい
ないので、俺は心配になってしまう。

 「旅館までは、変装をして入るそうです」

 「ディアッカは、よっぽど自慢したんだな。過
  去の一人身の辛さゆえか・・・」

過去二回の温泉旅行で一人身であったのは、サイ
とハイネとディアッカのみという、悲しい過去が
存在していたからだ。
ちなみに、レナ中佐は別枠であり、それを本人の
前で語る事は、寿命を縮める行為になる。

 「そういう事で父に任せるしか・・・」

 「お手伝いさんや、プロのベビーシッターがい
  るから大丈夫かな?」

 「じゃあ、俺が面倒を見る事にするよ」

 「へっ?」

 「えっ?」

急に俺達の横から親父の声が聞こえ、声のした方
を見るとベビーベッドで寝ている二人をあやして
いる親父の姿が見えた。
俺達は、なぜ親父がここにいるのかを理解できな
いまま混乱してしまう。

 「サクラちゃんは、可愛いなーーー。ヨシヒサ
  は、イケメンになりそうだなーーー」

 「あのさ。どうしてここに親父がいるの?」

 「どうしてって。お前達が二人の面倒を見れな
  いと聞いたから、こうして俺が参上したわけ
  だ」

 「親父は、花嫁の父親だろうが!」

 「俺って重要?」

 「どこの世界に娘の結婚式に出ないで、孫の面
  倒を見る父親がいるんだよ!」 

 「あっ、そう言えばそうだった」

親父は、両手を叩いて思い出したように言う。
自分の娘が結婚するのに、この男は何をしている
のだろうか?

 「母さんに、全てを任せているのかよ!レイカ
  (麗華)も生まれて大変なんだろう?」

去年の十月の下旬に、レイナが女の子を出産して
、キラの命名でレイカ(麗華)と名付けられてい
た。
髪は茶色で顔もキラに似ていたが、キラは元々女
顔なので、将来は可愛くなると思われた。
確か、親父は出産の一週間前後は仕事にならずに
、レイカを異常に可愛がっていたはずなので、俺
は親父がここにいる事に対して、疑問を感じてし
まっていた。

 「確かに、レイカは可愛い。でも、めったに会
  えないサクラとヨシヒサも可愛いんだ!俺は
  どちらを選べば!」

 「うるさい!わずか数十分、孫に会うために高
  額の旅費を使いやがって!あとで母さんに叱
  られるぞ!さあ、オーブに帰るぞ!」

 「もう、十分」

 「時間がない!ラクス、親父の席は取れるかな
  ?」

 「大丈夫です」

 「ほら、出かけるぞ」

 「サクラぁーーー!ヨシヒサぁーーー!」

 「うるさいなぁーーー」

俺達は親父を強引に引きずりながら、クライン邸
をあとにするのであった。


(二日後の早朝、オーブ国オノゴロ島、カザマ邸
 内)

 「ただいま。バカを連れて来たよ」

 「わざわざ、すまいないね」

俺とラクスは、親父を強引にシャトルに乗せてオ
ーブの宇宙港に到着したあと、オノゴロ島の実家
まで引きずってきたのだ。

 「母さん、サクラとヨシヒサは可愛かったよ」

 「ふーん。良かったわね」

 「写真と動画もいっぱい撮ったんだ」

 「いつの間に・・・・・・?」

俺の疑問をよそに、親父はデジカメに入った大量
の画像を母さんに自慢気に見せていた。

 「じゃあ、大満足よね」

 「もう少し時間が取れればな」

 「お父さん、明日は結婚式だし、これからも色
  々と物入りだから、三ヶ月はお小遣いなしね
  」

 「何でーーー!?」

 「あのね。プラントに行くには多額のお金が掛
  かるのよ。地球上の海外の国とはわけが違う
  の・・・」

確かに、地球上の国から宇宙に上がるには多額の
お金が掛かる。
同じ地球上の国に行くのとはわけが違う。
特に、酸素供給と安全面でのコストが掛かるので
、地球の数倍の運賃が掛かり、いくらモルゲンレ
ーテ社の常務と言えど、そう頻繁にプライベート
で行けるものでもないのだ。

 「小遣いゼロって・・・・・・・」

 「自業自得だな」

俺達はガックリと落ち込んでいる親父を放置して
、キラとレイナの様子を見に行く。
すると、二人はベビーベッドで寝ている、自分達
の娘をあやしていた。

 「お二人さん、元気?」

 「ヨシヒロさん!ラクス!」

 「お兄さん!ラクス!」

 「そんなに驚く事か?」」

 「随分、早かったわね。兄さん」

 「バカ親父の後始末があったからさ」

 「お父さんにも、困ったものよね。暇さえあれ
  ば、レイカ、レイカってさ。それで、今度は
  勝手にプラントに行くし・・・」

 「でも。僕達には、何も言わなくなったよね」

 「娘より孫なんだろう」

 「でも、暇さえあれば、ステラにメールを出し
  ているわよ。おかしな虫が付かないようにだ
  って」

 「ふーん(ハイネは、害虫の部類に属するから
  な・・・)」

自分の事を差し置いて、かなり惨い事を考えてい
たが、すぐに考えるのを止めて、ベビーベッドに
寝ているレイカをラクスと眺め始める。

 「キラによく似ていますね」

 「本当だ。髪の色も同じだ・・・」

 「女の子だから、僕に似ていると心配なんです
  よ」

 「キラは、女顔だから大丈夫」

 「そうですわね」

 「えっ!そうなんですか?」

 「一部の男性の、熱い視線を感じた事はないか
  ?」

 「そう言われると・・・」

キラは多少は心当たりがあるらしく、急に黙り込
んでしまった。

 「アスランといい、キラといい、ニコルいい難
  儀な事だな」

そこまで話したところで、ベビーベッドで寝てい
たレイカが目を覚まして泣き始める。

 「はいはい。おっぱいの時間ね」

 「では、我々は部屋を出ますか」

おっぱいをあげるレイナを置いて子供部屋を出る
と、急にキラが俺に頼み事をしてくる。

 「実は、二人っきりで付き合って欲しいんです
  けど・・・」

 「俺にそういう趣味は・・・」

 「違いますって!極めて真剣な事です」

 「わかった」

 「では、私は家で待っていますわ」

俺とキラはカザマ邸を出て、目的の場所に出かけ
るのであった。


 「それで、大切な用事って模擬戦を行う事なの
  ?」

 「そうです」

キラが俺を連れて行ったのは、モルゲンレーテ社
の秘密工場区画にある野外演習場であった。
俺は、そこでパイロットスーツを着せられたうえ
に、ノーマル仕様の「ムラサメ」に乗せられて、
キラと対峙していた。
そして、向こうもノーマル仕様の「ムラサメ」に
搭乗していて、条件は五分と五分という事らしい

 「(R−ジン)を用意できなくてすいません」

 「この場合、用意されてたら嫌だけど」

最新鋭機で、先行量産機が三十機ほどしか存在し
ていない物が、オーブの手に渡っていたら、大変
な事になってしまうからだ。

 「カザマ君。この勝負の結果は、ここにいる数
  人だけの秘密にするわ。だから、存分にやっ
  てちょうだい」

 「エリカさんですか?久しぶりですね。あなた
  もグルなんですか?」

 「キラ君に頼まれたのよ。興味は物凄くあった
  けどね」

 「私も、興味があるから飛んできました」

 「俺も」

 「俺もだ。どちらが勝つのか、非常に興味があ
  る」

二機の「ムラサメ」を用意した共犯者と思われる
、アサギ、ハワード三佐、ホー三佐が、俺に声を
かけてくる。

 「当然、私も興味があるわけだ」

 「カガリちゃんか!」

 「すいません。こんな事を急にお願いして。キ
  ラがどうしてもって言うから・・・」

更に、赤ん坊を抱いたカガリとアスランが、見学
用のブースに姿を現す。

 「おーーー!カガリちゃんが母親してる!」

 「そこまで驚く事か?」

 「タクマ君、元気してるーーー?」

俺がカガリの子供に「ムラサメ」のスピーカーで
呼びかけると、赤ん坊は泣き出してしまう。

 「こら!タクマを泣かせるな!」

 「ごめんね。でも、どうして日本人っぽい名前
  なの?」

 「そういう事を、意識した事はないんだけどな
  。あくまでも、アスハ家の伝統と私達の希望
  を融合したに過ぎない」

次期アスハ家当主であるタクマ・セラ・アスハは
、母親と同じ金髪の男の子で、カガリの腕の中で
大きな声で泣いていた。

 「俺も、この勝負の行方は楽しみですね。教官
  殿がキラを倒すのか?キラが教官殿を倒すの
  か?非常に楽しみですよ。イーザク達にも見
  せてあげたかったな」

 「アスランも、自分の事じゃないから言ってく
  れるよな」

 「俺じゃあ、もうキラに勝てませんから・・・
  」

 「なら、俺も勝てないだろう」

 「それはわかりませんね」

俺は、初めての機体なので、慣らし運転をしなが
らキラの様子を探ると、彼は微動だにしていなか
った。

 「緊張してるのか?キラ」

 「ええ」

 「お前の方が、腕は上なんだけどな。それは、
  先年の(M−1)同士での対決で明らかなん
  だ。気を抜いていけよ。それよりも、なぜ今
  になって対決を望むんだ?」

 「あなたに勝ちたいからです」

 「勝ちたいのか?」

 「ええ。あなたの事はレイナから良く聞いてい
  ました。悲しい生い立ちでいつも孤独だった
  けど、自分とカナには優しい最高のお兄さん
  だと」

 「そうでもないさ。耐えられなくなって、プラ
  ントに逃げ込んだんだ。家族を捨ててな」

 「でも、ヘリオポリスの時も、オーブ戦の時も
  、あの最終決戦の時も、前の戦いの時もいつ
  も僕達の事を気遣ってくれて・・・」

 「任務だからさ」

 「それでも、嬉しかったです。僕は一人っ子だ
  から、お兄さんってこんなものなのかなって
  思いました。そして、レイナと結婚する事で
  僕はあなたの本当の義弟になります」

 「なら、それで良いじゃないか(そうか。カガ
  リとの事はまだ知らないんだよな)」

 「だからこそ、僕はあなたに認められたい。僕
  は自分で出来る事を出来る限りやって、最近
  になって、やっとお義父さんにも認められる
  ようになりました。でも、あなたは本当に僕
  を認めていますか?レイナの夫として、生ま
  れた子供の父親として・・・・・・」

俺はキラの事は認めているつもりだ。
自分でもそう発言しているし、周りに聞かれても
そう答えている。
だが、結婚よりも先にレイナが妊娠してしまった
事には、心のどこかで腹を立てていた部分があっ
て、それをキラに勘付かれていたのかもしれない

 「確かに、レイナの妊娠の件では腹を立ててい
  る部分が存在するな。わかった。もう、言葉
  は終了だ。かかって来い!」

 「はい!」

エリカさんがスタートの照明弾をあげると、二機
の「ムラサメ」は睨み合いを開始した。

 「(キラはムラサメに乗り慣れているが、俺は
  初めてだ。しかも、キラはハンパじゃないほ
  どの凄腕だ。慣れないムラサメで、最大の特
  徴である変型機能を生かした空中戦は危険だ
  な。このまま地上でケリをつける!)」


俺はけん制の意味を込めて、ビームライフルを連
射しながら、キラの「ムラサメ」に突撃をかけた

この勝負は、時間との戦いになる。
なぜなら、キラにSEEDを発動されてしまった
ら、絶対に勝利できないからだ。
短時間で勝負を決めるのが、俺の唯一の勝機であ
った。

 「行けぇーーー!」

キラは、俺の射撃をシールドで余裕で防いでいた
ので、次にビームライフルを放り投げ、ビームサ
ーベルを抜く。
そして、シールドを構えながら逆手にビームサー
ベルを持ち替えて、コックピットを狙って突きを
入れた。

 「速い!」

 「ちっ!外したか」

俺の先制攻撃はキラにかわされてしまい、次に順
手に持ち替えたビームサーベルで斬りかかるが、
キラはまだSEEDを発動していなかったので、
自分とそれほどの腕の差はみられなかった。

 「あくまでも、格闘戦でケリを付けるのですか
  ?」

 「その方が納得いくだろう!俺の可愛い妹に手
  ぇ出しやがって!この泥棒猫が!」

 「だからこそ!認めて貰うために、僕はあなた
  を倒す!」

急にキラの「ムラサメ」の様子が変わり、同じく
ビームライフルを捨てたキラがビームサーベルを
抜き、今までとは比べ物にならない動きで、俺に
斬りかかってくる。

 「(SEEDが発動したか!シンが、俺を圧倒
  した時よりも更に上か!このままでは・・・
  )」

俺はキラの斬撃をかわし続けながら、後退してそ
の勢いを削いでいたが、圧倒的に不利である事に
変わりはなかった。
これだけ、俺を圧倒していてもキラは冷静そのも
ので、隙が全く見つからなかったのだ。
しかも、次第に完全にかわし切れなかった攻撃の
ダメージが蓄積し、コックピット内にレッドの警
告ランプが次々に灯り始める。

 「(既に、変型と飛行は不可能か。しかし、反
  則的な強さだな。確かに、アスランでも勝て
  ないだろうな・・・)」


キラの斬撃をかわしながら、そんな事を考えてい
る内に、俺は演習場の隅に追いやられてしまう。

 「覚悟して下さい!」

 「俺は、何回もこういう修羅場をくぐってきた
  んだよ!(困ったな。打つ手なしだな)」

だが、既に策は尽きていたので、俺は最後の望み
を繋いで、キラに捨て身の攻撃を仕かけた。

 「まさか!」

キラも、俺が先に攻撃してくるとは考えていなか
ったらしく、大きな動揺を見せていた。
それでも、俺の渾身の斬撃をその驚異的な反射神
経でかわして、被害を頭部と右腕のみで押さえ、
次の瞬間には、左腕のシールドを捨てて俺の懐に
入り込み、もう一本のビームサーベルを抜いて、
俺の「ムラサメ」の胴体を横に薙いでいた。

 「バカな・・・・・・。俺が先に動いたのに・
  ・・・・・」

俺の「ムラサメ」のコックピット内にパイロット
死亡のアナウンスが流れ、勝負は俺の負けで終了
した。

 「俺の負けだな。キラ」

 「でも、僕の(ムラサメ)も大破状態です。戦
  場なら、一緒に戦死していたかも・・・」

 「それでもお前の勝ちだ。レイナをよろしく頼
  む。それとヨロシクな。義弟よ」

 「はい!」

こうして、俺とキラの最後の対決は幕を閉じたの
であった。


 「どんどん追い抜かれていくな」

 「そうですか?」

 「同じ性能の機体同士なら、キラ、アスランに
  はもう勝てないさ。イザーク、ディアッカ、
  シン、レイも討てないだろうな」

帰り道にうちで夕食を食べる事になったアスラン
達と歩きながら、俺はそんな事を話し始める。

 「それじゃあ、ザフト軍は辛いだろう。最強の
  二人がオーブ軍なんてさ」

 「そうでもないさ。あくまでも個人の技量が優
  れているに過ぎない。俺なら、十機ずつほど
  ぶつけて二人の動きを止めるさ。その隙に、
  母艦なり司令部を壊滅させる」

ハワード三佐の発言に俺は反論をする。
いくら、キラやアスランが強くても、それは個人
技の事で、多数に囲まれれば関係ないからだ。

 「そういう点はシビアですね。ヨシさんは」

 「俺は、ザフト軍の軍人だからな」

 「なら、うちに来いよ。少将待遇でどうだ?」

 「随分、買ってくれているんだね」

 「お前がモビルスーツ関連の面倒を見てくれれ
  ば、全体的な戦力があがるからな。実は、キ
  ラもアスランも天才の類だから、普通のパイ
  ロットの技量をあげるのが苦手なんだよ」

確かに、何でも出来る天才は、普通の人がどうし
てそれが出来ないのかを理解する事が困難だ。
パイロットとしては一流でも、教えるのも一流だ
とは限らないのだ。

 「ハワード三佐はその点が優れているのだが、
  一人ではな・・・」

 「ホー三佐は?」

 「彼は特殊だからな・・・」

過去に、ホー三佐におかしな特訓を課せられた事
があるカガリが、口を濁してしまう。

 「それは違うぞ!カガリ様!俺は自分が到達し
  た真理に、彼らを近づけようと」

 「真理ねえ・・・」

 「部下が迷惑そうだな・・・」

指揮官として自覚は出てきていたが、変わり者の
ホー三佐は、やはりどこかが他人と隔絶していた

 「クライン家が、オーブに移住でもするのなら
  考えるけどね」

 「まずは、将よりも馬を狙うべきか」

 「俺とラクスなら、俺の方が馬だって」

 「イメージ的には、そんな感じだな」

 「俺もよくラクスに乗られているから」

 「それも、夜にか」

 「当たり」

 「「「あはははは」」」

俺の下らない下ネタ話に、ハワード三佐とホー三
佐が爆笑して、他の連中は、ばつの悪そうな顔を
していた。

 「このバカ者が!」

中でも、カガリは顔を真っ赤にして俺達を怒鳴り
つける。

 「でも、夫婦円満の秘訣だよ」

 「そんな事を堂々と話すな!」

 「アスランも、そう思うだろう?」

 「ええと・・・。まあ、その・・・」

 「アスランに聞くんじゃない!」

 「僕は話しませんよ」

キラが憮然とした表情で語る。

 「妹のそういう話は、聞きたくないからオーケ
  ーだ」

 「本当に!私は真面目に引き抜きの話をしよう
  と・・・。それに、キラの件だってせっかく
  綺麗にまとまったのに・・・」

 「カガリ様、これで良いんですよ。キラ君は勝
  負に勝てて納得したし、元々カザマ教官の引
  き抜きは不可能ですから」

 「わかってはいるんだけど、もしかしたらと思
  う事もあるんだ」

 「それは、そうかもしれませんね」

カガリとアサギは、夕方の帰り道で、前方でバカ
話をする男性陣を眺めながら静かに話をするので
あった。


 「ほーら。レイカちゃん、イナイイナイばぁー
  ーー」

翌日、オノゴロ島の教会でキラとレイナの延び延
びになっていた結婚式が行われ、オーブ軍関係者
や友人などが多数集まっていた。
式は滞りなく行われていたが、俺は自ら志願して
ベビーベッドで横になっているレイカちゃんを懸
命にあやしていた。

 「キラの娘だけあって、感動に乏しいのかな?
  」

 「そんな事はありませんわ」

ラクスがレイカを抱っこすると、彼女は笑顔を浮
かべながらラクスの胸にしがみつく。

 「ほら、可愛い笑顔ですわよ」

 「お母さんより、胸ナイナイでごめんねーーー
  」

だが、俺が咄嗟に言ってしまったこの一言で、周
りの空気が急に冷たく感じられるようになってし
まった。

 「ヨシさん、それは・・・」

 「息子よ。それを言っては・・・」

 「勇気あるよな」

 「真似できないな」

晴れの舞台なのに、人前が苦手でガチガチに緊張
しているキラをよそに、俺がとんでもない事を言
ってしまった事に気が付いた、アスラン、親父、
ハワード三佐、ホー三佐が驚愕の表情をしている

 「ヨシヒロ」

 「はい!」

 「あとで、二人きりでお話があります」

 「了解です!」

久々に黒いオーラを纏ったラクスに慄きながら、
俺は素直に返事をするのであった。


 「お世話になりました」

 「もう一日、いて欲しかったけど・・・」

 「予定が詰まっているんだよ」

 「確かに、大変そうだな・・・」

翌日の早朝、何とか生存に成功した俺と、ラクス
とキラはカザマ邸を後にする。
翌日以降にに日本で行われる、相羽三佐の結婚式
に参加するためと、ユリカと義成兄さんの結婚式
と毎年恒例の温泉旅行のためである。
キラはカガリの代理として、これらの式に参加す
る事になっているのだ。
ちなみに、カナとニコルは台湾で仕事をしてから
、温泉宿で俺達と合流する事になっていて、今回
はレイナはレイカが生まれたばかりなので、不参
加という事になっていた。

 「去年は社会情勢に鑑み温泉は中止で、今回は
  レイナが不参加か」

 「カガリも不参加だって」

 「野郎比率が高まって残念な事だ」

 「残りのみんなは?」

 「現地で合流だそうな」

 「じゃあ、気を付けてね」

 「なるべく早く帰るよ」

アスランとカガリも、見送りに来てくれたのだが
、キラとレイナがラブラブな雰囲気を出していて
、背中が痒くなってきたので、俺は早めに終わら
せて空港に向かう事にする。

 「キラ、行くぞ」

 「あっ、はい」

親父の運転で空港に向かい、新羽田空港行きの飛
行機に乗ると、わずか数時間で日本に到着してし
まう。
これも、直行便と新型高速旅客機のおかげであろ
う。
そして案の定、日本ではマスコミの連中が、俺達
を待ち構えていた。

 「もう、ラクスが引退して三年も経つのに・・
  ・」

 「○口百恵のようなものだな。人気絶頂で引退
  すると、人はその後の動向が気になるんだよ
  」

前回と同じく、俺を迎えにきた石原二佐が理由を
説明してくれる。

 「石原二佐は古い事を知っているね。もしかし
  て、アイドルオタク?」

 「ちゃうわ!それに、お前もなかなかの注目度
  なんだよ。元新国連軍ヨーロッパ派遣軍副総
  司令閣下」

 「二番目じゃん」

 「二十二歳の日本人の若造が、国際組織の顕職
  に就いたんだ。日本村の住民達は大喜びさ。
  日本人は、国際組織を必要以上にありがたが
  るからな」

 「ふーん」

俺達をマスコミの攻勢から守るべく、再び石原二
佐が便宜を図ってくれたので、俺達は早めに宿泊
先のホテルに到着する事ができた。

 「また裏口からか。たまには表から堂々と出た
  かったな」

 「そして、多数の報道陣に囲まれて質問攻めに
  されるか?」

 「俺なんて取材してどうするんだ?」

 「俺もそう思わないでもないが、お前は大した
  男だからな」

 「知らんわ」

ホテルの喫茶室でお茶を飲んでいると、相羽三佐
と早乙女二尉が、両親を連れて挨拶に訪れる。

 「わざわざ、遠路からありがとうございます」

 「いえ。こちらこそ、五月蝿い連中を多数連れ
  てきてしまって」

 「あなたのせいではありませんよ。去年は大活
  躍だったとかで」

 「本人に、自覚はないんですけどね」

両家の両親と挨拶を終えると、彼らは用事がある
とかで席を外し、相羽三佐と早乙女二尉のみが残
った。

 「いやに盛大だね」

 「俺の人徳のおかげだな」

 「毎日飲んで歩いている癖に・・・」

 「事実だけにムカつく一言だな。カザマ君」

 「それで、真相は?このホテルだって取って貰
  ったけど、高級ホテルじゃん」

 「沙紀の両親は、実家のある地方都市で有名な
  資産家だからな。クライン家ほどではないけ
  ど、結婚式には見栄を張らなければならない
  のさ」

 「へえ、逆玉なんだ」

 「俺のイケメン度とエリート度の勝利だな」

 「沙紀ちゃんも、こんなキャバクラ狂いにしな
  くても・・・」

 「だよな。親友として言い難いけど、こいつの
  は病気だからな」

 「ですよね」

俺と石原二佐とキラは、三人でしみじみと相羽三
佐の駄目さ加減を語り出した。

 「そこまで言うか、お前らは・・・」

 「でも、ユウジ(勇治)さんは、そういうお店
  には行くけど、浮気はしないから」

 「それを浮気と言うような・・・」

 「サキさんの考えではセーフなのでしょう。勿
  論、私は許しませんが」

 「厳しいな・・・」

ラクスの発言に俺は少し凹んでしまうが、確かに
、相羽三佐はお姉ちゃんのいる飲み屋には良く行
くが、風俗店に行ったり、浮気をしているという
話を聞いた事がなかった。

 「相羽はモテないからな」

 「確かに・・・」

 「そうですね」

 「本当に失礼な三人だな」

次の日の結婚式は贅を尽くしたものであったが、
日本独特の様式に、再びラクスが、様々な質問を
俺に投げかけるのであった。


 「何か疲れたなーーー。休みなのに」

 「今日は、ユリカさんとヨシナリさんの結婚式
  ですよ」

相羽三佐と早乙女二尉の結婚式も無事に終わり、
次はユリカと義成兄さんとの結婚式であった。

 「一週間で三組。異常としか思えない・・・」

 「ヨシヒロに、絶対に出て欲しかったのですよ
  」

 「今日は、義成兄さんの大切な結婚式だから、
  喜んで出るさ」

 「ヨシヒロ」

子供の頃、孤立していた俺と唯一普通に接してく
れて、弟のように可愛がってくれた大切な人の結
婚式なので、これだけは絶対に外せなかった。  

 「さて、着替えるかな」

 「急ぎましょう」

俺達は急いで着替えてから、結婚式会場に向かう
のであった。


 「石原二佐の結婚式の時と同じ会場だ」

 「本当ですわね」

ユリカが出してくれた迎えの車に乗り込むと、車
は見た事のあるホテルに到着する。

 「へえ、政財界のお歴々が多数ご参加か」

 「楠木重工は、大企業で政治献金の額も多いか
  らな。楠木会長は個人的にはそういう事が大
  嫌いだが、会社のためと割り切っているのさ
  」

あまり多くの参加者に圧倒されて、今日に空港か
ら直接現地入りした親父と母さんは、珍しく小さ
くなっているようだ。
俺もそうなのだから、これも血と遺伝子の成せる
技なのであろう。

 「それで、石原首相閣下のご子息も参加という
  事ですか」

 「よく言うぜ」

 「カザマ教官!お久しぶり!」

 「マユラか!元気だった?」

 「はい。毎日、ジュリの世話以外は遊んでます
  よ」

 「羨ましい。代わってくれ」

 「嫌でーーーす」

 「それで、ジュリちゃんは?」

 「お義姉さんに預けてきました。お義父さんと
  お義母さんも、この式に出席しているので」

 「乳飲み子を、独身のお姉さんに預けて大丈夫
  ?」

 「姉さんはもう結婚しているぞ。例の大山さん
  とな」

 「初耳だ」

 「話すのを忘れてた」

 「私と良く買い物や食事に出かけるんです」

 「不良主婦だなーーー」

そんな話をしていると、昨日式を挙げたばかりの
相羽夫妻とラスティーとシホが近づいてくる。

 「あれ?ラスティーも参加なの?」

 「ええ。大切なお得意さんですから」

 「シホは奥さん役?」

 「はい。ちょうど温泉旅行があったので」

 「後は、マリューさんくらいかな?知り合いは
  ?」

だが、マリューさんは子供が生まれたばかりであ
り、まだ産休が続いたままであったので、今回は
不参加であった。

 「私もいるんだけどね」

俺が声のした方を振り向くと、そこには立花官房
副長官が立っていた。

 「懐かしいですね。立花官房副長官」

 「微妙に引っかかるセリフね」

 「気のせいですよ」

 「まさか、先に妹に結婚されてしまうとはね・
  ・・。しかも、ユリカだから全然心配してい
  なかったのに・・・」

 「すいませんね。変な従兄弟で」

 「私が欲しいくらい良い男じゃないの。早く紹
  介してくれれば良かったのに」

 「弟がいますけど、奴もエミと付き合っていま
  すしね」

 「それがおかしいのよ!どうして、私に紹介し
  てくれないの?ユリカが先に結婚してエミも
  彼氏持ちなのに、私には彼氏すらいないのよ
  !週刊誌とかでは、やれ財界のプリンスと密
  会だの、芸能人と付き合ってるだの嘘記事ば
  かり載っているけど、毎日忙しくて家にも帰
  れない私が、どうやって彼らとデートをする
  のよ!そもそも・・・・・・」

立花官房副長官の様子が、次第におかしくなって
いき、危機感を感じた俺が周りを見渡すと、既に
全員が姿を消していた。

 「(ラクス!妻が夫を見捨てるのか?ひょっと
  して、胸ナイナイの仕返しか?)」

 「あなたの周りの良さそうな男は、みんな結婚
  しているし!ここは、私に早めに紹介するの
  が、同じコーディネーターとしての仁義では
  ないの?ちょっと!聞いてる?」

俺はその後、十数分にわたって立花副官房長官の
愚痴を聞き続けるのであった。


 「みんな卑怯だぞ」

 「早く逃げなかったお前が悪い」

 「それは同感だな」

 「ヨシさん、日頃の鋭い勘はどうしたんですか
  ?」

俺達に割り振られたテーブルは、六人掛けの席で
俺とラクスと石原夫妻、相羽夫妻が座り、その隣
のテーブルが、ラスティーとシホの席になってい
た。

 「しかし、豪勢だね。国内外の政治家や官僚や
  企業家や芸能人達か・・・」

 「楠木重工は、海外との取引が活発だからな」

 「良くご存知で」

 「親父から良く聞かされている」

 「将来は、石原ヨシユキ総理ですか」

 「俺は、政治家は嫌だな」

 「俺は、政治家でも良いぜ」

 「相羽三佐、支給される活動費でキャバクラに
  行っては駄目なんだよ。国民の税金なんだか
  らね」

 「カザマ、出来の悪い子供を諭すように言うな
  !」

 「子供なら更生の余地があるが、ここまで大き
  くなるとな・・・」

 「石原も酷えな・・・」

そんな話をしている内に披露宴は始まり、俺と極
一部の人達には聞き慣れた、他の人達は始めて聞
く曲と共に、二人は入場してくる。

 「この曲は、始めて聞きますわ」

 「俺もだな」

 「私も始めてです」

 「俺は知ってるぞ!」

 「カザマが知ってるという事は、アニメ関連か
  ?」

 「そうだ。伝説の古典アニメの中でも、俺がト
  ップ5に入っていると思う名作(○動戦士○
  ンダム0080ポケットの中の戦争)のオー
  プニングテーマだ。知らないのか?」

 「知るか!そんな事を知っている、お前の方が
  おかしいんだ!」

 「名曲なのに・・・」

それから披露宴が始まり、偉いオジさん達のあり
がたくて長い話が延々と続き、俺達はグロッキー
になってくる。

 「よくそんなに話す事があるよな。感心するよ
  」

 「半分以上は、自分の事だしな」

 「嫌な予感はしていたんだよな」

続いて、義成兄さんの友達の祝辞やら歌やらが続
き、次に二人は衣装変えのために場を中座する。

 「はあーーー。これで、暫く落ち着ける・・・
  」

だが、二人のいない間は自由時間となるわけなの
で、更に俺達を疲れさせる出来事が発生していた

 「始めまして。私、衆議院議員の後藤田晴之と
  申しまして・・・」

 「財務省の金蔵浩です」

 「楠木重工本社営業部長の大隈隆文です」

大半がラクスが目的と思われるが、律儀に俺にも
挨拶をしてくるので、俺も相応に対応して疲労度
を蓄積されていった。

 「疲れるなーーー」

 「お前の嫁さんはさすがだな」

 「慣れているからね」

ラクスはクライン家の当主として、魅了されるよ
うな笑みを浮かべて、彼らと楽しそうに話をして
いた。

 「シーゲル閣下は、引退したんだものな」

 「たまに手伝いくらいは、するようだけど」

 「政治家って大変だな」

 「相羽三佐は、キャバクラの姉ちゃん達だけを
  、相手にしていれば良いからね」

 「んなわけあるか!」 

 「兄貴、端っこはつまらないよ」

 「僕も退屈で退屈で・・・」

親父はモルゲンレーテ社の常務なので、一人だけ
最前列に移動していたが、義成兄さんの親戚であ
るカナとその相棒のニコルは、後部の端の席に追
いやられていたのだ。

 「日本の披露宴って暇ですね」

 「ニコルに演奏でもさせれば良いのに」

 「駄目ですよ。ちゃんと、雇われたプロの人達
  がいるんですから」

 「本当だ。結構有名な交響楽団の人達だよな」

 「ええ。そんな人達をBGM代わりにするんで
  すからね。楠木重工って景気が良いんですね
  」

式の主要な部分は、義成兄さんの選んだディープ
なアニソンが流れていたが、それ以外の時には、
彼らが普通のクラッシックを演奏していた。

 「僕の方が上手ですけどね」

 「自信満々だな。ニコル」

 「ええ。この点だけは引けませんね」

更に周りを見渡すと、カガリの代理で出席してい
るキラが、お酒を勧められ過ぎて前後不覚の状態
になっていた。

 「能力はあるのに、相変わらず人前が駄目な奴
  だな」

その後、ケーキ入刀、花束贈呈など一連の行事を
終え、最後に新郎新婦の二人が挨拶をしている時
に、義成兄さんが俺の名前を呼んだ。

 「最後に、二人の縁を結んでくれた従兄弟の義
  弘に挨拶をお願いしたいと思います」

 「俺?(縁を結んだのは、マリューさんだ!)
  」

 「お願いね。カザマ君」

 「わかりましたよ」

突然の指名で多少緊張しながらも、俺はマイクを
持って祝辞を始める。

 「義成兄さん、ユリカさん。ご結婚おめでとう
  ございます。義成兄さんと弟の義則とは、幼
  少の頃に私が帰省するとよく一緒に遊んでい
  ました。私は日本生まれのコーディネーター
  で、昔は孤立していたので、同姓の同年代の
  友人と言えば二人だけでした。盆と正月くら
  いしか会えませんでしたがど、私はそれがと
  ても楽しみでした。ユリカさんと始めて会っ
  たのは、三年半前の事でしたね。初対面でい
  きなりホモ扱いされましたが、私はノーマル
  です。彼女は、従姉妹のエミさんと共に自衛
  隊をやっかい払いをされて、こちらにレンタ
  ルされてきてクルーゼ司令の下で働いていま
  した。多分、変人同士気が合ったのでしょう
  。大きな戦果をあげていました。最後に、義
  成兄さんの優しさの許容範囲が最後まで持っ
  て、夫婦が添い遂げる事を期待して挨拶を終
  了させていただきます」

多分、連日の結婚式で疲れていたのだろう。
俺は本音バリバリのトークを展開し、会場は奇妙
な沈黙に包まれた。

 「あれ?拍手なし?」

 「あるわけないでしょ!」

 「どうしてくれるのですか!」

俺の目の前に、夜叉と化したユリカとエミが立っ
ていた。

 「ユリカ、エミ。今日は疲れているんだよ」

 「「あんたは、夫婦生活を拒む倦怠期の旦那か
  ーーー!」」

その後の披露宴の様子は、ラクスや石原総理の尽
力もあって完全に封印され、公の場で公表される
事はなかった事を伝えておく。


 「カザマ君。すまんな。色々と迷惑をかけて・
  ・・」

主賓席でユリカとエミの祖父である楠木会長が、
俺に小声で謝っていた事は、俺自身も気が付かな
かった。
楠木会長は、早期に二人の性格に気が付いていた
数少ない人物であった。


 「ふーーー。疲れた」

 「あれだけ、走ればな」

その日の夜、俺達は滞在先のホテルに戻り、明日
への英気を養っていた。
ちなみに、義成兄さんとユリカは両家の実家に挨
拶後、こちらに合流していた。

 「ユリカとエミは、しつこ過ぎ」

 「あれだけ、本音を言えばな」

俺達は、ホテルの喫茶室でお茶を飲みながら、椅
子に深く座って寛いでいた。

 「義成兄さんって偉大だよね」

 「それは周りに良く言われるけど、俺は実感し
  た事がないからな」

義成兄さんの話を総合すると、ユリカは義成兄さ
んには多少我侭な程度で、あとは甲斐甲斐しく料
理を作ったり家事をしたりするらしい。

 「想像できない光景だな」

 「私に言わせれば、ラクス様と結婚しているカ
  ザマ君も偉大なのよ!ラクス様は、結構アレ
  よ!」

 「ラクスは良い妻だと思うけど・・・」

 「知らないって幸せよね」

 「本人が不在なのを良い事に、言いたい放題だ
  な」

 「言えてる」

 「ラクスさんは?」

 「お風呂だってさ」

俺も心の奥底では、ラクスが凄い女である事を知
っていたが、浮気さえしなければ可愛くて優しい
妻で、俺に好きにさせてくれるので、特に不満は
なかったのだ。

 「ところで、同窓会なのに早く帰ってきたな」

 「だって、本当にお義理だからさ」

 「身も蓋もないんだな」

実は結婚式後に、近くで大学の同窓会が行われて
いたのだが、そこの教授と石原総理が同級生だと
かで、俺はお義理で参加していた。
だが、俺は二十三歳で、同級生達は三十歳を越え
ている人が大半だったので、つまらないのですぐ
に帰って来てしまったのだ。

 「友達なんて一人もいないのさ。俺だけ浮いて
  いたからな。二〜三年飛び級する奴は少しは
  いたが、俺は特殊だったから」

 「言えてる。でも、何でそこまで急いで飛び級
  したんだ?」

 「当時は、プラントのアカデミーの事を知らな
  かったけど、漠然と外国に行きたかったんだ
  。両親も大学まで出れば、止めないだろうと
  思って。そして、大学卒業一年後に、アカデ
  ミーの事を知って、密かに準備を開始したわ
  けだ。まさか、家族がオーブに移住するとは
  思わなかったから」

 「なるほどね」

 「だが、やっとこれで明日は温泉だ。何しろ、
  今までが最悪につまらなかったからな。貴重
  な休暇を返しやがれってんだ!」

 「本音バリバリだな」

 「明日は温泉だ!みんなも合流するし、気合い
  を入れて楽しむぞ!」

 「「「おーーー!」」」

明日の温泉に備えて、俺達は大声で気合を入れる
のであった。


そして翌日、俺達は毎年のようにお世話になって
いる温泉宿に到着した。

 「あれ?隣は、何を建てているんだろう?」

 「ああ。お客様が増えたので、別館を建ててい
  るのです。お客様達のおかげで商売繁盛なん
  ですよ」

部屋に荷物を置いてから、共用のリビングで茶を
出してくれた仲居さんが答えてくれる。

 「何で?」

 「この温泉に入ると、若くして出世できるとい
  うジンクスが出来まして」

 「ふーん」

俺達が歳のわりに出世できているのは、モビルス
ーツという新兵器が戦争の主力になったからであ
って、別に俺達がどうこうという事もなかったの
だ。
そして、ザフト軍が能力重視である事と、年齢分
布が若い事も原因となっていた。
普通ならどんなに優秀でも年功序列の壁が、俺達
を閉ざしているであろうから。  

 「そんな理由で、普通のお客さん向けに新館を
  建設中なんです」

 「商売繁盛なのは結構な事だ」

 「ありがとうございます」

毎年恒例で浴衣を着たクルーゼ司令が登場するが
、さすがは客商売、仮面のクルーゼ司令に動揺す
る従業員は、既に一人も存在しなかった。

 「さあ、露天風呂に行こうではないか」

 「そうですね」

ほぼ全員が集合し、自室に荷物も置き終わったの
で、俺達はこぞって露天風呂に直行するのであっ
た。


 「ラクス、決してあなたの胸が大きくなったわ
  けではないのです。もう少しすれば、確実に
  縮むのですよ。もう、授乳時期も終わるので
  すから」

 「シホは、全く成長が見られないようで・・・
  」

今年の女湯は、再び二人の貧乳コンビの対決の場
と化していた。

 「トップ5の内、マリューさんとレイナが欠席
  で、普通のカガリも欠席か・・・」

 「でも、新トップ5に入りそうなステラと、結
  構凄いルナマリアとアヤと、普通のメイリン
  が参加した事により、総合順位は下落っと・
  ・・」

 「ミリィ!カナ!事実を語って楽しいですか?
  」

 「カナ!私は一応、義姉なのですが・・・」

 「ははは。ごめんね」

 「そうだったね。ラクス」

 「でも、ディアッカ君の彼女のスタイルが凄い
  事」

 「羨望の眼差しってところね」

初参加のアヤのスタイルはモデル顔負けで、メイ
リンなどが羨ましそうに眺めていた。

 「同じ、モビルスーツ乗りだったから、締まっ
  ているけど、出るところが出ていて羨ましい
  ・・・」

 「あの・・・。ジロジロ見られると恥ずかしい
  んですけど・・・」

 「アヤって日本人だから、温泉に慣れているん
  でしょう?」

 「いえ。始めてです。生まれも育ちも大西洋連
  邦ですので」

 「ねえ。どうして、死んだはずのテロリストが
  ここにいるの?」

 「確かに・・・」

レナ中佐とジェーン少佐が、疑問に感じるのはご
く普通の事であった。

 「レナ中佐、ジェーン少佐。日本にはこんな諺
  があります。(沈黙は金)というものです。
  私達とお付き合いを続けるなら覚えておいた
  方が良いと思います。彼女の名前はアヤ・キ
  ノシタ。大西洋連邦出身の良く似た別人です
  わ」

 「あははは。そうなの?ラクスさんがそう言う
  ならね」

 「ええ。そうよね」

ラクスの笑顔を浮かべた説得で、二人はすぐに納
得する。
いや、させられた。

 「それにしても、参加人数が増えたわね」

 「旅館の人は大喜びよね。儲かってしょうがな
  いでしょうね」

 「ユリカさんはお子様体型の癖に、お金の話が
  好きね」

 「お子様体型で悪かったわね!ヨシナリは、満
  足しているから良いのよ!」

 「旦那さんって、ロリコン?」

 「ノーマルよ!」

 「ユリカさんも子供が出来れば、ラクスのよう
  に胸が大きくなりますよ。あくまでも、一時
  的ですが・・・」

 「シホ、また問題を再燃させましたわね」

 「そんな事はなくてよ。ラクス」

再び、シホとラクスの火花を散らした睨み合いが
始まる。

 「お姉ちゃん」

 「何よ」

 「シンが私を選ばなかったのは仕方がないとし
  ても、ステラを選ばなかったのは勿体ないよ
  ね。見てよ、あの胸」

 「あんたはオッサンか!」

天然であるステラは、どこで入手したのか?シャ
ンプーハットを使って髪を洗っていて、足元には
アヒルの玩具か転がっていたが、ルナマリアをも
圧倒するスタイルの良さを誇っていた。 

 「フレイはプラントでの生活はどうなの?」

 「結構退屈よ。良いお店とかが少ないし」

フレイとイザークは、オーブで大規模な結婚式を
挙げ、フレイもプラントに上がっていた。
この結婚は、フレイの父親であるアルスター外務
長官には大きな賭けであったが、大西洋連邦政府
では、プラント中枢とのパイプを繋げる事に成功
したという判断で、再び彼の評価を上げる事にな
り、毎日忙しい日々を送っているようだ。

 「嫁姑問題は?」

 「お義母さんが忙しいから、あまり会わないの
  よ」

 「それは羨ましいわね」

 「フレイ、妊娠した?」

 「しないわよ」

 「そう。胸が大きくて良いわね」

 「イザークが大喜びでしょう?彼、マザコンっ
  ぽいし」

 「昔も聞いたわよ。マザコンと巨乳好きって関
  係あるの?」

 「あるのよ」

 「別に大きくても良い事なんてないわよ。肩凝
  るし」

 「持つ者と持たざる者の差か・・・」

 「それにしても、広くなった分気持ちいいねー
  ーー」

 「本当よね。この人数でも足を伸ばしては入れ
  るんだから」

改装されて広くなった露天風呂の女湯は、沢山の
女性が入り乱れるパラダイスであり、当然制覇を
目論む不届き者は存在するのであった。


 「同志よ、集ったか?」

再び無謀な挑戦のために集まる男達がいた。
彼らは、生まれた国も年齢も所属も違っていたが
、目指すものはただ一つであった。

 「今回は、(エンデュミオンの鷹)が参加して
  くれる事になった。彼の能力は、目的達成の
  大きな助けとなるであろう」

 「ディアッカは、どうしたんだ?」

 「彼は裏切り者だ。彼女がいるから不参加だろ
  うな」

 「だろう?」

 「計画を打ち明けても暴露される危険があった
  ので、何も話していない。もし参加する意思
  があるなら、何も言わずここにいるさ」

 「なるほど」

 「今回は私、ハイネ・ヴェステンフルスが指揮
  を執る事にする。そして、年長者であるフラ
  ガ中佐には、様々なアドバイスをお願いした
  い」

 「了解だ」

皆は、今年こそはと思っていた。
一昨年は、ほとぼりを冷ますために、計画すらし
なかったのだが、去年は、温泉旅行自体が中止に
なってしまっていて、大きな欲求不満を抱いてい
たのだ。

 「今回もサイとカズイが参加してくれるそうだ
  。更に、ヨウランが加わって五人と言うとこ
  ろかな?」

 「それで、前みたいな事にはならないでしょう
  ね?」

 「サイ、前回は、相羽三佐の姑息な謀略のせい
  で失敗したんだ。今回は絶対に大丈夫!」

 「でも、レンジャー部隊が・・・」

 「カズイ、今回は別ルートから巡回表を入手し
  た。これなら、多少遠回りでも必ず成功する
  。さあ!出発だ!」

 「「「「おーーー!」」」」

だが、ここでヨウランが余計な一言を言ってしま
う。

 「ハイネさん、ステラも女湯にいますけど・・
  ・」

 「・・・・・・。しまった!中止だ!」

 「今更、引けるか!」

 「今になって気が付いたんですか・・・」

フラガ中佐が抗議の声をあげ、カズイが普通なら
一番に思う事を口にする・

 「とにかく!中止っうぐ」

 「ハイネさん!」

 「ハイネ、お前はここで寝ていろ!」

 「あっ!ミゲルさん!」

 「(黄昏の魔弾)か!」

中止を叫んでいたハイネが急に意識を失い、後か
ら遅れて宿に到着したミゲルが現れる。

 「俺は参加する!アビーは子供が小さいので、
  不参加だからな。だからあそこには、パライ
  ダイスが広がっているんだ」

 「俺もマリューが不参加だから、その意見に賛
  同だ」

 「俺は彼女がいませんから」

 「「彼女は元々不参加です!」」

 「では、ハイネが持っている地図を拝借して出
  発だ!」

 「「「「おーーー!」」」」

再び、男達は気合を入れてパラダイスを目指すの
であった。


 「風呂が広くなって気持ち良いな」

 「本当ですね」

 「我々のおかげで商売繁盛らしいからな」

俺とキラとクルーゼ司令は、熱燗の徳利を載せた
お盆を浮かべて、酒を飲みながら「タコわさ」を
食べていた。

 「キラは、こういう物を食べられるようになっ
  たんだな」

 「レイナは、日本食を良く作りますからね」

 「僕もそうですよ。もう、納豆も大丈夫です」

ニコルも加わって、日本酒を飲みながら「タコわ
さ」を食べていると、エドワード中佐が怪訝そう
な顔で俺達を見ていた。

 「それは何だ?」

 「(タコわさ)タコと山葵が入ってる」

 「タコ!そんな物を日本人は食べるのか?」

 「美味しいよ」

 「いらん!いらん!」

 「食わず嫌いなのに・・・」

 「でも、温泉は素晴らしいな。これで、混浴な
  ら更に良しなんだが」

 「日本の温泉は、水着とかはなしだからね。ま
  あ、混浴もあるけど、初心者にはキツイでし
  ょう」

 「なるほどな。それに、覗きに行こうと思って
  も、この警戒ではな・・・」

 「気が付いていたの?」

 「当たり前だ。鍛えられた兵士達の気配が、あ
  ちこちからするぜ」 

 「ホー三佐みたいだ・・・」

エドワード中佐は、伊達に「切り裂きエド」と呼
ばれて、恐れられていたわけではないようだ。
彼は、ホー三佐並に周囲の警戒網に早くから気が
付いていた。

 「俺は、前回痛い目を見ているからな。今回は
  余計な事には参加しない」

 「ハワード三佐は?」

 「アサギに今度見つかったら、別れると言われ
  てしまった。残念ながら不参加だ」

 「なら、これで今回の謀略は防げたかな?」

 「でも、何人かはいないぜ」

俺が周りを見渡して人員の確認をすると、六人の
人間が確認できなかった。

 「ミゲルさんとハイネさんか・・・」

 「サイとカズイもいません」

 「フラガ中佐もいない」

 「ヨウランがいませんね」

 「なるほど。彼女がいないか、参加していない
  奴らだけか・・・」

キラ、トール、エドワード中佐、シンが自分達の
友人の不在を報告する。

 「ヨシヒロさん!止めなくて良いんですか?」

 「大丈夫だ。手は打ってある」

 「カザマ、ミゲルに頭を殴られたぞ。痛くて堪
  らないぜ」

 「すまんな」

 「ステラへの口ぞえを頼むぜ」

 「任せろって」

 「「「「「ハイネ(さん)!」」」」」

覗き計画の首謀者と思われていたハイネが、後頭
部をさすりながら登場したので、全員が驚きの声
をあげる。

 「それで、どうなった?」

 「地図を持って出発したぜ」

実はハイネは、計画を潰すために俺が頼んだスパ
イであった。

 「山道を一時間も歩くあのルートをか。根性あ
  るよな」

 「確かに遠回りだけど、警戒網に引っかからな
  いからな」

 「そして、ここの女湯によく似た、隣の旅館の
  女湯に到着するわけだ」

 「でも、それだと隣の旅館の人達が・・・」

 「念のために聞いておいたが、今日は老人ホー
  ム(圭樹園)の貸切だそうな。平均年齢七十
  八歳の超熟女達が拝めるさ」

 「ご冥福を祈ります・・・」

キラの言葉に、全員が素直に頷くのであった。


(一時間後、ミゲル視点)

 「やっと、到着か」

 「疲れましたね」

 「でも、ここを登れば」

ミゲル達五人は、地図を頼りに道なき道を進み、
一時間をかけてようやく、この場所に到着した。
あとは、この斜面を登ればパラダイスがあるはず
である。

 「でも、前回と少し景色が違うような・・・」

 「あのな。前回と同じ場所なら、レンジャー部
  隊に袋叩きだろうが」

 「いや、もっと根本的に場所が違うような・・
  ・」

 「じゃあ、カズイはここで待機してろ!俺達は
  行くぜ!」

 「僕も行きますよーーー!」

五人の男達は、駆け足で斜面を登り始める。

 「はあはあ。ここを登れば」

 「ラクス様の入浴シーン!」

 「その他にも、多数の美女達が!」

 「パラダイスが、俺を待っているぜーーー!」

 「俺達は賭けに勝ったんだーーー!」

だが、眼下に広がる光景は、彼らの予想に反する
ものであった。


 「ユミさん、タオルを取ってくれないかね?」

 「ああ。いいよ。隣の旅館は若い者達が集まっ
  て、それは楽しそうじゃのう」

 「私達にも、あんな時代があったのう」

 「そうじゃのう。死んだ旦那は、自衛隊で航空
  機のパイロットをしていてな。私にぞっこん
  だったわ」

 「私は、四又をかけていた事があってな」

 「悪女じゃのう。サユリさんは」

平均年齢七十八歳の超熟女達の入浴シーンが、五
人の目に焼き付けられていく。

 「おや?あれは、隣の旅館の若者達かのう?」

 「若いって素晴らしいのう。覗きなんて修学旅
  行以来じゃ」

 「兄ちゃん達、あんまり見つめないでちょうだ
  いよ」

 「いやん。はははははは」


 「俺達の夢は?」

 「ロマンは?」

 「パラダイスは?」

 「僕の予感が当たるとは・・・」

 「すいませんでした。マリューで我慢します」

夢に破れた男達は、いつまも放心していたのであ
った。


 「では、乾杯!」

 「「「「「乾杯!」」」」」

入浴後、俺が乾杯の音頭を取り宴会が始まり、各
々が酒を飲み料理を食い、楽しそうに話を始める

 「でも、フラガ中佐は放心したままだな」

 「よっぽど、大きなショックを受けたんだろう
  な」

 「ミゲルもサイもカズイもヨウランもそうか・
  ・・」

例の女湯を覗きに出かけた五人は、魂が抜かれた
ような表情で、酒を飲み食事を食べていた。

 「それで、今回は、何か面白いゲームとかはな
  いんですか?」

 「シン、お前は子供かよ・・・」

 「でも、ラクスさんから一人一個ずつ景品を持
  ってくるようにと・・・」

 「俺は初耳だな」

 「みなさぁ〜ん!今回はビンゴ大会を行いま〜
  す。先に抜けた人から商品を取っていってく
  ださ〜い」

 「ラクス、酔っ払ってるな」

 「もうですか?」

 「日頃は飲まないから、弱いのさ」

仕方がないので、俺が宴会場のステージに上がる
と、ステージのうしろには、いつの間にか置かれ
ていた、沢山のプレゼントの箱が見える。

 「ヨシヒロ、早く早く」

 「俺は、商品を用意していないけど・・・」

 「私が用意しましたわ」

 「準備が素早い事で・・・」

 「では、ビンゴ大会の開始です」

酔ってはいても、ラクスは手際よくビンゴのシー
トを全員に回し抽選を開始した。

 「何で、俺がここにいるんだ?」

 「ガイ、温泉は最高だったし、料理も美味しい
  ですよ」

会場の端の席で、なぜ自分がここにいるのか理解
できていないガイと、美味しそうに料理を食べな
がら、オレンジジュースを飲んでいる風花ちゃん
を発見する。  

 「ガイ!いたのなら挨拶くらいしろよ!」

 「アスハ一佐に連れて来られたんだ。というか
  !俺はプロの傭兵なんだぞ!お前らと馴れ合
  うつもりはないんだ!」

ガイと風花ちゃんは、遅れて到着したアスランに
連れて来られたらしい。
実は、俺はよく事情を知らなかったのだ。

 「ガイ、これもお仕事ですから」

 「仕事?」

 「慰安旅行の代金を、ラクス様に出して貰って
  いるのです。 今までのお仕事で苦労をかけ
  たからと・・・」

 「確かに、掛け値なしで大変だった・・・」

伝説の傭兵として恐れられていた自分が、ラクス
に関わったばかりに「ピンクの死神」と呼ばれる
ようになり、最近では傭兵家業そのものすら、引
退をほのめかされているのだ。
これは、大きなピンチと言えるであろう。

 「それで、イライジャ達はどうしたんだ?」

 「ハワイに行きたいと駄々をこねたので、そち
  らで楽しんでいます」

 「・・・・・・・・・。まあ、無料なら良いか
  ・・・」

ガイは静かに酒を飲み始め、ビンゴ大会は進行し
ていく。

 「えーと。65だな」

 「リーチです」

 「俺も!」

 「次は・・・43だ。どうだ?」

 「やったーーー!一番!」

シンが最初にあがり、大喜びをしている。

 「それでは、商品を選んで下さい。ちなみに、
  箱を開けないと何が入っているのかがわかり
  ません」

 「運次第か・・・。よーし!これだ!」

シンが大きな箱を開けると、中から大きな鳥のロ
ボットが出てくる。

 「何ですか?これ・・・」

 「トリィーーー!」

 「気持ち悪っ!」

 「野太い声だな」

 「誰の?って、アスラン以外考えられないな」

 「俺が試作した(ビックトリィー)です。頭部
  には考えられる限りの多くのセンサーを搭載
  し、計算上では大西洋連邦軍の最新鋭無人偵
  察機に匹敵する偵察能力を持っています。口
  には、12.7ミリ機銃を装備し、爆撃能力
  も持っていて、最大積載量は三十キロとなっ
  ているのですが・・・・・・」

 「ですが?」

 「重量オーバーで飛べません。計算ミスですね
  」

 「つまり、この巨大なトリィーは、駝鳥並の価
  値しかないと?」

 「ええ。まあ・・・」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

アスランの言葉に全員が沈黙してしまう。

 「いりません」

 「駄目です。選んだ物は、絶対に持って帰って
  下さい」

ラクスの容赦ない一言で、シンは駝鳥ほどもある
「ビックトリィー」を自分の席の後に置いた。

 「トリィーーー!」

 「せめて、キラさんが貰ったトリィーのサイズ
  なら・・・」

 「次は12です」

俺は、落ち込むシンを放置して抽選を続ける。

 「あっ、俺ですね」

 「アスランか。どれを選ぶ?」

 「どれにしようかな・・・」

 「不幸になりやがれ!」

 「何か言ったか?シン」

 「いいえ。何も」

 「シンみたいに欲張るからいけないんだ。俺は
  このくらいのサイズで・・・」

アスランが普通の大きさの箱を選ぶと、中から不
気味な「人魚ミイラ」が出てくる。

 「これは、昔イザークが掴まされた偽物・・・
  。貰ったけど、いらないからディアッカにあ
  げたのに・・・」

 「俺だっていらないから、ここに出したんだ。
  アヤが不気味がるからさ」

 「ラクス・・・」

 「持ち帰って下さいね」

 「はい・・・」

アスランは諦めの表情で、自分の席の前に「人魚
のミイラ」を置くが、近所の席の人達には大不評
であった。

 「ざまあみろ!」

 「シン、こんなに大きいガラクタをどうするの
  ?運送費が物凄くかかるわよ」

 「ルナマリア、ガラクタは酷くないか?」

アスランは、ルナマリアの一言で大きく傷付いた
。 

 「そうなんだよな。(人魚のミイラ)は、小さ
  いからその点が有利なんだよ」

 「どっちもどっちだと思うわ」

 「次は8です」

 「私だ!」

 「ユリカか。運だけは強いんだな・・・」

 「えーと、これかな?」

ユリカが中くらいの箱を開けると、中から沢山の
通信販売で売られているバストアップ器具が出て
くる。

 「これ誰?」

だが、その質問に答える人は皆無であった。

 「自分で出した物を、間違えて選んだのでは?
  」

 「こんなインチキ商品は、使わないわよ!」

 「何でインチキって知ってるの?」

 「うるさいわね!貰うわよ」

 「「「(試すつもりなのかな?)」」」

ユリカはプリプリと怒りながら、自分の席に戻っ
てしまう。

 「では、次に行きましょう」

 「(もしかすると、ラクス?)次は24です」

俺は自分の妻に対する疑惑を抱えながら、次の抽
選を行った。

 「あっ、僕だ」

ビンゴになったカズイが前に出て、同じく中くら
いの箱を選択する。

 「パソコンか。欲しかったけど、性能はどうな
  んだろう?」

 「カズイ、僕が丹精込めて組み立てたから、最
  新機種に負けない性能を発揮するよ。理論的
  には、ジョシュアのマザーコンピューターに
  侵入が可能で・・・」

キラが嬉しそうな顔で自作のパソコンを説明する
が、その目は危険な人そのものであった。

 「普通の人は、そんな事をしない・・・」

 「そこまでの物を、求めていないんだけど・・
  ・」

 「次は11です」

 「当たった」

 「ステラか。どれを選ぶ?」

 「これが良い」

ステラが大きな箱を選ぶと、中から沢山の高級ブ
ランド製の服やアクセサリーやバック、靴、時計
などが出てくる。

 「凄ぉーーーい」

 「綺麗・・・」

 「私ですわ。買ってはみたものの、一回しか着
  なかったり、一回も使わなかった物ばかりで
  す」

忘れてしまいがちであるが、エミはお嬢様なので
、こういう物を沢山持っているのであった。

 「いいなーーー。金持ちって」

 「たかだか、二十万アースダラーほどの金額し
  か使っていませんわよ」

 「そんなセリフ。一回で良いから言ってみたい
  ・・・」

 「ステラ、良かったな」

 「うん」

 「シン!何であれを選ばないのよ!こんなガラ
  クタどうするのよ!」

 「ルナ!首を締めるな!苦しい・・・」

 「ガラクタはないよな・・・」

再び、自分の作品をガラクタ扱いされたアスラン
が、大きく落ち込んでいた。

 「うーん。無欲の勝利なのかな?次は3です」

 「やったーーー!私だ!」

 「ルナ、どれを選ぶ?」

 「当然、この大きい箱です。エミさんの商品が
  出た以上、ユリカさんの物もあるわけで・・
  ・」

 「(取らぬ狸の何とやら)だな・・・」

 「出でませ!ブランド品!」

ルナマリアが大きな箱を開けると、中から木製の
大きな仏像が出てくる。

 「これは・・・・・・?」

 「俺が日本の山中で修行を終えた時、そこの道
  場主がくれた物だ」

 「はははは。何これ・・・」

ホー三佐が持ってきた、全長1.5メートルほど
の仏像の前でルナマリアは放心していた。

 「良かったな。ありがたい物を貰って」

 「あんたもいらないから、ここに出したんだろ
  うがぁーーー!」

 「ぬぉーーー!」

ルナマリアの渾身のパンチで、ホー三佐は気絶し
てしまった。

 「恐るべし・・・。(赤い大虎)」

 「ルナも大変そうだな」

 「ええ」

シンの後では、「ビックトリィー」が野太い声で
鳴き、ルナマリアの後には大きな毘沙門天像が鎮
座していて、奇妙な空間が出来上がっていた。

 「続けるね。35」

 「俺だ」

 「石原二佐は、何を選ぶ?」

 「俺は意表を突いて、この小さな箱を選ぶ事に
  する」

石原二佐が一番小さな箱を選ぶと、中から大容量
のメモリーが、一枚だけ出てくる。

 「何だ?映画でも入っているのか?」

 「俺の珠玉のコレクションのコピーだ。世界各
  地のお店で集めた・・・」

 「えい!」

 「アサギ!何をするんだ!」

ハワード三佐が説明を終える前に、アサギがディ
スクを窓の外に放り投げた。

 「何か文句ある?」

 「いいえ。ありません」

だが、落ち込んでいるハワード三佐の手が、密か
に石原二佐の浴衣の胸元に新しいディスクを放り
込む。

 「(それが本命だ)」

 「(サンクス)」

 「えーと、次は・・・。44」

 「俺だ!俺はこの小さいので良い」

フラガ中佐が小さな箱を選ぶと、中から手作りの
お菓子が登場する。

 「(わらび餅)か・・・」

 「はーい!私が作りました」

毘沙門天像の衝撃から立ち直ったルナマリアが、
自分が作ったと名乗りをあげる。

 「いいねーーー。美少女の手作りのお菓子。昔
  の青春の日々が戻ってくるようだ」 

 「ルナ、初めて作ったの?(わらび餅)」

 「はい!」

 「フラガ中佐、危険だよ」

 「何だ?カザマも欲しいのか?駄目だぞ。俺の
  なんだから」

 「食べない方が良いと思う・・・」

 「男の嫉妬は見苦しいぞ。じゃあ、いただきま
  ーす」

フラガ中佐が「わらび餅」を口にした瞬間、彼は
トイレに向かって走り出した。

 「だから、忠告したのに・・・」

 「あれーーー?上手く出来たと思ったのに。シ
  ンにあげなくて良かった」

 「酷いな。生体実験だったのか・・・。次に行
  きますか?」

 「そうですわね。えーと、22です」

 「グゥレイト!俺だ!」

 「どれを選ぶ?」

 「これで良いですよ」

ディアッカが中くらいの箱を選ぶと、中から高級
ブランド製のスーツが出てくる。

 「普通に嬉しいな」

 「私が用意しました。サイズが違うなら交換も
  出来ます」

 「サイ、君は良い奴だな」

 「そうですか?」

 「ああ。ゴミを持ってくる奴もいる中、こんな
  に素晴らしい商品を持ってくる。人格者でな
  いと出来ない」

 「いやあ、そこまで褒められるとテレますね」

 「だがな・・・」

 「はい」

 「ここで、普通の事をしても目立たないぞ。君
  がその容姿のわりにモテない理由がそこにあ
  る!もっと、はっちゃけるんだ!」

 「そうだったのか!」

俺の忠告にサイががっくりと肩を落としてうな垂
れてしまう。

 「だが、これから頑張れば良いんだよ。全てこ
  れからさ」

 「わかりました!頑張ります!」

 「ヨシヒロ、せっかく良識のある素晴らしい方
  を捻じ曲げないでください・・・」

それからも抽選が続き、そこでは様々なドラマが
生まれ、消えていった。


 「はい。ニコルもビンゴね」

 「うーん。エレキギターですか。誰ってレイで
  すよね」

 「ミーアに貰いました。サイン入りだそうです 
  」

 「さすがは、芸能人ですね。僕には負けるでし
  ょうけど」

 「負けず嫌いだな。ニコル」


 
 「キラもビンゴ」

 「この仮面は?」

 「私が使っている物だ。これで、今日から君も
  ラウ・ル・クルーゼだ!」

 「別になりたくありません」


 「私、ビンゴです」

 「アヤ、好きな物を選んで」

 「洋服ですね」

 「私の出した物よ。あんまり着ていないし、高
  級ブランド製だからね」

 「サイズが小さくて入りません。特に胸とお尻
  が・・・」

 「ムカツクぅーーー!」

 「ユリカ、それは僻みと言うものだ」


 「イザークがビンゴね」

 「何という味わい深い皿なんだ。これは、価値
  がありそうだな」

 「相羽、あれさぁ・・・?」

 「コンビニの景品だ。弁当に付いてるシールを
  三十点集めると貰える」

 「本人が喜んでいるから良いか・・・」


 「ヨウランもビンゴだ」

 「何だ?この券は?」

 「俺が大食いで稼いだ無料食事券だ」

 「シン、期限切れてるぞ・・・」

 「あれ?」

 「お前、本当にバカだな・・・」


 「ふっ、私だな」

 「クルーゼ司令、何を選びます?」

 「ここは、この小さな箱で・・・って!(髭眼
  鏡)なんているか!」

 「実際に、使ってみたらどうです?」


更に抽選は続いていき、遂に俺とガイを残すのみ
となった。

 「うーん。当たらないなーーー」

 「司会者だから、丁度良いと思いますけど」

 「ラクスは何が当たったの?」

 「豊胸グッズです・・・(まさか、シホが同じ
  ものを出していたとは・・・)」

 「ふーん・・・・・・」

残りの連中にも、特に変わった物が当たった人も
いなかったので、省略して抽選を続ける事にする

 「1だ。やっとビンゴだ」

 「ヨシヒロ、何を選びますか?」

 「二つしか残ってないけどね。この大きい方で
  いいや」

 「欲張りな男だな。過ぎたる欲望は自分を滅ぼ
  すぞ」

 「大きなお世話だ。ガイ」

俺が大きな箱を開けると、中から虎柄のパイロッ
トスーツが出てくる。

 「これは?」

 「風花が持ってきた。ラクス様に事前に聞いて
  いたらしいな」

 「風花ちゃん・・・」

 「ここに来る前に、バルトフェルト司令の依頼
  を受けていまして。その報酬の一部というか
  、オマケというか・・・」   

最新式の携帯音楽プレイヤーを当てて、ご機嫌の
風花ちゃんが、俺に景品の説明をしてくれる。

 「いらないよな。俺は(黒い死神)なんだから
  ・・・」

 「でも、普段のノーマルスーツは、赤色ですよ
  ね」

俺は赤服時代に使っていた、赤いノーマルスーツ
を使い続けていた。

 「だって、機能に差はないからさ。色と外見の
  差だけじゃない。指揮官用の奴ったって」

 「じゃあ、これでも良いだろうに」

 「恥ずかしくてやだ」

 「ですが、持ち帰るのが決まりです」

 「あーあ。荷物になるなーーー!」

 「最後は俺なのか?」

 「はい」

最後に、ガイが隅に置かれていた一番小さい箱を
選択した。

 「小さいな。アクセサリーとか時計なのか?」

 「自分は何も持って来なかった癖に、欲張りだ
  なあ」

 「うるいさいな!俺は聞いてなかったんだよ!
  お前はどうなんだ!」

 「俺は聞いてなかったけど、ラクスが準備して
  くれた。内助の功ってやつだね」

 「古い言葉を・・・」

ガイが箱を開けると、中には一枚の紙切れが入っ
ていた。

 「何々・・・。(景品は発送を持って変えさせ
  て頂きます?)」

 「はい。私が用意した、ヨシヒロの出した景品
  ですわ」

 「中身は何なのです?」

 「秘密です」

 「よくわからないゲームだったな」

 「言えてる・・・」

こうして、今年度の温泉旅行は無事に終了し、全
ての日程を消化した俺達夫婦は、子供達の元に帰
るのであった。


(一週間後、アプリリウス近郊の基地のロッカー
 ルーム内)

 「さて、今日も教習を始めるかな」

生徒達に実習訓練を施すべく、俺がロッカールー
ム内の自分のロッカーを開けると、中に入ってい
るはずの赤いノーマルスーツが、一着も見当たら
なかった。

 「あれ?何でないんだ?」

 「すいません、カザマ教官。全部メンテナンス
  に出しているそうです」

 「へっ?全部をか?」

 「全部ではありませんよ。予備の新しいノーマ
  ルスーツが、残っているじゃないですか」

確かに、正確には一着のノーマルスーツが残って
いた。
そう。あの風花ちゃんから貰った、恥ずかしい虎
柄のノーマルスーツが・・・。

 「あれはキツイだろう?」

 「でも、(砂漠の虎)があつらえた奴ですよね
  。私は格好良いと思うのですが・・・」

俺の感覚がおかしいのか?ザフト軍将兵の感覚が
おかしいのか?「アフリカを切り取った男」とし
て、ザフト軍で崇拝の対象にまでなっているバル
トフェルト司令の趣味を、おかしいと断言する軍
人は非常に少数であった。

 「他にないの?」

 「普通の緑の奴ならありますけど、カザマ教官
  がそれを着てはいけませんよ」

 「駄目なの?」

 「はい。絶対に駄目です!」

 「とほほ・・・」

こうして、俺はあの虎柄のノーマルスーツを着る
羽目になり、アカデミーの学生達に爆笑されてし
まうのであった。
彼らに、バルトフェルト司令の功績は通用しなか
った・・・。


(同時刻、中東某国の砂漠地帯)

 「それで、ゲリラ勢力の数は?」

 「(センプウ)が二機と(バクゥ)が二機だけ
  だ。あとは歩兵のみだから数には入れていな
  い」

イスラム連合軍の情報将校の説明を聞きながら、
俺は久しぶりのモビルスーツ戦に心をワクワクさ
せていた。

 「でも、何で我々に頼むんだ?」

イライジャが、情報将校に質問をしている。

 「連中はコーディネーターです。イスラム連合
  軍のモビルスーツだと、最低でも五機の損害
  が出ると予想されています。あの大きな戦争
  の後で、五機も損害を出したら責任問題に発
  展しますからね。あなた達にお金を払うのが
  一番コストがかからないと上層部は判断した
  わけです」

 「実戦経験を積むのに、良い機会だと思うが・
  ・・」

 「それで、貴重なパイロットを戦死させでもし
  たら、また責任問題の発生です。我々はまだ
  貧乏なんですよ」

 「だから、傭兵の俺達の出番という事だな」

 「その通りです」

 「了解した」

 「任せましたよ。(ピンクの死神)」

 「・・・・・・・・・」

相手は金をくれる依頼人なので、反論をしなくな
った俺は大人になったのであろうか?それとも、
堕落したのであろうか?
そう考えながらハンガーに向かうと、そこには四
機の見慣れたモビルスーツが鎮座していた。

 「これは・・・・・・?」

 「ガイ、この前の景品だそうです」

 「あの、発送を持ってという奴か?」

 「はい。ラクス様がこれをと・・・」

 「俺の(グフ)は?」

 「長期のメンテナンスに入るそうです。あれは
  先行量産機で、あちこちにガタがきているそ
  うで・・・」

 「ガイ、どれにする?(ピンクちゃん)(ピン
  クさん)(ピンク様)(ピンク大臣)と揃い
  踏みだ。懐かしいな」

 「懐かしくなどない!」

 「ガイ、そう怒るなよ。改良されていて、性能
  は良いらしいぞ」

 「お前に取っては、他人事だからな。イライジ
  ャ」

 「まあ、そうかな」

 「イライジャも、その四機の中から選んで下さ
  いね」

 「何で?」

 「この前の任務で派手に壊したからです。あの
  (グフ)はガイの(グフ)の部品取り用にし
  ます」

 「そんなーーー」

イライジャが絶叫していたが、俺は彼に同情する
余裕がなかった。

 「それで、何を選びます?」

 「俺は(ピンクさん)で・・・」

 「俺は(ピンクちゃん)で・・・」

二人は仕方なさそうに機体を選ぶと、すぐにゲリ
ラの討伐を開始する。

 「ガイ、こういう時に何と叫べば良いんだ?」

 「それはな・・・」

 「「カザマの野郎!覚えてろよーーー!」」

こうして、ガイが無理矢理サラリーマンにさせら
れて、「サーペントテール」が解散するまでの一
年半ほどの間、「ピンクの死神」伝説は再び世界
を席捲するのであった。

 「(この四機なら、メンテナンス代が掛からな
  いのです。R−ジンの追加装備のデータが取
  り終わるまで、頑張って下さいね)」

そう呟く風花のポケットの中には、五百万アース
ダラーの小切手が入っていた。 


        あとがき

ピンク伝説再び。 

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