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「幻想砕きの剣 11-2(DUEL SAVIOR)」

時守 暦 (2006-09-20 23:21/2006-09-21 02:12)
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18日 昼 王宮 救世主チーム & 機構兵団



「「「「「「「「
  アハハハハハハハははっはははーーーははは!
                  」」」」」」」」


「笑い事じゃねーっつーの死ぬかと思ったんだからなー!」


 広間に響く笑い声。
 昼間になってようやく起きてきた救世主チーム(ルビナス・ナナシ含む)は、今後供に戦うであろう機構兵団に顔を見せに行った。
 シュミクラムについて興味を持ったのも事実だが、リコが治療したと言う女性の事も気になったのだ。

 訓練中の機構兵団だったが、未亜達が顔を出した時には何やら妙な空気が漂っていた。
 未亜と顔見知りだった透は、何やら殴られた後をつけた上に色々とボロボロな状態になっている。
 洋介とカイラはその透を見てニヤニヤしているし、ミノリとアヤネはと言うと、何だか冷たい視線を送っている。
 冷や汗をダラダラ流し、針の筵に座っている気分の透だった。

 何事かと思ってミノリに聞いてみると、何やら透が幼馴染の女性に痴漢行為を働いたとの事。
 ああ、そりゃ冷たい視線も送るわー、と納得しかけたが、そこで透が意義を唱えて乱入。
 数を増した冷たい視線に耐えながらも、医務室に乱入してツキナが怒るまでの経過を事細かに説明。
 それを聞いて、機構兵団及び救世主クラスが大爆笑しているのである。
 本気で死ぬかと思っていた透は、ちょっと涙目になっていた。


「あははは、はーぁ…笑った笑った…。
 まぁ、そりゃ透にも酌量の余地はあるよな」


「分かってくれるか洋介!」


「でも、着替え中に乱入して抱きしめたのには変わりない」


「…アヤネさん、もーちょっとオブラートに包んで…」


 透は遊ばれているようだ。
 持ち上げては落とし、救い上げては落下させ。
 生殺しとはこーゆーものか、と透は泣きたくなった。
 何が苦しいって、純真無垢なヒカルの視線に棘があるのが一番堪える。
 ミノリやアヤネは一応の理解を示してくれているが、ヒカルは一切手加減無しだ。


「ヒ、ヒカル…頼むから信じてくれ…」


「…ルビナスさん、こっちの機能の事だけど」


「うわ、無視したわあの子。
 結構いい根性してるわね」


 トドメを刺された透と、感心したように頷くリリィ。
 まだ笑っているカエデは置いておいて、ベリオはリコに向き直った。


「ところでリコ、どういう治療をしたのですか?
 洗脳を解除する方法は幾つかありますが、一晩二晩で解けるような代物ではないと思いますが」


「! き、君がツキナを…?」


「はい。
 治療としては簡単なものでしたが」


「いや…本当にありがとう。
 心の底からお礼を言うよ…。
 お礼にしては安すぎるけど、今度ご飯でも奢らせてくれ」


「…あの、ちょっと相馬さん?
 大丈夫なんですか、それ?」


「? 大河に言わせると、これが一番いい礼の仕方だって…」


「…」


 リコに涙ぐんで礼を言う透。
 本当に感謝しまくっているのだろう。
 …それはそれとして、後日、透がどのような目にあったのか、言うまでもない。
 流石に頭に来たらしく、シュミクラムまで持ち出して大河とドンパチやっていたそうな。


「それで、結局どういう治療だったのです?」

 問われたリコは、どう説明すべきか考え込んだ。
 これには他の皆も興味があるのか、笑いを治めてリコを見る。
 透は真剣に聞き入っていた。


「…一言で言うと、ナーバスな状態にしているのです。
 一種の暗示だと思ってもらっても結構です。
 ある種の脳内麻薬をある刺激によって多量に分泌させ、激昂させたり際限なく落ち込みやすくなったりさせているのです。
 カルシウムが足りないと怒りっぽくなるとか、そういう現象の強力版です」


「…つまり…感情の揺れ幅を意識的に大きくさせているのね?」


「そうなります。
 ツキナさんが相馬さんの言い訳も聞かない程に怒ったのは、その為でしょう。
 自分でも、以前のように自制が出来ない状態になっています。
 ですが、これは一時的な効果しかありません。
 相馬さんだけでなく、様々な人と関わり、喜び、怒り、哀しみなど、様々な感情を発現させていかねばなりません」


「…発現…って、どれくらい…?」


「強烈な感情であればある程に回復は早くなりますが、その分ヒステリーや錯乱を起こす可能性が高くなります。
 特に意識しなくても、普通に関わっていけば充分です。
 ある程度まで感情が回復すれば、後は自力で癒せますし、そちらの方が望ましい。
 それよりも、ツキナさんの心理的なケアが問題です」


「心理的なケア…?
 …そうか、まだ洗脳が解けきってないから、常時不安を抱えている状態なのね。
 それでなくとも、日常で細かい不安を感じる事は珍しくない。
 増して、今は“破滅”との戦いの真っ最中…。
 感情の揺れ幅が大きくなっている今、それらから受けるストレスは普段とは比べ物にならないほど大きい…」


 ミノリの考えに頷くリコ。
 実を言うと、言ってない事がある。
 リコがツキナを治療する際に、叩き起こされた為か半分以上寝惚けていたのだ。
 その時の事は殆ど覚えてないのだが、治療自体は朝飯前と言っていい。
 リコが日常的に扱っている赤の力を、何の加工もなくそのままダイレクトにツキナに注ぎ込むだけでよかった。
 それこそ掌に赤の力を集め、ベシンと頭を叩いてそれで終わりだ。
 が。
 眠さが苛立ちを呼んだのか、掌に集まった赤の力は本人の予想よりも少々多かった。
 それに気付かず、リコは赤の力を注ぎ込んだ。
 ツキナの方が空っぽに近かったし、受け止めきれずに破裂すると言う事はなかったのだが…やっぱり多すぎるものは多すぎる。
 その結果、ツキナは以前のように感情豊かになりはしたが…不安なども予想以上に感じるようになってしまった。
 本来ならば、洗脳状態よりも幾らかマシな受け答えが出来るようになる予定だった。
 つまり、透が危険な世界を垣間見たのは、ある意味リコのせいだったのである。

 …まぁ、これはこれで問題ない。
 足りないのを徐々に増やしていくか、多すぎるのを少しずつ減らしていくかの違いだ。
 ツキナに少々負担がかかるのが問題だが、回復が早くなるのでプラマイ0と言う事で。
 黙秘を決め込むリコだった。


「しかし、心理的なケアと言っても…。
 やはりアレでござるか、食い倒れとか昼寝とか?」

「カエデちゃんやナナシちゃんの脳なら、そのくらいで充分でしょうね」

「酷いでござるよルビナス殿!?」

「はーい、ナナシの脳はルビナスちゃん作ですの〜」


 カエデが酷いと言ったのは、ナナシと一緒にされたからか、或いは能天気扱いされたからだろーか。

 しかし、これはちょっと厄介な問題である。
 今のツキナは、些細な事でも結構な不安を感じ、ストレスを溜め込む状態にある。
 例えばセラピストを割り当てたとしても、知らない人間が相手ではそれだけでも警戒する。
 治療のつもりが、症状を悪化させかねない。


「そう言えば、そのツキナさんは何処へ?」 


「…ツキナさんは、クレアちゃんと一緒に居たよ」


「クレア様と?」


「ちょっと聞きたい事があるみたい。
 まだ面と向かって話すのは難しいかもしれないから、聞きたい事をプリントに纏めて渡してた」


 ヒカルの疑問に、黙っていた未亜がボソリと答えた。
 カエデやリリィは、訝しげな目を向ける。
 さっきから未亜が大人しい。
 綺麗所が揃っていると言うのに、Sモードもレズモードも発動してない。
 むしろ、何やら落ち込んでいるようだった。

 はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、と口からエクトプラズムとか出しそうな溜息を吐いた。


「…ど、どうしたの未亜ちゃん?」

「いや…自分がやってた事を第3者の視点から見る事になったと言うか…。
 私って、結構酷い事してたんだなーと思って」

「?」

「……さっき、クレアちゃんと一緒に居るツキナさんを見かけたんだけどね。
 ………その、ツキナさんが何をされたか…何となく見当がついちゃって」


 透の目が険しくなる。
 透もツキナが何をされたか全てを知っているのではないが、知っている一部だけでも殺意を抱くには充分すぎる。

 未亜の言葉は続く。


「まぁ、私もあーいうのが趣味だから、ツキナさんとは極力顔を合わせない事にしたの。
 ツキナさんが私に反応しちゃったらヤバイでしょ」

「まぁ、妥当な判断よね」

「「「???」」」


 リリィは頷くが、透達は首を捻る。
 何がヤバイのか、彼らは把握していない。


「自分の事を棚に上げるけどさ、あんなのは良くないよ。
 私だって相手の意思を無視した事はあるけど、あそこまではやらない。
 相手の意思を無視する事はあっても、その意思の存在を否定するような事はしない、したくない、出来ない。
 相手の合意がない限りは体に傷が残らないようにするし…。
 それでも、傍から見れば同じ穴のムジナなんだよねぇ…」


 自分のやっている所業を、第3者の視点から見るのは難しい。
 時には、自分がやっているのと同じ所業を見る事はあるが、それを見ても自分が同じ事をしていると気付かない者も居る。
 その点では、未亜はまだマシと言えるのかもしれない。
 やっている事は、同じ事だとしても。


「一人の女としても、一介のサディストとしても、レイカ・タチバナにはバッテンを出すよ。
 女としては言うに及ばず、サディストとしては…テクニック、その在り方、姿勢、どれも許容できない。
 でもねぇ…自分の醜さを突きつけられた気分だよ…」


((((((サディストなのか……))))))


 機構兵団、一瞬だが心が一つになる。
 そしてツキナと顔を合わせないほうがいいという理由も理解した。
 ちょっと未亜から距離を取る。

 未亜はまた溜息を吐いた。
 今度は鼻から魂とか出てきそうだ。


「こんな事も、本当は私じゃ言う資格なんて無いんだろうけどね…言わずに居られないし」


「未亜ちゃん、問題ないですの。
 こんな名言があるですのよ」

「?」



「心に
  棚を
   つくれッ!!
ですの!」


「…い、いやそれはちょっとアレな気が…」


「もっと心を広く!
 最大限に活用するですの!
 狭く考えない!
 大人になるですの!
 この場合活用するのは、自分勝手さとか、忘却能力ですの。
 それに未亜ちゃんがワルイコトをしているとしても、他の人のワルイコトが許される訳じゃないですの。
 罪人の未亜ちゃんでも、他の罪人を告発する事はできるですのよ?」


「…時々キツイ事言うよね、ナナシちゃんって」


 罪人と聞いて、微妙に心理的ダメージを受ける未亜。

 罪人云々はさておいても、未亜としては、結構な心理的なショックを受けているだろう。
 普段は気付かない自分、目を逸らしている自分、己の醜い姿を直視するのは、人生で最も恐ろしい瞬間と言っても過言ではない。
 合意の上ならともかく、相手の意思を無視して自分を満足させる…自分の傲慢さが浮き彫りになる。


「…でも、未亜ちゃんはサディストのままなんですの…」


 救世主クラスの心境はこれに尽きる。
 未亜も乾いた笑いを上げた。


「そっちはねぇ…。
 け、結局これって私の性癖だし…知らないままならよかったけど、もう自覚しちゃったし。
 これからは相手と状況をよーく選ぶよ…。
 まぁ、ほら、お互い盛り上がってる時は、そーいうのもワリと有り?な雰囲気にも、意外となるし」


 …これは改善と考えてもいいのだろうか?
 ヒカルは汚らわしいモノを見る視線を送ったが、誰も気にしない。
 その程度で動揺していては、救世主クラスではやっていけないのだ。

 それはともかく、矢張り未亜は苛立っているようだ。
 自分の事を棚に上げているのは百も承知だが、やはりレイカ・タチバナは気に入らない。


「でもさ、ツキナさんが立ち直ったんだから…V・S・Sはもうやっつけられるんじゃない?」


「まぁ…証言くらいは取れるわよね。
 ミノリ、どう思う?
 法律とか…」


「法律…とは言っても、今は“破滅”との交戦と言う非常事態ですから…。
 後々に響く事になりますが、強権を発動させる事は可能です。
 でも、今までやってないのは、V・S・Sも謝華グループも公的な会社には違いないからです。
 しかも、大きな影響力を持った…。
 もしも強権を発動させ、徹底的に探りを入れても何も出てこなかったら?
 相手は大企業です。
 弁護士とかだって、質のいいのが揃っているでしょうし…例え“破滅”との戦いの最中でも、裁判とか起こしてきますよ。
 仮に起こさなかったとしても…」


「“破滅”を退けた後、奴らに付け込む隙を与える事になる。
 それで何がヤバイって、連中が好き勝手に動ける範囲が増えるのがヤバイ。
 V・S・Sの洗脳技術で人知れず配下を増やして、一気にドン…」


 洋介は自分で言って苦い顔をする。

 その頃は王宮も疲弊しきって、更に民衆の暮らしの建て直しもしなければならないだろう。
 クーデーターが起きたとしても、防ぐ術はない。
 だから、“破滅”を退けさえすればいいのではなく、退けた後に人々を護る為、付け入る隙は極力与えない。

 話を理解しているのか居ないのか、ナナシと並んで座っていたヒカルがおずおずと発言した。


「…えっと、話がズレてるんじゃない?
 今はツキナさんのケアが問題だと思うんだけど」

「…そう言えばそうだったわね」

「…そっちは簡単だよ」

「え?」


 簡単、と言い切った未亜に視線が集中する。
 未亜は神妙な面持ちで、静かに透に向かって語った。


「相馬さんが一緒に居てあげればいい。
 夜には抱きしめて、添い寝でもしてあげればそれで充分。
 それがツキナさんにとっては、何よりの治療だから。
 私も一時期、あんな状態だった事があるから…。
 あれは…確か、事故で入院した頃だったっけ…?
 あの頃って虐められてて、お兄ちゃん以外に頼るものが無かったし」


「…そ、そう…なのか?」


 透は助けを求めるようにルビナスに目をやる。
 黙って肩を竦めた。
 確かに、ツキナの性格…透に対する想いと言った方が正確か…を考えれば、未亜の言う事にも信憑性がある。
 だが、ツキナが洗脳される過程を鑑みると、正直それでいいのか、と思う。
 トラウマになっているかもしれない。

 …ちなみに、救世主チームは未亜が虐められっ子だった事に心底驚いていた。
 今の彼女なら、逆に学校一つを支配下に置くくらい朝飯前だろう…。


「…トラウマに関しては、私の暗示で一時的に忘れさせる事ができますが…」


「いえ、それでは自分で気付かないストレスが溜まるだけでは?」


「…そう言うのも要らないよ。
 ツキナさんは、そういう人。
 相馬さんが一緒に居るなら、それだけで充分だって。
 まぁ、騙されたと思って一緒にいてあげなよ」


 リコとベリオの言葉を一蹴して、未亜はあっけらかんと言い放った。
 そして余計な一言。


「でも、手を出しちゃダメだからね。
 それはツキナさんが完治して、お互い告ってからね」

「…透、手を出したら殺すから」

「病人には何もしませんよね?」

「透はフケツじゃないよね?」

「…何もしねーよ…」


 苦々しげに答える透だが、彼には予想以上の艱難辛苦が立ち塞がる事となろう。
 何故なら、ツキナは彼の予想以上に女らしく成長しており、胸のサイズとかも結構大きいからだ。
 ツキナの子守をしている間、透は常に寝不足な上、ミノリ・アヤネ・ヒカルの冷たい視線に晒される事になる。
 …南無ー。


 一段落して。


「あ、そうだルビナスさん、ちょっと聞きたいんですが」


「ん? なーに?
 昨日のシュミクラムの説明、どこか足りなかった?」


「「「「「「いえいえいえいえいえ」」」」」」


 機構兵団総出で首振り扇風機と化した。
 ルビナスが説明モードに入ろうとしているのを見て取った救世主チームは、さっさと遁走体制に入っている。
 この辺の逃げ足は、流石にルビナスとの付き合いが長いだけの事はある。

 不満そうな顔のルビナス。
 余計な事を言い出す前に、ミノリがさっさと話を進める。


「シュミクラムに関わるようになってから、透さん達は夢を見るそうなんです。
 しかも、共通点のある夢を」


「夢? 夢くらい大抵の人は見ると思うけど…その共通点って?」


「女の子が出てくるんです。
 実を言うと、私も昨日見たクチで…。
 念のために確認してみましたけど、リボンとか服とか顔立ちとか、みんな同じみたいなんです。
 ひょっとして、シュミクラムの機能が何か作用しているんでしょうか?」


 そー言えばそんな話があったな、と洋介達は思い出す。
 昨日はバッタリ倒れていたから、あまり覚えてなかったが。

 ルビナスは、眉間に手を当てて何か考え込んでいる。
 ミノリはヒカルに目を向けた。
 ヒカルは困った顔をしながらも答える。


「ボクの知ってる限り、シュミクラムにはそんな機能は無い筈だよ。
 確かに人間の神経に直結して電気信号を読み取るけど、それは入力オンリー…読み取るだけでシュミクラムの方から何かを伝える訳じゃない。
 まして夢を見せるなんて…。
 まぁ、ルビナスさんが改良したヤツは出力もあるけどね」

「士魂号じゃあるまいし」

「リコ、黙ってなさい」


 考え込んでいるルビナスに、透が話しかける。


「あー、実を言うと、俺の夢だけはちょっと違うみたいなんです」

「…違う?」

「みんなが見る夢は、その女の子が明後日の方向を向いて立っているだけ…なんだよな?」


 透の問いに頷く機構兵団。


「でも、俺の見る夢は…ツキナに話しかけてたり、俺の方をじっと見詰めていたり…。
 時々、何か話そうとしているみたいです」

「…透、それ初耳」

「…言うほどの事でもなかったし、言う暇も無かったし」 


 アヤネは昨日、さっさと夢の世界に旅立っていたから尚更だ。


「…ツキナちゃんに…?
 ……私、ちょっと行ってくるわ。
 それぞれ訓練を続けておく事、いいわね!?」


「ヤ、ヤー!
 …って、ルビナスさん、まだツキナさんは!」


「手荒な事はしないわよ!
 考えている通りなら、悪い事にはならないしね!」


 ルビナスは残像を残しつつ、広間から出て行った。
 ツキナの所に向かうのだろう。
 …手荒な事はしないと言っていたが、少々不安だ。


「俺もちょっと行ってくる。
 あの子の事、どーも神経にひっかかるんだ」

「なんだ、透は結局ロリなのか?」

「ヒカル、よかったじゃない。
 チャンスは大いにあるわよ」

「え? そ、そうなの? ねぇ、とお…おにいちゃん?」

「だ、だからなー!」

「透、顔が赤い」

「……何とか更生させないと…」


 洋介の軽口にカイラが乗り、責め時を逃がさず「おにいちゃん」と呼ぶヒカル…流石に抜け目が無い。
 それに反発して赤面しつつ叫ぶ透に、アヤネとミノリの追撃。
 これが機構兵団の基本的な流れらしい。

 その上、ここには救世主チームまで居るのだ。


「大丈夫でござるよ相馬殿。
 拙者の世界では、稚児趣味は然程珍しくないでござる。
 衆道も結構居たでござるしな」

「ここはアヴァターだろうが!」

「そー言えば、相馬さんって別の世界から召喚されたかもしれないんでしたっけ。
 お兄ちゃんを相手に、ちらほらそんな事を言ってたような」

「確定ですの?」

「確定ね。
 もし違っても、名誉毀損にはならないわ」

「大河君だって、ロリだけど誰も責めませんからね。
 それに、一部の人達が法改正を迫った事があるんですよねー」

「結局失敗しましたが、合意の上で、幾つかの条件を満たせば犯罪にはならなくなったんでしたっけ?
 手続きもしないといけないから、利用者は誰も居ないそうですが」

「大河が『なんて素晴らしい法律なんだ!』って叫んでたわね」

「そんな法律ある筈無いだろうがーーー!」

「いやマジで」

「リコさん、その手続きってどうやるの?」

「ヒ、ヒカルちゃん!? ダメよ、もっと自分を大切にして!」

「…透…書類に判子を押したりサインしたら、地の果てまで追い詰めて斬る…」


 勿論冗談だ。
 …3名ほど、限りなく本気の人々も居るが。


 …多分。


「…ガイキチが集ってるのか…?」


 透を肴にして大笑いしていたメンバーに、突如乱入者が現れた。
 ほえ、と気の抜けた顔で振り向く透達。

 そこには小柄な、チャイナドレスを着た少女が立っていた。
 その隣には、彼女を案内してきたのかルビナスも居る。
 透とナナシは彼女に面識がある。


「あ、リャン…。
 どうしたんだ、いきなり王宮に…?」


 先日協力を求めた、フェタオに所属するリャンである。
 チャイナ服とスリットから覗く純白の太股に反応したのか、未亜の目がピキーンと光る。
 救世主クラス、総出で抑えた。

 しかし、何故彼女がココに?


「進展があったから、報告に行って来いってクーウォンに言われたんだ。
 そうでなければ、どうしてこんな敵地の真っ只中に…まぁ、王宮の中に興味があったのは確かだけど。
 クレシーダ王女には、他の人達が報告に行ってる。
 私はついでに、顔を見に来たってワケ」

「リャンちゃんお久しですの〜」

「リャン? リャンって、ひょっとしてフェタオのリャン?」

「や、ナナシちゃん。
 それと……誰?」


 にこやかに挨拶するナナシと、透の影から首を出してリャンを見るヒカル。
 リャンは挨拶を返したが、ヒカルに関しては会った覚えがない。
 普通の人なら、フェタオのメンバーの名前など知っている筈も無いし。


「ああ、コイツはバチェラだよ。
 こんな小さな女の子だって知った時にはビックリしたぜ」


「…バチェ…ラ…?」


 首を傾げるリャン。
 ヒカルは哀しげに眉を顰めた。


「ひょっとしてリャン、発作が…?」


「発作の事まで知ってるんだ…。
 2ヶ月くらい前にね、ちょっと…。
 割と軽い発作だったんだけど」


「ステッペン・ウルフと一緒に居たヤツだよ。
 思い出せないか?」


「ああ、それなら覚えてる。
 透達の中で、一人だけリビングデッドみたいなのが居た。
 あれがバチェラなんだ」

「それだけ覚えててくれれば、リャンにしては上出来かな…」


 そう言いつつも、ヒカルの表情は晴れない。
 リャンとバチェラは、結構仲が良かったのだ。

 ナナシは透の袖を引いた。


「あの〜、発作って何ですの?
 例えば月に一度は穴を掘って何か叫びたくなるとか、時々血が吸いたくなるとか、奇声を挙げながら夜の街を走り回りたくなるとか?」

「人をヘンタイ扱いするな!
 単に物忘れが激しいだけだ!」

「あ〜ん、ごめんなさいですの〜」

「…!?」


 持っている扇でナナシの頭を引っ叩き、結構な剣幕で怒るリャン。
 が、叩いた拍子にナナシの首がポロリ。
 ここ数日の付き合いで慣れている機構兵団や救世主チームはともかく、いきなり首が取れたらそれは驚くだろう。
 顔を蒼白にして、口をパクパクさせている。
 そして人が悪い事に、誰も何も言ってやらない。

 …フェタオのアジトで、ナナシの首が空を飛んだ事は記憶に無いらしい。
 本当に物忘れが激しすぎるようだ。


「取れちゃったですの〜。
 ルビナスちゃ〜ん、ちょっと接着面が弱すぎですのよ」


「いいじゃない、面白いから。
 そもそも、その位にして欲しいって言ったのはナナシちゃんよ」


「せ、接着面って…等身大プラモデル…!?」


 呆然としつつも、リャンが言葉を搾り出す。
 余談ではあるが、洋介が常に持ち歩いている『溶ける手』なる悪戯用具に自信を喪失していた…本人は面白いと思っていたようだが、少なくともインパクトはナナシの方が大きい。
 真剣にパワーアップを目論んでいるようだが、最終的には手を握る→即自爆の究極コンボを期待したい。

 苦笑しながら、リャンの背中を叩いて落ち着けと諭す透。


「いいんだよ、それはナナシちゃんの特技みたいなモノだ。
 大体、首が外れるくらい珍しくないだろ、アヴァターでは。
 ロボット伝統芸だぞ、首が外れるのは」

「この子、ロボット…?」

「ホムンクルスよ。
 ま、その辺は気にしないが吉ね。
 ところで…とっと聞き辛いんだけど、発作って何なの?」

「え、あ、うん…時々ね、記憶の一部がゴソっと欠け落ちるんだよ」


 あまり明るい話題ではないが、ナナシの生首ショックが長引いているのか、暗い口調ではない。
 ケタケタ笑うナナシ(生首)を手に持って、断面とかをじっくり眺めている。
 元々好奇心は強いのだ…たまにそれで死に掛けるが。


「何だか昔の事故か何かでこうなったらしいんだけど…。
 正直、結構キツイんだよね…。
 普段はいいんだけど、記憶が無くなる瞬間って…なんて言うか、自分が消えていくような感じで…」

「………」


 ナナシをお手玉するリャン。
 頭は結構重い物だが、リャンならこの程度朝飯前だ。
 クーウォンから、戦闘のための訓練も受けている。


「えーと、リャンさん?
 それ、治したいよね?」

「治るものならね。
 クーウォンが治療方法を探してくれてるけど…まだ手掛かりも無いみたい」


 顔を見合わせる一同。
 そして視線がある人物に向かった。
 言わずもがな、ルビナスである。

 無言の期待を受けて、ルビナスはちょっと考えた。


「多分出来るわよ。
 脳の中身は私の手にも負えないけど、要するに常時バックアップを取っておけばいいのよね」

「そ、そんなアッサリと!?」

「?」


 思わず叫ぶヒカルと、首を傾げるリャン。


「何が出来るんだ?」

「だから、リャンの健忘症の治療だよ」

「健忘症とかアルツハイマーとか言うなー!
 …って、治せる?
 本当に!?」


 勢い込んでルビナスに詰め寄るリャン。
 が、後ろから透が羽交い絞めにして止めた。
 ルビナスに掴みかかるなんていう暴挙に出られたら、何が起こるか分かったものではない。

 リリィが冷静に聞く。


「それで、どうやって治療する気?
 また新しい脳でも作ってダウンロードするの?」

「…ねぇ、それって脳に誰かの人格をコピーしてるだけで、本人じゃ無いんじゃ…」


 カイラの何気ない疑問。
 だが、ルビナスとナナシは思い切りイヤそうな顔をした。
 それを見て、自分の失言を悟るカイラ。
 訓練で疲れていたとは言え、あまりに浅慮な一言だった。


「まぁ、言いたい事は分かるけどね…。
 正直な話、それについては誰も答えられないのよ。
 意識や人格をコピーするのと、ダウンロードするのは全く別物。
 それが単なる“コピー”だった場合、複製を作るだけで、オリジナルはコピーと刷り返られて破棄…殺されるのと大差ない。
 意識をダウンロード…文字通り移した後の脳に、何も残っていないのかと言われると…正直、証明できない。
 ただ、何をやっても死体と同じ反応しか返さないから、人格とか魂とかが移動していると思われる…程度の事なの。
 まぁ、他にも色々と根拠はあるんだけどね」


「我思う、故に我有り…か。
 ちょっと用法が違うけど、自分を自分だと認識し続ける事で自己を保てるって事?」


「ま、そうなるわね。
 私自身、オリジナル…つまり最初の体で生きていた頃の私と同じなのかと聞かれるとね…。
 人間なんて変わっていくものだし。
 そもそもナナシちゃんなんてどうなるのよ。
 元は私が作ったホムンクルスの体から勝手に生まれた人格よ?」

「ナナシは木の根っ子から生まれたですの!」

「いや自慢しても」

「…まぁ、いずれにせよ今回はホムンクルスは使わない。
 よーするに、外部記憶装置があればいいのよ。
 人間の脳だって電気信号で動いてるんだし、ちょっとした手術でバックアップを取れるようにぃぃぃ!?」

「逃げろ!
 逃げるんだリャン!」

「マッドの実験台にされるわよ!」

「人間止めたくなければ、早く「うるさーーーい! 揃いも揃って人をヘボ科学者扱いするなーー!」


「…な、何なんだ…」


 止めにかかった透達を一蹴するルビナス。
 リャンはイヤな予感とかをビリビリ感じていたが、記憶の欠如が直ると言うのは…あまりに魅力的な提案だった。

 暫し迷い、ルビナスを見る。


「…確実に成功するか?
 副作用とかは?」


「既に確立された技術だから、然程難しくはないわ。
 ただ、手術をしなければいけないのだけど…。
 まぁ、失敗したら普通に死ぬ」

「成功率は?」

「環境さえ整えれば、90%以上ね。
 無菌室が絶対条件だけど、まぁ…これは特別仕様の結界で充分。
 必要な道具も…2日もあれば揃うわ。
 後は保護者の同意のみね」


 流石に悩むリャン。
 手術の成功率云々以前に、やはり体を弄られるのには抵抗がある。
 それに、何と言っても脳の手術なのだ。
 確実と言う言葉は望めまい。
 …そして。


「…髪…全部剃らなきゃダメ?」

「…剃った方が遣りやすいわね」


 長く伸ばし、団子を2つ乗せているリャンの髪。
 これでも結構念入りに手入れをしている。
 これを全部剃るのは…流石にちょっと哀しい。

 一方で、ヒカルや透が丸坊主のリャンを想像して吹き出した。
 取り敢えずそっちには鉄扇で報復をくれてやる。


「…剃らないとダメか?」


「別にダメって事はないわよ。
 私の技術力をナメてもらっちゃ困るわね。
 別に困った事はないけど。
 まぁ、アレね。
 一番いいのは、手術前に一度剃って、手術後にカツラを被るか、さもなくば私特製の毛生え薬を飲むか」


「…えっと、ルビナスさん…その毛生え薬って、ひょっとしてダウニー先生に…?」


 恐る恐る聞く未亜。
 ルビナスはあっさり頷いた。
 と言う事は、十中八九面白可笑しい髪型で生えてくるのだろう。
 そこからまた髪を切って整えればいいだけの話だが、まぁ何と言うか同情の余地はある。


「ちなみに、何だかダーリンが欲しがってたわね。
 お友達の知り合いに、薄幸で頭がピンチな神父さんが居るそうだから、プレゼントしたいって」


 無論、横島の知人のあの人だ。
 ハ…もとい光り輝くあの方に、ルビナス特製の毛生え薬…。
 神父の特徴(ネタとも言う)が一つ消えるか、それともルビナスの薬が敗北するか…実に見物だ。
 ただし鑑賞する際には、安全を確保しておく事を忘れずに…、確保してもムダっぽいが。

 暫し悩むと、リャンは頷いた。
 髪は女の命だ。


「大変だとは思うけど、髪を切らずにやってくれ」


「オッケー。
 クーウォンさんの許可が得られたら、またいらっしゃい。
 30分もすれば、大まかな手術の計画書を書き上げておくからね。
 後で私の部屋に取りに来て」


「わかった」


 頷くリャンに向けて、救世主クラスは青い顔で首を(言うまでもなく横に)振っていた。
 ルビナスの私室=事実上実験室に踏み込むなど…怖いもの知らず以外の何者でもない。


「そう言えばルビナス、ツキナさんの所に何か聞きに行くんじゃなかった?」


「行ったんだけど、丁度報告に来たリャンちゃんと鉢合わせしたのよ。
 彼女の事は、ナナシちゃんの得た情報で知ってたし…。
 これから改めて聞きに行くの」


「あ、俺も行く。
 それじゃリャン、またな」


「ん? ああ」


 適当に手をヒラヒラ振って応じるリャン。
 リャンは透の顔を見に来たようなものだから、透が行ってしまうとここに来た意味も無くなるのだが…。
 それとは別に、シュミクラムに興味を持ったようだ。
 まぁ、アヴァターでも珍しい機械機械した鎧だ。
 興味を持つのも無理はないだろう。


 透達が出て行った後、機構兵団は休憩を終えてシュミクラムを起動させる。
 ヒカルだけは遠隔操作だが、危険が無い訳ではない。
 シュミクラムを上手く動かそうと思ったら、それだけシュミクラムに精神を集中させなければならない。
 その分、フィードバックが激しくなるのだ。
 今までのヒカルは、そのようなダメージを受けた事が無かったが…。

 ウィーンウィーンと低い音を立て、体の各所を動かして異常が無い事を確かめる。
 カイラは何故かラヂオ体操をやっていた。

 ミノリがオペレートを開始する。


「それでは皆さん、準備はいいですか?
 今度は空中での滑空がメインの訓練となります。
 そこのバルコニーから、先程の草原へ向かってください」


「そりゃいーけどさぁ、こんな所から飛んで大丈夫なの?」

「これは普通に怖いよなぁ…」


 渋るカイラと洋介。
 尤もな意見である。
 ルビナスの科学力は2人もよーく知っているが、ここは王宮の4階だ。
 飛ぶとなると、高所恐怖症でなくとも普通に怖い。


「…大丈夫、だと思う。
 いざとなったら、バーニアを吹かして着地の衝撃を和らげれば…」


「大丈夫だよ、この程度ならボクも何度も飛んでるからさ」


 ヒカルとアヤネは平静なようだ。
 ただ、アヤネはちょっと冷や汗を垂らしているが。

 それぞれブツブツ言いながらも、バルコニーの端に歩み寄る。


「では、経験者のヒカルさんから、アヤネさん、洋介さん、カイラさんの順で飛んでください。
 ヒカルさん、何かあった時には救助をお願いしますね」


「任せといて!」


 頼りにされて張り切るヒカル。
 特に気負った様子もなく、バルコニーから軽く飛んで滑空を始めた。
 流石に動きに淀みが無い。

 一方、ヒカル本体はと言うと…ミノリの隣で、何かよく解からない機械を付けて寝転んでいた。
 どうやら、これが遠隔操作のためのアイテムらしい。
 未亜が落書きしようと近寄ったが、ミノリが威嚇して追い払う。


「それじゃ、お次の方どうぞ」


「あ、私も一緒に飛んでみるわ。
 何かあった時、人手は多い方がいいでしょ?」


「は? ああ、レビテーションですか。
 それではリリィさん、お願いします」


「しからば、拙者も行くでござるよ。
 空中浮遊は出来ぬでござるが、屋根の上を走れば充分追い付けるでござる」


「では、よろしくお願いしますね」


 リリィはレビテーションは苦手ではあるが、滑空するシュミクラムに追い付けない程ではない。
 スピードを出せば話は違うだろうが、これは訓練だ。
 そこまではやらない。

 ライテウスの力を借りて軽やかに宙に舞うリリィと、鉤縄を片手に屋根を走るカエデ。。
 ひょっとしたら、シュミクラムに対して妙な対抗心を抱いたのかもしれない。
 ちなみに、普通に飛べそうなナナシはベリオと供にヒカルの体の警護に当たっている。
 ミノリだけでは、悪戯しようとする未亜に対抗できない。


「…ねぇ…えーと、ミノリさん?
 オペレートのマニュアルって、これ?」


「そうですよ。
 まだ全部覚えきってはいないので、読むのはいいけど必要になったらすぐに返してくださいね」


「うん」


 パラパラと斜め読みするリャン。
 中に何が書いてあるか、理解なんぞしてないだろう。
 ミノリとしても、ルビナスから(長ったらしい)説明を受けてなければ2割も理解は出来なかった筈。

 そうこうしている間に、洋介とカイラも宙を舞う。
 リリィは少々低い高度を飛んでいるが、これはスカートの中身を見られないためと、落下した時にすぐに助けに行けるようにだ。
 まぁ、洋介的にはリリィの年齢はギリギリ射程範囲外のようだが。


「それでは、徐行しながら草原に向かってください。
 それぞれのルートはこちらから転送します」


『ヤー』×4


 通信機を通じて、返事が返ってくる。
 ミノリはどうにも、この感覚に慣れない。
 四人が一度に耳元に囁いているようだ。


「えっと、転送の方法は…。
 まず全体のマップを出して、それぞれのルートを書き込み、転送先を決定。
 それから実際に送るコマンドは……ええと、リャンさん、マニュアルを返してください」


「データの送信なら、Ctrを押しながらCを二回って書いてあったよ」


「あ、そうでした。
 Ctr、C、C…はい、転送完了です。
 それぞれチェックポイントを通過しながら、草原へ向かってください」


『ヤー』×4


 ミノリは通話ボタンを切った。
 ふぅ、と溜息をついて…ふとリャンに目を向ける。
 リャンは丁度マニュアルを読み終え、ミノリにマニュアルを返した。

 察するに、ミノリがマニュアルを返してくれと行った時には、既にマニュアルの最後の方を読んでいた筈。
 しかし、データ送信コマンドはマニュアルの序盤に書いてあった。
 そもそも、リャンは斜め読みしかしてない筈だ。


「…リャンさん、ひょっとしてそのマニュアルの中身…」


「大体覚えてるよ?
 普通そうでしょ」


「いやいや、普通は覚えられないって。
 そんなルビナスさんが趣味に偏りながら作った、分厚いマニュアル…」


 パタパタと手を横に振る未亜。
 ベリオとナナシも頷いた。
 ルビナスと同じ知識と脳を持つナナシでも、マニュアルの内容を理解するのは至難の業だったようだ。

 リャンは首を傾げる。


「私だって、内容なんか理解してないよ。
 でも覚えるだけなら」

「普通はそれも出来ませんよ」

「…本当? 特別に意識してやってるんじゃないんだけど」

「……テメー何かー!?
 それじゃテスト勉強も不要って事かー!?
 私やお兄ちゃんが、地球で赤点取らないように必死で頑張ってたっていうのに、リャンさんはちょっと教科書に目を通しただけで100点軽く取れるって言うのかー!?
 不公平だー、絶対おかしいー!
 テスト勉強の苦しみは、ジャパンの中学生から高校生はみんなで平等に味わうべきモノだー!」

「な、何だよ!? 私はジャパンじゃないぞ!? ジャパンって何だ!? 焼き立てなのか!?」

「未亜ちゃん落ち着くですのー!
 それは未亜ちゃんじゃなくて、時守の魂の叫びですのー!」

「私のだろうと作者のだろうと、羨ましいモノは羨ましいー!」


 唐突に爆発した未亜。
 思わず距離を取るリャン…無理もない、いきなりキレるアブナイ人にしか見えまい。
 とは言え、未亜の主張もちょっとだけ理解できるベリオだった。


 一頻り暴れてスッキリしたのか、未亜は正座してお茶なぞ呑んでいた。
 ベリオが入れたお茶なのだが、実は鎮静剤や精神安定剤をコッソリ混ぜているのは秘密である。


「とにかく、リャンさんはこのマニュアルの内容を全て覚えているのですか?」


「全部って訳じゃないよ。
 目を通した所だけ」

「…データ保存のコマンドは?」

「Ctrを押しながら、C、S」

「残弾とチャージ状況の確認」

「L、S。 オプションは色々」

「データの読み出し」

「コマンドラインにcat」

「自爆コマンド」

「…そんなのあるの?」

「ルビナスさん作だから、多分隠しコマンドであるよ」

『あってたまるかー!』

「あ、アヤネさん」

「通信を繋ぐ方法は、tellnetを使って対象の認識番号を入力すればいいんだっけ」


 ミノリの質問に淀みなく答えるリャン。
 物騒な内容を聞いたアヤネが叫んだが、それはスルーの方向で。
 ともあれ、どうやら本当に目を通した所は全て記憶しているらしい。
 リコが珍しく、初対面の人間に向けて感歎を露にした。

 それを見て、得意満面になるリャン。


「へへん。
 確かに私はバカだけど、記憶力には自信があるんだ。
 あの発作さえなければ…」


 一瞬沈む。
 だが、その発作も対策が出来た。
 …知らぬが仏、と言う言葉があるが…この意味は言わずとも分かるだろう。

 ミノリが何やら考えている。


「…ミノリさん?」

「………リャンさん、軍に入りませんか?」

「へ?」


 唐突な展開に、キョトンとするリャン。
 しかし、ミノリは真剣な面持ちだ。


「正直、私一人では機構兵団のサポートが間に合いません。
 普段はともかく、乱戦時になるとどうしても…。
 誰かサポートが必要だって、ルビナスさんも言っていたんです。
 ナビゲートの為の計算はともかく、私の口は一つしか無いので、複数の相手に同時に別々の情報を伝える事ができないんです。
 そこで…」


「ちょ、ちょっと待って!
 私はフェタオのメンバーだよ!?
 それに記憶力がいいからって、ハガレンじゃあるまいし!」


「問題ありません。
 リャンさんは…まぁ、テロリストではありますが、フェタオは無差別に被害を出すような事はしませんし…。
 それに、それを言ったら透さんもカイラさんも洋介さんも、元盗賊みたいなものです。
 大体、リャンさんはフェタオに属して何をしたいのですか?
 立ち入った事を言わせてもらいますが、やっている事はともかくとして、このままでは必ず社会から弾き出されて、行き着く先は水商売とかですよ」


 正直、ミノリにとってテロリストは憎悪の的と言えるが…。
 目の前に居るリャンは、とてもではないが憎悪を抱く対象には思えない。
 それに、軍に入る事でテロリストから足を洗い、更生してくれたら…という思いもある。
 まぁ、更生した後が軍人では救いが無い気もするが。

 思わず考え込むリャン。
 彼女は水商売の意味を知らなかったが、あまり良い環境の仕事で無い事は察しがついた。
 実際、クーウォンも同じような事を時々言っているのだ。
 発作を抑える手段が見つかったら、フェタオを抜けて何処かに就職しろ…と。


「…悪いけど、私は軍人になる気はないよ」

「…そうですか…」


 暫し迷って、しかしキッパリと言い切るリャン。
 残念そうなミノリだが、これ以上強引に勧誘しても意味が無さそうだ。
 彼女にも色々と都合があるのだろうし…だからテロリストをやってもいいと言う訳ではないが…彼女はまだ若い。
 決してミノリ達が歳を喰っている訳ではないが、やはり彼女には様々な可能性が残されている事だろう。
 軍に入れて、それを狭めてしまう事もない。


「あ、でも…訓練の手伝いくらいならしてもいい」

「いえ、有難いけれどそれには及びません。
 それならば一人で出来るようにしないといけませんから」

「…それもそうだな」


 納得したリャンだが、オペレータの仕事自体には興味があるらしい。
 ミノリの手元を、興味深げに覗き込んでいる。

 マジックペンを片手にナナシ&ベリオ防衛ラインと熾烈な戦いを繰り広げていた未亜が、くるっと振り返った。


「ところでさ、リャンさんってどうしてフェタオに居るの?
 私達よりも年下なのに、戦力として数えられてるんでしょ」

「ちょ、未亜さん踏み込みすぎです!」


 慌てるベリオ。
 ひょっとしたら、両親がV・S・Sに何かされた、とかそういう過去があるのかもしれない。
 ところが、当のリャンはミノリの手元を覗き込んだまま、何の気なしに答えた。


「いやー、それがサッパリ覚えてないんだよねぇ」

「え? …あ、発作…」

「かもしれないけど、どうも違うっぽいんだよ。
 聞いた話じゃ、私はフェタオの結成時からクーウォンに連れられていたらしいし」

「フェタオのリーダーに?
 …ひょっとして親子とか?」

「違うっぽいよ。
 顔とか全然似てないし、よく解からないけど血液型がどうとかって」


 どうやら、自分でもその疑念を持って調べてみたらしい。
 …他人に教えられた事を鵜呑みにしている可能性が高いが。

 と、ミノリの元に入ってくる通信。


「…はい、チェックポイントを全て通過し、全員目標ポイントに到達しました。
 次の訓練に移ります。
 次は…」


 ミノリの手元にある機械のウィンドウ…パッと見た感じ、ノートパソコンのようだ…を、よく解からない数字が行き交っている。
 リャンはそちらの数字の事は、サッパリ解からないらしい。
 ミノリは次の指示を送って、迷いながらもコマンドを入力する。


「…なぁ、この数字は何だ?」

「それはシュミクラムの高度を表しているんです。
 海抜表示や地面からの高さなど、幾つか表示があるんですよ。
 ただ、地面からの高さは時々誤差が出ますけど」

「ふぅん…じゃ、こっちは?」

「何だと思います?
 歩く時とかには常に変動するんですよ」

「………あ、そっか、移動のスピード!?」

「はい、よく出来ました。
 ではこちらは?」


 リャンの好奇心を満たすかのように、次々と質問と回答を繰り出すミノリ。
 それを横からボーっと見ているナナシ。


「…何気に教育してるですの…」

「結構強かですね、ミノリさん…」


 …スカウトは無理と諦めても、志願してきた時の為に一通りの知識を教え込もうとしているようだ。
 このまま続けば、リャンは済し崩しにミノリの手伝いを引き受けてしまうかもしれない。


「…大人しい顔してても、結構やるよね…この世界の人達…」


 人の事は言えない。

 リャンとミノリが色々話していると、部屋に兵士がやってきた。
 よく解からない機械が置かれている部屋を見てちょっと慄いたようだが、未亜達に敬礼する。
 未亜はミノリとリャンの肩を軽く突付き、兵士の存在を知らせた。
 慌てて敬礼するミノリと、よく分かってないがマネをするリャン。


「失礼します!
 こちらにリャン殿はいらっしゃいますか?」

「…私だ」

「お連れの方の話が終わり、これから帰還されるそうです。
 裏門で待っているので、すぐに来てくれ、との仰せです」

「あ、わかりました。
 ええと、ご苦労様です」

「ハッ!
 失礼します!」


 兵士は去っていく。
 リャンは少々名残惜しそうだったが、仕方あるまい。


「それじゃ、私はもう行くから。
 透によろしく」


「はい、お気をつけて。
 さて、こちらも訓練の最終段階に移行します。
 準備はよろしいですか?」


『いつでもどうぞ』
『おっけー』
『…問題ないわ』


「はい、それでは…プスっと」


 ミノリはノートPC(仮称)から出ている端末を、左腕と首筋に浅く突き刺した。
 チクリと感じる痛みに顔を顰める。
 注射を受けているような感覚らしい。
 この端末、激しい乱戦になった時の為に用意された、特別な端末である。
 神経を流れる電流を感じ取り、キーボードを指で打つよりも早くPCを動かす。
 シュミクラムに搭載されている機能を、そのまま移したものである。
 ただし、これには結構な危険が伴う。
 腕に刺した端末は出力用、首に刺した端末は入力用だ。
 ノイズなどの入力信号が入って来た場合、ミノリの神経は少しではあるが掻き乱される。
 死にはしないだろうが、行動不能になるだろう。

 リャンは体に刺さっている針を痛そうに眺めて、逃げるように立ち去った。
 未亜には気持ちがよーく分かる。
 注射を見ていて、気持ちいいと思うような神経を持っていないから。

 時々眉をしかめながらも、ミノリはオペレートをこなして行った。
 大分慣れてきたらしい。
 これなら、明日までには戦場に出ても問題ないくらいにはなるだろう。
 …精神的な慣れは別として。


 一方、ツキナの元に向かった透とルビナスだが。


「はーい、ニッコリ笑って〜」

「目線こっちくださーい」

「ツキナさん、もっとこう、相馬君に絡みつくようなカンジで」

「こ、こうですか?」

「そうそう、いいカンジ!」

「………俺は…何をしに来たんだろうか?」


 何やら虚ろな目の透の呟きを押し退けて、フラッシュが焚かれる。
 幻影石を作動させているのである。
 幻影石は、机の上に小山を形成するほど用意されている。
 その半分近くは、クレア、ルビナス、帰還したイムニティによって使用されていた。


「透、もっと笑った方がいいんじゃない?」

「…虚ろな笑いしか沸いてこねーよ」


 ソファーに腰掛けている透に、甘えるような誘惑するような姿勢でひっつくツキナ。
 彼女は楽しんでいるようだが、透はそこまで開き直れない。

 透とルビナスがツキナの元に到着した時、クレアとイムニティがツキナから情報を引き出そうとしている最中だった。
 しかし、ツキナがナーバスになっている為か、その作業は遅々として進まない。
 下手に突付けば、今のツキナでは暴れだす危険があった。
 ツキナ自身も不安や恐怖を感じているようで、落ち着かないと言う風に体をモゾモゾ動かしている。
 今日はもうダメか、と思われた時に、透の登場。
 ツキナの表情が、一気に明るくなった。
 デバガメの精霊が、それを見逃す筈が無い。
 これは使える!と即座に判断して、透をツキナの隣に座らせた。
 イムニティとしては、軽い精神安定剤を与えたつもりだったのだが…なんと、ツキナは人目も憚らずに透にピッタリくっ付いたのだ。
 もう放しません、とばかりに腕を組み、寄りかかる。
 透もそれを拒む訳には行かない。
 …ここでキュピーンと光る、三人の目。
 これは面白い素材だ!
 何処からともなくイムニティが幻影石を大量に召喚し(盗撮用だと思われる)、撮影会が始まってしまった。
 戸惑ったツキナだが、「もっと積極的に甘えて!」とか嗾けられて、完全にその気になってしまう。
 感情が豊かになり過ぎている事も手伝って、普段では出来ないような甘えた仕草まで出す始末。
 …ツキナには甘えん坊属性がついたようだ。


「イムニティ、そろそろ幻影石が切れるぞ。
 追加は無いのか?」

「残念ながら、今は無いわ。
 先日の潜入捜査で、結構使っちゃったから。
 そろそろ〆の段階に入りましょうか」

「そうね。
 じゃ、2人とも脱いで」

「脱ぐのかよ!?」

「さ、流石にそれはちょっと…」


 ナチュラルに無茶を言うルビナスに、流石に反発する二人。
 ルビナスは冗談だ、と笑うが…目が笑ってない。


「ところでツキナさん」

「はい?」

「裸とは言わなくても、半脱ぎで相馬さんと抱き合っている写真…。
 既成事実になると思わない?」

「………」

「反論してくれツキナ!」


 透、魂の叫び。
 既成事実の一言で、ツキナは大いに揺れたらしい。
 透とてヤリたい盛りの男だし、ツキナの柔肌に触れられるのは素直に嬉しい。
 最近ツキナの成長を、時々体感していたので尚更だ。
 が、やはり相手は幼馴染で、そういう時にどんな触れ方をすればいいのか解からない。
 どうしても一歩を踏み込めない透だった。

 結局、半脱ぎも透に却下され、四名が盛大に不満そうな顔をする事となった。
 代替案として、ツキナの顔と透の顔が至近距離にある、一見するとキスシーンのような映像を撮ってお終い。
 またモデルをやってくれ、とクレアに頼まれて笑顔でOKするツキナだった。


「さて、そろそろ本題に入るぞ。
 イムニティ、何か報告は?」

「色々あるけど…後で纏めておくわ。
 それより、ツキナから話を聞くのが先でしょう」

「む…そうだな、相馬も訓練があるし」

「…私としては、もう暫くこのままでも…」

「……ツキナ、お前性格変わってる…」


 呻くように呟く透。
 これが治療の後遺症か。
 柔らかくていい匂いが感じられ、透的には鼻の下が伸びそうだ。
 それを見た3人は、心中で透にムッツリスケベの称号を送っていたりするのだが。

 それはともかく、透というトランキライザーの為か、ツキナはあまりストレスを感じていないようだ。
 これなら、結構な情報を引き出せるかもしれない。


「さて…ツキナ。
 これから色々聞かせてもらうが…正直な所、お主のトラウマに直撃するような問いも幾つかするだろう。
 書類で済ませようかと思ったが、やはりそれでは正確性や柔軟性に欠ける。
 辛いとは思うが…耐えてくれ」

「…はい」

「辛くなったら、相馬を好きにして構わんから」

「はい♪」

「…俺って一体…?」


 精神安定剤と言うよりは、赤ん坊に与えられたおしゃぶりと大差ない扱いだ。
 ちょっと遠い目をしている透だが、実際問題V・S・Sを叩き潰さねば、2人に安息は無い。
 ツキナから情報を聞き出さなければ、にっちもさっちも行かないのだ。
 その為におしゃぶり扱いされるくらいなら、透としても吝かではない。


「それでは始めるぞ。
 …まず、V・S・Sに入社した切欠などは、相馬から既に聞いている。
 では、洗脳を受けるようになったのは…何時の頃だ?」

「…入社して、一ヶ月くらいです」

「その切欠は?」

「透は社長に目をかけられていたので、何だか特別な部署に異動の辞令がきたんですが…。
 その時、社長が透と同じ部署に行きたいか、って聞いてきたんです。
 その為に、特別な研修コースがあるから受けてみないか、と…。
 それから…夜中に呼び出されるようになって……」


 ツキナが透にしがみ付く手に力が篭る。
 透もさり気無く、ツキナの肩に手を回した。

 ツキナの緊張具合を、気付かれないように観察しながら、尋問は進む。
 透が居るとは言え、やはりかかるストレスは結構なものがあるだろう。
 イムニティとルビナスは、時折冗談を飛ばしてその緊張を和らげる。
 部屋模様が、暖かな色や陽気な装飾で満たされているのも、緊張緩和に一役買っていた。

 ツキナから齎された情報は、それだけでもV・S・S社長のレイカ・タチバナを追及して引き摺り下ろすには充分なものだった。
 明らかな人権無視、禁止されている洗脳、そして軍との癒着。
 既にV・S・Sを打倒する準備は、8割方整っていると言っていい。
 後は物証と、V・S・Sの上にある謝華グループにどれだけ迫れるかのタイミング。
 そして、フェタオの動向次第だった。


18日 夕方 フェタオ


「…って事で、向こうも色々情報を仕入れてたよ」

「…そうか、ご苦労だった」


 クーウォンはリャンの報告を聞いて、腕を組んだ。
 正直な話、少々複雑なものがある。
 彼ら…フェタオは、V・S・S打倒のため、十年近く活動してきた。
 その間で、V・S・S本体にダメージを与える事が出来たのは、片手で数えられる程度だ。
 幾つか施設を叩き潰した事があるが、どれも末端。
 何か劇的な打開策を、と何度望んだ事だろう。

 それが、“破滅”が出現し、王宮と協力体勢を取ってからと言うもの、物凄いスピードで話が展開している。
 いままでの戦いは何だったのか、と思えるほどだ。
 無論、クーウォンはそうは思わない。
 無駄ではない。
 今までの同志達の奮闘があるからこそ、今のフェタオが、V・S・S打倒の手掛かりがある。

 クーウォンは、かつての同志達を思い浮かべる。
 戦って死んだ者も居るし、病気で死んだ者も居る。
 裏切った者も、何人か居た。
 その中でも特に記憶に残るのは、その戦闘力と狂気で名を馳せたゲンハである。
 彼個人に対して、クーウォンは色々と含むものがある。
 その為に、彼をずっと手元に置いていたのだが…。


「…これも、我々の罪故…」

「ん?」

「いや、何でもない。
 報告は他にあるか?」

「あ、いやもう一つあるんだ。
 私の事なんだけど」

「む?」


 リャンは帰りがけに、ルビナスから貰った書類を手渡した。
 クーウォンはそれを受け取り、目を通す。

 “チャイナ娘リャンちゃんの、鳥頭病改善方(民間療法)byルビナス・フローリアス”

 …何じゃコリャ。
 民間療法っつうとアレか、風邪を引いた時に尻にネギを刺すようなアレか。
 なお、ネギと言っても某子供先生ではない…あんなのをリャンに挿してたまるか!
 いかん、いかんぞ!
 保護者として、そのようなアブノーマルな性癖にリャンが目覚める事は、断固として阻止せねば!
 …いかん、暴走したようだ。

 流石のクーウォンも判断に困り、リャンに目を向ける。
 リャンは首を傾げて見せた。
 彼女もルビナスから貰った時には少々疑問を持ったのだが、こういう物だ、と何の迷いもなく断言されて納得してしまったのである。


「…リャン、これは…」

「救世主候補の、ルビナスさんが私の発作を抑える方法があるって言うんだ。
 成功率は高いけど、失敗したら死ぬから…保護者の同意が必要なんだって」

「何!?」


 クーウォンは改めて書類に目を通す。
 書類の字は細かく専門用語も多くて、お世辞にも読みやすいとは言えない。
 だが、クーウォンはこの手の書類を読むのは慣れている。
 意味不明な記述も多々見られたが(具体的には筆者…ルビナスの科学の素晴らしさについて)、専門用語に引っ掛かりながらも読み進める。
 全く、リャンの治療法まで提供されるとは…。
 王宮と関わって、本当に展開が早い。
 不自然なくらいに。

 それはともかく、書類に書かれていた治療法は、クーウォンの知識でも大体の原理を理解できるものだった。
 リャンの発作は、脳の記憶領域での繋がりが何らかの要因で軒並み断たれていくのが原因だ。
 その何らかの要因が何なのか、クーウォンは知らない。
 恐らく、ルビナスでもそう簡単には発見できないだろう。
 ならば、記憶領域が断たれた後に再生させればいいのだ。
 リャンの記憶を外部記憶装置に常に保存し続け、発作が作動したら外部記憶装置が出力、消去された領域のバックアップを使って再生する。
 普通なら『何を無茶な事を』の一言で済ませてしまうだろう。
 だが、クーウォンは知っている。
 これと同じ技術で、脳を改造された少年が居る事を。
 だから、この手術も成功の見込みは充分にある。

 しかし。
 しかし、いいのだろうか。
 確かに、この手術でリャンの記憶は、発作によって失われなくなるだろう。
 例え発作による恐怖は取り除けないとしても、充分な進展だと言っていい。
 だが、これは同時にV・S・Sと同じ事をしているのではないだろうか。
 手段と目的は違えど、脳を弄るのには変わりない。
 それでいいのか?


「…クーウォン…」


 顔を上げると、リャンがチワワのような目でクーウォンを見詰めている。
 正直、クーウォンは気が進まない。
 だが…。


「…リャン、お前はどうしたい」


「私は…手術を受けたい。
 もう、これ以上忘れたくなんかない」


「…失敗したら、死ぬかもしれんぞ」


「それでも。
 …クーウォン、ダメなのか?」


「……戦士とは、自ら決断を下すものだ。
 リャンがそうしたいのならば、そうするといい」


 クーウォンは、リャンの意思を尊重する事に決めた。
 元々、クーウォンは自分に偉そうな事を言う権利も、リャンの保護者面する権利があるとも思ってない。
 自分は単なる罪人だ。
 彼女がそうしたいと言うならば、それをサポートするだけだ。

 リャンの顔が明るく輝く。


「ありがとう、クーウォン!」

「いや…。
 ところで、相馬君達はどうだった?
 洗脳は…」

「ああ、解けてたみたいだよ。
 前のツキナに戻ってた」

「そうか…それはよかった…」


 心底安堵の溜息を漏らすクーウォン。
 本当に洗脳を解く方法を発見していたらしい。
 これなら、V・S・Sに洗脳されている社員達も助けられるかもしれない。

 リャンはツキナが元気になっていたのが余程嬉しいらしく、クーウォンを相手にペラペラ捲し立てていた。
 その途中、クーウォンは聞き捨てならない情報を聞き取った。


「待て、リャン。
 ツキナ君は…夢を見た、と言ったのか?」

「へ? ああ、何だか女の子に話しかけられる夢を…」

「…その女の子とは、ひょっとして…ショートカットで白い服を着たリボンの…」

「…うん、その子」


 クーウォンは腕を組んで考え込んだ。
 リャンが不思議そうに見ているが、応じる余裕は無い。

 クーウォンは、かつてレイカ・タチバナと同じ場所で研究をしていた事がある。
 最初はレイカ・タチバナも、純粋に技術の進歩を追い求める、一介の技術者だった。
 思考が少々過激で頑固、独善的な性格ではあったが…まぁ、それも世間を少し探せば同じような性情の人間はワラワラと見つかる程度だ。
 まぁ、酔っ払ってサイケかつアブない宗教のような革命理論を延々とまくし立てるのは勘弁してほしかったが…。

 ある時、クーウォンとレイカ・タチバナは別々の課題を研究する事となり、その親交は途絶える。
 そして数年ぶりに再会した時、彼女は変わり果てていた。
 何があったのかはクーウォンも知らないし、彼女も決して話さないだろう。
 最初は気付かず、再び共同で研究を始めたのだが…レイカ・タチバナは、人を洗脳する技術を完成させる事に血道を上げるようになっていたのだ。
 やがて、2人の道は決定的に違える事となる。
 レイカ・タチバナは、洗脳の研究で得られた技術を使って、様々な人間を支配下に置いていたのだ。
 クーウォンはそれに気付き、止めようとした。
 だが、レイカ・タチバナはそれを受け入れず、逆にクーウォンを洗脳した。

 それからどれ程の時間が経っただろうか。
 クーウォンも、その間の事は覚えていない。
 彼女の洗脳技術は不完全な物ではあったが、放っておけば破れるような貧弱な物ではなかった。
 クーウォンも、何度も洗脳処理を施され、完全に人形になってしまう所だった。
 しかし、クーウォンにとってもレイカ・タチバナにとっても、予想外の存在があった。
 それが、ツキナの夢に出たという少女である。
 彼女は度々現れてはクーウォンに話しかけ、その度にクーウォンの洗脳は少しずつ解かれていった。
 そして洗脳が殆ど解けると、クーウォンはレイカ・タチバナの元から脱走した。
 彼女がやっている事を公開し、止めようとしたのだが…当時のクーウォンではそれが精一杯である。

 その時に連れて逃げた実験体の4人の子供を、2人は信頼できる友人に預け、2人は手元に置いた。
 そして手元に置いた2人が、リャンと死んだゲンハである。
 預けた2人のうち、一人は失踪。
 預けた友人が、魔物に殺害されたのだ。
 これがV・S・S絡みの事なのかは、クーウォンにも解からない。

 それはともかく、クーウォンには語りかけてきた少女の正体に心当たりがあった。
 だが、彼女は既に死んでいる筈。
 ある実験の犠牲となり、体は既に失われ、心も恐らくは…。
 何故彼女が?
 確かに、アヴァターには幽霊の類も存在するが…。


「…リャン、相馬君はその少女に付いて何か言っていなかったか?」

「ああ、そう言えば…妙に気にしてたような気がする。
 それが?」

「…今日はもう無理だが、少々彼に用事が出来た。
 2,3日後に彼の所にお邪魔させてもらおう」


「2、3日後…って、確か透達は明日から前線で戦う事になるって…」


「む…流石に最前線にテロリストが向かうのはまずいな」


 下手をすると、“破滅”に与していると見られかねない。
 クーウォン本人の顔を覚えている軍人なぞ珍しくもないだろうし、逆にクーウォン以外の人物が向かっても仕方ない。
 とは言え、クーウォンが考えている通りだとしたら、あまり時間をかけたくない。
 王宮から貰った情報を組み合わせて考えると、とんでもない代物が開放されるかもしれないのだ。


「…これも、私とあの雌狐の業ゆえか…。
 多大な犠牲を出し、魂を冒涜し、そしてこの有様…。
 惨めなものだな、私も、雌狐も…」


 沈むクーウォン。
 リャンは首を傾げたが、クーウォンが透と話をしたがっているのは理解した。
 彼女でも、最前線に向かうのが色々な意味で危険だというのはよく分かる。
 そもそも、軍隊とは何度か衝突しているのだ。
 タイラー部隊とカチ合いそうになって、冷や汗を掻いた事も何度かある。

 しかし…。


「透と話がしたいなら、シュミクラムを使えばいいよ」


「何? シュミクラム…相馬君のか?」


「よく解からないけど、機構兵団のミノリっていうオペレータが、シュミクラムを使った遠隔…ええと、通信ができるとか出来ないとか。
 最前線で戦うんじゃなくて、ミノリは遠くから通信してサポートするんだってさ」


「…遠隔とは言っても、何も王宮から通信をする訳ではあるまい。
 彼女も戦場へ向かう筈だが?」


「あ、そっか」


 着眼点は悪くなかったが、残念。
 ミノリも前線に向かい、後方から通信するのだ。
 ちなみに、その後方とは…タイラーとヤマモトが作戦指揮をしているすぐ側なのだが、ミノリにもリャンにも全く知らされていなかった。


「…仕方ない、変装でもするか…」

「コスチュームプレイするの?」

「…誰に聞いたんだ、そんな言葉…」

「ルビナスさんが教えてくれた。
 私の服も、状況次第では充分コスチュームプレイになるって言ってたけど」

「それは偏見だと思うが」


 確かにリャンの服装は、アヴァターでは珍しいが…聖地に行けば珍しく…いや、それこそコスプレだ。
 余計な知識を吹き込むルビナス嬢に心中で恨みの言葉を綴るクーウォン。
 何だか娘が穢れていくようだ…このぐらいなら許容範囲だが、救世主クラスや機構兵団に関わったらどうなる事やら。
 将来を不安に思いながら、クーウォンは変装用の衣装を自室の箪笥に漁りに行った。




DirectXが難しい…。
プログラミングは奥が深いです。
あと一月程で大学の文化祭なのですが、時間がなーい…。
作ったゲームも、改めて見直すと効率悪すぎ…。
あんなのを表に出すの一生モノの恥になりそうな勢いなので、何とか改修してみようと思います。

新作ゲームのゴッドハンド買いました。
むぅ、このコンビネーションはユカの技の参考にできるかな…?
しかし…執筆、プログラミング、卒論、ゲーム…一日の時間を3倍にしてくれい!

最近寝付きが悪い…。
60度の寝酒飲んでます。

それではレス返しです!


1.そうし様
レベル7召還魔法ですね〜。
白チョコボにはお世話になったなぁ…。
……チョコボは足が速くて蹴りが強いから…幻想砕きで言えば汁婆?(汗)

地形が変わるのもあり得そうですが、意外と破壊力を撒き散らさずに、一点(つまり大河)に集中するかもしれませんね。
…『大河、感動の抱擁で絞め殺される』の巻!?


2.アレス=アンバー様
実際セルの扱いには少々困っております。
このままお陀仏は論外ですが、無事に戻ってきたとして…その後の処理、どうすっかなぁ…。

ベリオに関しては今更ですが、『強請る』に関しては、『ゆする』と居れずに『ねだる』と入れたんです。
いや本当に。さっき書いた コレ ↑ も、ちゃんと『ねだる』と書きました。
それでこの変換(笑)
中々いい根性してると思いませんかw

フルアーマーか…。
最低でも空を飛んでパージ機能が付いててバカみたいに巨大な大砲が必要ですね。

むぅ、嫉妬オーラはユカでは無理ですか…。
ならば妬き餅オーラで代用を…。


3.パッサジョ様
お持ち帰りモード、危険すぎて使うシーンが…(汗)
それでも一つだけ思いついている今日この頃です。
むぅぅぅ、使うべきか使わぬべきか…。
使ったら未亜が更なる反感を買う可能性があるし、使わなきゃ使わないで時守のナケナシの(無駄な)プライドが傷つくような…。

そうですねぇ、ツキナは健気な少女でしたが、それでも普通にヤキモチくらいは妬くでしょうし…。
しかし、現状では同僚に美人が多いだけですからね。
まだ爆発する程ではありませんよ…まだね。


4&10.イスピン様
一瞬出ただけでそこまで反応…。
本格的に発動した日には…(汗)
あははははははは(略)

まぁ、何だ、セル。
女性型モンスターなら、ケツを掘られる可能性は…なに?
なんでゼンジー先生のチェーンソー持ってんの!?
借りた!?
うそーん!

鉈には勝てても、神をも殺すチェーンソーには勝てません。

あー、これから暫くバルドの方がメインになりそうなので、時守的にはバルドをお勧めします。


5.なまけもの様
シャハナ。
ジャハナ。
シャバナ。
ジャバナ。
…紛らわしい…。
最初はシャカと読んでいました。

そろそろ謎撒きの季節は終わったので、これからゆっくり回収しようと思います。
中にはそれこそ来年にならないと芽が出そうにないのもありそうですが…。


6.陣様
無い…とは言い切れないこの怖さ(汗)
対象が救世主クラス及びユカではないものの、使えそうなシーンを一つストックしてあり申す…。


7.カシス・ユウ・シンクレア様
まぁ、オーバーテクノロジーであってもオーパーツじゃないですからね。
インターフェイスもしっかりしてるでしょうし、使えない訳じゃないでしょう。

タイラーとドムが協力する場面って、時守は見た事無いんですよ。
正直戦い方が違いすぎるので、組んだ場合は徹底的に合わないか、見事すぎるくらいに合うかだと思うんです。
ドム提督も、『赤き獅子』ですからね。
何だかんだと言っても、血が滾るのでしょう。
戦いながら、どうやって全体を把握して指示を出しているのかは謎ですw

透に関しては、まだ書いてない設定が一つあります。
それを見れば、『ああコイツもなんだ』と一発で判断できるかもw

アルディアさんが何人も…むぅ、幼稚園児が騒いでいる所しか想像できないのは何故だ?
しかし、考えてみれば擬似双子丼とか出来るんだなぁ…。
いや、その気になれば三つ子丼も…

ユカが大河を落とすのか、大河がユカを墜とすのか、さぁどっちだ(笑)


8.竜の抜け殻様
確かにアレは超級だった…。
戦い方が全く解らなかったから、何度倒された事か…。
DSの神より強く感じたッス。

しかし、流石にこれ以上人数を増やすと捌ききれません。
双子はちょっと本気でムリっぽいです…すいません。
…せめて物凄く二面性があるとか…。


9.神竜王様
5−4以前なら、ここで見れますよ。
Night Talkerのトップページから、旧小ネタ掲示板過去ログ→よろず小ネタ過去ログ(作者順) [〜2005.9.9]に入り、割と下の方にログがあります。

ああ、思えばリコも災難ですね…。
大河をマスターとして選べなかったばかりに、半Sの未亜に唇を奪われ、ついでにセクハラされ、そしてイムに八つ当たり…。
ふぅ、でもリコを弄るのは楽しかったw

皆様ユカを大変気にかけてくれているようですが、彼女はマジで遠いッス(涙)


11.YY44様
巨大ロボットか…。
本来ならアレした彼女をアレと戦わせる予定だったのだけど、バルド編を入れたからそれは却下しちゃったし…。
本気でツキナを乗せてみようかな…。
でもツキナが来てから一週間も経ってないのに、いくらルビナスでも…ああ、いやパイロット不在でも作る人は何も考えず作るしなぁ…。
…ああ、凄くやりたい!


12.堕天使様
堕天使さんもご友人にも、ご愛読感謝いたします!
シリアス一辺倒のキャラは、返って書きにくいですよ。
ちょっと気を抜けば、無味乾燥な話が出来上がっちゃいますし…。

元々、知らない人でも楽しめるSSを目指していましたので、成功しているようで何よりです。

どうぞどうぞ、幾らどんな風にでも使ってください!
どうせ設定を作ったはいいものの、最近では全く活用できずに涙していましたから。
人様が活用していただけるのならば、こんな嬉しい事はない…。(アムロ風に)

どんな作品を書いていただけるのか、とても楽しみです!
…って、まさか『風と炎の鎮魂歌』『大蛇丸、壊れ忍法帳!』の堕天使さんですかー!?


13.神〔SIN〕様
そー言えば、フローリア学園・麻帆良に並ぶ…かどうかは分かりませんが、地下に不明なモノがある学校って多いですねぇ…。
時守的には、東京の真神学園がその代表です。
だってあの地下、多分龍脈の…。

時にイム、パルとは会ったかね?
同人少女と合わせてトリオとか作れるぞ。

…?
リコ、ソコは図書館の地下だよな、ドラゴンが居るって事は…。
どうやって隕石なんぞ…そう言えば原作でも地下で同じ事してたし…。
あ、そうか…室内に隕石を召還すればいいだけか。

あの双子、今はお子様ですけどその内本気で出来そうですよね。
何かこう、子供らしい好奇心のままにお互いを弄りあうようになって…容易に想像がつきますw
それこそ未亜の格好の標的ですが…。
しかし、同じSでも未亜とお妙さんじゃタイプが違いますね。

そう言えば、神楽とクーフェはキャラが被ってますね、カエデと楓ほどではありませんが。
両方アル付けで、バカ強く、頭のレベルも似たようなモノと見た…神楽の方が毒が強いが。

イム、君にこの一言…いや二言を送ろう。
出る杭は打たれる。
雉も鳴かずば撃たれまい。
未亜とお妙さんに押せと言われて、何の躊躇もなくスイッチを押す君に乾杯!
まぁ、落とし穴に落ちた所で君は空中浮遊できるデショ。

で、大河はどうやってそこまで行ったのん?
図書館探検隊も其処まで行けないのに…。


14.舞ーエンジェル様
“破滅”の四天王、本気で出番がないですよ。
ちなみにシェザルのお腹は一応大丈夫ですが、変わりに習慣性のある毒キノコでも食べたのか、ジャンキー属性が付加されるやもしれません。
こう、震える手で、逝っちゃった目で懐から取り出した1アップキノコを見つめて「毒キノコを出せ、毒キノコだ!」とかコンビニ強盗…。

大河と横島を比べると…難しいですな…。
まぁ、煩悩は間違いなく横島が上です。
元祖だし、大河は横島のように、一気に飛びかかるなんてマネをせずに狡猾に距離を詰めますから、その分煩悩も弱いのではないかとw
不死身度は…互角?
と言うかノリ次第でしょう。
戦闘能力…正面からのぶつかり合いでは、間違いなく大河に軍配が上がります。
ウチの横島は、ネットワークのお陰でルシオラが生き返った事もあり、最強と称せる程には修行していません。
まぁ、ルシオラさんが煩悩を散々刺激しているため、霊力だけなら計測するのがアホらしくなるくらいに強いですがw

あのSSですか、勿論毎週読んでますよ!
強いのに原作らしさが全く削られてない、類稀な良作ですよね。
最近は原作とは程遠い部分も見せていますが…。

女性化?
ドッキーン!


15.ナイトメア様
ゲブォルブブヴァラドベベダァッ!(吐血・吐内臓)

こ、今回はまた洒落にならん電波を…ずっと萌え方面だったので、油断しまくってました。
ぬぅ、レスを返す気力が丸ごとお陀仏する所でした(汗)
ボケ→突っ込み→ボケ→突っ込み→ボ(略)っ込み→時空湾曲→ぼケ→湾曲→突っ込み特攻→漢臭→オレ、シヌ、スベテヲノロッテ!
しかし、そんな時でもケンカするリコとイムニティが好きw

セルが巨獣?
むぅ、アレにそんな重要な役割を持たせていいものか…。
一応ただの人間として戦ってもらう予定なんですけどね。

ああああっ、ネコと龍が、ネコと龍があぁぁぁ!
鬼畜王ランスのカミーラが、物凄く甘えん坊になる某所の創作を読んでるから余計に!余計に素晴らしいィィィィィ!

…さて、未亜サンは新しいオモチャを手に入れてたみたいだし…。
暫くは元祖救世主クラスは平和かな…(汗)


しかし…わーぐ・リコが食べまくってるって事は、それだけ精気を吸い尽くされてるヤツが多いって事か…。
なんか恍惚としてるシーンが簡単に浮かびます。

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