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「幻想砕きの剣 11-1(DUEL SAVIOR)」

時守 暦 (2006-09-13 22:47)
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17日 朝 ホワイトカーパス イムニティ


「……ここね」


 イムニティは、人どころか魔物や小動物の気配すら無い森の中に立っていた。
 勿論、大河が発見した謎の施設を調べる為である。
 生い茂る森の中に、何やら人が墜落したような後が残っている。
 恐らく、これは大河が落下した後だろう。
 ここから地図を頼りに森の中を歩けば、目的の施設を発見できる筈。
 幻覚結界の痕跡を探知できれば、然程難しくはないだろう。


 本来、ここに来るには人類軍VS“破滅”軍の戦場のど真ん中を突っ切ってこなければならないのだが、彼女は書の精霊である。
 遠距離のテレポートで結構力を消耗するが、抜けられない事はない。
 破壊力はともかく、機動性では抜群のイムニティとリコである。
 …特定の条件下だと、リコの破壊力は致命的な程に跳ね上がるが。
 場合によっては施設を叩き壊してしまえ、と言われてはいるが…正直、イムニティ単機ではそこまでの力は発揮できない。


「…それにしても…酷いわね…」


 マナが枯れ果てている。
 無限召喚陣を複数使っていたと聞いた時から予想はついたが、いざ目にしてみると結構な惨たらしさを感じるものだ。
 “破滅”も人間同士の戦いも、生態系に多大な被害を与えると言う点には変わりないらしい。


「…いえ、無限召喚陣を使わなければ、こうはならなかった。
 比較の問題でもないけれどね…。
 結局、これも人の仕業…なのかしら」


 魔物の中には魔法を使う者も居るが、彼らは基本的に個人用の術しか使わない。
 無限召喚陣は、人間の術者が使っていると見て間違いない。
 こういう光景を見ていると、やはり人間をどうにかしなければならない、という思いが湧き上がってくるのだ。


「…急ぎましょうか。
 魔物に嗅ぎ付けられないとも限らないしね」


 木々の間を縫って、音も立てずに移動するイムニティ。
 この辺、デバガメで鍛えた技術である。
 その内に、イムニティは違和感を覚え始めた。
 気配が無い事に、ではない。

 気配は無いが…何かを感じるのだ。
 ここに何か居る。
 イムニティは足を止めた。


「…これは…何?
 ………魔物…じゃ、ない。
 ヒト……? でもない。
 いえ、ヒトなの?
 何か、とてつもなく大きな……何かが居る…。
 しかも、この気配は…アヴァターのものじゃない?」


 感じる気配は、あまりに大きくボヤけていて位置も掴めないが、周囲の気配から決定的に浮いていた。
 色鉛筆で赤く塗ったスケッチブックに、同じく赤の絵の具で塗りつぶされた部分がある…そんな感じだろうか。
 一見すると同じだが、どこか違う。
 まるで、別の世界から引っ張り込まれたかのような。


「…こんな大きな気配のモノを召喚する…?
 不可能ではないけど、どれだけ大きな召喚陣が必要になるか…。
 仮にそんなのがあったら、クレア達が見逃すはずが無い。
 どうやって召喚したのかしら…」


 とにかく、ここで立っていても仕方ない。
 多分、大河が見つけた施設とも無関係ではないだろう。
 とにかく施設を見つける事が先決だ。

 森の中を進むイムニティ。
 時々方向感覚が狂うが、イムニティにとってはそれこそが目印だった。
 幻術結界の名残を辿っているのである。


「…見つけた。
 ここね」


 程なくして、目的の木を発見する。
 なるほど、確かに大河の言った通りアヴァターの技術ではなさそうだ。
 イムニティがその気になれば、分子構造から解析できるが…あまり意味がない。

 早速中に入るか?
 いやいや、それは軽率というものだ。
 イムニティは、少し周囲を見回ってみる事にする。
 周囲に同じような入り口は無いか、仮に撃退されて逃げるならばどういうルートで離れ、何処に隠れるか。
 謝華グループでミランダ・シャハナに撃退されて以来、イムニティは慎重に行動するようになっていた。
 少なくとも、書の精霊と言えども人間の全てを上回っている訳ではないのだ。

 とは言え、仮に同じような出入り口があったとしても、幻術結界で隠されているだろう。
 それを発見するには、かなりの神経を要する。
 得体の知れないモノの圧迫感を感じている今は、集中力を保つのは少々難しかった。


「…なら、この気配のある場所を調べてみますか。
 ボヤけていると言っても、圧迫感が強くなる方向はハッキリしている。
 間近までは接近できるでしょう」


 踵を返し、木の根元から去った。
 そのまま歩き回る事暫し。
 あちらこちらを歩き回り、圧迫感の強さを脳裏でマッピングしていく。
 その結果、ある一地点を中心として圧迫感が放たれている事が分かった。
 どうも、例の木から然程離れてない場所の地下から放たれているらしい。
 木の下の施設に関係ある事は間違いないだろう。
 それと同時に、地下にあるらしき施設の規模もある程度辺りを付けた。

 結構な規模である。
 これだけの空洞を、どうやって作り上げたのか?
 その疑問にも、イムニティは既に答えを発見している。

 木の育ち方、種類、そして土。
 違うのだ、この森の一部だけが。
 カムフラージュされているので分かりにくいが、全く違う生態系の木々が所々に立っている。
 イムニティの知る限り、これらの木々はホワイトカーパスではなくレッドカーパスの一部にしか生息(?)しない種。
 つまり。


「木の様子を見る限り、この2,3年中に移転した…。
 恐らく、これは召喚陣を使ったのでしょう。
 人間の力でも、そこそこの数を集めれば充分可能。
 それが無限召喚陣を使える程の力量があるなら、尚更ね」


 どうも、この施設は謝華グループが奪われたクローン培養施設である可能性が大きくなってきた。
 相応の警備を敷いていた研究所を、手掛かり一つ残さない手際で奪い、そして隠した。
 それほどの手練、手段、共にそう多くはあるまい。


「さって、そうなると乗り込む手段だけど…。
 確か、ミュリエルが読んだファイルの中に、施設に関する記述が結構あったわね。
 あれを元に、幾つかシミュレートしてみるか…」


 歩き回る事を止め、奇襲に備えて適当な場所を見繕い、イムニティは腰を下ろした。
 頭の中では、事前に詰め込んでいた資料が猛スピードで閲覧されている。
 あの木が施設の中心又は端っこに存在すると仮定して、仮想の見取り図を何通りも創り上げていった。


17日 朝 王宮へ続く道 未亜チーム


「…ハーレムが抜けただけ、マシになったのかしら」


「へ? ああ、チーム名の事?
 まぁ、私もちょっと色々あって…」


 王宮へ向かう馬車の中。
 未亜達はそれぞれ腰を下ろして寛いでいた。
 セルの弔い合戦だと、彼女達は普段の3割り増しくらいの実力を発揮した。
 3割り増しと言っても、コンビネーションを考慮に入れると3倍くらいに思える程強かった。

 しかし、それだけ強くなっても、全開で飛ばしていれば息切れもする。
 魔物達の群の一角を完膚なきまで叩き潰した辺りで、ようやく疲れが見え始めた。
 丁度その時、王宮への帰還命令が出たのである。
 まだ暴れ足りないと言わんばかりの者も居たが、帰還の理由は解からないでもない。
 貴重な救世主候補を、疲労の為に倒れさせる訳にはいかないのだ。
 強力な戦力だからと言って、出ずっぱりにしては消耗してしまう。
 1,2日程度の休暇である。


「しかし…やはり申し訳ない気がしますね。
 殆どの兵士達は、一日も休まず戦っていると言うのに…」


「その分、私達は敵が密集している場所を渡り歩きましたから…。
 実際、体に溜まった疲労はかなりのものです。
 …元々、然程鍛えられた体でもありませんから。
 カエデさん以外は」


「まぁ、拙者はまだまだ余裕でござるな。
 正直、呼び戻されるのは納得行かないでござる。
 拙者だけでも、あちらに残って戦えたでござるが…」


「…大河に会うのが目的じゃないの?」


 リリィのツッコミに、否定せずそっぽを向くカエデ。
 しかし、本当にカエデは納得してない。
 この戦いは、敵陣に乗り込んで将の首級を取れば終わる類のものではない。
 戦力を一点集中させて一挙に注ぎ込むのではなく、ジワジワと“破滅”の魔物を追い詰め、全滅させるのが勝利条件なのだ。
 故に、例え救世主候補を退がらせて休息をとらせるにせよ、全員ではなく2,3人ずつにするのが妥当だろう。

 未亜は自分で淹れたコーヒーを飲みつつ、虚空を見上げて言う。


「…それは、アレじゃないかな?
 タイラー将軍の隊が、何か得体の知れない強敵の存在を察知したって言ってたじゃない。
 カエデさん達も見たんでしょ?
 罠をやたらと効率よく壊してる所とか、よく解からないけど強力な攻撃で崩壊した村とか」


「それは…見ましたが…。
 ……まさか、私達に王宮の警備をさせるつもりでしょうか?
 やったのは人間だと推測されていますが、ひょっとしたら一般人のフリをして潜り込んでいるとか…」


「ベリオ、やたらと憶測を垂れ流しても士気が落ちるだけよ。
 王宮にはルビナスとイムニティも居るじゃない。
 態々私達全員を呼び戻す理由はないわ」


 ナナシの名前を出さないリリィ。
 理由は言うまでもないし、誰も何も言わない。

 しかし、本当に人間の中に凄腕の敵が紛れ込んでいるとしたら…本当に厄介である。
 唯でさえ、避難民達は逃避行によって疲れ果てているのだ。
 生き延びた事で一応の安堵感を得て、気も緩んでいる事だろう。
 だと言うのに、紛れ込んだ敵…“破滅”の民を探す為に、王宮が彼らに何かしたらどうなる?
 今度はアザリンと言えども抑えきれないだろう。
 今でさえ、小さなトラブルが続出している。
 そのトラブルの内の幾つかは、凄腕の敵が紛れ込んで煽っている可能性がある。
 彼女達は、それを見回ってから王宮へ到着するのだ。
 恐らく、早くても夕方以降になるだろう。

 付け加えて言うなら、元々王都付近に済んでいた人々が、避難民達を排斥しようとするかもしれない。
 タイラーもドムも、この点を危険視している。
 急造の部隊と同じで、人々の摩擦が軋みを生む。
 クレアとアザリンのカリスマに期待しているが、それも何処まで通用するか。
 決定的な亀裂が入る前に、戦況を目に見える形で優勢に持っていかなければならなかった。


 ふと、話題が尽きて静寂が訪れる。
 馬車の車輪の音だけが響いた。

 黙っていると、自然と脳裏に浮かぶのはセルの訃報と、戦場で倒れた人々。
 自分達はそこから離れて、また同じ所に行くのだ。
 そして、大河も同じ。


「…気が滅入るわね。
 他に何か話す事、あったっけ?」


「………」


 リリィのボヤきにも、誰も反応しない…と、思ったら。
 ベリオがふと顔を上げた。
 いや、表情が変わっているからブラックパピヨンだろうか?


「あー、一つ気になる事があったわ。
 大河と一緒に居るっていう、ユカ・タケウチの事だけど」


「え? あぁ、そう言えばあんまり話してなかったっけ?」


 そう言えばそうだった、と手を打つ未亜。
 全員の視線が集中する。


「まず改めて聞くけど、アンタ手を出してないだろうね?
 下手をすると、本気で八つ裂きにされるよ」


「ユカさんはしないと思うけどなぁ…。
 ま、心配しなくても何もしてないよ。
 ただ…」


「「「「ただ!? 何をした!?」」」」


 全員が召喚器を構えて、未亜を注視している。
 結構なプレッシャーを感じて、普段の自分がどう見られているのか改めて実感した未亜だった。
 ちょっと泣きたいが、自業自得なので堪える。
 それよりも、下手な返答を返すとそれこそ八つ裂きにされそうだ。


「なんてゆーか……ちょっと、手が出し辛いんだよね。
 ひょっとして読者様のご意見が世界意思うわああぁぁぁ!!??」


 未亜は降ってきたぽよりんに押し潰された。
 振動で揺れる馬車。
 馬がちょっと驚いたようだ。
 未亜はぽよりんの下でジタバタしているが、誰も何も言わない。

 全員で顔を見合わせる。


「「「ただ!? 何をした!?」」」」


 やり直しらしい。
 ジタバタしていた未亜が、顔だけぽよりんの下から脱出した。


「えほっ、えほ…く、空気足りない…。
 だ、だからね、何かちょっかいを出したいんだけど、傷を付けちゃいけないと言うか、この人に嫌われるのはちょーっと痛いと言うか、何だか不思議な感じがするの。
 前に何処かで会ったような気がしないでもないかもしれないけれど」


「…マスターを退けるオーラの持ち主…?」


 リコの呟きに、黙って顔を見合わせる。
 そのまま円陣を組んで、コソコソと馬車の隅っこに集まった。



「どうします? 大河君にこれ以上近付かせないように、とは言いましたが…」
「あの未亜が手を出せない程だものね。 同盟に迎えれば、強い抑止力になるかもしれないわ」
「しかし、ユカ・タケウチは多感症なのでしょう? 実力行使に出られたら、間違いなく負けますよ」
「多感症なのでござるか? いやいや、しかしこれ以上増やすのは…」
「未亜の脅威を減らすメリットは大きいんじゃない?」
「しかし、それは同時にタケウチ殿を未亜殿の脅威に晒すと言う事でござるよ」
「仮に未亜が何かして、情報が漏れればファンが暴徒と化しますよ」
「そもそも、ご主人様とはどれ程の関係になっているのです?」
「…もうちょっと未亜の話を聞いてみましょう」


 円陣を止め、未亜の元に戻ってくる。
 未亜はまだぽよりんに圧し掛かられたままだ。


「で、肝心の大河との関係は?」

「…キスまではしたらしいけど、そこで留まってるって」

「どうして大河君を好きになったのでしょう?」

「いや、初対面でそこまで不躾な質問をするのはちょっと…」

「まぁ、道理でござるな。
 ならば、タケウチ殿の第一印象は?」

「……か、かぁ〜いいな〜〜、おおおもちおもちかえりぃ〜」

「何時からここは雛見沢に!?」


 何時の間にやらぽよりんから脱出し、あまつさえ鉈まで持っている。
 …未亜のお持ち帰りは洒落にならない。


「ま、じょーだんはともかくとして、美人だよ」


 鉈を適当に放り出す未亜。
 ちなみに、この鉈は馬車の中に積んであった荷物である。
 召喚したのではない。


「あと、なんて言うか抱きしめたらすっごく柔らかそう。
 何かこう、温かくてふわふわしてて、抱き枕とかにしたら天国とか見えそうなくらいに」

「…鍛えてるんですよね? カエデさんの筋肉みたいな感じですか?」

「拙者の筋肉は、柔らかさよりも靭かさを重視してるでござるが」

「ん〜、パッと見ても筋肉とか殆ど解からないよ。
 それこそ突き立てのお餅みたいに頬とか柔らかかった」

「…どういう状況でそれを試したんですか?」

「ん? 船の中で、人差し指を伸ばしたまま肩を叩くとか、『掌が顔より大きかったら(ピー)なんだって』とかやって、バトルを繰り広げてたからその時に」

「…なんでいきなり喧嘩してんのよアンタラ」

「いや、ちょっとした悪戯だったんだけど、お互いムキになっちゃって。
 あ、それから下着は絶対に白。
 冒険しても黒なんて夢のまた夢、清純路線を地で行くタイプだね。
 勝負下着も、多分ちょっと模様があしらってある程度。
 恋愛にしろえっちぃ事にせよ、羞恥心が先に立って最後の一歩が踏み込めず、相手のリードを無意識に望んでるタイプ。
 調教するなら言葉攻めを中心とした羞恥プレイがオススメで、惚れた相手からの頼みにはかなり弱い。
 自慰の経験は、物腰から見て、回数はそこそこだけどちょっと触るくらい…かな。
 ただ、やっぱり敏感なのか結構開発されてる…後半は私のカン(又は妄想)だけど」


「いやそんな情報を読み取るのは感心していーやら悪いやら。
 ……で、多感症だったのかい?
 アヴァター随一の猛者が、ちょっと触れたら腰砕けになるような困ったちゃんとは思えないんだけど」


 ブラックパピヨンの疑問に、そりゃそうだ、と一同頷く。
 未亜も首を傾げた。


「うん、ぱっと見て普通だった。
 お兄ちゃんとユカさんに探りを入れてみたけど、間違ってはいないみたいだよ。
 あ、心配しなくてもダイレクトに聞いたんじゃないから」


「当たり前ですそんなの…と、マスターが相手では言えない…」


 聞くとなったら、未亜はもう誰にも止められない。
 一応、彼女にも良識なる物が残っていたらしい。


「では…強いと思うでござるか?」


「…どのくらいかは解からないけど、多分。
 何て言うか、凄味みたいなのを感じたし…。
 お兄ちゃんの話からしても、下手をすると私達以上だって」


「…召喚器持ちと渡り合えるって、本当だったんだ…」


「…サイン、強請ってもいいでしょうか?」


 ベリオは結構ミーハーらしい。


「では、私は何か身につけている物を。
 場合によっては、それを媒介にして呪いとかかけようと思います」


 止めれリコ。


17日 昼 大河・ユカ・汁婆


 汁婆に乗った2人は、既に前線へと到着していた。
 タイラーとドムへの挨拶もそこそこに、指示されたルートで敵の陣を切り崩して回る。

 他の部隊との連携は考えない。
 この程度の相手なら、必要ないからだ。
 大河は汁婆に乗ったまま、大剣を振り回す。
 大剣に触れた敵は、例によって消し飛ばされた。
 ユカはと言うと、汁婆から降りて敵陣内部へ侵入していた。
 殆どの魔物の目は大河と汁婆に向かっているので、ユカに気付く魔物は殆ど居ない。
 結果として、気がつけば強力な魔物の死体がゴロゴロ転がっている状態となる。
 正面から薙ぎ払う大河&汁婆と、裏から切り崩すユカ。
 たった2人+一匹で、他の救世主クラス全員と張り合う程の戦果を上げていた。
 アンドレセン達も呆れ返っている。

 だがその威力を知っていたドムの兵士達は、ここぞとばかりに攻め立てる。
 一拍遅れて、負けじとタイラー部隊も攻め込んだ。

 少し離れた所で、タイラーとヤマモトが呆れていた。
 ドムから聞いてはいたが、これ程とは…。


「…ドム将軍が誇張をするとは思わなかったけど…まさか全て真実だったとはねぇ…」

「…アヴァターで勝てる者は居らんでしょうな、あのトリオに…」


 攻撃力と機動力が段違いだ。
 ユカが徒歩なのでそれ程のスピードは出せないが、戦場にあっては充分なスピードで動いている。
 何せ、敵陣の中を普通に移動しているのだから。
 普通なら、敵に阻まれて進軍どころか動く事もできまい。


「…しかし、これならもっと効率的なルートを示した方がよかったか…」

「いや、あんまり変わり無いよ。
 正直、戦線をこれ以上進ませる事は出来ないからね」

「…ああ、王宮との距離が離れすぎるからですな。
 確かに、補給と命令の事を考えるとこれが限界ですか…」


 元々、ホワイトカーパスの果てまで魔物達を追い込むのは無理がある。
 王宮から距離がありすぎると、伝令に致命的なタイムラグが発生するから戦力を王宮付近に集中させたのだ。
 あまり離れるようなら、何かしらの対策を練らねばならない。


「…手は打ってありますが…もう暫くかかるそうです」


「…そうか…まぁ、海用の…列車だっけ?を、いきなり地上で使うのには無理があるかな」


 ホワイトカーパスからの避難に使った海列車を、今度は地上で使う。
 こちらはドム発案である。
 ただ、矢張り海の上と地上では勝手が違う。
 しっかりとしたレールを敷くのに、どれだけ時間がかかるか。
 海上では船がレールを牽引してホワイトカーパスまで繋いだが、地上では一つ一つ創り上げていくしかない。


「戦争が技術の発展を促すっていうのは本当らしいね…。
 願わくば、“破滅”が去った後の世界で平和利用されてほしいものだけど」


「ですな。
 …安全性を多少損なう事になりますが、その分自由度を上げる方向で作業を進めております。
 レールを伝って走るのではなく、本体の車輪で走るように換装するとか。
 方向転換が難しいとの事ですが、あと4日以内に完成させると言っていました」


「四日、か…それまでにこの戦線をどう動かすかな…」


 タイラーは悩んでいるようだったが、同時に楽しそうでもあった。
 人々の命が散っていく戦は、決して好きではない。
 だがそれでも、己の力を存分に振るい、効果を挙げると言うのは興奮するのだろう。
 これは多分、人間以外にも共通する感情だ。


「さて、そうなると僕らのやるべき事は、やっぱりこの戦線から魔物を一匹も通さない事だね」

「ならば、ここらの敵を全滅させればいいだろう? タイラーよ」

「え? あ、ドム君」


 戦線離脱してきたのか、返り血を浴びて赤く紅く染まったドムがやって来た。
 まだ戦闘の名残が残っているのか、全身から息を呑むような闘気が発散されている。
 タイラーはその気を受け流し…冷や汗をかいていたが…ドムを見る。
 敬礼をするヤマモトに一瞥して応え、深呼吸して昂ぶった気を鎮める。


「……どの道、敵を全て掃討する事に変わりはない。
 後から来た援軍と合流されても面倒だ。
 さっさと敵を薙ぎ払ってしまうに限るだろう」


「それはそうなんだけどね…。
 どうもイヤな予感がするんだ。
 ドム君も、それを感じているから…焦ってるんじゃないの?」


「……業腹だが、確かにその通りだ」


 苦々しげな顔をするドム。
 2人の胸中には、得体の知れない圧迫感が渦巻いていた。
 何かが迫ってくる。
 とてつもなく大きくて、厄介な何かが。
 それが来る前に、兵力を注ぎ込んで魔物を全て叩き潰すか、それとも適当に追い払って兵力を温存するか。
 それが問題である。


「…元々、俺とお前は足並みを揃える仲ではない。
 ここは一つ、それぞれの行動を取るとしようか」


「しかしドム将軍、それでは折角連携が取れてきた部隊が…」


「分かっている。
 だが、薙ぎ払うだけならば我がホワイトカーパス兵団の力で充分だ。
 多少の休息を挟めば、すぐにまた戦える。
 …その間に、このプレッシャーを与える者が来るやもしれんがな」


「後はタイミングと運の問題か…」


 タイラーなら、運は問題ない気がする。
 暫くタイラーは考えると、ドムの提案に頷いた。


「オーケイ、僕の部隊は下がらせるよ。
 補給も暫くはそっちを優先する。
 期待してるよ?」


「ふっ、誰に物を言っている?
 攻めに回ったホワイトカーパスの力、存分に焼き付けるがいい。
 ………明日からな」


 もう夜だ。


 夜。
 魔物達が撤退したばかりで、兵士達は疲れを見せつつも時の声を上げている。
 彼らはまだ知らないが、明日になればドム率いる軍は一歩分前進し、近辺の魔物を掃討するだろう。
 大河達も、何とか凌ぎきった事に溜息を吐きつつ、逃げていく魔物達を見送っていた。

 これから、兵士達には戦場の片付けと前準備が待っている。
 力尽きて倒れた仲間を救助したり、翌日からの戦闘に備えて地形を把握したり罠を作ったりと、全員ではないが直ぐには休めない。
 その点、大河達は気楽と言えば気楽である。
 罠を作るのも地形をメモするのも、専門の訓練を受けた軍人には遠く及ばない。
 大河は罠を作るのもそこそこ得意だが、所詮は俄仕込みだ。
 下手に手伝っても足を引っ張るだけなので、さっさと休めと言われている。

 ユカはちょっと申し訳なさそうな顔をしたが、汁婆と大河はさっさと休憩の体勢に入っていた。
 が、その前にドムとタイラーの所に行かねばならない。
 何やら話があると言っていた。
 作戦について何かあるのだろうか?


「ホラ、大河君も汁婆も、いきなり寝転ぼうとしないでよ。
 呼び出し受けてるでしょ。
 戦ったのはたった一日だよ?」


『一日だから、さっさと休んで体力を回復したいんだよ』


「そーだそーだ。
 ユカも早い所寝た方がいいって。
 何なら添い寝してくれる?」


「え?
 …………………。
 …………………は?
 そ、そーゆー問題じゃないって」


 想像して色々と緩みかけた頬とか心を強引に律して、ユカは大河の手を取って立ち上がらせる。
 流石に汁婆は重すぎるから、グラグラ揺さぶって起こそうとしている。
 が、汁婆は既に眠りの園に片足を突っ込んでいるらしい。
 ユカは諦めずに、汁婆を揺する。
 基本的に真面目な彼女だから、呼び出しをすっぽかすには抵抗があるのだろう。


「やれやれ…全く、何の用でしょね」


(マスター)


「? …イムニティ?」


「ん? 何か言った?」


 突如聞こえる、小さな声。
 物理的な声ではなく、頭の内に直接響く…テレパシーだ。
 遠距離から通信しているためか、大河の脳裏にノイズが走る。


「いや何でもない。
 それより、汁婆はちょっとやそっとじゃ起きないぞ。
 ………。
(イムニティか?
 何かあったのか?)」


(ええ、ちょっと今怪我で動きたくないのだけど)


(怪我!?)


(心配しなくても、物理的な怪我じゃないわ。
 単なる…過労みたいなものよ。
 明日の朝には回復するわ。
 いいから、落ち着いて聞きなさいって) 


 驚きに声を上げそうになる大河を制して、イムニティは落ち着いた声で続ける。
 何か発見があったのか、と大河は思った。
 何かしらの発見がなければ、イムニティは態々連絡をつけてこない。
 念波を途中で誰かにキャッチされる恐れがあり、イムニティの居場所を突き止められかねないからだ。
 それを圧して連絡をつけるとは…。

 それに…過労?
 イムニティが?
 今の彼女は、大河からの力の供給で体力満タンの筈だ。
 たった一日、仮にフルパワーで動き続けても動けなくなる程ではない。


(…落ち着いたぜ。 で、何があった?)


(例の施設の事よ。
 色々と周囲を調べまわってみたんだけど…マスターが見つけた木の他にも入り口が2つ。
 その一つから侵入して…極浅い所で引き返したわ)


(引き返した?
 周囲からまだ情報を集められそうだからか?)

 普段のイムニティなら、侵入するなら段階的に行かずに一気に行く。
 仮にイムニティの存在を気取られないなら、そのまま進めばいい。
 だが逆に、その存在を感じ取る輩が居れば?
 数度に渡って侵入を繰り返しても、警戒がきつくなるだけである。
 無論、引き際と言う物があるが。

 だが、イムニティの答えはそのどちらでもなかった。



(引き返さざるを得なかったのよ。
 何せ、侵入路が途中で叩き潰されてたんだから)


(…?)


(順を追って説明するわ。
 容量が大きいから、画質を落として音声を消すわね。
 イメージを送るから、倒れないように座っていた方がいいわよ)

「ちょっと、大河君?
 ボーっとしてないで、汁婆も起きたからドム将軍の所に行くよ」


「…悪い、ちょっと待ってくれ」


「え? って、何でまた座り込むのさ!?」


 ユカの声も無視して、大河は胡坐を組んで目を閉じる。
 前傾姿勢になっているが、これは後ろに倒れて後頭部を打たないためだ。
 ユカがブンブン揺すってムチウチになりそうだが、今は我慢。
 その後ろでは汁婆がまた寝なおしているが、まぁ何も言うまい。


 大河が目を閉じると、イムニティが送ったイメージが流れ込んできた。
 見覚えのある森の中を進む、イムニティが見える。
 …イムニティ?


(…イムニティよ…自分で虚しくならんか?)


(…うっさい)

 送られてきたイメージの中のイムニティは、スレンダーなオトナの女性だった。
 胸は決して大きくないが、プロポーションには文句のつけようが無い。
 しかも、服のサイズは今のままだからかなりギリギリなナニかが見えるようで見えない。

 イムニティは大河のツッコミで恥ずかしくなったのか、第3者の視点からイムニティ本人の視点に切り替えた。


 森の中で立ち止まるイムニティ。
 その視線の先には、大河が発見したのとは別の機械的な印象を受ける入り口がある。
 どうやら、これが本来の入り口らしい。
 大河が発見したのは、裏口か脱出路のようなものだったのだろう。

 イムニティは、ある程度まで近付くと逆召喚で自身を通路内部に送り込んだ。
 もし警備装置が作動したら、イムニティと言えども侵入は困難になってしまうだろう。

 首尾よく侵入したイムニティは、所々に見られる監視カメラの死角を通って前進する。
 だが、それも直ぐに止まってしまった。
 通路が通路で無くなっていた…。
 いや、通路が徹底的に破壊され、外に繋がっていたのだ。

 イムニティは暫し考えると、破壊された通路跡から外に飛び出し、視覚による探知から熱や魔力による探知に視野を切り替えた。
 予想通りと言うべきか、イムニティの眼下には巨大な穴が口を開けていた。
 地下深くから、何かが飛び出した…。
 そんな印象を受ける穴だ。
 周囲の土の盛り上がり具体を見る限り、間違っては居ないと思われる。
 土だけでなく、周囲の木々の様子を見た所、巨大な質量を持つ何かが、半年から一年ほど前に飛び出して行ったのだと推測される。
 幻術結界は、入り口よりもこちらを隠すためだったのかもしれない。

 暫し考え、イムニティは穴に潜ってみる事にした。
 どう見ても最初から設計されていた穴ではないし、ならば警備装置も大した物は仕掛けられていないだろう、と踏んだのだ。
 実際、それは間違ってはいなかった。
 警報装置はあったが、それは魔法の類を使って作られた警報だ。
 ならば、イムニティがそれを誤魔化すのは然程難しくない。
 順調に降下し、最奥近くまで降りた時である。

 イムニティの体を、猛烈な悪寒が襲った。
 これは、直感による悪寒ではない。
 赤の力。
 リコの力にも匹敵しそうな程の、巨大な赤の力だ。
 しかも、リコの力とは違い、深く暗く沈みこむような、所謂負の感情による力だ。

 イムニティは、感情の区別に正負と言う記号をつけるのを馬鹿馬鹿しいと思っている。
 喜びも悲しみも、ちょっとした状況の変化で本人の害になったり、逆に救いにもなったりする。
 だから感情自体には、正も負もない。

 しかし、この猛烈な波動を浴びると、哀しみ等の感情が負と呼ばれる存在であると、思わず頷きたくなった。
 赤の力と対を成す白の力を司るイムニティでさえも、引きずり込まれそうな強烈な感情。
 嘆き、哀しみ、貪欲なまでの何か。
 その感情に引き摺られないために、イムニティは白の力を総動員させなければならなかった。

 だが、ジワジワとその体を虚無感が蝕んでいく。
 イムニティが過労状態になったのは、これが理由だろう。
 これ程強烈な感情には、ついぞお目にかかった事がなかった。

 イムニティは途中で引き返そうとしたが、途中で息切れして穴の途中にあった横穴…通路に飛び込んだ。
 息を荒くしながらも、隠行は解かない。
 その時だ。
 イムニティの耳に、話し声が聞こえてきた。(大河には聞こえなかったが)

 誰か居るのか、とイムニティは気配を殺して耳を澄ます。
 どうやら、2つほど離れた通路から声が響いているようだ。
 声にひかれて、イムニティはその通路に飛び込んだ。

 その先では、白衣を着た男達が何やら話し込んでいる。
 暫く聞いていたイムニティだが、別の通路へ飛び込んで更に奥まで侵入。
 その先には、幾つもの大きな試験管。


(…クローン培養施設…?)

(培養されてるクローンは居なかったけど、多分間違いないわ。
 ミュリエルが資料を持ってるから、後でそれと照らし合わせてもらうわ。
 映像はこれで終わりね)

(…あの男達が話していた内容は?)

(専門的な単語が飛び交ってたから、多分言っても解からないわ。
 全部暗記してあるから、後で要約してもらうわね)


(…分かった。
 他に報告すべき事は無いな?)


(ええ……え?)

 一拍置いて、イムニティは間の抜けた声を上げた。
 どうやら何かを忘れていたらしい。


(そう言えばマスター、そっちにセルビウム・ボルトは居る?)


(いいや、ホワイトカーパスで別れたっきりだ。
 アイツの事だから、アルディアちゃんを置いて死ぬとは思えんが…。
 ……まさか、セルに何か?)


(いや…こっちで白衣の男が話してた内容の一部にね、セルビウムって名前が出てたのよ。
 何だか協力者だとか世話係だとか何とか言ってたけど…。
 よく解からないけど、誰かのお守りをするとか何とか)

(セルが“破滅”の民だとでも?)

(………可能性は無きにしもあらずだけど…考えるのも虚しいわね)

(………仮に…そのセルビウムが、俺達の言うセルだとしたら…。
 セルの身は安全だと思うか?)

 イムニティは暫し沈黙した後、躊躇いがちに答えた。


(正直、何とも言えないわ。
 セルビウムが何故“破滅”に加担するかはともかくとして、盗み聞きした話の内容では…まぁ、少なくとも現時点で生存していて、なおかつ危害を加えられる可能性は低いと考えられる。
 …あくまでも、聞いた所によると…だけどね)


(そうか。
 …体調が回復したら、もう少し調査を続けてくれ。
 セルビウム某(なにがし)に関する調査はついででいい)

(あら、いいの?)

(気になるが、まだセルだと決まった訳じゃない。
 一応こっちでもセルの事を聞いてみるが、いずれにせよ今すぐどうこうって事にはなりそうにないんだろ?)

(むしろ優遇されてる気配すらあったわ)

(ならもう暫くは安全って事だ。
 どっちにしろ、その施設内には居ないみたいだし…闇雲に探し回っても無駄だ。
 施設の中に、何か手掛かりがあるかもしれん。
 チャンスと見たら救出に向かってくれてもいいが…その施設にでかい穴を開けた何かの事、もう少し追ってみてくれ。
 何か…こう、ヘンな感じするんだ)

(…ニュータイプ的カンでも働いたの?)

(人は分かり合える…と言うか、俺に関係がある何かが、そこにあるような気がする。
 …いや、関係があるのは俺じゃない………透…か?)

(相馬透? そーいえば、あなた達妙に馬が合ってたわね)


 それも少々違うと本人達は思っている。
 その透も、得体の知れない焦燥を抱えていた。
 仇に関する事ではない。
 言ってみれば、自分の分身が世界の裏側で叫び声をあげているような…そんな感覚。
 自分ではない自分のような存在が、自分を呼んでいる。

 以前から時折感じていたらしいが、シュミクラムに関わるようになってから、透は一層その感覚を鮮明に感じ出したらしい。


(…それが、あの大穴に何か関係がある、と?)


(関わりを見出す事もできるが…所詮はコジツケだ。
 そっちの判断を優先してくれて構わない。
 俺の指示はついでていいよ)


(…了解したわ。
 それじゃ、今度はクレア達に連絡を取るわね。
 マスターは…そっちで必要な情報だけ、将軍達に通達してちょうだい。
 私からの情報だって言えば通じる手筈になってるから)


 イムニティの通信が切れた。
 大河は目を開ける。

 …目の前に壁があった。


「…ん?」

「大河君大河君! しっかりしてよ!
 何を地面に頭突きかましてるのさ!」


 ふと気付くと、ユカが大河の体を揺さぶっている。
 ?マークを浮かべる大河だが、段々状況を把握してきた。
 まず胡坐をかいたままだ。
 そして、上半身を曲げて頭が地面に突き刺さっている。
 あまつさえ、後頭部がユカの鉄拳を受けたかのよーに痛い。
 というかタンコブが出来ている。

 察するに、こう言う事だろう。
 イムニティからのイメージを受け取るために座り込み、神経を自分の内面・流れ込んでくるイメージに集中させた大河。
 当然、外からの刺激には無反応になる。
 揺すっても揺すっても起きない大河に、ユカはシビレを切らせる。

「起きろ大河君!」

 ガツッ


 大河の後頭部に正拳直撃。
 その勢いのままに、大河は顔面から地面にダイヴ。
 え?え?と、予想外の反応に混乱したユカは、ただ只管大河を起こそうとユサユサユサユサ。
 そして今に至る。


「…口の中に何か虫が入っておられる」


「あ、起きたんだ。
 ならさっさとスタンダップ!
 いつまでも寝てないで、さっさと将軍達の所に行くよ!」


「…ペッ」


 明後日の方向を向いて、大河は口の中にある土やら虫やらを吐き出した。
 ユカに向かってやってやろうかと考えたが、それをやると洒落にならない怒りを買いそうだ。
 まぁ、事情も説明せずに座り込んだ負い目はあるので、大人しくする事にした。

 汁婆も重い腰を上げ、面倒臭げに歩き出した。


「なぁユカ、セルを知らないか?」


「セル君?
 いや、見てないけど…大丈夫かなぁ?
 いくらセル君でも、シリアスモードじゃ人間離れした耐久力はないよね」


「魔物の群に囲まれても、錯乱してバカやってれば何となく生き延びれそうだもんな。
 汁婆、セルの匂いとかするか?」


『全くしねぇな
 汗やら血やら鉄やらの匂いで一杯だ
 鼻がバカになりそうだぜ』


 何せ戦場だったのだ。
 無理もあるまい。


「で、セル君が何?」


「いや、イムニティからちょっと連絡があったんでな。
 どうも…セルらしき人物が、何だか生け捕りにされてるって言うんだよ」


『イムニティ…って、あの紫色のちっこいのか
 いつ何処でどうやって連絡を取ったってんだ?』


「ついさっきテレパシーで。
 座り込んでたのは、通信に集中し過ぎるとバランスを崩して倒れちまうかもしれないからだ」


「あ、そうだったの?
 …悪い事したかなぁ」

「…何やったんだ…」


「…知らないよ?」


 満面の笑みで誤魔化すユカ。
 彼女も何気にブラックストマックになってきた気がする。
 …ウコッケイは内臓まで黒いというのは本当ですか?(中華○番でやってた)


「って、それどころじゃなくて!
 セル君がどうしたの!?
 通信ってどんな内容だったの!?」


「ああ、俺がホワイトカーパスで発見した妙な施設の調査だよ。
 そこで研究員っぽい連中が何かを話してたんだが、セルビウム某が協力者としてどーのこーのと…」


「協力…?」


 ユカは首を傾げる。
 それは大河達も同じだが、彼女の着眼点は大河達とは少し違った。
 言っては何だが、セルは所詮「単なる傭兵の卵」である。
 重要な機密など持ってないし、戦闘能力も然程高くない。
 生存能力と逃げ足は活目すべきだが、それとて傭兵全体から見れば一級品とは言い難かった。
 セルを味方に引きずり込む理由が、全く無い。
 しかも、協力者、だ。
 捕虜とか使い捨てのコマではない。
 大勢の中の一人ではなく、明らかに個人として認識されている。
 セルにそれほどの戦略的価値があるのだろうか?


「…まさか…ボク達を相手に、人質を取るとか?」


「協力者、だぜ?
 そんな事をするなら、単なる捕虜って言うと思うが…」


『…まさか、セルの遺伝子を混入した魔物を作るつもりか?
 生命力が滅茶苦茶高くなりそうなんだが』


 汁婆の発言に、思わず想像する大河達。

 斬っても突いても殴っても焼いても、即座に再生する魔物の群。
 戦闘能力は中の上くらいだが、その物量と再生速度は侮れない。
 魔物との合成で攻撃力が上がっている分、単体として見れば驚異的とさえ言える。
 だが、恐れる事はない。
 戦場の中を走る工作員が、持って来た本や写真をばら撒いた。
 宙を舞う写真に、落下する本に群がる魔物達。
 言わずもがな、写真も本も18禁モノである。
 中にはそうでないのもあるが、これはあるでぃあさんのゆびにんぎょう等だ。
 魔物達の闘争本能を、セルの遺伝子が発するパトスが上回ったらしい。
 必死になって写真や本やゆびにんぎょうを掻き集め、同士討ちさえする魔物達を、ここぞとばかりに攻め立てる。
 兵士達の中には、こっそり写真や本を確保している者も居たが…まぁいいだろう。
 殲滅するのは無理なので、一箇所に追い込んで捕縛結界に放り込む。
 このまま埋めて、産業廃棄物扱いされるだろう…少々土壌が穢れるが。
 数分後、魔物達の居た場所にこんもりとした丘が出来ていた。


「…あんまり脅威に感じないな」


「別の意味でヤバイけどね」


 まぁ、これは無いだろう。
 何者かの遺伝子を組み込むなら、真っ先に“破滅”の将の遺伝子を組み込むはずだ。
 …ヘンタイが増えるだけだが、大河達は“破滅”の将の実態を知らない。


「…とにかく、セルらしき人物があっち側に居る訳か…。
 まぁ、現在生きているって事だけでも解れば…
 で、ドム将軍達からの通達って何だろな」

『いい予感はしないな…』


「…セル君が…死亡?」

「マジですか…」

「正確にはMIAだがな…」


 ドムの元を訪れた大河達は、未亜達と同じようにセルの訃報を受け取った。
 しかし、その衝撃は未亜達よりは小さい。
 セルがまだ生きているかもしれない、という可能性があるからだ。


「…セルは、どうなったんです?」


「魔物達に指名され、このままではどの道全滅を免れないから、と魔物達に連れて行かれたそうだ。
 思えば、ホワイトカーパスの駐屯地で戦っていた時から、魔物達は妙にシア・ハスの部隊に執着していた。
 あれはセルビウムを狙っていたのだろう…」


『…何故セルが狙われた?』


「分からぬ…。
 その時一緒に居た傭兵達にも聞いたが、誰も心当たりは無いとの事だ」


 ユカはペタン、と座り込んだ。
 やはり、身近な人間の死になど慣れはしない。
 先程大河に告げられた事も、あくまで可能性の問題でしかない。
 セル生存も、単なる誤報かもしれないのだ。
 汁婆と大河は、深刻な顔で何かを考えている。

 ドムが予想していたより、大河は落ち着いているようだ。
 と、顔を上げて大河はドムを見た。


「ドム将軍、つい先程イムニティからの伝令があったんですが…」

「イムニティ殿から?
 …話は聞いてる。
 言ってくれ」


 ドムはイムニティの姿も見た事は無いが、その能力に関してはアザリン・クレアが共に太鼓判を押していた。
 それに、姿は見ていないが、全く関わりが無い訳でもなかった。
 アザリンが王宮に留まっていた頃、イムニティはクレアの護衛を続けていた。
 アザリンの護衛役であるドムも、大抵はアザリンの近くで気を張っていた訳だが…一度として、その居場所を特定する事はできなかったのだ。
 時折ではあるが、その存在を感知した事はある。
 だが、それ以上の事は解からない。
 魔法にせよ体術にせよ、隠行の達人である事は間違いない。
 まさか書の精霊でロリ娘とは思ってないが、ちょっとした敬意を払ってるドムだった。


「イムニティからの通信ですが…セルの事もちょっと…。
 まぁ、それは後回しにして。
 今のイムニティは、ホワイトカーパスで発見された施設を調べています」


「施設…だと?
 ホワイトカーパスに、態々調べねばならんような施設があったか?
 アザリン様が治めるホワイトカーパスでは、小競り合いこそあれど人体実験をしているような施設は無いが」


「それが、俺が森の中で発見した施設なんです。
 しかも、明らかにオーバーテクノロジーで造られた施設」


「…ああ、船の中で何かそういった事を話していたな。
 幻術結界で隠されていたと言う…」


「その施設です。
 イムニティの調査では、一年以上前に大規模な逆召喚で、施設を丸ごと転移させた可能性が大きい…との事。
 周囲の木々からして、転送元はホワイトカーパス以外の土地。
 何か心当たりは?」


 大河の問いに、ドムは顎に手を当てて考え込む。
 暫し黙考した後。


「無い事もない。
 何時ぞや、あの辺りに大きな魔力偏差が確認された事がある。
 その後の調査では、何も見つからなかったが…恐らく、その施設が転移したのだろう。
 偏差が起こってから調査までに、約2日の間が空いた。
 隠蔽工作には十分だろう」


 ちなみに間が空いた理由は、ナク・ラ・ワングの起こした揉め事の後始末をしていたからだ。
 とことんアザリンやドムの邪魔をする奴である。


「それで、その施設が?」


「いや、ずっと前からホワイトカーパスに埋もれているんじゃないと分かればそれで結構です。
 ただ、その施設の中から巨大な何かが飛び出した痕が…。
 ひょっとしたら、何か魔物でも…」


「…ひっかかるな、その話…」


 ドムの第六感にピンと来たらしい。
 具体的な事は解からないが、人類軍に害をなす事は間違い無さそうだ。


「…報告は以上か?」

「いえ、セルの事が。 実は…」


 大河はセルが生け捕りにされ、“破滅”に協力させられている可能性がある事を話した。
 正直、これはドムにとっては厄介な情報である。
 セルは一兵卒以下の、外部から雇われた形になっている傭兵のルーキーではあるが、救世主クラスに対して結構な影響力を持っている。
 昨日のセルの弔い合戦でも見られたように、良くも悪くも感情の点火剤となりうるのだ。
 そのセルが、敵の手に囚われて死んだのではなく、拘束されて、或いは協力している?
 話がややこしくなってくる。

 事情がどうあれ、裏切りは裏切りだ。
 セルの死は、彼が魔物に連れ去られた場面に居合わせた兵士や傭兵には、既に確定したものとなっている。
 それさえ無ければ、何とか揉み消す事も出来ただろう。
 もしも本当に敵に協力していたならば、セルを処断せずには居られないのである。
 泣いて某を斬る、との言葉通り、軍において規律に例外は許されない。
 だが、それこそ救世主クラスがどんな反応をするか。
 セル生存の可能性を耳にすれば、そちらに気が行って戦闘に集中できなくなるかもしれない。
 それが無くとも、セルを斬るとなれば全力で妨害にかかるだろう。
 ドムとしても、その気持ちは分かる。
 だが、彼は軍人で、兵を束ねる立場にあるのだ。
 いかに救世主クラスの意見とは言え、ホイホイ聞き入れる訳にはいかない。


「…暫く、他の兵や救世主候補には黙っていろ。
 詳しい事が分かり次第、また報告を頼む」


「…イムニティに伝えておきます」


「あ、あの! セル君が生きて帰ってきたら、その時は…」


 ユカが立ち上がってドムに迫る。
 彼女は、セルが死んでいないと信じているようだ。
 それが確固とした確信なのか、それとも単なる願望なのかはドムにも解からない。
 だが、楽観的な願望は常に死を招く。


「…何とか抜け道を探してみよう。
 だが、セルビウムの生死がはっきりするまでは、その事も生きていてほしいという願望も、全て胸の奥に封印しておくがいい。
 もしもセルビウムを人質に取らているような示唆をされても、決して乗るな」


「で、でもそれって、見殺しにするような…」


「仮にセルビウムが“破滅”に協力しているようであれば、いずれにせよ待っているのは死に他ならぬ。
 もしも何か事情があって協力せざるを得なかったとしても、人質に取られているという時点でセルビウムは用済みになったと見ていい。
 そのどちらでも無ければ、既に…」


「そんな…」


「ユカ、ドム将軍に詰め寄るんじゃない。
 将軍の結論は、兵を束ねる者としては当然のことだ」


 大河はユカを後ろに引っ張り、ドムから引き剥がす。
 ユカは責めるような泣きそうな目で大河を睨みつけた。
 少し怯んだ大河だが、ドムに視線を移して言葉を続ける。


「でも、現場に立つ俺達にも判断の権利と余地はある。
 もしもセルの生存を確信し、なおかつ助けられるチャンスがあるなら…」


「その時は好きにするがいい。
 俺としても、セルビウムはこちらに戻ってきてほしい。
 中々見込みがあるヤツだし、救世主クラスの士気も高まろう」


『…決まりだな』


 現場の判断を認めない指揮官など最悪である。
 ドムは決してそのような指揮官ではない…むしろ真逆である。
 部下達の力量を逐一把握し、信頼しているのだから。

 ユカは精神的な揺さぶりに弱い部分があるが、大河と汁婆は冷静な判断を見失わないだろう。
 まぁ、大河に関しては…未亜達に何かあったら、あっさりと暴走しそうな気もするが。


「それで、話というのはこれが全てですか?」


「いや、明日からの事だ。
 タイラー達の部隊は一旦退いて、体勢の立て直しに入る」


 至極あっさりと言われて、汁婆は眉を潜めた。
 まだまだタイラー部隊は戦力に余裕がある。
 正直な話、タイラー部隊が下がってドム部隊だけで魔物達を相手にするのは、少々厳しいものがある。
 何せ、ホワイトカーパスから脱出してきた疲れが殆ど癒えていないのだから。

 ドムは汁婆の顔を見て、安心させるように言う。


「心配せずとも、そこまで深追いはせん。
 周囲一帯の魔物達を、一通り追い払うだけだ。
 こちらの陣営が、もう少し広く構えられるようにな」


「…何か来るんですか?」


 ドムの言い方に引っ掛かりを覚えるユカ。
 まるで、大規模での戦いがすぐに起きる…と言っているかのようである。

 ドムは面白くもなさそうな顔で踵を返す。
 明日からは攻勢に出るのだ。
 やるべき事はいくらでもある。


「用事は以上だ。
 早めに体を休ませておけ」


17日目 夜 王宮 機構兵団


「…あの、透さん…。
 ツキナさんの具合は如何でしょう?」


「…正直、思わしくないけど…少しずつ回復してるみたいだ」


 ルビナスから一通りのレクチャーを受けた機構兵団チームは、揃いも揃ってバテていた。
 言わずもがな、ルビナスの説明を延々と延々と延々と延々と聞かされた為である。
 供に説明役に回っていたヒカルも、途中で力尽きてしまった。
 ちなみに、ナナシはさっさと逃げ出している。

 シュミクラムに慣れ、構造についてもそこそこ知識がある透と、オペレータとして真剣に聞き入っていたミノリだけが動く気力を残している。
 アヤネでさえも、説明終了と同時にその場でへたりこんで動かない。
 復讐と言う原動力を失った彼女には、この苦行は荷が勝ちすぎたようだ。

 ほかに動ける人間と言えば、仕事があるからとさっさと逃げてしまったヤギザワのみ。
 こんなんで明後日からの出撃に耐えられるのだろーか?


「…それにしても、随分と派手に改良したよな…。
 威力は落ちるけど、これなら殆ど弾切れの心配が無い」


「チャージ時間は然程長くはありませんが、その間は殆ど攻撃できません。
 気をつけてくださいね?」


「了解」


 バチェラの協力を得たルビナスは、シュミクラムの機能を改良しまくってしまい、殆ど原型が留まっていなかった。
 ヒカルのシュミクラム…コードネームはバチェラで落ち着いた…を好き勝手に弄り回し、ヒカルをして「こんなのバチェラと違う」と泣きベソで言わしめた。
 まぁ、結果的には大幅にパワーアップしているし、外見もほぼ元通りに落ち着いたのだが。

 さて、チューンアップの内容だが…まず、遠距離での通信が容易になった事が上げられる。
 予め周波数を決めておき、ルビナス−ナナシ間でのテレパシー能力を応用した、距離や遮蔽物に殆ど囚われない通信が確立したのである。
 大気中のマナを媒介として思念や信号を走らせる、無線の一種だ。
 各々のシュミクラムの周波数は全てミノリが把握しており、例えバラバラに行動していようとも、完璧な連携が取れる。
 まだ上手く使いこなせないであろうから、明日一日を訓練に当てる予定である…即席の訓練である事は否定できないが。

 次に、その走破性。
 元々シュミクラムは、舗装された場所…建物内部での戦闘に主眼を置いて作られたものらしい。
 更にはルビナスが看破したように、特殊な力場内で使われていた。
 それをシュミクラムの形態やバランスから逆算し、更にそこからアヴァターでの戦いに使えるように調整しなおした。
 これによって、森の中や荒地など、悪路の走破性が劇的に上昇した。

 何よりも強力な機能は、弾切れの心配が無くなった事である。
 今まで使っていた武器の全ては実弾だったが、レーザー砲、魔力弾などの機能を付け加えた事により、嵩張らず、しかもほぼ無限に放てる武器が現れたのだ。
 しかし、これらは全て単発での扱いしか出来ない。
 周囲に漂っているマナを吸収し、圧縮加工して撃ち放つ…。
 圧縮と加工に手間がかかるため、ホイホイ乱射は出来ないのだ。
 それに、周囲のマナが少なければそれだけ威力も落ちる。
 無限召喚陣付近では使えない武器である。

 …もうV・S・Sで使われているシュミクラムとは、完成度が段違いだ。


「…それにしても、ヒカル…本気なのか?
 直接戦場に出るって…」


「…………(昏倒)」


 透が隣でうつ伏せになっているヒカルに声をかけるが、全く反応が無い。
 ルビナスの説明音波を浴びて、途中から意識が無かったようだ。

 ミノリはヒカルを複雑な心境で見る。
 ミノリもヒカルの力は…少々疑わしいと思っている面もあるが、信頼している。
 だが、今まで彼女はシュミクラム越しに世界を見詰めてきた。
 戦いによる流血を、直接見た事など無い。
 精神的に幼い彼女が、戦場に耐えられるのか?
 トラウマを作ってもおかしくない。


「…ミノリはヒカルが気になるんだな」

「これでも、元は教師志望ですから…」

「…? 教師志望がどうして軍に…いや、何でもない」


 ミノリが辛そうな表情を見せ、反射的に問いを引っ込める。
 誰にでも、余人に話したくない事情がある。

 透としても、ヒカルのような未熟な子供を戦場に送り出すのは気が引ける。
 自分も未熟で大人とは言えないが、幼い子供を心配するのは年長者の特権にして義務である。


「…それにしても、ヒカルちゃんはルビナスさんには素直に従いますね…?」

「倉庫で命を助けられた…だけじゃ無さそうだなぁ。
 ひょっとして、ルビナスさんに憧れてるとか」

「…一見すると、実力と茶目っ気を兼ね備えた大人の女性ですからねぇ」


 本当に一見しただけなら、ね。
 問題は、その上にマッドサイエンティストという属性がつく事だ。
 流石にヒカルまでそっちの道に入るとは思わない…思いたくないが…。


「それより、そろそろツキナさんにご飯を持っていってあげた方がいいのでは?
 私もご一緒したいですけど…」


「…気持ちはありがたいけど、まだ時期尚早…だと思う」


「そうですか…。
 では、モノはついでと言う事で…私の夕飯から、デザートのプリンを持って行ってください。
 気持ちと言う事で」


「ありがと…。
 今度お返しに何か奢るよ。
 おーい、全員起きろって」


 まだ復活してなかったアヤネ達を、順番に起こして回る透。
 ミノリはヒカルをおんぶした。
 これくらいなら、ミノリの力でも運んで行ける。


「おい、アヤネ。
 アヤネ起きろって」


「う、うぅ…あと五分…」


 定番の寝言を言って、寝返りを打つアヤネ。
 既に半分以上は眠っているようだ。
 カイラと洋介は、よろよろしながらも立ち上がっている。
 仕方なくアヤネを背負って立つ透。
 柔らかいモノが当たって前かがみになりかけたが、ミノリから冷たい視線が飛んできそうなので自制自律。


「あー、何か夢を見たわ…。
 それにしても、苦行だったわねぇ…」


「思い出させるなよ…。
 夢なら俺も見たぜ。
 なんか水色でショートカットの髪をした女の子が出てきたような気がする…」


「ああ、アタシの夢にも出てきたわね。
 最近多いのよねー、シュミクラムに関わるようになってからかしら」


「……?」


 その会話を聞いて、透は振り返った。
 その夢なら、透も何度も見ている。
 大抵の場合、透を哀しげに見詰めているか、ツキナに何やら話しかけているだけだ。


「なぁ、その女の子ってリボンを付けてなかったか?
 それに、真っ白い服で…」


「なんだよ、透も見たのか?
 こりゃ偶然じゃなさそうだな」


「……ボクも、ずっと前からその夢を見てるよ」


 ミノリの背中のヒカルが目を開けた。
 グデーっとしたままで、ミノリの背中から降りようとしない。
 しかし、その目はとても真剣だ。


「シュミクラムを手に入れた頃からの友達…。
 未だに名前も知らないけどね。
 最近は見なくなってたんだけど」


「…私は見ませんけど…シュミクラムを直接使ってないからでしょうか?
 ひょっとして、何かの後遺症では…」


 在り得る。
 しかし、ヒカルがシュミクラムを使うようになった頃から夢を見ると言う事は、少なくともルビナスが何かしたのではないだろう。
 元来の機能が、何か妙な形で作用していると見るべきか?
 いずれにせよ、一度ルビナスに聞いてみた方がいいかもしれない。


「検査だって言って解剖されるんじゃないかと思うと、ナナシちゃんの方に聞いた方がいいかもな」


「でも、ちゃんと答えを返してくれるかねぇ…」


 何だかんだと気力が磨り減っていても、腹は減っているらしい。
 食堂に近付くに連れて、足取りがしっかりしてくる。
 ヒカルもミノリから降りて、自分の足で歩いていた。
 一昨日初めて味わった、普通の料理の味を占めたらしい。
 平常心を装いながらも、しっかりと足早になっている。


 食堂では、一足先にナナシが夕食をとっていた。
 珍しく一人で、少々退屈そうだ。
 やって来た透達を見て、目を輝かせる。

 透はナナシの横に、まだ眠っているアヤネを座らせた。
 それにしてもよく眠る。


「あーナナシちゃん、俺はツキナの所に行かなきゃいけないから…。
 アヤネの面倒を頼むな」


「お任せですの!」


 多少の不安を感じない事もないが、ミノリがちゃんと監視をしてくれるだろう。
 少なくとも、アヤネの目が覚めたらいきなり墓場…なんて事はない筈だ。
 大河から、ナナシが元ゾンビである事を聞いている透だった。


 ナナシに後を任せ、2人分の食事を持ってツキナの所に向かう透。
 正直な話、少々気が重い。
 治る目処がたったとは言え、ツキナをあのようにしてしまった元凶は自分にある。


「そう言えば…救世主クラスは、もう帰ってきてるんじゃないのか?
 あ、もう直ぐなのか…」


 シュミクラムの機能説明前に聞いた、ルビナスからの伝令。
 曰く、戦線から戻ってくる救世主クラスにちょっとお遣いを頼んだので、王宮に到着するのは今日の夜中。
 彼女達も休まねばならないから、治療は明日になるだろう。

 上手く行ってくれ、と信じてもいない神に祈る。
 そうこうしている内に、ツキナが居る医務室に到着した。


「ツキナ、俺だ。 入るぞー」


「…透? …どうぞ」


 相変わらず感情のない声。
 しかし、透にだけは聞き分けられる程度に喜びの感情が聞き取れる。
 そーゆーのも萌えと言えば萌えかもしれないが、感情を強引に磨り潰されたツキナが相手では萌える気にはなるまい。

 扉を開けて中に入る。
 他には誰も居ない。
 医者は隣の部屋に居る筈である。


「ツキナ、今日の夕飯だ。
 ちゃんと食えよ?」

「…ピーマン嫌い…」

「…洗脳されても、食わず嫌いは治らないんだな…」


 無表情ながらも、子供っぽい事を言う。
 透は、洗脳されているんだし、この際だから偏食を治させようと考えていたのだが…レイカ・タチバナの洗脳も、こっち方面には全く効いてないようだ。

 透がツキナの隣に腰掛けると、ツキナはいそいそと体勢を変え、透の膝に頭を乗せた。


「…また食べさせてくれ、ってか?」

「………」


 無言だが、肯定の雰囲気。
 心が磨り潰されているというのに、どーしてこんな風に甘えてくるのだろうか?

 恐らく、心が磨り潰される→普段の自制心や羞恥心を忘れ去る→一際強烈だった透に対する思いだけが残る。
 という風に、ある意味最も本能に近い状態にあるからだろう。
 透としては身悶えしたくなるほど恥ずかしいのだが…。
 ナナシから、「これも治療の一環になるですの!」との通達を受けている。
 念のためにルビナスや医師にも確認したが、その通り、との返答を貰ってしまった。
 …実際の所、ナナシは乙女心から、医師は一応心理学的な見地から、そしてルビナスは単に面白そうだから否定しなかっただけである。

 仕方なく、ツキナに食事を食べさせてやる透。
 恥ずかしいのを別にすれば、別段悪い気はしないのだが…。


「…なぁツキナ、明日の事だけど…」

「………」

「洗脳を解ける人が来るから、そいつと会ってくれないか?」

「………?」


 ツキナはボンヤリとしたまま首を傾げる。
 透が、今のツキナに「誰かと会ってくれ」と言ったのは初めてだ。
 恐慌を起こすのを恐れ、むしろ人を遠ざけていた。


「…透がそうしろって言うなら、会う」

「…そうか…。
 それじゃ頼む」

「うん」


 透が何を考えているのかは解からないが、今のツキナには透が全てだ。
 例外があるとすれば、彼女を洗脳したレイカ・タチバナのみだが…彼女の命令は、ここには届かない。

 少々不安だが、とにかく約束は取り付けた。
 いざとなったら、気は進まないが麻酔でも打つとしよう。
 もうすぐ到着するであろう救世主候補に期待を寄せて、透はツキナにウィンナーを食べさせた。


18日目 朝 王宮 救世主候補チーム


 昨晩遅く帰ってきた救世主チーム。
 クレアとアザリンへの報告もそこそこに、全員爆睡している。
 太陽が頂点に達する頃に、ようやく未亜とカエデが起きてきた。


「うう〜、よく寝たぁ…。
 やっぱり柔らかいベッドは気持ちいいね」


「拙者としては、畳の上に敷布団が最も落ち着くでござるがな」


 ベリオやリリィはまだ眠っている。
 リリィはともかく、朝一番のお祈りを日課にしているベリオにしては珍しい。


「あれ、リコちゃんは?」

「そう言えば、朝早くにクレア殿に呼びだされて行ったでござるな。
 夢現だった故、あまり覚えておらぬが…物凄く不機嫌そうだったでござる」


 他のみんなはグッスリ眠っているのに、自分だけ起こされたのが我慢ならないのだろう。
 何の用事なのかは知らないが、災難である。

 その時、扉が開いて誰かが入ってくる。


「はーい、ロリ娘のお届けで〜す。
 判子を下さいな〜。
 血判でも可」


「しからば拙者の血を…って、ダリア先生」


「リコちゃん担いで何をしてるんです?」


 入って来たのはダリアだった。
 しかも、肩には熟睡しているらしきリコが。


「何もかにも、リコちゃんったら用事が済んだ後、廊下で寝ちゃうんですもの〜。
 転がってるのを見つけた時は、怪我でもしてるんじゃないかとビックリしたわよ〜。
 それはともかく、判子ちょーだい。
 受け取ったら、リコちゃんはベッドに放り込むなり煮るなり焼くなりしてもいいから」


「だから拙者が「サインでもいいですか!? ヤッてもいいんですよね!?」…は、発動しておられる!?」


 朝一番から…正午だが…、未亜サンSモード発動。
 リコは当分起きそうにない程よく眠っているから、今ならイタズラし放題だ。

 何の躊躇いもなくリコを引き渡そうとするダリア。
 リコが毒牙にかかっても構わないのだろうか?


「ちょっ、未亜殿、Sモードは抑え気味にするのではなかったのでござるか!?」


「? 抑えてるよ」


 カエデの叫びに、キョトンとして未亜は振り返る。
 確かに、目の光が通常モードだ。
 あれ、と首を傾げるカエデ。

 未亜はちょっと照れながら、頭を掻いた。


「いや、Sモードを抑え気味にするとは言ったけど、やっぱり今までやっていたのを急に止めるっていうのは難しいし…。
 最近じゃ、これをやっておかないと私じゃないよーな気がするの。
 これが私の芸風です、とか。
 だから、一日一回は軽く発動させて、笑いを取ってからすぐに引っ込めるように…」


「しんぞーにわるいデござるよソンナノ!?」


「笑うに笑えないわね〜」


 思わずカタコトになるカエデだった。
 ちなみに、既にリリィとベリオは起きているが、S未亜発動の気配を感じて急遽夢の世界へ避難した。


「それで、リコちゃんの用事って何だったんですか?
 無事に終わったの?」


「ええ、本当は午後からの予定だったんだけど、リコちゃんが『さっさと終わらせて寝ます』って主張してね。
 それでね…」


 その頃、透は医務室の前に立っていた。
 シュミクラムの訓練は休憩中だ。
 昨晩は、ツキナが受ける治療の事を考えると目が冴えて中々眠れなかった。
 結局朝方近くになってようやく眠る事が出来、ふと気がつけば訓練開始まであと5分。
 ツキナの様子を見に行く暇すらなかった。

 ようやく休憩時間になり、これから治療を受けるであろうツキナの元へとやって来たのだ。
 いつもの感情が抜け落ちた声が返ってくるであろうノック。
 だが。


「…ツキナ、入るぞ」

「透? ちょっと待って、今着替え中だから」

「……!?」


 予想外に明るい声。
 透は思わず扉をブチ破り、医務室に乱入する。


「ツキナ!」

「へっ?」


 そして見たのは、V・S・Sに入社する前と同じツキナの表情。
 感情豊かな、幼馴染の顔。
 キョトンとした表情は、洗脳されていた状態では決して見られない表情だ。


「つきな…っ!」

「へ? あ、ちょっ、透!?」


 感極まって、思わずツキナを抱きしめる透。
 ツキナは抵抗する間もなく、透の腕の中に納まった。
 ジタバタもがいていたが、やがて諦めたのか、透の首に自分から腕を回す。


「ツキナ、ツキナ…!」

「…大丈夫、もう大丈夫だよ、透…」


 抱きしめあう2人。
 透はもっと強くツキナを抱きしめようと、腕に力を入れた。


 ふにょん

「…へ?」

「ツキナ…!」


 ツキナの胸に、透の手が覆い被さる。
 勿論偶然だ。
 透はこの状況で、劣情を燃え上がらせるほどの余裕を持ってない。

 が。
 感動のシーンで、自らも温かい気持ちに浸っていたツキナとしては、云わば結婚式のクライマックスに、いきなり結婚相手からセクハラを受けたような感じで。
 しかも、何だか物凄い勢いで羞恥とか怒りとかが高まってくる。


「こ、こ、この…このドスケベーーー!」


「げふぁーーー!?」

 ツキナの正拳突き、透の丹田に直撃。
 一点の狂いもなく体の中心部を打ち抜かれ、衝撃を逃す事も出来ずに吹き飛ばされる透。


「エッチ! ヘンタイ! 色情魔!
 なんでこんなタイミングでそんな事するのよ!
 もうちょっと雰囲気とか考えてよ!」


「ちょちょちょちょっと待て何の話だツキナブッ!?」


 吹き飛ばされて、慌ててツキナを見る透。
 が、これがまた間違いだった。
 思い出していただきたい。
 透が医務室に入る時、ツキナは何と言っただろうか?
 着替え中だ、と言ったのである。
 故に…今の彼女は、思いっきり半脱ぎ状態だったりする。
 汗を拭って私服に着替えようとしていたらしく、下着くらいは身につけているが…それだけだ。
 ブラなんぞ、先程の透の抱擁でズレたのか下乳が見えている。

 そんなツキナを見て、透が鼻血なんぞ噴出したのを誰が責められよう?
 鼻血を吹いたの見て、ツキナはさらに激昂する。


「このヘンタイ! ヘンタイ! ヘンタイ! 変態! 変な鯛! タンノ君! イトウ君! ウミギシ君! コモロ君ノブオさん! さっさと出てけー!」


「うおぅ、ぬわいやぁ! メスを投げるな注射器をダーツ扱いするな薬品は丁寧に扱いましょうー!
 誤解だ誤解だー!
 話を聞けー!」


「うるさーい!」


 ドンドコ飛んでくる医療品の数々。
 洗脳された時に覚えさせられたのか、投擲の技術も結構なものがある。
 壁に当たって割れ、何やら怪しげな煙を噴出す薬品を背に、透はさっさと逃げ出した。
 扉を閉めても、まだ投擲が続いている。
 貫通したのか、扉からちょこっと注射器の先端部分とかが突き出ていた。
 透が部屋から出て行ったのに気付かないのだろうか?
 いつものツキナなら、怒りはしてもああまで自分を失いはしない筈。

 荒い息を整えながら、透は大河に言われた言葉を思い出す。


「はぁ…はぁ……。
 治療の後は…暫く感情的になるって聞いてたが、幾らなんでも…。
 下手するとヒステリーの領域だぞ…」


 一刻も早く治ってくれ、と深刻に祈る透だった。


「でも…洗脳されたままのツキナよりは、ずっとマシだな。
 …命の危険があるのは、いただけないけど…」



ああ…パトラッ…もといミキ、何だかとっても眠いんだ…。
ちなみにミキは我が愛犬の名前で、正式名はミキマロといいます。
最近どーも眠くて眠くて…。
うう、そろそろ卒論やんなきゃヤバいのに…。
いやそれ以前に、学園祭の学科の出し物を…。

むぅ、セルらしき人物が向こうに居ると知った時の大河やユカの反応が冷静すぎるか…。

それではレス返しです! 


1.陣様
先送りでしかないと解っていても、面倒な事イヤな事は後にしたいと思うものなんですw

うーむ、戦闘シーンはどうしようかなぁ…。
暫く強敵は出てこないので、雑魚を蹴散らす描写ばかりになるかも…。
その辺省いて、ストーリーを進めるべきか…。


2.パッサジョ様
ナナシですからねぇ。
ああいう日常的なボケこそが彼女の真骨頂でしょうw

バチェラことヒカルは、今後少しずつルビナスに洗脳されていく事でしょうw
惜しむらくは、ヒカルにはマッドと称されるだけの技術的知識が無い事ですかねぇ…。
シュミクラムの整備くらいなら出来るでしょうが、新しい何かを生み出すのはまた別の問題ですし。

…憐とヒカルが、二人揃って上目遣いで「「お、お兄ちゃん…?」」とか涙目で不安げにッ!


3.なまけもの様
ご指摘ありがとうございます。
…ちょっとPCがイカれて再インストールしたので、顔文字が使えん…(汗)

まぁ、透は主人公格として登場させましたから。
言うなればもう一人の大河?
原作でも、透はガチでロリってましたしねぇ…ある意味ゲンハより外道かも…。
だってゲンハは脳に云々されてああなったのですが、透は素の状態でアレですよ?
…ま、どっちにしろちゃんと調教してもらいますがw

うーん、話の中だと…未亜は2,3日前に会って…他は約2週間ちょっと、ですね。
すぐ近くに居るのに、まだすれ違うw

4.アレス=アンバー様
ナナシはありがたいキャラです。
何故なら、どんなシリアスなシーンでボケて雰囲気をぶっ壊しても、ナナシだからの一言でカタがつくw

流石に飛竜昇天破はもう使いませんよ。
周りの兵士達も確実に巻き込みますからねw
…獅子咆哮弾くらいは使ってもいいかな?
こう、ユカが嫉妬オーラに目覚めて、「女の嫉妬は鬼より怖い!」と、不幸オーラの代わりに嫉妬オーラを…。
勿論、自分を放っておいて救世主クラスとイチャつく大河に向けてw


5.イスピン様
応援ありがとうございます♪
やっぱりバルドよりデュエルがメインですからね…。
最初からクロスさせてればまた別だったかもしれませんが…。
暫くはバルド祭りが続きそうなので、どうかお付き合いください。


6.竜の抜け殻様
普通にうんちゃ砲を使えそうなのが怖いですな…。
となると、ルビナスはうんちゃーでございますーの方?

本来ならこの辺で“破滅”の将が出る予定だったのですが…バルド祭りのため、延期になりました。
申し訳ない…。


7.YY44様
ヤギザワですか?
あっはっは、名前だけ出してすっかり忘れてましたよ。

そう言われてみると、アヤネは重要なキーパーソンですよね。
何だかんだ言っても、透が軍やV・S・Sに入った最大の切欠でもあるし…。
その分酷い目にも合ってるけど…うう、思い出すと精神的ダメージが…。

ヒカルやリャン達に関しては、過去の因縁が最大のテーマみたいな物でしたし、似たり寄ったりになるのも仕方ないですかね。

リリィはツンデレですからにゃあ。
ストレートには甘えさせませんよw


8.カシス・ユウ・シンクレア様
そのうち、後書き代わりに年表を書いてみようかと思っています。
…でも、時守はこういう整理整頓が苦手なんですよね…。
ま、ボチボチ製作しようと思います…何処まで書こうか…ネタばれに気をつけないと…。

なんつーか、ゲンハは殺しと強姦が何よりの楽しみだったヤツです。
狂気の塊のような人間でした。
しかも、その狂気が『一般人にもイメージできる方向性の』狂気だというのがまた…。

未亜さん謎ですねぇ…。
彼女のパワーアップに関しては、設定が2転3転しています。
どうしよう…。

ユカと未亜さんのツープラトン?
そりゃ勝ち目ないです…。
まかり間違って、未亜がユカに伝染した日には…(ガタガタ)


9.神〔SIN〕様
ぐわー、ついに日常まで侵食が進んだー!
千雨には本気で同情の意思を禁じえない…。
なまじ常識人なばかりに…(涙)

あー、銀さんを記憶喪失にしたら金八先生に…ならないか。
ダウニー、君の頭は何時公開するんだ!?
それだけの大技、大舞台で使わない手はないぞ!
きっと皆に受け入れられる!

…しかし、何で現国の授業に二人も教師が居るんでしょ?
ちゅーか、授業始まってるだから行かなくていいのかフノコ?

『年齢詐称』なんじゃねぇの?の筆頭は…ひぃ!?

煙が出るタバコか、斬新だ…案外売れるかも。
しかしどれだけのスピードで舐めたら煙が出るのか…。

嫉妬団、ネギは攻撃しても大河は攻撃しないの?
ネギが担当してるクラスは、一人一人の力は救世主クラスに及ばなくても、数で圧して来るから…大河ハーレムに近い戦闘力を誇るぞ?
…あっ、お持ち帰りしようとしてる不埒者が居るぞ!
さぁ、このかを持ち替えろうとする阿呆をしばき倒し、せっちゃんとこのかのポイントを稼ぐんだ大河!

むぅ、美人だから見えるのか…普通に納得してしまうのが恐ろしい。
………憐を…察知させるべきだろうか…。

時にエヴァンジェリン、何を今更常識人ぶっているのかねw
…というか、どうやって転校を?
登校地獄はどうした?
なに、気合で解く?
あの授業を受け続けるよりマシか…?


10.舞ーエンジェル様
憐ちゅあんは、バルド辺が終わったら出番が無くなりそうなんですよね…(汗)
彼女は本気で戦えそうにないですし…。
日常シーンぐらいしか使い所が…。

ムドウとシェザルのパワーアップ方法は既に決まってます。
ロベリアは…どうやってパワーアップさせるかな…。
苦労症だから、ストレスが溜まれば溜まるほど攻撃力が上がるとかやってみようかな?
ダウニー先生は…うん、ある意味では 仏陀の境地に行くかもしれません。
最終決戦時にですが。

バルド編が終わるまで、“破滅”の軍の方々の出番が無いっす!


11.ナイトメア様
ボケとツッコミ繰り返してるだけやん!
ぶっちゃけ、孤島にでも纏めて放置すれば、ボケ倒しで放っておいても…。
…いや、このメンツでボケ倒しは危険すぎる(汗)
それこそ外なる神とか呼び込みかねん…。
ま、まさかそれがネコの目的!?

しかし…遺跡でやってるのは監禁プレイになるのか…今更ながら、犯罪のニホイがヒシヒシと…。
蒼髪…蒼髪なんですね?
まさかあの展開じゃないッスよね!?
セル君は他の所に!?
ああっ、でも語呂ご凄く似てるし!

しかし…赤玉か…。
出たら出たで、ルビナスが強壮剤とか作って大変な事になりそうな気が…(汗)

…イムリコ、平和…。
うん、食べてる姿が萌えるから何の問題も無し!
王宮の経費を使ってどんどん食え!

時守は現在、妙に眠いだけであんまり疲れませんw
大学最終学年は、人生最大にして最後の自由時間です!


12.なな月様
ナナシ自身は癒されますが、被害がバカになりませんからね。
万が一、ナナシに危害を加えたと判断された日には…姉貴分のルビナスが、ルビナスがッ!

ゲンハが最も恐怖するモノと言えば…まぁ、やっぱり真面目な所ではアレでしょうかねぇ。
自らの狂気が消える事。
まぁ、今回はそれが死因だったのではないのですが。

ロリはいいなァ…。
最近富みにそれを実感してます…いや、法に触れる事はしてないよ?

バルドねこフォースですか。
時守はやった事ありませんが…見る限り、システムはバルドと同じっぽいですね。
メ、メカ進藤がああぁァァァッ!

おお、自作のパソコンが作れるのですか!
時守は何度か挑戦しようとしたものの、置き場所が無いし今のPCでもまぁいいかー、と何時の間にやら妥協してしまいます。

お、欧州西部で電撃戦!?
どのストテラジーゲームでしょ?

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