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▽レス始

「.hack//G.S. レベル7(.hack+GS)」

脳味噌コネコネ (2006-09-18 21:06/2006-09-19 05:42)
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大きな、見た目だけでも高級さの漂うベッドに寝転がり、冥子はため息を吐いた。
自分の心が弱くてはいけないことを痛いほどに理解して、だから頑張ってきたはずだった。
だけど……それでも、結局変わりきれてなどいなかった。また、やってしまった。
確かに、いつものように、建物全てを壊してしまったわけじゃない。
それどころが、ただ単に少しビックリして、電源端子を切断してしまっただけだ。子供のお小遣いでも修理できる。
しかし、結局肝心なところでまったく役に立てなかった。それは、変わらない事実だ。
横島君が何やら大変なことになっているらしくて、それで寂しそうにしている令子ちゃんに協力を買って出た。
絶対に役に立って、助けてあげようって思ったのに、何の役にも立てないどころが、自分は変わっていなかった。

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

ゲームにアクセスする勇気が出ない。
自分が消えて、あの後大変なことになっていたら、嫌われているかもしれない。恨まれているかもしれない。
令子ちゃんに嫌われたくない。横島君にも、絶対に嫌われたくない。
だから、そのためにも様子を見に行かなければいけない。それはわかっている。
此処で立ち止まることしか出来ないのでは、前の自分と本当に同じになってしまう。
最低な自分には、戻りたくない。流れる涙よりも、心を締め付ける圧力よりも、それが怖かった。
心の中で三秒数えた。体は動かない。次は絶対に動かして、椅子に座ろうと決心する。
1……2……3……4……5!
考えるのをやめて、ただ体を動かすことだけを考えてベッドから飛び降りた。
広い部屋の、お洒落な窓の近くにある机と椅子、そしてPCを正面に見据え、走る。
そのまま何も考えずに椅子に座って、気合だけでPCを起動させた。もう、逃げたくなんてない。


時の流れの中で、変わろうとする事ができた者は強い。立ち向かおうとした者は強い。逃げなかった者は強い。
彼女もそんな強い人の一人。そして彼女だけじゃない。たくさんの強い者が、集うことになる。
そんな立ち向かう勇気がある者を、この世では勇者と呼ぶのだから。


        .hack//G.S. Version1.04『Brave men who change and go』
                GAME START


ある、ごく普通の中学校にある二年三組の教室で、魁斗は、考え事の整理に休み時間を費やしていた。

「なぁ魁斗?」

あれは一体なんだったのか、少年の頭は今、そのことだけしか考えられなかった。
親友が自分に話しかけていることに、まったく気付いていない。

「おーい」

まるで遠くにいる人を呼ぶように、手をメガホンのようにして喋る男子生徒の声に、やっと彼は振り向いた。

「康彦、どうしたの?」
「……昨日の事、考えてるんだろ?」

図星であるが、一緒にゲームをプレイしていた康彦なら気付かないはずがない。
それほどに印象的で、異常な出来事だった。

「うん」

魁斗は昨日、数日前に康彦に勧められて始めたオンラインゲーム『The world』で、恐ろしい事件に遭遇した。
ウィルスにデータを書き換えられたモンスター『ウィルスバグ』の出現。
そして、倒せるはずのないHP無限のモンスターに対して放たれた、謎のスキル。
ダメージを与えるというよりも、データを壊すような攻撃で、ウィルスバグは撃破された。
だけど、その過程で飛び散ったウィルスバグの破片に、魁斗のPC『カイト』は体を引き裂かれた。
その時、有り得るはずのない『痛み』が体を駆け巡ったのを覚えている。
叫び声をあげて、椅子が後ろに倒れたのと一緒に自分も倒れて、気が付いたときにはベッドの上だった。
今日は休んだ方がいいと言われたけれど、別にいたって健康だったから、今此処にいる。

「The worldは、絶対におかしいよ」
「俺もそう思う。最近どんどん変な事が増えてたけど、あれはいくらなんでも有り得ない」

ウィルスバグだけならば、まだ有り得る話だ。
だけど、あの後の出来事は、ウィルスとかそういうレベルの話じゃなかった。

「今日の朝、バルムンクからメールが来たんだけど、聞くか?」
「バルムンク……うん」

あのウィルスバグの攻撃を受けたバルムンクのメール、聞く価値が十二分にあった。
別にそうでなくとも、友達のメールの内容は気になるものであるが。

「バルムンクも魁斗みたいに、リアルで痛みを感じたらしい。それこそ、意識が飛びそうなほどの……だ」

それを聞いて魁斗は、事件の問題性が予想以上に大きいのを知った。

「意識不明者の噂……本当なのかな?」

The worldをプレイして、意識不明に陥ったプレイヤーがいるという噂が、BBSで話題になっていた。
あの体に走る痛みを思い出せば、それも頷ける気がする。それほど痛かったし、気持ち悪かった。

「おそらく、本当だろうな」

魁斗も内心、康彦と同じ意見だ。
あまりにも非現実的すぎることであるが、それを信じずにはいられない事実を彼は目の当たりにしている。

「ゲームの中で血を流すPCがいるくらいだからな。あいつは、放浪AIじゃない」
「放浪AI?」

知らない単語の意味を問いかける。その返答は、やはりゲームらしくなかった。

「原因はわからないが、操作するプレイヤーも存在しないのに動き続けているPCの通称だ。
 ΔサーバーやΘサーバーではほとんど目撃情報が出てないが、Λサーバーじゃあ少なくない。
 それも含めて、The worldには不可解な点が多すぎる。だから俺たちは、謎の解明を目指してるんだ」

康彦とバルムンクの二人が謎の解明を目的にしていることを知ったのは、魁斗がゲームを始めて三日目のことだ。
だいぶシステムに慣れてきた魁斗に、康彦はThe worldで起こっている異変について話した。
その後、協力することを頼まれた魁斗は、二つ返事で了解した。彼はとても優しい心の持ち主なのである。

「パピーのことは知ってるよな?」
「うん。会ったことはないけど、康彦の知り合いなんだよね?」

神霊のパピーの名で呼ばれる最上級プレイヤー。
康彦やバルムンクと同じように彼女も、The worldの問題について目を向けていると康彦は言っていた。

「昨日、あのスキルを使った蛍は、パピーの知り合いみたいなんだ」
「え!?」

みたいなんだ……ということは、それが事実であるということだ。
つまりパピーは、あのPCの問題性について知っているかもしれないことになる。いや、知っているはずだ。

「あの後、蛍を背負って歩いている途中に、起こった事件の内容を記したメールをパピーに送ったんだ。
 そしたら、一分もたたずにパピーが走ってきた。今まで見たどの顔よりも、顔色が悪かった。
 蛍をアジトのベッドに寝かせた後もパピーは、ずっとその傍を離れないで様子を見てたんだ。
 たぶん、今も蛍のところにいる。あれだけ心配してる相手なんだから、蛍のこともよく知ってるんだろう。
 だから今日、蛍とパピーに話を聞いて見ようと思う。間違いなく、何か有益な情報が得られると思うんだ」

魁斗は頷いた。話を聞いて彼も、康彦と同じ意見を持ったからだ。

「The Worldは、少しずつ壊れてきてる気がする。だから僕も、自分に出来ること、やってみるよ」

何が出来るかなど、よくわからないけれど、それでも友達のために何かをしたかった。


「やっぱり……冷たい」

病室の白いベッドで、生命維持装置により生き延びている少年の手は冷たい。
姉である少女にとってそれは、辛くて仕方がなかった。悲しくて仕方がなかった。

「三人目って言ってたっけ……あの看護婦さん」

自分の弟の他に、二人、最近意識不明に陥って病院に運ばれてきた人がいると、彼女は聞いた。
短期間で、三人もの人の目を閉じさせたゲーム。もはや、ゲームだと呼べるのかさえ、わからなかった。

「痛かったなぁ……あれ」

あの人たちがウィルスバグと呼んでいた奴に攻撃されたとき、すごく痛かった。
弟もその痛みを感じたのだと思えば、今の状況にも説明が付く。体験したものにしか理解できないだろうが、確かだ。
だけど、それでも割り切れない思いがあった。

「あんた男の子でしょ……。何で私に我慢できて、あんたは目覚めないのよ……」

スカートを握り締めても、目からしずくがこぼれても、何も変わらない。
変えられるのは、事態に気付いた者だけ。だから、変えたいと強く願った。
しかしそれには大きな障害がある。何故なら相手は、絶対に勝てないはずの敵なのだから。

「そういやあの後、どうなったんだろ……。メールしたくてもメンバーアドレス貰ってないしなぁ」

自分よりも長く現場にいた蛍なら、何かを知っているかもしれない。だけど、アドレスの交換ができていない。
情報を得るためには、またあのゲームに入って、自分の足で稼ぐしかない。

「何もしないわけには、いかないわよね」

The Worldに何かが起こっている。まだはじめたばかりのゲームだけど、それくらいはわかった。
弟の仇を討つだけじゃなくて、何かやれることがある。自分にしかやれないことが、きっとある。

「……ごめんね。お姉ちゃん、もう行くから。バイバイ」

涙を拭って、椅子から立ち上がれば、もう自分の行く手には道が見えていた。
がむしゃらでもいい。格好なんて、もう気にしない。プライドなんか捨てればいい。
こんな時に波に飲まれずに、立ち向かえるのが自分であると信じたかった。
今この時に、自分の中の何かは変わったはずだ。これから、何かが変わっていく。
きっと色のない現実に戻るまで、すごく時間がかかる。
RPGの経験など指で数えるほどしかないが、それでも、今の少女は旅立っていく勇者の一人なのだ。


アジト  フィアナの小屋


「うんうん、いけるいける」

少年は空腹を満たすために、目の前にあるお菓子を食べ続ける。
スナック菓子だが一つ一つ形状が大きく異なるお菓子の山は、彼の手によって取り出されたアイテム、山吹色のお菓子だ。

「にしても妙だよな。見ることなんて出来ないのに、いちいちデザインが作られてるのって」
「わたちも、それが気になっているところでちゅ」

とはいえ、そのおかげで蛍は食べ物にありつくことが出来たのだ。
ゲームの製作者に感謝しつつ、蛍が円形のスナックに手を伸ばしたとき、パピーが口を開いた。

「そういえば蛍、トイレはどうちたんでちゅか?」

それを聞いた蛍が、口をあけたまま動きを止め、体を振るわせ始めた。

「何かあったんでちゅか?」

まるで怯えているような表情の蛍に、何か事件があったのだと思い真剣な表情に変わった画面前のパピリオ。
だがそれは、彼女のまったく予想し得なかったことにより裏切られた。ある意味事件と言えなくもないことであるが。

「な……なかったんや」

涙目で、可憐な高い声の関西弁で言う少年はおおよそ少年には見えない。
そんなことを考えたのは蛍でも、パピーでもない、今この場所に来た第三者だった。
彼の名はオルカ。今現在心臓の鼓動が高まりつつある中学二年生である。
蛍のキャラデザインはモデルがモデルだけあって、男にも女にも見えてしまう。
体を震わせ、腕で体を抱きしめ涙目で喋る蛍は彼にとって、少女にしか見えなかった。
綺麗な白銀の髪、僅かに頬を紅くした顔、白い肌、小柄ながらもスレンダーな体型が、彼を興奮させた。
ゲームであることを忘れて早くなっていく鼓動。いろんな意味で大問題である。

「なかったって、まさか……アレでちゅか?」

パピーの問いに、コクコクと何度も頷く蛍を見ても、オルカを操るプレイヤー、康彦の心臓は高鳴るばかりである。
それが大きな間違いであると彼が気付くまでにかかった時間だけ、彼の心は傷付くのであろう。

「まぁ、ゲームのキャラにいちいちつける必要なんてないでちゅよね」
「そんだけやないんやぁ! 女の子のがぁ! 女の子のがあったんやぁ!」

それを聞いたリアルのパピリオは苦い笑みで顔を引きつらせることしかできない。
それを聞いたリアルの康彦は『意味深』な表情で、顔をニヤ付かせることしかできない。
どう対処すればいいのか、考えるので精一杯だった。

「ルシオラちゃんがモデルなんでちゅから、有り得ないことじゃないでちゅよ!
 それよりも精密にルシオラちゃんを再現したその完成度に感動するべきでちゅ! それが蛍でちゅ!」

かなり無理があるが、ルシオラの名は蛍の精神を安定させるのには十分だった。
そして知らない名の女性を再現したという話を聞いた中学二年生の脳を桃色に染めるのにも十分だった。

「それで、トイレはちゃんとできまちたか?」

アジトに入ってきてから一歩として踏み出せないでいる少年に対して絶大な威力を誇る爆弾が投下された。
二人に話を聞こうと思っていた彼の脳は、目的と違う話を聞くことで一杯だ。

「ああ……いちよう……な。その……見られたけど」
「見られたんでちゅか!?」

桃色少年が、最後の一言で鼻血を噴出した。しかしその音は、パピーの叫びによってかき消される。

「見られた……つっても、女の子のPCだったけどな」

安堵のため息を吐くパピー。荒い息を吐くオルカ。

「ネカマの可能性もあるんでちゅよ?」
「いや、声とか驚く動作が女の子だったから間違いない」

鼻を押さえる少年に対して悪影響な会話が続く。少年の頭の中は既に妄想モードマックスだ。

「はぁ……まぁ、あったことは仕方がないでちゅね。これからは気をつけないと、ルシオラちゃんが可哀そうでちゅよ?」
「そういや、そうだな……。これって女の人にとってすごいショックだったりしないか?」

間違いなくそうである。トラウマになりかねない。

「そうでちゅけど、見られたのが女の子なんだから大丈夫でちゅよ」

聞かれたのが男の子だったら大問題だ。

「ゲームの中で生きるっていうのも大変やなぁ。はぁ……ん?」

ため息をつきながら首を振った蛍が、ここでやっと立ち尽くしていたオルカを発見した。
それにつられてパピーも、妙に荒い息を吐くオルカを見る。

「来てたんでちゅね、オルカ」
「オルカっつうと……そうか、あんたが俺を運んできてくれたっていうオルカか。ありがとうございます。昨日は本当に助かったっす」

そういって軽くお辞儀する蛍に、リアルの康彦は顔を真っ赤にした。
彼は、恋愛経験など無いに等しいタイプの中学二年生なのである。

「あ……ああ。それで……か……体の調子はどうだ?」

桃色だった頭の中が、今や真っ白に近い。緊張のしすぎだ。

「オルカ、何でそんなに緊張ちてるんでちゅか?」
「え……あ……はは。何でだろうな? ちょっと外の空気吸ってくる」

ゲームの中であることを忘れ去っている少年は、一度アジトを出た。


ちなみに蛍を『目撃』してしまったPC『エルク』も、女の子に間違えられていた。


気を取り直すこと二分、アジトの机の周りに、蛍、パピー、オルカの三人は座っていた。

「単刀直入に言うけど、君は一体何者なんだ?」

ある意味言葉遣いが大きく間違っているオルカに気付くものはいない。

「えっと……あれは言えんし、これは言っていいんだから……」

極秘情報の類に含まれるものを話す内容から削り取る蛍。少し怪しいが、オルカには気にならない。

「昨日戦ったウィルスバグみたいな奴に一昨日も会って、それで攻撃されたんだ。
 それで気付いたらゲームの中に吸い込まれちゃっててさ、ほんと訳わかんないっす」

信じ難い内容だが、そういう話をされると考えていたオルカは信じるしかなかった。
The worldの謎にもはや現実の倫理など通用しない。

「それじゃあ、昨日のあのスキルは一体?」

データの仕様にないスキル『データドレイン』。どう話せばよいのか蛍にはわからない。

「オルカは、白い少女の噂を知ってまちゅよね?」
「ああ、知ってるけど……何か関係があるのか?」

パピーが頷いた。

「一昨日その白い少女に会ったんでちゅ。それで蛍が、本のアイテムを貰いまちた。
 そのアイテムに封印ちゃれていたスキル『データドレイン』が、オルカの見たものだとパピーは思いまちゅ」
「データドレインは相手のステータスを書き換えるスキルだと思ってるんす。だから、ウィルスバグも倒せた」

真実の中から話せるもののみを集めて説得力のある内容へと変えている。
嘘やハッタリを日常にしてきた二人とその周りの者たちにとっては、朝飯前だ。

「なるほど……しかし……それじゃあまさか!」
「何か問題があったんでちゅか?」

真剣な表情で問いかけるパピー。

「いや……別に問題はない。それよりも、他に何か情報はないか?」

別の話に持っていこうとするオルカが考えていたことは、確かに問題とはまったく関係が無い。
ゲームの中にいるという蛍の話と、さきほど聞いたトイレの話とを繋ぎ合わせて、また頭が暴走を起こしただけである。

「これ以外には、特にありまちぇん。オルカの方はどうでちゅか?」
「いや、こっちはこれといって情報はない。しかしデータドレインみたいなスキルが実在するということは、
 ウィルスバグに対抗する方法がゼロじゃあないってことだよな。これでだいぶ、希望が出てきたぞ」

オルカの言うとおり、ウィルスバグに対抗する方法がデータドレインだけとは限らない。
やっとのことで見つけ出した希望に、オルカは嬉しさが隠せなかった。
しかし彼は気付いているのだろうか? その嬉しさが、ゲームだからこそ得られるものであることを。

「……でも、少しおかしいとは思いまちぇんか?」
「ああ、わかっているさ」

現在こちら側にある唯一の対抗策『データドレイン』の入手経路に問題があった。
それに関しては昨日にも、一度蛍が美神と話している。

「ウィルスバグを撃破できるスキルの入手経路が、明らかにゲーム内部の存在である白い少女。
 関係があると見るべきなんだろうな。……しかしそうすると、今回の事件の出所が掴めなくなってくる……」

蛍やパピリオには、ゲーム内に潜む霊的な何かが原因であるとわかっている。
しかしこれは極秘事項だ。話すわけにはいかなかった。

「加えて、ゲーム内の食べ物が食べられるという異常現象。データに味があるなんて聞いたことないぞ?」

いくらなんでも非現実的すぎる。オカルト関連に知識のない一般人からすれば、そう見えて当たり前だ。
オカルトの力は半分何でもありだ。今回のような現象を引き起こすのだって、決して不可能じゃない。
それこそ横島は一度、ゲームの中に入ることを経験している。

「でもこれ、けっこういけるんすよ。治療の水もなんかスポーツドリンクみたいだし」

山吹色のお菓子を食べながら、治療の水を飲む蛍。いろいろとシステムを覆した行為だ。

「まぁ治療の水で回復するときに、いちいち全部飲まんといけなさそうなのはきついけどな」

回復呪紋では、回復するまでに数秒かかるだけでなく、ポイントも消費する。
SP切れしているときや、直ぐに回復しなければいけない時などは、非常に困ることになるだろう。

「だが……まずはレベル上げだな。初心者の蛍じゃあ行動範囲が狭すぎる。
 それにソロで戦わせるのはあまりにも危険だ。もしかしたら死ぬかもしれない」

それを聞いても、蛍の表情に変化は見られない。彼は既に、覚悟している。
GSである時点でいつも危険と隣り合わせなのは当然だ。今回は少し、その危険が増えただけだと、そう思うことで勇気が出た。

「ついでに言うと、つい先日から協力してくれることになったカイトもそうだ。
 昨日蛍と一緒にいた二人やカイトと組んで稼ぐのが得策だろう。そっちの方が面白いからな。
 もちろん頼まれれば、俺もパピーも付いてやる。敵の攻撃を受けずに戦う方法も多々ある。慎重にやれば大丈夫だ」

オルカは、親切なことでも有名な上級プレーヤーである。
そしてそれが、彼のこのゲームにおけるプレイスタイルだ。


Δルートタウン   マク・アヌ


「ルートタウンの地理はわかるか?」

首を振る蛍。初めてのプレイでも、直ぐにエリアに行ったためマク・アヌを見て回ったことはない。

「それなら今からわたちとオルカがガイドしまちゅよ! いいでちゅよね? オルカ」
「ああ。ついでに俺の仲間も紹介出来そうだしな。おーい、バルムンク!」

三人の歩いている道の先で、オルカにとっては見慣れた白い羽の剣士が歩いていた。
しかし、音声が聞こえる範囲をギリギリ超えていたらしく、バルムンクは振り向かない。

「ちょっとバルムンク呼んでくるから待っててくれるか?」
「ああ」

蛍の世界。今、彼の居場所は此処に繋ぎとめられている。
現実の世界よりも、ずっと雰囲気がいい。生気が満ち溢れている。
例えそれがゲームだとしても、蛍には、それが偽物であるなんて思えなかった。

「ねぇ! 君キミ!」

突然右方向から聞こえた声に、蛍は振り向いた。
明らかに他のPCと異なる、猫の外見を持ったPCがこちらに向かって走ってくる。


 あとがき
どうも。蛍の体の説明をするとか言って一体何の説明をしているんだと自分に問いかけた脳味噌コネコネです。(笑)
GSといえばサービスの多さも魅力の一つ(?)なので、出来る限りの精一杯の下ネタを織り交ぜました。自分が恥ずかしくなるのでこれ以上濃いのは無理です。
キャラクター性があまりにも弱すぎるオルカに少し味を加えようとしたのが、とんでもないことに……。
彼はこれからどんどん出番が『無くなり』ます。この『Brave men who change and go(変わり、行く勇者たち)』が終わる頃には、既に風前の灯化している可能性大です。理由は魅力が無さ過ぎるためです。
ミアやらエルクやらなつめっち(あるサイトにおいてのなつめの通称)やらぴ○しやらがこの話の間に登場するというのに、彼が生き残れる望みなどないのです。
蛍自信に性別はありません。アレが無いのに胸が無い理由は簡単にわかります。


 レス返しです

寝羊さん
拳闘士を入れたのは、やはり雪乃丞にはそれしか会わない気がしたためなのと、キャラが多いのに対して職業が少なすぎるためです。
仲間メンバーだけでも30人近く出るのに、六つだけの職業でキャラ分けをする自信がありません。
それに戦闘のバリエーションも増えるので、非常に書きやすくなるのです。
プチグソのエサはしっかり食べます。ずっとやってみたかったネタなので。
地面系の呪紋……確かに臭いそうですね。黄色い煙がなんとも……。

秋桜さん
蛍とパピリオはこの作品の中でけっこう多数出てくる、和む関係を持つ内の一組です。
原作と違って、そういう結びつきも重要な要素となってくるので、その辺にもご注目です。
侵食率がシンクロ率に近いのは、まず痛みのフィードバックという点が大きいです。
解りやすく言うと、侵食率に応じて敵の攻撃により感じる痛みが増減するということです。なので高いと非常に危険です。
ですがその代わりに、心強い武器も使用可能となるので、敵との戦いではこの侵食率が大きな役割を持ってきます。

麒山悠青さん
はい。命がけです。(笑)
一人でダンジョンに突っ込んで、敵から逃げながらプチグソのエサを集めるシーンなどがこれから出てきます。
他にも装備を強化してくれるあの泉を『お風呂』にしたり、装備変更の際には『生着替え』の必要があったりとゲームの中にいるからこそのアクションが多数あります。
そして横島にとっては大切なアレを除去したのは、この作品において1○禁のような展開にはならないことを知ってもらうためでもあります。というか恥ずかしくて書けません。

シャミさん
GSを使ったクロスオーバー作品にはあまりない、GSストーリーの続きとなるものを描くのも、この小説の目的の一つです。
特に原作終了後から変化したキャラクター同士の関係も、強い意味を持ってきます。その中でも最も強く変化したのが、横島とパピリオなのです。ある意味、冥子嬢が一番変わってますが。
パピィはパピリオの優しさとか懐き具合とかを伝えるために用意したので、一発キャラに近いです。やはりパピリオには魔法少女の方が合ってますから。
回復呪紋に関してですが、原作と異なり敵の攻撃をテクニックで回避する要素が強いため(バルムンクがブラックローズを庇ったように)、ある程度はオリプスやラリプスでも通用します。ていうかそうしないと出番の回らないキャラが出てくるので。


次回は、ミアとエルクの登場からはじめようと思います。原作ではとても不思議と感じるイベントなのですが、エルクの存在によりギャグの方向に走ってしまいそうですね。お楽しみに。

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