時は少し遡り、ゴン、レオリオ、キルアの3人は地下の条件競売が行われる会場を訪れていた。ゴンが、少年と腕相撲をしてすぐ、明らかにカタギではない2人組がやって来て、腕相撲に挑戦して来た。
相手は大木のような腕をして、ゴンと勝負出来なかったので、レオリオが代わりに、賞品を500万プラスして勝負し、相手の腕をへし折った。すると、そのツレが、名刺の裏にメモと地図を書いて、この場所を紹介してくれたのだ。
会場には中央にリングが備えられており、多くのイカつい人相の人々が席に座っていた。
「お〜お〜、殺気立ってるね〜」
3人が入ると時間はすぐ5時になり、会場全体が暗くなると、リングにスポットライトが点く。すると、奇抜な格好――黒のヒモビキニに筋骨隆々な男性――をした司会者がマイク片手に立つ。
<皆様、ようこそいらっしゃいました! それでは早速、条件競売をお知らせします! 今回の条件は〜……かくれんぼ!!! で、ございます!!>
「かくれんぼ〜?」
ザワつく会場に、係員が何かの用紙を配っていく。
<それでは皆様、お手元の用紙をご覧ください! そこに写った13名の男女が今回の標的でございます!!>
用紙を受け取ったゴンは、13の写真の中の一人のメガネの女性を見て驚く。
「おい、このコ確か……」
「うん! 腕相撲に来てた人だ」
<落札条件は標的を捕獲し、我々に引き渡す事! そうすれば標的一名につき、20億ジェニーの小切手と交換させて頂きます!!>
余りに法外な金額に、ゴンとレオリオは飛びついた。
「一人20億!?」
「全員捕まえりゃ260億だぜ!」
が、キルアだけは、不審な表情で用紙を見ている。
<期限はございません!! 標的の生死も問いません!! 勿論、捕獲方法、その他全て自由でございます!! 捕らえ次第、下記の番号まで連絡ください!!>
が、参加費用として一人500万ジェニー払って貰いますと言われ、ゴン達は迷わず、腕相撲で稼いだ500万ジェニーを払った。
会場から出ると、他の参加者達は、あちこちに連絡していた。
「おう、そうだ! これからFAXする!!」
「ネットで情報集めろ! 有力なネタには賞金出すって言っておけ!」
「俺達も急ごうぜ!」
早速、レオリオが情報収集に乗り出そうとするが、キルアが止めた。
「慌てなくても、あんな連中にゃ捕まえられないよ。何しろヤーさんでさえ、手を焼いてんだから」
「? どーゆー事だ?」
首を傾げるゴンとレオリオにキルアは答える。
「さっきのさ、条件競売って言いながら、まるっきり賞金首探しだろ? マフィアが自分らの力で捕まえきれてないって認めてるようなもんだよ。ん出さ、あの会場、特設リングがあったじゃん? 多分、最初の予定じゃ、あのリングを使ってお気楽なバトルか何かやるつもりだったんだぜ」
「その予定を変更してでも、こいつらを探す必要が生じた?」
「そ。どんなに時間と金をかけてでもね。500万ジェニーの参加料を取って競売の体裁を取り繕ってたけどさ、競売品が品物じゃなくて小切手って時点でもうおかしいと思わねー?」
「まさか、地下競売の品が、こいつらに盗まれた……!? そこで仕方なく競売を装って盗人の首に賞金をかけたのか!」
「そ。マフィアのお宝盗むなんて、こいつら頭イカれてるだろ。でも、俺達は、そんな連中の心当たりがある」
キルアとレオリオの会話を聞いて、ゴンもようやく理解し、その心当たりの名前を呟く。
「幻影旅団……! こいつ等が……!」
「いや、そうとは限らない」
「え?」
「ほら、昨日、ビルが倒されただろ? 競売品盗むのに、そんな事するか?」
つまり競売品を盗むのとは別に、破壊を目的としている。そして、もう一つ、幻影旅団とは別に、世界中のマフィアが揃っているヨークシンで破壊活動を行うような連中を自分達は知っていると、キルアは言う。
「黙示録……じゃあ、この13人は」
「ああ。幻影旅団と黙示録……やっぱり手ぇ組んでやがった」
最凶の盗賊とテロリストが手を結び、このヨークシンにいる。最悪ではあるが、それは一つの可能性を示していた。
「重要なのは、まだヨークシンが無事って事だ」
「え?」
「黙示録が本格的に動いたら、今頃、ヨークシンは地獄絵図だ。それなのに、まだビル2つが倒壊しただけ。それはつまり、連中にとって何か予想外の事が起こったって事だ」
そう説明され、ゴンは「そっか」と納得する。
「どっちにしろ、クラピカやアスカ達に連絡した方が良いだろ」
ゴンは頷くと、早速、連絡を取った。
郊外のリンゴーン空港に続く道の途中、アスカ、レイはリキと対峙していた。
「我の事を知ってるという事は……なるほど、貴様らがマスターの良く言っていた奴らか」
「イカリ君は……今、何処?」
2人の鋭く、真剣な目を見て、リキはフッと笑みを浮かべる。
「さて……何処だろうかな? 力尽くで聞いてみるか?」
「じゃあ、ミサト達は何処で、何してんの?」
ピクッとリキがその名前に反応する。ミサト、というのは、自分を捕らえた連中の一人の名前だ。リキは眼光を鋭くし、アスカに問うた。
「彼奴らを……知ってるのか?」
「さて……どうでしょう? 力尽くで聞いてみる?」
皮肉タップリなアスカの台詞に、リキはニヤッと笑い、2本の刀を抜く。アスカ、レイも彼女の纏っているオーラが攻撃的になると、構えを取った。
「……………」
「どういう事? あの女、全然、動いてないじゃない」
リキの動きをチェックしていたミサトだったが、街の外に出た切り、動いていないので不審に思っていた。
「カジ君、何か気になる会話でもあった?」
「…………いや(誰だ、この声の主は? カツラギを知ってるのか?)」
カジはチラッと後ろのミサトを振り返り、声の主が誰なのか分からず、表情を顰めた。
「レイ、分かってるわね?」
リキのオーラを感じ取り、相手は自分達よりも、遥かに格上。なので正攻法では通用しないとレイも分かっているか、頷いた。2人は、リキを撹乱する為、左右に走り、彼女を周りを高速で移動する。
「ふん」
が、リキは余裕の表情を崩さず、2本の刀を地面に突き刺すと、自らも回転して地面を切り裂き、衝撃波を放つ。
「「!?」」
アスカとレイは紙一重で衝撃波を避けると、レイの眼前に現れ、刀を振り下ろした。次の瞬間、レイの体から大量の血が飛び散る。
「レイ!」
受身も取れず、地面に激突するレイに、アスカは駆け寄る。傷口は深く、血は止め処なく溢れ出る。アスカは、両手を合わせ、自分の体にレイの傷と同じように手をなぞり、レイの傷口に手を当てる。
すると、レイの傷口は見る見る内に塞がっていく。
「ほう……他人の自己治癒力を強化するか」
やがてレイの傷が完全に消えると、アスカはドクン、と目を見開き、胸を押さえて絶叫した。
「うああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
「! アスカ!」
治療して貰ったレイは、胸を押さえて苦しむアスカを見て驚愕する。が、そこへリキが迫って来て、再び刀を振り下ろした。が、今度はレイはすかさず、ライターを取り出し、全ての火力を注いで火の剣を作り、少しだけ防ぐと、アスカを抱えてリキと距離を取った。
「アスカ、大丈夫?」
「そ、そんなの聞くぐらいなら、あんな怪我しないでよ!」
「…………そうね、ゴメンなさい」
レイが素直に謝ると、アスカは息を荒くしながらも胸を押さえながらリキを睨み付ける。
「あ、あの女、あんなデカい刀、凄いスピードで振り回すわね」
「そうね……長引かせると不利だわ」
「なら、一気に……」
アスカは呼吸を整えると、脚部に全オーラを集中させる。そのオーラを見て、リキは、流石にアレをまともに喰らえば、かなりのダメージを受けると判断し、2本の刀を一つにし、斬馬刀にする。
すると、彼女のオーラが今までよりも更に強大になった。余りに自分達と違うオーラの絶対量に、アスカ、レイは愕然となる。そして、更にそのオーラを斬馬刀のみに集中させる。
「ちょ、ちょっと! 幾らなんでも、そりゃ反則じゃない!?」
「そういえばゼルエルって使徒の中じゃ最強だったわね……」
昔、手も足も出なかったと思い出すレイ。リキが斬馬刀を振り下ろすと、道路が裂け、アスカ、レイに襲い掛かる。先程の衝撃波とは比べ物にならない威力で、2人は左右に分かれて避ける。
が、リキは連発で斬馬刀を振るい、アスカ、レイは避ける事しか出来なくなる。
「どうした? どうした? それではマスターに会う事すら叶わぬぞ!!」
「こ……の!」
アスカは歯噛みし、突っ込んで行くと、リキに向かって蹴りを放つ。リキは斬馬刀の腹で受け止めるが、距離を詰めたアスカは更に斬馬刀の腹に向かって蹴り続ける。
すると、蹴られる度に威力が増して行き、次第に圧されるのを感じ、アスカの脚のオーラが増大している事に気付いた。
「ぬ……!」
「レイ!」
「!?」
アスカが叫ぶと、レイは高く跳躍し、リキに向かってライターを振り下ろす。アスカは、バッと後ろに跳んで避けると、火がリキを包み込む。
「ぬああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
「やった!?」
「いえ、一瞬だけど刀のオーラを体に戻してるわ」
もし、オーラを戻してなかった生身の状態で、火を浴びた事になったが、恐らく結構なダメージにならなかったと、レイは言う。
「はああああああ!!!」
リキは咆哮し、斬馬刀を振るうと火は吹き飛んだ。中からは、多少、火傷は負っているが、体力が落ちた様子のないリキが現れる。
しかし、2人はこの隙を逃さない。
「レイ! 火!」
走りながらアスカが叫ぶと、レイもハッとなって新しいライターを取り出し、火をつけるとアスカに向かって放つ。すると、火はアスカの脚に纏い、リキに向かって突っ込んで攻撃する。
「チッ!!」
リキは、すぐさま斬馬刀にオーラを纏わせ、防ごうとする。しかし、斬馬刀にオーラが移動しなくて、目を見開く。
「(何故!?)」
バキャッ!!
アスカの蹴りは、斬馬刀を砕き、リキの胴部に直撃する。ズキッと、アスカは体に痛みが走ったが、この機を逃すわけにはいかないので、怯んだリキの胸に蹴りを放った。
ズボッ!!
「え?」
すると、アスカの蹴りはリキの体を貫通する。それに彼女は唖然となり、レイも驚愕する。パシャッと、アスカの体にリキの体から吹き出た血が降りかかる。
「ハァ……ハァ……」
リキは、呆然とするアスカの脚を引き抜くと、ヨロめきながらポケットに手を突っ込む。そして彼女は、焼け焦げたフロッピーディスクを取り出し、フッと笑みを浮かべた。
「なるほど……マギの忠告を聞いておくべきだったか」
先程の火で、ポケットの中のフロッピーがやられ、再び念を封じられた状態になってしまった。そこへ、アスカ、レイの2人分のオーラによる攻撃。流石に防げる筈も無かった。
リキはガタガタ、と震えながら斬馬刀を構え、アスカ、レイを睨み付ける。
「やらせない……貴様らにマスターは会わせない……」
「え……?」
「黙示録を壊させはしない……私の……家……壊させは……!」
ギリッと唇を噛み締め、リキは斬馬刀を振り上げる。レイは対応しようと、ライターを取り出すが、アスカが彼女の腕を掴んで止めた。
「アスカ?」
「…………死んでる」
「そして僕らは黙示録……世界に破壊による終末を与える。その為に力を貸して欲しい……君の」
5名の男女を背に、少年が再び手を差し伸べる。リキは、再び手を伸ばそうとしたが、不意にその手を止めた。
「リキ?」
「貴方は……貴方達は私を…………」
捨てたりしない、と聞こうとした時、少年はギュッと手を握って来た。リキは、驚いた顔で少年を見る。
「もし、僕が君を見捨てそうになったら、僕を殺して構わない。甘んじて僕は受け入れるよ」
少年の言葉に、リキは大きく目を見開く。そして、後ろの5人の男女も彼女を歓迎しているように笑っている。それを見て、リキは、生まれて初めて微笑んだような気がした。
「笑ってる……?」
斬馬刀を振り上げたまま、絶命しているリキの顔が笑っているのを見て、アスカとレイは眉を顰めた。
「っ!?」
ノートパソコンをいじっていたマギは、突然、画面に『Delete』という文字が出たので、目を見開く。
「まさか……」
リキの除念のフロッピーが壊れた合図だった。リキは嫌な予感がし、急ぎ、マスターの元へと駆け出した。
〜レス返し〜
レンジ様
今のシンジは割と明るいので、ゴンと気が合うかもしれません。シンジの相手はエヴァキャラで強い相手ですか……う〜ん、モラウとかノヴ……は厳しいので、難しいですね。
夢識様
黙示録じゃ、揉めたら喧嘩してでも決めろがルールです。
ちなみにシンジの服装は、自分でイカすと思ったヤツです。今も昔もファッションには無頓着なシンジでした。
流刑体S3号様
マギのカニ化は書いてて楽しいです。愛用品だからこそ、どついて使ったりします。ツッコミ愛用品です。
なまけもの様
リキ、ウボォーと決着をつける前に死亡です。で、それに気付いたのが止めたマギでした。
エセマスク様
マギは本当に黙示録のアイドルになってしまいそうです。
あ、でも喧嘩するだけで殺すのはご法度です。
今回、アスカとレイのコンビネーション技が出ました。連載前からやりたかった技です。アスカの蹴りに加え、レイの火を追加。2人分のオーラを込めて攻撃するものです。
髑髏の甲冑様
マルクトは失恋……う〜ん、それはそれで面白いかもしれません。
次回、カジの迷いも本格的になるかもしれません。
アスカとレイの実力は、リキよりかなり下なので、フロッピーが壊れ、念が使えない状況でやられる、というものでした。
今回、ゴン達も登場しましたが、ほぼ原作通りでした。
はい、ウィップの格好は、そういうものを想像してください。
ショッカーの手下様
死亡フラグ通り、リキは死にました。
シンジは、目覚めて10年ちょいですが、眠っている間、ずっと意識は覚醒していたので、おばあちゃんの知恵袋みたいに古い事とか知ってます。