Pururururu
「お電話です」
「ん、はい代わりました・・・ああ・・・え?・・・わかりました」ピ・・・
黒いスーツとサングラスのSPから携帯を渡されたのはグラマラスなボディーとモデル顔負けの美貌を持つ美女。電話の内容に困惑が浮かぶも、すぐに消し元の顔に戻す。
「式森和樹・・・か」
一方こちらかわってとある教室の一角。
「は?ちょっとまってくだ・・・ちっ、切れたか・・・」
端から見ると先ほどから独り言を呟いているように見えたが、実際は念話で会話しているだけだった。腰に日本刀を差し、巫女服のような服を着た姿というアンバランスな格好だが、顔を日本人形のような可愛さであった。
「なんで私が結婚などと・・・」
ギリ・・・
どうやら、結婚しろと言われたことが不服らしい。激しい怒りで歯軋りをし、今にも歯を砕かんばかりである。
なにやら一波乱ありそうだ。
第二話「さようなら平穏な日々」
「おはよう・・・」
「あ、矢夜!久しぶりどうしちゃったのよ。最近来てなかったじゃない!」
「アンタ!なんの陰謀?金儲け?独り占めは許さないわよ!」
「そうよそうよ!B組協定に違反だわ!!」
あの事件から3日後、久しぶりに登校したクラスメートにB組の洗礼が。このクラスには他人を心配するというすばらしい精神を持った奴はいない(一部を除いて)。他人は陥れるもの、他人の不幸は最高、信じられるのは自分だけという自己中が溢れかえっているのだ。
洗礼を受けている本人、千野矢夜もちょっと前まではそのうちの一人だったのだが、今は違う。
「おはよう、和樹君」
「おはよう、千野さん」
「もう、違うよ。矢夜でしょう?私も和樹君って呼んでるんだから」
「ご、ごめん。え〜と、矢・・・矢夜ちゃん///」
「うん」
このなんとも甘い雰囲気にクラスのみんなが固まった。矢夜がかなり変わったためだ。前までは内気で陰湿という感じだったのだが、陰湿な感じがなくなり明るくなったのだ(それでもおとなしいと感じる)。そして、和樹への態度と応答。これはまるで恋人ではないか?B組の誰もがその無駄に優秀な頭脳をフル回転させながらコンマ何秒で導き出した。
モテる奴には死を!という精神のB組連中が怒り出さないわけがない。しかも、その相手が落ちこぼれの和樹なのが、怒りを増長させる原因にもなった。
さらに、決定的なことが起こる。
「ね、ねぇ矢夜。式森君と仲がいいようだけど。あんたたち付き合ってるの?」
「付き合ってないよ・・・まだ(ボソ)」
「(ホッ)じゃあ、式森君のことをなんとも思ってないのね・・・」
付き合ってないという言葉にあからさまにホッする面々。だが、安心したのも束の間、矢夜の発言で混沌と化す。
「え・・・(カァアアアア)なんともないこともないよ・・・」
顔は真っ赤、声もか細く、顔も俯く矢夜の反応にB組は即座にターゲットを和樹にロック。
「式森・・・貴様ぁああああああああああああ!」
「見損なったぞ!お前がそこまで卑劣な奴だとは!」
「式森君!あなた最低よ!!」
「女の敵!!」
「こんな奴に生きてる資格などない!やっちまえ!!」
「「「「「おう!!」」」」」
普段、チームワークなんて言葉を存在してないかのような全くバラバラな奴らが、こういうときだけ抜群な息の合い方を見せるのだから不思議だ。
彼らの脳内では
矢夜が顔を紅らめる
↓
矢夜は自分の恥ずかしいことを式森に握られている
↓
それをネタに脅されている
↓
式森の奴隷となる
という解釈になっているのだ。一斉に上級魔法の詠唱が行われた。
「なんかわからないけど、誤解だ!!」
「黙れ!貴様のような奴の言葉を聞く耳は持ってない!!」
「くっ・・・逃げる!!」
「逃げたぞ!追え!!」
さすがの和樹も逃げ出す。B組の怒りに狂った連中は追いかけ始め、一対多数のつかまったら即死刑という過酷な鬼ごっこが始まる。
「あ〜、ひどい目に合った・・・」
「あははは・・・お疲れ様(汗)」
放課後になり、矢夜と一緒に帰っている和樹。なんとか生きて帰ってこれたようだ。この後、和樹の部屋で嫡羅の制御訓練を行う。寮の前まで来たとき、ふとスズメが一羽和樹の肩にとまった。
チチチチ・・・
「なんだって!」
魔里人は動物と心を通わすことが出来る。そのため、スズメの言っていることがわかる和樹はスズメの言葉に思わず声をあげてしまう。矢夜はまだ覚醒したばっかりなので動物と会話は出来ないので、和樹に聞いてみる。
「ど、どうしたの?」
「うん、この子が言うには僕の部屋に3人の女の娘がいるっていうんだ」
「ふ〜ん・・・和樹君って意外とプレイボーイなんだね」
「ち、違うって!!」
矢夜の冷たい視線に怯えながらも必死に反論する。本人には全く心当たりはないのだから当然かもしれないが。
とりあえず、和樹の部屋に行かないことには始まらないので部屋に向かう。部屋の前にくると中で何やら言い合いをしているような声が聞こえて来た。
「うぅ〜・・・どうなってるんだ?」
「うん・・・とりあえず、入らない?」
二人は不安を抱き、ビクビクしながら部屋に入る。それに気付き、中にいた3人が一斉に顔を向けた。矢夜は和樹にしがみついている。
「あの〜、ここは僕の部屋なんですけど?」
「じゃ、あんたが式森和樹?」
「そうですけど・・・あなたたちは誰です?なんで僕の部屋にいるんですか?」
和樹の質問に3人は順に答えてくれた。
「私は宮間夕菜といいます」
「私は風椿玖里子よ」
「神城凛だ」
夕菜以外の二人は葵学園では有名なので知っている。この前の昼休みに仲丸とかが話していたし。夕菜は面識はないが、宮間と言えばそれなりの名家だ。そんな3人が落ちこぼれと言われている和樹の部屋にいることがおかしいと普通は思う。
「あんた自分の先祖のこと知ってる?」
「いえ、あまり知らないです」
嘘です。全部知っています。
「あんたの先祖って一流の魔術師がゴロゴロいるのよ。それこそ教科書とかに載っているほどのね。で、チョット前にどっかの探魔士(クラッカー)が葵学園のサーバに侵入してね。和樹の遺伝子情報をアンダーグラウンドに流したのよ。それで、成り上がりの家としては睨みを効かせるためにそれを貰おうってわけで来たの」
「残りの二人もですか?」
「大体同じよ。夕菜ちゃんのとこは最近落ち目だし、凛のとこも伝統とかはあるけど最近ヤバいからってとこね」
「なるほど、つまりは僕の遺伝子狙いってわけですか」
「ぶっちゃけそういうことよ。でなければ、葵学園に入学はおろか、あたし達みたいな名家の令嬢があんたみたいな冴えない男のとこなんか来ないっての」
初対面なのにキツイことをズバズバと言ってくる玖里子。矢夜はあきらかに口を尖らせている。和樹も若干引き攣っているが。
「ずいぶんはっきり言うんですね。言われ慣れている僕でなかったら殴られるとこですよ」
「別に平気よ。自分の身は自分で守れるもの」
玖里子は成績優秀で魔法回数も14万以上と言うだけあって、自分の身を守りきる自信があるようだ。最も、それは素人相手の話でプロにがさすがに無理である。小さいころから裏家業をしている和樹にして見れば自信過剰としか思えないが。この場の和樹は落ちこぼれと思われているので仕方ない。
「で、君達もそうなの?」
「確かに私も本家にそう言われたが、私はそれに賛成はしていない」
「じゃ、なんで来てるの?」
「お前を斬ってこの話をなかったことにするためだ!」
凛は腰の刀を引き抜き和樹に斬りかかるが、矢夜の発した言葉に動きが止まる。
「・・・でも、そしたら殺人罪で捕まるわよね?」
「う・・・」
「それに、反対しているなら来る理由がないわよね」
「うぅ・・・」
「一体ここに何をしにきたのかしら?」
「はう!」
矢夜に言い負かされてガックリと肩を落とす凛。さっきの勢いが完全に消えてしまっている。その様子にもう大丈夫だろうと今度は夕菜に話を向ける。
「で、宮間さんは?」
「私も同じことを言われました。でも、私はそれだけだったら凛さんと同じで反対してたでしょう。私が来た理由はあなたに会うためです」
「僕に会う?」
「コレを覚えていますか?」
夕菜は首にかけてあった物をはずし、和樹に見せる。それは、木で作った手作りの小さな笛だった。
「この笛は・・・まさか、君は!」
「はい、10年前に迷子になったところを助けていただきました」
――10年前――
「もう、お父様もお母様も大嫌い!!」
「待ちなさい!夕菜!!」
「夕菜!!」
このころ、私は仕事が忙しくて何回も引っ越しては転校を繰り返していて、友達になってもすぐにお別れしなくちゃいけない生活をしていました。その生活が嫌で家を飛び出しちゃったんです。
泣きながら闇雲に走っていたから、気付いたら知らない森に迷い込んでしまっていて怖くなってまた泣いちゃったんですよ。そのときに和樹さんと出会ったんです。
「どうしたの?」
「あのね・・・ヒク・・・迷子になっちゃったの〜・・・エク・・・」
「じゃあ、僕が案内してあげるよ。お家へ帰ろう?」
「嫌!帰ったらまた転校しなきゃいけない。また友達とお別れするのは嫌!」
今思うとかなり我侭なこと言ってましたね。恥ずかしいです。
「なら、ここでちょっと遊んでく?」
「うん!」
「じゃ、ちょっとまっててね」
ピィイイイイイイイ!!
和樹さんが指笛を鳴らすと、鳥サン達がたくさん集まって来たんですよ。私はそのときは「すごいすごい!」ってはしゃいじゃって、家出のことなんてすっかり忘れちゃってたんです。その後、私は和樹さんと動物さん達と暗くなるまで遊びました。
「あ〜暗くなっちゃったね。帰らなきゃ!」
「そうだね。私もかえ・・・あ!」
そのときになってようやく家出のことを思い出したんですけど。
「待って。これをあげる」
「何これ?」
和樹さんが出したのは小さい木の笛でした。
「お友達が出来る道具だよ」
「お友達?」
「そうだよ。吹いてみて」
「う、うん」
私は言われるままに笛を吹いてみたんです。そしたら、さっきの和樹さんの指笛みたいな音が出て、鳥さん達が集まって来たんです。
「わあ!集まって来た!!すご〜い」
「これなら友達をいつでも呼べるから寂しくないよ」
「うん、ありがとう!」
こうして、私は和樹さんの案内でも森から出て、家に帰ったんです。和樹さんと再会の約束をして。両親からは怒られちゃいましたけど。
「あのときから私は和樹さんを片時も忘れたことはありません。こうして再開できて嬉しいんです」
「そ、そっか(照)でも、君が10年前のあの子だったんだね。そ、その・・・綺麗になってたから気付かなかった・・・」
「え・・・///」
二人の顔が紅く染まる。だが、二人以外の人から見れば惚気られているようで面白くない。
ギュ!!
「イタ!痛いよ。矢夜ちゃん!」
「(プイ!)知らないもん」
矢夜は和樹の腕を抓る。必死にやめてもらうように頼んでいるが、聞く耳持ってない
ようだ。そこに玖里子が口を挟んだ。
「どうでも、いいけど理由はわかったわね」
「はい。でも、その話はお断りします。僕は結婚できる歳じゃないですし。会ったばかりのあなたたちと結婚する気にもなれませんから」
「はい、そうですかって引き下がるわけにもいかないのよ。こっちもビジネスかかってるしね」
「私は元からその気はない!」
「私も引けません!」
和樹の言葉に三者三様の言葉が返ってくる。
「まぁ、それは自由ですけど・・・玖里子さん。本音で言ってくださいね」
「あら?私、嘘はついてないわよ」
「本当は遺伝子なんていらないでしょ?神城さんと同じで本音は反対なんでしょ?」
「なんでそう思うわけ?」
「勘です。僕の勘ってよくあたるんですよ」
「そう。でもそれじゃ、話にならないわよ?」
玖里子は動揺している様子もなく答えるも、確かに勘だけでは理由にならないが和樹はすでに確信していた。
「でも、本気で手に入れるならもっといい方法があるはずですから」
「あら?男は言い寄られれば堕ちるわよ?据え膳食わねばって奴ね」
「でも・・・・玖里子さんって処女でしょ?」
「な!ななななな、何言ってるのよ!」
「その反応が証拠ですよ。処女なのに、そういう風に迫るのっておかしいですよ」
「あうあうあう・・・」
和樹は玖里子の耳元で小声で囁く。するとさっきまでの冷静さが嘘のように顔を赤らめて挙動不審になる。こんな初な反応を見せられたらもう認めているようなものである。
そんな玖里子を軽く無視し、和樹は話しを進めた。
「宮間さん、さっきも言ったけど結婚はないよ」
「え〜!!いいじゃないですか!!」
「駄目!お互い良く知らないんだし。それに僕と付き合うなら相応の『覚悟』もしてもらわないといけないから」
「覚悟なら出来てます!」
「違うよ。君の考えている覚悟とは違った覚悟だよ」
「どういう覚悟ですか?」
「それは教えられないよ。まだ、君がどういう人かわかってないからね。完全に信用したときに教えてあげるよ。だから、まずは友達から、ね」
「む〜、解りました。和樹さんを絶対に信用させて聞き出します」
信用していないと言われて文句を言いたかった夕菜だが、和樹の目が真剣だったので拗ねるだけに留まった。不承不承と言った感じではあるが、了承し二人は握手をした。
これでとりあえず、遺伝子を狙う人達とは話がついたことになる。
「これで話は終わりですね?」
「ええ、私は帰るわ・・・迷惑かけたわね」
「私も・・・すまん、いきなり斬ろうとしてしまって」
「気にしてないよ。それよりも、悩みがあったらいつでも聞きますから。友達としてくるなら歓迎します」
「ん、ありがと。じゃね」
「すまなかった。では」
と二人は帰ろうとして立ち止まる。夕菜が帰る気配すらも見せていないからだ。
「「夕菜(ちゃん、さん)は帰らないの(ですか)?」」
「ええ、私の部屋はここですから帰るって言われても」
「そうなん・・・え?」
「「「「どういうこと?」」」」
夕菜のバクダン発言に部屋の主である和樹はもとより、玖里子、凛、矢夜も驚く。
発言者の夕菜は『何をそんな驚いているんですか?』とばかりにキョトンとしていた。まさかな、と聞いた言葉が信じられずに再度聞いてみる。
「私の部屋って?」
「だから、今日から私は和樹さんの部屋で一緒に暮らしますから帰らなくていいんですよ」
どうやら聞き間違いでなくて本気のようだ。
玖里子は呆れてため息をつきながら夕菜に言う。
「あのね、ここは男子寮だから夕菜ちゃんは住めないのよ?」
「そうですよ!まだ高校生なのですから同棲はまずいと思いますし」
「「(コクコク)」」
玖里子の言葉に凛と矢夜、和樹も同意する。しかし、夕菜は納得しない。
「いいじゃないですか!夫婦が認めてもらえないなら同棲くらい認めてくれたって!!」
「いや、よくないでしょ。それ」
「無茶苦茶ですよ!」
「規則で女子厳禁とあります!」
「いいんです!私達は夫婦になるんですから、予行練習です!!」
「だから、まだあんたらは友達ってだけでしょうが!」
「なんで、そんなに考えが飛躍するんですか!」
「和樹君も認めてません!!」
夕菜の言い分に3人がかりで説き伏せるも、夕菜は諦めない。ますますヒートアップしていく舌戦に和樹は入り込めないでいた。最終的には業を煮やした玖里子と凛が両側から腕をとり押さえ込んで無理やり連行していった。
「玖里子さん、凛さん、離してください!」
「ああ、うるさいわよ!」
「おとなしくしてください!!」
「ああ〜〜!!和樹さ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!」
バタム!
「・・・なんか、疲れたね」
「・・・うん」
「じゃ、お茶飲んだら訓練をしようか?」
「うん」
夕菜達が出て行き、ようやく静かになったので和樹と矢夜は訓練ができたのだった。
一方、夕菜を連行していった二人は管理人さんに事情を話し、夕菜を絶対に部屋から出さないように頼み込む。管理人にゆだねられた夕菜は寮の一室で簀巻きにされて呪文を唱えられないようにマスクまでされて放置された。その日の夕菜の部屋(拘置室?)では奇妙なうめき声が聞こえ朝霜寮の会談7不思議に数えられたとか。
「ンム〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!(和樹さ〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!)」
あとがき
カラオケいきたいな〜・・・ラッフィンです♪
3人娘の登場です!最初のころはヤケに玖里子と凛が嫌な奴に写りましたが、後に玖里子さんは純情生娘に、凛ちゃんはツンデレ?になり、夕菜がキシャー化し、立場が逆転しちゃいました。だが、なんといおうと山瀬さんに幸せになってもらいたい!
さて、夕菜の処遇ですが・・・どうしましょう?キシャー化させちゃっていいんでしょうか?なんかキシャー化しているものが多いのでここはなしでっていうのが私の考えなのですが・・・もちろん、暴走はしてもらいますがw
では、次回♪
レス返しです♪
覇邪丸様
僕は護り屋のオッサンとか影蜘蛛とか卍一族とか好きですね〜♪何故か離れないフレーズは黒部兄弟の『ふしゅるふふふふ〜』とかw何気に卍一族が出てきてくれることに期待しているんですwチュィイイイン!あっ(汗)
蛇ヤローは出す予定ですけど電気ウナギは考えてません。まぁ、野郎かはわかりませんがwww
ルビス?様
>『千野矢夜』
すいません。本気で間違えてました。ご指摘ありがとうございました。修正しました。
和樹=シドとかキャラで考えたわけじゃなく、こういう設定だったらこういう話ができるというようなストーリー性で選んだので・・・シドらしくとかは求めてません。和樹は和樹です。
>マトモっぽい(あくまで沙弓の方)千早&沙弓の出番
うむ、早く出したいものです。
D,様
格好は制服姿から着替えるので一番しやすい格好だったからです。深い意味はありませんw
混血はそのままの意味です。そんな重要ではない・・・と思います。
秋桜様
おお!こちらも読んでいただけましたか!!
嬉しいです。
和樹に関してはこれから語っていきます。でも、あまり設定を入れると強すぎって状態になるのでそこは調整しますよ。