後ろに蹴る足に地面の感触は薄く、蹴り出す足は前に出ない。まるで水の中を走るような感覚。意識だけが加速し空回り、それが焦りとなる。
アスナは走っていた。立つべき地面も見上げるべき空もない闇の中、目指す方向もなくただ今いる場所から少しでも離れるために。
それは逃走だった。恐怖に駆られて、アスナは走っていた。
引きつった表情で肩越しに振り向けば、追っ手の姿が見える。
横島。
黒いマントで包まれた体は闇の中では輪郭がぼやけ、色白の顔だけが浮かんでいる。闇に浮かぶ白皙は、しかし仮面のような無表情だった。そして見る見るうちに、離れていた距離は縮まっていく。
アスナは涙の溜まった目を前に向け、恐怖に固まる関節を無理やり動かして駆ける。
手を暴れるように振り回し――
体をぶちまけるように足を蹴りだし――
その肩に、吐息がかかった。
振り返るより早く、悲鳴を上げるより早く、涙を零すより早く、左肩から右脇腹へ向けて、横島の使う光の剣がアスナの体の中を通り抜けた。
斬られた。
スローモーションのように、崩れ落ちる体。だがそれだけでは終わらない。断たれた体に横島の剣が突きたてられる。
縦に横に斜めに。唐竹に袈裟掛けに薙ぎに切り上げに逆風に。
やがてその手から剣も消え、素手でアスナの体を解体し始める。
爪で皮膚を破き、指で肉を裂き、手で臓腑を引き千切る。
アスナは、抉り出され放り出された眼球で、その光景を呆然と見ていた。
血液が霧となって大気に混ざり合い、生臭さが立ち込める。その赤い霞のかかった闇を通して、アスナは気付いた。
横島じゃない。目の前にいる化け物は、横島じゃない。
なぜ、それが横島だと思っていたのだろう。
化け物は、オレンジ色の髪だった。化け物は、左右の瞳の色が違った。
化け物は自分だった。
返り血を吸った服が、ベトベトとまとわりついて気持ち悪い。
両手の平を目の前にかざせば、真っ赤に染まった自分の手。
その指の間から、闇の中に横たわった人影が見えた。頬骨の張った、縁の四角いメガネをかけた、無精ひげの中年の男。雰囲気がどこか、タカミチに似ている。彼の着ている白いワイシャツが血で染まっていた。それはシャツの布地では吸いきれず、ズボンまで赤く汚している。顔に血の気はない。目の焦点もどこか定かではない。
この人を知っている。だけれども、知らない。
何故か分からない。だが、心のどこかが叫んでいる。
ダメだ。このままではダメだ。このままではいなくなってしまう。死んでしまう。
みんなと同じように、この人も…!
「幸せになりな、お嬢ちゃん」
末期の吐息のような呼吸に乗せられた言葉が、明日菜の耳に届く。明日菜が男の顔を見ると、そこにはまるで重症を負った人物とは思えないほど穏やかな微笑があって…
「アンタにはその権利がある」
それが遺言だと、明日菜は理解してしまって…
「ダメ! さん!いなくならないで!」
明日菜はそこで夢から覚めた。
太陽の角度はまだ浅い。夜の残滓を残す大気は、カーテンの隙間から差し込む朝日に、蒼の色を加える。
普段より幾分か速い呼吸と鼓動。明日菜はまだ覚めきっていない頭のまま、首だけを曲げて周囲を見渡す。
自分がいるのは、嵐山のホテルの部屋だった。隣に敷かれた布団には木乃香の姿もあった。普段とは違う、だが普段と同じ穏やかさを含む朝。
明日菜はそれに安堵する。夢だったのだ。全ては夢――。
だが、その自己完結を邪魔する感触が自分の手の中にあった。
《護》の文珠。
―――今夜はもうこないとは思うけど、念のためにな―――
思い出した。あの後、横島さんの知り合いにホテルまで連れ帰ってもらった後、横島が渡した文珠だ。
連れ帰ってもらった?どこから?
「…あれは、夢じゃなかったんだ」
覚めた頭で、明日菜は悪夢と現実の境界を思い出す。
酷い寝汗を吸った浴衣が、ベトベトとまとわりついて気持ち悪い。
霊能生徒 忠お! 二学期 六時間目 〜ソードの7の正位置(不明瞭な心配事)〜
「ごめんなさい!」
朝っぱら、いきなり頭を下げていた明日菜に、横島は戸惑った。
女の子にごめんなさいといわれるのは慣れている。具体的にはナンパの時とか。だが明日菜は中学生であり、横島の守備範囲外だ。
わからない。
横島の無言の問いを受けて、明日菜は普段からは考えられないようなおどおどとした、歯切れの悪い口調で続ける。
「昨日、助けてくれたり手を差し伸べてくれたのに、その…叩いちゃって…ゴメン!」
「…そのことか。それなら気にしてないぜ」
なんだ、と横島は安堵して笑顔で答える。あの時の明日菜の反応は当然であり、むしろ横島は安堵したほどだ。あの状況で、ついこの間まで日本で普通の生活をしていた少女が平然としている方が、どちらかといえば不安を覚える。
「むしろゴメンな。あんなグロいもの見せて。大丈夫か?」
「あ、うん…ねえ、ネギはあの後どうしたの?」
「あいつなら起きたぜ。起きたときはかなり混乱していたみたいだけど、説明は済ました。
詳しいところは今日、奈良公園で西条達…昨日の二人を交えて話すつもりだ」
「そう…。よかった」
安堵した様子のアスナだが、それでも声には普段の快活さが戻っていない。何か声をかけるべきかとも思ったが、自分が原因である以上、何も言えることはない。だから、前から言っていた言葉を繰り返す。
「…なあ、アスナちゃん。辛かったら、戦うのは止めてもいいんだぞ。辞めたって誰も責めないからさ」
「………ありがと」
アスナはイエスともノーともつかない返事をすると、朝食が用意されている広間に向かった。その後ろ姿を見送ってから、横島は小さくため息をつく。
「…嫌われちまったかな」
やりようによっては、アスナにあんな光景を見せなくても済んだはずだ。だが状況が状況だった。メドーサの存在と土角結界、そして人質にされていた木乃香。そこまでの気遣いができるほどの余裕はなかった。
(…まあ、引いてくれるなら、あるいはそれもいいのかもな…)
横島はアスナのことを仲間として気に入っている。
さっぱりとした言動や強い正義感は一緒にいて心地いい。だがそれと同じくらい、横島はアスナの才能に注目していた。一度見せた動きはほぼ完璧に覚え、一つ完璧に覚えれば、それを応用して十の動きを実践する。
どこまで伸びるか見てみたい。
かつて小竜姫や老師が、自分に修練と言う名称の苦行を課すときに口にしていたフレーズ。言われていた当時は『俺は見たくなどないわい!』と返していたが、今はその気持ちが少し分かる気がする。
だが、無理にこちらに引っ張り込むわけにもいかない。
修行や訓練の時、自分は確かに泣き言を涙や鼻水や唾液と一緒に撒き散らしていたが、それでも自分で望んでそれを受けた。しかしそんな自分でさえも
(成れ果てて、これだ)
見つめた手を開いて閉じる。
望まぬ道を進んだ果てに、望んだものが手に入るはずがあろうか?
自分は、自ら望んで進んで、自ら望んで上り詰めて、自ら望んで堕ち果てた。だが望んで道を選んだ自分でさえ、その果てに待っていたものは全く望んでいないもの……『人界最強』という欲しくもない称号だけだったのに。
「ま、俺がどうこうって問題じゃねぇわな」
言いながらも、アスナには普通の人生を送って欲しいという結論で横島は思考を終わらせると、ポケットから安全ピンがついた布の輪を取り出した。
輪にはゴシック体で文字が刺繍されていた。
《特別風紀委員》
「まずは仕事だ」
気分を変えるように、横島は独り言を呟く。
本人ですらほとんど忘れていたことだが、横島は学園長から風紀委員の役職を授かっている。実態は横島がいろいろ動きやすくするために付けられた役職だが…
「新田先生も人使いが荒いなぁ…」
というわけだ。一般人である先生からしてみれば妙な経緯でなったという点以外では、普通の風紀委員、普通の委員職についただけの生徒であり、当然ながら風紀委員としての仕事を頼まれる。
今回もそれである。大広間での朝食の前に、部屋に残っている生徒を呼びに行くように言われたのだ。今回の修学旅行では、A組以外にも4つのクラスが京都に来ていて、彼女達の宿泊場所もここだ。一クラスあたり6班、5クラスで30班であり部屋も同じだけある。全室回るのは少々骨だが…
「ま、きりきり片付けて朝飯にありつくか。
お〜い!飯の時間だぞぉっ!」
腐っていてもしょうがないと、まずはS組の部屋から突撃した。
横島がその声を聞いたのは見回りの最後のほう、A組5班の部屋の前に来た時だった。
『よ、よろしけれべ、き、きょぶのじゅうこーじょう…』
「……復活の呪文か?」
声は5班の部屋から聞こえている。魔力も霊力も感じないことから敵が何らかの呪文を唱えているということはないだろうが…。
「入るぞ」
返事を待たず、横島は扉を開ける。だが反応は返ってこない。
不審に思いながら横島が部屋を覗くとそこには見慣れた後姿があった。のどかだった。
のどかはまるで教会で礼拝しているかのように、両膝を突いて窓に向かっていた。
ただし彼女が口にするのは祈りの言葉ではなく
「私たちと一緒に、まげ…まご…もご…!」
という復活の呪文もどきだった。よほど集中しているのか、こちらに気づいていない。
ますます疑問を深めて、横島は布団の畳まれた畳に上がりこみ
「のどかちゃん?」
と、肩を叩く。のどかはそれに驚いて正座の体勢のまま跳びあがった。
「回りませんかぁっ!?」
立ち膝からの跳躍と、奇妙な悲鳴に横島も驚いて一歩下がる。
「ま、回らないかって…何が?」
「は、はい!ですから今日の班行動を…って、横島さん?」
「おいっす。何してんだ?」
「えっ…その…れ、練習なんですが…」
ちらちらと背後―――机の上を見ている。そこでは二頭身ほどにデフォルメされた人物のイラストの切抜きが、土台に突き刺さった針金に貼り付けられて、みょんみょんと揺れていた。その揺れている人物は…
「…ネギか?」
「は、はい。パルが作ってくれたんです」
「へぇ…さすがに上手いな」
それを少々眺めてから…
「で、練習って……ネギに呪いでもかけるつもりか?」
「のっ!ち、違いますぅっ!ネギせんせーを今日の自由行動に誘う練習をしていたんです!」
「自由行動?…ああ、なるほどな」
そういえば、今日は奈良で班ごとの自由行動だ。それに誘うつもりということは…
「ひょっとして今の妙な呪文、あれって『よろしければ今日の自由行動…』って言ってたのか?」
「は、はい。そうなんですが…その、練習なのに噛み噛みで…」
しょげかえるのどか。まあ気持ちもわかる。イラストを前にした練習でさえこの惨状だ。まして本番など出来るはずもない。
(っていうか、デートに誘うってだけで、なんでこんな緊張しているんだ、この子は?)
ナンパ――それも確実に引かれるような口説き文句で突撃玉砕するのがライフワークの横島には、全く分からない感情の機微である。
「まあ、ガンバレ」
「あ、ありがとうございます…けど…ダメですよね、きっと…」
「へ、なんで?まだ言ってもないだろ?」
「というか言えないですよ、練習でもこんなに本人を前にしたら…」
「た、確かになぁ…」
「ううう…肯定されましても…」
「あ、わりぃ…」
「いえ…本当のことですから」
前髪の奥で力ない笑顔を浮かべるのどか。さすがに不用意だった発言に、横島は罪悪感を覚える。確かに他の男がもてるのは、たとえそれがネギだとしても気に入らないが、かと言ってのどかの気持ちを捨て置くという選択肢もない。
「よっしゃ!ここは俺が一肌脱ぎますか。
ってことで、はい」
横島はのどかに一枚のタロットを差し出した。
「え?これって…?」
「勇気が出るおまじないって奴さ」
首をかしげるのどかに、横島は手にしたカードを渡す。のどかの手にしたカードは七本の棒が描きこまれていた。
「ワンドの7。意味は勇気と挑戦だ。交渉って意味もある。これを持っていればネギを誘えるぜ」
「ほ、本当ですか!?」
「おう!このGS横島様が保障する!」
親指を立てる横島。それをみて、のどかは期待を大きくする。横島が同じようにタロットをつかって、さよを見えるようにしたことは、まだ記憶に新しい。それと同じタロットを使っておまじないをしてくれたのだ。
いけます!これはいけそうです!
「よ、横島さん!ホントにいいんですか!?」
「あ、ああ。けど貸すだけだからな。後でちゃんと返せよ?」
「はい!ありがとうございます!」
いつになく語調の強いのどかに押されてか、横島は少したじろいだような表情で答えた。
のどかは横島から渡してもらったカードを両手で抱くように持って、小走りに部屋を出て行った。その途中、何度も振り返り横島に向けてお辞儀をする。
「本当にありがとうございます!」
「あ、ああ。がんばれよー…」
嬉しそうなのどかを、引きつり気味の笑顔で見送った後、横島は再び5班の部屋に入った。
「イヤア、他人ノ恋愛ヲ手伝ウノハ気持チイイナー」
チャチャゼロっぽい口調で独り言を漏らしながら、横島は窓を開ける。そしてパル作の『みょんみょんネギ君』が乗っていたテーブルにどかっ、と足を乗せて……そこでなけなしのやせ我慢が尽きた。
小さく息を吐き、そして大きく息を吸い―――
「なんでネギだけあんなにもてるんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
横島忠夫20歳(今年で21)、いくら歳をとろうとも、少女の姿に変わろうとも、煩悩と嫉妬心だけはなくならないのだった。
叫びと一緒に嫉妬や怨念を吐き出して、少し落ち着きを取り戻した横島だったが、見回りを終えて大広間に行くと、そこにはさらにフラストレーションをためる存在がいた。
「なんでテメェがここにいるんだよ、西条。それからピート」
大広間に並んでいる机の一つ、教員が集まっている場所に、教員でもなければ生徒でもない二人の男の姿があった。その二人に、横島は額に血管を浮かばせて詰め寄る。
「お、おはようございます、横島さん」
「なぜって、僕達の宿泊先もここだったからだよ、横島君」
「知っとるわ!俺が聞きたいのはなぜお前らがここで飯を食ってるかってことだ!」
「ああ、それなら私が誘ったのよ、横島さん?」
「し、しずな先生!?」
たじたじのピートと毅然とした西条、その二人に詰め寄っていた横島を、しずなの穏やかな声が留める。
「ああ、しずな先生、朝から美しい、っじゃなくて!なぜこいつらのような狼を誘ったりなさるんですか!?」
「だって、昨日の夜、寝ぼけたネギ先生達を保護してくださったんでしょ?」
「うっ…」
しずなの言葉に、横島は言葉が詰まる。
昨日、気絶したネギと眠ったままの木乃香を連れて帰ったとき、コトもあろうかその場面を新田に目撃されたのだ。まずいと思った横島だったが、そこは西条が口先三寸でフォロー。
「実は寝ぼけて外に出てきたらしいネギ君と近衛さんを保護しましてね。ネギ君の話を横島君から聞いていまして、ですから横島君に連絡を入れて迎えに来てもらったんですよ。
え、ああ。横島君とは仕事上の付き合いがありましてね。今日、修学旅行で京都に来ているのを知っていましたし、横島君の携帯に直接連絡したんですよ」
西条は公務員、それもICPO―――つまりは警察官。新田達は若干不審がったもののなんとか納得。ネギの株が多少下がった以外は問題なく済んだのだが…
「ですからお礼としてお誘いしたのだけれど…ダメだったかしら?」
「とんでもない。お誘い嬉しく思いますよ、源さん」
「でぇえいっ!勝手に手を握ってんじゃねっ!寄るな触るな近寄るなぁっ!」
しずなと西条の間に、横島は御膳を持って強引に割り込む。
「しずな先生、騙されちゃいけません!あいつはタラシでコマシでケダモノなんすよ!」
「煩悩が霊力源の君がいうことかね?」
SFXでも駆使しているような崩壊面で叫ぶ横島に対して、あくまで大人の態度で流す西条。なんとなく敗北を感じた横島だったが、まあ西条の邪魔ができたことに満足して、朝食にありつこうと正面を向き、
「あの…お名前はなんていうんですか?」
「あ、はい。ピエトロ・ド・ブラドーといいます。ピートと呼んでください」
「どこの国の人ですか?出身は?」
「何歳ですか!?」
「イタリアです。歳はちょっと…」
「か、彼女とか…」
「死ねよやぁぁぁぁぁぁぁっ!」
気合一閃。言葉通りの感情を込めて、横島は霊波刀を振る。ぶった切ろうとする対象は、頬を染めた女子中学生に囲まれて、即席ハーレム状態になっている友人――正確には友人だった人物だ。モテる奴なんて友達じゃない。
「うわぁっ!」
『きゃぁっ!』
間一髪で避けるピートと、蜘蛛の子を散らすように逃げる生徒達。
「何をするんですか横島さん!」
「やかましい!自分の歳を考えやがれこのロリコン野郎!俺が煩悩と年齢制限の狭間で身を裂かれるような思いをしているというのに貴様ぁぁぁぁぁっ!」
「し、知りませんよそんなことぉぉぉぉぉっ!」
霊波刀を振り回す横島と、必死でそれを避けるピート。
巻き込まれまいと逃げる生徒達だが、それでも一定以上は離れることなく、横島とピートの攻防を眺めて声援を送っている。
「ピートさんが逃げ切るに食券3枚!」
「横島さんの勝ちに食券4枚!」
その隙を突くように西条がしずなに再び接近し、察知した横島が再びそれを妨害に走り…
「いい加減にしたまえ!」
(どこまでが演技でどこまでが本気なのだろう、あの人は?)
空いた席を探しながら、刹那は首をかしげていた。
「なんで俺だけ叱られてるんや〜!」
「原因なんだから当たり前だろう!風紀委員が率先して風紀を乱してどうするのかね!?」
半泣きで正座している横島が、新田から説教を受けていた。
(本当に、あの人の正体とは何なのだろう…)
昨日の夜のことは、まるで夢の中の出来事のように現実感がなく、しかし鮮明に思い出される。
刹那は夕凪を握って以来、血風逆巻く裏の世界で生きてきた。だからあの夜、目の前で繰り広げられた惨劇はショックを―――少なくともアスナほどは受けていない。それでもあの時の光景は…あの時の横島のことは、思い出すと手が震える。
千草の手札を瞬きする間に打ち破った、次元の違う戦闘力。
相手の背後を読みきって援軍を呼んだ、的確な判断力。
だがそれ以上に、刹那を震撼させたのが、横島の無情さだった。無情とは、冷酷という意味ではない。感情が、動かないのだ。
戦いとは非日常であり、その場に在る時の精神状態も通常とは異なるのが普通だ。戦う時とそうでない時。その程度の差はあるが人は意識を切り替える。
攻撃や破壊とは、日常に生きる上では通常行うことがない異常行動だ。ゆえに人の意識には選択肢として存在していない。戦うという段になって初めて、まるで銃の安全装置を解除するように、人は意識を一般人から戦士へと変容させて、戦いのための選択肢を作る。
だが横島は違う。まるで日常の延長であるように、まるでそれがなんでもない行為であるかのように、敵に剣を突き立てる。
だがそれは、月詠のそれとも微妙に異なる。
修羅に堕ちた―――力に焦がれ、血に酔い、戦いに狂った者達を、ある時は畏怖して、ある時は嫌悪してそう呼ぶことがある。常に精神が戦いに備えられているという意味では、確かに横島と彼らは同じかもしれないが…
「大体君は学生としての思慮に欠けていて――――!」
「んなこといわれても――――!」
刹那は改めて横島を、横島という人間を見る。
修羅となった者達は、いわば社会に対して不適合な存在だ。日常において戦時の意識を持ち、そして戦いを望んでいる。その様は、まるで抜き身の刀であり、日常に溶け込むことなどできない。だが横島からは修羅に堕ちた者達が発する、そんな独特の雰囲気が感じられないのだ。
締めるところは締めるが、基本的には陽気でお調子者で臆病な、個性的ではあるが普通の一般人。その人格は全く変わっていない。今も、初めて会った時も、そして昨日の夜でさえも。
まるでイタズラを仕掛けてきた友人に反撃するような気安さで烏族を殺し、まるで購買でパンを争奪する時のような気安さで月詠の腕を切り落とした。
そこに、戦いに対する昂揚も沈鬱も感じられない。まるで日常を生きているかのような自然体で、戦場という非日常に立つ。
日常にその心を置き、戦いに際して戦士として己の心を変容する『人』でも、戦場に心を置き、そのままの状態で日常を過ごす『修羅』でもない。
刹那にとって、横島は未知の存在だった。
(信用できる人物だとは思うけど…)
日々の言動や戦闘力からして、横島が信用できる人物であることは明らかだ。無神経なところやふざけた所はあるが、十分帳消しされるほどだと思う。
だが…
(いや…、考えるのはよそう)
横島は頼りになる味方だ。お嬢様とは個人的にも友人らしいから裏切ることはない。
お嬢様をお守りすることだけが自分の全てなのだから。
(となると、問題はあの二人…)
刹那が目を向けたのは、教員達と同じテーブルで食事をしている西条とピートだった。横島の紹介ということや、昨夜に話した印象からして信用できそうだった。だがその時、若い外国人の青年―――ピートの方から妙な気配を感じた。
人ではない、しかし人外のそれともまた違う気配。あれは一体どういう…
「あ、せっちゃん。ピートさんを見とるんか?」
「!?」
後ろから駆けられた声に、刹那はびくりと姿勢を伸ばす。訊き間違えようもない。木乃香の声だった。
「かっこええもんなー。やっぱ外国人はええなー」
「い、いえ!私は…その…」
上ずった声で答えながら、刹那は箸を置きお盆の両方に手を置いて持ち上げて
「し、失礼しまします!」
「あんっ何で!?恥ずかしがらんと一緒に食べよー」
木乃香の声を振り切って、お盆を持った刹那は逃げ出した。
「せっちゃん、何で逃げるんーー」
「刹那さーーーーん」
「わ、私は別に―――」
逃げる刹那と追う木乃香。そして何故かネギも一緒に追いかける。
その珍しい取り合わせに、亜子たちは興味を持つ。
「何々ー?刹那さんのあんな顔、はじめてみたー」
「昨日の夜、何があったのかなー?」
「ううっ…。私の知らないところで何か楽しいことが…っ?」
「くうう〜〜っ!今晩こそ寝ないよ―――っ!
…ってあれ?どうしたの、アスナ?」
「へ?」
桜子に声をかけられて、アスナは自分の箸が止まっていることに気付いた。
「食欲ないの?」
「体調が悪いんか?」
「あ、ううん。なんでもないよ!
あーこのお味噌汁美味しいわね!」
心配そうな裕奈や亜子達に、アスナは元気をアピールする。流石にわざとらしいオーバーアクションだったが、本人がそう言うならと亜子たちも引き下がる。
アスナはパクパクと朝食を口に運んでいったが、その動きもだんだんとスローになっていき、そして再び止まってしまった。
そしてその目は、横島に向けられていた。
「西条!だからしずな先生に近づくなと言ってるだろうが!」
「おっと!全く、もうちょっと落ち着きたまえ横島君。君はレディだろう?今はね。ふふふっ(冷笑)」
「……絶対殺す!」
「ども、麻帆良新聞部の朝倉と申します。いきなりですが、ピートさん?
横島さんとの関係についてインタビューしたいのですが?」
「え、あ、はぁ…」
「ってぇ、ピート!いくら乳がでかいからって中学生相手に鼻の下伸ばすな!」
「伸ばしてなんかいませんよ!へんな言いがかりは止めてください」
「また君かね、横島君!いい加減にしたまえ!」
新田に首根っこをつかまれた横島は、再び部屋の隅で説教される。それを見た周囲の生徒達は仕方ないなぁという苦笑を漏らす。
普段と変わらない騒がしく、しかし楽しげな光景。その中にアスナもいて、横島も居て……そのことが、言いようもない違和感があった。
――こ、殺して…くれ…――
――くあぁぁっっ!!!――
今でも耳に残るあの死体の呻きと月詠の悲鳴。昨晩の惨劇からまだ半日も経っていない。それなのに自分達は今、まるでそんなことがなかったかのように日常に戻っている。まるでそれらの全てが夢だったかのように。
(…夢じゃない…)
あのときの全ては現実だ。
確かに横島によってあの言葉を喋っていた生き物は命を奪われ、月詠と名乗る女の子は重症を負い――下手をすれば今頃死んでいるかもしれない。
(けれど…それだけじゃない)
挙げたそれらは起きたことのみであり、それ以外にも、結果的にはそうならなかったが、命や大怪我の危険はたくさんあった。
例えば電車で、扉が破られなければ本当に溺死していたかもしれない。
例えばショッピングモールで罠を見破れなければ、爆発で大怪我をしていたかもしれない。
例えば階段で炎に飲み込まれて焼け死んでいたかもしれない。
例えばあの時、横島が駆けつけてくれなければ、自分達は石像になり、木乃香も口も利けない人形にされていたかもしれない。
例えば、例えば…。
改めて考えれば考えるほど、あの場所には人生を変えるほどの危険が…命すら落とす可能性が山積していた。そしてそれと同じくらいに…
(私達が…誰かの命を奪う可能性も、あったんだ…)
そんな物思いに耽るアスナの目の前を刹那が横切り、
「せっちゃーん!」
「刹那さーん!」
それに続いて木乃香とネギも横切った。
アスナは自分の視界を横切った内の二人―――ネギと刹那のことを考える。
ネギの魔法と、刹那の剣。それらの両者には、疑うことなき殺傷能力がある。刹那の剣は当たり前だし、ネギが使う魔法、例えば魔法の矢などは十分人を殺せるだけの力を持っている。
以前、茶々丸を闇討ちしようとした時、ネギの魔法の矢を横島が受けたことがあった。その時は流石に青ざめたが、それ以来、ネギがいくら魔法の矢を使ってもそんな不安を覚えることはなかった。
だがそれは、ネギの魔法が安全だという確証を得たからではなく…
(運がよかっただけなんだ…)
あれ以降、ネギが魔法を撃った相手は、アスナが知る限り横島とエヴァだけだ。だがその両者ともネギを遥かに上回る力の持ち主であり、しかも横島もエヴァも(アスナの中ではエヴァがネギを本当に殺す気などなかったと結論づけている)ネギと本気で命のやり取りをしようなどと考えていなかった。
命がどうこうなどという不安など、ほとんどなかったのだ。橋の上での最後の撃ち合いでさえも、生きているかどうかの不安ではなく、単に怪我をしてないかという不安くらいしかなかった。
(…昨日のはそんなんじゃない)
昨日の猿女も月詠という少女も、明確な殺意を持っていた。
―――いくら叩いても、いくら攻撃しても大した危険はない―――
―――最低限の安全は保障されている―――
無意識のどこかにあった、そんな甘えが消し飛んだ。
斬られれば血が出る。そのまま血を失って死ぬこともある。
殴られれば怪我をする。打ち所が悪ければ死ぬこともある。
自分はあの場所で、いつ殺されてもおかしくない状況にあり…
(私がいつ、あの人たちを殺してもおかしくない状況だったんだ…)
そのことが、死の恐怖よりも重く、アスナに圧し掛かる。
アスナは気が強く、だがそれ以上に優しい少女だ。
死ぬことや怪我をすることは確かに恐ろしい。だがそのことは、実のところアスナは克服できると思っていた。死が隣にあるという事実を突きつけられた時はどうしようもなかったが、一晩たった今ならそれを冷静に受け止め、乗り越えれそうな気がする。だが、誰かを致命的に傷つけること―――そのことを克服できそうになかった。
―――辛いなら、辞めてもいいんだぜ―――
何度も意識の中で響く、横島の優しい声。今朝も言われた時、反射的に頷きそうになった。だが、心のどこかがその動きを押し留めた。
それがどんな感情だったかはアスナにも分からない。
ただ心のどこかがしこりとなって、戦いから逃げることを躊躇わせる。
本当に、自分はどうしたいのだろうか?
「アスナ?もうすぐ、朝ごはんの時間、終わっちゃうよ?」
「へ?」
裕奈から駆けられた言葉に、アスナは顔を上げて周りを見る。自分の周りではもうほとんどの生徒が食べ終わっていた。
「なぁ、ホントに大丈夫なんか?」
「っていうかひょっとして、朝ごはんの前に何かお菓子でも食べた?」
「し、心配ないわよ。ただちょっと食欲ないだけ」
「そう?具合悪くなったら言うてや?」
「ねぇねぇ?じゃさ、このシャケ貰っていい?」
「あ、いいよ」
「やったぁっ!」
気遣わしげな亜子と、嬉しそうに塩鮭を皿ごともって行く桜子。
その平和な光景がアスナには、どこか遠いものに思えた。
「今日は一日、奈良で班別行動の日かぁ…」
朝食の後、フロント前のロビーでネギは今日の予定を考えていた。
(親書を届けるのは、今日は無理かな)
関西呪術協会の本部は京都にある。奈良での予定を完全に放っておくならあるいは可能かもしれないが、それでは教師として失格だ。
(やっぱり、明日かな?)
明日は完全自由行動であり、その間に行けば問題なさそうだ。木乃香は横島達に任せ、自分はアスナと一緒に、親書を届ければいい。
「…そういえば、アスナさん、何か元気がないなぁ。何かあったの、カモ君?」
「さ、さぁ。寝不足なんじゃないっすか?」
「そうかな?」
妙におどおどしたカモの態度に疑問を覚えたが、ネギはとりあえず納得することにした。
あの後、猿鬼にやられて意識が飛んで、次に見たのは嵐山ホテルの天井だった。
慌てて飛び起きると、そこには横島と、見知らぬ男性が一組いた。西条輝彦とピエトロ・ド・ブラドー。二人はオカルトGメンに所属している霊能力者であり、横島が呼ぶといっていた援軍でもあった。
慌てて木乃香の安否を尋ねたところ、どうやら自分が気絶したすぐ後に、横島が駆けつけて事なきを得たらしい。だがそれと同時に、相手方に強力な、それも横島達と因縁のある悪魔が付いていることも判明したらしい。
時間がなかったので、詳しい話は後で席を設けて、ということになったのだが…
「ねえ、僕が気絶した後、何かあったの?」
「え゛っ!?な、何かって何っスか?特に何もなかったっすけど?詳しい話は、今日、あの霊能力者の兄さん達がしてくれる予定だろ?」
「…うん。そうだね」
不承不承といった感じのネギに、カモは汗をぬぐう。
(説明っても、オレっちになんて言えって言うんだよ!)
横島の成した惨劇を、カモは全て目撃していたし、アスナの不調もそれを見てしまったからだと推測できる。だが、それを言ったところでどうなるか?
アスナの精神状態をネギが何とかできるとは思えないし、もしあの状況を臨場感たっぷりで説明したら、ネギは横島に対して不審を抱くかもしれないし、最悪の場合、アスナと同じようになってしまう可能性すらある。
ただでさえあの千草とかいう猿女にあんな文字通りの化物がついている状況で、これ以上の戦力低下は避けなければならないというのに…!
(…やっぱりここは無理にでも、兄貴を仮契約させまくって戦力をそろえなくちゃならねぇな)
何か方法はないかと、カモが考えている横から、控えめな声がかかった。
「あ、あの〜ネギせんせー」
(?この嬢ちゃんは…!?)
宮崎のどか。かつてカモがネギのパートナーにと最初に勧めた少女が、トレードマークともいえる前髪を上げて、ネギに声をかけてきた。
清水の舞台から飛び降りる気持ちとは、まさにこのようなことを言うのだろう。
のどかは自分の鼓動を聞きながらそんなそんなこと考えていた。
目の前には、いつものスーツ姿のネギがいる。
「どうしましたか、のどかさん?」
「…はっ、はい!」
緊張で声が高くなるのどか。同時に脈拍も血圧も一気に跳ね上がる。
緊張と不安で脳みそが硬直し、頭の中でグルグル回っているような感じだ。
ああ、さっき今の状況を清水の舞台から飛び降りる気持ちなんていったのは間違いだ。
(生存率85パーセントよりこっちのほうがよっぽど怖いかも…!)
何せ勝率は万に一つなのだからと、のどかは緊張した胸中で呟いた。まあ、実際はもっと成功率は高いのだが、自身のないのどかはそう考えていた。
心臓がバクバクする。
目が回る。
口の中がカラカラになる。
今にも逃げ出したいほどの緊張。だが退く訳にはいかない。
(行け!のどか!)
(がんばるのです、のどか!)
自分の後ろ、少し離れたところから、ハルナと夕映が自分を応援しているのを感じていた。彼女達の応援に答えるためにも、退く訳にはいかない!
言います!
乾坤一擲。のどかはうつむきながらも口を開いた。
「あ、あの今日の「ネギくーーーーーん!」
「わぁーっ!」
元気かつ明瞭な大声が、のどかの蚊の鳴くような声を吹き散らし、ネギにタックル同然にぶつかってきた。
「ま、まき絵さん!?」
「ねぇ!今日、ウチの班と見学しよう!」
のどかとは対照的に、なんのためらいもなく、天真爛漫という表現が似合う笑顔でまき絵が言う。
これはいけない!
のどかは慌てて、言いかけた続きを言おうとするが…
「そのー、私も誘お「ちょっ!まき絵さん!ネギ先生はウチの3班と見学を!」
「ウ、ウチの5「あ、何よ、私が先に誘ったのに!」
「あのー「ずるーい!だったら僕の班も!」
一度火がつけば燃え広がるばかり。
始まったネギ争奪戦の勢いに、揉まれ流され弾き飛ばされる。のどかの声はもう届かない。
「うう…あのぅ…」
のどかはネギに向けて声を上げるが、黄色い声の洪水に、のどかの声は押し流されて、ネギの元には届いていない。何とか近づけないかと隙を探すが、結局はネギの周りにできた人だかりの周りをうろうろするばかり。
いつも自分はこうなのだ。
ノロマでグズで、チャンスを不意にしてしまった。
いや、そもそもチャンスなどなかったのだ。例え自分がさっき、最初に言えたとしても、あの面子とネギを奪い合い会うことなんてできない。まして勝利など夢のまた夢だ。
「どうせ…こうなる運命だったんですよね…」
あきらめて、部屋にでも行ってよう。
そう思ってネギ達からのどかは離れようとして…
―――ワンドの7。意味は勇気と挑戦だ―――
立ち去ろうとしたその時、のどかはスカートのポケットに入っていた一枚のカードを思い出す。
ワンドの7。意味は勇気と、そして挑戦。
横島から渡されたタロットカード。のどかは取り出しそれを見つめ、そして思い出した。
(そうだ…断られても無意味じゃないんだ)
ネギを好きになったのは、ネギの勇気に惹かれたから。何か目標を持って、それに向けてひたむきに挑戦する勇気に惹かれ、憧れたからだ。だから、自分も勇気を持って挑戦しなくては…!
「あ、あのネギ先生!」
気がついたときには、口が開いていた。
一瞬で静まり返るロビー。原因は自分でもびっくりするくらいの大声。
注目されている。そのことにかなりの羞恥心を覚える。だがそれでもとまらない。
両手にタロットカードを、お守りのように握り締めて、はっきりとした声音で言葉をつむぐ。
「よろしければ今日の、自由行動……私達と一緒に回りませんか!?」
言い切った。それと同時に今まで影を潜めていた、羞恥心やら緊張感やらが一気に復活して、のどかの心を蹂躙する。
大声で言い切って注目されて断られたらどうしようああけれどもなんだか気持ちいいかもというか少なくともこれを言えただけでそれなりにこの修学旅行で思い残すことはないかもしれないけれどやっぱり何かの間違えで受けてくれたら嬉しいけれど…
「わかりました、宮崎さん!」
「ええ、そんなの無理だって分かってましたから……っえ?あの、今なんて?」
ドーパミンの過剰分泌で空転している思考回路に、鼓膜越しにネギの言葉が入り込むが、のどかはその意味を瞬時には理解できなかった。
今、私はネギせんせーを班行動に誘って、それでネギ先生がわかったって言って…
「今日は僕、宮崎さんの5班と回ることにします!」
ていうことで…!
「あ…」
今日はネギ先生と一緒に奈良を観光できる!
「本屋が勝った!」
のどかの顔に笑顔が溢れ、ロビーは歓声に包まれた。
あの後、廊下で横島を探していたのどかは、目的の人物を発見した。
「なんで俺だけこない怒られなぁあかんのやぁ〜」
「それは君の行いが悪いからだろう?」
「んだと…!?」
「ま、まあまあ。お二人とも」
横島と、西条とピートという名前の男性である。普段ののどかなら、知り合いがいるとしても見知らぬ男性がいるところに近づくのに抵抗があったかもしれない。しかしネギを自由行動に誘えて、あまつさえ了承してもらえた興奮が持続していたためか、ためらいの気持ちは起きなかった。
(それと、横島さんのカードのおかげかも…)
握った手の中のそれを意識しながら、のどかは横島に近づく。
「あの、横島さん?」
「ん、どうしたのどかちゃん?ネギを誘うの、上手くいったのか?」
「はい!横島さんのタロットのおかげです!」
のどかはそう言って、タロットを差し出そうとして…
「あ゛」
「どうした?」
「え、ええっっとぉ…」
脂汗を流しながら、カタカタと震えるのどか。眉根を潜める横島に、のどかは一歩退くが、
「ご、ごめんさない!」
やがて観念したように、頭を下げてそれを差し出した。
「…こ、これはまた…」
呻く様に言ったのは、横島の隣にいたピートだった。
のどかが差し出したのは、見るも無残に握りつぶされた、横島のタロットだった。
「ああああああの!その、ネギせんせーをお誘いするときに握り締めちゃって、それからずっと握りっぱなしで…!その、ご、ごめんなさい!」
涙目、というか本当に泣きながらのどかは謝る。タロットは一枚でも欠けてしまえばその力を失うと、占い研究部の木乃香から聞かされたことがある。そして、横島はGSでありこのタロットはその商売道具らしい。
完全に恩をあだで返してしまった状況に、青ざめたのどかは横島の言葉を待つが…
「ああ。このくらいなら大丈夫だ」
「え?」
軽い感じの横島の言葉に、のどかは目を丸くして顔を上げる。
横島は、タロットを人差し指と中指で挟んでから呟く。
「再接続(リアクセス)」
突然カードが淡く発光し、次の光が収まった頃には、カードは新品同然になる。
「とまぁ、こういうわけで、のどかちゃんが謝る必要はないってわけだ」
「はぁ…よ、よかったぁ…」
一連の光景に、あっけに取られたのどかだったが、すぐに緊張が解けたようにため息をつく。横島はその様子を見て苦笑しながら、カードをしまう。
「で、今日はどうするんだ?」
「あ、はい。今日はまず、奈良公園にでも行こうかと」
「奈良公園っていうと、鹿の?」
「はい」
「おーい、のどかー?」
聞こえてきたのは、ハルナの声だった。
「出発だよー?」
「木乃香もアスナさんも準備ができてますよ」
「あ、うん。じゃあ、もう行きますね」
「おう。楽しんでこいよ」
「はい。本当に、ありがとうございました」
のどかは何度もそういいながら、夕映たちの方へ歩いていった。
それを見送る横島に、西条は声をかけた。
「意外だね、横島君」
「あのなー。さすがに他人のもてるのが気に食わないからって、ああいう子の恋愛まで邪魔するほど野暮じゃねぇよ」
「いや、そういうことじゃない」
西条は肩をすくめながら…
「君のことだからあのカードをネタに、体で払ってもらうとでも言うものとばかり…」
「中学生相手にそんなことするか!」
「相手が大人の女性だったらそういうことをしたんですか?」
叫ぶ横島と引きつった表情のピート。
「まあそれはそうとして、ネギ君達との話し合いはどうする?」
「奈良公園のどっかがいいんじゃないか?」
ネギがのどかの誘いを受けたのは、のどかが木乃香と同じ班にいるというところが大きいだろう。そして敵の目的はネギの持つ親書と木乃香の身柄。ならばその両者を守れる位置にいたほうがいい。
「じゃあ、準備ができたら俺の携帯に連絡をくれ。俺から関係者各位に知らせるから。
っとその前に、少しだけ三人だけで話したいことがあるんだけど、いいか?」
「かまわないが…」
と、西条が言ったところで、今度は横島を呼ぶ声が聞こえてきた。さよの声だ。
「横島さ〜ん!早く出かけましょ〜」
「わかった!」
横島は大声で返しす。
「つーことで、俺は班行動があるから…」
「じゃあ、僕達は先に奈良公園で場所を確保しておくよ」
「了解」
横島は西条たちと最後に確認しあってから立ち去ろうとして、しかしその背中にピートが声をかけた。
「あの。横島さん?関係者各位といいますと…」
「は?…ああ、お前ら入れて8人だ。
俺達3人と、アスナちゃんと刹那ちゃん、それからネギ。あとエヴァンジェリンって吸血鬼の魔法使いの子と、その従者の茶々丸ってロボだ」
「そ、そうですか…わかりました」
そのメンバーの名前、特にエヴァの名前を聞いたとき、ピートはどうも妙な反応を返した。
人数を聞いているのかと思って答えた横島だったが、どうやら少し違うらしい。
(ひょっとして、こいつエヴァちゃんと知り合いなのか?)
ピートは朝食のときも妙にそわそわとして、頻繁に自分の背後を見たりしていた。思い返してみれば、エヴァが座っていたのは、丁度ピートの後ろだった。
その是非を横島がピートに尋ねようとするが…
「おい横島!早くせんか!」
廊下を貫通するような通りの良い声が聞こえてきた。エヴァだ。エヴァは特に今日の奈良観光をかなり楽しみにしていた。ここで待たせれば、それだけ機嫌が悪くなる。
「(今ここで、エヴァちゃんの機嫌を損ねるのはまずいよな)
ん、今行く!じゃあな」
まあ後で聞けばいいかと、疑問を保留した横島は、エヴァたちがいるエントランスに向けて歩き出した。
「うわぁぁぁっ。見てください横島さん、本当に鹿がいますよ!」
「風情が台無しだな」
奈良公園の入り口、そこで大仏と並んで有名な鹿を前に、二人の少女が温度差を感じさせ台詞を放った。
最初の台詞はさよ、そして次の台詞はエヴァのものだった。エヴァの態度に、茶々丸は首をかしげる。昨日、清水寺を回ったときなど、流石に騒ぎ立てたりはしないものの、近来稀に見る上機嫌ぶりだったというのに…
「マスター、鹿はお嫌いですか?」
「別に数頭なら問題ないが、ここまでごちゃごちゃいると景観が悪くなる。
そんなに鹿と戯れたいなら動物園にでも行けばいいものを」
「そうですか」
自身の判断ではこの鹿がたくさんいる環境は、かなり高評価なのだが…
「まあ、そう言うこともないだろ?」
エヴァと茶々丸は振り返ると、横島が売店からこちらに歩いてくるところだった。その手には、大きなセンベイの束があった。
「あ、鹿せんべいですね」
「ああ、さよちゃん、一枚いるか?」
「はい」
「ザジちゃんも、ホラ」
「…ありがと」
横島は印紙を破ってさよとザジに2枚の鹿せんべいを渡す。受け取った二人は鹿の群れに向けて歩いていき、さよはおっかなびっくりと、ザジは手馴れた様子で、シカ達にセンベイを差し出す。すると何頭のシカ達が二人によっていき、差し出されたセンベイを食べ始めた。
「あ、食べた。食べましたよ。うわぁ…」
「……」
笑顔で報告するさよと、うっすらと笑顔を浮かべるザジ。
「ほら、茶々丸もどうだ?」
「ですが…」
茶々丸は躊躇いがちに、隣で不機嫌そうにしているエヴァを見る。見られたエヴァはいよいよ不機嫌になってそっぽを向くが
「フン、餌をやりたければやればいい。いちいちこちらに気を使うな」
「ありがとうございます、マスター」
茶々丸は横島から鹿せんべいを受け取ると、いそいそとシカの群れに向かう。
「刹那ちゃんは…」
鹿せんべいを差し出そうと横島は刹那の姿を探すが、しかし竹刀袋を持ったあの目立つシルエットは、視界の中にはいなかった。
「桜咲刹那なら、早々と近衛木乃香の無事を確認に行ったぞ。相当ご執心らしいな」
「そっか」
班行動の予定の日に初っ端から、班長が単独行動とはまずい気もしたが、まあ帰るときに一緒なら、新田も何も言わないだろう。
そう考えると、横島は茶々丸たちを眺める。さよはおっかなびっくり、ザジは平然と、そして茶々丸は興味深げ。表現の仕方は三者三様だが、みんな一様に楽しそうだ。
(まあ、こういうのもありかもな)
まるで小さな子供を公園に連れて行ったときの心境とでも言おうか、三人の無防備な表情に、どこか癒しを感じる横島だった。そんな時、不意に視線を感じた。視線の元は四人目の小さな子供―――エヴァだった。
横島が気付いて視線を返すと、エヴァは顔を赤くしてさっと視線をずらす。そのずらした視線は、あらぬ方向と横島、そして鹿――正確には鹿と戯れている茶々丸達の間を行ったり来たりしている。
「……ひょっとして、エヴァちゃんもやりたいのか?」
「なっ!なにを言っている!そんなことあるわけないだろう!」
図星を直撃され慌てるエヴァ。それを見た横島は、にやりといやらしい笑いをする。
「だよなぁ〜。大人なエヴァちゃんはそんなことしないよなぁ〜。鹿と戯れたいなら動物園に行けばいいものを、だもんなぁ〜」
「う゛う゛う゛う゛…そ、そうだ。そうだとも」
奥歯をかみ締めながら答えるエヴァ。それを見た横島は、仕方ないなぁという口調で、こう続ける。
「ああ、けど鹿せんべいって、余ったらどうしたらいいんだろうな?」
「…!?…ふ、ふむ。余ったのか?それなら仕方ない。どうせなら話の種に私が鹿どもに食わせてやっても…」
「まあ、鹿せんべいは6枚売りだから、三人に2枚ずつ渡して丁度だったんだけど…」
「…………………そうか」
「でも俺ってば2セット買ってきちゃったんだよなぁ」
「ええいっ!グダグダ言わずによこせ!」
完全に遊ばれ真っ赤になったエヴァは、横島が手にしていた未開封の鹿せんべいをひったくり、足音荒く鹿達に向かう。その背中を横島は苦笑交じりに眺める。
やがて鹿達の近くに来ると、エヴァはさよと同じような感じで、ぎこちない動きでセンベイを一枚差し出した。緊張で少々顔がこわばって、なかなか凶悪な面構えになっているいるエヴァだったが、そこは人間慣れした奈良の鹿。エヴァが差し出したセンベイを、鼻先を寄せてむしゃむしゃと食べ始める。
最初の一口の時は意外に強い力に驚いて手を引いてしまったエヴァだったが、すぐにそれにも慣れて笑顔をを見せる。
「アーハハハハハッ!茶々丸、見ろ!この貪欲な食いっぷりを!
もはや野生など忘れ去り家畜に成り下がった豚も同然だな!ハハハハハハッ!」
「ああ、マスターがあんなに楽しそうに…」
「茶々丸的にはあのコメントはスルーなのか?
あ、それからエヴァちゃん。奈良の鹿は嘗めないほうがいいぞ?」
「ん?何を言っ……!?」
エヴァの言葉を止めたのは、突然左手――残りの鹿せんべいを持っていた手に来た感触だった。振り返り見れば残りの五枚に群がる鹿の群れ。
「な、ま、待て!これは後で…!」
エヴァが慌てて鹿を振り切ろうとするが、既にエヴァは囲まれていた。右も鹿、左も鹿。さらには右手に一枚だけ持っていたセンベイにも複数の鹿が群がっている。
エヴァはとりあえず残りの五枚を死守するため、鹿が取れないようにと左手を上に向かって伸ばす。これでもう大丈夫と安心しかけたエヴァだったが、所詮は身長130センチ。手を伸ばしたところで高々知れており、鹿はエヴァに群がり、首を伸ばしてセンベイを食べようとする。そのプレッシャーに、エヴァは思わず後ずさり
「ぅひっ!?」
右手に、今までの数世紀にわたる人生でも感じたことのない、異質な感触が走った。
それは鹿の口だった。
エヴァが右手に持っていたせんべいを食べきった鹿が、エヴァの手に残っていたセンベイの破片を舐め取り始めたのだ。発達した唇の筋肉の運動にエヴァは驚き―――それが致命的だった。
エヴァは足を縺れさせてひっくり返る。
「ふっ!」
そこは100年の研鑽。合気道仕込みの受身で怪我はない。だが、本当の悲劇はここからだった。
倒れるとき、受身の邪魔になると放した五枚の鹿センベイ。そられはエヴァの上に降り注ぎ、ぱりぱりと砕けて、エヴァの服や髪に付着して…
サバトが始まった。
鹿達がいっせいにエヴァに群がり、彼女に付着したせんべいの破片を食べ始めた。
「うわぁぁぁぁぁぁっ!や、やめやめやめろぉぉぉぉぉっ!」
「え、エヴァンジェリンさん!?」
小柄なエヴァはすぐに鹿に埋もれて見えなくなり、ただ声だけがその存在を伝えてくる。さよは心配になって駆けつけようとするが、居並ぶ鹿の尻に邪魔されて、エヴァの姿を見ることさえできない。
「うひぃぃぃぃっ!やめっ…!だめっ…!ああっ、そこはナギにも横島にも触らせたことが…ひゃぇぁっ!」
「え、エヴァンジェリンさん!?エヴァンジェリンさは〜ん!!」
「ああ…。だから言ったのに…」
「横島さんは、こういう状況が予想できたのですか?」
「ん?いや、ここまで見事にこうなるとは思えなかったが…」
横島が言葉を濁しながら思い出すのは、小学生の時、遠足で奈良公園に来たときの思い出。
銀ちゃんと一緒に、点呼のために整列した女子の左右を同時に駆け抜けながら、すれ違いざまにクラス全員のスカートをめくり上げた、伝説の『18人切り』。
その後、なぜか横島だけがクラスの女子達に縛り上げられ、鹿せんべいを体中にまぶされた状態で、鹿の群れに蹴り込まれた。
「なかなか悪夢な感触だったぜ…」
「そうですか」
横島のどうでもいい思い出話に、やはりどうでもよさげな返事する茶々丸。
ちなみに二人の視界では、さよが何とかエヴァは救出しようと一所懸命に、しかし何の方策もなく鹿の周りを右往左往し、ザジは我関せずといった風に鹿を撫でている。
「茶々丸は助けないのか?」
「そうするべきなのかもしれませんが…」
「あ、ああぅっ!だめ、そこは!?この…いやぁん!」
「せっかくマスターが楽しそうにされているところを邪魔するのは従者として…」
「なるほどねぇ」
「楽しくないぃっ!このボケロボ!早くたす、助け…ああああっ!
もういい!この低脳な獣どもなど!根絶やしにしてくれる!
リク・ラク・ラ・ラック―――」
「やばっ!止めるぞ茶々丸!」
「はい」
流石に色を失った二人は、天然記念物を守るため、エヴァの救出に向かったのだった。
つづく
あとがき
おひさしぶりです。画像掲示板で忠お!の三次イラストが描かれて、狂喜乱舞した詞連です。前半は前回を引きずったシリアス風味。後半はギャグ、というよりエヴァいぢめでした。
今回の話は次回とあわせて一本だったのですが、書きたいことが増えすぎて、分ける羽目になりました。特にホントは奈良鹿は出さない予定だったのですが、せっかく6班が存在しているのだから、途中から書き足し。ザジのキャラがつかめないはさよがもうおキヌチャンと見分けがつかないわでしたが、どうでしょうか?
ではレス返し。
>take氏
はじめまして。
お褒めいただきありがとうございます。今回はバイオレンスなし。ただしシリアス色がちょっと前半強めです。これからもがんばります。
>D,氏
横島が凄いことになってます。どうしてこんな凄いことになったかは、次回辺り断片的に書く予定です。
アスナは迷い、ネギは知らされてません。刹那とピートも次回絡みます。
>ついたち氏
はじめまして。横島が黒くなったのは、残念ながら魔族の魂は関係なかったりします。
刹那の目の前で止めを刺したのは、単に余裕がなかったからです。
>蛍氏
おはつです〜。毎週ワクワクしていただいてありがとうございます。
刹那の目の前で止めを刺したのは、流石に土角結界が完全に発動し終わってしまうと、助けられなくなるからです。
続きもがんばります。
>零閃氏
ネギまの明るいノリは私も好きですが、実は暗いのも結構好きなので、あえてネギまでは触れなかったところにメスを入れてみました。
アスナの結論はもうちょい先です。
これからも期待にこたえられるようにがんばります。
>鉄拳28号氏
誤字指摘、ありがとうございます。
素人が斬った張ったはきついですよね。そもそも殴りあいの喧嘩ですら、目の前でされたら動けなくなるのが一般人というものです。
なお、確かに符術師の方がマイナーですが、少なくとも関西では魔法が正道、霊能は化け物の力、ということになっている、という設定です。
まあ、原作で誘拐に電車を使うという時点でアホですし…。
次回も無理のない程度にがんばります。
>レンジ氏
生憎黒横島はしばらく出番がないです。まあ京都編ではもう一度出す予定ですが。
>雪龍氏
西条はジェントルマン系のプレイボーイ。残念ながら今回はしずな先生に軽くアプローチしただけで終わりました。本屋ちゃんイベントはもう少しタロットネタを引っ張ります。
>永久氏
バイオレンス支持、ありがとうございます。
ピートとエヴァの関係はまた今度。少なくともラブラブではありません。
>kurage氏
お褒めに頂光栄です。横島の過去は次回、少しだけ明らかになります。
横島はネギやアスナのことを、恋愛感情抜きで気に入っいます。
アスナの成長に関しては、期待に沿えるようにがんばります。
>ロードス氏
ウチの売りの一つは促成栽培ネギです(笑)。
現在原作では、ネギ自身が戦いに対して悩んでいる状況ですよね。あの辺りがどう処理されていくかが、今後私も書き続けるにあたり結構キーポイントになってます。
次回もがんばります。
>弟子二十二号氏
どうもはじめまして弟子二十二号さん、詞連です。
黒い横島を受け入れてくれてありがとうございます。過去は次回ちょっとだけ。
その他もろもろも展開は乞うご期待ということで、期待に応えれるようにがんばります。
>レコン氏
横島怖かったですか?私も書いてて、ちょっと怖いかなと思いました。
今までとのギャップは、流石に私も扱いが困ってます。というより、ギャップがあるところが横島の過去に繋がるので、流石に…。
石化の少年は鍵です。というより原作ですら背後関係がほとんどわかってないのでどうしたものか…。
とにかくがんばって、フェイトも活躍させる所存です。
>rin氏
かと言って、バトルを全てギャグで流すわけにもいかずこうなりました。まあ、本気で戦うときは美人であるメドーサにも剣を向けてましたし、よく考えればルシオラ達にも初見では本気で攻撃していましたし、セーフかな、と。
アスナは今後もスポットを当て続ける所存です。
>アキ氏
はい、ダーク表記は迷ったらつけることにします。
まあ、今回は冒頭の少しだけ+抽象的表現が多かったのでどちらもつけませんが。
これからもがんばります。
>キリエ氏
カッコいいといわれて嬉しいです。
同類邂逅。次回来ます。
>やはりロケットパンチ!? もしかしたらドリルアームもありかも!? でもサイコガンは簡便な!
Drヌルが復活してたらそれもありかもしれませんが、残念ながらその方向はないです。
>流河氏
西条とピートは実はあまり戦わなかったりします。どちらかというと、こう、脇を固める感じで立ち回る予定です。
>MAHO氏
横島とネギ、キャラ属性は全く違うように見えて実は結構被ってるんですよね。
ギャグ時はヘタレだし、実は才能があるし、女性に頭が上がらず、しかし決めるときは決めてくれる。
そして、一度悲劇を経験している。
ナギの強さは、正直私もわからないので伏線にできないんですよね。ううむ、もう少しヒントがあれば…くぅっ…。
ダークに関してはアリといっていただきありがとうございます。
>ikki氏
久しぶりです。
お褒め頂光栄です。自分の横島像に関しては、少しずつ公開していく所存です。
まあ、二日目の夜は、トラウマ組みはほとんど関係してこないので、なんとかなります。もっとも、原作からは大きく脱線する予定ですが。
>黒炎氏
違和感が消せたようでほっとしています。あなたのコメントは毎回参考にさせていただいています。今後も厳しくコメントしてください。
忠お!オリジナル展開は、一行先も読めないように工夫を凝らしていく所存でがんばります。
>夜偽氏
はじめまして。毎回楽しんでもらえているそうでゆれしいです。
ウチの黒横島を気に入っていただけたようで幸いです。
とりあえず、横島の黒さはまだネギには秘密になってます。
ちなみに、横島の言う霊的攻撃とは『魂や霊体のレベルでの深刻なダメージ』という意味です。伝わらなかったようですみません。
ちなみに魔法的な攻撃のダメージでも、それが物質界におけるもの限定でしたら、文珠で一発です。
>わーくん氏
苦手なところを読んでもらいありがとうございます。
アスナの心の傷は、次回で少しフォローされます。
>ポラリタ氏
横島に余裕があるならそこまでしなかったでしょうが、メドーサがすぐ近くにいましたから、正直余裕がなかったんです。それに、アスナにショックを与えるというイベントを起こすという作者側の都合もありまして…違和感というのではあれば申し訳ありません。これから精進していきます。
月詠の再登場は期待に沿える展開を目指します。
>ひろ氏
はじめまして。
バトルシーンはそれなりに力が入っているので誉められるとうれしいです。
感情の抜け落ち、いいところをついていただきました。
次回もがんばります。
>五味城氏
お気楽な横島も好きですが、常にそれだけでないのが横島の魅力。
ダークとギャグとシリアスのバランスが取れるようにがんばります。
>からくり氏
うむむ…。今回冒頭で『余裕がなかった』というフォローをいれましたが…これでもまだ苦しいでしょうか?
参考にして、これからもがんばります。
>暇学生氏
一応腕は復活の予定です。デミアンの食事……触手系!?(違)
小太郎は登場しますよ。それもおまけつきで。期待しておいてください。
次回もがんばります。
>瞬身氏
はじめまして。全話通して呼んでいただいたそうで。
ありといっていただけると、安心します。
ハート表現やら抜き言葉は意識しよう思います。これからも、このような突っ込み、指摘は歓迎します。ありがとうございます。
>シレン氏
楽しんでいる、というより、どこか壊れている、あるいは欠落しているという感じです。
なお拷問については
《覗》は発動条件がわかりにくいですし、模は相手の「考えていること」前提で、訓練を受けた相手なら聞かない可能性があるという設定です。
もっとその辺りが明確になるように、描写していく所存です。ご指摘ありがとうございます。
>ダンダダン氏
ご指摘ありがとうございます。ただ2、3補正を。
まず、烏族は土角結界を解除するのが先決だったから、月詠の腕は単に横島に余裕がなかったから、一番簡単に二度と戦えない体にする方法を取ったまで。
あと、どちらかといえば黒横島よりギャグ横島、弱いけど悪知恵と煩悩で生き残る横島のほうが、個人的には好きです。
ご指摘は、参考にさせていただきます。
>舞−エンジェル
まあ、月詠の腕は「二度と戦えない体にする」のにもっとも手っ取り早い方法だったからです。時間や余裕があればもっとソフトにいけてかもしれませんが、生憎メドーサがいて、しかも木乃香が人質に取られてましたから、一番早い方法をとったということです。
道化師に関しては少しだけ次回でます。
今後も期待に沿えるようにがんばります。
>ペテン師氏
戦いの場は非情、ということです。
終了…って、レス返しを書いていたら日付が変わって!
というわけで、数分遅れの更新です。次回はもっと早く書けるようにがんばります。
では…