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「ガンダムSEED Destiny――シン君の目指せ主人公奮闘記!!第十話 揺れる世界 後編 (SEED運命)」

ANDY (2006-09-10 08:08)
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「コンディションレッド、ですか」
 赤いパイロットスーツに身を固めた、空色の髪をした少女がそうぼやいた。
「ぼやくなぼやくな。狂信者さんたちのことを考えれば今までよく我慢した方だろう?」
 ふざけた声音で金髪の少年がそう答えた。こちらも同じく赤いパイロットスーツを身に着けていた。
「だが、二年経っても同じ愚行しか出来ないとは。前の戦いで何を学んだというのだか」
 嘆息しながら、どこか達観した声音で紫色の髪をした少年呟いた。彼も赤いパイロットスーツを見につけていた、
「でも、おふざけが入る余地がない、と言うのは理解しているんでしょう?トウマ、レオ」
「もちろん」
「愚問だな」
 空色の髪の少女、キーファの問いかけに、金髪の少年レオと紫の髪トウマは短く答えた。
 自分たちが配属されたナスカ級戦艦のパイロット待機所で、三人はモニターに流れてくる情報に目を通した。
 月面より大艦隊の接近。その数は、優に百に達しようとするという情報が流れていた。
 そして、それを背景に突きつけられた文章の内容に、三人は盛大に呆れた。
「………これはなんなんですか?」
「ふざけてるな」
「……ここまで厚顔無恥な要求を突きつけるとは……まともな政治家はいないのか?」
 大西洋連合の大統領名義で出された声明は、あまりにも常識を疑うような内容であった。
 プラント現議会政府の解散や、プラントへの地球軍在中など、プラントの植民地化を意味する条文が送りつけられていたそれらを見た感想としては、妥当なものなのではないだろうか。実際、大航海時代の植民地政策と同じのりを取っている大西洋連合の重鎮達の頭の中を覗いてみたい、とキーファが思うのも仕方がないのではないだろうか。
 それだけ、一方的で、非論理的な条文であり、開戦の口実にするための文章にしか見えなかった。
 まあ、議会の方もそう思ったからこそ自分たちに迎撃体勢を取らせるのだろう、と理解しながら三人は格納庫内の自機へと足を向けた。
 キーファとトウマ、そしてレオの三人は、アカデミー卒業後ザフトの新型兵器の開発部門に配属され、そこでテストパイロットの任務についていた。
 『ZAFT TEST TEAM』、通称ZT2部隊と呼ばれる部隊が三人の属するところだ。
 シンが配属されたセカンドシリーズ部門とは異なるテスト部隊で、あちらが洗練された機体の最終チェック(ゲームなどで言えばβ版)部隊であるならば、ZT2部隊は新機軸の基造られたばかりの機体、兵器の粗捜しや不具合、改修点などのチェックをする(ゲームで言えばα版)部隊である。
 そのため、日陰にいると言う印象が強いが、実際には実戦配備されている機体よりも癖は強いが高性能な機体を与えられている部隊でもある。
 三人は、それぞれの特殊性を認められたためにテスト部隊へと配属が決められたのだった。
 そして、ZT2部隊が新型の機体のテスト運用でプラントを離れている間に、アーモリーワン襲撃事件、そしてユニウス7落下事件、とどめに地球からの事実状の宣戦布告、と言うトリプルパンチに三人は顔を顰めてしまったのは仕方がないことだった。
 実戦に向け整備されているそれぞれのMSは、ザクをベースにしたものだが、それぞれがそれぞれに異なる部位が多々あった。
 また、テスト時に各部の状況を見分けやすくするために塗装されていた色鮮やかな装甲は、今は単色のそれへと整備と並行して行われていた。
 それぞれのパーソナルカラーとして、空色、紫、そしてくすんだ金色と塗られていく自機を眺めながら、三人は敵の陣地といってもいい地球にいる友人達の安否を気遣うのだった。

 そして、開戦の鐘は鳴った。


 漆黒の宇宙を進み近づいてくるMSの群れを視界にいれ、トウマは操縦桿を強く握り締めた。
 意味のない力はただの暴力。その力が導くのは破滅しかない、と言う武道に通じる考えはもはや地球には存在しないのだろうか。
 地球生まれの母から教えられた武道の心構えを噛み締めながら、トウマは接近する敵を、倒すべき悪を睨んだ。
 彼らには彼らの正義があるように、自分にも正義がある。
 友人の誰かが言っていた「戦争は突き詰めれば正義と正義のケンカだ。そして、勝った方が名実共に本当の『正義』になるのさ」と言う言葉は、なるほど、と納得するものがあった。
 ならば、自分が掲げる正義を『正義』にするために、刃を振るおう。敵を屠ろう。この手を血に濡らそう。
 我が正義、すなわち『プラントを守る』という正義を成就させるために。
 そう決心すると同時に、自分の紫の機体のバーニアを全開にし敵陣へと飛び込んだ。
 その機体が背負っているのは『試作高機動支援兵器型ウィザート搭載ザク』と呼ばれるもので、その背に背負うものはかつての大戦の英雄が使用していたZGMF-X09Aジャスティスに搭載されていたファトゥム-00に酷似していた。
 いや、それはより洗練された、どこか刃物のような鋭さを感じさせる形をしていた。
 ファトゥム‐00´。それはそう呼ばれるものであった。
 ウィザードシステムの改善点である機体の移動スピードの向上及び、エネルギーゲインの底上げを狙った機体がこれである。
 機体とは異なる大型のスラスターをつけることで機動性をアップ、また、補助用エネルギータンクをつけることで戦闘時間の向上を狙ったものだ。
 大本となったファトゥム‐00と異なるのは、核動力ではないためMA-4Bフォルティスビーム砲に当たる兵器がない、と言う点だった。
 ユニウス条約を守り、かつ機体の性能を上げるためにはエネルギーをバカ食いする光学兵器を排除する、と言う単純な方策が採用されたのだった。
 だが、まったく光学兵器がない、と言うわけではなかった。
 いや、もしかしたら斬新な思想の基の武器がファトゥム‐00´にはあった。
 それは―
『なんだ?!コイツは―』
『切り裂かれる?!』
『つ、翼にビームサーベルだと?!』
 MR-Q17X試作型グリフォン2ビームブレイド。セカンドシリーズのガイアに搭載されている兵器がここに流用されていた。
 ファトゥム‐00´の高機動性を活かし、敵を切り裂きながら勝利への道を開く。
 それがこの機体の求められるコンセプトであり、ゆえに、この試作型新ウィザートはこう呼ばれている。『ハヤテウィザート』と。
 その名の如き、疾風の動きで、紫のザクはダガーLたちを切り払い、両手に持たせたビームマシンガンで撃ち抜き、敵を屠って行った。
「お前たちの正義が正しいなら、俺を打ち砕け!」
 過剰に掛かるGを振り払うようにそう叫ぶと、トウマは機体を反転させ、新たな敵へと襲い掛かるのだった。
「うぉぉぉぉぉ!」
 裂帛の気合の声と同時に、両手に持っていたうち尽くしたビームマシンガンを投げ捨て、MA-4B "フォルティス"ビーム砲がかつて設置されていた場所に搭載されている、試作型ビームサーベルであるMMI-713ガラチンと呼ばれるビームソードを抜き放った。
 それは、形状はエクスカリバーに似ているのだが、長さが短く、また、片刃のどこか刀を連想させる形状をしていた。
 刃に当たる部分からビームを発生させたそれを振るいながら、トウマの紫色のザクは多くの敵を切り裂いていくのだった。
 その高い機動性で相手の射線をかわし、相手の懐に飛び込み射撃を殺すと同時に両手、両翼の刃で切り裂いていく。
 その動きはまるで、一陣の嵐であった。
「死にたくなかったら、とっとと地球に逃げろ!!」
 トウマの叫びが漆黒の宇宙に向かって放たれた。


「あ〜、相変わらず、熱いね〜」
 レオはモニターの端に見える紫色のザクを見つつ、敵に向けて攻撃をしながらそうこぼした。
 あの義侠心と言うのか、それとも信念の塊と言うか、そのような友人の動きにただただ感心すると同時に、苦笑するしかなかった。
「さてさて。あいつは熱い思いを叫んでるんだろうけど―」
 そう呟くと同時に、機体のある機能を立ち上げる。
「―俺にも譲れないものがあるんでね。お前たちにもあるだろ?」
 浮かぶのは大切な家族の顔、友人の顔、思い出の場所。そして、あの人の眠る場所。
「だから、それを守るためにお前らを食い尽くす!!」
 そういうと同時に、レオはシステムを開放する。
 レオの駆るくすんだ金色のその機体は、一言で言うと異様であった。
 何が異様か、と言うとその外観そのものが異様だった。
 その両手、両足など、体のあらゆるところに武器を搭載しているその様子はまるで重戦車のようである。
『試作凡庸対応重火器支援型ウィザード搭載ザク』と呼ばれるその機体は、その名の通りにあらゆる場面に対応可能な後方支援兵器を搭載していた。
 従来のウィザードたちよりも大型のバックパック内外に、増槽されたバッテリーと燃料・弾薬を積み込んでおり、その異常な数の重火器を維持することが出来ていた。だが、その反面、機動性は損なわれており、回避がし辛いという欠陥を持っていた。トウマの『ハヤテウィザード』とは対極に位置する装備である。
 その装備面だが、右肩にM1999GX 高エネルギー長射程ビーム砲を装備している。これは、ガナーウィザードのオルトロスやブラストインパルスのケルベロスを上回る大出力を有している。左肩には、MMI-M827ネオハイドラガトリングビーム砲が装備され、従来のものより射程、速射性能等が向上している。
両肩にはシールドの代わりに赤外線ホーミングミサイルを内蔵した11連ミサイルポッドが装備され、胸部にはアサルトシュラウドを流用した追加装甲の上に装備されたブレストガトリングが二門、両足にも赤外線ホーミングミサイルを内蔵した五連ミサイルポッド、そして両腰にMMI-M15E クスィフィアス2レール砲が装備されていた。また、両腕には、バックパックの弾倉につながっている実弾使用のダブルガトリングガンが装備されている。
 そのあまりにもな重装備から、これは『パンツァーウィザード』という呼び名で呼ばれている。その名に恥じず、この装備をした機体は単体で基地や主要施設を破壊、殲滅が可能な装備であり、それはまさに『重戦車』の名が相応しいものである。
 だが、欠点として前述した機動性の低さと、火器管制系統の複雑さが挙げられる。
 あまりにも火器を詰め込みすぎたための弊害だが、それをレオは苦もなく使用することが出来る能力を持っていた。
 そして、その能力を惜しげもなく駆使し全ての火器がその咆哮を上げた。
 一体のMSが有すには常識を凌駕した火器が、迫り来る敵を、逃れようとする敵を穿ち、抉り、粉砕していった。
 眼前に漂うのは粉砕された敵の成れの果て。
「さ〜て。次はどいつがご馳走してもらいたいんだ?」
 獰猛な笑みを浮かべてレオはそう敵に尋ねた。


「あの二人は、ストレスでもたまっていたんですか?」
 キーファは、両手に構えたMA-M20KF高エネルギービームライフルを撃ちながらそう呟いた。
 このライフルは、それぞれが単独でも使用可能だが、前後に連結することで長射程のロングライフルとしても運用が可能となっている。なお、エネルギー方式は外部にあるエネルギーパックより供給されるため、弾数には制限がある。
 迫り来る敵を屠るキーファの機体は、従来のザクとは異なっていた。
 どことなく無骨な感じを持たせる従来機とは異なり、流動的な曲線をゆうしているその姿は、どこか兵器にはない幻想性をもっていた。
 そう思わせるのは、機体の背部にある翼に見えるパーツと、尻尾のように見える二基のプロペラントタンクのせいだろう。
 ジン系列のウィングスラスターとは構造が異なるそれは、蝶の様な形、X字型と言うのだろうか、そのような形状をしていた。
 その羽は、黒地に青で構成されており、青の部分は黒地から浮き上がっているようにも見えた。
「さて。では、データ取りにご協力を」
 キーファはそういうと同時に、この機体最大の特徴であるシステムを起動させた。
 X字の翼に設置されているそれを分離させ、解き放った。
 Disconnected Rapid Armament Group Overlook Operation Network SYSTEM:分離式統合制御高速機動兵装群ネットワークシステム、通称ドラグーンシステムの流れを汲むそれは、かつて搭載されていた正式採用機であるZGMF-X13Aプロヴィデンスのそれとは形状が異なっていた。
 プロヴィデンスが搭載していたドラグーンシステムは、複数のビーム砲門を有すポット状のものであるが、キーファの機体のドラグーンはビーム砲門が一つしかなく、また形状がポッドではなくブレード状に近いシャープなものである。
 これは、ビームポッドの滞空時間を重視して戦術展開に幅を持たせることを目的としたため、エネルギー消費量を抑えるため砲の数の縮小となったのだった。MA-80V ビーム突撃砲を1門ずつ搭載したビームポッドを4基装備したその翼は、その機体のフォルムと相まって妖精のようにも見える。
「さて、ではいきなさい!」
 自分の思考がいくつにも分割するのを感じながら、キーファは自分の手足のようにポッドたちを動かす。
 あるものは直線を描きながら、あるものは曲線を、あるものは奇妙な動きをしながら敵へと向かっていった。
 遠距離からのビームで討たれる機体、すれ違いざまに討たれて散る機体、動きに翻弄され味方の射線軸に飛び込んで討たれる機体。
 自分の機体よりもはるかに小さいそれに翻弄され、命を散らし華を咲かせて散っていく。
 また、キーファは機体をこまめに動かしながら両手のライフルで敵を撃ち取ってもいた。
 その機動は軽やかで、一所に止まらずに敵のロックから逃れ、ロックができた時には相手はビームの餌食になっていた。
「ゲームじゃないんですよ。動いている的に当てれないなら戦場に出ない方が長寿の秘訣ですよ」
 そう採点をつけながら、キーファはポッドを動かして敵を屠っていった。
 その様子は、射程外から見ていた相手に命を刈り取る悪魔のように見えたのだった。


「おらおらおら!歯向かうんじゃないよ!!」
 自機をトップスピードに乗せ、ビームを撒き散らせながらハイネは吼えた。
 連携を取ろうとしているダガーL達のその緩慢な動きに生じる隙をつき、機動性を活かしたヒットアンドアウェー戦法で二桁を優に超える敵機と、戦艦数隻を沈めていた。
 だが、敵を屠りながらも、ハイネは何か嫌な予感を拭えずにいた。
(敵の攻撃が正当すぎる。なんでそんな正道を通すんだ?)
 開戦こそ不意打ちに近いものだったが、その後はただ正面突破を狙うような力押し戦法を愚直に行う相手に、他のモノがバカにするそれをハイネは不快に思い、言いようのない不安を覚えずにはいられなかった。
(まるで、俺達の目を自分たちに向けさせる……向けさせる?!)
「まさか?!」
 予備の弾倉に交換した瞬間、ハイネの脳裏にあることが浮かんだ。
 それこそまさに、自分たちの関心を正面の敵だけに向けさせる囮、と言う考えだった。
 そんな考えが浮かぶと同時に、通信機からあせった管制の声が飛び込んできた。
「なんてこった!!」
 その通信の内容は、極軌道を警戒する哨戒用ジンのパイロットが極軌道から接近するMS群を発見した、というものであった。
 そして、続いて伝えられた内容に、ハイネは何か冷たいものをいの中に入れられたような錯覚を覚えた。
 なぜならば、敵は核弾頭弾を装備している、と言うのだからだ。
「くそ!!遠すぎる!!」
 自分の位置があまりにも相手から離れすぎていることに、ハイネは歯がゆい思いをせずにはいられなかった。
 そして、ハイネは軍上層部が対応しきれることを切に願いながら周囲の敵を屠っていくのだった。


 ハイネの願いが通じたのか、数分後、ザフトの虎の子のニュートロンスタンピーダーが全ての核ミサイルを撃破した、と言う通信が流れたのは。
 そして、それを機に地球軍は月へと向けて後退を開始するのだった。


 地球軍の撤退を執務室に詰めていた全員が確認し、喜びにあふれていた。
「よしやったぞ!」
「はぁ……」
「まったく、堪らんな」
 最悪な事態を回避できたためか、気が緩んでいる様子を高官達は見せていた。
 そう言った高官たちの気を引き締めるように、デュランダルは厳かに話し始めた。
「これで終わってくれるといいんですがね……とりあえずは」
 そういうと、デュランダルは伏兵の有無を厳重に確認するように指示を出した。
 そして、近くの執務官に尋ねた。
「市民の様子は?」
「はい。核兵器を使用した、と言う情報が流れ少し混乱が生じているようです」
「そうか」
 その報告を聞き、デュランダルは手持ちのカードの一枚を切ることにした。
 それは、まさに諸刃の剣であり、ギャンブル性の高いものであった。
 だが、それを切らねばならない、とデュランダルは確信すると同時に覚悟を決めるのだった。


 外部からの情報を遮断された部屋に通されたアレックスと、アレックスを案内をしてきたオーブの大使館員はその一室で長い時間待たされていた。
 現状を考えれば、このままこの部屋で一夜を過ごす可能性もある、と考えていたアレックスの横で、アレックスと共に来た大使館員は部屋の中でじっと待つ事が出来ず、冬眠前の熊の様に歩き回り、時々腕時計を見て時間を確認するとまた歩く、と言う行為を延々と繰り返していた。
 その様子を眺めていたアレックスは、しばらく見ると椅子から立ち上がった。
 それに気がついた大使館員が声をかけようとしたが、それより早くアレックスが断りを入れた。
「ちょっと、顔を洗ってきます」
 そう言った後、大使館員の了解を得てアレックスは部屋を出ると同時に、深いため息をついた。
 一分が一時間のように感じる今の気持ちを鎮めるためにも、スッキリとさせなければ。
 そう思い、洗面所で顔を洗ったアスランが顔を上げて鏡を覗き込むと、そこには生気を失っている男の顔が映っていた。
 それに、顔を顰め睨みつけると、気を取り直しアスランが部屋へと戻ろうとしたその時、何処からともなく聞きなれた声が聞こえてきたのは。
「ええ、大丈夫。ちゃんと解ってますわ。時間はあとどれくらい?」
 その声の主がここに居るはずがないのに、と思ったアスランが気になってそちらの方へ足を向けた。
 そして、また声が聞こえてくると同時に、更に別の声が聞こえてきた。
「ならもう一回確認できますわね」
『ハロハロ、Are you OK?』
 まさか、と言う思いで顔を覗かせた先にいたその声の主を見て、アスランは目を見開き素っ頓狂な声を上げてしまった。
「ラクス?!」
 階段の上で二人の男性と話し、その横に赤いハロをつれたピンクの髪の女性がアスランを見つけると、一瞬驚きの表情を浮かべると同時に、片目を瞑り人差し指を唇にあてながら微笑んだ。
「ぇ……えぇ?」
 混乱するアスランに、ラクスはゆっくりと近づいてきた。
「『おひさしぶりですわ』。そして、『初めまして』アスラン」
 そう言ったラクスに、アスランは再び混乱した。
「ぁ……えぇ?」
 そのアスランの様子を見て、ラクスは笑いかける。
「君が……どうしてここに?え?初めまして?」
 やっとの思いで尋ねたアスランに、ラクスは笑みを浮かべながら答えた。
「それは、ひ・み・つ。今はね。後でちゃんと説明するわ」
 そう言うとラクスは首を少し横にかしげ、こちらを覗き込むようにして見せた。
 その仕草に、不覚にもアスランは心が乱れるのを感じた。
 アスランと話していたラクスに、先ほどまで話していた男性の内の一人が声をかけてきた。
「ラクス様」
 その声が聞こえると同時に、先ほどまでラクスの顔に浮かんでいた笑みが消え、代わりに凛々しい表情が浮かんだ。
「はい。解りました」
 そう答えると、ラクスはアスランに背を向け、男二人に先導されるように歩み去って行った。
 目の前のラクスに、言いようのない違和感を感じているアスランだったが、それが何かわからず頭を捻っている耳に、作った覚えのないハロが音声メッセージを流していた。
『Hey,hey,hey! Ready go!!』
 誰もいない通路に、その音声は場違いなほどよく響いた。
 そして、そのメッセージに後押しされるようにラクス達はその場を立ち去り、アスランはその後姿をただただ呆然と見送るのだった。

 ひとまず事態が落ち着いたのを確認したデュランダルが、何名かの副官や高官を引き連れ移動しながら話をしていると、自身の進路上に呆然と立っているアレックスに気がつき声をかけた。
「ん?アレックス君?」
 名前を呼ばれたアレックスは、慌てて声をかけられたほうに振り返った。
 どこか油断を見せているその態度に、内心首をかしげながらデュランダルはあることを思い出し改めて話し掛けた。
「ああ。そういえば、君とは面会の約束があったね。いや、たいぶお待たせしてしまったようで申し訳ない」
 謝罪の言葉を口にするデュランダルに、アレックスはしどろもどろになりながら返事をした。
「あ……いえ」
 アレックスのその様子に、デュランダルは不審なものを感じて問い掛けた。
「ん?どうしたね?」
 そう尋ねられたアレックスだったが、未だ混乱から立ち戻らずにいた為に、つい先ほど自分が見た事を信じられず言葉を濁した。
「いえ。なんでも、ありません」
 そう応えるアレックスを、デュランダルはその全てを見通すような瞳で見つめていた。


―後書き―
 つまらない事でかなり散財をしてしまい、最近自分の運勢は最悪だ、と思っているANDYです。
 世間では、大方の予想通り天皇家に男児が誕生されてしまい、総裁選の後に論議が起きるのでは、と思うのですがどうでしょう。
 さて、今回で一応『プラント危機一髪編』は終了です。
 今回久しぶりに登場したオリキャラたちの機体の武装ですが、作中で説明したとおりのもので、皆さんもよく知っている武装が幾つかあったと思います。
 まあ、皆さんが知っている武装の一段階前のもののテストを三人はしていた、と解釈していただけたら幸いです。
 いや、いくらなんでも新型の武器をテストもせずに実戦投入はしないだろう、と思いこうしたのですが。
 歌姫様ご一行は地下に隠れていたのですから、そうおおっぴらにテストは出来ないはずなので。ザフトのそのデータを盗用していたのでは、と思うのですが。公式ではどうなのでしょうね。

 では、恒例のレス返しを

>戒様
 感想ありがとうございます。
 今回も主人公、影も登場していませんwあれ?どこでまちがえたかな?
 アスランは、プラントに飛んでもらいました。
 色々な刺激を受けてもらいたいと思いますので。
 カガリは、まあ、政治家なのですから胃痛はある種の必須事項では?w
 これからも応援お願いいたします。

>カシス・ユウ・シンクレア様
 感想ありがとうございます。
 さて、誰かの掌の上、それは誰の掌なのか。神、それとも悪魔?それとも……
 戦争の原因としては、人種・宗教・思想、これらが不変のものなのではないでしょうか。
 これから世界はどうなるのでしょうね。
 これからも応援お願いいたします。

>無何有様
 初めまして。感想ありがとうございます。
 ユウナですが、私もありだと思いそうしました。
 原作のは、人の成長を否定しすぎなように思えました。初登場の時はいける?と思ったのに、最後は……
 さて、これからどのような世界情勢になるのでしょか。
 これからも応援お願いいたします。

>飛昇様
 感想ありがとうございます。
 カガリとアスラン、原作よりはお互いの気持ちを表しています。
 ですが、これからの世界はそんな二人をどうするのでしょうかね?
 マーシャンですが、彼らの扱いがすごく難しいように思うのは渡井だけでしょうか。
 特に火星人主人公w
 今月のGA次第によって登場させるかどうかは決めるつもりです。
 まあ、一応彼らも防衛には参加していたと思ってください(でも、TVではイザーク、ビームガドリング砲を核ミサイルに向けて放っていたのに、マーシャンの護衛どうなんだ?)
 これからも応援お願いいたします。

>御神様
 感想ありがとうございます。
 混迷を見せ始めた世界。
 何故あちらの世界はすぐに戦争と言う手段を選ぶのか、と思う次第です。まともな知識人の一人や二人いても良いでしょうに。
 さて、今回、オレンジの人が少し活躍しました。
 主人公は………距離の問題ですよw
 これからも応援お願いいたします。

>弐様
 感想ありがとうございます。
 ご指摘の数々を旨に、これからいっそうの努力をしたいと思います。
 これからも応援お願いいたします。


 なんか、九月に気づいたらなっていますね。
 最近、「うたわれるもの」という作品にはまっています。
 面白いですよ。ネットラジオが(爆)
 いえ、もちろんアニメも面白いのですが、あの弾けぶりが素敵ですw
 では、また次回。

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