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「ガンダムSEED Destiny――シン君の目指せ主人公奮闘記!!第十話 揺れる世界 前編 (SEED運命)」

ANDY (2006-08-31 00:51)
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『運命』というものは、ままならないものである。
 それは、いつどこででくわすかわからない、天災の様な性質を持つものだからだ。
 だからこそ、人はそれにぶつかった時、悩み、迷い、そして選択をする。
 人によっては、自身の命そのものを賭ける選択を選ぶこともある。
 だが、例え自ら選んだとしても、その先に待つのが決して平坦な道であるという保障はどこにもない。
 それが『運命』なのだから。


 その日、議会は騒然としていた。
 オーブの存在意義である理念を汚すことになりかねない問題が発生したからだった。
『大西洋連合との同盟』
 言葉だけを聞けば、何てことのないように聞こえるが、実際は軍事同盟にほぼ近い内容であるそれに誰もが難色を示していた。
 だが、その難色の示し方にも違いが現れており、大きく分けて三つあった。
 一つは、現代表カガリ・ユラ・アスハを筆頭としたアスハ派と呼ばれる理念擁護派。
 もう一つは、ウナト・エマ・セイランを筆頭とした、前大戦時に連合の支配下で国政を運営していたセイラン派と呼ばれる国体守護派。
 そして、それらどちらにも着かない日和見派。
 その三勢力がそれぞれの意見を主張しあい、互いに譲らずにいるため議会は騒然とし、混沌の様相を見せながら明日へ持ち越しと言う形の一応の終焉を迎えた。
 だが、この議会に意味があるのだろうか、と言う考えがアスハ派の中にも蔓延し始めていることに、カガリは気づいていなかった。


『―プラントも地球の友人のために全力を尽くします。ですから、どうか地球の友人達よ、絶望に負けないでください―』
 アスハ邸の食堂で、アスランはギルバート・デュランダル現議長の演説をモニターで見ていた。
 時刻は午前七時前で、自宅でない食堂に上がりこむのは少し常識を疑うような時刻であったが、控えているメイド達の顔に不快が浮かんでいないということは、彼がこの時刻にいるのは当たり前、と言うことなのだろう。
 アスランは、モニターに映るいくつものウィンドーから流れ来る情報に目を通しながら、コーヒーを一口飲んだ。
 自分の知り合いの趣味で作るオリジナルブレンドとは違い、豊かな芳香と心地よい苦味がアスランの嗅覚と味覚を刺激するのを感じた。
 ひとしきりその味と香りを楽しんだ後に、突如食堂のドアが勢いよく開いた。
「アスラン!」
 ドアから入ってきたのはこの邸の持ち主であるカガリであり、首長用の上着を着ていない格好で入って来た。
「おはよう。カガリ」
「あ、ああ。おはよう。……すまない!アスラン!!」
「どうしたんだ?」
「実は朝から閣議が入っていて、朝食を一緒にする余裕がないんだ」
「…そうか」
 拝むように断りを入れるカガリの表情を見て、アスランは少し顔を顰めた。
 カガリの顔には、ここ数日の激務の証拠である隈がうっすらと浮かんでいたのだった。化粧でごまかしているようだが、普段の顔を見慣れているアスランからしてみれば一目でわかるごまかし方であった。
「カガリ。実はお願いがあるんだが」
「なんだ?いきなり改まって」
 メイドの持ってきたサンドイッチをかぶりつきながら、カガリはアスランに尋ね返した。
「俺を、プラントに行かせてくれないか」
「は?!お前……」
 突然のその申し出に、カガリは、手に持っていたサンドイッチを落としてしまった。
 だが、そんなことをかまわずに、アスランの言葉は続いた。
「なにかが、俺に出来る何かがあそこにはあると思うんだ」
 アスランの瞳には、二年前によく見た輝きが宿っていた。
 使命感と言う名の輝きが。


 月面にある地球軍アルザッヘル基地では、次々と戦艦の発進準備が進められていた。
『コンテナリスト、R34〜R42は積み込み完了。ネタニヤフ搭乗のモビルスーツパイロットは第35ブリーフィングルームに集合して下さい』
『第34〜37エレベーターは17時〜18時の間、閉鎖されます』
『シャトル608便が12番ゲートに到着します』
 その基地全域に設けられた放送は司令室にも当然かけられていた。
『第4ダガーL部隊の補充パーツ、搬入完了しました』
「積み込み状況はどうなっている」
「は!全体の60パーセントが積み込みを終えており、残りも十二時間以内には終了する見込みです」
「急げよ。空の化け物をこれ以上野放しにしてはならんのだからな」
「は!青き清浄なる世界のために!!」
 敬礼をし、去り行く少尉の背中を見ながら、地球軍の中佐の階級をつけた男は眼前に待機している艦隊を見回した。
 眼前に広がる艦隊は、従来のものをMS対応用に改修されたもので、どこか歪さを感じさせるが、それでもそれらに積み込まれているものを見ると力強さを感じずにはいられなかった。
 人類が手にした神の如き力の権化、核兵器が積み込まれていた。
 その数は実に軽く百に達し、これらのうち一割でも着弾した時の被害は想像を絶するものがある。
 その光景を思い浮かべながら、中佐は愉悦の表情を浮かべるのだった。
 さあ、狩の時間だ。青き清浄なる世界のために。
 月面にある連合軍基地は、言いようのない異様さに包まれているのだった。


「本当に、行くのか?」
「ああ。カガリにはすまないと思うが、俺にしか出来ないことが何かないか、と考えたんだ。そして、俺が出来ることは、プラントとオーブの橋渡しだと気づいたんだ。オーブを理解している元プラントの人間がこの二国間の間に立つことで、友好な関係は維持できると思うんだ。特に、こんないつ戦争が始まっても可笑しくない情勢下ではな」
「そうか」
 微笑みながらそう語るアスランを、カガリは眩しいものを見るように目を細めながら見つめた。
 いままで、アスランには肩身の狭い思いをさせていた、とカガリは考えていた。
 いかに、混乱を避けるためとはいえ、偽名を名乗らずにいられなかったアスランの扱いを蔑ろにしていたことに、カガリは歯がゆく感じていた。
 だが、プラントで見つけたボディガード、と言う触れ込みで入国させたアレックス・ディノを、政に関わらせることなどは不可能であり、また他の首長連中を黙らせることも当時のカガリには出来なかった。その結果が、今日までのアスランの鬱憤とした日々だった。
 目に生気を失い、何かに悩んでいるように見えていたことに負い目を感じていたカガリにとっては、今のアスランの状態は歓迎するものであると同時に、何か言いようのない寂しさを感じるものでもあった。
「向こうの駐在大使の方には連絡を入れておく。議長と会談が出来るように手配するよう指示を出しておくからな」
「すまない」
「気にするな。私にはそれぐらいしか出来ないんだからな」
「いや。そんなことはないさ」
 そんな会話を続けている二人の前に、アスハ家専用の高速艇の準備が整ったという報告が届いた。
「アスラン」
「ああ。………そうだ。カガリ」
 一歩踏み出したアスランは、何かをポケットから取り出しながら振り返った。
「どうした?」
「……ユウナのことは知っているんだが、それでも、一応形だけでも、な」
 そういうと、アスランはカガリの左薬指に指輪を嵌めた。
「?!お、お前!!」
 その事実に、顔を紅潮させながら驚きの声を上げるカガリに、こちらも負けじと顔を赤くさせながらアスランは自分の思いを伝えた。
「俺は、カガリのことを本気だ。この指輪は、その証だ」
 その言葉を聞いたカガリは、より顔を赤くさせながら、蚊が鳴くような声で答えた。
「そ、その。……わ、私は、その、う、うれしい。私もアスランのことは、その―」
「カガリ」
 思いを上手く言葉に出来ないカガリに、簡単な方法があるだろう、と教えるようにアスランはカガリの唇に自分のそれを押し当てるのだった。
「!!」
 突然の行為に驚くも、カガリはそれを受け入れると目を閉じ、お互い意外は感じないように、ただ唇から伝わる温もりに思いを寄せるのだった。
 どれぐらいお互いの温もりを感じていただろうか。
 どちらからともなく、お互いの唇を名残惜しく離し、アスランは力強く伝えた。
「行ってくる」
「行ってらっしゃい」
 カガリは、今まで出最高の微笑を浮かべながらアスランを送り出すための言葉を口にした。
 それを脳裏に焼き付けながら、アスランは高速艇へと乗り込んだ。
 空に飛び立つそれを見送り、カガリは幸せな気持ちで閣議へと向かうのだった。

 この時、二人は予測することも出来なかった。
 このように、平穏な時の中で微笑みあうことが出来なくなる、と言うことを。
 これから、自分たちが苛烈で無慈悲な『運命』と言う名の激流に巻き込まれるということを。
 二人は、まだ気づいていない。


 プラントを初め、世界中に向けて大西洋連合の大統領の演説が映し出される中、プラントの最高評議会は大西洋連邦から突きつけられた要求書によって紛糾していた。
「全く以て話にならん!一体何をどう言ってやれば、彼等に分かるのかね!!」
 そう声を荒げる最高評議会議員の一人であるタカオの言葉に、同じく議員であるオーソンが答える。
「何を言ったって分からないんじゃないですか?そもそも最初からそんな気などなかったように思えます。これでは……」
 オーソンがそう吐き捨てるのを聞きながら、デュランダルは沈痛な面持ちを浮べていた。
 オーソンが言うように、大西洋連合から突きつけられた内容は、あまりにも無茶なものであった。
 それらの内容は―
1・ユニウス7落下の賠償金
2・Z.A.F.T.の解体による武装解除
3・プラントの現政権の解体
4・連合理事国の最高評議会監視員派遣
等といったもので、言い換えれば、プラントに生きる物は全て奴隷となれ、といっている物だった。
 そしてこの要求書の文頭には
───以下の要求が受け入れられない場合は、プラントを地球人類に対する極めて悪質な『敵性国家』とし、此に対して武力を以て排除するも辞さない―
という一文が書かれ、これは要求書というよりも宣戦布告と呼べるものだったのである。
 その、屈しがたい現実を前にして評議会議員全員の思想が戦争に包まれかけたのを見てデュランダルが声をかけた。
「皆さん」
 その場で最高権力者である議長職についているデュランダルの言葉にも、喧騒は止まる事なく、より大きくなったが、再びデュランダルが声を張り上げた。
「どうか落ち着いて頂きたい。皆さん」
 そのデュランダルの問いかけに、全ての議員が話すのを中断しデュランダルの方を向いた。
「お気持ちは解ります。ですが、そうして我等まで彼らの言い分に乗ってしまっては、また悲劇の繰り返しです。連合が何を言ってこようが我々はあくまで、対話による解決の道を求めていかねばなりません。そうでなければ、先の戦争で犠牲となった人々も浮かばれないでしょう」
 デュランダルのその言葉に、議員たちは鎮痛な面持ちになる中、議員の一人が地球軍の行動を報告すると同時に、事態の危険性を指摘した。
「だが、月の地球軍基地には既に動きがあるのだぞ。理念もよいが現状は間違いなくレベルレッドだ。当然迎撃体制に入らねばならん」
 もはや戦闘は避けれない、というその言葉に、議会は再び騒然となった。
 その中でデュランダルは、真摯な態度を保ったまま議員に答えた。
「軍を展開させれば市民は動揺するでしょうし、地球軍側を刺激することにもなります」
 その言葉に、戦闘の準備を促していた議員がデュランダルに抗議の声を上げた。
「議長!」
 その言葉に、そして向けられる視線から、デュランダルは事態の深刻さを認識すると、仕方無しと戦闘の用意を容認した。
「………ですが、やむを得ませんか。我等の中には今もあの血のバレンタインの恐怖も残っていますしね」
 そう言ったデュランダルの視線を受け、その議員は言葉を失い、議会は凍りついたように静かになる。
 プラントに生きるものたちのトラウマとなっているあの事件の映像が、それぞれの脳裏に浮かんだ。
 重くなったその空気をかき消さんとばかりにデュランダルは指示を飛ばした。
「防衛策に関しては国防委員会にお任せしたい。それでも我等は、今後も対話での解決に向けて全力で努力していかねばなりません」
 デュランダルはあくまで戦闘よりも講和に持ち込みたいとの姿勢をあらわした。
「こんな形で戦端が開かれるようなことになれば、まさにユニウス7を落とした亡霊達の思う壺だ。どうかそのことをくれぐれも忘れないで頂きたい」
 そして、そう言うことで評議会の気持ちを引き締めると同時に、早まった行動を選択しないようにと釘をさすのだった。
 その言葉が浸透すると同時に、議会はまた騒然とするのであった。
 その様子を目に納ながら、デュランダルはこれから起こる激動の未来に思いをはせるのだった。


「そんな馬鹿な!?何かの間違いだ、それは!!」
 告げられたそのあまりの内容に、カガリは信じる事が出来ずに声を荒げてしまった。
 カガリのそんな声を耳にしながら、それでも落ち着いた声音で宰相のウナトは事実を淡々と告げた。
「いえ、間違いではございません。先ほど大西洋連邦をはじめとする連合国は、以下の要求が受け入れられない場合は、プラントを地球人類に対する極めて悪質な『敵性国家』とし、此を武力を以て排除するも辞さない、との共同声明を出しました」
 告げられた内容を脳が理解しきると同時に、カガリは何か酷く冷たいモノが自分の体を駆け抜けるのを感じた。
(アスラン!!)
 今や天上の人になっている想い人の名を心で呼びながら、渡された指輪に触れた。
 指輪は何も答えてくれなかった。


 地球軍との戦闘準備の指示を受け、Z.A.F.Tの軍事ステーションに配備されていた全てのジン、シグー、ゲイツR、ザクが出撃を開始した。
 既に出ていたナスカ級やローラシア級戦艦のMSデッキに入りきれない機体は、戦艦の甲板に着地するしかないほどの数が出撃を始めた。
 そして戦力を総括する旗艦は、もはや宇宙空母というよりは移動要塞という外観を持つゴンドワナが勤めることになった。
 旗艦であるゴンドワナは、4層のMSデッキを持つ上に16基の大型カタパルトを持つ全長1200Mにも及ぶ巨大な船体を持つ代物であった。
 そしてそのブリッジにはイザークとその副官としてディアッカの姿が、そして、パイロット待機所ではショーンとゲイル、そしてジュール隊の面々がパイロットスーツ姿で待機していた。

 オーブ代表の特使という名目でプラントへと向かったアスランだったが、向かう途中シャトル内でコープランドの演説を聞き、まるで自分の仕様としていることが無駄であるかと言う気分にさせられ心が沈んでいたが、どうにか気持ちを切り替え、自身の使命を全うしようと心に決めていた。
「アレックスさん」
 迎えに来たプラント在中の大使館員の呼び声に振り返り、アスランはアレックスとして思考を切り替えながら現在の状況を尋ねた。
「すみません。状況はどうなっていますか?」
 そのアレックスの問いに、大使館員は移動しながらどこかやるせない表情で答えた。
「ご想像できるでしょうが、良くありませんよ。プラント市民は皆怒っています。議長は、あくまでも対話による解決を目指して交渉を続けると言っていますが………それを弱腰と非難する声も上がり始めていますよ」
 その言葉を聞き、アレックスは渋面を浮かべながら大使館員を見つめた。
「アスハ代表の特使と言うことで早急に、と面談は申し入れてはいますが………現状が現状ですので、どうなるかは分りかねませんね」
 大使館員の説明を聞き、アスランは搾り出すようにこう呟くしかできなかった。
「わかりました」


 プラントに到着したアスランが、大使館員と話しているのと同じ頃、月面のアルザッヘルから全ての準備が終わった戦艦が、次々とプラントへと向けて発進を開始し始めていた。
 その報告を受けたジブリールは、自身の邸宅で大西洋連合の大統領であるコープランドと通信をしていた。
「さて。それで、具体的にはいつから始まりますかな?プラントへの攻撃は」
 何の気負いもなく気軽にそう尋ねるジブリールの言葉を耳にした大統領は、苛立たしげに言葉を返した。
『そう簡単にはいかんよ、ジブリール。せっかちだな、君も』
 憮然とした表情でそう言う大統領に、ジブリールは一笑に付した顔を見せるが、それを無視しながら大統領は言葉を続けた。
『プラントは未だに協議を続けたいと様々な手を打ってきておるし、声明や同盟に否定的な国もあるのだ。そんな中、そうそう強引な事は―』
 大統領は開戦にためらいを見せる発言をしていたが、ジブリールはそれを一刀の元に切り捨てた。
「おやおや。前にも言ったはずですよ。そんなものプラントさえ討ってしまえば全て丸く治まる、と」
 気軽く言うその言葉に、大統領は深いため息をついた。
 だが、その様子を気にせずジブリールは話を続けた。
「世界はもうシステムなのですよ。だから創り上げる者とそれを管理する者が必要となる。人が管理しなければ庭とて荒れ、誰だって自分の庭には好きな木を植え、芝を張り、綺麗な花を咲かせたがるものでしょ?雑草は抜いて」
 ジブリールはシートから立ち上がると、酒棚からウィスキーのボトルを取り出し、グラスに氷を入れそれを注いだ。
「所構わず好き放題に草を生えさせてそれを美しいといいますか?これぞ自由だ、と」
 そのジブリールの言葉に、大統領は困惑の声を上げる。
『ジブリール……』
 ジブリールはそう言うが、これは自然を利用する、つまり調和する事が多い日本等の東洋の庭園と比べて、西洋では自然を捩じ伏せるという考えによる物が大きいための考えであろう。
 調和、と言うのを例に挙げるならば、日本庭園に見られる景観や、自然公園が見せる感動などがそれであろう。
 一概に、人の手が加えられたものが必ずしも美しい、とは決して言えないのだが。
 その中でジブリールは、ウィスキーを飲みながらも持論を続けた。
「人は誰だってそういうものが好きなのですよ。きちんと管理された場所、物、安全な未来。今までだって、世界をそうしようと人は頑張ってきたんじゃないですか。街を造り、道具を作り、ルールを作ってね」
 酔いが回ってきたのか、ジブリールは饒舌に話を続けた。
「そして今、それをかつてないほどの壮大な規模でやれるチャンスを得たのですよ?我々は」
 そう言い、ジブリールは楽しげに笑みを浮べた。
 ジブリールにとって、今回のユニウス7落下は単なる自分たちが世界を動かすためのチャンスとしか見えていなかった。
 その結果生まれた悲しみや、憎しみ、怒りなどは彼にとって些末事でしかなかった。
「だからさっさと奴等を討って、早く次の楽しいステップに進みましょうよ。我々ロゴスの為の美しい庭。新たなる世界システムの構築というね」
 そう言うと、ジブリールは手にしたウィスキーを一気に飲み干した。
 その言葉を聞いていた大統領は、何も口にすることが出来なかった。
 グラスの中の氷が奏でる音が、静かに響いた。


 プラントの防衛部隊と睨み合っていた地球軍の部隊に、進撃許可の秘密通信が伝えられたその瞬間、全艦が進撃を開始した。
「第44戦闘団は搭載機の発進を完了した。フォックスドロットノベンバー発令。現時点を以てオペレーションをフェイズ6に移行する。全ユニットオールウェポンズフリー」
 その指示と共に、無数のダガーLがプラントに向かい発進していった。
 その様子は、かつての大戦末期のようすを髣髴させる物があった。

 地球軍の進撃は、すぐさまデュランダルにも伝えられた。
「議長!!」
「……始まってしまったか」
 苦々しい表情でそう呟くデュランダルの両手は、きつく握られていた。

 デュランダルに、地球軍の侵攻が伝えられるのとほぼ同じくしてZ.A.F.T側のMSも発進を開始していた。
 ナスカ級のカタパルトからも、ローラシア級に降り立っていた機体も、発進準備が整い次第地球軍を迎え撃とうと次々に飛び立っていた。

 地球軍の攻撃部隊の進軍と同じくして、コープランドは世界中に向けて声明を放送し始めた。
『これより私は、全世界の皆さんに、非常に重大かつ残念な事態をお伝えせねばなりません』
 そう前置きを言い、開かれた口から紡がれた声明には、プラントに対してどのような条件を求めたかは一切出さずに、ただただ自分たちを正当化しようという内容であった。

『――が、未だ納得できる回答すら得られず、この未曾有のテロ行為を行った犯人グループを匿い続ける現プラント政権は、我々にとっては明かな脅威であります。よって先の警告通り、地球連合各国は本日午前0時をもって、武力による排除を行うことをプラント現政権に対し通告しました』
 その傲慢極まりないセリフをミネルバの艦橋で聞いていたタリアは、ため息を付くとすぐに全艦に警戒態勢を取るように打診した。


『コンディションイエロー発令、コンディションイエロー発令。艦内警備ステータスB1。以後部外者の乗艦を全面的に禁止します。全保安要員は直ちに配置について下さい』
 その放送に、眠りについていたルナマリアは飛び起き、伝えられた内容を理解すると愕然とした。
「うそ?開戦!?そんな……」
 そう呟くとすぐにベッドから跳ね起き、赤服に着替えると情報を手に入れるために部屋を後にするのだった。


 地球軍の進撃を確認したプラントの評議会ビルにあるデュランダルの執務室は、俄かに慌しくなっていた。
「防衛軍の司令官を!最終防衛ラインの配置は?」
 執務室に詰めていた通信士が、事実確認の取れた事から次々と報告していく。
「全市、港の封鎖、完了しました」
 それに続いて高官たちが指示を飛ばす。
「警報の発令は!?」
「パニックに備え軍のMPにも待機命令を!」
 そう言った高官に対してデュランダルは冷静に答える。
「脱出したところで、我等には行く所などないのだ!」
 そのことに高官達は言葉を失う。
「ゆえに、なんとしてもプラントを守るんだ!」
 だが、続いて告げられたその言葉に気力が再び充実し、高官達は機敏に動きを再開させるのだった。


 地球軍と戦闘になっていた防衛部隊の第一陣は、激しい戦闘の中でも決して怯まずに戦闘を続けていた。
 その防衛部隊の一機である、オレンジ色のブレイズザクファントムがネルソン級の戦艦を単機で撃破した。

 その中で、ゴンドワナに搭載されていた第2陣が発進しようとしていた。
『シエラアンタレス1、発進スタンバイ。射出システム、エンゲージ』
 そのアナウンスと共に、イザークのスラッシュザクファントムがカタパルトに設置された。
「結局はこうなるのかよ、やっぱり」
 イザークはコックピットで一人そう呟くと、発進を告げる。
「こちらシエラアンタレス1、ジュール隊イザーク・ジュール、出るぞ!」
 それに続くように、ディアッカのガナーザクウォーリアもイザークの後を追うようにカタパルトに設置された。
「ジュール隊、ディアッカ・エルスマン、ザク発進する!」
「ジュール隊、シホ・ハーネンフース、ザク行きます!」
 ディアッカのザクを追う様に、数機のザクが戦場へと向けて飛び立っていった。


 世界は、混沌になろうとしていた。


―中書き―
 スタゲの第二話を見て、なかなかの出来に感心したANDYです。
 まあ、新型のあの場面を見た瞬間「え?!ちょ、ま!」と、背中に走るものを感じましたが。
 今回は久しぶりの前編です。
 続きはできるだけ早いうちに。

 では恒例のレス返しを

>おのけん様
 初めまして。感想ありがとうございます。
 ユウナですが、二年前国土を焼かれた国の政治家がヘタれなはずがない、と言う考えのもとこうなりました。
 彼がこれからどのような活躍をするのかご期待ください。
 これからも応援お願いいたします。

>飛昇様
 感想ありがとうございます。
 ユウナは、上記のとおりの理由です。
 彼の秘書のレナスも、理由付けのために登場しました。
 シンとキラの会話はこれからどのような実を結ぶのでしょうかね。
 ホーク姉妹については、ノーコメントでw
 これからも応援お願いいたします。

>レンジ様
 感想ありがとうございます。
 これからも面白い展開になるように頑張っていきます。
 これからも応援お願いいたします。

>弐様
 感想ありがとうございます。
 ご指摘のオリキャラの大量登場、と言う点ですが、これは私の技量不足や、原作でのキャラの少なさ(前作のキャラが画面を占める割合が多すぎたと個人的に思うので)や相違点を埋めるためなのでご容赦していただきたいと思います。
 また、いなくても良いキャラ、というご指摘もありましたが、私はそうは思いません。また、原作では名も無きキャラに、文字媒体で理解してもらうために名前をつける、と言う手段もこれからはとっていく場面もあると思うので、その辺もご理解いただきたいと思います。

 トリップものと再構成の明確な定義の違いがわかりませんが、イレギュラーが介入したその瞬間から、再構成ものとなるのではないでしょうか。

 これからも応援お願いいたします。

>T城様
 感想ありがとうございます。
 お久しぶりのレスありがとうございます。
 ユウナですが、T城様の仰る様なキャラにするのもよかったかもしれませんね。
 こちらのユウナのスタンスは、近いうちに明言するようにしますのでご期待ください。
 これからも応援お願いいたします。

>カシス・ユウ・シンクレア様
 感想ありがとうございます。
 誤字の点は、投降する直前まで彼女は『レイナ』だったのですが、『レイ―』とつくキャラが多いな〜、と思って改名したのですが、それが全部上手くいかなかったようです。恥ずかしい限りです。
 ユウナは、ナチュラルなのですよ。あの世界で本当の意味での。努力の人、という姿が描けていければと思います。
 これからも応援お願いいたします。

>Kuriken様
 感想ありがとうございます。
 お久しぶりです。
 今回の墓参りなどで、確固たる立脚点を組み立てることがシンはできました。
 これからの彼の活躍にご期待してください。
 ユウナですが、原作があまりにもで、二年前のオーブを立て直した政治家があんなのではないはず、と言う考えでこうなりました。
 ヴィーノとヨウランの二人ですが、いつか二人にも春は来ます………よ、ね?
 これからも応援お願いいたします。

>諒斗様
 初めまして。感想ありがとうございます。
 シンが感じたアレは、無数にある平行世界のシンからの警告だったのですよw(嘘?ですよ?)
 ユウナは、昼行灯をいまは演じているのでしょうかね。
 二人の活躍をお楽しみにしていてください。
 これからも応援お願いいたします。

>御神様
 感想ありがとうございます。
 ユウナは、これからもよいカンフル剤になるようにしていきたいと思います。
 シンとキラ、この出会いが何を生むのでしょうかね。楽しみにしていてください。
 これからも応援お願いいたします。

>戒様
 感想ありがとうございます。
 原作のシンは、あまりにも世界を拒絶しすぎていたように思えました。
 そのため、自ら袋小路に陥ってしまいああ(The EDGE版最終回)なってしまったのではないでしょうか。
 もし、もう少し世界に目を向けていたら変わっていたかもしれませんね。
 カガリですが、前作でもゲリラ活動をしていた彼女が、まともな帝王学や政治学を修めているとは思えません、のであのような表現になりました。
 勇将が有能な政治家である、という事例はそう多くないので仕方がないかと。
 シンとキラの対面ですが、微妙に彼のことを知っているシンとしては、オープンに接することはできなかったのでああなりました。
 二人が戦場で出会ったらどのような言葉の応酬をするのでしょうかね。
 これからも応援お願いいたします。

>無駄様
 感想ありがとうございます。
 「バカスカと撃っていたのは連合3人組みでキラはバカスカと撃っていなかったと思う」とありますが、それは誤認です。撃っていましたよ。DVD等で確認してください。
 「それに戦争で攻撃しないのは自殺するのと一緒でしょ。」とありますが、それを否定してはいないと思いますし、そのような表現はないはずですが。

>無駄無駄様
 感想ありがとうございます。
 主人公の態度ですが、今回は少し毒を含んだ発言だったためか子供っぽく捉えられたようですね。
 以後気をつけます。
 また、不快になられるようでしたら、読もうと努力されなくても良いと思います。
 私は、不特定の方を不快にするために文章を書いているわけではありませんので。

>夜の7時様
 初めまして。感想ありがとうございます。
 トダカさんとの会話を気に入っていただけてうれしく思います。
 本編では、第一話をリアルタイムで見たときはフリーダムだと思ったのですが、DVDではカラミティーに変更しているとのことです。どちらなのでしょうね?
 今回のシンは少し子供っぽかったようですね。次回からは気をつけます。
 これからも応援お願いいたします。


 今月の、GAはミナ様が多くの漫画で登場しましたね。
 というか、『歌姫の騎士団』って………
 アストレイはどのような道を歩むのでしょうかね?
 そういえば、ヴェルデバスターですが、なかなかよいプラモです。
 なんていったって、『バスターガンダム』のパーツで構成されているのですからw(事実です。それを見た瞬間、使いまわし?!と驚きましたから)
 では、また次回。

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