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「これが私の生きる道!新外伝4死神がザフト軍を去る日編 (ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-09-09 15:47)
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(コズミック・イラ82、九月末、アカデミー校
 長室内)

 「今まで、お世話になりました」

 「お前、本当に辞めてしまうんだな」

 「決めていた事ですから」

アカデミーを卒業してから、ザフト軍に所属して
十二年あまり。
俺も三十歳になり、ここ八年ほどは教官として多
数のパイロット達を育ててきた。
イザーク、ディアッカ、シン、ルナマリアも、ザ
フト軍の中堅幹部として、なくてはならない存在
になり、ミゲルとハイネは艦隊司令として忙しい
毎日を送っている。
もう俺のする事はないし、会社を興す資金も貯め
る事も出来た。
そう考えた俺は辞表を提出し、第二の人生を歩む
事にしたのだ。
そして、俺は最後の卒業生を送り出し、残務を片
付けてから、スズキ校長に最後の挨拶をしていた

 「そうか。頑張ってくれよ」

 「ええ。自分のために頑張りますよ」

 「お前らしくて良いな」

 「でしょう」

 「送別会には出るからな。早く、伏魔殿に挨拶
  に行って来い」

 「それは、言い得て妙ですね」

 「エザリア国防委員長は健在だからな。周りで
  は、その呼び名で通っている」

エザリア議員は、いまだに国防委員長職に就いて
いたが、強硬派であるという周りの心配をよそに
、平和な時代の軍を上手く運営していて、デュラ
ンダル議長の信頼も厚いと聞いていた。 

 「では、行ってきます」

 「おお。早く済ませて来い」

 「最後に。あなたが一時期でも部下であった事
  に感謝しています。でなければ、俺は死んで
  いたかも知れません」

 「俺は、実戦という経験を少し持っていただけ
  だ。開戦当初から、お前の方が腕は良かった
  さ。始めは若造でガッカリだったけど、お前
  は最高の隊長だったと思っている。それは、
  アスラン達やシン達も感じているさ」

 「ありがとうございます。では、失礼します」

 「元気でな」

俺はスズキ校長と握手をしてから、校長室を退室
するのであった。


 「困ったな。あいつほど優秀な教官もいなかっ
  たんだけどな。腕前なら、もうイザーク達や
  シン達の方が上だけど、ゼロから教えるとい
  う事に向いていないからな。連中は・・・」

スズキ校長は、思案の海に沈んでしまうのであっ
た。


 「お世話になりました。エザリア国防委員長」

 「本当に辞めてしまうのね」

 「元々、軍人に向いていませんから」

 「そんな事を言うと、気を悪くする人がいるわ
  よ」

 「そうですかね?」

 「ええ。そうよ」

国防委員長の執務室内で、俺とエザリア国防委員
長は取り留めのない会話を続けていた。

 「それで、これからどうするの?」

 「年内に会社を立ち上げますよ。まずは、人材
  の確保です」

 「メドは立っているの?」

 「ええ。軍縮の余波で、人材が在野に沢山いま
  すからね」

時代が平和になり、「リムパック」演習の結果が
賭けの対象になるまでになっていたので、かねて
からの条約に従って、世界各国は次々に軍縮を行
っていた。
ザフト軍も例外でなく、有事の際の予備役制度は
世界有数の充実度を誇っていたが、多くの兵士達
が民間企業等に再就職を果たしていた。
元々、民兵組織が母体になっている組織なので、
あまり違和感を覚えている兵士はいないようだが
、彼らの中で優秀な人材を引き抜きやすい状況に
なった事に変わりはなかったのだ。

 「それを言われると、耳が痛いわね」

 「でも、仕方がないじゃありませんか。そのお
  かげで、私は困らないわけですから」

 「そう言って貰えると助かるわね」

そこまで話したところで、室内の電話の呼び出し
音が鳴る。

 「エザリアよ。そう、生まれたの。今度は?女
  の子ね。仕事を片付けたらすぐに行くわ」

 「えーと、三人目でしたっけ?」

 「四人目よ」

 「凄いですね・・・」

 「やっと女の子が生まれたのよ。男の子も元気
  で良いけど、着飾る楽しみがないから」

 「俺には、良くわかりませんよ」

 「サクラちゃんが、いるでしょうが」

 「ラクスが、色々着せていますから」

 「なるほどね。じゃあ、私もここを出るから。
  最後に、あなたがザフト軍の予備役司令であ
  る事に変わりはないわ。だから、有事の際に
  は・・・」

 「わかっていますよ。お役に立てるかわかりま
  せんが」

 「万が一の時は、期待しているわ。そうならな
  いように努力するけど。第二の人生も頑張っ
  てね」

 「ありがとうございます」

エザリア国防委員長の執務室を出た俺は、その足
で人事部長の執務室に向かう。

 「失礼します」

 「カザマ司令か。本当に辞めるんだな。書類が
  来ていたぞ。そういう私も今月限りだがな。
  だから、引継ぎが忙しくてな」

 「あの(リムパック77)以降、五年も粘った
  んですか」

 「なぜか人事異動がなくてな。でも、これで私
  も退役だ。毎日、庭の手入れをしながら孫と
  遊ぶさ」

 「そうですか」

 「思えば、あの時から始まったんだよな。私が
  上層部から受け取った命令を君に下すところ
  から・・・」

 「アスラン達を戦死させるなでしょう。無茶な
  命令でしたよ」

 「ちゃんと、達成したじゃないか」

 「あれは奇跡だったと思いますよ」

 「でも、そのお陰で私はこの職に留まる事が出
  来た。私は前線に出る能力がなくてな。後方
  勤務で腐っていたんだが、君のお陰でこの職
  を全う出来た。感謝しているよ」

 「でも、十年上も人事部長職って凄いですね」

 「栄転の話もあったんだが、ここが気に入って
  いたからな」

 「なるほど」

その後、俺は執務室をあとにするのであった。

 「(そう言えば、あのハゲ親父の名前を聞くの
  を忘れていたな。書類等の名前は、見ないよ
  うにしていたし・・・)」

結局、俺は最後まで彼の名前を聞くのを忘れてし
まったのであった。


 「いやーーー。お待たせ、お待たせ」

 「遅いぞ。ビジネスマンたるもの・・・」

 「挨拶回りに時間がかかってさ」

 「それを予想して早めに動くのが、真のビジネ
  スマンだ」

 「えらく変わったもんだね。ガイ」

 「今更、傭兵にも戻れないからな。俺はビジネ
  スマンとして生きるんだ!」

軍本部を出た俺は、五分ほど送れてガイと待ち合
わせをしていた喫茶店の中に入る。

 「それで、辞めてきたのか?」

 「ああ。綺麗サッパリ」

 「それで、俺を引き抜こうっていうのか?」

 「営業部を任せるよ。それと、専務待遇でどう
  だ?」

 「給料は?」

 「始めはちょっと少ないかな?でも、会社が軌
  道に乗れば、役員として恥ずかしくないだけ
  の金額は出す」

 「わかった。細かい条件は書類にして風花に送
  ってくれ」

 「だってさ。はい、これが書類ね」

 「何!?」

俺はいつの間にかガイの後ろにいた風花ちゃんに
、細かい条件を書いた書類を手渡した。
十六歳になった風花ちゃんは、知的な感じのする
美少女になっていて、将来は、知的な美人になる
と思われた。

 「風花、お前も呼ばれていたのか?」

 「はい。大切な用事を頼んでいましたので。そ
  れで、カザマさん」

 「ああ、大丈夫だよ。ラクスと俺の立会人の証
  拠書類ね」

 「ありがとうございます」

 「どういう事だ?」

俺と風花ちゃんの話の内容が理解できないガイが
、俺に質問してくる。

 「ほら、会社を立ち上げると暫く忙しいからさ
  。済ませられる事は済ましておこうと。ガイ
  、この書類に署名してね」

 「ああ。そういう事かって!おい!これは、何
  なんだよ!」

 「えっ、婚姻届だけど。何か変か?」

この時代においても、婚姻届等の重要な書類は紙
で本人が署名する事になっていたので、俺はガイ
に署名をするように言う。

 「俺の意思は?」

 「嫌なの?」

 「そうは言ってない!」

 「じゃあ、忙しいんだから、ちゃっちゃと書い
  ちゃってよ!」

 「何か、納得がいかない・・・・・・」

 「風花ちゃん、ごめんね。式の事なんだけど、
  教会がなかなか取れなくてさ。一週間後なん
  だよ」

 「その間に、準備しますから」

 「それなら、かえって好都合か。ガイ、指輪を
  買っとけよ。婚約指輪と式で交換するやつを
  両方な。それと、楠木重工の方にも辞表を出
  しておけよ」

 「俺の意思は・・・?」

 「風花ちゃん、総務課長職でお願いね。条件は
  この紙に記載されているから」

 「わかりました。では、指輪を買いに行ってき
  ます。それに、住まいの事とか色々あります
  ので」

 「そうだね。じゃあ、次は結婚式前日のリハー
  サルで」

 「それでは失礼します」

 「じゃあね」

 「あれ?俺の意思って・・・?」

風花ちゃんは、いまだに状況が良く理解できてい
ないガイの腕を引っ張って、喫茶店をあとにする
のであった。


  

 


 「こんにちは」

 「ヨシヒロ、いらっしゃい」

ガイ達と別れた俺は一件のお店に入り、そこで店
主であるステラの歓迎を受けていた。
実は、ステラは二年前にいきなりザフト軍を辞め
て、このお店を始めていた。
お店はケーキとお菓子のお店で、店内でお茶を飲
みながら食べる事もできたので、味の良さも相ま
ってかなりの人気店になっていた。

 「今日は、臨時休業なんだ」

 「ヨシヒロの送別会だから」

実は、今日の夜にみんなが送別会を開いてくれる
事になっていて、会場としてステラのお店が貸し
切られる事になっていたのだ。

 「悪いね」

 「本当に悪い事だ!」

 「ハイネ、いたんだ・・・」

 「いて悪いか?」

 「別に悪くはないけどね」

ステラがザフト軍を辞めると聞いた瞬間に、奈落
の底に落とされたハイネであったが、すぐに立ち
直って、暇があればこのお店に入り浸っているよ
うであった。

 「ヨシヒロ、ケーキ食べる?」

 「そうだな。ショートケーキを・・・」

 「正式名称で呼んで」

 「(ジン)をお願いします」

このお店の最大の特徴は、ケーキやお菓子の名前
にモビルスーツの名前が付いている事であった。

 「あのさ。何で、ショートケーキが(ジン)な
  の?」

 「オーソドックスだから」

 「チョコレートケーキが(ゲイツ)なのは?」

 「味がくどいから」

 「モンブランが(センプウ)なのは?」

 「人気があるから」

天然であるステラの命名基準に首を傾げながら、
ショートケーキを食べていると、次々に送別会の
参加者が入ってくる。

 「ヨシヒロさん、本当に辞めてしまうんですか
  ?」

 「だから、本当だって」

 「残念ですね・・・。ステラ、俺全種類を一つ
  ずつ」

 「シン!無料だからって、ちょっとは遠慮しな
  さいよ」

 「ルナが産休に入ってしまうから、経費の節約
  をさ」

二十代も半ばになって、精悍な顔つきになってき
たシンであったが、性格は相変わらずのようであ
った。

 「ルナは、産休に入ってしまうのか」

 「はい!念のために早めに産休を取ります」

この二人は、四年前に結婚していたが、なかなか
子供に恵まれなくて苦労していた。
だが、先週になってようやく子供が出来たという
報告を受けていたのだ。

 「そうか。ところで、マユちゃんは元気かい?
  」

 「ええ、普通の会社員をやっていますけど。そ
  れが何か?」

 「別に・・・。(よっしゃーーー!引き抜こう
  )」

 「メイリンは?」

 「ダラダラと、専業主婦をしていますよ。それ
  が、何か?」

 「近況を聞きたかっただけ。(引き抜こう)」

それから、更に多くの俺の知人達が現れ、夕方に
なったので送別会が始まった。
料理は、ステラと女性陣が手伝って大量に作られ
、次々に運ばれてくる。

 「イザーク、子供が生まれたばかりなんだろう
  ?しかも、可愛い娘なんだ。今日は早く帰っ
  てやれよ」

俺はワインを飲みながら、イザークに早く帰る事
を勧める。

 「あれ?何で知ってるんです?」

 「エザリア国防委員長のところに挨拶に行った
  ら、連絡が入ってきた」

 「なるほど。切りの良いところで帰りますよ」

 「ディアッカは、浮気してないか?」

次に、アヤが二人目の子供を妊娠中のディアッカ
に浮気をしないように釘を刺しておく。

 「俺よりも、ヨシさんの方が心配ですけど・・
  ・」

 「そんな事、本当に出来ると思うか?」

 「えーーーと、無理ですね」

更に、独立したあとの事を見越して、ラスティー
とユリカ達に媚を売っておく事にする。

 「ラスティーさん」

 「何ですか?急に」

 「お仕事頂戴ね」

 「何か気持ち悪いな・・・」

 「お美しいユリカ様にエミ様」

 「何?」

 「正直、不気味ですわ」

 「お仕事下さいね」

 「考えとくね。でも、ガイ君は惜しかったな。
  彼は優秀だったのに・・・」

 「俺のカリスマの勝利という事で」

 「ラクス様の力と違う?」

 「大当たり!」

 「カザマ君、明日から私は、誰にたかれば良い
  のだろうか?」

多少、酔っ払ったクルーゼ司令が、おかしな事を
聞いてくる。

 「さあ?イザークとディアッカがいるじゃない
  ですか」

 「そうするしかないのかな?」

 「本人不在で、変な事を決めないで下さいよ・
  ・・」

 「俺、お金ないんですけど・・・」

イザークとディアッカは、心底嫌そうな顔をして
いたが、他にクルーゼ司令に何かを奢ってくれそ
うな人は存在しなかった。

 「レイも、ザフト軍を辞めてしまいましたから
  ね」

 「そうだな。まさか、ミュージシャンになると
  は思わなかったが」

 「レイなら今はオーブにいるそうです。コンサ
  ートツアーで忙しいから、今日は出席できな
  くてスイマセンと言っていました」 

 「相変わらず律儀だな。レイは」

シンがレイからの伝言を伝えてくれるが、彼はミ
ーアちゃんと組んで、謎の作曲家から表の作曲家
兼バンドのメンバーとして、世界各地を回る生活
を送っていた。

 「しかし、俺の同期もイザークの同期も少なく
  なったな」

 「死んだみたいに言わないでくれよ。俺はつい
  に課長に昇進したんだ。」

いつの間にか隣にいたコーウェルが、縁起でもな
いと言う顔をしている。

 「財務省の課長って偉いの?」

 「偉いさ!」

 「じゃあ、色々とよろしくね」

 「俺は公僕だからな。全てに平等に接するさ」

 「嘘くさいなーーー」

 「そう言うなよ。一応、建前なんだから」

 「ジローは、そのままの任務なの?」

 「いいや。お前の跡を継いで主任教官に就任す
  る。さっき、オッサンから打診があったから
  受け入れた」

 「行動が素早いな。オッサンは」

 「お前が抜けて結構大変なんだ」

ジローは、俺がアカデミーの校長室を出たあとに
、オッサンに主任教官への就任を要請されたそう
だ。

 「そうか。スマンな」

 「いいさ。同じ人間が試作機や改良機の評価を
  行っているのも良くないし、教官は休みを取
  りやすいからな」

 「それは言えてる」

 「そうだ。カザマ君にお願いがあったのだ」

 「何なんです?」

 「私がモビルスーツに乗れなくなったら、雇っ
  てくれないかね?」

 「クルーゼ司令をですか?」

俺は深く考え込んでしまった。
クルーゼ司令を雇って、何か良い事があるのだろ
うか?
俺が周りを見渡すと、全員が俺と同じような表情
をしている。

 「考えておきます。そこまで会社を大きく出来
  るか自信がありませんので」

 「そうかね」

俺は物凄く無難な返事をしてから、他の連中に挨
拶に行く。
元ハイネ隊の面々や、俺が数人を雇う予定の元「
ギラ・ドーガ」隊の面々、そして多くの卒業生達
と話をしながら、自分の軍人としての人生を振り
返っていた。
多分、好きでなったわけでもないし、何回も死に
掛けた事もある。
それでも、プラントという第二の故郷を守るため
に、俺はここまでどうにかやってこれて、沢山の
仲間もできた。
なので、いざ辞めてしまうと、一抹の寂しさとい
うものが出てきてしまうようだ。

 「カザマ、最後に何か一言いえよ!」

ハイネに挨拶をするように言われてしまったので
、俺は一言挨拶をする事にした。

 「じゃあ、短めに。俺は十年ちょっとの短い軍
  人生活だっけど、二回も大きな戦争があって
  お互いに大変だったと思う。これで、俺はザ
  フト軍を辞めてしまうけど、第二の人生って
  奴があるから頑張っていこうと思います。俺
  が雇う予定の連中!俺を社長と呼べ!隊長と
  か司令とか呼ぶなよ!最後に、みんなありが
  とう」

俺の本当に短い挨拶に全員が笑ったあと、盛大な
拍手が鳴り響くのであった。


 「じゃあ、お疲れさん」

 「社長、会社の設立日はいつなんです?」

 「ちゃんと教えるから、それまで失業保険で遊
  んでいろよ」

 「相変わらず、おかしな人ですね」

 「ほっとけ!」

送別会はお開きになり、俺が帰宅する面々と挨拶
をしていると、ハイネとステラの会話が聞こえて
くる。

 「今日は泊まっていく?」

 「えーと、今日は・・・・・・」

 「何、遠慮してるんだよ」

 「お義兄さん!」

 「ステラももう二十四歳の大人なんだ。俺は何
  も言わないさ。それに、俺なら断らない」

 「カザマならそうだろうな」

 「そう言う事。それよりも!」

 「それよりも?」

 「ちゃんと、決まったら挨拶に行けよ。親父が
  そういう事に五月蝿いんだから」

 「わかったよ」

 「じゃあ、俺はこれで」

 「ヨシヒロ、またね」

 「ああ。でも、ヨシヒサが悲しむかな?」

 「失恋も良い経験さ」

 「お前が言うなよ・・・」

八歳になったヨシヒサは、子供ながらにステラに
恋心を抱いているらしく、暇さえあれば遊びに来
ていた男その二であったので、ステラが結婚する
となると相当にショックを受けるであろう。


 「ただいま」

 「おかえりなさい」

クライン邸に到着した俺は、貰った沢山の花束を
執事のセバスに預けてから、ラクスの出迎えを受
けた。

 「子供達は?」

 「待っていたのですが、もう寝てしまいました
  わ」

 「この時間なら仕方がないか」

 「最後にお願いがあるのですが」

 「何でもどうぞ」

 「敬礼をしてみて下さいませんか?」

 「いいよ」

俺は軍服を直してから、ラクスのために最後の敬
礼を行った。

 「昔と変わりませんね。軍人としては一流なの
  に、どこか場違いな場所にいるような目をし
  ていて、それでも、みんなのために一生懸命
  に頑張って」

 「そうかな?昔はヘッピリ腰の敬礼だって良く
  怒られてたよ。それに、アスラン達の方が様
  になっていたさ」

 「でも、私はそういうあなたが好きです」

 「ありがとう」

 「でも、これで終わりです。あなたが軍人だと
  、いつかどこかに行ってしまうような気がし
  て・・・」

 「でも、もう軍人じゃないから」

 「それもそうですね。今まで、本当にご苦労様
  でした。暫くはゆっくりして下さいね」

 「カザマカレンダーでは、二週間は暇かな。ガ
  イの結婚式くらいだな大きな行事は」

 「では、もう寝ましょう。明日は早く起きなく
  ても良いのですから」

 「えっ!」

 「さあ、参りましょう!」

 「嘘っ!」

俺は半ば強引に、ラクスに寝室に引きずり込まれ
るのであった。

 「婿殿も大変だな。三人目が生まれると良いの
  だが・・・」

就寝前にリビングで本を読んでいたシーゲル元議
長は、多少、自分の婿殿を同情の目で見つつも、
新たな孫の誕生に期待するのであった。


(一週間後、某教会内)

 「汝、ムラクモ・ガイは、風花・アジャーを妻
  として終生の愛を誓いますか?」

 「はい」

 「汝、風花・アジャーは・・・・・・」

恒例の愛の誓いやら、賛美歌やら、指輪の交換や
らが続き、結婚式は順調に進んでいった。
始めはガイが文句を言っていたようだが、それは
風花ちゃんが嫌という事ではなくて、勝手に物事
を進める俺達に対する怒りであったようなので、
無視して話を進める事にしたのだ。

 「じゃあ、俺達も祝いの言葉をかけに行くとす
  るか」

 「そうだな」

 「気の利いたセリフを考えたぜ」

 「俺もそうだ」

ライスシャワーの中を歩いてくる二人の横で俺、
ミゲル、ハイネ、義成兄さん、義則が、一斉に大
声で声をかけ始める。

 「羨ましいぞ!二十歳も下の嫁さんなんて!代
  わって欲しいくらいだ!」

 「そうだ!この犯罪者が!」

 「羨ましいぞ!犯罪者!」

 「代われ!代われ!」

 「このロリコン男が!」

 「光源氏ってか!」

 「うるさいんだよ!このバカ共が!」

俺達からの心の篭った祝いの声に、ガイは同じく
大きな声で返してくれた。

 「あのさ。社長に向かって、うるさいはないで
  しょうが」

 「プライベートでは関係ない。それに、まだ会
  社が設立されていない」

 「正論だなーーー」

 「俺は元上司ですよ」

 「俺も俺も」

楠木重工で部長職にある、義成兄さんと義則が俺
に続く。

 「あくまでも元です」

 「「元傭兵ってクールだな」」

 「言えてる」

続いて、風花ちゃんがブーケを放り投げたのだが
、既に売約済みの女性が大半だったので、大きな
争いも起こらず、ブーケはサクラの手の中に収ま
った。

 「わーーー。私が次のお嫁さんだ」

 「何ぃーーーーーー!」

サクラの嬉しそうな声で、俺は急に奈落の底に叩
き落される。
そして、頭の中に「お父さん。今までお世話にな
りました」と挨拶をする、ウェディングドレスを
着たサクラの姿が映し出されていた。


 「カザマさん、硬直して動きませんよ。大丈夫
  ですかね?」

 「ふん。勝手に物事を進めた罰だ。清々した」

 「でも、私達のために色々と・・・」

 「それは感謝しているが、それとこれとは話が
  別だ」

 「それもそうですね」

その後、俺は、二人が月への新婚旅行に出かける
ために会場を後にし、ラクスに揺り起こされるま
で一人で硬直していたのであった。


(十一月十五日、某貸しビル内の一室)

 「それでは、今日から(株)カザマ製作所がス
  タートしました。潰れるとプー太郎ですので
  、頑張ってください」

 「そのやる気のない挨拶は、何なんだ!」

 「気負い過ぎは良くないよ」

 「だんだん心配になってきた・・・」

ついに、準備を進めてきた俺の会社がスタートし
た。
社長・俺、常務・ヨシヒサ(名前だけ)専務・ガ
イ(営業部長兼任)人事課長・メイリン、技術課
長ヨウラン、総務課長・風花ちゃんで、その他に
シンの妹のマユちゃんや、昔の同僚や部下達で、
待遇の悪い会社に行っていた連中をヘッドハンテ
ィングして、合計三十二名という意外と大きな規
模でスタートしていた。
資金は貯めていたお金と、銀行からでも借りよう
と思っていたのだが、ラクスが貸すと言うので、
ありがたく借りておく事にした。
ラクスは始めは無利子で良いと言っていたのだが
、それは良くないので法定金利で借りる事にした
のだ。
ゆえに、早く会社を軌道に乗せないと、俺は借金
まみれになってしまうのだ。

 「社長、これからの予定は?」

 「交友範囲を生かし、世界各国の会社を回って
  仕事を掴みとってくる。ガイ、一緒に行くぞ
  !」

 「心得た」

 「ヨウラン、取ってきた仕事を実際にやるのは
  お前だ。任せるからな。始めは各種モビルス
  ーツの修理やら、使える部品の取り出しとそ
  の販売だが、時期が経てば、独自の作業用モ
  ビルスーツ等の設計と生産にまでに持ってい
  くぞ」

 「任せてください」

 「風花ちゃん、経費節約でお願い」

 「わかりました」

 「メイリン。時間があったら、引き抜き可能な
  人材リストを作っておいて、もう少し経営状
  態が良くなったら引き抜くから」

 「お任せ下さい」

 「マユちゃんは、シンをたぶらかしてザフト軍
  の仕事を取ってきて。あいつ、あれでもエリ
  ートで権限があるからさ」

 「お兄ちゃん、私のお願いは断れないから大丈
  夫ですよ」

 「それでは、(株)カザマ製作所のスタートで
  す」

こうして、始まった俺の会社は順調に規模を拡大
し、三十年後には、モビルスーツ製造ではトップ
10に入るまでの規模に入るまでに大きくなるの
であった。


           おまけ

(一週間後、日本国首都東京都内某所)

 「日本で仕事が取れて良かったね」

 「楠木重工だけだけどな」

 「日本の大企業の大半は権威主義だから、パッ
  と出の我が社ではね。楠木会長は、孫達が俺
  に迷惑をかけていると思っているからさ」

 「それは事実だろうが・・・」

 「何にせよ。成果があって良かった良かった」

 「それで、聞きたい事があるのだが・・・」

 「何?」

 「ここは、どこだ?」

 「カプセルホテルって奴だな。経費削減の一環
  さ」

 「こんな狭いところに泊まるのか?」

 「そうだよ」

 「それで、飯は?」

 「はい。これ」

俺はコンビニで買った、カップ麺とデザートを取
り出す。

 「別に贅沢をしたいわけではないが、これはど
  うだろう?」

 「会社が大きなったら、帝国ホテルにでも泊ま
  ろうぜ」

 「極端だな」

 「カップ麺は、普通のラーメンと焼きそばどち
  らが良い?」

 「焼きそば」

 「デザートは、杏仁豆腐とやわらかプリンどち
  らが良い?」

 「やわらかプリン」

 「それと、もう一つ大切な事がある」

 「何だ?」

 「カプセル内のテレビなんだけど、2チャンネ
  ルはエッチなやつが放送されている」

 「誰もそんな事は聞いていない」

 「新婚さんを長期の出張に連れてきたから、気
  を使ったのに・・・」

 「そんな気の使い方は不要だ」

 「大きな会社になったら、銀座に行こうぜ」

 「それは、風花に怒られるから勘弁して欲しい 
  」

 「もう、尻に敷かれているの?」

 「お前も、嫁に怒られるぞ」

 「そう言えばそうだった・・・」

俺達は、カップ麺をすすり、デザートを食べてか
ら就寝する事にする。
明日は、楠木重工の本社で担当者との打ち合わせ
だ。

 「ガイ」

 「何だ?」

 「今日のエッチチャンネルは、巨乳特集だって
  さ」

 「・・・・・・・・・。見るか」

こうして、俺達は明日への英気を養うのであった


         あとがき

バカ話ばかりです。


  

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