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▽レス始

「.hack//G.S. レベル3(.hack+GS)」

脳味噌コネコネ (2006-09-04 06:22/2006-09-04 22:28)
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「何でちゅかこれは!?」
「イベントかなんかじゃ……ないんか?」

周りの洞窟が消え、激しいノイズと共に、異形の空間へと移行していく。
明らかにゲーム内容を超越した霊気とノイズばかりの異界空間。
原子風水盤事件の時と似た光景に横島は身を硬くした。
間違いなく何かが起こる。それも、今回発生した事件の根本に深く関わる形で……だ!

「白い……女の子……」

横島が目を向けていた方向の先に浮かぶ、白い髪の少女。
その顔に表情はほとんどないものの、何故か、横島には追い詰められているように見えていた。
だから近づいた。この行動こそが正解であり、また、究極の不正解だった。

「何か……あったんすか?」
「あなたは? ……来る!」
「来る!? あの杖持った変な奴か!」

横島の問いに答えが返ってくる間もなく、空間がねじれ、何かが姿を現す。

「スケィス? あんなのが……モンスターだっていうんでちゅか!?」

赤い杖を持ったモンスター。パピリオさえも存在を知らない、謎の多すぎる敵。
しかしパピリオがHMD越しに見ている画面には、しっかりとモンスターの名前、スケィスの名が記されている。

「わけわからんけど、お前追われてるんだろ? 早く逃げろ! できるかわからんけど、時間は稼ぐ!」

果たして横島が、これほどの勇気を見せるなど誰が想像しただろう。
少しずつ、少しずつ狂う方向へとピースが埋められていく。

「……これを」
「へ? なんすかこれ?」

無表情から一転、意を決したような強い表情で、白い少女は本を出現させた。
表紙に不思議な模様の描かれた、茶色く分厚い本だ。

「強い力……使う人の心一つで、救い、滅び、どちらにでもなる」
「そ……そんな力、俺なんかに託していいのか? パピーの方が、レベルも経験も、比べようがないくらいあるぞ?」

横島は疑問を浮かべるも、白い少女の決意は固まっていた。
目の前に居る人には、この本の正しい使い方がわかる。だから、託したのだ。
本は横島の体に吸い込まれるように消え、アイテム取得を示すメッセージが浮かぶ。

「黄昏の……書?」

横島が気が付いたときには、少女の姿は消えていた。
代わりに見えるのは、異形の怪物、スケィスと戦うパピーの姿だ。

「アンクルズ!」

闇属性の最下級魔法がスケィスに襲い掛かる!
しかし、ダメージを与えているようには見えない。
それが何故なのか、パピリオは知っていた。そして、横島も知る事になる。
表示されているスケィスのHPは、文字化けだらけのバグの塊。

「ウィルスバグ……!? だめでちゅ蛍。あいつには勝てまちぇん!」
「勝てないっつっても、逃げ道なんてないぞ!?」

異常な速さで振られるスケィスの赤い杖は、初心者装備のパピーのHPを瞬く間に削り取っていく。
もう何度治療の水が使用されただろう? あといくら、持つのだろう?
不安だらけの考えが脳内を巡る横島だが、蛍のステータスでスケィスに手を出すなどただの無謀でしかない。

『横島君!』
「み、美神さんすか!?」

ここで、予想外のCC社からの通信に、横島は少し安堵したが、状況は変わらない。

『文殊の力で少しの間だけだけど、回線を回復したわ。
 強制シャットダウンも何故か効かないみたいだから、そっちでコンセント抜いちゃって』
「そういや、これゲームなんすよね……!!! パピー!」

横島が安堵してHMDを外そうとした時、強烈な一撃がパピーを襲った。
空中に浮かんでから一気に拳を叩きつける、パピリオですら見たこともない技だ。
そこから叩き出されたダメージは半端じゃない。パピーですら即死しかねない威力だ。
すぐさま治療の水によって回復されたが、スケィスの攻撃は止まらない。
横島はHMDを外して、すぐさまPCのコンセントに手をかけようとした。
が……コンセントの位置が最悪だ。PCの置かれた机の後ろ側の、狭い隙間の間。手は届きそうにない。
横島は懇親の力を込めて瞬時に机を動かし、コンセントに手をかけた。しかし……

「外れない!?」

ゲーム内の霊気による呪いか、それとも別の何かか、理由はわからない。
パピリオは取り付かれたように操作を続けている。まだ、激しい戦いは続いている。
何か別の方法は? そう考えた横島が導き出した答えは、

「黄昏の書……強い力ならどうにかなるか?」
「蛍!」

突然のパピーの叫び。横島はあわててHMDをかぶりなおした。
ゲーム画面に広がるのは、動きを止めていた蛍に襲い掛かるスケィス。

「こういうときはガードだったよな? な?」

蛍は振り下ろされる杖の前に、両手に握られた双剣を構えた。
結果杖は双剣に当たったが、蛍は強く弾かれ、異界空間の地面に仰向けに倒れた。
何かが割れる音が、横島の耳に響く。
青色の何かがプロテクトブレイクの文字と共に、砕け散った。
すると途端、横島の操作を蛍が受け付けなくなる。
蛍の体が宙に浮かび、赤い杖が、蛍の背後に回った。
まるで処刑されるかのように、十字架に貼り付けられる。
スケィスの腕が蛍を指すと、その腕の周りに腕輪のような何かが浮かび上がった。
途端、スケィスの纏う霊力が膨れ上がる。
その腕輪から、青い閃光が打ち放たれた。
閃光は蛍の体を突き抜け、まるで魂を打ち抜かれるような感覚が横島に走る。
しかしそれは、決して感覚だけの問題ではなかった。
激しい喪失感と共に、横島の魂が体から離れ、ゲーム内へと吸い込まれる。
その魂が蛍を突き抜けようとしたとき、壁のようなものに止められ、魂は蛍の中に吸着する。
束縛を解かれ自由になった蛍の体が、地面に落ちた。
落ちた瞬間と白い何かが振ってきた瞬間は、同時だ。
そして蛍の顔は、何故か笑っていた。


その日、横島の魂は体を離れた。
行き先はゲームの中。物語の主人公の、データの中だ。
逃げ場は完全に塞がれた。立ち向かわなければ、彼は戻れない。
もう彼に選択肢は、一つだけしかなかった。
だけどこれこそが、彼の再会の糸口になるなどとは、誰も知る由がない。
横島の魂に吸着していた別の魂は、静かに目を見開いた。

「ここ……どこ……?」

問うても、応えるものは居ない。

「別に……いっか」

何も気にせず目を瞑る。

「なんだか心地いい。なんだか……温かい」

次第のその意識は、深いところへと飲み込まれていった。


 あとがき
かなり短めですが、これでプロローグ部分は終わりです。
レスを下さった方々が面白いようにパピリオがピンチだと思ってくれていましたが、初めからデータドレインは横島に当てるつもりだった僕です。
これ読んだら絶対驚くだろうなぁと思いながら書いてました。こんなに書くのが楽しかったことはあまりありませんでした。
先のストーリーを読ませず、予想の範囲外を行くのが好きなのです。
いろいろとご不満があるかもしれませんが、矛盾の生まれないように先のストーリーも構成したつもりなので、これからよろしくお願いいたします。

前回腕輪なしカイトを出して欲しい人がレスを下さいましたので、登場させてみようと思います。
実はけっこうすぐに出てきますので、お楽しみに。


レス返しです

麒山悠青さん
はじめまして。脳味噌コネコネ(某パズルゲームで有名?な言葉)です。
パピリオピンチ?と書かれていたのを見たときは、思わず顔が崩れた僕です。
たくさんの人が罠にかかってくれていたら嬉しいですね。

シヴァやんさん
パピリオを意識不明にする気はまったくなかった僕にとっては、嬉しい感想でした。
出来る限り惹きつけるような形で予想を裏切れたので、とても満足しております。
バルムンクの件に関しては、既に考えております。問題はありません。
数々の問題を抹消するべく、これからも努力させていただきます。

シャミさん
カイトの登場はブラックローズの後あたりになりそうです。しっかりとオルカやバルムンクとパーティーも組ませるので、お楽しみにです。
アルビレオとかは物語の設計上、おそらく一度は確実に出てくると思いますので、そちらの方も楽しみにということで。

ジントさん
確かに緑色カイトは僕もそんな好きじゃないですが、その点に関しては現在考慮中です。
横島がデータドレインを食らってくれたことにより、オルカを意識不明する必要はなくなったので、ストーリー振興に関しては問題ありません。
メールがけっこう重要なゲームですが、そちらに関しても配慮があるので特に問題はないですね。

はるかさん
司を出すと面白い気もするのですが、話が違う方向に進んでいくので封印です。外伝とか書くときなら出しても良さそうですね。
昴を出せないのはまた別の理由がありますが、紅衣の騎士団もその一つですね。
ゲームの.hackはSIGNよりも後の話という位置づけなので、やっぱり出そうとするといろいろ問題が出てくるのです。
ミミルやベアは実際出てくるんですけどね。

秋桜さん
設定に関して完成度を求められる以上、まだ完結していないGUとクロスするわけにはいかなかったので、前作のほうです。
ブラックローズ、ミア、エルク等など好きなキャラが多いので書くのが楽しみです。
仕事で忙しそうな西条が仕事をほったらかしにしてゲームをするかどうかはわかりませんが、嫌なキャラにはしたくないですね。

カタリナさん
CC社の件は極秘依頼扱いで受けているため、おそらくは問題ないと思います。
パピリオの人気があるのはただ単純に素の自分をさらけ出していて、いつもニコニコしながら楽しそうにゲームしてるから、というのが大きいです。
つまりは可愛がられるキャラなのですよ。
ちなみにルシオラ風のキャラカスタマイズはある人の特製です。
いろいろ問題点があるように見えますが、それはただ設定の全てを全然話してないのが理由です。
はじまったばかりで延々と説明文を読むのはダルイと思うので後に回してますから。
文殊は最初から出すつもりありませんでした。それを封じる意味も込めてのデータドレインです。

DEFさん
はじめまして。レスありがとうございます。
正直かなりヘコんでたので励まされました。
DEFさんの言うとおり、美神は極秘扱いで仕事しております。
ハロルドやらエマやらの話にもGS絡みの設定を上乗せしてますので、うまく世界観が合うか解りませんが、これからもよろしくお願いします。

ジェネさん
はい。これからが本番なのです。
.hackキャラたちと蛍をどんな形で絡ませていくか、現在いろいろと考えている途中です。
カイトと比べて性格の差が激しいので、かなりの違いが出てくると思いますね。
どうか温かい目で見守っていてください。よろしくお願いします。


次回はいろいろと設定の説明をする話になりそうです。

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